特開2019-209321(P2019-209321A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-209321(P2019-209321A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】汚泥脱水剤、及び汚泥脱水方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20191115BHJP
   C02F 11/147 20190101ALI20191115BHJP
【FI】
   B01D21/01 101A
   B01D21/01 107Z
   C02F11/147ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-96209(P2019-96209)
(22)【出願日】2019年5月22日
(62)【分割の表示】特願2018-108932(P2018-108932)の分割
【原出願日】2018年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】関口 詩歩子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 実
【テーマコード(参考)】
4D015
4D059
【Fターム(参考)】
4D015BA06
4D015BA08
4D015BA09
4D015BA19
4D015BB05
4D015BB12
4D015CA12
4D015DA04
4D015DA05
4D015DA13
4D015DA16
4D015DB02
4D015DB10
4D015DB13
4D015DB14
4D015DB15
4D015DB29
4D015DC02
4D015DC06
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA35
4D015EA39
4D059AA01
4D059AA04
4D059AA05
4D059AA06
4D059AA23
4D059BE07
4D059BE08
4D059BE14
4D059BE15
4D059BE16
4D059BE26
4D059BE37
4D059BJ00
4D059DA16
4D059DA17
4D059DA22
4D059DA23
4D059DA24
4D059DB24
4D059DB25
(57)【要約】
【課題】比較的少ない添加量であっても、強固で粗大なフロックが形成され、重力濾過性に優れ、低含水率の脱水ケーキを得ることができ、効率的な脱水処理が可能となる、汚泥脱水剤を提供する。
【解決手段】カチオン性単量体に由来する構成単位を有するポリマーを含む汚泥脱水剤であって、下記数式1から算出される、前記ポリマーのコロイド当量値低下率が10%以上ある汚泥脱水剤。

(数式1中、コロイド当量値(I)は、脱イオン水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値である。
また、コロイド当量値(II)は、0.01mol/Lの食塩水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性単量体に由来する構成単位を有するポリマーを含む汚泥脱水剤であって、
下記数式1から算出される、前記ポリマーのコロイド当量値低下率が10%以上である汚泥脱水剤。
【数1】

(数式1中、コロイド当量値(I)は、脱イオン水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値である。
また、コロイド当量値(II)は、0.01mol/Lの食塩水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値である。)
【請求項2】
前記ポリマーが、1mol/L硝酸ナトリウム水溶液中30℃での固有粘度が0.5〜5.0dL/gである、請求項1に記載の汚泥脱水剤。
【請求項3】
前記ポリマーを構成する単量体が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体1〜100モル%と、非イオン性単量体0〜99モル%と、下記一般式(2)で表わされるアニオン性単量体0〜99モル%とからなる、請求項1又は2に記載の汚泥脱水剤。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基であり、Rは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基である。Aは酸素原子又はNH基であり、Bは炭素数2〜4のアルキレン基である。Xは陰イオンである。)
【化2】

(式(2)中、RはH、CHであり、RはH、CH、COOH又はその塩である。QはSOH、CSOH、CONHC(CHCHSOH、COOH又はそれらの塩である。)
【請求項4】
前記ポリマーを2種以上含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚泥脱水剤。
【請求項5】
前記コロイド当量値低下率が10%未満であるポリマーを少なくとも1種含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の汚泥脱水剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して脱水する、汚泥脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥の脱水処理に適した汚泥脱水剤、及び当該汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場や化学工場等の余剰汚泥、及びし尿処理場等の混合汚泥などを主体とした汚泥の脱水処理には、一般的に、カチオン性高分子凝集剤が使用されている。しかしながら、近年の汚泥発生量の増加や汚泥性状変化に伴い、難脱水化が進んでおり、重力ろ過性等の脱水効果の向上が強く求められている。
【0003】
従来、汚泥に添加するカチオン性高分子凝集剤としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又はその塩化メチル四級化物等が主として用いられていたが、さらなる脱水効果の改善のために、このようなカチオン性高分子凝集剤による処理以外に、例えば、特許文献1〜5に示すような提案がなされている。
【0004】
特許文献1には、油中水滴型エマルション状液体を、乾燥工程を経て造粒した電荷内包率35〜90%のイオン性水溶性高分子を汚泥の脱水処理に行うことが記載されている。
また、特許文献2及び3には、電荷内包率が高いものと低いものとの2種類の架橋性水溶性イオン性高分子を組み合せた凝集処理剤を汚泥脱水剤として適用することが記載されている。
また、特許文献4には、アミジン系ポリマーと架橋型カチオン性ポリマーと非架橋型カチオン性ポリマーとの混合物による汚泥脱水剤、特許文献5には、無機凝集剤を添加した後に両性高分子凝集剤を添加する汚泥処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−280649号公報
【特許文献2】特開2005−144346号公報
【特許文献3】国際公開第2008/015769号公報
【特許文献4】特開2011−224420号公報
【特許文献5】特開昭63−158200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の技術では、形成されるフロックが小さい、あるいは2種類の薬剤の添加バランスの調整が煩雑、脱水効果が安定しない場合がある等、汚泥の脱水処理を必ずしも効率的に行うことはできなかった。
特許文献3には、架橋ポリマーは、架橋により水中での分子の広がりが抑制され、「密度の詰まった」分子形態として存在するため、汚泥を凝集させるために必要となる汚泥脱水剤の添加量が多くなるとの問題点が挙げられているが、その根拠となるポリマーの水中での分子の広がりと汚泥脱水効果との関係については十分には明らかにされていない。また、ポリマーの広がり状態の指標となるポリマー物性の面からの検討もほとんどできていないのが実情である。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、比較的少ない添加量であっても、強固で粗大なフロックが形成され、重力濾過性に優れ、低含水率の脱水ケーキを得ることができ、効率的な脱水処理が可能となる、汚泥脱水剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、汚泥脱水剤としてのポリマーが存在する周囲環境が、脱イオン水中の環境から汚泥の電気伝導率に近い0.01mol/Lの食塩水中の環境へ変化した際、そのコロイド当量値低下率が特定値以上となる特性を有するポリマーであれば、比較的少ない添加量であっても、高い汚泥脱水効果が発揮されることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]カチオン性単量体に由来する構成単位を有するポリマーを含む汚泥脱水剤であって、下記数式1から算出される、前記ポリマーのコロイド当量値低下率が10%以上である汚泥脱水剤。
【0010】
