特開2019-207405(P2019-207405A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-207405赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-207405(P2019-207405A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバー
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20191108BHJP
   C01G 41/00 20060101ALI20191108BHJP
   H01J 61/35 20060101ALI20191108BHJP
   H01K 1/32 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   G02B5/22
   C01G41/00 A
   H01J61/35
   H01K1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-97945(P2019-97945)
(22)【出願日】2019年5月24日
(31)【優先権主張番号】特願2018-101861(P2018-101861)
(32)【優先日】2018年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】常松 裕史
(72)【発明者】
【氏名】長南 武
【テーマコード(参考)】
2H148
4G048
5C043
【Fターム(参考)】
2H148CA01
2H148CA05
2H148CA12
2H148CA18
2H148CA29
4G048AA03
4G048AB04
4G048AC08
4G048AD04
4G048AE05
4G048AE08
5C043AA20
(57)【要約】
【課題】湿熱環境に曝されても優れた赤外線吸収特性を維持する赤外線吸収微粒子を用いて、湿熱環境に曝されても優れた赤外線放射の抑制効果を発揮する赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーを提供する。
【解決手段】ランプの表面に、表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が形成されている赤外線吸収ランプあって、前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されている赤外線吸収ランプ、赤外線吸収ランプカバー、および、それらの製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプの表面に、表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が形成されている赤外線吸収ランプあって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されていることを特徴とする赤外線吸収ランプ。
【請求項2】
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の赤外線吸収ランプ。
【請求項3】
前記金属キレート化合物または前記環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種類以上を有することを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線吸収ランプ。
【請求項4】
前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の赤外線吸収ランプ。
【請求項5】
前記複合タングステン酸化物微粒子のMが、Cs、K、Rb、Tl、In、Baのうちから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする請求項4に記載の赤外線吸収ランプ。
【請求項6】
前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶構造を有することを特徴とする請求項1から5の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプ。
【請求項7】
前記ランプの表面に形成されている表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が、固体媒質を含む層であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の赤外線吸収ランプ。
【請求項8】
前記固体媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする請求項7に記載の赤外線吸収ランプ。
【請求項9】
前記固体状樹脂がフッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項8の発明に記載の赤外線吸収ランプ。
【請求項10】
ランプからの赤外線放射を抑制する赤外線吸収ランプカバーであって、
前記赤外線吸収ランプカバーの表面には、表面処理赤外線吸収微粒子を含有する層が形成されており、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されていることを特徴とする赤外線吸収ランプカバー。
【請求項11】
カバー部材として、表面処理赤外線吸収微粒子が分散した赤外線吸収基材を用いたランプカバーであって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されていることを特徴とする赤外線吸収ランプカバー。
【請求項12】
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の赤外線吸収ランプカバー。
【請求項13】
前記金属キレート化合物または前記環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種類以上を有することを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバー。
【請求項14】
前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバー。
【請求項15】
前記複合タングステン酸化物微粒子のMが、Cs、K、Rb、Tl、In、Baのうちから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする請求項14に記載の赤外線吸収ランプカバー。
【請求項16】
前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶構造を有することを特徴とする請求項10から15の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバー。
【請求項17】
カバーの表面に形成され、表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層、または、表面処理赤外線吸収微粒子が分散した赤外線吸収基材が、固体媒質を含むことを特徴とする請求項10から16のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバー。
【請求項18】
前記固体媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする請求項17に記載の赤外線吸収ランプカバー。
【請求項19】
前記固体状樹脂がフッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項18に記載の赤外線吸収ランプカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線放射が抑制された赤外線吸収ランプ、およびランプから放射される赤外線を抑制する赤外線吸収ランプカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外線吸収体の需要が急増しており、赤外線吸収体に関し多くの提案が為されている。
これらの提案を機能的観点から俯瞰してみる。すると、例えば、各種建築物や車両の窓材等の分野において、可視光線を十分に取り入れながら近赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的としたものがある。また、PDP(プラズマディスプレイパネル)から前方に放射される赤外線が、コードレスフォンや家電機器のリモコンに誤動作を引き起こしたり、伝送系光通信に悪影響を及ぼしたりすることを防止することを目的としたもの、等もある。
このような状況の下、近年の技術進歩に伴い、照明等に使われるランプから放射される赤外線に起因するリモコンの誤動作や伝送系光通信への影響等が、解決すべき課題となってきた。
【0003】
一方、これらの赤外線に起因する課題を解決する手法を、遮光部材の観点から俯瞰してみる。
すると、例えば窓材等に使用される遮光部材として、可視光領域から近赤外線領域に吸収特性があるカーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料、そして、可視光領域のみに強い吸収特性のあるアニリンブラック等の有機顔料等を含む黒色系顔料を含有する遮光フィルム、さらに、アルミ等の金属を蒸着したハーフミラータイプ、といった各種の遮光部材が提案されている。
【0004】
先行技術文献として、例えば特許文献1では、透明なガラス基板上に、基板側より第1層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族およびVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合酸化タングステン膜を設け、当該第1層上に第2層として透明誘電体膜を設け、当該第2層上に第3層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族およびVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合酸化タングステン膜を設け、且つ、前記第2層の透明誘電体膜の屈折率を前記第1層および前記第3層の複合酸化タングステン膜の屈折率よりも低くすることにより、高い可視光透過率および良好な赤外線遮断性能が要求される部位に好適に使用することが出来る赤外線遮断ガラスが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では特許文献1と同様の方法で、透明なガラス基板上へ、基板側より第1層として第1の誘電体膜を設け、当該第1層上に第2層として酸化タングステン膜を設け、当該第2層上に第3層として第2の誘電体膜を設けた赤外線遮断ガラスが提案されている。
【0006】
また、特許文献3では特許文献1と同様な方法で、透明なガラス基板上へ、基板側より第1層として特許文献1と同様の金属元素を含有する複合酸化タングステン膜を設け、当該第1層上に第2層として透明誘電体膜を設けた熱線遮断ガラスが提案されている。
【0007】
また、特許文献4では、水素、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等の添加元素を含有する、三酸化タングステン(WO)、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)、五酸化バナジウム(V)および二酸化バナジウム(VO)の1種以上から選択される金属酸化物膜が、CVD法またはスプレー法で被覆された後、250℃程度で熱分解されることにより形成された、太陽光遮蔽特性を有する太陽光制御ガラスシートが提案されている。
【0008】
また、特許文献5には、タングステン酸を加水分解して得られた酸化タングステンを用い、当該酸化タングステンに、ポリビニルピロリドンという特定の構造の有機ポリマーを添加した太陽光可変調光断熱材料が提案されている。当該太陽光可変調光断熱材料は太陽光が照射されると、光線中の紫外線が酸化タングステンに吸収されて励起電子とホールとが発生し、少量の紫外線量により5価タングステンの出現量が著しく増加して着色反応が速くなり、これに伴って着色濃度が高くなるものである。他方、光が遮断されることによって、前記5価タングステンが極めて速やかに6価に酸化されて消色反応が高くなるものである。当該着色/消色特性を用い、太陽光に対する着色および消色反応が速く、着色時に近赤外域の波長1250nmに吸収ピークが現れ、太陽光の近赤外線を遮断することが出来る太陽光可変調光断熱材料が得られることが提案されている。
【0009】
一方、本発明者等は特許文献6において、六塩化タングステンをアルコールに溶解し、そのまま媒質を蒸発させるか、または加熱還流した後、媒質を蒸発させ、その後100℃〜500℃で加熱することにより、三酸化タングステンまたはその水和物または両者の混合物からなる酸化タングステン微粒子粉末を得ることを開示した。そして、当該酸化タングステン微粒子を用いてエレクトロクロミック素子が得られること、多層の積層体を構成し膜中にプロトンを導入したときに当該膜の光学特性を変化させることが出来ること、等を開示した。
【0010】
また、特許文献7には、メタ型タングステン酸アンモニウムと水溶性の各種金属塩とを原料とし、その混合水溶液の乾固物を約300〜700℃の加熱温度で加熱し、この加熱の際に不活性ガス(添加量;約50vol%以上)または水蒸気(添加量;約15vol%以下)を添加した水素ガスを供給することにより、一般式MWO(但し、Mはアルカリ、アルカリ土類、希土類などの金属元素、0<x<1)で表される種々のタングステンブロンズを作製する方法が提案されている。そして、当該操作を支持体上で実施して種々のタングステンブロンズ被覆複合体を製造し、燃料電池等の電極触媒材料として用いることが提案されている。
【0011】
そして、本発明者等は特許文献8において、赤外線遮蔽材料微粒子が媒質中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体、当該赤外線遮蔽材料微粒子分散体の光学特性、導電性、製造方法について開示した。当該赤外線遮蔽材料微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子であって、当該赤外線遮蔽材料微粒子の粒子直径は1nm以上800nm以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−59300号公報
【特許文献2】特開平8−12378号公報
【特許文献3】特開平8−283044号公報
【特許文献4】特開2000−119045号公報
【特許文献5】特開平9−127559号公報
【特許文献6】特開2003−121884号公報
【特許文献7】特開平8−73223号公報
