【解決手段】板状のターゲット8に対して相対的に揺動可能なマグネット13を用いた反応性スパッタリングにおいて、スパッタ強度データを所定の取り込み時間毎に取り込むとともに所定の保持時間分のスパッタ強度データをスパッタ強度データ群として保持するスパッタ強度データ取得工程S1と、取り込み時間毎に更新される保持時間分のスパッタ強度データ群におけるスパッタ強度データメジアンを算出するメジアン算出工程S2と、算出されたスパッタ電圧メジアンに基づいて、スパッタガスの供給量制御をおこなうガス供給量制御工程S3と、を有し、スパッタリングにおける遷移モードを維持する。
前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータである前記スパッタ強度データとして、前記スパッタ電源が前記ターゲットに印加するスパッタ電圧値、または、プラズマ発光強度を用いる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のスパッタリング方法。
前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータである前記スパッタ強度データとして、前記スパッタ電源から出力されて前記ターゲットに印加するスパッタ電圧値、または、プラズマ発光強度を測定可能に設けられたセンサから出力されたプラズマ発光強度を用いる
ことを特徴とする請求項7または8記載のスパッタリング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、酸化モードから遷移モードに移行する場合には、放電電圧の値が急激に低下するため、酸素ガスの導入による制御では応答性が追いつかず、酸素ガスの導入量が多すぎる、あるいは、少なすぎることにより、放電電圧を所望の値に安定させることは困難である。
【0009】
その一方で、マグネトロンスパッタリングでは、ターゲットの使用効率を向上させるため、ターゲットに対してマグネットを移動(揺動)させることが行われている。
この方法は、ターゲットに対して、マグネットをプレーナー(平板)ターゲットの表面と平行な方向に往復移動させるものであるが、マグネットがターゲットの端部に位置するときに放電電圧が急激に上昇するため、マグネットを固定した場合と比較して放電電圧の変動が大きく、放電電圧を一定にすることは非常に困難である。こため、特に遷移モードによる成膜を維持することが困難であるという問題がある。
【0010】
また、円筒状のカソードを用いれば、遷移モードにおけるターゲット使用効率を向上することが可能であるが、このようなロータリーカソード自体のコストが高いため実用的ではない。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ターゲットに対して相対的に移動可能なマグネットを備えたマグネトロンスパッタリングにおいて、反応性スパッタリングをおこなう際に放電電圧を安定させて、遷移モードにおける成膜特性を向上するという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のスパッタリング方法は、板状のターゲットに対して相対的に揺動可能なマグネットを用いた反応性スパッタリングにおいて、
前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータであるスパッタ強度データを所定の取り込み時間毎に取り込むとともに所定の保持時間分のスパッタ強度データをスパッタ強度データ群として保持するスパッタ強度データ取得工程と、
前記取り込み時間毎に更新される前記保持時間分のスパッタ強度データ群におけるスパッタ強度データメジアンを算出するメジアン算出工程と、
算出された前記スパッタ強度データメジアンに基づいて、スパッタガスの供給量制御をおこなうガス供給量制御工程と、
を有し、
スパッタリングにおける遷移モードを維持することにより上記課題を解決した。
本発明において、前記スパッタ強度データ取得工程において、
前記保持時間が、前記ターゲットに対する前記マグネットの揺動周期の二分の一よりも長く設定されることがより好ましい。
本発明は、前記ガス流量制御工程において、
出力されたスパッタ強度データメジアンが増加した場合には、スパッタガスの供給量を増加するとともに、
出力されたスパッタ強度データメジアンが減少した場合には、スパッタガスの供給量を減少するようにフィードバックする制御をおこなうことが可能である。
また、本発明において、前記スパッタガスが酸素ガスを含有する手段を採用することもできる。
また、前記メジアン算出工程において、
前記スパッタ強度データメジアンを算出する際に、前記スパッタ強度データ群における所定値以上のデータのみを用いて算出することができる。
本発明は、前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータである前記スパッタ強度データとして、前記スパッタ電源が前記ターゲットに印加するスパッタ電圧値、または、プラズマ発光強度を用いることができる。
本発明のスパッタリング装置は、チャンバ内で板状のターゲットに対して相対的に揺動可能なマグネットを備えたマグネトロンスパッタリング装置において、
前記ターゲットにスパッタ電圧を印加するスパッタ電源と、
前記ターゲット付近にスパッタガスを供給可能なガス供給部と、
前記スパッタ電源と前記ガス供給手段とを制御する制御部と、
と有し、
前記制御部が、
前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータであるスパッタ強度データを所定の取り込み時間毎に取り込むとともに所定の保持時間分の前記スパッタ強度データとしての前記スパッタ電圧値をスパッタ強度データ群として保持し、
前記取り込み時間毎に更新される前記保持時間分のスパッタ強度データ群におけるスパッタ強度データメジアンを算出して、
算出された前記スパッタ強度データメジアンに基づいて、前記ガス供給部からの前記スパッタガスの供給量制御をおこなって、
反応性スパッタリングにおける遷移モードを維持することにより上記課題を解決した。
また、前記制御部が、
出力された前記スパッタ強度データメジアンが増加した場合には、前記ガス供給部によるスパッタガスの供給量を増加するとともに、
出力された前記スパッタ強度データメジアンが減少した場合には、前記ガス供給部によるスパッタガスの供給量を減少するようにフィードバックする制御をおこなうことが好ましい。
本発明は、前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータである前記スパッタ強度データとして、前記スパッタ電源から出力されて前記ターゲットに印加するスパッタ電圧値、または、プラズマ発光強度を測定可能に設けられたセンサから出力されたプラズマ発光強度を用いることができる。
【0013】
本発明のスパッタリング方法は、板状のターゲットに対して相対的に揺動可能なマグネットを用いた反応性スパッタリングにおいて、
前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータであるスパッタ強度データを所定の取り込み時間毎に取り込むとともに所定の保持時間分のスパッタ強度データをスパッタ強度データ群として保持するスパッタ強度データ取得工程と、
前記取り込み時間毎に更新される前記保持時間分のスパッタ強度データ群におけるスパッタ強度データメジアンを算出するメジアン算出工程と、
算出された前記スパッタ強度データメジアンに基づいて、スパッタガスの供給量制御をおこなうガス供給量制御工程と、
を有し、
スパッタリングにおける遷移モードを維持することにより、スパッタ強度データとしてスパッタ電圧値を取り込み、揺動したマグネットがターゲット端部付近に位置して、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)が必要以上に増加してしまった場合でも、このイレギュラーなスパッタ電圧値をスパッタ強度データ群から除外してスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データメジアン)として出力することで、余計な変動を起こさない状態を維持可能なため、これにより、このスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データメジアン)に基づいて安定したスパッタガス供給量制御をおこなうことが可能となるため、極めて制御幅の小さい遷移モードでのスパッタリング状態を継続して維持しながらスパッタリングをおこなうことが可能となる。