【数1】
【0011】
(数式1中、コロイド当量値(I)は、脱イオン水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値である。また、コロイド当量値(II)は、0.01mol/Lの食塩水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値である。)
[2]前記ポリマーが、1mol/L硝酸ナトリウム水溶液中30℃での固有粘度が0.5〜5.0dL/gである、前記[1]に記載の汚泥脱水剤。
[3]前記ポリマーを構成する単量体が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体1〜100モル%と、非イオン性単量体0〜99モル%と、下記一般式(2)で表わされるアニオン性単量体0〜99モル%とからなる、前記[1]又は[2]に記載の汚泥脱水剤。
【0012】
【化1】
【0013】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基であり、Rは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基である。Aは酸素原子又はNH基であり、Bは炭素数2〜4のアルキレン基である。Xは陰イオンである。)
【0014】
【化2】
【0015】
(式(2)中、RはH、CHであり、RはH、CH、COOH又はその塩である。QはSOH、CSOH、CONHC(CHCHSOH、COOH又はそれらの塩である。)
[4]前記ポリマーを2種以上含む、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の汚泥脱水剤。
[5]前記コロイド当量値低下率が10%未満であるポリマーを少なくとも1種含む、前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の汚泥脱水剤。
[6]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して脱水する、汚泥脱水方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、比較的少ない添加量であっても、強固で粗大なフロックが形成され、重力濾過性に優れ、低含水率の脱水ケーキを得ることができ、効率的な脱水処理が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の汚泥脱水剤、及び本発明の汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水方法を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタアクリル(メタクリル)」を意味するものであり、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロ」との表記についても同様である。
【0018】
[汚泥脱水剤]
本発明の汚泥脱水剤は、カチオン性単量体に由来する構成単位を有するポリマーを含み、下記数式1から算出される、前記ポリマーのコロイド当量値低下率が10%以上である特性を有する。
【0019】
【数2】
【0020】
数式1中、コロイド当量値(I)は、脱イオン水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値である。
また、コロイド当量値(II)は、0.01mol/Lの食塩水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値である。
【0021】
汚泥脱水剤としてのポリマーを、汚泥と近似する電気伝導率を有する溶媒中に存在させた時には、脱イオン水中に存在させた時よりも、コロイド当量値が低下するという実験事実に着眼し、鋭意検討した結果、その低下率が10%以上であった場合、汚泥脱水剤としてのポリマーの添加量は比較的少なくても、強固で粗大なフロックが形成され、高い汚泥脱水効果が発揮されることを見出した。
ここで「脱イオン水」とは、水道水中に微量含まれる、カルシウムやマグネシウム等の陽イオン、及び塩素イオンや硝酸イオン等の陰イオンなどのイオン性不純物を、イオン交換樹脂等を用いて精製し、電気伝導率が0.01〜1mS/mのものを指していう。
なお、汚泥の電気伝導率は、特殊な汚泥を除き、通常50〜300mS/mの範囲にある。
【0022】
汚泥脱水剤としてのポリマーを、イオンがほとんど共存しない環境(イオン濃度が低い環境)、すなわち電気伝導率が低い環境に存在させると、例えば、脱イオン水中に存在させると、このような周辺環境がポリマー分子鎖中のイオン性基に対して与える影響は小さいため、ポリマー分子鎖中のイオン性基同士の反発を抑える効果(遮蔽効果)は作用せず、ポリマー分子鎖中のイオン性基同士が反発し合い、ポリマー分子鎖は広がった形態をとると考えられている。
一方、汚泥脱水剤としてのポリマーを、イオンが共存する環境(イオン濃度が高い環境)、すなわち電気伝導率が高い環境に存在させると、このような周辺環境がポリマー分子鎖中のイオン性基に対して与える影響は大きいため、ポリマー分子鎖中のイオン性基同士の反発を抑える効果(遮蔽効果)が作用し、ポリマー分子鎖中のイオン性基同士の反発が抑えられ、ポリマー分子鎖は収縮したランダムコイル形態をとると考えられている。
【0023】
本発明で高い汚泥脱水効果が得られる要因は、汚泥脱水剤としてのポリマーを存在させる周辺環境が、電気伝導率が低い環境(例えば脱イオン水中)から電気伝導率が高い環境(例えば汚泥中)に変化したことに起因して、ポリマー分子鎖が「広がった形態」から「収縮したランダムコイル形態」に変化することと、何らかの関係があると予測し、下記の(1)及び(2)のような機構によるものと推察した。
(1)汚泥脱水剤としてのポリマーは脱イオン水中では、ポリマー分子鎖中のイオン性基同士が反発し合い、ポリマー分子鎖は「広がった形態」となるが、汚泥中では、ポリマー分子鎖中のイオン性基同士の反発が抑えられ、ポリマー分子鎖は「収縮したランダムコイル形態」となる。その結果、汚泥中では、収縮したポリマー分子の内部に存在する電荷は検出され難くなるため、ポリマーが有する電荷密度が見かけ上低下し、コロイド当量値が低下すると推察した。また、ポリマー分子鎖の広がり状態を示す指標となる固有粘度に着目し、一定濃度の塩溶媒中での固有粘度が一定範囲の値を示すと推察した。
(2)ポリマー分子鎖が「広がった形態」から「収縮したランダムコイル形態」に変化する過程では、先ず、汚泥脱水剤としてのポリマーが、汚泥成分(汚泥粒子)に吸着し、汚泥粒子の凝集を促し、次いで、汚泥中に共存するイオンの影響で、汚泥粒子に吸着したポリマーの形態が大きく収縮するため、ポリマーの添加量が比較的少なくても、強固で粗大なフロックが形成されると推測した。
【0024】
(コロイド当量値)
一般に、フロックは、汚泥脱水剤としてのポリマーが有する電荷(例えば正電荷)が、汚泥成分が有する電荷(例えば負電荷)と静電的に相互作用し、ポリマーが有する電荷で汚泥成分が有する電荷を中和することで形成される。ポリマーが有する電荷は、コロイド当量値を測定することで求められる。ここで「コロイド当量値」とは、コロイド滴定で定量されるポリマーが有する電荷密度(meq/g)のことを指していい、例えば、ポリマーがカチオン性ポリマーの場合は、カチオン密度のことを指していう。
コロイド当量値が高いポリマーは、高い電荷中和能を有するといえるが、必ずしも高い中和能を有するポリマーが、汚泥脱水剤として粗大なフロックを形成する能力や、脱水ケーキの含水率を低下させる能力も同時に有するとはいえない場合がある。
【0025】
上述した推察等に基づき更に鋭意検討し、0.01mol/Lの食塩水の電気伝導率が約112mS/mであることから、汚泥脱水剤としてのポリマーを存在させる周辺環境が0.01mol/Lの食塩水中であれば、汚泥と近似する環境が擬似的につくられ、汚泥中と同様の環境を想定できることを見出した。
【0026】
具体的には、脱イオン水中でコロイド測定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値(I)と、汚泥中を想定した0.01mol/Lの食塩水中でコロイド測定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値(II)とを、下記数式1に代入し算出されるコロイド当量値低下率(%)が10%以上を有するポリマーであれば、効率的な脱水処理が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
ここで、脱イオン水のコロイド当量値(I)は、通常0〜0.05meq/gの範囲を示し、0.01mol/Lの食塩水のコロイド当量値(II)は、通常0.05〜0.1meq/gの範囲を示す。
【0027】
【数3】

なお、本発明において、前記したコロイド当量値低下率を本発明の規定範囲(10%以上)に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の事項を考慮することで、調整することができる。
