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特開2019-209657絶縁樹脂被覆金属基材、絶縁樹脂被覆金属基材の製造方法、並びに、電気電子部品及び接点部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-209657(P2019-209657A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】絶縁樹脂被覆金属基材、絶縁樹脂被覆金属基材の製造方法、並びに、電気電子部品及び接点部品
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20191115BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20191115BHJP
   G01N 23/2258 20180101ALI20191115BHJP
【FI】
   B32B15/08 Q
   B32B27/06
   G01N23/2258
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-110131(P2018-110131)
(22)【出願日】2018年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】川田 紳悟
(72)【発明者】
【氏名】北河 秀一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 優
【テーマコード(参考)】
2G001
4F100
【Fターム(参考)】
2G001AA05
2G001BA06
2G001CA05
2G001GA02
2G001GA06
2G001KA01
2G001LA05
2G001MA05
2G001NA03
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AB13B
4F100AB16B
4F100AB17B
4F100AB21B
4F100AB24B
4F100AB25B
4F100AK04B
4F100AK18B
4F100AK19B
4F100AK46B
4F100AK49B
4F100AK50B
4F100AK53B
4F100AL01B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DA16A
4F100DC21B
4F100GB41
4F100JG04B
4F100JK06
4F100JK09
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】金属基材等と絶縁樹脂層との密着性及び絶縁樹脂層の耐摩耗性に優れた絶縁樹脂被覆金属基材、絶縁樹脂被覆金属基材の製造方法、並びに、絶縁樹脂被覆金属基材を備える電気電子部品及び接点部品を提供すること。
【解決手段】金属基材1と、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂を含有し、金属基材1の表面の一部又は全面を直接、又は中間層を介して間接的に被覆する絶縁樹脂層2とを有し、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)を用いて、絶縁樹脂層2の表面における酸素元素のマッピング測定を行い、該マッピング測定から算出される絶縁樹脂層2の表面に存在する酸素元素の割合が、10〜90%である、絶縁樹脂被覆金属基材10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材と、
ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂を含有し、前記金属基材の表面の一部又は全面を直接、又は中間層を介して間接的に被覆する絶縁樹脂層とを有し、
飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)を用いて、前記絶縁樹脂層の表面における酸素元素のマッピング測定を行い、該マッピング測定から算出される前記絶縁樹脂層の表面に存在する酸素元素の割合が、10〜90%である、絶縁樹脂被覆金属基材。
【請求項2】
前記絶縁樹脂層の厚さが、1μm以上30μm以下である、請求項1に記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【請求項3】
前記金属基材が、第4族〜第13族の元素から選択される1種又は2種以上を含有する金属材料で構成される、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【請求項4】
前記絶縁樹脂層は、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種又は2種以上の酸素元素非含有樹脂を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【請求項5】
前記金属基材の表面の一部又は全面が、前記絶縁樹脂層で前記中間層を介して間接的に被覆され、
前記中間層が、第4族〜第13族の元素から選択される1種又は2種以上を含む第1金属層を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【請求項6】
前記金属基材の表面の一部が、前記絶縁樹脂層で直接被覆され、
前記金属基材の表面の、前記絶縁樹脂層で直接被覆されていない領域の一部又は全面が、錫、銅、鉄、ニッケル、クロム、パラジウム、銀及び金から選択される1種又は2種以上を含む第2金属層で直接被覆されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【請求項7】
前記金属基材が金属条である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁樹脂被覆金属基材を備える、電気電子部品。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁樹脂被覆金属基材を備える、接点部品。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁樹脂被覆金属基材の製造方法であって、
ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂と、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種又は2種以上の酸素元素非含有樹脂とを含有するワニスを、前記金属基材の表面に塗布するワニス塗布工程と、250℃〜400℃で2秒〜500秒の間で熱処理して前記金属基材の表面に前記絶縁樹脂層を形成する絶縁樹脂層形成工程を有する、絶縁樹脂被覆金属基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材表面が絶縁樹脂で被覆された絶縁樹脂被覆金属基材、絶縁樹脂被覆金属基材の製造方法、並びに、絶縁樹脂被覆金属基材を備える電気電子部品及び接点部品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属基板等の金属基材に絶縁樹脂層を被覆した絶縁樹脂被覆金属基材は、電気電子部品や接点部品の基材として使用されている。金属基材を絶縁樹脂で被覆することによって、金属基材が他の導電部材に接触することにより生じる短絡を防止することができる。
【0003】
しかしながら、所望の形状を有する電気電子部品用部材等とするために、絶縁樹脂被覆金属基材に対して打ち抜き加工や曲げ加工等の加工を施す場合、金属基材に対する絶縁樹脂層の密着性が悪いと、金属基材から絶縁樹脂層が剥離してしまうおそれがある。このため、絶縁樹脂被覆金属基材には、それを構成する金属基材と樹脂被膜との密着性に優れていることが要求される。
【0004】
金属基材と絶縁樹脂層との密着性に優れる技術として、ポリアミドイミド樹脂やポリイミド樹脂を含む樹脂組成物により形成される樹脂皮膜が金属基板上の少なくとも一部又は金属基板上に設けられた金属層上の少なくとも一部に直接形成された電気電子部品用材料が開示されている(例えば、本出願人が提案した特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/107752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、スイッチ等のような可動部を有する電気電子部品や接点部品に絶縁樹脂被覆金属条を使用する場合には、絶縁樹脂層の耐摩耗性が劣ると、可動部が絶縁樹脂被膜に繰り返し接触することで絶縁樹脂被膜が経時的に摩耗し、金属基材が露出して短絡が生じるおそれがある。よって、絶縁樹脂層には優れた耐摩耗性を具備することが要求される。また、スイッチ等のような可動部を有する電気電子部品や接点部品においては、可動部が絶縁樹脂層の表面を円滑に動くようにするために、絶縁樹脂層の表面が優れた摩擦特性(低摩擦係数、滑り性)を有することが要求されるが、絶縁樹脂層の耐摩耗性が悪いと、可動部の接触により絶縁樹脂層が摩耗して表面が粗くなり摩擦特性が経時劣化する。
【0007】
特に、近年、電気電子部品や接点部品の小型化、狭ピッチ化が進むことにより、絶縁樹脂層が薄膜化し、また、可動部の接触可能性が高くなっている。したがって、絶縁樹脂層には、より高いレベルの耐摩耗性が求められてきているものの、特許文献1の技術では、耐摩耗性については着目しておらず、改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、金属基材等と絶縁樹脂層との密着性及び絶縁樹脂層の耐摩耗性に優れた絶縁樹脂被覆金属基材、絶縁樹脂被覆金属基材の製造方法、並びに、絶縁樹脂被覆金属基材を備える電気電子部品及び接点部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、金属基材に被覆する絶縁樹脂層を、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂を含有するものとし、且つ、飛行時間型二次イオン質量分析を用いて、絶縁樹脂層の表面における酸素元素のマッピング測定を行い、該マッピング測定から算出される絶縁樹脂層の表面に存在する酸素元素の割合が、10〜90%になるようにすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1) ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂を含有し、前記金属基材の表面の一部又は全面を直接、又は中間層を介して間接的に被覆する絶縁樹脂層とを有し、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)を用いて、前記絶縁樹脂層の表面における酸素元素のマッピング測定を行い、該マッピング測定から算出される前記絶縁樹脂層の表面に存在する酸素元素の割合が、10〜90%である、絶縁樹脂被覆金属基材。
【0011】
(2) 前記絶縁樹脂層の厚さが、1μm以上30μm以下である、(2)に記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【0012】
(3) 前記金属基材が、第4族〜第13族の元素から選択される1種又は2種以上を含有する金属材料で構成される、(1)又は(2)に記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【0013】
(4) 前記絶縁樹脂層は、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種又は2種以上の酸素元素非含有樹脂を含有する、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【0014】
(5) 前記金属基材の表面の一部又は全面が、前記絶縁樹脂層で前記中間層を介して間接的に被覆され、前記中間層が、第4族〜第13族の元素から選択される1種又は2種以上を含む第1金属層を含む、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【0015】
