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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-207210(P2019-207210A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】位置推定方法および位置推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/14 20060101AFI20191108BHJP
   G01S 5/10 20060101ALI20191108BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20191108BHJP
【FI】
   G01S5/14
   G01S5/10
   H04W64/00 140
   H04W64/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-104037(P2018-104037)
(22)【出願日】2018年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】細田 真道
(72)【発明者】
【氏名】花籠 靖
(72)【発明者】
【氏名】毛利 忠
(72)【発明者】
【氏名】宮本 勝
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】梅内 誠
(72)【発明者】
【氏名】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062CC12
5J062CC18
5K067AA21
5K067DD11
5K067DD24
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ53
5K067JJ54
(57)【要約】
【課題】複数の分散アンテナを用い、無線基地局と無線端末局との間の接続を効率よく行って無線端末局の高精度な位置推定を可能にする。
【解決手段】長さが既知のケーブルを介して分散配置された複数の分散アンテナを切り替えて送受信が可能な無線基地局と、該無線基地局と通信する無線端末局との間で、該無線端末局の位置を推定する位置推定装置において、無線基地局が分散アンテナごとに、無線端末局との間で測定信号と応答信号を送受信してその往復遅延時間であるRTTを測定するときに、測定信号の受信時刻と応答信号の送信時刻を用いてその遅延時間を除去した無遅延RTTを測定するか、または測定信号と応答信号の複数回の送受信により該遅延時間を一定化する統計処理による統計処理RTTを測定する手段1と、分散アンテナごとの無遅延RTTまたは統計処理RTTから無線端末局の位置を推定する手段2とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さが既知のケーブルを介して分散配置された複数の分散アンテナを切り替えて送受信が可能な無線基地局と、該無線基地局と通信する無線端末局との間で、該無線端末局の位置を推定する位置推定装置において、
前記無線基地局が前記分散アンテナごとに、前記無線端末局との間で測定信号と応答信号を送受信してその往復遅延時間であるRTTを測定するときに、測定信号の受信時刻と応答信号の送信時刻を用いてその遅延時間を除去した無遅延RTTを測定するか、または測定信号と応答信号の複数回の送受信により該遅延時間を一定化する統計処理による統計処理RTTを測定する手段1と、
前記分散アンテナごとの無遅延RTTまたは統計処理RTTから前記無線端末局の位置を推定する手段2と
を備えたことを特徴とする位置推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置推定装置において、
前記無線端末局は、2以上の前記分散アンテナを1次元に配置した直線上を移動する構成とし、
前記手段2は、前記各分散アンテナを介して得られる前記無遅延RTTの差分または前記統計処理RTTの差分を用いて前記無線端末局の1次元位置を推定する構成である
ことを特徴とする位置推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の位置推定装置において、
前記無線端末局は、3以上の前記分散アンテナを配置した2次元の平面、または4以上の前記分散アンテナを配置した3次元の空間を移動する構成とし、
前記手段2は、前記分散アンテナの位置と、2つの前記分散アンテナごとに得られる前記無遅延RTTまたは前記統計処理RTTを組合せて前記無線端末局の2次元位置または3次元位置を推定する構成である
ことを特徴とする位置推定装置。
【請求項4】
長さが既知のケーブルを介して分散配置された複数の分散アンテナを切り替えて送受信が可能な無線基地局と、該無線基地局と通信する無線端末局との間で、該無線端末局の位置を推定する位置推定装置において、
前記無線基地局が前記分散アンテナごとに、前記無線端末局との間で測定信号と応答信号を送受信し、前記無線基地局における受信電波強度であるRSSIを測定するときに、測定信号と応答信号の複数回の送受信によりRSSIの測定誤差を解消する統計処理により統計処理RSSIを測定する手段1と、
前記分散アンテナごとの統計処理RSSIから前記無線端末局の位置を推定する手段2と
を備えたことを特徴とする位置推定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の位置推定装置において、
前記無線端末局は、2以上の前記分散アンテナを1次元に配置した直線上を移動する構成とし、
前記手段2は、前記分散アンテナ間の距離および各分散アンテナにおける伝搬損失係数と、前記各分散アンテナを介して得られる前記統計処理RSSIの差分を用いて前記無線端末局の1次元位置を推定する構成である