【特許文献8】国際公開第2005/37932号
【特許文献9】国際公開第2010/55570号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、本発明者らが開示した特許文献8に係る遮光部材を用いて、赤外線放射が抑制された赤外線吸収ランプや、ランプから放射される赤外線を抑制する赤外線吸収ランプカバーを作製することを考えた。
しかしながら発明者らの検討によると、上述したタングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を含む光学部材(透明基材、フィルム、樹脂シート等)は、使用状況や方法により、空気中の水蒸気や水分が当該光学部材のコーティング層や固体状樹脂中へ徐々に浸透することを知見した。そして、水蒸気や水分がコーティング層や固体状樹脂中へ浸透すると、前記タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子の表面が分解し、波長200〜2600nmの光の透過率が経時的に上昇してしまい、前記光学部材の赤外線吸収性能が徐々に低下するという課題があることを知見した。特に、表面活性の高いタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子ほど、当該分解劣化による赤外線吸収効果の損失割合は大きいということも知見した。
尚、本発明において「コーティング層」とは、基材上に所定の膜厚をもって形成された室温で固体の媒質膜のことである。
また、本発明において「固体状樹脂」とは室温で固体の高分子媒質のことであり、三次元架橋したもの以外の高分子媒質も含む。また、本発明において室温で固体の高分子媒質を「マトリクス樹脂」と記載する場合もある。
【0014】
上述の状況の下、本発明者等は特許文献9において、耐水性に優れ、且つ、優れた赤外線遮蔽特性を有する赤外線遮蔽微粒子として、一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物または/および一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子であって、当該微粒子の平均一次粒径が1nm以上、800nm以下であり、当該微粒子表面が4官能性シラン化合物もしくはその部分加水分解生成物、または/および、有機金属化合物で被覆されている赤外線遮蔽微粒子とその製造方法とを開示した。
【0015】
上述した特許文献9に係るタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子は、耐水性に優れたものであった。しかしながら、赤外線カットフィルタ機能を備えた赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバーに用いられる赤外線吸収材料は、高い湿熱環境を初めとする多様な環境下において、長期間に渡って使用されるものである。そして、市場での要求が年々高まっていくにつれて、特許文献9で開示した赤外線遮蔽微粒子やそれを用いた赤外線吸収透明基材であっても、耐湿熱性の更なる改善が求められることになった。
【0016】
本発明は上述の状況の下になされたものであり、その課題とするところは、湿熱環境に曝されても優れた赤外線吸収特性を維持する赤外線吸収微粒子を含み、湿熱環境に曝されても優れた赤外線放射の抑制効果を発揮する赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は上述の課題の解決の為、優れた光学的特性を有する赤外線吸収微粒子を用い、当該赤外線吸収微粒子の耐湿熱性および化学安定性を向上させることを可能にする構成について研究を行った。その結果、当該赤外線吸収微粒子表面との親和性に優れ、且つ、当該赤外線吸収微粒子の個々の粒子表面に対して均一に吸着し、強固な被覆膜を形成する化合物を用いて、当該個々の赤外線吸収微粒子の表面を被覆することが肝要なことに想到した。
【0018】
本発明者等はさらに研究を続け、上述した赤外線吸収微粒子において親和性に優れ、被覆膜を形成する化合物として、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物に想到した。そして、さらなる研究の結果、当該金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物が加水分解したときに生成する、これらの化合物の加水分解生成物、または、当該加水分解生成物の重合物が、赤外線吸収微粒子の個々の粒子表面に対して均一に吸着し、且つ、強固な被覆膜を形成する化合物であることを知見した。
【0019】
即ち、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されている赤外線吸収微粒子(本発明において「表面処理赤外線吸収微粒子」と記載する場合がある。)に想到したものである。そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子は、湿熱環境に曝されても赤外線吸収効果が維持されていることを知見した。
そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子として、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が好ましいことを知見し、さらに、当該表面処理赤外線吸収微粒子を用いて製造したランプおよびランプカバーは、湿熱環境に曝されても優れた赤外線の放出抑制を維持するものであることを知見して、本発明に至った。
【0020】
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
ランプの表面に、表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が形成されている赤外線吸収ランプあって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されていることを特徴とする赤外線吸収ランプである。
第2の発明は、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする第1の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第3の発明は、
前記金属キレート化合物または前記環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種類以上を有することを特徴とする第1または第2の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第4の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプである。
第5の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子のMが、Cs、K、Rb、Tl、In、Baのうちから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする第4の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第6の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶構造を有することを特徴とする第1から第5の発のいずれかに記載の赤外線吸収ランプである。
第7の発明は、
前記ランプの表面に形成されている表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層が、固体媒質を含む層であることを特徴とする第1から第6の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプである。
第8の発明は、
前記固体媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする第7の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第9の発明は、
前記固体状樹脂がフッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする第8の発明に記載の赤外線吸収ランプである。
第10の発明は、
ランプからの赤外線放射を抑制する赤外線吸収ランプカバーであって、
前記赤外線吸収ランプカバーの表面には、表面処理赤外線吸収微粒子を含有する層が形成されており、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されていることを特徴とする赤外線吸収ランプカバーである。
第11の発明は、
カバー部材として、表面処理赤外線吸収微粒子が分散した赤外線吸収基材を用いたランプカバーであって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種類以上を含む膜で被覆されていることを特徴とする赤外線吸収ランプカバーである。
第12の発明は、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする第10または第11の発明に記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第13の発明は、
前記金属キレート化合物または前記環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種類以上を有することを特徴とする第10から第12の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第14の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする第10から第13の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第15の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子のMが、Cs、K、Rb、Tl、In、Baのうちから選択される1種類以上の元素であることを特徴とする第14の発明に記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第16の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶構造を有することを特徴とする第10から第15の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第17の発明は、
カバーの表面に形成され、表面処理赤外線吸収微粒子を含有している層、または、表面処理赤外線吸収微粒子が分散した赤外線吸収基材が、固体媒質を含むことを特徴とする第10から第16の発明のいずれかに記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第18の発明は、
前記固体媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする第17の発明に記載の赤外線吸収ランプカバーである。
第19の発明は、
前記固体状樹脂がフッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする第18の発明に記載の赤外線吸収ランプカバーである。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、湿熱環境に曝されても優れた赤外線放射の抑制効果を発揮する、赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーを得ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物における結晶構造の模式的な平面図である。
図2】実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子の30万倍の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る赤外線吸収ランプは、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含む層がランプ表面(電球表面)に設けられたものである。
また、本発明に係る赤外線吸収ランプカバーは、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含む層がランプカバー表面に設けられたもの、または、表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質中に分散した赤外線吸収基材をランプカバーとしたものである。
そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されている表面処理赤外線吸収微粒子である。さらに、当該赤外線吸収微粒子は、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子であることが好ましい。
本発明に係る赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーは、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を用いることで、湿熱環境に曝されても優れた赤外線放射の抑制効果を発揮するものである。
【0024】
以下、本発明に係る赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーを、[1]赤外線吸収微粒子、[2]赤外線吸収微粒子の表面処理剤、[3]赤外線吸収微粒子の表面被覆方法、[4]本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を用いて得られる赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体、赤外線吸収基材、[5]赤外線吸収ランプ、赤外線吸収ランプカバー、の順で詳細に説明する。
尚、本発明において、「赤外線吸収微粒子へ耐湿熱性を付与する為に、当該微粒子の表面へ、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を用いて形成した被覆膜」を、単に「被覆膜」と記載する場合がある。
【0025】
[1]赤外線吸収微粒子
本発明に係る赤外線吸収透明基材、表面処理赤外線吸収微粒子分散液および表面処理赤外線吸収微粒子粉末に用いられる赤外線吸収微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される赤外線吸収微粒子であることが好ましい。
【0026】
以下、タングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子を例として、本発明に係る赤外線吸収微粒子について説明する。
