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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-212569(P2019-212569A)
(43)【公開日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】定電流駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20191115BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20191115BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20191115BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
   H01L33/00 J
   H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-109933(P2018-109933)
(22)【出願日】2018年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】宮島 一之
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光浩
【テーマコード(参考)】
3K273
5F241
5J055
【Fターム(参考)】
3K273AA05
3K273BA07
3K273BA20
3K273BA21
3K273BA31
3K273CA02
3K273EA07
3K273EA22
3K273EA35
3K273FA06
3K273FA10
3K273FA12
3K273FA26
3K273FA27
3K273FA33
3K273GA24
3K273GA29
5F241AA21
5F241BB07
5F241BC03
5F241BC06
5F241BC16
5F241BC17
5F241BC24
5F241BC33
5F241BC42
5F241BC44
5F241BC47
5F241BD02
5F241BD03
5F241BD13
5F241FF11
5J055AX02
5J055BX16
5J055CX22
5J055DX12
5J055DX14
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY21
5J055EZ03
5J055EZ04
5J055EZ09
5J055GX01
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】急速充電の停止タイミングの精度を高めることができ、オーバーシュートや急速充電不足などを防止する。
【解決手段】gmアンプ6の出力側とトランジスタM1の入力側の間に接続された抵抗R5を備える。充電停止回路としてのコンパレータ9は、電圧Vofを備えるとともに該電圧Vofと抵抗R5に発生するVs2の比較結果によって急速充電回路8による充電を停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷をON/OFF駆動する出力トランジスタと、前記負荷に流れる電流を検出して第1電圧を生成する第1抵抗と、前記第1電圧と第1基準電圧を入力して前記第1電圧が前記第1基準電圧と一致するように前記出力トランジスタを制御する第1gmアンプと、前記出力トランジスタの入力側に接続されるキャパシタと、前記出力トランジスタをPWM信号に応じてON/OFFさせるPWM制御トランジスタと、該PWM制御トランジスタによって前記負荷をOFFからONに切り替える際に、前記キャパシタを充電して前記出力トランジスタの動作の立上りを急速化する急速充電回路と、該急速充電回路による充電を停止するコンパレータからなる充電停止回路とを備えた定電流駆動回路において、
前記第1gmアンプの出力側と前記キャパシタの間に接続された第2抵抗を備え、
前記充電停止回路は、比較電圧を備えるとともに該比較電圧と前記第2抵抗に発生する第2電圧の比較結果によって前記急速充電回路による充電を停止させることを特徴とする定電流駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の定電流駆動回路において、
前記充電停止回路は、前記第1gmアンプと同じ半導体基板上に形成された第2gmアンプを備え、前記第2gmアンプの出力電流により前記比較電圧が生成されることを特徴とする定電流駆動回路。