ことを特徴とする位置推定装置。
【請求項6】
請求項4に記載の位置推定装置において、
前記無線端末局は、3以上の前記分散アンテナを配置した2次元の平面、または4以上の前記分散アンテナを配置した3次元の空間を移動する構成とし、
前記手段2は、前記分散アンテナの位置と、前記分散アンテナ間の距離および各分散アンテナにおける伝搬損失係数と、2つの前記分散アンテナごとに得られる前記統計処理RSSIの差分を組合せて前記無線端末局の2次元位置または3次元位置を推定する構成である
ことを特徴とする位置推定装置。
【請求項7】
長さが既知のケーブルを介して分散配置された複数の分散アンテナを切り替えて送受信が可能な無線基地局と、該無線基地局と通信する無線端末局との間で、該無線端末局の位置を推定する位置推定方法において、
前記無線基地局が前記分散アンテナごとに、前記無線端末局との間で測定信号と応答信号を送受信してその往復遅延時間であるRTTを測定するときに、測定信号の受信時刻と応答信号の送信時刻を用いてその遅延時間を除去した無遅延RTTを測定するか、または測定信号と応答信号の複数回の送受信により該遅延時間を一定化する統計処理による統計処理RTTを測定するステップ1と、
前記分散アンテナごとの無遅延RTTまたは統計処理RTTから前記無線端末局の位置を推定するステップ2と
を有することを特徴とする位置推定方法。
【請求項8】
長さが既知のケーブルを介して分散配置された複数の分散アンテナを切り替えて送受信が可能な無線基地局と、該無線基地局と通信する無線端末局との間で、該無線端末局の位置を推定する位置推定方法において、
前記無線基地局が前記分散アンテナごとに、前記無線端末局との間で測定信号と応答信号を送受信し、前記無線基地局における受信電波強度であるRSSIを測定するときに、測定信号と応答信号の複数回の送受信によりRSSIの測定誤差を解消する統計処理により統計処理RSSIを測定するステップ1と、
前記分散アンテナごとの統計処理RSSIから前記無線端末局の位置を推定するステップ2と
を有することを特徴とする位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局の位置に基づいて無線端末局の位置を推定する位置推定方法および位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来例1)
位置が既知である複数の無線基地局から送信される信号を無線端末局が受信し、それぞれの受信電波強度RSSI (Received Signal Strength Indicator) を測定することにより、無線端末局の2次元の位置を推定する方法がある(非特許文献1)。
【0003】
本方法では、無線端末局としてスマートフォン等を使用し、無線基地局が送信する信号として複数の無線LANアクセスポイントから定期的に送信されるビーコンや、スマートフォン等からのプローブ要求に応じて送信されるプローブ応答を受信し、そのRSSIを無線基地局ごとに測定し、その値と各無線基地局の位置を基準にした無線端末局の位置を推定する。
【0004】
(従来例2)
同様に、位置が既知である複数の無線基地局と無線端末局との間で信号を送受信してその往復遅延時間RTT(Round Trip Time)を測定し、さらに各無線基地局と無線端末局との間の電波到達時間ToA(Time of Arrival)を算出することにより、無線端末局の2次元の位置を推定する方法がある(非特許文献2)。
【0005】
本方法では、図10に示すように、無線端末局が複数の無線基地局に測定信号を送信し、各無線基地局からその応答信号を受信し、無線端末局が測定信号の送信開始時刻と応答信号の受信開始時刻からRTTを無線基地局ごとに測定し、さらに各RTTから無線端末局と各無線基地局との間の電波到達時間ToA(=RTT/2)を算出し、その差分と各無線基地局の位置を基準にした無線端末局の位置を推定する。
【0006】
(従来例3)
IEEE Std 802.11-2016に規定されるファインタイミング測定FTM(Fine Timing Measurement )を用い、無線基地局と無線端末局との間の飛行時間ToF(Time of Flight)を測定し、無線端末局の位置を推定する方法がある(非特許文献3)。
【0007】
本方法においても、従来例2のRTTから算出する手順と同様に、無線端末局の位置を推定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】伊藤誠悟, 吉田廣志, 河口信夫, “無線LANを用いた広域位置情報システム構築に関する検討”, 情報処理学会論文誌, Vol.47, No.12, pp.3124-3136, 2006年12月
【非特許文献2】M. Llombart, M. Ciurana, and F. Barcelo-Arroyo. "On the scalability of a novel WLAN positioning system based on time of arrival measurements." Proc. IEEE WPNC, 2008.
【非特許文献3】IEEE Std 802.11-2016, 11.24.6 Fine timing measurement (FTM) procedure, pp.1789-1800 ,2016年12月7 日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来例1の方法では、個々の無線基地局(無線LANアクセスポイント)は別々のチャネルに設定され、ビーコンの送信時間もバラバラである。そのため、無線端末局(スマートフォン等)が周囲の無線基地局を順次把握するには、自身の通信の合間にチャネルを順次切り替え、無線基地局からのビーコンを待ったり、プローブ要求を送信してプローブ応答を待ったりする時間が必要となる。無線端末局が移動していなければ時間をかけて順次把握して位置測位を行えばよいが、移動している場合には通信中に無線端末局の位置が変わってしまうと、正しい測位ができなくなる。
