【実施例1】
【0015】
まず、本発明のMEMS素子について説明する。
図1は、本発明のMEMS素子の説明図である。例えばシリコン基板からなるハンドル基板7上に絶縁膜8を介して、固定電極膜の支持膜14と固定電極膜11が、スペーサー10を挟んで対向配置している。このとき支持膜14と固定電極膜11はハンドル基板7上に固着されている。一方可動電極を含む可動電極膜9は支持膜14上に載置された状態で配置されている。
図1に示すように本発明の可動電極膜9はスペーサー10に接触していない。
【0016】
図2は、支持膜14と可動電極膜9の一部拡大図である。支持膜14と可動電極膜9の間には、これらを接続する連結膜15が配置されている。
図2に示すように、領域Aの連結膜15は、支持膜14に接着しているため、支持膜14と一体となり可動電極膜9を支持することになる。領域Bの連結膜15は、支持膜14、可動電極膜9のいずれとも接着しておらず、可動電極膜9の振動に伴い変形し可動電極膜9と支持膜14とを接続する機能を有することになる。従ってこの部分の連結膜14により、「変形化可能な連結部材」が形成されることになる。また領域Cの連結膜15は、可動電極膜9に接着しているため、後述する突起17を形成するために形成された窒化膜とともに連結部16を構成することになる。
【0017】
領域Aおよび領域Bの連結膜15の可動電極膜9側の表面には、可動電極膜9と連結膜15とのステッキング防止のため突起17が形成されている。さらに領域Dの支持膜14上にも、領域Bおよび領域Cの可動電極膜9が図面下側に変形する可能性があるので、ステッキング防止のため突起17が形成されている。このように構成することで、可動電極膜9が固定電極膜方向に変位する際、領域Bの連結膜15が変形可能な範囲で浮き上がることになる。なお、後述する製造方法に従い形成される突起17は、
図2に模式的に示すように連結膜15上に形成すること限定されず、可動電極膜9側に形成したり、支持膜14側と可動電極膜9側の両方に形成することも可能である。
【0018】
図3は、可動電極膜9が変位した状態を模式的に示した図である。可動電極膜9は、連結膜15の変形可能な範囲で支持膜14から浮き上がっている。
図3に示す例では、連結膜15の一部が可動電極膜9の段差に沿った形状となっており、可動電極膜9の可動範囲が広がっている。可動電極膜9をこのような多重構造とすると連結膜15が容易に変形可能となり、可動電極膜9の表面が平行平板形状のままで対向する固定電極膜に近づけることができ好ましい。なお、支持膜14と可動電極膜9とを繋ぐ連結膜、特に変形可能な連結膜(連結部材)は、可動電極膜9の全周にわたり形成する必要はなく、必要な部分に適宜配置すれば良い。
【0019】
このように可動電極膜9をスペーサー10等に接触しない状態で支持膜14上に載置するように構成すると、ハンドル基板7やスペーサー10に力が加わった場合でも可動電極膜9にその力が伝わることがなくなる。さらに可動電極膜9がスペーサー10から分離されているため、固定による変位の制限がない構造となっている。その結果、可動電極膜9とこれに対向する平行平板状の固定電極膜とから安定した出力信号が得られるMEMS素子を提供することが可能となる。
【0020】
次に
図1乃至
図3に示すMEMS素子の製造方法について説明する。通常のMEMS素子同様、シリコン基板からなるハンドル基板7表面に、シリコンを熱酸化した絶縁膜8を形成する。絶縁膜8上に、導電性のポリシリコン膜からなる支持膜14を積層形成し、通常のフォトリソグラフ法により、可動電極膜の形成予定領域に可動電極膜へ音圧等を伝える貫通孔18aを形成する。(
図4)。
【0021】
全面に酸化膜19aを堆積し、貫通孔18a内を酸化膜19aで充填し、支持膜14の表面を露出させる。露出する支持膜14および酸化膜19a上に窒化膜を形成する。この窒化膜によって
図2で説明した領域Dのステッキング防止用の突起を形成するため、突起形成予定領域を覆うようにフォトレジストを形成し、フォトレジストで覆われた窒化膜をフォトレジストの端部からエッチングを進行させ、窒化膜の一部を残してエッチングを終了させる。フォトレジストを除去すると、支持膜14上にわずかに残る窒化膜により突起17を形成することができる(
図5)。
【0022】
その後、全面に別の酸化膜19bを形成し、可動電極膜形成予定領域より狭い領域の支持膜14の表面を露出させる。酸化膜19bの一部を除去して支持膜14を露出させることで、酸化膜19bに段部19cが形成される(