【0014】
本発明において、前記スパッタ強度データ取得工程において、
前記保持時間が、前記ターゲットに対する前記マグネットの揺動周期の二分の一よりも長く設定されることにより、マグネットの揺動周期の二分の一で揺動するマグネットがターゲット端部付近に位置した場合に、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)が必要以上に増加してしまった場合でも、このイレギュラーなスパッタ電圧値をスパッタ強度データ群から除外してスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データメジアン)として出力することで、余計な変動を起こさない状態を維持可能とすることができる。
【0015】
本発明は、前記ガス流量制御工程において、
出力されたスパッタ強度データメジアンが増加した場合には、スパッタガスの供給量を増加するとともに、
出力されたスパッタ強度データメジアンが減少した場合には、スパッタガスの供給量を減少するようにフィードバックする制御をおこなうことにより、極めて制御幅の小さい遷移モードでのスパッタリング状態を継続して維持しながらスパッタリングをおこなうことが可能となる。
【0016】
また、本発明において、前記スパッタガスが酸素ガスを含有することにより、例えばアルミニウムとされるターゲットを用いて反応性スパッタリングをおこなう際に、極めて制御幅の小さい遷移モードでのスパッタリング状態を継続して維持しながらスパッタリングをおこなうことが可能となる。
【0017】
また、前記メジアン算出工程において、
前記スパッタ強度データメジアンを算出する際に、前記スパッタ強度データ群における所定値以上のデータのみを用いて算出することにより、プラズマの着火時において、0ばかりとなるスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)におけるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データメジアン)を修正して、所定値以上とし、プラズマ発生の立ち上がりを迅速にして、遷移モードでのスパッタリング可能状態に安定化することが可能となる。
【0018】
本発明は、前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータである前記スパッタ強度データとして、前記スパッタ電源が前記ターゲットに印加するスパッタ電圧値、または、プラズマ発光強度を用いることにより、いずれかのスパッタ強度データを選択してプラズマ発生状態を制御し、遷移モードでのスパッタリング状態を継続して維持しながらスパッタリングをおこなうことが可能となる。
【0019】
本発明のスパッタリング装置は、チャンバ内で板状のターゲットに対して相対的に揺動可能なマグネットを備えたマグネトロンスパッタリング装置において、
前記ターゲットにスパッタ電圧を印加するスパッタ電源と、
前記ターゲット付近にスパッタガスを供給可能なガス供給部と、
前記スパッタ電源と前記ガス供給手段とを制御する制御部と、
と有し、
前記制御部が、
前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータであるスパッタ強度データを所定の取り込み時間毎に取り込むとともに所定の保持時間分の前記スパッタ強度データとしての前記スパッタ電圧値をスパッタ強度データ群として保持し、
前記取り込み時間毎に更新される前記保持時間分のスパッタ強度データ群におけるスパッタ強度データメジアンを算出して、
算出された前記スパッタ強度データメジアンに基づいて、前記ガス供給部からの前記スパッタガスの供給量制御をおこなって、
反応性スパッタリングにおける遷移モードを維持することにより、揺動したマグネットがターゲット端部付近に位置して、スパッタ電圧が必要以上に増加してしまった場合でも、このイレギュラーなスパッタ電圧値(スパッタ強度データ)をスパッタ強度データ群から除外してスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データメジアン)として制御部が出力することで、余計な変動を起こさない状態を維持可能なため、これにより、このスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データメジアン)に基づいてガス供給部による安定したスパッタガス供給量制御をおこなうことが可能となるため、極めて制御幅の小さい遷移モードでのスパッタリング状態を継続して維持しながらスパッタリングをおこなうことが可能なスパッタリング装置を提供することができる。
【0020】
また、前記制御部が、
出力された前記スパッタ強度データメジアンが増加した場合には、前記ガス供給部によるスパッタガスの供給量を増加するとともに、
出力された前記スパッタ強度データメジアンが減少した場合には、前記ガス供給部によるスパッタガスの供給量を減少するようにフィードバックする制御をおこなうことにより、極めて制御幅の小さい遷移モードでのスパッタリング状態を継続して維持しながらスパッタリングをおこなうことが可能なスパッタリング装置を提供することができる。
【0021】
本発明は、前記反応性スパッタリングにおけるプラズマ強度を示すパラメータである前記スパッタ強度データとして、前記スパッタ電源から出力されて前記ターゲットに印加するスパッタ電圧値、または、プラズマ発光強度を測定可能に設けられたセンサから出力されたプラズマ発光強度を用いることにより、いずれかのスパッタ強度データを選択してプラズマ発生状態を制御し、遷移モードでのスパッタリング状態を継続して維持しながらスパッタリングをおこなうことが可能なスパッタリング装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、揺動マグネットを用いた高いターゲット利用効率を維持しながら、遷移モードでのスパッタリング状態を継続して維持することを可能にできるという効果を奏することが可能となる。
また、ローリングカソードを用いることなく安価にターゲット利用効率を高く維持した遷移モードでのスパッタリングが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るスパッタリング方法、スパッタリング装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるスパッタリング装置を示す模式正断面図であり、
図2は、本実施形態におけるスパッタリング装置を示す模式平断面図であり、
図3は、マグネットを示す模式正断面図(a)、模式平断面図(b)であり、本実施形態における図において、符号1は、スパッタリング装置である。
【0025】
本実施形態に係るスパッタリング装置1は、のマグネトロンスパッタリング装置とされ、
図1,
図2に示すように、真空排気系2およびガス導入管を介してガス供給部3に接続された真空槽(チャンバ)4を有している。
チャンバ4内の例えば上部には、マスク等を有する基板ホルダとされた基板保持手段5に保持された基板(被処理基板)6が配置されるようになっている。
そして、チャンバ4内の例えば下部には、例えばアルミニウム(Al)等の金属からなる複数のターゲット8が、それぞれバッキングプレート7上に載置されている。
【0026】
本実施形態においては、各ターゲット8は、例えばチャンバ4の外部に設けられた交流電源9に、それぞれバッキングプレート7を介して接続されている。
本実施形態の構成は、所謂デュアルカソードと呼ばれるもので、二つのターゲット8に対して交流電圧(例えば30〜100kHz)を交互に印加するように構成されている。
【0027】
交流電源(放電用電源)9には、制御部10が接続されている。
この制御部10は、後述するように、スパッタ強度データとして、交流電源(放電用電源)9からのスパッタ電圧値を受け取る。また、制御部10は、ガス供給部3からのガス供給を制御する機能を有し、真空排気系2の排気、および、後述するマグネット揺動とカソード揺動とを制御する機能を有することもできる。
【0028】