【0010】
このように、無線端末局が複数の無線基地局を順番に把握するための処理時間が無線基地局数分だけかかる課題は、従来例2や従来例3においても同様である。
【0011】
さらに、従来例1の方法では、RSSIは周囲の干渉、フェージング等により短時間でも時々刻々と変化しているため、連続的に測定するとバラつきが多くみられる。しかし、上記のように測定タイミングが限られていると、バラついている瞬間の測定となってしまうため、誤差が大きくなってしまい、正しい測位ができなくなる。
【0012】
本発明は、無線基地局本体とケーブルを介して分散配置される複数の分散アンテナを用い、無線基地局と無線端末局との間の接続を効率よく行って無線端末局の高精度な位置推定を可能にする位置推定装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、長さが既知のケーブルを介して分散配置された複数の分散アンテナを切り替えて送受信が可能な無線基地局と、該無線基地局と通信する無線端末局との間で、該無線端末局の位置を推定する位置推定装置において、無線基地局が分散アンテナごとに、無線端末局との間で測定信号と応答信号を送受信してその往復遅延時間であるRTTを測定するときに、測定信号の受信時刻と応答信号の送信時刻を用いてその遅延時間を除去した無遅延RTTを測定するか、または測定信号と応答信号の複数回の送受信により該遅延時間を一定化する統計処理による統計処理RTTを測定する手段1と、分散アンテナごとの無遅延RTTまたは統計処理RTTから無線端末局の位置を推定する手段2とを備える。
【0014】
第1の発明の位置推定装置において、無線端末局は、2以上の分散アンテナを1次元に配置した直線上を移動する構成とし、手段2は、各分散アンテナを介して得られる無遅延RTTの差分または統計処理RTTの差分を用いて無線端末局の1次元位置を推定する構成である。
【0015】
第1の発明の位置推定装置において、無線端末局は、3以上の分散アンテナを配置した2次元の平面、または4以上の分散アンテナを配置した3次元の空間を移動する構成とし、手段2は、分散アンテナの位置と、2つの分散アンテナごとに得られる無遅延RTTまたは統計処理RTTを組合せて無線端末局の2次元位置または3次元位置を推定する構成である。
【0016】
第2の発明は、長さが既知のケーブルを介して分散配置された複数の分散アンテナを切り替えて送受信が可能な無線基地局と、該無線基地局と通信する無線端末局との間で、該無線端末局の位置を推定する位置推定装置において、無線基地局が分散アンテナごとに、無線端末局との間で測定信号と応答信号を送受信し、無線基地局における受信電波強度であるRSSIを測定するときに、測定信号と応答信号の複数回の送受信によりRSSIの測定誤差を解消する統計処理により統計処理RSSIを測定する手段1と、分散アンテナごとの統計処理RSSIから無線端末局の位置を推定する手段2とを備える。
【0017】
第2の発明の位置推定装置において、無線端末局は、2以上の分散アンテナを1次元に配置した直線上を移動する構成とし、手段2は、分散アンテナ間の距離および各分散アンテナにおける伝搬損失係数と、各分散アンテナを介して得られる統計処理RSSIの差分を用いて無線端末局の1次元位置を推定する構成である。
【0018】
第2の発明の位置推定装置において、無線端末局は、3以上の分散アンテナを配置した2次元の平面、または4以上の分散アンテナを配置した3次元の空間を移動する構成とし、手段2は、分散アンテナの位置と、分散アンテナ間の距離および各分散アンテナにおける伝搬損失係数と、2つの分散アンテナごとに得られる統計処理RSSIの差分を組合せて無線端末局の2次元位置または3次元位置を推定する構成である。
【0019】
第3の発明は、長さが既知のケーブルを介して分散配置された複数の分散アンテナを切り替えて送受信が可能な無線基地局と、該無線基地局と通信する無線端末局との間で、該無線端末局の位置を推定する位置推定方法において、無線基地局が分散アンテナごとに、無線端末局との間で測定信号と応答信号を送受信してその往復遅延時間であるRTTを測定するときに、測定信号の受信時刻と応答信号の送信時刻を用いてその遅延時間を除去した無遅延RTTを測定するか、または測定信号と応答信号の複数回の送受信により該遅延時間を一定化する統計処理による統計処理RTTを測定するステップ1と、分散アンテナごとの無遅延RTTまたは統計処理RTTから無線端末局の位置を推定するステップ2とを有する。
【0020】
第4の発明は、長さが既知のケーブルを介して分散配置された複数の分散アンテナを切り替えて送受信が可能な無線基地局と、該無線基地局と通信する無線端末局との間で、該無線端末局の位置を推定する位置推定方法において、無線基地局が分散アンテナごとに、無線端末局との間で測定信号と応答信号を送受信し、無線基地局における受信電波強度であるRSSIを測定するときに、測定信号と応答信号の複数回の送受信によりRSSIの測定誤差を解消する統計処理により統計処理RSSIを測定するステップ1と、分散アンテナごとの統計処理RSSIから無線端末局の位置を推定するステップ2とを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、無線基地局の複数の分散アンテナを用いることにより、1台の無線基地局と無線端末局が測定信号と応答信号のやりとりを行うだけで測位が可能であり、無線端末局がチャネルを切り替えたり、無線基地局からの信号を待ったりすることなく、高速な測位が可能である。そのため、無線端末局が移動していても高精度な測位が可能となる。
【0022】