【請求項3】
請求項2に記載の定電流駆動回路において、
前記第2gmアンプは、前記比較電圧を生成するための第2基準電圧が入力することを特徴とする定電流駆動回路。
【請求項4】
請求項3に記載の定電流駆動回路において、
前記第1基準電圧と前記第2基準電圧の比率を一定としたことを特徴とする定電流駆動回路。
【請求項5】
請求項3に記載の定電流駆動回路において、
前記第1基準電圧と前記第2基準電圧の比率を調整できるようにしたことを特徴とする定電流駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子のPWM調光に好適な定電流駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LED素子を例えば液晶表示装置のバックライトとして用いる場合、その輝度を一定に制御するときは、LED素子に流れる電流を一定にする制御が行われる。また、LED素子を任意の明るさに調整する場合は、数百Hz以上の周波数でLED素子をON/OFF制御して、LED素子の点灯/消灯の時間比を変化させるPWM調光が行われる。
【0003】
図6はPWM調光を行うLED駆動回路を定電流駆動回路で実現したものである。図6において、1は電圧Vddの電源端子、2は電圧Vss(=0V)の接地端子、3は出力端子、4はPWM信号の入力端子、5はLED素子である。
【0004】
このLED駆動回路は、NMOSトランジスタM1がONすることによりPMOSトランジスタM2がONして、出力端子3からLED素子5に出力電流Ioutが流れる。この出力電流Ioutは抵抗R1で電圧Vs1として検出され、その電圧Vs1はgmアンプ6の非反転入力端子に入力する。このgmアンプ6の反転入力端子には、電流源7の基準電流Irefを抵抗R2に流すことで発生する基準電圧Vref1が印加されている。R3はトランジスタM2のバイアス抵抗、R4はトランジスタM1のバイアス抵抗、C1はトランジスタM1のゲートに接続される位相補償用のキャパシタである。
【0005】
抵抗R1に流れる出力電流Ioutが大きくなると、電圧Vs1が低下してgmアンプ6の非反転入力端子の電圧が低下し、基準電圧Vref1よりも低くなると、そのgmアンプ6がキャパシタC1の電荷を放電するので、トランジスタM1のゲート電圧Vg1が低下する。これにより、トランジスタM2のゲート電圧が高くなって、出力電流Ioutが小さくなるような負帰還動作が行われる。逆に、抵抗R1に流れる出力電流Ioutが小さくなると、電圧Vs1が上昇してgmアンプ6の非反転入力端子の電圧が上昇し、基準電圧Vref1よりも高くなると、そのgmアンプ6がキャパシタC1に電荷を充電し、トランジスタM1のゲート電圧Vg1が上昇する。これにより、トランジスタM2のゲート電圧が低くなって、出力電流Ioutが大きくなるような負帰還動作が行われる。
【0006】
このような負帰還動作によって、点灯時のLED素子5に流れる出力電流Ioutが基準電圧Vref1に対応した一定値に制御される。この安定状態では、
であるので、このときの出力電流Ioutは次の式(2)で与えられる。
以上は入力端子4のPWM電圧Vpwmが“L”の状態となってNMOSトランジスタM3がOFFしているときの動作である。
【0007】
この後、PWM電圧Vpwmが“H”になると、トランジスタM3がONしてキャパシタC1の電荷を放電するので、電圧Vg1が低下してトランジスタM1がOFFする。これによってトランジスタM2もOFFし、出力電流Ioutが流れなくなり、LED素子5が消灯する。この後、入力端子4のPWM電圧Vpwmが再度“L”になると、トランジスタM3がOFFになる。そして、gmアンプ6の出力電流によってキャパシタC1が充電されて電圧Vg1がトランジスタM1の閾値Vth1に達すると、そのトランジスタM1がONし、トランジスタM2もONして、出力電流IoutがLED素子5に流れ始め、点灯が再開される。
【0008】
ところで、PWM調光を行う場合、LED素子5の点灯する時間が短いと、LED素子5が消灯状態から点灯状態への切り替わる際の立ち上がりに要する時間遅れの影響が大きくなる。このため、LED素子5が入力端子4のPWM電圧Vpwmのデューティに応じた輝度に達しなくなる。
【0009】