ターゲット8は、いずれも基板6と対向する平面に沿った平板状に形成されている。二つのターゲット8は、いずれも同一面内に配置され、カソードユニット11に載置されている。
バッキングプレート7は、基板6と対向する平面に沿った平板状に形成され、ターゲット8において基板6と向かい合わない面に接合されている。
【0029】
カソードユニット11は、基板6の成膜面と対向する平面に沿って配置され、カソード駆動手段12によって、基板6に対して揺動可能とされている。
カソードユニット11には、二つのターゲット8の裏面側(バッキングプレート7側)にそれぞれマグネット13が設けられる。
【0030】
カソード駆動手段12は、例えば、カソード揺動方向に沿って延びるレールと、カソードユニット11における高さ方向の2つの端部の各々に取り付けられたローラーと、ローラーの各々を自転させる複数のモーター等から構成される。カソード駆動手段12のレールは、カソード揺動方向において基板6よりも長い幅を有する。なお、カソード駆動手段12は、カソード揺動方向に沿ってカソードユニット11を移動させることが可能であれば、他の構成として具体化されてもよい。
【0031】
なお、カソード駆動手段12を設けずに、カソードユニット11がチャンバ4に固定されて、基板6に対してターゲット8が固定位置とされた構成とすることもできる。
【0032】
マグネット(磁気回路)13は、相互に異なる磁極を有した複数の磁性体によって構成され、基板6と向かい合うターゲット8の表面にマグネトロン磁場を形成する。
マグネット13は、いずれも、ターゲット8に対して、マグネット駆動手段14によってターゲット8の粒子放出面と平行に移動(揺動)可能とされている。
マグネット13は、
図3に示すように、マグネットプレート13aの中央に配されたマグネット13bと、平面視してその周囲のマグネット13cとを有している。
【0033】
主マグネット13bは、細長形状のもので、長方形形状のマグネットプレート13a上に、たとえばN極の永久磁石からなるN極磁石13cと、S極の永久磁石からなるS極磁石13bが設けられて構成されている。
N極磁石13cは、長方形の環状に形成されており、このN極磁石13cに囲まれた位置に直線棒状のS極磁石13bが配置されている。
N極磁石とS極磁石とは逆の配置とされることや、他の磁石を配置することもできる。
また、マグネット13としては、電磁石を用いることもできる。
【0034】
マグネット駆動手段14は、例えば、マグネット揺動方向に沿って延びるレールと、マグネット8における高さ方向の2つの端部の各々に取り付けられたローラーと、ローラーの各々を自転させる複数のモーター等から構成される。マグネット駆動手段14は、例えば、二つのマグネット13,13を互いの位置を保った状態で同時に揺動可能とすることができるが、別々にマグネット13を駆動することもできる。マグネット駆動手段14のレールは、マグネット揺動方向においてターゲット8と略等しい幅を有する。なお、マグネット駆動部14は、マグネット揺動方向に沿ってマグネット13を移動させることが可能であれば、他の構成として具体化されてもよい。
【0035】
カソード駆動手段12およびマグネット駆動手段14は、制御部10によって制御可能とされることもできる。
【0036】
ガス供給部3は、反応性スパッタに用いる酸素ガスとキャリアガスとなるアルゴンガスを供給するものとされ、それぞれの流量調整部(マスフローコントローラ)3a,3bが制御部10によって制御可能とされている。
【0037】
本実施形態におけるスパッタリング装置1においては、例えば真空状態に減圧されたチャンバ4に制御部10によって制御されたガス供給部3からスパッタガスを供給するとともに、制御部10によって制御されたカソード駆動手段12によってカソードユニット11を揺動するとともに、制御部10によって制御されたマグネット駆動手段14によってマグネット13を揺動し、後述するように、制御部10によって制御された交流電源(放電用電源)9からスパッタ電圧をターゲット8に印加して、プラズマを発生して、スパッタリングをおこなう。
【0038】
次に、本実施形態におけるスパッタリング方法を説明する。
【0039】
図4は、本実施形態におけるスパッタリング方法を示すフローチャートである。
本実施形態のスパッタリング方法は、
図4に示すように、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1と、メジアン算出工程S2と、ガス供給量制御工程S3と、を有する。
【0040】
本実施形態におけるスパッタリング方法においては、まず、
図4に示すスパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、制御部10において、所定の取り込み時間毎に、ターゲット8に印加するスパッタ電圧値(スパッタ強度データ)を取得し、信号安定化積分工程S11として信号安定化のために積分処理し、この値を制御部10内のバッファに順次保存することもできる。
ここで、取り込み時間は、例えば、20msecとすることができるが、この値に限らない。
【0041】
次いで、FIFOバッファの先頭にデータ追加工程S12として、制御部10のFIFOバッファにおけるスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)の先頭に、取得したスパッタ電圧値(スパッタ強度データ)を取り込む。また、このスパッタ電圧データ群は、所定の保持時間分バッファに保持される。保持時間としては、例えば3secとすることができるが、この値に限らない。
同時に、FIFOバッファの最終データ破棄工程S13として、制御部10のFIFOバッファで、スパッタ電圧データ群において保持時間分経過した最も古いデータを破棄し、バッファ内のデータ数を保持時間に対応した一定数となるようにスパッタ電圧データ群として保持する。
この保持時間が、ターゲット8に対するマグネット13の揺動周期の二分の一よりも長く設定されることが好ましい。
【0042】
ついで、
図4に示すメジアン算出工程S2として、バッファ内のデータを大きさ順に並べる工程S21において、バッファに保持時間分保持されたスパッタ電圧値群のデータを、大きさ順に並び替える。
次いで、メジアン(中央値)算出工程S22において、取り込み時間毎に更新される保持時間分のスパッタ電圧データ群におけるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)を算出する。
【0043】
ついで、
図4に示すガス供給量制御工程S3として、算出されたスパッタ電圧メジアンに基づいて、スパッタガスの供給量制御をおこなう。
具体的には、ガス流量制御工程S3においては、出力されたスパッタ電圧メジアンが増加した場合には、スパッタガスの供給量を減少するとともに、出力されたスパッタ電圧メジアンが減少した場合には、スパッタガスの供給量を増加するようにフィードバックする制御をおこなうことで、スパッタリングにおける遷移モードを維持するようにできる。
【0044】
次に、メジアンによる具体的な制御例を例示する。
【0045】
図5は、本実施形態におけるスパッタリング方法のデータ処理を示す図である。
図5に示すように、ある時刻t0において、説明時間をスタートさせる。
【0046】
この時刻t0においては、プラズマ点火前であるため、ターゲット8に電圧はかかっておらず、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt0は、
図5の左端の列に示すように、0である。
また、時刻t0がプラズマ点火前であるため、この時刻t0までずっと、ターゲット8に電圧はかかっておらず、時刻t0まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D0は、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、全てが0値となっている。
したがって、この時刻t0におけるスパッタ電圧データ群D0を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M0も、
図5の右端の列に示すように、0(V)である。
【0047】
次の時刻t1は、時刻t0から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t1においては、プラズマ点火信号ONであるため、ターゲット8に電圧はかかり、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt1は、