コロイド当量値低下率を10%以上にするためには、ポリマーの合成に用いる重合開始剤や架橋剤の種類、ポリマーを構成する単量体の組成比、ポリマー合成時の反応熱、及びポリマーの合成法や合成条件等を考慮することで、適宜調整することができると推測される。
具体的には、以下の事項を考慮することで、適宜調整することができると考えられる。
・架橋度が比較的高くなるように合成したポリマーほど、コロイド当量値低下率が高くなる傾向がある。
・ポリマーを構成する成分としてカチオン性単量体の割合を高くして合成したポリマーほど、コロイド当量値低下率が高くなる傾向がある。
・ポリマーの形態がある種のエマルション状になるように合成したポリマーほど、コロイド当量値低下率が高くなる傾向がある。
【0028】
前記の汚泥脱水剤としてのポリマーが有するコロイド当量値低下率は、10%以上であり、好ましくは15〜60%、より好ましくは15〜50%、更に好ましくは15〜40%、より更に好ましくは15〜30%である。
上記コロイド当量値低下率が10%未満である場合には、フロック径が小さく、20秒濾過量は少なく、SSリーク量が多く、ケーキ含水率も高くなるおそれがあり、汚泥脱水効果に劣るおそれがある。
【0029】
ここで「コロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値」とは、pH3、及びpH5の2種類のポリマー水溶液を用意し、コロイド滴定法にて滴定量を求め、当該滴定量からそれぞれのコロイド当量値を算出する。pH3、及びpH5の2種類のポリマー水溶液それぞれは、滴定終了後にpH値を計測し、計測したpH値をグラフのX軸に、上記でそれぞれ算出したコロイド当量値をグラフのY軸にそれぞれプロットする。グラフにプロットした2点を結んだ直線からpH4に相当する値におけるコロイド当量値を読み取り、pH4におけるコロイド当量値(meq/g)としたもののことを指していう。
コロイド滴定に用いる指示薬は、特に限定されないが、トルイジンブルーが好ましく用いられる。また、コロイド滴定に用いる滴定液は、特に限定されないが、ポリビニル硫酸カリウム標準液が好ましく用いられる。
【0030】
(固有粘度)
本発明で高い汚泥脱水効果が得られる要因の説明で述べた通り、本発明の脱水効果がポリマー分子鎖の広がり状態に関係し、一定濃度の塩溶液中での固有粘度の値は、ポリマー分子鎖の広がりや収縮の程度に依存すると推定した。
このようなポリマー分子鎖の広がりや収縮の程度に関係するポリマー物性として固有粘度があることはよく知られており、特に汚泥脱水剤のようにイオン性基を有する電解質ポリマーについては、一定濃度の塩溶液中での固有粘度が測定される。
そこで、一定濃度の塩溶液中でのポリマー分子鎖の広がりや収縮の程度を判断する指標をさらに鋭意検討した結果、本発明のポリマーは、本発明で特定するコロイド当量値低下率が10%以上である要件を満たすことに加えて、1mol/L硝酸ナトリウム水溶液中30℃での固有粘度が0.5〜5.0dL/gである要件を満たすことで、より効率的な脱水処理が行い易くなることを見出した。
【0031】
固有粘度は、ポリマー分子鎖の広がりや収縮の程度から分子量の指標ともなり、ポリマーの分子量が大きいほど、固有粘度が高い傾向にある。但し、固有粘度は、ポリマー構成単位である単量体の構造や重合条件等による影響も受けるため、必ずしも分子量の大小に対応するとは限らない。
【0032】
本発明のポリマーは、本発明で特定するコロイド当量値低下率が10%以上である要件を満たすことに加えて、1mol/L硝酸ナトリウム水溶液中30℃での固有粘度が0.5〜5.0dL/gである要件を満たすことで、強固で粗大なフロックが形成され、重力濾過性に優れ、低含水率の脱水ケーキを得ることができ、より効率的な脱水処理が行い易くなる。
本発明のポリマーにおける1mol/L硝酸ナトリウム水溶液中30℃での固有粘度は、好ましくは0.5〜5.0dL/g、より好ましくは0.7〜4.5dL/gであり、さらに好ましくは3.0〜4.5dL/gである。
【0033】
固有粘度は[η]で表され、下記のHugginsの式を用いて算出された値とする。
Hugginsの式: ηSP/C=[η]+k’[η]
上記式において、ηSP:比粘度(=ηrel−1)、k’:Huggins定数、C:ポリマー試料溶液濃度、ηrel:相対粘度を表す。
なお、Huggins定数k’は、高分子の種類や溶媒の種類によって定まる定数であるが、具体的には、式から分かる通り、以下に示すηSP/C対Cの関係をプロットした際の傾きにより求めることができる。
異なる濃度のポリマー試料溶液を調製し、各濃度のポリマー試料溶液の各比粘度ηSPを求めて、ηSP/C対Cの関係をプロットし、Cを0に外挿した切片の値が固有粘度[η]である。
比粘度ηSPは、後述する実施例に示すような方法により求められる。
【0034】
[ポリマーを構成する単量体]
本発明の汚泥脱水剤としてのポリマーは、カチオン性単量体を必須とし、更に、非イオン性単量体、及び/又はアニオン性単量体とから構成されてもよい。
【0035】
(カチオン性単量体)
カチオン性単量体としては、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
【化3】
【0037】
前記式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基であり、Rは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基又はベンジル基である。Aは酸素原子又はNH基であり、Bは炭素数2〜4のアルキレン基である。Xは陰イオンであり、好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、1/2・SO又はCHSOである。
【0038】
カチオン性単量体としては、例えば、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル第四級アンモニウム塩;2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルジメチルアミン硫酸塩又は塩酸塩、3−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピルジメチルアミン塩酸塩等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル第3級アミン塩;3−((メタ)アクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−((メタ)アクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等の(メタ)アクリロイルアミノアルキル第四級アンモニウム塩;などが挙げられる。これらのカチオン性単量体は、単独で用いてもよく、或いは2種以上を併用してもよい。
これらのカチオン性単量体の中でも、(メタ)アクリロイルオキシアルキル第四級アンモニウム塩が好ましく、特に、重合性に優れ、所望の汚泥脱水剤としてのポリマーが得られ易いことから、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドがより好ましく、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドが更に好ましい。
【0039】
(非イオン性単量体)
非イオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド類;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物;などが挙げられる。これらの非イオン性単量体は、単独で用いてもよく、或いは2種以上を併用してもよい。
これらの非イオン性単量体の中でも、アミド類が好ましく、特に、水溶性に優れ、ポリマー中の単量体組成比の調整が容易であり、所望の汚泥脱水剤としてのポリマーが得られ易いことから、(メタ)アクリルアミドがより好ましく、アクリルアミドがさらに好ましい。
【0040】
(アニオン性単量体)
アニオン性単量体としては、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0041】
【化4】
【0042】
前記式(2)中、RはH、CHであり、RはH、CH、COOH又はその塩である。QはSOH、CSOH、CONHC(CHCHSOH、COOH又はそれらの塩である。ここでいう塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0043】
アニオン性単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。これらのアニオン性単量体は、単独で用いてもよく、或いは2種以上を併用してもよい。
これらのうち、所望の汚泥脱水剤としてのポリマーが得られ易いことから、アクリル酸が好ましい。
【0044】
本発明において、ポリマー構成単位の単量体組成は、カチオン性単量体1〜100モル%と、非イオン性単量体0〜99モル%と、及びアニオン性単量体0〜99モル%とからなることが好ましく、カチオン性単量体35〜95モル%と、非イオン性単量体15〜65モル%と、及びアニオン性単量体0〜15モル%とからなることがより好ましい。