そこで、上記のような遅れを防止するために、電源端子1とキャパシタC1との間に急速充電用の電流源11を接続して、その電流源11を充電停止用のコンパレータ12によってON/OFF制御することが行われる。このコンパレータ12は、反転入力端子に電圧Vs1が入力し、非反転入力端子に、基準電圧Vref1に電圧Vchgを加えた電圧が基準電圧として入力されている。
【0010】
図7図6のLED駆動回路の動作波形図を示す。PWM電圧Vpwmが“H”になり、トランジスタM3がONしていてLED素子5が消灯しているときは、抵抗R1に出力電流Ioutは流れず、電圧Vs1は電源電圧Vddになっている。このため、コンパレータ12によって電流源11がONに制御され、電流Ichgが流れているが、この電流IchgはONしているトランジスタM3を流れる。
【0011】
次に、時刻t0でPWM電圧Vpwmが“H”から“L”に変化すると、それ以前にONしている電流源11の電流IchgによってキャパシタC1の急速充電が開始される。この充電により、時刻t1で電圧Vg1がトランジスタM1の閾値Vth(M1)を超えると、トランジスタM1がONし、トランジスタM2もONして、出力電流Ioutが流れ始める。このように電流IchgによってキャパシタC1が急速充電されることで、ゲート電圧Vg1の立上りが促進され、PWM電圧Vpwmの“H”から“L”への変化に急速に対応することができる。
【0012】
トランジスタM2がONして出力電流Ioutが増大し始めると、電圧Vs1が低下し始めるので、それに応じてgmアンプ6の入力電圧Vinが低下する。そして、電圧Vs1の低下が進んで、「Vs1<(Vref1+Vchg)」になってコンパレータ12が反転すると、電流源11がOFFに制御され、電流Ichgによる急速充電が停止する。以上説明した図6に記載の回路の動作と同様の動作を行う回路は特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012−164746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、一般的に抵抗R1に大電力が発生しないように、抵抗R2に発生する電圧は小さくする必要があるので、充電停止タイミングがコンパレータ12のオフセット電圧のバラツキの影響を受けやすい。これによって、例えば、急速充電の停止タイミングが遅れて時刻t2であったとすると、図7に示すようにオーバーシュートが発生してLED素子5の輝度が変動し、逆に停止タイミングが早すぎると急速充電が不足して起動タイミングが遅くなりLED素子5の輝度が不十分になるおそれがある。
【0015】
本発明の目的は、コンパレータのオフセット電圧のバラツキの影響を受け難くして、急速充電の停止タイミングの精度を向上させた定電流駆動回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、負荷をON/OFF駆動する出力トランジスタと、前記負荷に流れる電流を検出して第1電圧を生成する第1抵抗と、前記第1電圧と第1基準電圧を入力して前記第1電圧が前記第1基準電圧と一致するように前記出力トランジスタを制御する第1gmアンプと、前記出力トランジスタの入力側に接続されるキャパシタと、前記出力トランジスタをPWM信号に応じてON/OFFさせるPWM制御トランジスタと、該PWM制御トランジスタによって前記負荷をOFFからONに切り替える際に、前記キャパシタを充電して前記出力トランジスタの動作の立上りを急速化する急速充電回路と、該急速充電回路による充電を停止するコンパレータからなる充電停止回路とを備えた定電流駆動回路において、前記第1gmアンプの出力側と前記キャパシタの間に接続された第2抵抗を備え、前記充電停止回路は、比較電圧を備えるとともに該比較電圧と前記第2抵抗に発生する第2電圧の比較結果によって前記急速充電回路による充電を停止させることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の定電流駆動回路において、前記充電停止回路は、前記第1gmアンプと同じ半導体基板上に形成された第2gmアンプを備え、前記第2gmアンプの出力電流により前記比較電圧が生成されることを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の定電流駆動回路において、前記第2gmアンプは、前記比較電圧を生成するための第2基準電圧が入力することを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項3に記載の定電流駆動回路において、前記第1基準電圧と前記第2基準電圧の比率を一定としたことを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項3に記載の定電流駆動回路において、前記第1基準電圧と前記第2基準電圧の比率を調整できるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1にかかる発明によれば、充電停止回路としてのコンパレータのオフセット電圧のバラツキの影響を低減できるので、急速充電の停止タイミングの精度を高めることができ、オーバーシュートや急速充電不足などを防止することができる。