さらに、無遅延RTTまたは統計処理RTTまたは統計RSSIを用いることにより、個々のRTTやRSSIのバラつきを除去した、より高精度な位置測位が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の位置推定装置の全体構成を示す図である。
図2】無線基地局10の構成例を示す図である。
図3】無線端末局20の構成例を示す図である。
図4】位置推定サーバ30の構成例を示す図である。
図5】無遅延RTTの測定方法1を示す図である。
図6】無遅延RTTの測定方法2を示す図である。
図7】RTTを用いる1次元の位置推定を説明する図である。
図8】RTTを用いる1次元の位置推定を説明する図である。
図9】座標安定化部33の処理例を示す図である。
図10】従来の無線端末局の位置推定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の位置推定装置の全体構成を示す。
図1において、無線基地局10には、分散配置される分散アンテナ11−1〜11−nが既知の長さのケーブル12−1〜12−nを介して接続される。nは2以上の整数である。各分散アンテナ11−1〜11−nの位置は既知である。
【0025】
図2は、無線基地局10の構成例を示す。
図2において、無線基地局10は、アンテナ切替部13、信号送信部14、信号受信部15、RTT測定部16、RSSI測定部17、時計18を備え、RTT測定部16およびRSSI測定部17に位置推定サーバ30が接続される。
【0026】
図3は、無線端末局20の構成例を示す。
図3において、無線端末局20は、アンテナ21、信号受信部22、信号送信部23、制御部24、時計25を備える。
【0027】
図4は、位置推定サーバ30の構成例を示す。
図4において、位置推定サーバ30は、測定値統計処理部31、座標計算部32、座標安定化部33を備える。
【0028】
以上の構成に基づき、無線端末局20の座標位置の推定処理について説明する。
無線基地局10は、分散アンテナ11−i(i=1〜n)を介して無線端末局20との接続処理を行う。RTT測定部16は、アンテナ切替部13を制御して分散アンテナ11−iを選択し、信号送信部14から分散アンテナ11−iを介して無線端末局20に測定信号を送信する。
【0029】
無線端末局20は、アンテナ21を介して信号受信部22で測定信号を受信する。制御部24は、測定信号に対する応答信号を生成し、信号送信部23からアンテナ21を介して送信する。
【0030】
無線基地局10は、分散アンテナ11−iを介して信号受信部15で応答信号を受信し、RTT測定部16およびRSSI測定部17に通知する。RTT測定部16は、測定信号の送信から応答信号の受信までの往復遅延時間RTTを測定して位置推定サーバ30に出力する。RSSI測定部17は、応答信号の受信電波強度RSSIを測定して位置推定サーバ30に出力する。
【0031】
無線基地局10および無線端末局20は、以上の処理を分散アンテナ11−1〜11−nを順次切り替えながら繰り返す。位置推定サーバ30は、それぞれ得られたRTTおよび電波到達時間ToA(=RTT/2)や、応答信号のRSSIに基づいて、無線端末局20の位置座標を推定する。
【0032】
(1) RTTの測定誤差の除去
RTTには、無線端末局20における測定信号の受信から応答信号の送信までの端末遅延時間が含まれ、無線端末局20の状態によって端末遅延時間にバラつきが生じ、RTTの測定誤差となる。このRTTの測定誤差を除去する方法として、(1-1) 端末遅延時間を含まない「無遅延RTT」を測定する、(1-2) 短時間に多数回の計測を行い、統計的にバラつきを除去した「統計処理RTT」を測定する、(1-3) 両者を併用する。
【0033】
(1-1) 無遅延RTTの測定方法
図5は、無遅延RTTの測定方法1を示す。
図5において、無線基地局10の信号送信部14は、分散アンテナ11−i(iは1〜n)から測定信号を送信し、RTT測定部16がその送信時刻t1を記録する。無線端末局20は、測定信号を受信すると応答信号を返す。このとき、制御部24は、測定信号の受信時刻t2と応答信号の送信時刻t3を記録するとともに、応答信号に(t2,t3)に載せるか、応答信号とは別の信号に載せて無線基地局10へ通知してもよい。無線基地局10の信号受信部15は、分散アンテナ11−iを介して応答信号を受信すると、RTT測定部16はその受信時刻t4を記録するとともに、無線端末局20から通知された(t2, t3)を取得する。これにより、無線基地局10のRTT測定部16は、分散アンテナ11−iと無線端末局20との間のRTT(i) を次のように求めることができる。
RTT(i) = (t4−t1)−(t3−t2)
【0034】
ここで、無線基地局10の分散アンテナ11−iと無線端末局20のRTT(i) は、無線端末局20における測定信号の受信から応答信号の送信までの端末遅延時間(t3−t2) を含まない無遅延RTT(i) となる。
【0035】
無線基地局10のRTT測定部16は、分散アンテナ11−1〜11−nを切り替えながら無遅延RTT(1) 〜RTT(n) を測定し、位置推定サーバ30へ送信する。
【0036】
図6は、RTTの測定方法2を示す(非特許文献3)。
図6において、無線基地局10はイニシエータとなり、無線端末局20はレスポンダとなる。無線基地局10は、RTT測定部16がイニシエータとして、信号送信部14からInitial FTM Requestを分散アンテナ11−iを介して無線端末局20へ送信し、無線端末局20から測定信号を指定回数送信するように要求する。無線端末局20は、信号受信部22がInitial FTM Requestを受信すると、制御部24が信号送信部23から応答信号ACKを返すとともに、レスポンダとしての動作を開始する。
【0037】