図5の左端の列に示すように、例えば100(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程S1として、スパッタ電圧値100(V)を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1までずっとターゲット8に電圧はかかっていなかったため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t1まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D1としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が六コ、100が一つとなっている。
したがって、この時刻t1におけるスパッタ電圧データ群D1を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M1も、
図5の右端の列に示すように、0である。
【0048】
次の時刻t2は、時刻t1から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t2においては、プラズマ点火信号ONであるため、ターゲット8に印加する電圧は増加して、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt2は、
図5の左端の列に示すように、例えば200(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値200を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1からやっとターゲット8に電圧が印加されたため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t2まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D2としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が五つ、100が一つ、200が一つ、となっている。
したがって、この時刻t2におけるスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D2を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM2も、
図5の右端の列に示すように、0である。
【0049】
次の時刻t3は、時刻t2から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t3においては、プラズマ点火信号ONであるため、ターゲット8に印加する電圧はさらに増加して、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt3は、
図5の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t3まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D3としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が四つ、100が一つ、200が一つ、300が一つ、となっている。
したがって、この時刻t3におけるスパッタ電圧データ群D3を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M3も、
図5の右端の列に示すように、0である。
【0050】
次の時刻t4は、時刻t3から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t4においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置するため、ターゲット8に印加する電圧は極大化して、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt4は、
図5の左端の列に示すように、例えば400である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値400を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t4まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D4としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が三つ、100が一つ、200が一つ、300が一つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t4におけるスパッタ電圧データ群D4を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M4は、
図5の右端の列に示すように、100である。
【0051】
次の時刻t5は、時刻t4から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t5においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近から中央側に移動してくるため、ターゲット8に印加する電圧は平均値付近となり、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt5は、
図5の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t5まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D5としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が二つ、100が一つ、200が一つ、300が二つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t5におけるスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D5を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M5は、
図5の右端の列に示すように、200である。
【0052】
次の時刻t6は、時刻t5から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t6においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近には位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値付近となり、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt6は、
図5の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t6まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D6としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が一つ、100が一つ、200が一つ、300が三つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t6におけるスパッタ電圧データ群D6を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M6は、
図5の右端の列に示すように、300である。
【0053】
次の時刻t7は、時刻t6から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t7においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近には位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値付近となり、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt7は、