上記ポリマー構成単位の単量体組成がこのような範囲にあれば、従来の汚泥脱水剤と同等か、それより少ない添加量であっても、粗大なフロックが形成され、更にフロック同士の凝集性に優れた凝集フロックが形成されることから、重力濾過性に優れ、低含水率の脱水ケーキを得ることができ、効率的な脱水処理が行い易くなる。
【0045】
本発明の汚泥脱水剤は、前述したように、本発明で規定するポリマー、すなわちコロイド当量値低下率が10%以上であるポリマーを含有する。
上記本発明で規定するポリマーの含有量は、汚泥脱水剤100質量%中、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%、好ましくは100質量%である。
上記本発明で規定するポリマーの含有量が、上記範囲にあることで、比較的少ない添加量であっても、強固で粗大なフロックが形成され、重力濾過性に優れ、低含水率の脱水ケーキを得ることができ、効率的な脱水処理が行い易くなる。
【0046】
(2種以上の本発明のポリマーの併用)
本発明の汚泥脱水剤は、前述した本発明のポリマーを少なくとも1種含むが、前述した本発明のポリマーを2種以上含んでもよい。
本発明の汚泥脱水剤が、前述した本発明のポリマーを2種以上含む場合には、当該2種以上のポリマーを1剤として溶媒に混合してポリマー水溶液にして用いてもよく、当該2種以上のポリマーを別々に溶媒に混合して、別々のポリマー水溶液としてから混合して用いてもよい。
【0047】
(他のポリマーの併用)
本発明の汚泥脱水剤は、前述した本発明のポリマーを少なくとも1種含むが、本発明のポリマー以外のポリマー、すなわち前述したコロイド当量値低下率が10%未満であるポリマーを少なくとも1種含んでもよい。
本発明のポリマー以外のポリマー、すなわち前述したコロイド当量値低下率が10%未満であるポリマーとしては、1mol/L硝酸ナトリウム水溶液中30℃での固有粘度が0.5〜5.0dL/gであるポリマーであってもよいし、それ以外であってもよい。
【0048】
本発明のポリマー以外のポリマーとしては、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、及び両性ポリマーであってもよい。
カチオン性ポリマーとしては、例えば、アミジン単位、ビニルアミン単位、アリルアミン単位、及びエチレンイミン単位からなる群より選択される少なくとも1種を構成単位に含むポリマーが挙げられる。
また、カチオン性ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルの塩化メチル4級塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化ベンジル4級塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩、及び(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル硫酸塩などのカチオン性モノマーから1種選択されてなるホモポリマー又は2種以上選択されてなるコポリマー、並びに、それらのカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとのコポリマー;塩化(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウム、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド硫酸塩、及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性モノマーから1種選択されてなるホモポリマー又は2種以上選択されてなるコポリマー、並びに、これらのカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとのコポリマー;等を挙げることができる。
なお、カチオン性ポリマーは、それらの以外に、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ポリアクリルアミドのホフマン分解物も挙げることができる。
アニオン性ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩、ビニルスルホン酸およびその塩、及びビニル硫酸およびその塩などのアニオン性モノマーから1種選択されてなるホモポリマー又は2種以上選択されてなるコポリマー、並びに、それらのアニオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとのコポリマー等を挙げることができる。
両性ポリマーとしては、例えば、前記で挙げたカチオン性モノマーと前記で挙げたアニオン性モノマーとのコポリマー、並びに、それらのカチオン性モノマーとアニオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとのコポリマー等を挙げることができる。
【0049】
前記したノニオン性モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルカルボン酸アミド、N−イソプロペニルカルボン酸アミド、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0050】
(その他の成分)
本発明における汚泥脱水剤は、本発明のポリマーを1種又は2種以上含む他に、前述したように本発明のポリマー以外のポリマーを含んでもよいが、本発明の目的効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、無機凝集剤、有機凝結剤、食塩、硫酸ナトリウム、スルファミン酸、硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0051】
無機凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ硫酸鉄、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄などが一般的であるが、これらに限定されるものではない。
無機凝集剤との併用に特に有効なのが、アニオン性基を導入した両性ポリマー型の本発明のポリマーが挙げられるが、それ以外にも本発明のポリマーと本発明のポリマー以外のポリマー(アニオン性ポリマー、両性ポリマー)を併用する場合が挙げられる。
【0052】
有機凝結剤としては、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドとの共重合体、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリンとジアルキルアミンとの共重合体などが一般的であるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
その他の成分の含有量は、汚泥脱水剤100質量%中、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0質量%である。
上記その他の成分の含有量が、上記範囲にあることで、比較的少ない添加量であっても、強固で粗大なフロックが形成され、重力濾過性に優れ、低含水率の脱水ケーキを得ることができ、効率的な脱水処理が可能となる。
【0054】
[汚泥脱水剤としてのポリマーの製造方法]
前記の汚泥脱水剤としてのポリマーは、ポリマーの構成単位となる単量体と、重合開始剤と、必要に応じて架橋剤とを混合して、加熱し重合させることにより製造することができる。
【0055】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化ベンゾイル等の有機化酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノバレリン酸、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系化合物;等が挙げられる。
重合開始剤の添加量は、ポリマー構成単位となる単量体の種類やその割合等に応じて、任意に決定できるが、架橋剤を除く全単量体量に対して、通常0.001〜0.1モル%程度である。
【0056】
(架橋剤)
必要に応じて架橋剤を使用しても構わない。架橋剤としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
架橋剤を使用する場合の添加量は、ポリマーに必要な溶解性の程度、単量体や重合開始剤の特性、重合方法の態様等に応じて任意に決定できるが、架橋剤を除く全単量体量に対して500ppm以下が望ましい。500ppmを越えると強固な架橋構造になるため、ポリマーの水溶性が著しく低下する。
【0057】
重合方法の態様は、特に限定されるものではなく、例えば、乳化重合法、水溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
【0058】
(乳化重合法)
乳化重合法は、例えば、油性溶媒と界面活性剤とを含む油層混合物を調製し、この調製した油層混合物中に、ポリマー構成単位となる単量体水溶液を添加して撹拌混合して乳化させ、重合を行う。重合開始剤は水溶性であれば単量体水溶液に混合しておけばよく、油溶性であれば乳化後に添加すればよい。このような方法により、W/O型エマルション状液体としてポリマーが得られる。また、このように得たエマルション状液体としてのポリマーは、スプレードライヤー等の乾燥機を用い、噴霧乾燥させて粉末化、さらには造粒化し、粉末状もしくは粒状のポリマーとすることもできる。