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmの太陽光線の領域周辺の電磁波に反射吸収応答を示すことが知られている。このような物質の粉末を、光の波長より小さい粒子にすると、可視光領域(波長380nmから780nm)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られることが知られている。
尚、本発明において「透明性」とは、「可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高い。」という意味で用いている。
【0027】
一般に、タングステン酸化物(WO)中には有効な自由電子が存在しない為、赤外線領域の吸収反射特性が少なく、赤外線吸収微粒子としては有効ではない。しかしながら、酸素欠損を持つWOや、WOにNa等の陽性元素を添加した複合タングステン酸化物の構成をとることで、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現することが知られている。そして、これらの自由電子を持つ材料の単結晶等の分析により、赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。
本発明者等は、当該タングステンと酸素との組成範囲の特定部分において、赤外線吸収微粒子として特に有効な範囲があることを見出し、可視光領域においては透明で、赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子に想到した。
ここで、本発明に係る赤外線吸収微粒子の例であるタングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子について、(1)タングステン酸化物微粒子、(2)複合タングステン酸化物微粒子、(3)タングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子、の順で説明する。
【0028】
(1)タングステン酸化物微粒子
本発明に係るタングステン酸化物微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子である。
【0029】
一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物において、当該タングステンと酸素との組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3よりも少なく、さらには、当該赤外線吸収微粒子をWyOzと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999であることが好ましい。
当該z/yの値が2.2以上であれば、当該タングステン酸化物中に目的以外であるWOの結晶相が現れるのを回避することが出来ると伴に、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線吸収微粒子となる。一方、当該z/yの値が2.999以下であれば、必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線吸収微粒子となる。
【0030】
(2)複合タングステン酸化物微粒子
上述した当該複合タングステン酸化物(WO)へ、後述する元素Mを添加したものが複合タングステン酸化物である。そして、当該WOに対し酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用することで、より効率の良い赤外線吸収微粒子を得ることが出来る。当該構成をとることで、複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、特に近赤外線領域に自由電子由来の強い吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収微粒子として有効となる。
この酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用した赤外線吸収微粒子の一般式をMxWyOz(但し、Mは、前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と記載したとき、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0の関係を満たす赤外線吸収微粒子が望ましい。
【0031】
ここで、上記複合タングステン酸化物における元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上であることが好ましい。
【0032】
さらに、元素Mを添加された当該MxWyOzにおける安定性の観点から、元素Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reのうちのうちから選択される1種類以上の元素であることがより好ましい。そして、赤外線吸収微粒子としての光学特性、耐候性を向上させる観点から、元素Mは、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、4B族元素、5B族元素に属するものであることがさらに好ましい。
【0033】
元素Mの添加量を示すx/yの値については、x/yの値が0.001より大きければ、複合タングステン酸化物において十分な量の自由電子が生成され目的とする赤外線吸収効果を得ることが出来る。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線吸収効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該赤外線吸収微粒子中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
【0034】
また、酸素量の制御を示すz/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物においても、上述したWyOzで表記されるタングステン酸化物と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0や2.0≦z/y≦2.2においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給がある。この為、2.0≦z/y≦3.0が好ましく、より好ましくは2.2≦z/y≦3.0、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
【0035】
さらに、当該複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過が向上し、赤外領域の吸収が向上する。この六方晶の結晶構造の模式的な平面図である図1を参照しながら説明する。
図1において、符号11で示すWO単位にて形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に、符号12で示す元素Mが配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。
そして、可視光領域における光の透過を向上させ、赤外領域における光の吸収を向上させる効果を得る為には、複合タングステン酸化物微粒子中に、図1を用いて説明した単位構造が含まれていれば良く、当該複合タングステン酸化物微粒子が結晶質であっても非晶質であっても構わない。
【0036】
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、上述した元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域における光の透過が向上し、赤外領域における光の吸収が向上する。ここで一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され易い。具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの中から選択される1種類以上の元素、より好ましくはCs、K、Rb、Tl、In、Baの中から選択される1種類以上の元素を添加したとき六方晶が形成され易い。典型的な例としてはCs0.33WO、Cs0.03Rb0.30WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WO(2.0≦z≦3.0)などを、好ましく挙げることができる。勿論これら以外の元素でも、WO単位で形成される六角形の空隙に上述した元素Mが存在すれば良く、上述の元素に限定される訳ではない。
【0037】
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、上述した元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
【0038】
また、六方晶以外であって、正方晶、立方晶の複合タングステン酸化物も赤外線吸収微粒子として有効である。結晶構造によって、赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶<正方晶<六方晶の順に、吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光線領域の吸収が少ないのは、六方晶、正方晶、立方晶の順である。従って、より可視光領域の光を透過し、より赤外線領域の光を吸収する用途には、六方晶の複合タングステン酸化物を用いることが好ましい。ただし、ここで述べた光学特性の傾向は、あくまで大まかな傾向であり、添加元素の種類や、添加量、酸素量によって変化するものであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0039】
(3)タングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子
本発明に係る赤外線吸収微粒子は、上述したタングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子を含有する。そして本発明にかかる赤外線吸収微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
【0040】
そして、本発明に係る赤外線吸収微粒子はその粒子径が1nm以上800nm以下であることが好ましいが、100nm以下のものであることがさらに好ましい。そして、より優れた赤外線吸収特性を発揮させる観点から、当該微粒子の粒子径は10nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上80nm以下、最も好ましくは10nm以上60nm以下である。粒子径が10nm以上60nm以下の範囲であれば、最も優れた赤外線吸収微特性が発揮されることを知見した。
ここで、粒子径とは凝集していない個々の赤外線吸収微粒子がもつ径の平均値であり、後述する赤外線吸収透明基材、表面処理赤外線吸収微粒子分散液、表面処理赤外線吸収微粒子粉末に含まれる赤外線吸収微粒子の平均粒径である。尚、粒子径は、赤外線吸収微粒子の電子顕微鏡像から算出される。
【0041】
一方、本発明に係る赤外線吸収微粒子の分散粒子径は、その使用目的によって各々選定することが出来る。そして、分散粒子径は、上述した粒子径とは異なり凝集体の粒径も含む概念である。
本発明に係る赤外線吸収微粒子を、透明性を保持したい応用に使用する場合は、800nm以下の分散粒子径を有していることが好ましい。これは、分散粒子径が800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
【0042】
この粒子による散乱の低減を重視するとき、分散粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下が良い。この理由は、粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm〜780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、赤外線吸収膜が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できる。即ち、分散粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に比例しているため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。
さらに分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
【0043】
上記分散粒子径を800nm以下とすることにより、本発明に係る赤外線吸収微粒子を媒質中に分散させた赤外線吸収微粒子分散体のヘイズ値は、可視光透過率85%以下でヘイズ30%以下とすることができる。ヘイズが30%よりも大きい値であると、曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られない。
尚、赤外線吸収微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS−8000等を用いて測定することができる。
【0044】
また、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子において、2.45≦z/y≦2.999で表される組成比を有する、所謂「マグネリ相」は化学的に安定であり、赤外線領域の吸収特性も良いので、赤外線吸収微粒子として好ましい。
また、優れた赤外線吸収特性を発揮させる観点から、赤外線吸収微粒子の結晶子径は1nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上60nm以下である。結晶子径の測定には、粉末X線回折法(θ―2θ法)によるX線回折パターンの測定と、リートベルト法による解析を用いる。X線回折パターンの測定には、例えばスペクトリス株式会社PANalytical製の粉末X線回折装置「X’Pert−PRO/MPD」などを用いて行うことができる。
【0045】
[2]赤外線吸収微粒子の表面処理剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面被覆に用いる表面処理剤は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上である。
そして、当該金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物は、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレートであることが好ましい観点から、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することが好ましい。