請求項2にかかる発明によれば、第1gmアンプのトランスコンダクタンスや第2抵抗の温度特性や製造バラツキの影響を低減できる。請求項3にかかる発明によれば、急速充電の停止タイミングを調整できる。請求項4にかかる発明によれば、出力電流の設定値によらず急速充電の停止タイミングを一定にすることができる。請求項5にかかる発明によれば、出力電流の設定値に応じて急速充電の停止タイミングを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施例のLED駆動回路の回路図である。
図2図1のLED駆動回路の動作波形図である。
図3】第2実施例のLED駆動回路の回路図である。
図4】第3実施例のLED駆動回路のコンパレータの回路図である。
図5】第3実施例のLED駆動回路のコンパレータの別の例の回路図である。
図6】従来のLED駆動回路の回路図である。
図7図6のLED駆動回路の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施例>
図1は定電流駆動回路で実現した第1実施例のLED駆動回路である。図6で説明したものと同じものには同じ符号をつけた。本実施例では、抵抗R1に加えて、gmアンプ6の出力側とトランジスタM1のゲートとの間に抵抗R5を接続する。8は急速充電回路であり、カレントミラー接続されたPMOSトランジスタM4,M5と、トランジスタM4に並列接続されたPMOSトランジスタM6と、電流I1の電流源81により構成されている。9は充電停止回路としてのコンパレータであり、そのコンパレータ9のオフセット電圧Vofと抵抗R5に発生する電圧Vs2を比較し、Vs2>Vofになったときに出力電圧を“H”にする。
【0020】
急速充電回路8は、コンパレータ9の出力が“H”のときはトランジスタM6がOFFに制御されるので、トランジスタM4に流れる電流I1と同じ電流をトランジスタM5から充電電流Ichgとして出力する。しかし、コンパレータ9の出力が“L”のときは、トランジスタM6がONに制御されるので、トランジスタM4,M5をOFFさせ充電電流Ichgの出力が停止する。
【0021】
図2図1のLED駆動回路の動作波形図を示す。PWM電圧Vpwmが“H”になっているときはトランジスタM3がONしていてトランジスタM1がOFF、トランジスタM2もOFFし、LED素子5は消灯している。このとき抵抗R1に発生する電圧Vs1は電源電圧Vddになっているので、gmアンプ6の出力電流電流Igmが大きくなり、抵抗R5に発生する電圧Vs2(=Igm×R5)も大きくなって、Vs2>Vofとなる。よって、コンパレータ9の出力が“H”となってトランジスタM6がOFFし、トランジスタM4,M5がONして、そこから電流Ichgが出力する。この電流IchgはONしているトランジスタM3に流れ、トランジスタM1には影響を与えない。また、キャパシタC1の電荷はONしているトランジスタM3によって放電されている。
【0022】
次に、時刻t0でPWM電圧Vpwmが“H”から“L”に変化すると、トランジスタM3がOFFするので、gmアンプ6の出力電流Igmに電流Ichgを加えた電流によってキャパシタC1の急速充電が開始される。この充電により、トランジスタM1のゲート電圧Vg1がそのトランジスタM1の閾値Vth(M1)を超える時刻t1になると、トランジスタM1がONし、トランジスタM2もONして、LED素子5に出力電流Ioutが流れ始める。このようにして電流Ichgの急速充電によってトランジスタM1のゲート電圧Vg1の立上りが促進され、PWM電圧Vpwmの“H”から“L”への変化に急速に対応することができる。
【0023】
LED素子5に流れる出力電流Ioutが増大すると、電圧Vs1が低下し始めるので、gmアンプ6の入力電圧Vinも同様に低下してその出力電流Igmが減少し、抵抗R5に発生する電圧Vs2も減少する。そしてVs2=Vofになると、コンパレータ9が反転してその出力が“L”となり、トランジスタM6がONする。このため、トランジスタM4,M5がOFFして、電流Ichgの出力が停止し、キャパシタC1の急速充電が停止する。Vs2=Vofになる時刻が図2に示す時刻t2に一致すれば、オーバーシュートが防止され、立上り不足も防止できる。