前記の油層混合物の調製に用いる油性溶媒としては、例えば、灯油、軽油等の鉱物油及びこれらの精製品であるノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン油等を使用することができ、また、これらと同等の性状を有する合成油、植物油、動物油又はそれらの混合物も使用することができる。
また、前記の油層混合物の調製に用いる界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ペンタオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;等の非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
【0059】
(水溶液重合法)
水溶液重合法は、例えば、ポリマー構成単位となる単量体水溶液中に窒素ガスを吹き込み、更に、窒素ガスを気相に流しながら、重合を行う。重合開始剤は水溶性が好ましく、単量体水溶液に予め添加しておくか、単量体水溶液中への窒素ガス吹き込み後に添加してもよい。
アゾ系の重合開始剤であれば、加熱を行い、アゾ系化合物が分解する温度に達した時点でラジカルが発生し重合が開始される。また、レドックス系の重合開始剤であれば、酸化剤と還元剤の組合せで用いられ、酸化剤と還元剤が混合された時点でラジカルが発生し重合が開始される。このような方法により、高濃度のポリマー水溶液、又はポリマーのゲル状物が得られる。これを希釈して用いることもできるが、粉末状のポリマーとして用いることもできる。
粉末状のポリマーとする方法は、特に限定されないが、例えば、高濃度のポリマー水溶液、又はポリマーのゲル状物を、カッターやハサミ等の裁断機でポリマーを細かく裁断した後にオーブン等で加熱乾燥させて得られた固体ポリマーを、ボールミル、ロールミル、ハンマーミル、及び卓上ミル等の粉砕機で粉砕して粉末状のポリマーを得る方法;高濃度のポリマー水溶液、又はポリマーのゲル状物を、アセトン等の有機溶媒中に投入し、カッターやハサミ等の裁断機でポリマーを細かく裁断して、ポリマーを析出させた後、真空乾燥させて得られた固体ポリマーを、ボールミル、ロールミル、ハンマーミル、及び卓上ミル等の粉砕機で粉砕して粉末状のポリマーを得る方法;等が挙げられる。粉末状のポリマーは、水に溶解又は分散させて用いることができる。
【0060】
[汚泥脱水方法]
本発明の汚泥脱水方法は、下水の余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、食品工場や化学工場等の余剰汚泥や凝沈混合汚泥、及びし尿処理場等の混合汚泥などを主体とした汚泥に前記の汚泥脱水剤を添加して、汚泥を脱水する。
【0061】
このような汚泥脱水方法であれば、比較的少ない添加量であっても、優れた脱水効果を発揮し、強固で粗大なフロックを形成することができ、重力濾過性に優れることから、効率的な脱水処理を実現できる。
【0062】
汚泥中の浮遊物質量(SS)の含有率(質量%)が0.4〜4.0質量%である場合、本発明の汚泥脱水剤としてのポリマーの添加量は、汚泥の全体積量(1L)に対して、好ましくは20〜1600mg/L、より好ましくは50〜1200mg/L、更に好ましくは60〜800mgである。
なお、ここで「浮遊物質量(SS)の含有率(質量%)」とは、脱水処理対象とする汚泥の重量に対する、浮遊物質の重量の割合のことを指していう。
【0063】
汚泥脱水剤の添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の汚泥脱水剤の添加方法を適用することができる。具体的には、先ず、汚泥脱水剤としてのポリマーを所定濃度のポリマー水溶液を調製し、当該所定濃度に調製したポリマー水溶液を、汚泥に対して添加し、例えば180rpmで30秒間等の条件で撹拌することで、凝集フロックを形成する方法が挙げられる。
なお、ポリマー水溶液を調製するのに用いる溶媒としては、電気伝導率が低い溶媒を用いることが好ましい。具体的には、電気伝導率が50mS/m以下の溶媒が好ましく用いられ、このような電気伝導率を有する溶媒としては、例えば、脱イオン水、水道水、工業用水、河川水等が挙げられる。
【0064】
汚泥脱水剤として用いるポリマー水溶液の濃度は、好ましくは0.01〜1.0質量%、より好ましくは0.03〜0.6質量%、更に好ましくは0.05〜0.4質量%である。
上記ポリマー水溶液の濃度が、このような範囲にあれば、従来の汚泥脱水剤と同等か、それより少ない添加量であっても、強固で粗大なフロックが形成されることから、重力濾過性に優れ、低含水率の脱水ケーキを得ることができ、効率的な脱水処理が可能となる。
【0065】
(脱水機)
本発明においては、所定濃度に調製したポリマー水溶液を、汚泥に対して添加し、所定の条件で撹拌することで、凝集フロックが形成される。この凝集フロックは、強固で粗大であることから、重力濾過性に優れ、低含水率の脱水ケーキを得ることができる。
凝集フロックの脱水に用いる脱水機としては、特に限定されないが、例えば、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス、真空脱水機、フィルタープレス、多重円盤型等が挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した汚泥脱水剤としてのポリマーの合成例を以下に示した。
【0067】
(1−1)ポリマーの合成
(合成例1)ポリマー1
<油層混合物の調製工程>
撹拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた1L4ツ口セパラブルフラスコに、油性溶媒としてノルマルパラフィン156g、ノニオン性界面活性剤としてペンタオキシエチレンオレイルエーテル13g及びソルビタンモノオレート13gを仕込み、撹拌混合し、油層混合物を調製した。
<混合乳化工程>
次いで、カチオン性単量体である2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(DAA)の80質量%水溶液175g、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)34g、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.07g、及び純水111gのモノマー混合水溶液を前記の油層混合物に添加して、ホモジナイザー撹拌により乳化させた。
<乳化重合工程>
乳化液中に、撹拌下室温にて、窒素ガスを1時間吹き込んだ。更に、窒素ガスを気相に流しながら、窒素ガス雰囲気下で45〜65℃に温度を制御して15時間重合を行い、W/O型エマルション状液体のポリマー1を得た。
【0068】
(合成例2)ポリマー2
合成例1の混合乳化工程において、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を用いず、モノマー混合水溶液に架橋剤であるトリアリルアミン1.0質量%の塩酸水溶液2.5gを添加し、合成例1の乳化重合工程において、窒素ガスを吹き込む前、撹拌下室温にて、乳化液中に、重合開始剤を2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の4.0質量%トルエン溶液2.0g添加し、窒素ガスを気相に流しながら、窒素ガス雰囲気下で55〜60℃に温度を制御して15時間重合を行ったこと以外は、合成例1と同じ操作にてW/O型エマルション状液体を得た。
次に、得られたW/O型エマルション状液体を、卓上型スプレードライヤーにて噴霧乾燥させ、水分量が5質量%以下の粉末状のポリマー2を得た。
なお、架橋剤であるトリアリルアミン1.0質量%の塩酸水溶液は、100mLビーカーにトリアリルアミン1.0gを量りとり、約50mLの純水を添加し、pHを測定しながら塩酸を少しずつ加え、pHを3以下にした後、100mLメスフラスコに移して100mLにメスアップして、トリアリルアミン1.0質量%の塩酸水溶液を調製した。
【0069】
(合成例3)ポリマー3
<単量体水溶液の調製工程>
撹拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた500mL4ツ口セパラブルフラスコに、純水150gを入れ、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)35.5g、架橋剤であるN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.004gを加えて溶解させた後、カチオン性単量体である2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(DAA)の80質量%水溶液97g、アニオン性単量体であるアクリル酸(AA)7.2gを加え、単量体水溶液を調製した。
<水溶液重合工程>