(6) 前記金属基材の表面の一部が、前記絶縁樹脂層で直接被覆され、前記金属基材の表面の、前記絶縁樹脂層で直接被覆されていない領域の一部又は全面が、錫、銅、鉄、ニッケル、クロム、パラジウム、銀及び金から選択される1種又は2種以上を含む第2金属層で直接被覆されている、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【0016】
(7) 前記金属基材が金属条である、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の絶縁樹脂被覆金属基材。
【0017】
(8) (1)〜(7)のいずれか1つに記載の絶縁樹脂被覆金属基材を備える、電気電子部品。
【0018】
(9) (1)〜(7)のいずれか1つに記載の絶縁樹脂被覆金属基材を備える、接点部品。
【0019】
(10) (1)〜(7)のいずれか1つに記載の絶縁樹脂被覆金属基材の製造方法であって、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂と、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種又は2種以上の酸素元素非含有樹脂とを含有するワニスを、前記金属基材の表面に塗布するワニス塗布工程と、250℃〜400℃で2秒〜500秒の間で熱処理して前記金属基材の表面に前記絶縁樹脂層を形成する絶縁樹脂層形成工程を有する、絶縁樹脂被覆金属基材の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属基材等と絶縁樹脂層との密着性及び絶縁樹脂層の耐摩耗性に優れた絶縁樹脂被覆金属基材を提供することができる。本発明の絶縁樹脂被覆金属基材は、絶縁樹脂層の耐摩耗性が優れているため、長期に亘って、絶縁性や表面の摩擦特性(低摩擦係数、滑り性)が担保され、例えばスイッチ等の可動部が絶縁樹脂層に繰り返し接触する電気電子部品や接点部品の部材として使用されても、長期に亘って短絡を抑制することができる。また、本発明の絶縁樹脂被覆金属基材は、金属基材等と絶縁樹脂層との密着性にも優れているため、打ち抜き加工や曲げ加工によって所望の形状とすることができる。よって、電気電子部品や接点部品の小型化、狭ピッチ化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1にかかる絶縁樹脂被覆金属基材を示す断面図である。
図2】TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合の算出方法を説明する画像ある。
図3】TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合の算出方法を説明する画像である。
図4】TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合の算出方法を説明する画像である。
図5】実施形態2にかかる絶縁樹脂被覆金属基材を示す断面図である。
図6】実施形態2にかかる絶縁樹脂被覆金属基材の他の例を示す断面図である。
図7】実施形態3にかかる絶縁樹脂被覆金属基材を示す断面図である。
図8】実施形態3にかかる絶縁樹脂被覆金属基材の他の例を示す断面図である。
図9】実施形態3にかかる絶縁樹脂被覆金属基材の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施形態に基づいて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0023】
[実施形態1]
図1は、実施形態1にかかる絶縁樹脂被覆金属基材を示す断面図である。図1に示すように、絶縁樹脂被覆金属基材10は、金属基材1と、金属基材1の表面を被覆する絶縁樹脂層2とを有する。すなわち、絶縁樹脂被覆金属基材10は、金属基材1の表面を、絶縁樹脂層2が直接被覆している。
【0024】
<金属基材>
金属基材1を構成する金属材料は特に限定されないが、例えば第4族〜第13族の元素が挙げられる。該金属材料としては、銅、鉄、アルミニウム、チタン等が好ましい。また、金属基材1の形態も特に限定されないが、例えば金属条、金属箔や金属板等が挙げられる。金属基材1の厚さは、例えば0.01〜1mmである。
【0025】
図1においては、絶縁樹脂層2で金属基材1の一方の主面(図1においては上面)の全面を被覆した例を示したが、絶縁樹脂層2は金属基材1の表面の少なくとも一部を被覆していればよく、例えば、絶縁樹脂層2は金属基材1の主面の一部の領域のみを被覆していてもよく、また、金属基材1の両方の主面(図1においては、上面及び下面)の全面を被覆していてもよい。
【0026】
<絶縁樹脂層>
絶縁樹脂層2は、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂を含有する。絶縁樹脂被覆金属基材10が、塗装処理や、リフロー実装処理等において熱処理を受ける可能性がある場合には、絶縁樹脂層2は、耐熱性に優れた樹脂を含有することが好ましく、ポリイミド及びポリアミドイミドの少なくとも一方を含有することがより好ましく、ポリアミドイミドを含有することがさらに好ましい。なお、絶縁樹脂層2は、絶縁樹脂被覆金属基材10が他部材と繰り返し接触した際に短絡しない程度の絶縁性があればよく、例えば絶縁樹脂層2の電気抵抗率は1012Ω・m以上である。
【0027】
絶縁樹脂層2は、酸素元素を含有しない有機物である酸素元素非含有樹脂を含有することが好ましい。酸素元素非含有樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。
【0028】