ここで、本発明に係る表面処理剤について、(1)金属キレート化合物、(2)金属環状オリゴマー化合物、(3)金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、および、それらの重合物、(4)表面処理剤の添加量、の順で説明する。
【0046】
(1)金属キレート化合物
本発明に用いる金属キレート化合物は、アルコキシ基を含有するAl系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系のキレート化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0047】
アルミニウム系のキレート化合物としては、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウムアルコレートまたはこれら重合物、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、ステアリルアセトアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等、を例示することが出来る。
これらの化合物は、アルミニウムアルコレートを非プロトン性溶媒や、石油系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤等に溶解し、この溶液に、β−ジケトン、β−ケトエステル、一価または多価アルコール、脂肪酸等を加えて、加熱還流し、リガンドの置換反応により得られた、アルコキシ基含有のアルミニウムキレート化合物である。
【0048】
ジルコニア系のキレート化合物としては、ジルコニウムエチレート、ジルコニウムブチレートなどのジルコニウムアルコレートまたはこれら重合物、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等、を例示することが出来る。
【0049】
チタン系のキレート化合物としては、メチルチタネート、エチルチタネート、イソプロピルチタネート、ブチルチタネート、2−エチルヘキシルチタネートなどのチタンアルコレートやこれら重合物、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等、を例示することが出来る。
【0050】
シリコン系のキレート化合物としては、一般式Si(OR)(但し、Rは、同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基)で示される4官能性シラン化合物またはその加水分解生成物を用いることが出来る。4官能性シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。さらに、これらアルコキシシランモノマーのアルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解し、シラノール基(Si−OH)となったシランモノマー(あるいはオリゴマー)、および、加水分解反応を経て自己縮合した重合体の適用も可能である。
また、4官能性シラン化合物の加水分解生成物(4官能性シラン化合物の加水分解生成物全体の意味である。)としては、アルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解して、シラノール(Si−OH)基となったシランモノマー、4〜5量体のオリゴマー、および、重量平均分子量(Mw)が800〜8000程度の重合体(シリコーンレジン)が挙げられる。尚、アルコキシシランモノマー中のアルコキシシリル基(Si−OR)は、加水分解反応の過程において、その全てが加水分解してシラノール基(Si−OH)になるわけではない。
【0051】
亜鉛系のキレート化合物としては、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛などの有機カルボン酸亜鉛塩、アセチルアセトン亜鉛キレート、ベンゾイルアセトン亜鉛キレート、ジベンゾイルメタン亜鉛キレート、アセト酢酸エチル亜鉛キレート等、を好ましく例示することが出来る。
【0052】
(2)金属環状オリゴマー化合物
本発明に係る金属環状オリゴマー化合物としては、Al系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系の環状オリゴマー化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。中でも、環状アルミニウムオキサイドオクチレート、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドステアレート等、の環状アルミニウムオリゴマー化合物を好ましく例示することができる。
【0053】
(3)金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、および、それらの重合物
本発明では、上述した金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物における、アルコキシ基、エーテル結合、エステル結合の全量が加水分解し、ヒドロキシル基やカルボキシル基となった加水分解生成物、一部が加水分解した部分加水分解生成物、または/および、当該加水分解反応を経て自己縮合した重合物を、本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面に被覆して被覆膜とし、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を得るものである。
即ち、本発明における加水分解生成物は、部分加水分解生成物を含む概念である。
【0054】
但し、例えば、アルコール等の有機溶媒が介在するような反応系においては、一般的に化学量論組成上、必要十分な水が系内に存在していたとしても、当該有機溶媒の種類や濃度により、出発物質となる金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物のアルコキシ基やエーテル結合やエステル結合の全てが加水分解するわけではない。従って、後述する表面被覆方法の条件によっては、加水分解後であってもその加水分解生成物の分子内に炭素Cを取り込んだアモルファス状態になることがある。
その結果、被覆膜には、未分解の金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物が含有される場合があるが、微量であれば特に問題はない。
【0055】
(4)表面処理剤の添加量
上述した金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の添加量は、赤外線吸収微粒子100質量部に対して、金属元素換算で0.05質量部以上、1000質量部以下であることが好適である。より好ましくは5質量部以上500質量部以下、最も好ましくは5質量部以上50質量部以下の範囲である。
【0056】
これは、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が0.05質量部以上あれば、それらの化合物の加水分解生成物や、当該加水分解生成物の重合物が、赤外線吸収微粒子の表面を被覆する効果が発揮され耐湿熱性向上の効果が得られるからである。
また、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が1000質量部以下であれば、赤外線吸収微粒子に対する吸着量が過剰になることを回避出来る。また、表面被覆による耐湿熱性の向上が飽和せず、被覆効果の向上が望めるからである。
さらに、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が1000質量部以下であることで、赤外線吸収微粒子に対する吸着量が過剰になり、媒質除去時に当該金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物や、当該加水分解生成物の重合物を介して微粒子同士が造粒し易くなることを回避出来るからである。当該微粒子同士による望まれない造粒の回避によって、良好な透明性を担保することが出来る。
加えて、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物の過剰による、添加量および処理時間の増加による生産コスト増加も回避出来る。よって工業的な観点からも金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の添加量は、1000質量部以下とすることが好ましい。
【0057】
[3]赤外線吸収微粒子の表面被覆方法
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面被覆方法においては、まず、赤外線吸収微粒子を適宜な媒質中に分散させた被覆膜形成用の赤外線吸収微粒子分散液(本発明において「被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。)を調製する。そして、調製された被覆膜形成用分散液中へ表面処理剤を添加して混合攪拌を行う。すると、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆される。
ここで、本発明に係る表面被覆方法について、(1)被覆膜形成用分散液の調製、(2)水を媒質とする被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面処理方法、(3)水を含む有機溶剤を用いた被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面被覆方法、(4)被覆膜の膜厚、(5)被覆膜形成用分散液における混合攪拌後の処理、の順で説明する。
【0058】
(1)被覆膜形成用分散液の調製
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面へ被覆を施し、表面処理赤外線吸収微粒子を製造するには、まず、赤外線吸収微粒子を水、または、水を含む有機溶媒中に分散させて被覆膜形成用の赤外線吸収微粒子分散液(本発明において「被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。)を調製する。
一方、「[2]赤外線吸収微粒子の表面処理剤」にて説明した表面処理剤を調製する。
そして被覆膜形成用分散液を混合攪拌しながら、ここへ表面処理剤を添加する。すると、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されるものである。
【0059】
本発明に係る被覆膜形成用分散液の調製においては、赤外線吸収微粒子である、例えばタングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物を予め細かく粉砕して、水、または、水を含む適宜な有機溶媒中に分散させ、単分散の状態にしておくことが好ましい。このとき、タングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物の分散濃度としては、0.01質量%以上80質量%以下であることが好ましい。この分散濃度範囲であれば、分散液の液安定性は優れる。また、適切な液状媒体や、分散剤、カップリング剤、界面活性剤を選択した場合は、温度40℃の恒温槽に入れたときでも6ヶ月以上分散液のゲル化や粒子の沈降が発生せず、分散粒子径を1〜200nmの範囲に維持出来る。
そして、この粉砕、分散処理工程中において分散状態を担保し、微粒子同士を凝集させないことが肝要である。これは、次工程である赤外線吸収微粒子の表面処理の過程において、当該赤外線吸収微粒子が凝集を起こして凝集体の状態で表面被覆され、ひいては、後述する赤外線吸収微粒子分散体中においても当該凝集体が残存し、後述する赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の透明性が低下する事態を回避する為である。
【0060】
当該粉砕・分散処理の具体的方法としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどの装置を用いた粉砕・分散処理方法が挙げられる。その中でも、ビーズ、ボール、オタワサンドといった媒体メディアを用いた、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体攪拌ミルで粉砕、分散処理を行うことは、所望の分散粒子径に到達することに要する時間が短いことから好ましい。
【0061】
調製された被覆膜形成用分散液を混合攪拌しながら表面処理剤を添加する。このとき、被覆膜形成用分散液を水、または水を含む適宜な有機溶媒により適宜な濃度まで希釈することが望ましい。赤外線吸収微粒子であるタングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物の分散濃度が0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下となるまで希釈すれば、赤外線吸収微粒子の全てが均一に表面被覆されるからである。
【0062】
(2)水を媒質とする被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面処理方法
本発明者らは、上述した被覆膜形成用分散液の調製において、水を媒質とする被覆膜形成用分散液を攪拌混合しながら、ここへ、本発明に係る表面処理剤を添加し、さらに、添加された金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解反応を即座に完了させるのが好ましいことを知見した。
尚、赤外線吸収微粒子を均一に表面被覆する観点から、表面処理剤は滴下添加することが好ましい。
これは、添加した本発明に係る表面処理剤の反応順序が影響していると考えられる。即ち、水を媒質とする被覆膜形成用分散液中においては、表面処理剤の加水分解反応が必ず先立ち、その後に、生成した加水分解生成物の重合反応が起こる。この結果、水を媒質としない場合に比較して、被覆膜中に存在する表面処理剤分子内の炭素C残存量を低減することが出来るからであると考えられる。当該被覆膜中に存在する表面処理剤分子内の炭素C残存量を低減することで、個々の赤外線吸収微粒子の表面を高密度に被覆する被覆膜を形成することが出来たと考えている。
この表面処理剤の滴下添加の際、当該表面処理剤の時間当たりの添加量を調整する為に、表面処理剤自体を適宜な溶剤で希釈したものを滴下添加することも好ましい。希釈に用いる溶剤としては、当該表面処理剤と反応せず、被覆膜形成用分散液の媒質である水とも相溶性の高いものが好ましい。具体的にはアルコール系、ケトン系、グリコール系等の溶剤が好ましく使用出来る。
表面処理剤の希釈倍率は特に限定されるものではない。尤も、生産性を担保する観点から、希釈倍率は100倍以下とするのが好ましい。
