(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-210525(P2019-210525A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】防着板、および、スパッタ装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/00 20060101AFI20191115BHJP
【FI】
C23C14/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-108533(P2018-108533)
(22)【出願日】2018年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一義
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA05
4K029DA10
4K029DC20
4K029HA01
4K029JA01
(57)【要約】
【課題】基板上でのパーティクルの発生を抑制可能にした防着板、および、スパッタ装置を提供する。
【解決手段】真空チャンバーと、真空チャンバー内に位置するターゲットと、真空チャンバー内に位置する基板ステージ11であって、載置面11Aからはみ出す外周部SEを有した基板Sを載置面11Aに載置する基板ステージ11と、真空チャンバー内に位置する下側防着板20であって、基板ステージ11を囲う環状傾斜面20Sを備えた下側防着板20と、を備え、環状傾斜面20Sは、ターゲットに臨み、外周部SEの裏面と対向する内周縁20E1を備える錘台筒面であり、環状傾斜面20Sと載置面11Aを含む平面とがなす角度は10°以上50°以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面からはみ出す外周部を有した基板を前記載置面に載置する基板ステージと、ターゲットとが位置する真空チャンバー内に配置される防着板であって、
前記基板ステージを囲う環状傾斜面を備え、
前記環状傾斜面は、前記ターゲットに臨み、前記外周部の裏面と対向する内周縁を備える錘台筒面であり、前記環状傾斜面と前記載置面を含む平面とがなす角度は10°以上50°以下である
防着板。
【請求項2】
前記環状傾斜面の径方向における前記内周縁と前記環状傾斜面の外周縁との間の距離が20mm以上である
請求項1に記載の防着板。
【請求項3】
前記環状傾斜面の外周縁から鉛直方向に向けて徐々に立ち上がる周壁をさらに備える
請求項1または2に記載の防着板。
【請求項4】
真空チャンバーと、
前記真空チャンバー内に位置するターゲットと、
前記真空チャンバー内に位置する基板ステージであって、載置面からはみ出す外周部を有した基板を前記載置面に載置する前記基板ステージと、
前記真空チャンバー内に位置する防着板であって、前記基板ステージを囲う環状傾斜面を備えた前記防着板と、を備え、
前記環状傾斜面は、ターゲットに臨み、前記外周部の裏面と対向する内周縁を備える錘台筒面であり、前記環状傾斜面と前記載置面を含む平面とがなす角度は10°以上50°以下である
スパッタ装置。
【請求項5】
前記環状傾斜面の径方向における前記内周縁と前記環状傾斜面の外周縁との間の距離が20mm以上である
請求項4に記載のスパッタ装置。
【請求項6】
前記防着板は、前記環状傾斜面の外周縁から鉛直方向に向けて徐々に立ち上がる周壁をさらに備える
請求項4または5に記載のスパッタ装置。
【請求項7】
前記基板ステージは、前記基板を静電力で吸着する静電チャックであり、
前記防着板は、金属板であり、
前記環状傾斜面の径方向における前記基板ステージと前記防着板との隙間に、前記隙間を埋めて前記外周部の裏面と対向する絶縁リングをさらに備える