無線端末局20の信号送信部23は、最初の測定信号FTM1を送信し、制御部24がその送信時刻t1を記録する。無線基地局10は、FTM1を受信すると応答信号ACKを返す。このとき、RTT測定部16はFTM1の受信時刻t2、ACKの送信時刻t3を記録する。無線端末局20は、ACKを受信すると、次の測定信号FTM2を送信する。このとき、制御部24は、ACKの受信時刻t4、FTM2の送信時刻t1’を記録するとともに、FTM2に前回の(t1, t4)を含める。以下同様に、最初の要求で指定された回数に達するまで、測定信号FTMと応答信号ACKの往復が続き、無線基地局10と無線端末局20はそれぞれの送受信時刻の記録と、測定信号へ前回の(t1, t4)の付与を行う。
【0038】
これにより、無線基地局10は、前回の(t1, t4)を含んだ測定信号FTMを受信することができ、RTT測定部16は前回の(t2, t3)とあわせて、分散アンテナ11−iと無線端末局20との間のRTT(i) を次のように求めることができる。
RTT(i) = (t4−t1)−(t3−t2)
【0039】
ここで、本シーケンスでは、図5の測定信号と応答信号の向きが逆であるが、無線基地局10がトリガーとなって、無線基地局10の分散アンテナ11−iと無線端末局20との間の無遅延RTT(i) を測定することができる。
【0040】
無線基地局10のRTT測定部16は、分散アンテナ11−1〜11−nを切り替えながら無遅延RTT(1) 〜RTT(n) を測定し、位置推定サーバ30へ送信する。
【0041】
なお、無遅延RTT(i) を測定するには、無線基地局10および無線端末局20にそれぞれ時計18,25で得られる時刻情報の記録および付与が必要になる。しかし、無線端末局20では時計情報を付与する機能に対応していないものがあり、その場合には以下に示す統計処理RTTを測定することになる。
【0042】
(1-2) 統計処理RTTの測定方法
統計処理RTTは、無線基地局10のRTT測定部16が測定を多数回実施し、位置推定サーバ30の測定値統計処理部31でバラつきを除去する。
【0043】
図5のシーケンスを例に説明する。無線基地局10は無線端末局20に対して測定信号を送信する。この測定信号は、無線端末局20が受信した際にバックオフ時間のような待ち時間を必要とせず、即座に応答信号を返すことができる種類のものにする。待ち時間が必要であれば、待ち時間の影響により短時間で多数回の測定ができなくなる。さらに、無線LANにおけるバックオフ時間のようにランダム時間待つ必要がある信号の場合は、端末遅延時間にランダム時間が含まれることになってしまい、位置推定誤差も大きくなってしまう。例えば、無線LANのデータフレームの場合は、バックオフ時間としてランダム時間待つ必要があるが、マネジメントフレーム、アクションフレームであれば、受信した無線端末局20はバックオフ時間を待たずに即座に応答信号ACKを返すことができる。
【0044】
無線端末局20は、測位中に移動していく可能性があるため、RTT測定部16はアンテナ切替部13を介して分散アンテナ11−1〜11−nを短時間で順次切り替えつつRTTを多数回測定していく。例えば、分散アンテナ11−1で10回測定、分散アンテナ11−2で10回測定、…、分散アンテナ11−nで10回測定、分散アンテナ11−1で10回測定、…、というシーケンスを繰り返し実行し、全アンテナ合計で1秒間に 100回程度測定する。
【0045】
こうして測定した多数のRTTを位置推定サーバ30へ送り、測定値統計処理部31にて分散アンテナ毎の統計処理を実施する。統計処理には、移動平均による方法、回帰による方法がある。
【0046】
(1-2-1) 移動平均
通常の移動平均は、過去n回の値を平均する、といった方法になる。しかし、無線LANの場合、チャネルの使用状況によっては測定信号を任意のタイミングで送信できないため、測定間隔はランダムなものとなる。そこで、過去n回のRTTを平均する回数による移動平均ではなく、過去n秒間において測定されたRTTを平均する「時間による移動平均」を用いる。例えば過去10秒間で測定されたRTTの移動平均を求め、統計処理RTTとして位置推定の計算に用いる。
【0047】
平均の場合、RTTに異常値が含まれていると結果に大きな影響を及ぼしてしまう。そこで、単純な平均ではなく、異常値を取り除くトリム平均を用いてもよい。
【0048】
また、ある程度過去のデータを使いつつ、より直近のデータを重視するためには、加重移動平均を用いる。RTTの計測は等間隔ではないため、最新RTTの重みを最大とし、過去RTTについては最新RTTとの測定時刻の差分を用い、古い時刻差分が大きいRTTほど重みを下げる。時刻差分に対して線形に重みを下げるのであれば、時刻差分がn秒を超える古いRTTは重みゼロとして捨て、n秒から0秒のRTTについては、それぞれ重みを
(n−時刻差分) /n
に設定し、平均もしくはトリム平均を行った結果を統計処理RTTとする。時刻差分に対して指数的に重みを下げていく方法をとってもよい。
【0049】
移動平均区間を何秒にするか、あるいは時刻差分によって重みをどの程度下げていくかについては、無線端末局の移動速度などによって決定する必要がある。区間が長いほど、重み低下率が低いほど統計処理が強いことになり、端末遅延時間のバラつきによる影響を低減させることができるが、高速移動時には測定結果に大きな遅れが生じてしまう。移動速度のレンジが限定される用途であれば、あらかじめ設定された固定値を用いればよい。そうでない場合には、位置推定結果から移動速度を推定し、移動速度に応じて切り替えていく方法を採ることができる。例えば、移動速度の範囲をいくつかに区切って、範囲ごとに移動平均区間長もしくは低下率を決めておき、推定された移動速度に応じて今後の計算に使用する値を切り替えることができる。
【0050】
(1-2-2) 回帰