そして、本発明においては、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)を用いて、絶縁樹脂層2の表面における酸素元素のマッピング測定を行い、該マッピング測定から算出される絶縁樹脂層2の表面に存在する酸素元素の割合(以下、「TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合」とも記載する。)は、10〜90%である。TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合が10%より小さい場合は、金属基材1と絶縁樹脂層2との密着力が悪く、90%より大きい場合は耐摩耗性が悪い。絶縁樹脂層2の耐摩耗性が特に優れているという観点で、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合は、80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。金属基材1等と絶縁樹脂層2との密着力が特に優れているという観点で、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合は、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。なお、本発明においては、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合が10〜90%であり、絶縁樹脂層2の、絶縁樹脂層2の表面とは反対側(金属基材1側)の面については、占める酸素元素の割合は10〜90%でなくてもよく、例えば、酸素非含有樹脂を有していなくてもよい。
【0029】
ここで、特許文献1等の従来技術では、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂等の酸素元素含有樹脂からなる絶縁有機被膜で金属基材1が被覆されており、この絶縁有機被膜では、金属基材との密着力には問題がないが、耐摩耗性が不十分であった。これは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂が有する酸素原子が吸着の役目を担うため、この絶縁有機被膜は金属基材との密着力に優れるが、吸着の役目を担うという性質がゆえに、可動部等の接触する他部材にも吸着してしまい、絶縁有機被膜の摩耗が進行してしまっていると推測される。そして、この従来技術にかかる絶縁有機被膜の表面をTOF−SIMSで分析した際に特徴的な元素分布は見られず、例えば、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合は、90%より大きかった。
【0030】
これに対し、例えば酸素元素を含有しない酸素元素非含有樹脂を絶縁樹脂層2に含有させることによって、本発明においては、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合を、10〜90%になるように調整している。これにより、金属基材1と絶縁樹脂層2との密着性及び絶縁樹脂層2の耐摩耗性の双方に優れた絶縁樹脂被覆金属基材10となる。これは、耐摩耗性が求められる絶縁樹脂被覆金属基材10の表層、すなわち絶縁樹脂層2に、TOF−SIMSを用いて算出される酸素原子がない部分、つまり、酸素原子が検出されない部分が、所定の割合(10〜90%)で生じるようにすることで、酸素原子が有する吸着の性質を適度に抑制することができ、密着性を維持しつつ、耐摩耗性を向上させることができたと推測される。
【0031】
なお、絶縁樹脂層2を、酸素元素含有樹脂からなる下層と、酸素元素非含有樹脂からなる上層の2層の積層構造にすることも考えられるが、この場合は、酸素元素非含有樹脂からなる層の吸着性が乏しいため密着性が悪くなり、酸素元素非含有樹脂からなる層が脱落し、耐摩耗性が持続しないと考えられるため、好ましくない。また、酸素元素非含有樹脂からなる層(上層)を形成する工程が、さらに追加することが必要になるという観点でも、酸素元素非含有樹脂からなる層を積層することは好ましくない。
【0032】
このように、本発明においては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂を含有し、且つ、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合が10〜90%となるようにすることにより、金属基材1と絶縁樹脂層2との密着性及び絶縁樹脂層2の耐摩耗性に優れた絶縁樹脂被覆金属基材10とすることができる。絶縁樹脂層2の耐摩耗性が優れているため、絶縁樹脂層2の摩耗を抑制することができる。したがって、長期に亘って、絶縁性や表面の摩擦特性(低摩擦係数、滑り性)が担保され、例えばスイッチ等の可動部が絶縁樹脂層2に接触する電気電子部品や接点部品の部材として使用されても、長期に亘って短絡を抑制することができる。また、絶縁樹脂被覆金属基材10は、金属基材1と絶縁樹脂層2との密着性にも優れているため、打ち抜き加工や曲げ加工によって所望の形状とすることができる。よって、電気電子部品の小型化、狭ピッチ化に貢献できる。
【0033】
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS:Time−of−Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)は、固体試料にイオンビーム(一次イオン)を照射し、表面を構成する分子の一部がイオン化され放出されるイオン(二次イオン)を、その飛行時間差(飛行時間は重さの平方根に比例)を利用して質量分離する手法である。ここでは、一次イオンにAuを用い、得られた二次イオンのm/z=16をOとし解析を行った。つまり、Oの得られた箇所に、酸素元素含有樹脂が存在することを意味する。
【0034】
TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層2の表面を占める酸素元素の割合の算出方法を、例えば、実施例A3を例に以下に説明する。
【0035】
[TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合の算出方法]
まず、以下の測定条件でTOF−SIMSにより、絶縁樹脂層2の表面分析によってOのマッピング(面分析)を実施する。
装置:TOF−SIMS(TRIFT−IV) (アルバック・ファイ社製)