請求項4〜6のいずれか一項に記載のスパッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板ステージを囲う防着板、および、防着板を備えたスパッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタ装置が備える防着板は、真空チャンバーの内壁などにスパッタリング粒子が付着することを抑える。一方、防着板に堆積したスパッタリング粒子の一部は、防着板から飛散した後に、パーティクルとして基板に付着する。そこで、上述した防着板や、防着板を備えるスパッタ装置には、パーティクルの発生を抑えるための各種の構成が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−224921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、スパッタ装置の成膜に用いられる材料は、従来の金属元素から、炭素のような軽元素に拡張している。軽元素から構成された膜は、金属元素から構成された膜と同じく、防着板に堆積する。一方、軽元素から構成された膜では、金属元素から構成された膜と比べて、機械的な強度が低く、また、防着板との密着度合いも低い。そのため、軽元素から構成された膜は、金属元素から構成された膜と比べて、防着板から飛散しやすい。そこで、上述した防着板には、基板上でのパーティクルの発生を抑える観点において、依然として改善の余地が残されている。
本発明の目的は、基板上でのパーティクルの発生を抑制可能にした防着板、および、スパッタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための防着板は、載置面からはみ出す外周部を有した基板を前記載置面に載置する基板ステージと、ターゲットとが位置する真空チャンバー内に配置される防着板であって、前記基板ステージを囲う環状傾斜面を備え、前記環状傾斜面は、前記ターゲットに臨み、前記外周部の裏面と対向する内周縁を備える錘台筒面であり、前記環状傾斜面と前記載置面を含む平面とがなす角度は10°以上50°以下である。
【0006】
上記課題を解決するためのスパッタ装置は、真空チャンバーと、前記真空チャンバー内に位置するターゲットと、前記真空チャンバー内に位置する基板ステージであって、載置面からはみ出す外周部を有した基板を前記載置面に載置する前記基板ステージと、前記真空チャンバー内に位置する防着板であって、前記基板ステージを囲う環状傾斜面を備えた前記防着板と、を備える。前記環状傾斜面は、ターゲットに臨み、前記外周部の裏面と対向する内周縁を備える錘台筒面であり、前記環状傾斜面と前記載置面を含む平面とがなす角度は10°以上50°以下である。
【0007】
上記各構成によれば、環状傾斜面に堆積した堆積物は、基板の外周部よりも外側に位置して、環状傾斜面が向く方向、すなわち、載置面から遠ざかる方向に飛散しやすい。結果として、基板上でのパーティクルの発生を抑制できる。
【0008】
上記防着板において、前記環状傾斜面の径方向における前記内周縁と前記環状傾斜面の外周縁との間の距離が20mm以上であってもよい。また、上記スパッタ装置において、前記環状傾斜面の径方向における前記内周縁と前記環状傾斜面の外周縁との間の距離が20mm以上であってもよい。
【0009】
環状傾斜面から飛散した堆積物は、環状傾斜面の外側に位置する他の構造に再度堆積して、パーティクルの要因となり得る。この点、上記各構成によれば、基板の外周部からほぼ20mm以内の範囲は、環状傾斜面が位置する範囲であり、すなわち、基板に向けて堆積物が飛散することが抑えられた抑制範囲である。堆積物が飛散する距離は、20mm程度であって限りがあるため、上述した抑制範囲が確保される構成であれば、環状傾斜面の外側に飛散した堆積物が再度の飛散で基板に到達することを抑制できる。
【0010】
上記防着板は、前記環状傾斜面の外周縁から鉛直方向に向けて徐々に立ち上がる周壁をさらに備えてもよい。また、上記スパッタ装置において、前記防着板は、前記環状傾斜面の外周縁から鉛直方向に向けて徐々に立ち上がる周壁をさらに備えてもよい。これらの構成によれば、環状傾斜面の外周縁から周壁が立ち上がるため、環状傾斜面から飛散した堆積物は、周壁に付着しやすく、かつ、真空チャンバーの内壁に付着し難い。さらに、環状傾斜面の外周縁から周壁が徐々に立ち上がるため、環状傾斜面と周壁との境界付近で堆積物が剥離し難くもなる。
【0011】
上記スパッタ装置において、前記基板ステージは、前記基板を静電力で吸着する静電チャックであり、前記防着板は、金属板であり、前記環状傾斜面の径方向における前記基板ステージと前記防着板との隙間に、前記隙間を埋めて前記外周部の裏面と対向する絶縁リングをさらに備えてもよい。