移動平均による方法は、常に過去のデータの影響を受けるため、リアルタイムの位置を知りたい場合であっても、移動平均区間の半分程度の時間遅れたデータが得られることになる。そこで、移動速度がほぼ一定である用途であれば、線形回帰をすることにより、遅れのない現在の統計処理RTTを求めることができる。その他、無線端末局の移動パターンに応じた回帰モデルを用いることにより、より精度の高い統計処理RTTを求めることができる。
【0051】
(1-3) 無遅延RTTと統計処理RTTの併用
無遅延RTTを多数測定し、それを統計処理することによって、より精度の高い無遅延RTTを求めることもできる。
【0052】
(2) RSSIの測定誤差の除去
無線基地局10のRTT測定部16がRTTを多数回測定した時に、RSSI測定部17がRSSIを多数回測定し、位置推定サーバ30の測定値統計処理部31でバラつきを除去する。
【0053】
図5図6のシーケンスでRTTを計測する際には、無線基地局10と無線端末局20は測定信号や応答信号を送受信する。このとき、RSSIを測定することも可能である。統計処理RTTを用いる際には、短時間で多数のRTTを測定するが、このときに合わせてRSSI測定部17でRSSIも測定すれば、短時間で多数のRSSIを得ることができる。
【0054】
このRSSIを位置推定サーバ30へ送り、測定値統計処理部31にてRTTと同様の方法で統計処理し、バラつきを除去した「統計処理RSSI」を求める。通常、RSSIは単位dBmで得られるが、dBmは対数軸なので、一旦mWへ変換してから、移動平均や回帰を行って統計処理RSSIを求め、必要であればこれを再度dBmへ変換する。
【0055】
(3) 座標計算
位置推定サーバ30の座標計算部32で行う処理について説明する。
以下、分散アンテナ11−1〜11−nの利得やその他の特性は同一とする。無線基地局10と分散アンテナ11−1〜11−nを接続するケーブル12−1〜12−nのケーブル長、損失その他の特性が同一とする。特性が異なる場合は、各測定値を特性が同一の場合に測定されるであろう値へ換算してから位置推定計算すればよい。
【0056】
(3-1) 1次元の位置推定
無線基地局10に分散アンテナが2本あれば1次元での測位が可能となる。無線端末局20は2本の分散アンテナ間を直線状に移動するものとする。
【0057】
(3-1-1) RTTを用いる1次元の位置推定
図7は、無線端末局20が2本の分散アンテナ11−1,11−2の中央に位置した時のRTT経路の例を示す。cは光速299792458 [m/s] とする。無線基地局20と分散アンテナ間のケーブル12−1,12−2の片道時間をA[s] 、分散アンテナ間の距離をD[m] 、端末遅延時間をtd [s] 、分散アンテナ11−2で測定されるRTTをtrt2 [s] とすると、
rt2 =A+D/2/c+td +D/2/c+A=2A+td +D/c
となる。この場合、無線端末局20は2本の分散アンテナ11−1,11−2の中央にあるので、分散アンテナ11−1で測定されるRTTをtrt1 [s] とすると、trt2 と同じなので、
rt1 =trt2 =2A+td +D/c
となる。
【0058】
図8は、無線端末局20が座標xs [m] に位置した時のRTT経路を示す。それぞれのRTTは以下のようになる。
rt2 =A+(D/2+xs)/c+td +(D/2+xs)/c+A
=2A+td +(D+2xs)/c
rt1 =A+(D/2−xs)/c+td +(D/2−xs)/c+A
=2A+td +(D−2xs)/c
【0059】
RTTとして、無遅延RTTを使った場合は端末遅延時間td =0となるし、統計処理RTTを使った場合は端末遅延時間td が一定値となる。よって、分散アンテナ11−1側で測定したRTTに含まれるtd も、分散アンテナ11−2側で測定したRTTに含まれるtd も同じ値となる。
【0060】
ここで両RTTの差分を取る。
rt2 −trt1 =(D+2xs)/c−(D−2xs)/c
=4xs/c
これを無線端末局20の座標xs で解くと、
s=c(trt2 −trt1)/4
となる。
【0061】
以上により、この式を用いれば、2本の分散アンテナ11−1,11−2から得られた無遅延RTTもしくは統計処理RTTから無線端末局20の1次元座標xs を得ることができる。この計算ではA,D,td はすべて打ち消しており、パラメータはRTTの他に定数である光速cのみとなっている。さらに、計算も一次方程式の解を直接計算すればよいので、低コストで計算可能である。また、光速cは、どこへ行っても不変の定数のため、場所ごとにキャリブレーションを必要とせずに正確な位置推定が可能となっている。
【0062】
(3-1-2) RSSIを用いる1次元の位置推定
2本の分散アンテナ11−1,11−2の直近で計測した統計処理RSSIをB[dBm] とする。分散アンテナ11−1と無線端末局20との距離をd1 [m] とする。分散アンテナ11−2と無線端末局20との距離をd2 [m] とする。
【0063】
2本の分散アンテナ11−1,11−2と無線端末局20は直線上にあり、分散アンテナ間の距離をD[m] とするので、D=d1 +d2 となる。また、分散アンテナ11−1,11−2への距離比をRとして、R=d1 /d2 とする。
【0064】
伝搬損失係数をαとする。αは電波が距離によってどの程度減衰するかを示す係数であり、真空中の自由空間であればα=2となるが、実際には何らかの方法で決定する必要がある。波長をλとする。
【0065】
無線端末局20が分散アンテナ11−1,11−2間のどこかにある場合、分散アンテナ11−1で測定した統計処理RSSIをRSSI1 [dBm] 、分散アンテナ11−2で測定した統計処理RSSIをRSSI2 [dBm] とすると、以下のようになる。
RSSI1 =B−10αlog10{(4πd1)/λ}
RSSI2 =B−10αlog10{(4πd2)/λ}
【0066】
ここで、統計処理RSSIの差分をとる。
RSSI2−RSSI1=10αlog10{(4πd1)/λ}−10αlog10{(4πd2)/λ} =10αlog10(d1/d2)