1次イオン種:197Au
1次イオン加速エネルギー:30keV
測定面積:100μm×100μm
帯電中和補正:有
m/z=16 O
測定面積100μm×100μmの画像のうち、中央80μm×80μm視野を対象とする。画像の周囲は陰イオンの検出量が落ちて、分析精度が低いためである。マッピングにより得られるカラー画像は、Oがある部分は明るく表れて、Oがない部分は色が濃く現れるよう調整される。
次に、画像寸法計測ソフトImageJを用いて、中央80μm×80μmのカラー画像を8−Bitのグレースケール画像に変換する。中央80μm×80μmのグレースケール画像例を図2に示す。さらに上記画像寸法計測ソフトで、このグレースケール画像を白黒の二値化し、80μm×80μmに対する、白の面積割合を、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合とする。二値化した画像例を図3に示す。
二値化での閾値の設定方法は、図4に示すグレースケール画像における色調の分布を元にする。図4の横軸は8−Bitグレースケール255階調で、左側に向かうにつれて黒が強く(濃く)なり、右側に向かうにつれて白が強くなることを示し、縦軸がそれぞれの色調位置での存在割合を示す。
図4では、左側に黒の色調を示す4つのピークがあり、左側から4つの目のピークの根元のグレースケール103を、黒と白の閾値とした。閾値の設定によって、左側の黒の面積率は63%、そして右側の白の面積率は37%と算出される。すなわちOの占有率は37%となる。
【0036】
また、絶縁樹脂層2は、本発明の効果を損なわない範囲で、従来から絶縁樹脂層に用いられている各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、無機微粉末や、潤滑剤等が挙げられる。
【0037】
また、絶縁樹脂層2の厚さは特に限定されない。絶縁樹脂層2の厚さは、薄くても、例えば1μm未満であっても、耐摩耗向上効果は十分に発揮されるが、絶縁性の観点から、1μm以上であることが好ましい。また、絶縁樹脂層2の厚さは、製造コストの観点から、30μm以下が好ましい。絶縁樹脂層2の厚さは、マイクロメーター等の接触式厚み計により測定することができ、例えば、絶縁樹脂層2が設けられた領域の絶縁樹脂被覆金属基材10の厚さと絶縁樹脂層2が設けられていない領域の絶縁樹脂被覆金属基材10の厚さを計測し、差分を絶縁樹脂層2の厚さとする。
【0038】
実施形態1にかかる絶縁樹脂被覆金属基材10は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂と、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種又は2種以上の酸素元素非含有樹脂とを含有するワニスを、金属基材1の表面に塗布するワニス塗布工程と、250℃〜400℃で2秒〜500秒の間で熱処理して金属基材1の表面に絶縁樹脂層2を形成する絶縁樹脂層形成工程を有する製造方法により製造することができる。
【0039】
ワニス塗布工程で金属基材1の表面に塗布するワニスは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂と、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種又は2種以上の酸素元素非含有樹脂とを含有する。
【0040】
ワニス塗布工程で金属基材1の表面に塗布するワニスは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂と、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種又は2種以上の酸素元素非含有樹脂とを、得られる絶縁樹脂層2の上記TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合が10〜90%になるように、例えば、酸素元素含有樹脂と酸素元素非含有樹脂の合計に占める酸素元素含有樹脂の合計が、10〜90質量%の範囲内で混合する。
【0041】
ワニスが含有するポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体やポリフッ化ビニリデンは、従来公知の方法で合成することができる。なお、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体やポリフッ化ビニリデンを含有する市販の溶液を用いてもよい。
【0042】
例えばポリアミドイミドは、以下の合成方法で合成することができる。酸成分として4,4’−ビフェニルジカルボン酸とトリメリット酸無水物との混合物を用い、ジイソシアネート成分として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いて、N−メチル−2−ピロリドン等の極性溶媒中で酸成分とジイソシアネート成分とを反応させることにより、ポリアミドイミド溶液を得ることができる。
【0043】
また、上記の例において使用する4,4’−ビフェニルジカルボン酸を3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に変更しても、同様にポリアミドイミド溶液を得ることができる。前者のポリアミドイミドの場合はアミド成分がイミド成分より多くなり、後者のポリアミドイミドの場合は前者の逆となる。
【0044】
ワニス塗布工程で金属基材1の表面に塗布するワニスは、溶媒やその他の添加剤を含有していてもよい。溶媒は特に限定されず、ワニスが含有する成分を溶解又は分散できる溶媒であればよく、例えばワニスが含有するポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体やポリフッ化ビニリデンを合成する際に用いた溶媒をそのまま用いてもよい。また、添加剤は特に限定されず、従来から絶縁樹脂層に用いられている各種の添加剤、例えば、無機微粉末や、潤滑剤等が挙げられる。
【0045】