次いで、前記の500mL4ツ口セパラブルフラスコを氷浴に浸漬させて調製した単量体水溶液の温度を10℃以下とし、重合開始剤である2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩の6.0質量%水溶液5gを添加して、窒素ガスを1時間液中に吹き込んだ。更に、窒素ガスを気相に流しながら、窒素ガス雰囲気下で、前記の500mL4ツ口セパラブルフラスコを55℃の恒温水槽に浸漬させて15時間重合を行い、ポリマーのゲル状物を得た。
このポリマーのゲル状物を、アセトン中に投入しハサミで細かく裁断して、ポリマーを析出させた後、真空乾燥し、得られた固体ポリマーを卓上ミルで粉砕して粉末状のポリマー3を得た。
【0070】
(合成例4)ポリマー4
合成例1の混合乳化工程において、カチオン性単量体である2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(DAA)の80質量%水溶液を115g、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)を51g、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を0.06gとし、モノマー混合水溶液に架橋剤であるN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.007gを添加したこと以外は、合成例1と同じ操作にてW/O型エマルション状液体のポリマー4を得た。
【0071】
(合成例5)ポリマー5
合成例3の単量体水溶液の調製工程において、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)を43g、架橋剤であるN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.003gとし、アニオン性単量体であるアクリル酸(AA)を用いず、合成例3の水溶液重合工程において、重合開始剤である2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩の6.0質量%水溶液を7.2gとしたこと以外は、合成例3と同じ操作にて粉末状のポリマー5を得た。
【0072】
(合成例6)ポリマー6
合成例1の混合乳化工程において、カチオン性単量体である2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(DAA)の80質量%水溶液を210g、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)を15g、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を0.05gとしたこと以外は、合成例1と同じ操作にてW/O型エマルション状液体のポリマー6を得た。
【0073】
(比較合成例1)比較ポリマー1
合成例3の単量体水溶液の調製工程において、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)を28gとし、架橋剤であるN,N’−メチレンビスアクリルアミドを用いず、カチオン性単量体である2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(DAA)の80質量%水溶液を145gとし、アニオン性単量体であるアクリル酸(AA)を用いず、合成例3の水溶液重合工程において、重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.1gとし、恒温水槽の温度を45℃としたこと以外は、合成例3と同じ操作にて末状の比較ポリマー1を得た。
【0074】
(比較合成例2)比較ポリマー2
合成例3の単量体水溶液の調製工程において、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)を28g、架橋剤をトリアリルアミン1.0質量%の塩酸水溶液0.3g、カチオン性単量体である2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(DAA)の80質量%水溶液を145gとし、アニオン性単量体であるアクリル酸(AA)を用いず、合成例3の水溶液重合工程において、重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08gとし、恒温水槽の温度を45℃としたこと以外は、合成例3と同じ操作にて粉末状の比較ポリマー2を得た。
【0075】
(比較合成例3)比較ポリマー3
合成例1の混合乳化工程において、カチオン性単量体である2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(DAA)の80質量%水溶液を115g、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)を51gとし、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を用いず、モノマー混合水溶液に、架橋剤であるN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.001gを添加し、合成例1の乳化重合工程において、窒素ガスを吹き込む前、撹拌下室温にて、乳化液中に、重合開始剤を2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の4.0質量%トルエン溶液1.8g添加し、窒素ガスを気相に流しながら、窒素ガス雰囲気下で55〜60℃に温度を制御して15時間重合を行ったこと以外は、合成例1と同じ操作にてW/O型エマルション状液体を得た。
次に、得られたW/O型エマルション状液体を、卓上型スプレードライヤーにて噴霧乾燥させ、水分量が5質量%以下の粉末状の比較ポリマー3を得た。
【0076】
(比較合成例4)比較ポリマー4
合成例1の混合乳化工程において、カチオン性単量体である2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(DAA)の80質量%水溶液を115g、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)を51g、重合開始剤である2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩の6.0質量%水溶液を8.3gとし、モノマー混合水溶液に架橋剤であるトリアリルアミン1.0質量%の塩酸水溶液0.4gを添加したこと以外は、合成例1と同じ操作にてW/O型エマルション状液体のポリマー4を得た。
【0077】
(比較合成例5)比較ポリマー5
合成例1の混合乳化工程において、カチオン性単量体である2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(DAA)の80質量%水溶液を115g、非イオン性単量体であるアクリルアミド(AAM)を51gとし、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を用いず、モノマー混合水溶液に架橋剤であるトリアリルアミン1.0質量%の塩酸水溶液0.4gを添加し、合成例1の乳化重合工程において、窒素ガスを吹き込む前、撹拌下室温にて、乳化液中に、重合開始剤を2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の4.0質量%トルエン溶液2.5g添加し、窒素ガスを気相に流しながら、窒素ガス雰囲気下で35〜50℃に温度を制御して15時間重合を行ったこと以外は、合成例1と同じ操作にてW/O型エマルション状液体を得た。
【0078】
前記の合成例1〜6で得られたポリマー1〜6は実施例で、前記の比較合成例1〜5で得られた比較ポリマー1〜5は比較例で使用した。市販品ポリマーA(栗田工業株式会社製、商品名:クリフィックスCP)は比較例で使用した。
実施例で使用したポリマー1〜6、並びに比較例で使用した比較ポリマー1〜5及び市販品ポリマーAについて、以下に示す方法で固有粘度及びコロイド当量値の測定を行い、その測定結果を表1にまとめた。
【0079】
(1−2)固有粘度
前記の合成例1〜6で得られたポリマー1〜6、比較合成例1〜5で得られた比較ポリマー1〜5、及び市販品ポリマーAについて、以下のようにして、固有粘度を求めた。
(1)キャノンフェンスケ粘度計(株式会社草野化学製No.75)5本をガラス器具用中性洗剤に1日以上浸漬後、脱イオン水で十分洗浄し、乾燥させた。
(2)粉末状のポリマー(ポリマー2、3、5、比較ポリマー1、2、3、市販品ポリマーA)については、一部を採取し、ポリマー約0.3gを精秤し、脱イオン水に、マグネティックスターラーにて500rpmでの撹拌下で加え、2時間撹拌後、15〜24時間静置し、再び500rpmで30分間撹拌した後、ガラスフィルター3G2で全量濾過し、0.2質量%ポリマー水溶液を調製した。
一方、エマルション状のポリマー(ポリマー1、4、6、比較ポリマー4、5)については、一部を採取し、大過剰のアセトンに添加してポリマーを析出させ精製を行い、この精製した析出物を真空乾燥し粉末状のポリマーを得た。この粉末状のポリマーは、上記と同様の方法で、0.2質量%ポリマー水溶液を調製した。