図6)。この段部19cに沿って形成される連結膜の形状により、可動電極膜9の可動寸法が決まるので、所望の可動寸法が得られるように高さを調節する必要がある。なお、先に形成した突起17の先端は、酸化膜19bによって被覆された状態とする必要がある。突起17の先端が露出すると、後述する連結膜15と固着し、ステッキング防止の機能を発揮できなくなるからである。
【0023】
全面に導電性のポリシリコンを形成し、通常のフォトリソグラフ法により、連結膜15を形成する。このとき先に形成した貫通孔18aと同様の貫通孔18bも形成する。この貫通孔18bは、可動電極膜に音圧等を印加するために使用される。連結膜15の中央部分は
図2で説明した領域Aとなり、先に形成した支持膜14と接合し、可動電極膜を支持する。連結膜15の端部は、
図2で説明した領域Cとなり、可動電極膜と接合部を形成するため、この部分には貫通孔18bは形成しない(
図7)。
【0024】
なお連結膜15は、可動電極膜9が音圧等を受けて変位するとき可動電極膜9の変位を妨げず、一方音圧等がなくなったときには所定の位置に可動電極膜9が戻るようにすればよい。そのため連結膜15の配置は、可動電極膜9の全周にわたり形成する必要はなく、適宜連結膜を配置する位置や数を設定すればよい。
【0025】
その後、貫通孔18b内に酸化膜19cを充填して平坦化し、連結膜15の表面を露出させる。露出した連結膜15および酸化膜19cの表面に窒化膜20を積層形成する。その後、先に説明したステッキング防止用の突起の形成同様、
図2で説明した領域Aおよび領域Bの突起形成予定領域を覆うようにフォトレジストを形成し、窒化膜20の一部を残すようにエッチングすることで突起17を形成する。領域Cの窒化膜20はエッチングせず、連結膜15上に残しておく(
図8)。
【0026】
全面に酸化膜19dを積層し、平坦化することで領域Aおよび領域Bに形成した突起の表面を被覆する。このとき、領域Aには段差が残ったままとなる。この段差により、後述する可動電極膜9を厚く形成することができ、可動電極膜の強度が増すとともに、変形が少なくなり好ましい。領域Cに相当する窒化膜20の表面は露出させておく(
図9)。
【0027】
その後、領域Aの段差を充填し、表面が平坦化された導電性のポリシリコンからなる可動電極膜9を形成する。
図10では、段部を平坦化するポリシリコン膜と表面が平坦なポリシリコン膜の二層構造とする例を記載している。この可動電極膜9は、後述する固定電極膜と対向配置し、可動電極膜9の変位により変化する信号を出力するので、可動電極膜9の表面は平坦であることが望ましい。この可動電極膜9は、領域Aおよび領域Bでは平坦化のために形成した酸化膜19d上に積層し、領域Cでは露出する窒化膜20を介して連結膜15と広い面積で接着する構造としている。
【0028】
可動電極膜9上に、USG(Undoped Silicate Glass)膜からなる犠牲層10aを積層する。犠牲層10a上に導電性のポリシリコンからなる固定電極膜11を形成する。固定電極膜11には通常のMEMS素子同様、貫通孔21を形成する(
図11)。
【0029】
ハンドル基板7の裏面側からハンドル基板7の一部を除去して絶縁膜8を露出させ、バックチャンバー13を形成する(
図12)。
【0030】
最後にバックチャンバー13内に露出する絶縁膜8(酸化膜)を除去するとともに、
貫通孔18a等内に露出する酸化膜19a〜19d、犠牲層10a(酸化膜)の一部も除去する。その結果、犠牲層10aや平坦化のための積層した酸化膜19b〜19dからなるスペーサーを有し、可動電極膜9がこのスペーサー10に接触しない
図1に示す構造のMEMS素子が形成される。
【0031】
以下、通常のMEMS素子の製造工程に従い、説明を省略した可動電極膜、固定電極膜あるいはさらに支持膜に接続し、所望の電位を印加可能な引出電極等を形成し、MEMS素子を完成することができる。
【0032】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでなく、突起を形成するための選択エッチングを行うことができるように種々材料を変更したり、連結部材の可動領域を大きくするため、領域Bに形成される連結膜の長さを長くするため、可動電極膜を多層構造とする等種々変更可能である。