また、例えば、従来のポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドや、エポキシ樹脂を含有する絶縁樹脂層形成用塗布液に、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体やポリフッ化ビニリデン等の酸素元素非含有樹脂を添加することで、ワニス塗布工程で金属基材1の表面に塗布するワニスを製造することができる。
【0046】
ワニス塗布工程では、このようなワニスを、金属基材1の表面の絶縁樹脂層2を設ける領域に塗布する。
【0047】
次いで、絶縁樹脂層形成工程では、250℃〜400℃で2秒〜500秒の間で熱処理して金属基材1の表面に絶縁樹脂層2を形成する。金属基材1の表面に形成されたワニスは、250℃〜400℃で2秒〜500秒の間で熱処理(「焼き付け」ともいう)されることにより、溶媒の除去や樹脂成分の硬化反応等が生じ、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びエポキシ樹脂から選択される1種又は2種以上の酸素元素含有樹脂と、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種又は2種以上の酸素元素非含有樹脂とが混合された単一複合層としての絶縁樹脂層2を形成することができる。
【0048】
上記では、上記TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合が10〜90%になるように調整するために、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体やポリフッ化ビニリデンを用いた場合の製造方法を示したが、その他の酸素元素非含有樹脂を用いる場合は、この酸素元素非含有樹脂をワニスに含有させればよい。
【0049】
本実施の形態にかかる絶縁樹脂被覆金属基材10は、種々の電気電子機器部品や接点部品として使用することができる。本実施の形態にかかる絶縁樹脂被覆金属基材10は、密着性及び耐摩耗性に優れているため、特に可動部等の他部材が繰り返し接触する各種スイッチ、圧接コンタクト、電池ホルダー等の接点部品を構成する部材として使用するのが好適であり、長期に亘って短絡が抑制された信頼性の高い接点部品を提供することができる。
【0050】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2にかかる絶縁樹脂被覆金属基材を示す断面図である。なお、実施形態1と同じ部材には同じ符号を付す。また、以下に記載した実施形態2にかかる絶縁樹脂被覆金属基材20についての説明以外(例えば、金属基材1、絶縁樹脂層2、絶縁樹脂層2の形成方法や、用途等)は、実施形態1と同じであるため、その説明は省略する。
【0051】
図5に示すように、実施形態2にかかる絶縁樹脂被覆金属基材20は、金属基材1と、金属基材1の両方の主面(図5においては、上面及び下面)の全面を被覆する第1金属層3と、一方の主面(図5においては、上面)を被覆する第1金属層3の全面を被覆する絶縁樹脂層2とを有する。すなわち、一方の主面(図5においては、上面)において、第1金属層3は中間層であり、金属基材1の表面を、第1金属層3からなる中間層を介して間接的に絶縁樹脂層2で被覆している。
【0052】
中間層として第1金属層3を設けることにより、金属基材1に所望の機能を付与することができる。第1金属層3を構成する金属材料は特に限定されないが、例えば、第4族〜第13族の元素が挙げられる。第1金属層3を構成する金属材料としては、銅、鉄、ニッケル、クロム、パラジウムや、銀等が好ましい。第1金属層3の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。実施形態2においては、この第1金属層3と絶縁樹脂層2との密着性に優れる。
【0053】
第1金属層3を形成する方法は特に限定されず、例えば、電解めっきや無電解めっき等の湿式めっきや、物理蒸着(PVD)や化学蒸着(CVD)等の乾式めっき等で形成することができる。
【0054】
図5においては、第1金属層3で金属基材1の両方の主面の全面を被覆した例を示したが、実施形態2においては、金属基材1の表面の少なくとも一部が中間層を介して絶縁樹脂層2で被覆されていればよい。図6に、中間層となる第1金属層3で金属基材1の一方の主面の全部及びもう一方の主面の一部を被覆し、両主面を被覆した第1金属層3の全面を絶縁樹脂層2でさらに被覆した例である絶縁樹脂被覆金属基材30を示す。図6は、実施形態2にかかる絶縁樹脂被覆金属基材の他の例を示す断面図である。なお、中間層は、単層で構成しても、あるいは、複数層で構成してもよい。
【0055】
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3にかかる絶縁樹脂被覆金属基材を示す断面図である。なお、実施形態1や実施形態2と同じ部材には同じ符号を付す。また、以下に記載した実施形態3にかかる絶縁樹脂被覆金属基材40についての説明以外(例えば、金属基材1、絶縁樹脂層2、絶縁樹脂層2の形成方法や、用途等)は、実施形態1や実施形態2と同じであるため、その説明は省略する。
【0056】
図7に示すように、実施形態3かかる絶縁樹脂被覆金属基材40は、金属基材1と、金属基材1の一方の主面(図7においては、上面)の一部を被覆する絶縁樹脂層2と、この絶縁樹脂層2で被覆された主面の絶縁樹脂層2で被覆されていない領域の一部を絶縁樹脂層2と接触しないように被覆する第2金属層4とを有する。すなわち、絶縁樹脂被覆金属基材40は、金属基材1の一方の主面上の離隔した別個の領域に、絶縁樹脂層2及び第2金属層4が互いに接触しないようにそれぞれ直接被覆されている。
【0057】
第2金属層4を構成する金属材料は、錫、銅、鉄、ニッケル、クロム、パラジウム、銀及び金から選択される1種又は2種以上である。第2金属層4を設けることにより、絶縁樹脂被覆金属基材40の表面に所望の機能を付与することができる。第2金属層4は、単層で構成しても、あるいは、複数層で構成してもよい。
【0058】
第2金属層4を形成する方法は、特に限定されず、例えば、電解めっきや無電解めっき等の湿式めっきや、物理蒸着(PVD)や化学蒸着(CVD)等の乾式めっき等で形成することができる。