(3)前記の0.2質量%ポリマー水溶液50mLに2mol/L硝酸ナトリウム水溶液50mLを加え、マグネティックスターラーにて500rpmで20分間撹拌した後、ポリマー濃度0.1質量%の1mol/L硝酸ナトリウム水溶液を得た。これを1mol/L硝酸ナトリウム水溶液で希釈して0.02、0.04、0.06、0.08、0.1質量%の5段階の濃度のポリマー試料溶液を調製した。なお、1mol/L硝酸ナトリウム水溶液(1mol/L−NaNO)をブランク液とした。
(4)温度30℃(±0.02℃内)に調整した恒温水槽内に、前記粘度計5本を垂直に取り付けた。各粘度計にホールピペットにてブランク液10mLを入れた後、温度を一定にするために約30分間静置した。その後、スポイト栓を用いて液を吸い上げ、自然落下させて、標線を通過する時間をストップウォッチで1/100秒単位まで測定した。この測定を、各粘度計について5回繰り返し、平均値をブランク値(t)とした。
(5)前記で調製した5段階の濃度のポリマー試料溶液各10mLを、ブランク液の測定を行った粘度計5本に入れ、温度を一定にするために約30分間静置した。その後、ブランク液の測定と同様の操作を3回繰り返し、濃度ごとの通過時間の平均値を測定値(t)とした。
(6)前記のブランク値t、測定値t、及びポリマー試料溶液の濃度C[質量/体積%](=C[g/dL])から、相対粘度ηrel、比粘度ηSP、及び還元粘度ηSP/C[dL/g]を下記の関係式から求めた。
ηrel=t/t
ηSP=(t−t)/t=ηrel−1
これらの値から、下記に示すHugginsの式により、各ポリマーの固有粘度[η]を算出した。なお、下記式において、k’はHuggins定数を表す。
Hugginsの式: ηSP/C=[η]+k’[η]
5段階の各濃度のポリマー試料溶液の各比粘度ηSPを求めて、CをグラフのX軸に、ηSP/CをグラフのY軸にプロットし、Cを0に外挿した切片の値が固有粘度[η]である。
【0080】
(1−3)コロイド当量値
前記の合成例1〜6で得られたポリマー1〜6、比較合成例1〜5で得られた比較ポリマー1〜5、及び市販品ポリマーAについて、以下のようにして、コロイド当量値を求めた。
(脱イオン水中のコロイド当量値)
電気伝導率が0.1mS/mの脱イオン水を用いて、前記の(1−2)固有粘度の測定で示した方法と同様にして、0.2質量%ポリマー溶液を調製した。
0.2質量%ポリマー溶液25mLをホールピペットで計り取り、200mLメスシリンダーに入れ、脱イオン水を用いてメスアップし、よく転倒攪拌を行い250mg/Lの測定試料を調製した。
コニカルビーカーを2つ用意し、それぞれのコニカルビーカーに脱イオン水80mLを入れ、更に測定試料20mLを添加し、マグネティックスターラーで十分に撹拌して、それぞれ滴定対象試料とした。
一方の滴定対象試料ではpH3、もう一方の滴定対象試料ではpH5となるように、pH計で確認しながら塩酸水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液を添加し、それぞれの滴定対象試料のpHを調整した。
pH3、pH5に調整したそれぞれの滴定対象試料に対して、予め指示薬としてトルイジンブルー1〜2滴を添加し撹拌しておく。
次いで、滴定液として0.0025mol/L(1/400N)のポリビニル硫酸カリウム標準液を用い2mL/分の速度で撹拌しながら滴定し、青色からピンク色に変化してピンク色を10秒以上保持する点を終点とし、滴定量AmLを求めた。
その一方で、脱イオン水についても、前記の滴定対象試料に対して行った方法と同様に滴定を行い、ブランク滴定量BmLを求めた。pH3、pH5に調整した滴定対象試料のコロイド当量値は、滴定量AmL、及びブランク滴定量BmLの結果から下記の数式2よりそれぞれ算出した。
【0081】
【数4】
【0082】
pH3、5に調整した滴定対象試料のそれぞれは、滴定終了後にpH値を計測し、計測したpH値をグラフのX軸に、上記の数式2より算出したコロイド当量値をグラフのY軸にそれぞれプロットした。
グラフにプロットした2点を結んだ直線からpH4に相当する値におけるコロイド当量値を読み取り、pH4における脱イオン水中のコロイド当量値(meq/g)とした。
【0083】
(食塩水中のコロイド当量値)
食塩(NaCl)を脱イオン水(電気伝導率:0.1mS/m)に溶解させて、0.01mol/Lの食塩水を調製した。この食塩水の電気伝導率は112mS/mであった。
0.01mol/Lの食塩水を用いて、前記の(1−2)固有粘度の測定で示した方法と同様にして、0.2質量%ポリマー溶液を調製した。
脱イオン水の代わりに0.01mol/Lの食塩水を用いたこと以外は、前記の(脱イオン水中のコロイド当量値)と同様にして、pH4における0.01mol/Lの食塩水中のコロイド当量値(meq/g)を求めた。
【0084】
(コロイド当量値低下率)
脱イオン水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値(I)と、0.01mol/Lの食塩水中でコロイド滴定法にて測定したpH4におけるコロイド当量値(II)とを、下記の数式1に代入し、コロイド当量値低下率(%)を算出した。
【0085】
【数5】
【0086】
なお、表1中、ポリマーを構成する単量体組成の略称は以下のとおりである。また、表1中、カチオン性単量体であるDAAに付された*は、80質量%水溶液の重量を表す。
・カチオン性単量体
DAA:2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド
DAM:2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド
・非イオン性単量体
AAM:アクリルアミド
・アニオン性単量体
AA:アクリル酸
【0087】
【表1】
【0088】
実施例及び比較例で使用した汚泥A、Bについて、以下に示す方法で汚泥の性状について測定を行い、その測定結果を表2に示した。
【0089】
(2−1)浮遊物質(SS)の含有率(質量%)
汚泥100mLを3000rpmで10分間遠心分離して上澄み液を除去し、沈殿物を水洗しながら秤量済みのルツボに流し込み、105〜110℃の温度範囲で15時間乾燥した後に秤量し、乾燥後にルツボに残った残留物の重量を求めた。
乾燥後にルツボに残った残留物の重量は、汚泥100mL中に含まれる浮遊物質(SS:Suspended Solids)の重量である。乾燥前の汚泥100mLの重量に対する、乾燥後にルツボに残った残留物(浮遊物質)の重量の割合を求めたものが、SSの含有率(質量%)である。
【0090】
(2−2)SSの強熱減量(VSS)の含有率(質量%/SS)
前記(2−1)で乾燥後にルツボに残った残留物(浮遊物質)の重量を求めた後、残留物(浮遊物質)がルツボに入った状態で、600±25℃の温度範囲で2時間強熱し、放冷後に秤量し、強熱後にルツボに残った残留物の重量を求めた。
強熱後にルツボに残った残留物の重量は、前記(2−1)で乾燥後にルツボに残った残留物(浮遊物質)中に含まれる不揮発性の浮遊物質の重量である。その一方で、乾燥後にルツボに残った残留物(浮遊物質)の重量と強熱後にルツボに残った残留物(不揮発性の浮遊物質)の重量の差分量は、揮発性の浮遊物質(VSS:Volatile Suspended Solids)の重量である。乾燥後にルツボに残った残留物(浮遊物質)の重量に対する、揮発性の浮遊物質の重量の割合を求めたものが、VSSの含有率(質量%/SS)である。
【0091】
(2−3)蒸発残留物(TS)の含有率(質量%)
汚泥100mLを秤量済みのルツボに入れ、105〜110℃の温度範囲で15時間乾燥した後に秤量し、乾燥後にルツボに残った残留物の重量を求めた。
乾燥後にルツボに残った残留物の重量は、汚泥100mL中に含まれる蒸発残留物(TS:Total Solids)の重量である。乾燥前の汚泥100mLの重量に対する、乾燥後にルツボに残った残留物(全固形分)の重量の割合を求めたものが、TSの含有率(質量%)である。
【0092】
(2−4)強熱減量(VTS)の含有率(質量%/TS)
前記(2−3)で乾燥後にルツボに残った残留物(蒸発残留物)の重量を求めた後、残留物(蒸発残留物)がルツボに入った状態で、600±25℃の温度範囲で2時間強熱し、放冷後に秤量し、強熱後にルツボに残った残留物の重量を求めた。
強熱後にルツボに残った残留物の重量は、前記(2−3)で乾燥後にルツボに残った残留物(蒸発残留物)中に含まれる不揮発性の蒸発残留物の重量である。その一方で、乾燥後にルツボに残った残留物(蒸発残留物)の重量と強熱後にルツボに残った残留物(不揮発性の蒸発残留物)の重量の差分量は、揮発性の蒸発残留物(VTS:Volatile Total Solids)の重量である。乾燥後にルツボに残った残留物(蒸発残留物)の重量に対する、揮発性の全固形分の重量の割合を求めたものが、VTSの含有率(質量%/TS)である。
【0093】
(2−5)繊維分の含有率(質量%/SS)
汚泥100mLを100メッシュ(目開き:149μm)のふるいで濾過し、ふるい上に残った残留物を水洗しながら秤量済みのルツボに流し込み、105〜110℃の温度範囲で15時間乾燥した後に秤量し、乾燥後にルツボに残った残留物の重量を求めた。