【0063】
尚、上述した水を媒質とする被覆膜形成用分散液中において、金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物、これらの加水分解生成物、当該加水分解生成物の重合物は、添加直後に金属イオンにまで分解されるが、飽和水溶液となったところで、当該金属イオン迄の分解は終了する。
一方、当該水を媒質とする被覆膜形成用分散液中において、本発明に係る赤外線吸収微粒子は静電反発によって分散を保っている。
その結果、全ての赤外線吸収微粒子の表面は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆され、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が生成すると考えられる。
【0064】
(3)水を含む有機溶剤を用いた被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面被覆方法
上述した水を媒質とする被覆膜形成用分散液の調製法の変形例として、被覆膜形成用分散液の媒質として水を含む有機溶剤を用い、添加する水量を適宜な値に調整しながら上述した反応順序を実施する方法も好ましい。
当該調製方法は、後工程の都合により被覆膜形成用分散液中に含まれる水分量を低減したい場合に好適である。
具体的には、有機溶剤を媒質とする被覆膜形成用分散液を攪拌混合しながら、本発明に係る表面処理剤と純水とを並行滴下するものである。このとき、反応速度に影響する媒質温度や、表面処理剤と純水との滴下速度を適宜に制御する。尚、有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、グリコール系等、の室温で水に溶解する溶剤であれば良く、種々のものを選択することが可能である。
そして、当該「(3)水を含む有機溶剤を用いた被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面被覆方法」においても、表面処理剤の滴下添加の際、当該表面処理剤の時間当たりの添加量を調整する為に、表面処理剤自体を適宜な溶剤で希釈したものを滴下添加することが好ましい。この場合、希釈に用いる溶剤としては、当該表面処理剤と反応せず、被覆膜形成用分散液の媒質である水を含む有機溶剤と相溶性の高いものが好ましい。具体的にはアルコール系、ケトン系、グリコール系等の溶剤が好ましく使用出来る。
尚、表面処理剤として市販品の金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物を用いる場合の対応や、表面処理剤の希釈倍率については、前記「(2)水を媒質とする被覆膜形成用分散液を用いた赤外線吸収微粒子の表面処理方法」の場合と同様である。
【0065】
(4)被覆膜の膜厚
本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚は0.5nm以上あることが好ましい。これは、当該被覆膜の膜厚が0.5nm以上あれば、当該表面処理赤外線吸収微粒子が十分な耐湿熱性および化学安定性を発揮すると考えられるからである。一方、当該表面処理赤外線吸収微粒子が所定の光学的特性を担保する観点から、当該被覆膜の膜厚は100nm以下であることが好ましいと考えられる。
以上より、当該被覆膜の膜厚は0.5nm以上20nm以下であることがより好ましく、1nm以上10nm以下であればさらに好ましい。
【0066】
尚、被覆膜の膜厚は、表面処理赤外線吸収微粒子の透過型電子顕微鏡像から測定することができる。例えば、後述する図2に示す、実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子の30万倍の透過型電子顕微鏡像において、2本の平行する実線で挟まれた、赤外線吸収微粒子の格子縞(結晶中の原子の並び)が観察されない部分が被覆膜に相当する。
【0067】
(5)被覆膜形成用分散液における混合攪拌後の処理
上述した表面被覆方法にて得られた本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の原料として、微粒子状態、液体媒質または固体媒質に分散された状態で用いることが出来る。
即ち、生成した表面処理赤外線吸収微粒子は、さらに加熱処理を施して被覆膜の密度や化学的安定性を高めるといった操作は必要ない。当該加熱処理をせずとも既に所望の耐湿熱性を得られる程、当該被覆膜の密度や密着性は十分に高まっているからである。
【0068】
以上、説明したように、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子は、混合攪拌後の処理の後に加熱処理を必要としないので凝集を起こさず、従って当該凝集を解砕する為の分散処理が不要である。この結果、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜は、個々の赤外線吸収微粒子を傷付けることなく被覆している。そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子を用いて製造される赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材は、従来の方法で得られるものよりも、優れた耐湿熱性を示すと考えられる。
【0069】
尤も、被覆膜形成用分散液から表面処理赤外線吸収微粒子の粉末を得る目的、得られた表面処理赤外線吸収微粒子粉末を乾燥する目的、等により被覆膜形成用分散液や表面処理赤外線吸収微粒子粉末を加熱処理することは可能である。しかし、この場合、加熱処理温度を、表面処理赤外線吸収微粒子が凝集して凝集体を形成する温度を超えないように留意する。
これは、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が、最終的に用いられる赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材においては、それらの用途から、多くの場合は透明性が求められる為である。しかしながら、赤外線吸収材料として凝集体を用いて、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材を作製すると、曇り度(ヘイズ)の高いものが得られてしまう場合がある。
そこで、当該事態を回避する為には、当該状凝集体を乾式または/および湿式で解砕して再分散させることとなる。そこで、表面処理赤外線吸収微粒子の表面にある被覆膜が傷付いたり、被覆膜が剥離したりしないよう、再分散条件を検討することが好ましい。
【0070】
[4]本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を用いて得られる赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体、赤外線吸収基材
以下、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を用いて得られる赤外線吸収微粒子分散体、赤外線吸収基材、について、(1)赤外線吸収微粒子分散液、(2)赤外線吸収微粒子分散体、(3)赤外線吸収基材、の順に説明する。
【0071】
(1)赤外線吸収微粒子分散液
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液は、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が液体媒質中に分散しているものである。当該液体媒質としては、有機溶媒、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水、から選択される1種以上の液体媒質を用いることが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液について(i)製造方法、(ii)使用する有機溶剤、(iii)使用する油脂、(iv)使用する液状可塑剤、(v)使用する硬化により高分子化される化合物、(vi)使用する分散剤、(vii)赤外線吸収微粒子分散液の使用方法、の順に説明する。
【0072】
(i)製造方法
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液を製造するには、上述した被覆膜形成用分散液を、表面処理赤外線吸収微粒子の凝集を回避出来る条件での加熱、乾燥、または、例えば室温下における真空乾燥、等によって乾燥し、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得る。そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子粉末を、上述した液体媒質中に添加して分散させればよい。また、被覆膜形成用分散液を、表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とに分離し、溶媒置換の操作によって、被覆膜形成用分散液の媒質を、赤外線吸収微粒子分散液の媒質へ置き換え(所謂、溶媒置換)て、赤外線吸収微粒子分散液を製造することも好ましい構成である。
一方、予め、被覆膜形成用分散液の媒質と、赤外線吸収微粒子分散液の媒質とを一致させておき、表面処理後の被覆膜形成用分散液を、そのまま赤外線吸収微粒子分散液とすることも好ましい構成である。
【0073】
(ii)使用する有機溶剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系、等を使用することが出来る。
具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;
3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;
フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
エチレンクロライド、クロルベンゼン、等を使用することが出来る。
そして、これらの有機溶媒中でも、特に、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチル、等を好ましく使用することが出来る。
【0074】
(iii)使用する油脂
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する油脂としては、植物油脂または植物由来油脂が好ましい。
植物油としては、アマニ油、ヒマワリ油、桐油、エノ油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、ケシ油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油、等を使用することが出来る。
植物油由来の化合物としては、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類、等を使用することが出来る。
また、市販の石油系溶剤も油脂として用いることが出来る。
市販の石油系溶剤として、アイソパー(登録商標)E、エクソール(登録商標)Hexane、Heptane、E、D30、D40、D60、D80、D95、D110、D130(以上、エクソンモービル社製)、等を使用することが出来る。
【0075】
(iv)使用する液状可塑剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する液状可塑剤としては、例えば、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤、等を使用することが出来る。尚、いずれも室温で液状であるものが好ましい。
なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤を好ましく使用することが出来る。当該多価アルコールと脂肪酸とから合成されたエステル化合物は特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られた、グリコール系エステル化合物、等を使用することが出来る。
また、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと、前記一塩基性有機とのエステル化合物等も挙げられる。
なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−オクタネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステル、等を使用することが出来る。さらに、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルも好ましく使用することが出来る。
【0076】
(v)使用する硬化により高分子化される化合物
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する、硬化により高分子化される化合物は、重合等により高分子を形成する単量体やオリゴマーである。
具体的には、メチルメタクリレート単量体、アクレリート単量体、スチレン樹脂単量体、等を使用することが出来る。
【0077】
以上、説明した液状媒質は、2種以上を組み合わせて用いることが出来る。さらに、必要に応じて、これらの液状媒質へ酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。
【0078】
(vi)使用する分散剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液中において、表面処理赤外線吸収微粒子の分散安定性を一層向上させ、再凝集による分散粒子径の粗大化を回避する為に、各種の分散剤、界面活性剤、カップリング剤などの添加も好ましい。
当該分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有するものであることが好ましい。これらの官能基は、表面処理赤外線吸収微粒子の表面に吸着して凝集を防ぎ、均一に分散させる効果を持つ。これらの官能基のいずれかを分子中にもつ高分子系分散剤は、さらに好ましい。
【0079】
市販の分散剤における好ましい具体例としては、ルーブリゾール社製SOLSPERSE(登録商標)3000、9000、11200、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000SC、24000GR、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34750、35100、35200、36600、37500、38500、39000、41000、41090、53095、55000、56000、76500等;