【0059】
図7においては、金属基材1の表面の絶縁樹脂層2で被覆された主面の絶縁樹脂層2で被覆されていない領域の一部を絶縁樹脂層2と接触しないように第2金属層4で被覆した例を示したが、実施形態3においては、金属基材1の表面の絶縁樹脂層2で直接被覆されていない領域の少なくとも一部が第2金属層4で被覆されていればよい。例えば、図8に示すように、金属基材1の両方の主面において、それぞれ一部が絶縁樹脂層2で直接被覆され、絶縁樹脂層2で直接被覆されていない領域の全部が第2金属層4で直接被覆されている絶縁樹脂被覆金属基材50でもよい。また、図9に示すように、金属基材1の一方の主面が、表面の一部が絶縁樹脂層2で直接被覆され、絶縁樹脂層2で直接被覆されていない領域の全部が第2金属層4で直接被覆されており、もう一方の主面は、全部が第2金属層4で直接被覆されている絶縁樹脂被覆金属基材60でもよい。図8及び図9は、それぞれ実施形態3にかかる絶縁樹脂被覆金属基材の他の例を示す断面図である。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例A1〜A14及び比較例A1〜A3〕
以下の方法で、図1に示す絶縁樹脂層2で金属基材1の一方の主面の全面を被覆した絶縁樹脂被覆金属基材10を製造した。
厚さ0.1mm、幅20mmのりん青銅(JIS H3130:2012に規定される合金番号:C5210)製の条(古河電気工業株式会社製)を金属基材1とした。まず、この条に電解脱脂処理、酸洗処理、水洗処理、乾燥処理をこの順に行う前処理を施した。電解脱脂処理に用いた脱脂液は、濃度60g/Lの水酸化ナトリウム水溶液である。電解脱脂処理の条件は、電流密度2.5A/dm、温度60℃、脱脂時間60秒である。酸洗処理に用いた酸洗液は、濃度10質量%の硫酸水溶液である。酸洗処理の条件は、室温の酸洗液への30秒間の浸漬である。
【0061】
また、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒とし、酸素元素含有樹脂であるポリアミドイミド(PAI)及び表1に示す酸素元素非含有樹脂を含有する溶液(ワニス)を作製した。具体的には、溶媒がN−メチル−2−ピロリドンでありポリアミドイミドの濃度が20質量%であるポリアミドイミド溶液に、得られる絶縁樹脂被覆金属基材10の、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素(O)の割合(占有率)が表1になるように平均粒径が0.1〜1.0μmの酸素元素非含有樹脂を添加し、大気圧自転・公転ミキサー(ARE−310、THINKY製)で十分に混ぜ合わせることで、ワニスを作製した。
【0062】
次に、前処理を施した金属基材の一方の主面の全部に、作製したワニスを、Kコントロールコーター(RK Print Coat Instruments Ltd. UK製)を用いて塗布して、ワニスの塗膜を形成した。なお、塗膜の厚さは、表1に示す絶縁樹脂層2の厚さ(μm)となるように調整した。
【0063】
次に、ワニスを塗布した金属基材を、350℃で30秒間加熱処理し、溶媒を乾燥させて絶縁樹脂層2を形成し、図1に示す絶縁樹脂被覆金属基材10を製造した。
【0064】
〔実施例B1〜B6〕
金属基材1を構成する金属材料の種類等を表2に示すように変更した以外は実施例A1と同様にして、図1に示す絶縁樹脂被覆金属基材10を製造した。表2において、金属基材1を構成する金属材料は、実施例B1ではJIS H3100:2018に規定される合金番号:C2600(黄銅)であり、実施例B2〜B4では、それぞれ古河電気工業株式会社製の銅合金であるEFCUBE−ST(Cu−Ni−Si−Zn−Sn−Mg−Cr系)、EFTEC−550T(Cu−Cr−Mg系)、EFTEC−64T(Cu−Sn−Cr−Zn系)であり、実施例B5ではJIS H4000:2014に規定される合金番号:A1050(純アルミニウム)であり、実施例B6ではJIS G4305:2012に規定される合金番号:SUS304(鉄合金(ステンレス鋼))である。
【0065】
〔実施例C1〜C3〕
以下の方法で、図5に示す両方の主面の全面を直接被覆する第1金属層3と、一方の主面を被覆し中間層となる第1金属層3の全面を被覆する絶縁樹脂層2とを有し、第1金属層3が金属めっきからなる絶縁樹脂被覆金属基材20を製造した。
【0066】
実施例A1と同様に、厚さ0.1mm、幅20mmのりん青銅(合金番号:C5210)製の条(古河電気工業株式会社製)を金属基材1とした。この金属基材に実施例A1と同様にして前処理を施した後に、表3に示すパラジウムめっき、ニッケルめっき、又は銀めっきを施して、金属基材1の両方の主面の全面に、パラジウム、ニッケル、又は銀からなる厚さ1μmの第1金属層を被覆した。
【0067】
パラジウムめっきに用いためっき液は、Pd(NHClとアンモニア水(NHOH)と硫酸アンモニウム((NHSO)を含有するものである。めっき液におけるPd(NHClの濃度は45g/Lであり、アンモニア水の濃度は90mL/Lであり、硫酸アンモニウムの濃度は50g/Lである。パラジウムめっきのめっき条件は、電流密度1A/dm、温度30℃である。
【0068】
ニッケルめっきに用いためっき液は、Ni(SONH・4HOと塩化ニッケル(NiCl)とホウ酸(HBO)を含有するものである。めっき液におけるNi(SONH・4HOの濃度は500g/Lであり、塩化ニッケルの濃度は30g/Lであり、ホウ酸の濃度は30g/Lである。ニッケルめっきのめっき条件は、電流密度5A/dm、温度50℃である。
【0069】
銀めっきを施す場合には、まず銀ストライクめっきを施し、その後に銀めっきを施した。銀ストライクめっきに用いためっき液は、KAg(CN)とシアン化カリウム(KCN)を含有するものである。めっき液におけるKAg(CN)の濃度は4.45g/Lであり、シアン化カリウムの濃度は60g/Lである。銀ストライクめっきのめっき条件は、電流密度5A/dm、温度25℃である。
【0070】