図5の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t7まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D7としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、100が一つ、200が一つ、300が四つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t7におけるスパッタ電圧データ群D7を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M7は、
図5の右端の列に示すように、300である。
【0054】
次の時刻t8は、時刻t7から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t8においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置しているため、ターゲット8に印加する電圧は平均値よりも極大化し、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt8は、
図5の左端の列に示すように、例えば400(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値400を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加された時刻t1から保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻t1のデータが100であり、これを破棄する。
このため、時刻t8まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D8としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、200が一つ、300が四つ、400が二つ、となっている。
したがって、この時刻t8におけるスパッタ電圧データ群D8を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M8は、
図5の右端の列に示すように、300である。
【0055】
次の時刻t9は、時刻t8から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t9においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値程度となり、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt9は、
図5の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加されて、時刻t2から保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻t2のデータが200であり、これを破棄する。
このため、時刻t9まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D9としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、300が五つ、400が二つ、となっている。
したがって、この時刻t9におけるスパッタ電圧データ群D9を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M9は、
図5の右端の列に示すように、300である。
【0056】
次の時刻t10は、時刻t9から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t10においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値程度となり、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt10は、
図5の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加されて、時刻t3から保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻t3のデータが300であり、これを破棄する。
このため、時刻t10まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D10としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、300が五つ、400が二つ、となっている。
したがって、この時刻t10におけるスパッタ電圧データ群D10を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M10は、
図5の右端の列に示すように、300である。
【0057】
次の時刻t11は、時刻t10から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t11においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値程度となり、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dt11は、
図5の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加されて、時刻t4から保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻t4のデータが400であり、これを破棄する。
このため、時刻t11まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)D11としては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、300が六つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t11におけるスパッタ電圧データ群D11を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)M11は、
図5の右端の列に示すように、300である。
【0058】
以下、時刻tnは、時刻tn−1から取り込み時間経過した時刻とする。
この時刻tnにおいては、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置していた場合、ターゲット8に印加する電圧は平均値より極大化し、スパッタ電圧(スパッタ強度データ)Dtnは、
図5の左端の列に示すように、例えば400(V)となる。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値400を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加された時刻tnー7から、保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻tn―7のデータを破棄する。
このため、時刻tnまで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群(スパッタ強度データ群)Dnとしては、
図5の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、300が多く、400が一程度、となっている。
したがって、この時刻tnにおけるスパッタ電圧データ群Dnを大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアン(スパッタ強度データ中央値)Mnは、
図5の右端の列に示すように、300である。
【0059】