ビックケミー・ジャパン(株)製Disperbyk(登録商標)−101、103、107、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、154、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155、Anti−Terra(登録商標)−U、203、204、BYK(登録商標)−P104、P104S、220S、6919等;
エフカアディティブズ社製EFKA(登録商標)−4008、4046、4047、4015、4020、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4500、4510、4530、4550、4560、4585、4800、5220、6230、BASFジャパン(株)社製JONCRYL(登録商標)−67、678、586、611、680、682、690、819、JDX5050等;
大塚化学(株)製TERPLUS(登録商標)MD 1000、D 1180、D 1330等;
味の素ファインテクノ(株)製アジスパー(登録商標)PB−711、PB−821、PB−822、等を使用することが出来る。
【0080】
(vii)赤外線吸収微粒子分散液の使用方法
上述のようにして製造された本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液は、適宜な基材の表面に塗布し、ここに被覆膜を形成して赤外線吸収基材として利用することが出来る。
また、当該赤外線吸収微粒子分散液を乾燥し、粉砕処理して、赤外線吸収微粒子粉末とし、赤外線吸収製品へ添加する原料として用いることも出来る。即ち、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が、固体媒質中に分散された粉末状の分散体を得、当該粉末状の分散体を、再度、液体媒質中に分散させ、赤外線吸収製品用の分散液として使用しても良いし、後述するように樹脂中に練り込んで使用しても良い。
【0081】
(2)赤外線吸収微粒子分散体
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質中に分散しているものである。尚、当該固体媒質としては、樹脂、ガラス、等の固体媒質を用いることが出来る。
【0082】
本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を樹脂に練り込み、フィルムやボードに成形する場合、当該表面処理赤外線吸収微粒子を直接樹脂に練り込むことが可能である。また、前記赤外線吸収微粒子分散液と樹脂とを混合すること、または、当該表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質に分散された粉末状の分散体を液体媒質に添加しかつ樹脂と混合することも可能である。
固体媒質として樹脂を用いた場合、例えば、厚さ0.1μm〜50mmのフィルムまたはボードを構成する形態であってもよい。
【0083】
一般的に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を樹脂に練り込むとき、樹脂の融点付近の温度(200〜300℃前後)で加熱混合して練り込むこととなる。
この場合、さらに、当該表面処理赤外線吸収微粒子を樹脂に混合してペレット化し、当該ペレットを各方式でフィルムやボードを形成することも可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法等により形成可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的によって適宜設定すればよく、樹脂に対するフィラー量(すなわち、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の配合量)は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50質量%以下が好ましい。
樹脂に対するフィラー量が50質量%以下であれば、固体状樹脂中での微粒子同士が造粒を回避出来るので、良好な透明性を保つことが出来る。また、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の使用量も制御出来るのでコスト的にも有利である。
【0084】
一方、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を固体媒質に分散させた赤外線吸収微粒子分散体を、さらに粉砕し粉末とした状態でも利用することが出来る。当該構成を採る場合、粉末状の赤外線吸収微粒子分散体において、既に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質中で十分に分散している。従って、当該粉末状の赤外線吸収微粒子分散体を所謂マスターバッチとして、適宜な液体媒質に溶解させたり、樹脂ペレット等と混練することで、容易に、液状または固形状の赤外線吸収微粒子分散体を製造することが出来る。
【0085】
また、上述したフィルムやボードのマトリクスとなる樹脂は、特に限定されるものではなく用途に合わせて選択可能であるが、耐候性を考慮するとフッ素樹脂が好ましい。尤も、フッ素樹脂に較べ、低コストで透明性が高く汎用性の広い樹脂として、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、等の使用することが出来る。
【0086】
(3)赤外線吸収基材
本発明に係る赤外線吸収基材は、所定の基材表面に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含有する被覆膜が形成されているものである。
所定の基材表面に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含有する被覆膜が形成されていることにより、本発明に係る赤外線吸収基材は、耐湿熱性および化学安定性に優れ、且つ赤外線吸収材料として好適に利用出来るものである。
【0087】
例えば、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を、アルコール等の有機溶媒や水等の液体媒質と、樹脂バインダーと、所望により分散剤とを混合した赤外線吸収微粒子分散液を、適宜な基材表面に塗布した後、液体媒質を除去することで、赤外線吸収微粒子分散体が基材表面に直接積層された赤外線吸収基材を得ることが出来る。
【0088】
前記樹脂バインダー成分は用途に合わせて選択可能であり、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂、等が挙げられる。一方、樹脂バインダー成分を含まない赤外線吸収微粒子分散液を、基材表面に赤外線吸収微粒子分散体を積層しても良いし、当該積層の後に、バインダー成分を含む液体媒質を当該赤外線吸収微粒子分散体の層上に塗布することとしても良い。
【0089】
具体的には、有機溶媒、樹脂を溶解させた有機溶媒、樹脂を分散させた有機溶媒、水、から選ばれる1種以上の液体媒質に表面処理赤外線吸収微粒子が分散している液状の赤外線吸収微粒子分散体が、基材表面に塗布膜形成している赤外線吸収基材が挙げられる。また、樹脂バインダー成分を含む液状の赤外線吸収微粒子分散体が、基材表面に塗布膜形成している赤外線吸収基材が挙げられる。さらに、粉末状である固体媒質中に表面処理赤外線吸収微粒子が分散している赤外線吸収微粒子分散体を、所定媒質に混合した液状の赤外線吸収微粒子分散体が、基材表面に塗布膜形成している赤外線吸収基材も挙げられる。勿論、当該各種の液状の赤外線吸収微粒子分散液の2種以上を混合した赤外線吸収微粒子分散液が、基材表面に塗布膜形成している赤外線吸収基材も挙げられる。
【0090】
上述した基材の材質は、透明体であれば特に限定されないが、ガラス、樹脂ボード、樹脂シート、樹脂フィルムが好ましく用いられる。
樹脂ボード、樹脂シート、樹脂フィルムに用いる樹脂としては、必要とするボード、シート、フィルムの表面状態や耐久性に不具合を生じないものであれば特に制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや、さらにこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物等の透明ポリマーからなるボード、シート、フィルムが挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系2軸配向フィルムが、機械的特性、光学特性、耐熱性および経済性の点より好適である。当該ポリエステル系2軸配向フィルムは共重合ポリエステル系であっても良い。
【0091】
[5]赤外線吸収ランプ、赤外線吸収ランプカバー
本発明に係る赤外線吸収ランプは、表面処理赤外線吸収微粒子を含む層がランプ表面(電球表面)に設けられたものである。即ち、本発明に係る赤外線吸収ランプは、当該ランプの例えばガラス球の部分に上述した表面処理赤外線吸収微粒子透明基材を用いたランプも実施形態の一つである。
例えばガラス球の部分に、表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を設けるには浸漬法等の公知の方法を用いることが出来る。
【0092】
一方、本発明に係る赤外線吸収ランプカバーは、表面処理赤外線吸収微粒子を含む層がランプカバー表面に設けられたもの、または、表面処理赤外線吸収微粒子がランプカバーの固体媒質中に分散したものである。即ち、本発明に係る赤外線吸収ランプカバーは、上述した表面処理赤外線吸収微粒子透明基材または前記表面処理赤外線吸収微粒子分散体をカバーの形に成形したものである、ということも出来る。
カバーの形に成形された透明基材に表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を設けることや、表面処理赤外線吸収微粒子分散体をカバーの形に成形するには、公知の方法を用いることが出来る。
以下、(1)赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーとそれらの構成、(2)製造方法、(3)耐湿熱性、の順に説明する。
【0093】
(1)赤外線吸収ランプ、赤外線吸収ランプカバーとそれらの構成
赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバーは、白熱ランプ、LEDランプ等の各種ランプから放出される可視光線を透過しつつ赤外線を吸収することで、ランプからの赤外線放射を抑制するものである。そして当該赤外線放射の抑制効果により、ランプ外に存在する赤外線受信機や環境光センサー等の誤作動を防止するために用いられるものである。
【0094】
赤外線受信機は、テレビや自動車等に用いられ、リモートコントローラから送信された赤外線信号を受信して、所定の動作をするものである。また、環境光センサーは、スマートフォンやタブレット端末等の情報端末装置に用いられ、環境の照度を感知してスマートフォンやタブレット端末等のディスプレイの明るさを調光する照度センサー、環境の色調を感知してディスプレイの色調を調整するカラーセンサー等、がある。
【0095】
これらの受信機やセンサー類は、ランプから放出される波長800〜1000nmの光を受信して誤作動を招く恐れがある。そこで、赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバーには赤外線の放射を抑制する性能が求められ、さらに、湿熱環境に曝されても優れた赤外線放射の抑制効果を発揮することが求められる。
本発明に係る赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバーは、赤外線放射抑制の具体的な性能として、可視光透過率80%に設定した赤外線吸収ランプまたは赤外線吸収ランプカバーの場合、波長800〜1000nmの範囲における透過率の平均値が35%以下となるといった、赤外線の放射を抑制する性能を発揮することが出来る。
そして、可視光透過率を80%よりも低下させて可視光透明性を落とすことにより、赤外線の放射を抑制する性能を大きく上昇させることも可能である。
さらに、湿熱環境下の具体的な性能としては、可視光透過率80%に設定した当該赤外線吸収ランプまたは赤外線吸収ランプカバーを、温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露したとき、当該暴露前後における波長800nm〜1000nmの透過率の平均値の変化量が3.0%以下であり、ヘイズの変化が0.2%以下であるような耐湿熱性を発揮した。
【0096】
赤外線吸収ランプカバーの基材は、透明体であれば特に限定されないが、ガラスや透明樹脂が好ましく用いられる。中でも加工性が高い熱可塑性の透明樹脂が好ましい。具体的には、透明性や耐候性の観点からはアクリル樹脂が好ましく、耐熱性や耐衝撃性の観点からはポリカーボネート樹脂が好ましい。尚、赤外線吸収ランプカバーの基材は、上述した表面処理赤外線吸収微粒子分散体の固体媒質に相当する。
【0097】
(2)製造方法
本発明に係る赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバーの製造方法は、上述した表面処理赤外線吸収透明基材や表面処理赤外線吸収微粒子分散体と同様である。以下、具体的な製造方法について説明する。
【0098】
赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバーの製造方法として、まず、適宜な方法でランプやランプカバーを製造する。その後、赤外線吸収フィルムや赤外線吸収シートを、ランプ表面やランプカバー表面に貼り付ける方法が挙げられる。フィルムやシートの基材は透明且つ伸縮性のある樹脂製のものであることが好ましく、具体的にはPET樹脂が好ましい基材として挙げられる。
また、スプレーコーティング法、フローコーティング法、コーティングロッドを用いたコーティング法によって、ランプ表面やランプカバー表面に表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を形成することも好ましい方法である。
他にも、ディップコーティング法によって、ランプ表面やランプカバー表面に表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を形成することも好ましい方法である。ディップコーティング法では、大量のランプを一度に表面処理赤外線吸収微粒子分散液中に浸漬し、引き上げることによって、全てのランプ表面に表面処理赤外線吸収微粒子を含む層を均一に形成することが出来る。
各種コーティング法を用いる場合は、コーティング層を硬化させるためにコーティング工程後に乾燥工程や硬化工程を設けることが好ましい。より具体的には、コーティング液へ適宜な溶媒とUV硬化樹脂とを混合し、乾燥処理により溶媒を除去し、UV照射によりコーティング膜を硬化させることが好ましい。
【0099】
表面処理赤外線吸収微粒子が分散した固体媒質を用いた赤外線吸収ランプカバーを製造する方法としては、所定の金型を用いた射出成形機によって固体媒質を射出し、赤外線吸収ランプカバーを成形により連続的に生産することが望ましい。