【0067】
これを距離比Rについて解くと、
R=d1 /d2 =10^{(RSSI2−RSSI1)/10α}
=(101/10)^{(RSSI2−RSSI1)/α}
となる。
【0068】
これにより、分散アンテナ11−1,11−2間で無線端末局20の位置する距離比Rを得ることができる。さらに、得られた距離比Rと分散アンテナ間の距離d1 ,d2 を用いて、
D=d1 +d2
R=d1 /d2
より、
2 =D/(R+1)
となる。分散アンテナ11−1,11−2間の中央を原点として無線端末局20の座標をxs [m] とすると、
s =d2 −D/2=D/(R+1)−D/2
となり、無線端末局20の1次元座標xs を求めることができる。
【0069】
この計算では、Bを打ち消しているので、実際に分散アンテナ11−1,11−2の直近で統計処理RSSIを計測する必要がなく、また、無線端末局20の利得特性ごとにパラメータを調整する必要はない。また、λも打ち消しているので、チャネル(周波数)の違いによってパラメータを調整する必要もない。ただし、RTTの時とは異なり、αとDを打ち消すことはできない。αは場所によって異なる値になるものなので、キャリブレーション等の方法によりαを決定する必要がある。Dも分散アンテナ間の距離を正確に測定して決定しておく必要がある。
【0070】
(3-1-3) 3本以上の分散アンテナを用いる1次元の位置推定
3本以上の分散アンテナが直線上にある場合でも1次元の位置推定が可能である。この場合、方程式が優決定系となるため、一意の解を得ることはできないが、最小二乗法を用いることにより1次元座標を求めることができる。
【0071】
さらに、統計処理RTTや統計処理RSSIを求める際、同時に分散や標準偏差を求めておき、これらの逆数を最小二乗法の重みとして利用することもできる。これにより、バラつきが小さかった分散アンテナの測定値を優先して最小二乗法を適用することができ、より正確な位置推定が可能となる。さらに、重みとして、測定回数が多いほど大きくなる重み、距離が近いほど大きくなる重み、RTTが小さいほど大きくなる重み、RSSIが大きいほど大きくなる重み等を使用することができる。特に、RSSIは分散アンテナに近い(距離が近い、RSSIが大きい)エリアでは分解能が高いが遠くなると分解能が低くなるという特徴があるため、このような重みづけをすることによって、分解能が高い測定値が優先され、より正確な位置推定が可能となる。
【0072】
(3-2) 2次元の位置推定
分散アンテナを3本使うことにより、2次元の位置推定が可能となる。すべての分散アンテナは1つの平面上に存在して、無線端末局20はその平面上のみを移動するものとする。
【0073】
(3-2-1) RTTを用いる2次元の位置推定
分散アンテナ11−i(i=1,2,3)の座標を(xi ,yi )(既知、単位は[m] )とする。無線端末局20の座標を(xs ,ys )(未知、単位は[m] )とする。分散アンテナ11−iで測定された無遅延RTTもしくは統計処理RTTをtrti [s] とする(測定値)。無線基地局20から分散アンテナ11−iへのケーブル長を自由空間での伝搬距離に換算した長さをlc [m] とする(既知)。
【0074】
測定結果であるtrti からケーブル長による遅延時間を除き、片道分の距離に直した疑似距離lpi [m]を以下のように求める。
pi=ctrti /2−lc
端末遅延時間td [s] の片道の距離相当であるld [m] を以下のように置く。
d =ctd /2
【0075】
分散アンテナ11−iと無線端末局20との真の距離をli [m] とすると、真の距離と疑似距離の間には、
pi=li +ld
の関係がある。一方、座標と真の距離との間には、
i ={(xi−xs)2+ (yi−ys)21/2 の関係があるので、擬似距離と座標の関係は、
pi={(xi−xs)2+ (yi−ys)21/2+ld
となる。
【0076】
以上より、3本の分散アンテナ11−1〜11−3で無線端末局20の2次元座標を得るには、以下の連立方程式を解けばよい。
p1={(x1−xs)2+ (y1−ys)21/2+ld
p2={(x2−xs)2+ (y2−ys)21/2+ld
p3={(x3−xs)2+ (y3−ys)21/2+ld
【0077】
このうち、xs 、ys 、ld の3つが未知数であり、他は既知の値および測定値から求められる値である。この方程式は、3元連立方程式で未知数が3つなので、解くことは可能ではあるが、非線形方程式のため一般に解くことは困難である。そこで、ニュートン法などを用いて近似計算により解くことができる。
【0078】
(3-2-2) RSSIを用いる2次元の位置推定
1次元の計算では、2つの分散アンテナで測定された統計処理RSSIの差分から2つの分散アンテナ間の距離比を求めることができた。距離比だけであれば2つの分散アンテナおよび無線端末局の位置が同一直線上でなくても同様の計算で求めることができる。よって、平面上の3つの分散アンテナから、すべての2つの分散アンテナの組み合わせについて、統計処理RSSIの差分からそれぞれの距離比を求めることができる。これらの距離比と各分散アンテナの座標から方程式を組み立て、無線端末局20の座標を求めることができる。この方程式も非線形になるため、ニュートン法などを用いて近似計算により解くことができる。
【0079】
(3-2-3) 4本以上の分散アンテナを用いる2次元の位置推定
4本以上の分散アンテナが平面上にある場合でも2次元の位置推定が可能である。この場合、方程式が優決定系となるため、一意の解を得ることはできないが、最小二乗法を用いることにより座標を求めることができる。1次元の場合と同様の重みづけを行うことにより、より正確な位置推定も可能となる。
【0080】
(3-3) 3次元の位置推定
分散アンテナを4本使うことによって3次元の位置推定が可能となる。