【0012】
静電チャックの周囲に位置する部材は、静電チャックとの電気的な絶縁性を求められる。上記構成によれば、絶縁リングと防着板とが、静電チャックとの電気的な絶縁機能と、パーティクル発生の抑制機能とを各別に担う。そのため、パーティクル発生の抑制機能に特化した構成を防着板に採用することが可能ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】スパッタ装置の一実施形態における装置の構成を示す構成図。
【
図2】一実施形態における基板ステージの一部と防着板とを拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、スパッタ装置の一実施形態を
図1および
図2を参照して説明する。
図1が示すように、スパッタ装置は、真空チャンバー10を備える。真空チャンバー10の内部には、基板ステージ11、ターゲット12、アースシールド13、上側防着板14、中間防着板15、および、下側防着板20が位置する。真空チャンバー10、アースシールド13、各防着板14,15,20は、接地電位に接続されている。
【0015】
基板ステージ11は、基板Sが載置される載置面11Aを備える。基板ステージ11は、基板Sを載置面11Aに静電力で吸着する静電チャックである。載置面11Aは、載置面11Aからはみ出す大きさを有した基板Sを載置する。基板Sのなかで載置面11Aからはみ出す部分は、基板Sの外周部SE(
図2参照)である。
【0016】
ターゲット12は、基板ステージ11と対向する円盤状を有する。ターゲット12を構成する材料は、例えば、炭素などであって、スパッタリングガスよりも軽い元素から構成される。ターゲット12は、スパッタ電源12Aに接続されている。
【0017】
アースシールド13は、ターゲット12を囲う円筒状を有する。アースシールド13は、アノードとして機能する。スパッタ電源12Aは、ターゲット12に直流電圧を印加して、真空チャンバー10の内部に導入されたスパッタリングガスをプラズマ化すると共に、プラズマ中に発生したイオンによってターゲット12をスパッタする。ターゲット12から放出されるスパッタリング粒子は、基板Sの表面や、各防着板14,15,20の内側面に堆積して、スパッタリング粒子の堆積物である薄膜を形成する。
【0018】
上側防着板14は、アースシールド13の下端を囲う円筒状を有する。中間防着板15は、上側防着板14の下端を囲う円筒状を有する。下側防着板20は、基板ステージ11を囲う円環状を有する。各防着板14,15,20は、スパッタリング粒子が真空チャンバー内壁に堆積することを抑える。なお、中間防着板15は、下側防着板20の外周部を上から覆う傘部を備える。また、中間防着板15は、傘部を上下動させるリフト機構15Aに接続されている。リフト機構15Aは、下側防着板20のメンテナンス時に、中間防着板15を上下動させる。
【0019】
図2が示すように、基板ステージ11は、基板ステージ11を支持するためのステージ支持部16の上に位置する。基板ステージ11とステージ支持部16との間には、基板ステージ11とステージ支持部16とを電気的に絶縁する絶縁部材11Bが位置する。載置面11Aは、基板Sの外周部SEが載置面11Aからはみ出す大きさを有する。基板Sの直径は、例えば、200mmや300mmであり、径方向における外周部SEの幅は、例えば1mm以上5mm以下である。
【0020】
基板ステージ11は、基板ステージ11の外周部に、載置面11Aの径方向外側に突き出るフランジ部11Cを備える。フランジ部11Cの上部には、載置面11Aを囲う円環状の絶縁リング21が載置されている。
【0021】
スパッタ装置は、ステージ支持部16の周囲に防着板支持部22を備える。下側防着板20は、防着板支持部22の上に位置する。下側防着板20と防着板支持部22との間には、下側防着板20と防着板支持部22とを電気的に絶縁する絶縁部材22Bが位置する。下側防着板20は、防着板支持部22に支持されると共に、下側防着板20と基板ステージ11との間に隙間を形成する。下側防着板20と基板ステージ11とが形成する隙間は、絶縁リング21によって埋められている。下側防着板20や防着板支持部22は、例えばステンレス鋼などの金属製である。絶縁リング21や絶縁部材22Bは、例えばアルミナなどのセラミックス製である。