固体媒質である熱可塑性樹脂と表面処理赤外線吸収微粒子との混合物や、表面処理赤外線吸収微粒子を含有するマスターバッチを溶融状態で金型に充填(射出)し、次いで冷却後、成形された成形体である赤外線吸収ランプカバーを金型から剥離することにより成形することが出来る。具体的には、例えば、表面処理赤外線吸収微粒子が分散した熱可塑性樹脂をホッパーから投入し、スクリューを回転させながら後退させて、シリンダー内にて樹脂組成物を計量する。当該樹脂組成物を溶融させ、圧力をかけながら溶融した樹脂組成物を金型内に充填し、金型が充分に冷めるまで一定時間保圧する。その後、型を開いて成形体を取り出すことにより、赤外線吸収ランプカバーを作製することができる。なお、赤外線吸収ランプカバーを作製する際の諸条件(例えば、成形材料の溶融温度、成形材料を金型に射出する際の金型温度、樹脂組成物を金型に充填した後保圧する際の圧力など)については、適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0100】
(3)耐湿熱性
本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が分散した固体媒質を用いた赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーを、例えば温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露したとき、当該暴露前後における波長800nm〜1000nmの透過率の平均値の変化量が3.0%以下であり、ヘイズ値の変化は0.2%以下を満足する。このことから、本発明に係る赤外線吸収ランプおよび赤外線吸収ランプカバーは、湿熱環境に曝されても優れた赤外線放射の抑制効果を発揮するものであることが判明した。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例における分散液中の微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子株式会社製ELS−8000)により測定した平均値をもって示した。また、結晶子径は、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X’Pert−PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)により測定し、リートベルト法を用いて算出した。
表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社社製 HF−2200)を用いて得た当該表面処理赤外線吸収微粒子の30万倍の写真データより、赤外線吸収微粒子の格子縞の観察されない部分を被覆膜として、当該被覆膜の膜厚を読み取って求めた。
赤外線吸収シートの光学特性は、分光光度計(日立製作所株式会社製 U−4100)を用いて波長200nm〜2600nmの範囲において5nmの間隔で測定し、可視光透過率はJISR3106に従って算出した。また、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値も算出した。当該赤外線吸収シートのヘイズ値は、ヘイズメーター(村上色彩
株式会社製 HM−150)を用いて測定し、JISK7105に従って算出した。
赤外線吸収シートの耐湿熱性の評価方法は、可視光透過率80%前後の当該赤外線吸収シートを温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露する。
そして、例えば、赤外線吸収微粒子として六方晶セシウムタングステンブロンズ微粒子を用いた場合は、当該暴露前後における波長800nm〜1000nmにおける光の透過率の平均値の変化量が3.0%以下のものを耐湿熱性が良好と判断し、変化量が3.0%を超えるものは耐湿熱性が不足と判断した。
【0102】
[実施例1]
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ(Cs0.33WO)粉末(住友金属鉱山株式会社製YM−01)25質量%と純水75質量%とを混合して得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し10時間粉砕・分散処理し、実施例1に係るCs0.33WO微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WO微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは純水を用いて測定し、溶媒屈折率は1.33とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。得られたCs0.33WO微粒子の分散液と純水を混合し、Cs0.33WO微粒子の濃度が2質量%である実施例1に係る被覆膜形成用分散液Aを得た。
一方、アルミニウム系のキレート化合物としてアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート2.5質量%と、イソプロピルアルコール(IPA)97.5質量%とを混合して表面処理剤希釈液aを得た。
【0103】
得られた被覆膜形成用分散液A890gをビーカーに入れ、羽根の付いた攪拌機によって強く攪拌しながら、ここへ表面処理剤希釈液a360gを3時間かけて滴下添加した。当該表面処理剤希釈液aの滴下添加後、さらに温度20℃で24時間の攪拌を行い、実施例1に係る熟成液を作製した。次いで、真空流動乾燥を用いて、当該熟成液から媒質を蒸発させて実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含む粉末(表面処理赤外線吸収微粒子粉末)を得た。
【0104】
このとき、表面処理剤である金属キレート化合物のアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートの分子量は274.3、アルミニウムの原子量は26.98であることから、表面処理剤であるアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート中における金属量(アルミニウム量)は9.8質量%である。従って、表面処理剤を9g含有する表面処理剤希釈液a360gにおける金属量は0.89gとなる。一方、被覆膜形成用分散液A890gにおいて、赤外線吸収微粒子であるCs0.33WO微粒子の濃度が2質量%であることから、赤外線吸収微粒子の量は17.8gである。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で5質量部である。
【0105】
ここで、実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚を、図2に示す当該実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子の30万倍の透過型電子顕微鏡写真を用いて測定したところ、2nmであることが判明した(実施例1に係るCs0.33WOz微粒子の格子縞(結晶中の原子の並び)が観察されない、例えば2本の平行する実線で挟まれた部分が被覆膜であることから当該部分の厚みを測定し、被覆膜の膜厚を求めた)。
【0106】
実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末8質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン68質量%とを混合した。得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、1時間粉砕・分散処理し、実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。次いで、この赤外線吸収微粒子分散液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉を得た。
【0107】
実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉とポリカーボネート樹脂とを、表面処理赤外線吸収微粒子の濃度が0.080wt%になるようにドライブレンドした。得られたブレンド物を、二軸押出機を用いて290℃で混練し、Tダイより押出して、カレンダーロール法により0.75mm厚のシート材とし、実施例1に係る赤外線吸収シートを得た。尚、当該赤外線吸収シートは、本発明に係る赤外線吸収ランプまたは赤外線吸収ランプカバーの構成部材として用いることが出来るものである。
【0108】
得られた実施例1に係る赤外線吸収シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が79.6%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値が32.4%、ヘイズは0.9%であった。
【0109】
得られた実施例1に係る赤外線吸収シートを温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露後、光学特性を測定したところ、可視光透過率が80.8%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値が34.6%、ヘイズは0.9%であった。
そして、湿熱雰囲気暴露前後による可視光透過率の変化量は1.2%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値の変化量は2.2%とどちらも小さく、また、ヘイズは変化しないことが分かった。
【0110】
[実施例2、3]
表面処理剤希釈液aの量とその滴下添加時間とを変更したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例2および3に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果とを表1および2に示す。
【0111】
[実施例4]
実施例1に係る熟成液を、1時間静置させ、表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とを固液分離させた。次いで、上澄みである媒質のみを除去して赤外線吸収微粒子スラリーを得た。得られた赤外線吸収微粒子スラリーにイソプロピルアルコールを添加して1時間攪拌させた後、1時間静置させ、再び表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とを固液分離させた。次いで、上澄みである媒質のみを除去し、再び赤外線吸収微粒子スラリーを得た。
【0112】
再び得られた赤外線吸収微粒子スラリー16質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン60質量%とを混合攪拌させた後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理し、実施例4に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。
【0113】
実施例4に係る赤外線吸収微粒子分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例4に係る赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0114】
[実施例5]
ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート2.4質量%とイソプロピルアルコール97.6質量%とを混合して実施例5に係る表面処理剤希釈液bを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液bを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例5に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
【0115】
このとき、表面処理剤である金属キレート化合物のジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートの分子量は409.2、ジルコニウムの原子量は91.22であることから、表面処理剤であるジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート中における金属量(ジルコニウム量)は22.3質量%である。従って、表面処理剤を8.64g含有する表面処理剤希釈液a360gにおける金属量は1.93gとなる。一方、被覆膜形成用分散液A890gにおいて、赤外線吸収微粒子であるCs0.33WO微粒子の濃度が2質量%であることから、赤外線吸収微粒子の量は17.8gである。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で11質量部である。
当該製造条件と評価結果とを表1および2に示す。
【0116】
[実施例6]
ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート2.6質量%とイソプロピルアルコール97.4質量%とを混合して実施例6に係る表面処理剤希釈液cを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液cを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例6に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
【0117】
このとき、表面処理剤である金属キレート化合物のジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテートの分子量は423.9、チタンの原子量は47.89であることから、表面処理剤であるジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート中における金属量(チタン量)は11.3質量%である。従って、表面処理剤を9.36g含有する表面処理剤希釈液a360gにおける金属量は1.06gとなる。一方、被覆膜形成用分散液A890gにおいて、赤外線吸収微粒子であるCs0.33WO微粒子の濃度が2質量%であることから、赤外線吸収微粒子の量は17.8gである。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で6質量部である。
当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0118】
[実施例7]