つまり、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置していた場合、ターゲット8に印加する電圧は平均値より極大化し、取得したスパッタ電圧値が400のように極大化した場合でも、この極大値を出力することがなく、安定した値を出力することができる。これにより、ガス供給量制御工程S3におけるガス制御が、急激に変動してしまうことを防止して、遷移モードとなる条件を維持することが可能となる。
【0060】
図6は、本実施形態におけるスパッタリング方法の遷移モードにおける時間と、スパッタ電圧、および、スパッタ電圧メジアン、O
2流量との関係を示す図であり、
図7は、
図6の拡大図であり、
図8は、酸化モードにおける時間と、スパッタ電圧、および、スパッタ電圧メジアン、O
2流量との関係を示す図である。
本実施形態におけるスパッタリング方法によれば、上記のように、制御部10によって、ターゲット8に印加するスパッタ電圧値によって直接ではなく、スパッタ電圧メジアンによってガス供給量、具体的には、O
2ガスの供給量としてガス流量をマスフローコントローラ3aによって制御する。
つまり、スパッタ電圧値を制御パラメータであるスパッタ強度データとして入力された制御部10によって、このパラメータに対するスパッタ強度データ中央値よってガス供給量、具体的には、O
2ガスの供給量としてガス流量をマスフローコントローラ3aによって制御する。
【0061】
具体的には、
図6,
図7に示すように、実細線によって示すスパッタ電圧値に対して、実太線によって示すスパッタ電圧メジアン(フィルタ後スパッタ電圧)の値にしたがって、O
2ガスを供給する際のガス流量を制御したことにより、遷移モードによるスパッタリングを維持することが可能となる。
【0062】
これにより、遷移モードで成膜可能となるので、酸化モードに比べて、成膜レートの向上と膜応力の低下を得ることができる。また、平板状カソード(プレーナーカソード)を用いることができるので、ロータリーカソードに比べて、ターゲット製作費用をより安価にすることができる。マグネット13が揺動した状態で遷移モードでの成膜を可能とできるので、ターゲット利用効率を向上することができる。
【0063】
これに対し、O
2ガスの供給量を一定値とした例を、
図8に示す。ここでは、遷移モードではなく、酸化モードによるスパッタリングをおこなったが、
図8に示すように、スパッタ電圧が時間の経過とともに、上昇していることがわかる。
【0064】
なお、本実施形態において、成膜ガスは、
図1に点線矢印で示すように、基板6に近い側から入れてもよいが、反応性スパッタなので、
図1に矢印一点鎖線で示すように、カソードとの距離が近いターゲット8とターゲット8との間や、
図1に実線矢印で示すように、カソードユニット11側面から供給することが好ましい。
また、上記の第1実施形態においては、
図5において、スパッタ電圧データ群として、7つのデータを例示したが、これは説明の便宜上であり、取り込み時間と保持時間との関係で、この個数に限るものではない。
【0065】
また、成膜電源9として、交流としたが、直流電源を用いることもできる。
また、ターゲット8として、アルミニウムを例示したが、シリコン、ニオブなども用いることができる。
【0066】
以下、本発明に係るスパッタリング方法の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図9は、本実施形態におけるスパッタリング方法のデータ処理を示す図であり、本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、メジアンの算出方法に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
本実施形態においては、メジアン算出工程S2において、スパッタ電圧メジアンを算出する際に、放電開始時の立ち上がりを速くするためにスパッタ電圧データ群における所定値以上のデータのみを用いて算出する。
本実施形態においては、メジアン算出における閾値を、例えば100として設定するが、この値に限定されるものではない。
【0068】
図9に示すように、ある時刻t0において、説明時間をスタートさせる。
【0069】
この時刻t0においては、プラズマ点火前であるため、ターゲット8に電圧はかかっておらず、スパッタ電圧Dt0は、
図9の左端の列に示すように、0である。
また、時刻t0がプラズマ点火前であるため、この時刻t0までずっと、ターゲット8に電圧はかかっておらず、時刻t0まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D0は、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、全てが0値となっている。
したがって、この時刻t0におけるスパッタ電圧データ群D0を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM0も、
図9の右端の列に示すように、0である。
【0070】
次の時刻t1は、時刻t0から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t1においては、プラズマ点火信号ONであるため、ターゲット8に電圧はかかり、スパッタ電圧Dt1は、
図9の左端の列に示すように、例えば100(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値100を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1までずっとターゲット8に電圧はかかっていなかったため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t1まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D1としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が六コ、100が一つとなっている。
したがって、この時刻t1におけるスパッタ電圧データ群D1を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM1は、閾値100以上のものを採用することになるため、
図9の右端の列に示すように、100である。
【0071】
次の時刻t2は、時刻t1から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t2においては、プラズマ点火信号ONであるため、ターゲット8に印加する電圧は増加して、スパッタ電圧Dt2は、
図9の左端の列に示すように、例えば200(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値200を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1からやっとターゲット8に電圧が印加されたため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t2まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D2としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が五つ、100が一つ、200が一つ、となっている。
したがって、この時刻t2におけるスパッタ電圧データ群D2を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM2は、閾値100以上のものを採用することになるため、対応する値としては100と200とがあるためその平均を取って、
図9の右端の列に示すように、150を出力する。
【0072】
次の時刻t3は、時刻t2から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t3においては、プラズマ点火信号ONであるため、ターゲット8に印加する電圧はさらに増加して、スパッタ電圧Dt3は、
図9の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t3まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D3としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が四つ、100が一つ、200が一つ、300が一つ、となっている。