乾燥後にルツボに残った残留物の重量は、汚泥100mL中に含まれる約149μm以上の浮遊物質の重量である。
その後、ルツボに残った残留物がルツボに入った状態で、600±25℃の温度範囲で2時間強熱し、放冷後秤量し、強熱後に残った残留物の重量を求めた。
強熱後に残った残留物の重量は、乾燥後にルツボに残った残留物(約149μm以上の浮遊物質)中に含まれる不揮発性の浮遊物質の重量である。その一方で、乾燥後にルツボに残った残留物の重量と強熱後に残った残留物(不揮発性の浮遊物質)の重量の差分量は、主に揮発性の繊維分の重量である。乾燥後にルツボに残った残留物(約149μm以上の浮遊物質)の重量に対する、揮発性の繊維分の重量の割合を求めたものが、繊維分の含有率(質量%/SS)である。
【0094】
(2−6)pH
JIS Z 8802:2011に準拠して、ガラス電極法の操作に基づいてpHを測定した。なお、pHの校正には、市販のフタル酸塩、中性りん酸塩、及び炭酸塩の各pH標準液を用いた。
【0095】
(2−7)電気伝導率
JIS K 0102:2016に準拠して、電気伝導率を測定した。
【0096】
【表2】
【0097】
前記の合成例1〜6で得られたポリマー1〜6、比較合成例1〜5で得られた比較ポリマー1〜5、及び市販品ポリマーAを評価するために、汚泥A、Bを用いて実施例1〜9及び比較例1〜9を行った。
【0098】
(実施例1〜3)
ポリマー1、2、3をそれぞれ用い、前記の(1−2)固有粘度の測定で示した方法と同様にして、0.2質量%ポリマー溶液を調製した。
この0.2質量%ポリマー溶液を、300mLビーカーに採取した汚泥A200mLに対して、添加量が200mg/L(0.95質量%/SS)となるようにポリマー水溶液を添加し、180rpmで30秒間撹拌して、実施例1〜3の凝集フロックをそれぞれ形成した。
(実施例4)
ポリマー6を用い、300mLビーカーに採取した汚泥A200mLに対して、添加量が220mg/L(1.05質量%/SS)となるようにポリマー水溶液を添加したこと以外は実施例1〜3と同様にして、実施例4の凝集フロックを形成した。
【0099】
(比較例1〜4)
比較ポリマー1、2、3、市販品ポリマーAをそれぞれ用い、300mLビーカーに採取した汚泥A200mLに対して、添加量が220mg/L(1.05質量%/SS)となるようにポリマー水溶液を添加したこと以外は実施例1〜3と同様にして、比較例1〜4の凝集フロックをそれぞれ形成した。
【0100】
(実施例5〜6)
ポリマー2、3を用い、300mLビーカーに採取した汚泥B200mLに対して、添加量が140mg/L(0.78質量%/SS)となるようにポリマー水溶液を添加したこと以外は実施例1〜3と同様にして、実施例5〜6の凝集フロックをそれぞれ形成した。
(実施例7〜9)
ポリマー4、5、ポリマー6を用い、300mLビーカーに採取した汚泥B200mLに対して、添加量が160mg/L(0.89質量%/SS)となるようにポリマー水溶液を添加したこと以外は実施例1〜3と同様にして、実施例7〜9の凝集フロックをそれぞれ形成した。
【0101】
(比較例5〜9)
比較ポリマー2、3、4、5、市販品ポリマーAをそれぞれ用い、300mLビーカーに採取した汚泥B200mLに対して、添加量が160mg/L(0.89質量%/SS)となるようにポリマー水溶液を添加したこと以外は実施例1〜3と同様にして、比較例5〜9の凝集フロックをそれぞれ形成した。
【0102】
実施例1〜9及び比較例1〜9で形成した凝集フロックについて、以下に示す方法で凝集フロックの特性について測定を行い、その測定結果を表3にまとめた。
【0103】
(3−1)フロック径
実施例1〜8及び比較例1〜8で形成した凝集フロックについて、ビーカーの上方から観察できる約100個のフロックを対象とし、メジャーを用いて個々のフロックの径を測定し、その平均を求めた。
このフロック径が大きいほど、粗大な凝集フロックが形成されたと評価できる。
【0104】
(3−2)20秒濾過量
200mLメスシリンダー上に、内径80mmのブフナーロート(孔径:約1mm)を設置し、更にブフナーロートの内側に内径50mmのポリ塩化ビニル製の筒を設置した。この筒内に、実施例1〜8及び比較例1〜8で形成した凝集フロックを、一気に注ぎ入れ、ブフナーロートの孔を通過して注ぎ出た濾液をメスシリンダーで採取した。凝集フロックを注ぎ入れてから20秒間で採取された濾液の量(20秒濾過量)をメスシリンダーの目盛りから読み取り測定した。
この20秒濾過量が多いほど、重力濾過性に優れた凝集フロックが形成されたと評価できる。
【0105】
(3−3)SSリーク量
前記の20秒濾過量の測定において凝集フロックを注ぎ入れてから20秒経過後、更に連続して40秒経過後以降、すなわち凝集フロックを注ぎ入れてから60秒経過後以降に採取されたSSリーク量を、前記の20秒濾過量の測定で用いたメスシリンダーとは別のメスシリンダーで採取し、メスシリンダーの目盛りから読み取り測定した。
ここで「SSリーク量」とは、凝集フロックを注ぎ入れてから60秒経過後以降にブフナーロート(孔径:約1mm)の孔を通過して漏れ出てしまうほど、径が小さいフロック、凝集力が弱く形状が崩壊したフロック等の浮遊物質(SS:Suspended Solid)の量を指していう。
このSSリーク量が少ないほど、強固で粗大な凝集フロックが形成されたと評価できる。
但し、20秒濾過量が多くてもSSリーク量が多ければ汚泥脱水処理としては不良であるため、ポリマーの脱水性能を判断する際は、20秒濾過量とSSリーク量をセットで評価する必要がある。
【0106】
(3−4)ケーキ含水率
前記のSSリーク量測定後、ブフナーロートに残った凝集フロックを、ポリ塩化ビニル製カラム(直径:30mm、高さ:17.5mm)内に詰めた後、当該カラムを外し、直径30mmに形作られた凝集フロックに対し、その上方から0.1MPaの圧力で60秒間圧搾し、脱水ケーキを得た。
この脱水ケーキの重量(W1)と、更に、当該脱水ケーキを105℃の温度で15時間乾燥させた後の脱水ケーキの重量(W2)とを測定し、乾燥前の重量(W1)と乾燥後の重量(W2)の減量分(W1−W2)を脱水ケーキの含水量とみなし、下記数式3よりケーキ含水率を算出した。
このケーキ含水率が低いほど、含水量が少ない凝集フロックが形成され、凝集フロックの乾燥処理に要する時間やエネルギーを削減できると評価できる。
なお、ケーキ含水率が80〜85%程度であれば、従来の汚泥脱水剤を用いて得られる凝集フロックと同様に取り扱うことができる。
【0107】
【数6】
【0108】
【表3】
【0109】
(結果のまとめ)
表3に記載されている測定結果より、以下のことが分かる。
汚泥種を汚泥Aとした測定結果において、ポリマー6と、比較ポリマー1、2、3、及び市販品ポリマーAとで添加量が同じであっても、比較ポリマー1、2、3、及び市販品ポリマーAは、本願で規定するコロイド当量値低下率が10%未満であることに起因して、フロック径が小さく、SSリークが測定され、ケーキ含水率も高くなる傾向が示された。
これに対して、ポリマー6は、本願で規定するコロイド当量値低下率(10%以上)を有することに起因して、フロック径が大きく、SSリークは測定されず20秒濾過量が多く、ケーキ含水率が低くなる傾向が示された。
また、汚泥種を汚泥Aとした測定結果において、ポリマー1、2、3の方が、比較ポリマー1、2、3、及び市販品ポリマーAよりも添加量が少ないにも関わらず、ポリマー1、2、3は、本願で規定するコロイド当量値低下率(10%以上)を有することに起因して、フロック径が大きく、SSリークは測定されず20秒濾過量が多く、ケーキ含水率が低くなる傾向が示された。
更に、本願で規定するコロイド当量値低下率(10%以上)を有する、ポリマー1、2、3、及びポリマー6の中でも、特定の固有粘度(0.5〜5.0dL/g)を有するポリマー1、2、3の方が、ポリマー6よりも添加量が少ないにも関わらず、より高い効果が得られることが示された。
【0110】
汚泥種を汚泥Bとした測定結果において、ポリマー4、5、及びポリマー6と、比較ポリマー2、3、4、5、及び市販品ポリマーAとで添加量が同じであっても、比較ポリマー2、3、4、5、及び市販品ポリマーAは、本願で規定するコロイド当量値低下率が10%未満であることに起因して、フロック径が小さく、SSリークが測定されるか20秒濾過量が少なく、ケーキ含水率も高くなる傾向が示された。
これに対して、ポリマー4、5、及びポリマー6は、本願で規定するコロイド当量値低下率(10%以上)を有することに起因して、フロック径が大きく、SSリークは測定され難く20秒濾過量が多く、ケーキ含水率が低くなる傾向が示された。
また、汚泥種を汚泥Bとした測定結果において、ポリマー2、3の方が、比較ポリマー2、3、4、5、及び市販品ポリマーAよりも添加量が少ないにも関わらず、ポリマー2、3は、本願で規定するコロイド当量値低下率(10%以上)を有することに起因して、フロック径が大きく、SSリークは測定されず20秒濾過量が多く、ケーキ含水率が低くなる傾向が示された。
更に、本願で規定するコロイド当量値低下率(10%以上)を有する、ポリマー2、3、4、5及びポリマー6の中でも、特定の固有粘度(0.5〜5.0dL/g)を有するポリマー2、3の方が、ポリマー4、5、及びポリマー6よりも添加量が少ないにも関わらず、より高い効果が得られることが示された。