固体状樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにポリメタクリル酸メチル樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例7に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0119】
[実施例8]
Na/W(モル比)=0.33の立方晶ナトリウムタングステンブロンズ粉末(住友金属鉱山株式会社製)25質量%とイソプロピルアルコール75質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填して10時間粉砕・分散処理し、実施例8に係るNa0.33WO微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のNa0.33WO微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはイソプロピルアルコールを用いて測定し、溶媒屈折率は1.38とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
【0120】
実施例8に係るNa0.33WO微粒子の分散液とイソプロピルアルコールとを混合し、赤外線吸収微粒子(立方晶ナトリウムタングステンブロンズ微粒子)の濃度が2%である被覆膜形成用分散液Bを得た。得られた被覆膜形成用分散液B520gをビーカーに入れ、羽根の付いた攪拌機によって強く攪拌しながら、表面処理剤希釈液a360gと、希釈剤dとして純水100gとを、3時間かけて並行滴下添加した。滴下添加後、温度20℃で24時間の攪拌を行い、実施例8に係る熟成液を作製した。次いで、この熟成液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、実施例8に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得た。
【0121】
実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末の代わりに実施例8に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例8に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0122】
[実施例9〜11]
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末の代わりに、K/W(モル比)=0.33の六方晶カリウムタングステンブロンズ粉末(実施例9)や、Rb/W(モル比)=0.33の六方晶ルビジウムタングステンブロンズ粉末(実施例10)や、マグネリ相のW1849(実施例11)を用いた以外は、実施例1と同様にして赤外線吸収微粒子の分散粒子径および結晶子径を測定し、更に被覆膜形成用分散液C〜Eを得た。
被覆膜形成用分散液Aの代わりに被覆膜形成用分散液C〜Eを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例9〜11に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0123】
[実施例12、13]
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ(Cs0.33WO)粉末(住友金属鉱山株式会社製YM−01)25質量%と純水75質量%とを混合して得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し4時間(実施例12)または6時間(実施例13)の粉砕・分散処理を行い、実施例12、13に係るCs0.33WO微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WO微粒子の分散粒子径を測定したところ、それぞれ140nm、120nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは純水を用いて測定し、溶媒屈折率は1.33とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ、それぞれ42nm、50nmであった。得られたCs0.33WO微粒子の分散液と純水を混合し、Cs0.33WO微粒子の濃度が2質量%である実施例12、13に係る被覆膜形成用分散液F、Gを得た。
被覆膜形成用分散液Aの代わりに被覆膜形成用分散液F、Gを用いたこと以外は、実施例2と同様の操作をすることで、実施例12、13に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0124】
[実施例14]
テトラエトキシシランを実施例14に係る表面処理剤eとした。
表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤eを用い、イソプロピルアルコールを添加することなく309gを滴下したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例14に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
【0125】
このとき、表面処理剤である金属環状オリゴマー化合物のテトラエトキシシランの分子量は208.3、ケイ素の原子量は28.06であることから、表面処理剤であるテトラエトキシシラン中における金属量(ケイ素量)は13.5質量%である。従って、表面処理剤を309g含有する表面処理剤希釈液a309gにおける金属量は41.6gとなる。一方、被覆膜形成用分散液A890gにおいて、赤外線吸収微粒子であるCs0.33WO微粒子の濃度が2質量%であることから、赤外線吸収微粒子の量は17.8gである。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で234質量部である。
当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0126】
[実施例15]
亜鉛アセチルアセトナート4.4質量%とイソプロピルアルコール95.6質量%とを混合して実施例15に係る表面処理剤希釈液fを得た。
表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液fを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例15に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、表面処理赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収透明基材を得て、実施例1と同様の評価を実施した。
【0127】
このとき、表面処理剤である金属キレート化合物の亜鉛アセチルアセトナートの分子量は263.6、亜鉛の原子量は65.38であることから、表面処理剤である亜鉛アセチルアセトナート中における金属量(亜鉛量)は24.8質量%である。従って、表面処理剤を15.84g含有する表面処理剤希釈液a360gにおける金属量は3.93gとなる。一方、被覆膜形成用分散液A890gにおいて、赤外線吸収微粒子であるCs0.33WO微粒子の濃度が2質量%であることから、赤外線吸収微粒子の量は17.8gである。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する表面処理剤の量は、金属元素換算で22質量部である。
当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0128】
[比較例1]
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末7質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン69質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し4時間粉砕・分散処理し、比較例1に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。得られた分散液中の赤外線吸収微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはトルエンを用いて測定し、溶媒屈折率は1.50とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
次いで、この赤外線吸収微粒子分散液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、比較例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉を得た。
【0129】
比較例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉とポリカーボネート樹脂を、赤外線吸収微粒子の濃度が0.075wt%になるようにドライブレンドした。得られたブレンド物を、二軸押出機を用いて290℃で混練し、Tダイより押出して、カレンダーロール法により0.75mm厚のシート材とし、比較例1に係る赤外線吸収シートを得た。
【0130】
得られた比較例1に係る赤外線吸収シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が79.2%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値が32.5%、ヘイズは1.0%であった。
【0131】
得られた比較例1に係る赤外線吸収シートを温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露後、光学特性を測定したところ、可視光透過率が81.2%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値が40.3%、ヘイズは1.2%であった。
湿熱雰囲気暴露前後における可視光透過率の変化量は2.0%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値の変化量は7.8%となり、実施例と比較して大きいことが分かった。また、ヘイズの変化の割合は0.2%であった。
【0132】
[比較例2]
固体状樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにポリメタクリル酸メチル樹脂を用いたこと以外は、比較例1と同様の操作をすることで、比較例2に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0133】
[比較例3〜6]
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末の代わりに、Na/W(モル比)=0.33の立方晶ナトリウムタングステンブロンズ粉末(比較例3)や、K/W(モル比)=0.33の六方晶カリウムタングステンブロンズ粉末(比較例4)や、Rb/W(モル比)=0.33の六方晶ルビジウムタングステンブロンズ粉末(比較例5)や、マグネリ相のW1849(比較例6)を用いたこと以外は、比較例1と同様の操作をすることで、比較例3〜6に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0134】
[比較例7]
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末13質量%とイソプロピルアルコール87質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し5時間粉砕・分散処理し、比較例7に係るCs0.33WO微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WO微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはイソプロピルアルコールを用いて測定し、溶媒屈折率は1.38とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
【0135】
比較例7に係るCs0.33WO微粒子の分散液とイソプロピルアルコールを混合し、赤外線吸収微粒子(六方晶セシウムタングステンブロンズ微粒子)の濃度が3.5%である希釈液を得た。得られた希釈液733gに、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートを21g添加し、混合攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理した。
【0136】
次いで、当該分散処理物をビーカーに入れ、羽根の付いた攪拌機によって強く攪拌しながら水100gを希釈剤dとして1時間かけて滴下添加した。さらに、攪拌しながらテトラエトキシシラン140gを希釈剤eとして2時間かけて滴下添加した後、20℃で15時間の攪拌を行い、この液を70℃で2時間加熱熟成した。次いで、この熟成液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、さらに窒素雰囲気中において温度200℃で1時間加熱処理して、比較例7に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得た。
【0137】
実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末の代わりに、比較例7に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、比較例7に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1および2に示す。
【0138】
[まとめ]
本発明に係る可視光透過率80%に設定した赤外線吸収シートを、温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露したとき、当該暴露前後における波長800nm〜1000nmの透過率の平均値の変化量が3.0%以下であり、ヘイズの変化が0.2%以下であるような耐湿熱性を有していることが判明した。
従って、本発明に係る赤外線吸収シートを備える赤外線吸収ランプや赤外線吸収ランプカバー、本発明に係る赤外線吸収シートを成形した赤外線吸収ランプカバーは、可視光透過率80%に設定し、温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露したとき、当該暴露前後における波長800nm〜1000nmの透過率の平均値の変化量が3.0%以下であり、ヘイズの変化が0.2%以下であるような耐湿熱性を有していることが判明した。
【0139】
【表1】
【表2】
【符号の説明】
【0140】
11.WO単位にて形成される8面体
12.元素M
図1
図2