したがって、この時刻t3におけるスパッタ電圧データ群D3を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM3は、閾値100以上のものを採用することになるので、対応する値としては100と200と300とがあるため、その中央値を取って、
図9の右端の列に示すように、200を出力する。
【0073】
次の時刻t4は、時刻t3から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t4においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置するため、ターゲット8に印加する電圧は極大化して、スパッタ電圧Dt4は、
図9の左端の列に示すように、例えば400(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値400を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t4まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D4としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が三つ、100が一つ、200が一つ、300が一つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t4におけるスパッタ電圧データ群D4を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM4は、閾値100以上のものを採用することになるため、対応する値としては100と200と300と400とがあるため、中央の200と300との平均を取って、
図9の右端の列に示すように、250を出力する。
【0074】
次の時刻t5は、時刻t4から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t5においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近から中央側に移動してくるため、ターゲット8に印加する電圧は平均値付近となり、スパッタ電圧Dt5は、
図9の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t5まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D5としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が二つ、100が一つ、200が一つ、300が二つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t5におけるスパッタ電圧データ群D5を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM5は、閾値100以上のものを採用することになるため、対応する値としては100と200と300と300と400とがあるため、中央値を取って、
図9の右端の列に示すように、300を出力する。
【0075】
次の時刻t6は、時刻t5から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t6においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近には位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値付近となり、スパッタ電圧Dt6は、
図9の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t6まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D6としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、0が一つ、100が一つ、200が一つ、300が三つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t6におけるスパッタ電圧データ群D6を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM6は、閾値100以上のものを採用することになるため、対応する値としては100と200と300と300と400とがあるため、中央値を取って、
図9の右端の列に示すように、300を出力する。
【0076】
次の時刻t7は、時刻t6から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t7においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近には位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値付近となり、スパッタ電圧Dt7は、
図9の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、時刻t1から続けてターゲット8に電圧が印加されたが、保持時間まで達していないため、バッファ最後のデータが0であり、これを破棄する。
このため、時刻t7まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D7としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、100が一つ、200が一つ、300が四つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t7におけるスパッタ電圧データ群D7を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM7は、閾値100以上のものを採用することになるため、対応する値としては100〜400があるため、中央値を取って、
図9の右端の列に示すように、300を出力する。
【0077】
次の時刻t8は、時刻t7から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t8においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置しているため、ターゲット8に印加する電圧は平均値よりも極大化し、スパッタ電圧Dt8は、
図9の左端の列に示すように、例えば400(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値400を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加された時刻t1から保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻t1のデータが100であり、これを破棄する。
このため、時刻t8まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D8としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、200が一つ、300が四つ、400が二つ、となっている。
したがって、この時刻t8におけるスパッタ電圧データ群D8を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM8は、閾値100以上のものを採用することになるため、対応する値としては200〜400があるため、中央値を取って、
図9の右端の列に示すように、300を出力する。
【0078】
次の時刻t9は、時刻t8から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t9においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値程度となり、スパッタ電圧Dt9は、