銀めっきに用いためっき液は、シアン化銀(AgCN)とシアン化カリウムと炭酸カリウム(KCO)を含有するものである。めっき液におけるシアン化銀の濃度は50g/Lであり、シアン化カリウムの濃度は100g/Lであり、炭酸カリウムの濃度は30g/Lである。銀めっきのめっき条件は、電流密度1A/dm、温度30℃である。
【0071】
次に、めっきを施した金属基材の一方の主面の全面に(すなわち、第1金属層の上に)、表3に示す条件で実施例A1と同様にして絶縁樹脂層2を形成し、図5に示す絶縁樹脂被覆金属基材20を製造した。
【0072】
〔実施例D1〜D4〕
以下の方法で、図9に示す金属基材1の一方の主面が、表面の一部が絶縁樹脂層2で直接被覆され、絶縁樹脂層2で直接被覆されていない領域の全部が第2金属層4で直接被覆されており、もう一方の主面は、全部が第2金属層4で直接被覆されている絶縁樹脂被覆金属基材60を製造した。
【0073】
実施例A1と同様に、厚さ0.1mm、幅20mmのりん青銅(合金番号:C5210)製の条(古河電気工業株式会社製)を金属基材1とした。この金属基材に実施例A1と同様にして前処理を施した後に、一方の主面の一部に、表4に示す条件で実施例A1と同様にして絶縁樹脂層2を被覆した。
【0074】
次に、上記のようにして絶縁樹脂層2を被覆した金属基材の一方の主面の絶縁樹脂層2が設けられていない残りの部分、及び、他方の主面の全面に、表4のめっきの種類に示しためっきを施して、金属基材の表面のうち絶縁樹脂層2が被覆されていない部分の全面に、厚さ1μmの第2金属層4を被覆した。
【0075】
錫めっきに用いためっき液は、硫酸錫(II)(SnSO)と硫酸(NSO)を含有するものである。めっき液における硫酸錫(II)の濃度は80g/Lであり、硫酸の濃度は80g/Lである。錫めっきのめっき条件は、電流密度2A/dm、温度30℃である。
【0076】
ニッケルめっきや銀めっきに用いためっき液及びめっき条件は、実施例C2及びC3と同様である。
【0077】
金めっきに用いためっき液は、K[Au(CN)]とシアン化カリウムと炭酸カリウムとKHPOを含有するものである。めっき液におけるK[Au(CN)]の濃度は10g/Lであり、シアン化カリウムの濃度は30g/Lであり、炭酸カリウムの濃度は30g/Lであり、KHPOの濃度は30g/Lである。金めっきのめっき条件は、電流密度0.5A/dm、温度50℃である。
【0078】
[TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層2の表面を占める酸素元素(O)の割合(占有率)]
得られた絶縁樹脂被覆金属基材について、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素(O)の割合を、上記[TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合の算出方法]で説明した手順に従って求めた。結果を表1〜4の「表面O占有率」欄に記載する。
【0079】
また、得られた絶縁樹脂被覆金属基材について、絶縁樹脂層2の厚さ、下地金属(金属基材又は第1金属層)に対する絶縁樹脂層2の密着力、及び、絶縁樹脂層2の表面における耐摩耗性の評価を、下記の方法で行った。結果を表1〜4に示す。
【0080】
[密着力]
斜め切削装置(ダイプラ・ウィンテス(株)製サイカスDN−20S)を用いて、実施例A1〜A14、B1〜B6及びD1〜D4、比較例A1〜A3については絶縁樹脂層2と金属基材1との密着力を、また、実施例C1〜C3については絶縁樹脂層2と第1金属層3との密着力を測定した。測定条件は、幅1mm、すくい角20°、逃げ角10°のダイヤ切刃を使用し、定速度モード、水平速度2.0μm/s、垂直速度0.1μm/sで行った。刃幅あたりの水平力を密着力[kN/m]とした。なお、本実施例では、密着力が、0.50[kN/m]以上を合格と判断した。
【0081】
[耐摩耗性]
絶縁樹脂層2の表面において、表面性測定機(新東科学株式会社製、TYPE:14)を用い、摺動距離片道10mm、速度100mm/min、荷重20gf、摺動子に接点部の曲率半径が3mmの鋼球を用い、往復1000回の繰り返し摺動を行った。なお、表には、摩擦抵抗力が初めて6gfを超えたときの繰り返し摺動回数を記載し、1000回摺動を行っても6gfを超えなかったものを1000回と表記した。なお、本実施例では、回数が300回以上を合格と判断した。なお、実施例及び比較例はいずれも、摺動1回目の摩擦抵抗力は6gf未満であり、滑り性に優れていた。そして、摩擦抵抗力が初めて6gfを超えたときの繰り返し回数が多いほど、耐摩耗性に優れ、絶縁樹脂層2が摩耗せず、滑り性が維持できているといえる。
【0082】
表1〜4に示すように、TOF−SIMSを用いて、絶縁樹脂層2の表面における酸素元素のマッピング測定を行い、マッピング測定から算出される絶縁樹脂層2の表面に存在する酸素元素の割合(TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合)が10〜90%の範囲内である実施例A1〜A14、B1〜B6、C1〜C3及びD1〜D4は、密着力及び耐摩耗性のいずれにも優れていた。
【0083】
一方、絶縁樹脂層2が酸素元素含有樹脂のみで構成されている比較例A1や、絶縁樹脂層2が酸素元素含有樹脂と酸素元素非含有樹脂で構成されているものの、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合が90%を超える比較例3は、耐摩耗性が不合格であった。また、絶縁樹脂層2が酸素元素含有樹脂と酸素元素非含有樹脂で構成されているものの、TOF−SIMSを用いた、絶縁樹脂層の表面を占める酸素元素の割合が10%未満である比較例2は、密着力が不合格であった。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【符号の説明】
【0088】
1 金属基材
2 絶縁樹脂層
3 第1金属層
4 第2金属層
10、20、30、40、50、60 絶縁樹脂被覆金属基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9