【0022】
下側防着板20は、ターゲット12に臨む環状傾斜面20Sを備える。環状傾斜面20Sは、基板Sの外周部SEと対向する内周縁20E1を備えた錐台筒面である。環状傾斜面20Sは、環状傾斜面20Sの中心軸を含む断面において直線状を有する。環状傾斜面20Sと、載置面11Aを含む平面とがなす角度θは、10°以上50°以下である。環状傾斜面20Sの径方向における内周縁20E1と外周縁E2との間の距離Lは20mm以上である。環状傾斜面20Sにおける内周縁20E1の位置は、載置面11Aとほぼ同じ高さ位置である。
【0023】
下側防着板20は、環状傾斜面20Sの外周縁E2から鉛直方向に向けて徐々に立ち上がる周壁23を備える。周壁23の内周面は、環状傾斜面20Sと滑らかに接続されている。下側防着板20の周壁23は、下側防着板20のなかで、中間防着板15の傘部に上から覆われる部分である。
【0024】
[作用]
ターゲット12から放出されるスパッタリング粒子は、環状傾斜面20Sの上に堆積する。基板Sに対する成膜が繰り返されると、スパッタリング粒子の堆積は、環状傾斜面20Sの上で間欠的に繰り返される。この間、環状傾斜面20Sは、熱源であるプラズマに間欠的に曝されて、熱的な伸縮を繰り返す。また、真空チャンバー10の内部に流れるガスや粒子は、環状傾斜面20Sに堆積した堆積物に衝突し続ける。結果として、環状傾斜面20Sに堆積した堆積物の一部は、環状傾斜面20Sから飛散する。特に、軽元素から構成される堆積物は、重元素から構成される堆積物と比べて飛散しやすい。
【0025】
この際、堆積物が環状傾斜面20Sから飛散する方向は、主に、環状傾斜面20Sが向く方向である。すなわち、堆積物が環状傾斜面20Sから飛散する方向は、基板Sの上方ではなく、環状傾斜面20Sから中間防着板15の内面に向けた方向である。そして、環状傾斜面20Sが向く方向は、基板Sの外周部SEから径方向の外側に向けて、一定である。そのため、環状傾斜面20Sから飛散した堆積物は、載置面11Aから遠ざかる方向、言い換えれば、基板Sから遠ざかる方向に飛行する。結果として、上述した下側防着板20を備えた構成であれば、基板S上でのパーティクルの発生が抑えられる。
【0026】
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)環状傾斜面20Sに堆積した堆積物は、基板Sの外周部SEよりも外側において、環状傾斜面20Sが向く方向、すなわち、載置面11Aから遠ざかる方向に飛散しやすい。結果として、基板Sでのパーティクルの発生を抑制できる。
【0027】
(2)環状傾斜面20Sから飛散した堆積物は、環状傾斜面20Sの外側に位置する他の構造に再度堆積して、パーティクルの要因となり得る。この点、基板Sの外周部SEからほぼ20mm以内の範囲は、環状傾斜面20Sが位置する範囲であり、すなわち、基板Sに向けて堆積物が飛散することが抑えられる抑制範囲である。堆積物が飛散する距離は、20mm程度であって限りがあるため、上述した抑制範囲として距離Lが確保される構成であれば、環状傾斜面20Sの外側に飛散した堆積物が再度の飛散で基板Sに到達することを抑制できる。
【0028】
(3)下側防着板20が備える周壁23は、環状傾斜面20Sから飛散した堆積物が真空チャンバー10の内壁に付着することを抑制できる。
【0029】
(4)また、周壁23の内側面と環状傾斜面20Sとが滑らかに接続されるため、周壁23と環状傾斜面20Sとが接続する部位で堆積物の剥離を抑制できる。
【0030】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。
・下側防着板20を構成する材料は、絶縁リング21と同じく、アルミナなどの絶縁性セラミックに変更可能である。この際、スパッタ装置は、絶縁リング21を省略し、それによって、部材の点数を少なくすることも可能である。
【0031】