図9の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加されて、時刻t2から保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻t2のデータが200であり、これを破棄する。
このため、時刻t9まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D9としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、300が五つ、400が二つ、となっている。
したがって、この時刻t9におけるスパッタ電圧データ群D9を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM9は、閾値100以上のものを採用することになるため、対応する値としては300〜400があるため、中央値を取って、
図9の右端の列に示すように、300を出力する。
【0079】
次の時刻t10は、時刻t9から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t10においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値程度となり、スパッタ電圧Dt10は、
図9の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加されて、時刻t3から保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻t3のデータが300であり、これを破棄する。
このため、時刻t10まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D10としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、300が五つ、400が二つ、となっている。
したがって、この時刻t10におけるスパッタ電圧データ群D10を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM10は、閾値100以上のものを採用することになるため、対応する値としては300〜400があるため、中央値を取って、
図9の右端の列に示すように、300を出力する。
【0080】
次の時刻t11は、時刻t10から取り込み時間経過した時刻である。
この時刻t11においては、プラズマ点火信号ONであり、また、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置していないため、ターゲット8に印加する電圧は平均値程度となり、スパッタ電圧Dt11は、
図9の左端の列に示すように、例えば300(V)である。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値300を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加されて、時刻t4から保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻t4のデータが400であり、これを破棄する。
このため、時刻t11まで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群D11としては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、300が六つ、400が一つ、となっている。
したがって、この時刻t11におけるスパッタ電圧データ群D11を大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンM11は、閾値100以上のものを採用することになるため、対応する値としては300〜400があるため、中央値を取って、
図9の右端の列に示すように、300を出力する。
【0081】
以下、時刻tnは、時刻tn−1から取り込み時間経過した時刻とする。
この時刻tnにおいては、例えば、マグネット13がターゲット8の端部付近に位置していた場合、ターゲット8に印加する電圧は平均値より極大化し、スパッタ電圧Dtnは、
図9の左端の列に示すように、例えば400(V)となる。
したがって、スパッタ電圧データ取得工程(スパッタ強度データ取得工程)S1として、スパッタ電圧値400を取得してバッファ先頭に加える。
また、続けてターゲット8に電圧が印加された時刻tnー7から、保持時間まで達しているため、バッファ最後である時刻tn―7のデータを破棄する。
このため、時刻tnまで取り込み時間毎に取り込んだスパッタ電圧データ群Dnとしては、
図9の中央の列に、ソート後のバッファとして示すように、300が多く、400が一程度、となっている。
したがって、この時刻tnにおけるスパッタ電圧データ群Dnを大きさ順に並べた中央値であるスパッタ電圧メジアンMnは、閾値100以上の対応する値のみから中央値を取って、
図9の右端の列に示すように、その値、または、中央値の近似値(平均)を出力する。
【0082】
例えば、閾値100以上の対応する値のみから中央値を採用しない場合には、着火時にスパッタ信号ONとして、スパッタ電圧値を増加しても、バッファ内のデータとして0が四つ程度ぐらい続くので、酸素の制御が、立ち上げに好ましい方向に進まない。
これに対して、本実施形態によれば、放電が立った瞬間、プラズマ着火のところでの制御の立ち上がりを改善することができる。
【0083】
さらに、上記の各実施形態におけるスパッタ強度データ取得工程S1において、制御のためのプラズマ強度パラメータとしてスパッタ電圧を取り込む構成を例示したが、取り込むプラズマ強度パラメータ(データ)としてスパッタ電圧の代わりに他のパラメータ(データ)を取り込むことも可能である。例えば、プラズマ発光強度をセンサで検出して、そのデータを取得し、スパッタ電圧のデータの代わりに使用することもできる。
【0084】
具体的には、
図11に示すように、スパッタリング装置1に、発生したプラズマ発光強度を測定するセンサ21を設け、このセンサ21における測定値を制御部10に出力し、制御部10が、入力されたプラズマ発光強度をプラズマ強度パラメータとして、プラズマ発光強度メジアンを算出し、この値に基づいてスパッタ電圧の制御をおこないつつ成膜をすることができる。
アルミナ等の透明な膜を成膜する場合には、センサ21を基板の裏面に設けて、基板越しにプラズマ発光強度を測定してもよい。
【0085】
この例においても、スパッタ電圧値による制御と同様に、プラズマ発光強度メジアン(フィルタ後プラズマ発光強度)の値にしたがって、O
2ガスを供給する際のガス流量を制御することにより、遷移モードによるスパッタリングを維持することが可能となる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0087】
ここでは、実験例1として、アルミニウムターゲットに対して供給電力20kW、マグネットを揺動させ、G4.5基板へ、遷移モードとしてAl
2O
3膜を反応性スパッタリングにより成膜した。
Ar:230sccm
O
2:20〜30sccm
このときの、成膜レート[nm/min]と、Al
2O
3膜における膜応力[MPa]とを測定した。その結果を
図10に示す。
このときの、スパッタ電圧値と、スパッタ電圧メジアンと、酸素ガス供給量の変動を
図6、
図7に示す。
【0088】
同様に、実験例2として、アルミニウムターゲットに対して供給電力20kW、マグネットを揺動させ、酸化モードとしてAl
2O
3膜を反応性スパッタリングにより成膜した。
Ar:210sccm
O
2:40sccm(一定)
このときの、成膜レート[nm/min]と、Al
2O
3膜における膜応力[MPa]とを測定した。その結果を
図10に示す。
このときの、スパッタ電圧値と、スパッタ電圧メジアンと、酸素ガス供給量の変動を
図8に示す。
【0089】
これらの結果から、遷移モードで持続的に成膜した場合には、酸化モードに比べて、成膜レートの向上と膜応力の低下を得ることができることがわかる。また、マグネットが揺動した状態で遷移モードでの成膜を可能とできるので、エロージョン領域が集中して深く掘れてしまうことを防止して、ターゲット利用効率を向上することができる。