【0081】
(3-3-1) RTTを用いる3次元の位置推定
分散アンテナ11−i(i=1,2,3,4)の座標を(xi ,yi ,zi )(既知、単位は[m] )とする。無線端末局20の座標を(xs ,ys ,zs )(未知、単位は[m] )とする。その他は2次元の位置推定と同様とする。
【0082】
3次元では、座標と真の距離との間には、
i ={(xi−xs)2+ (yi−ys)2+ (zi−zs)21/2
の関係があるので、擬似距離と座標の関係は、
pi={(xi−xs)2+ (yi−ys)2+ (zi−zs)21/2+ld
となる。
【0083】
以上より、4本の分散アンテナ11−1〜11−4で無線端末局20の3次元座標を得るには、以下の連立方程式を解けばよい。
p1={(x1−xs)2+ (y1−ys)2+ (z1−zs)21/2+ld
p2={(x2−xs)2+ (y2−ys)2+ (z2−zs)21/2+ld
p3={(x3−xs)2+ (y3−ys)2+ (z3−zs)21/2+ld
p4={(x4−xs)2+ (y4−ys)2+ (z4−zs)21/2+ld
【0084】
このうち、xs 、ys 、zs 、ld の4つが未知数で、他は既知の値および測定値から求められる値である。この方程式は4元連立方程式で未知数が4つなので、解くことは可能ではあるが、非線形方程式のため一般に解くことは困難である。そこで、ニュートン法などを用いて近似計算により解くことができる。
【0085】
(3-3-2) RSSIを用いる3次元の位置推定
1次元や2次元の計算と同様、各2アンテナ間での距離比を求めることができるので、4アンテナから、すべての2アンテナの組み合わせについて、統計処理RSSIの差分からそれぞれの距離比を求めることができる。これらの距離比と各アンテナの座標から方程式を組み立て、無線端末局の座標を求めることができる。この方程式も非線形になるため、ニュートン法などを用いて近似計算により解くことができる。
【0086】
(3-3-3) 5本以上の分散アンテナを用いる3次元の位置推定
5本以上の分散アンテナが空間上にある場合でも3次元の位置推定が可能である。この場合、方程式が優決定系となるため、一意の解を得ることはできないが、最小二乗法を用いることにより座標を求めることができる。1次元や2次元の場合と同様の重みづけを行うことにより、より正確な位置推定も可能となる。
【0087】
(3-4) 異なる特性
分散アンテナの利得やその他の特性が同一のものでなかった場合は、特性が同一の分散アンテナを使った場合に測定されるであろう値へ換算する。例えば複数の分散アンテナのうち、1つだけ利得が3dB低いアンテナであった場合には、そのアンテナで計測されたRSSIに3dB加算してから座標計算を行えばよい。
【0088】
同様に、無線基地局10と分散アンテナ11を接続するケーブル12についても、ケーブル長、損失その他の特性が同一のものでなかった場合には、同一のケーブルを使った場合に測定されるであろう値に換算する。例えば1本だけケーブル長が1m長ければ、その分散アンテナで計測されたRTTから1mの往復分となる1×2×c[s] を減算してから座標計算を行えばよい。また、ケーブル長やケーブル特性等により1本だけ損失が3dB多い場合には、そのケーブルを使って計測されたRSSIに3dB加算してから座標計算を行えばよい。
【0089】
(4) 座標安定化
無線端末局20が静止していても、座標計算部32で求めた座標(以下、瞬時値座標)は細かく振動することがある。そこで、座標安定化部33で細かい振動を取り除いた座標(以下、安定化座標)を求めてもよい。
【0090】
図9は、座標安定化部33の処理例を示す。
図9(1) において、1回目の安定化座標は瞬時値座標をそのまま出力する。
図9(2) において、2回目以降は、前回の安定化座標と今回の瞬時値座標との距離を求める。距離が閾値(例えば1m)を超えない場合は、1回目の安定化座標をそのまま2回目の瞬時値座標として出力する。
【0091】
図9(3) において、距離が閾値を超えた場合は、前回の安定化座標と今回の瞬時値座標を結んだ線分上で、今回の瞬時値座標との距離が閾値になる場所を今回の瞬時値座標として出力する。
【0092】
これにより、閾値未満の座標振動を取り除いた安定化座標を得ることができる。閾値は小さいと無線端末局の静止時の座標振動が取り除けなくなるし、大きいと無線端末局の動作への追従性が悪くなるので、用途や場所によって適切な値を設定する必要がある。エリアによって、あるいは速度によって等、状況に応じて閾値を切り替える方法も考えられる。
【0093】
さらに、RTTによる座標計算結果と、RSSIによる座標計算結果を統合することにより、より精度の高い測位も可能となる。統合する方法としては、単純にRTTによる測位結果の座標と、RSSIの測位結果の座標を平均する方法もあるし、それぞれに重みを設定して平均してもよい。重みは、固定で設定してもよいし、場所ごとにRTTが得意なエリア、RSSIが得意なエリアが分かれるような場合はエリアごとに別々の重みを用意して使用する方法でもよい。
【0094】
なお、位置推定サーバ30の機能は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、そのプログラムは記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 無線基地局
11 分散アンテナ
12 ケーブル
13 アンテナ切替部
14 信号送信部
15 信号受信部
16 RTT測定部
17 RSSI測定部
18 時計
20 無線端末局
21 アンテナ
22 信号受信部
23 信号送信部
24 制御部
25 時計
30 位置推定サーバ
31 測定値統計処理部
32 座標計算部
33 座標安定化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10