なお、静電チャックの周囲に位置する部材は、静電チャックとの電気的な絶縁性を求められる。上述したように、基板ステージ11と下側防着板20との間に、絶縁リング21が位置する構成では、絶縁リング21と下側防着板20とが、静電チャックとの電気的な絶縁機能と、パーティクル発生の抑制機能とを各別に担う。そのため、パーティクル発生の抑制機能に特化した構成を下側防着板20に採用することが可能ともなる。
【0032】
例えば、金属製の下側防着板20であれば、セラミック製の下側防着板20と比べて、角度θの寸法精度や、距離Lの寸法精度を高めることが容易でもある。また、金属製の下側防着板20であれば、堆積物との密着性を高めるための粗さを環状傾斜面に付与することが容易でもある。
【0033】
・基板ステージ11は、静電チャックに限らず、クランプによって基板を載置面に固定する構成や、単に基板が載置面に載置される構成に変更可能である。
【0034】
・環状傾斜面20Sの径方向における距離Lは、20mm未満に変更可能である。なお、上述したように、距離Lが20mm以上である構成は、堆積物の二次飛散に起因したパーティクル発生を抑制できる観点において好ましい。
【0035】
・下側防着板20は、外周縁E2から急峻に鉛直方向に立ち上がる周壁23を備えてもよい。さらに、下側防着板20は、周壁23を割愛された構成に変更可能である。これらの構成においても、上記(1),(2)に準じた効果を得ることは可能である。なお、周壁23の内側面と環状傾斜面20Sとが滑らかに接続される構成は、上記(3),(4)に準じた効果が得られる観点において好ましい。
【0036】
・ターゲット12を構成する材料は、炭素に限らず、金属や金属化合物に変更可能である。堆積物を構成する材料が金属や金属化合物であっても、基板上でのパーティクルの発生を抑える観点では、堆積物が基板に向けて飛散し難い以上、上記(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0037】
なお、上述したように、ターゲット12を構成する材料が炭素のような軽元素であれば、下側防着板20での堆積物が飛散しやすいため、環状傾斜面20Sが角度θを有することによるパーティクル発生の抑制効果がより顕著となる。
・上側防着板14と中間防着板15とは、一体の構造物として構成可能である。
【0038】
・スパッタ装置に適用される基板は、例えば、直径が200mmであることに対して、±0.2mmの許容差を有するように規格化されている。また例えば、直径が300mmであることに対して、±0.2mmの許容差を有するように規格化されている。一方で、上述したように、径方向における外周部SEの幅は、例えば1mm以上5mm以下である。そのため、防着板における内周縁の直径と、基板の直径との差分は、基板直径の許容差よりも十分に大きく、例えば、1mm以上5mm以下である。
【0039】
上記実施形態および変更例から導き出される技術的思想を以下に付記する。
[付記1]
真空チャンバーと、
前記真空チャンバー内に位置するターゲットと、
前記真空チャンバー内に位置する基板ステージであって、載置面からはみ出す外周部を有した基板を前記載置面に載置する前記基板ステージと、
前記真空チャンバー内に位置する防着板であって、前記基板ステージを囲う環状傾斜面を備えた前記防着板と、を備えたスパッタ装置を用いてスパッタリングを行うスパッタ方法であって、
前記環状傾斜面が錐台筒面であり、
前記環状傾斜面と前記載置面を含む平面とがなす角度は10°以上50°以下であり、
前記環状傾斜面がターゲットに臨み、かつ、前記環状傾斜面の内周縁が前記外周部の裏面と対向するよう前記基板を配置する、スパッタ方法。
上記付記1に記載のスパッタ方法によれば、上記(1)に準じた効果を得られる。
【0040】
[付記2]
前記ターゲットを構成する元素は、スパッタリングガスよりも軽元素である、上記付記1に記載のスパッタ方法。
スパッタリングガスよりも軽い元素から構成される堆積物は、スパッタリングガスとの衝突によって飛散しやすい。この点、上記付記2に記載のスパッタ方法によれば、堆積物の飛散を、より顕著に抑えることが可能ともなる。
【符号の説明】
【0041】
θ…角度、L…距離、S…基板、SE…外周部、10…真空チャンバー、11…基板ステージ、11A…載置面、12…ターゲット、14…上側防着板、15…中間防着板、20…下側防着板、20S…環状傾斜面、20E1…内周縁、E2…外周縁、21…絶縁リング。