【0024】
ここで、抵抗R5に発生する電圧Vs2は、gmアンプ6のトランスコンダクタンスをgm1とすると、
で与えられる。急速充電回路8から出力する電流Ichgが停止するときは、Vof=Vs2であるので、そのときのgmアンプ6の入力電圧をVin(off)とすると、その電圧Vofは、
で表される。よって、電流Ichgが停止するときの入力電圧Vin(off)は、
で与えられる。
【0025】
例えば、Vof=100mV、gm1=1μA/mV、R5=10kΩであれば、Vin(off)=10mVとなる。この数値の場合、gmアンプ6の入出力間のゲインは、10倍である。この場合は、Vof=100mVに対して、Vin(off)=10mVとなるので、急速充電を停止する時刻t2のオフセット電圧Vofのバラツキによる影響を10分の1に低減できる。つまり、オフセット電圧Vofに多少のバラツキがあっても、充電停止電圧Vin(off)は大きく変動しない。よって、オフセット電圧Vofのバラツキによる電流Ichgの停止タイミングの誤差(時刻t2からのズレ)を低減することができる。また、コンパレータ9に要求される検出精度が低くなるため、コンパレータ9を簡素な回路構成にすることが可能となる。
【0026】
このように、コンパレータ9のオフセット電圧Vofのバラツキの影響を低減し、高精度に、急速充電の停止タイミングを時刻t2に合わせることができる。よって、最適なタイミングで急速充電を停止させることができ、オーバーシュートや急速充電不足などが発生することを防止できる。
【0027】
本実施例では、請求項に記載の第1基準電圧を基準電圧Vref1で実現し、出力トランジスタをトランジスタM1,M2で実現し、PWM制御トランジスタをトランジスタM3で実現し、第1抵抗を抵抗R1で実現し、第2抵抗をR5で実現し、比較電圧をオフセット電圧Vofで実現している。
【0028】
<第2実施例>
図3は第2実施例のLED駆動回路であり、gmアンプ6を具体化したものである。gmアンプ6において、M11,M12はゲートが非反転入力端子61と反転入力端子62に接続されソースに電流源63が接続された差動接続のPMOSトランジスタである。M13,M14はトランジスタM11のドレイン電流を取り出すためのカレントミラー接続のNMOSトランジスタである。M15,M16はトランジスタM14のドレイン電流を取り出すためのカレントミラー接続のPMOSトランジスタである。M17,M18はトランジスタM12のドレイン電流を取り出すためのカレントミラー接続のNMOトランジスタである。トランジスタM16のドレイン電流とトランジスタM18のドレイン電流の差分がgmアンプ6の出力電流Igmとなる。急速充電回路8の電流源81はトランジスタM11のドレイン電流がミラーされるトランジスタM7によって構成されている。
【0029】
このgmアンプ6では、トランジスタM11のドレイン電流がトランジスタM13→M14→M15→M16にミラーされ、またトランジスタM12のドレイン電流がトランジスタM17→M18にミラーされる。このため、非反転入力端子61と反転入力端子62の間に入力する入力電圧Vinが高くなると出力電流Igmが増大し、低くなると減少する。
【0030】
本実施例では、入力電圧Vinが高くなるほど電流源81としてのトランジスタM7のドレイン電流I1が大きくなる。入力電圧Vinは出力電流Ioutが流れていないときは最大になっているので、PWM電圧Vpwmが“H”から“L”に変化する際にはトランジスタM7の電流I1が最も大きな値となっている。このため、急速充電を開始するときの電流Ichgを大きな電流にすることができ、LED素子5の点灯の立上りを急速化できる。
<第3実施例>
【0031】
gmアンプ6のトランスコンダクタンスgm1や抵抗R5は、製造バラツキや温度によって変動する。この結果、式(5)の電圧Vin(off)も変動して、電流Ichgを停止するタイミングも同様に変動する。そこで、本実施例では、温度変動や製造バラツキによってトランスコンダクタンスgm1や抵抗R5が変動するとき、コンパレータ9の入力オフセット電圧Vofをその変動に合わせて変動させることで、温度変動や製造バラツキによって急速充電電流Ichgを停止するタイミングが変動することを防ぐ。
【0032】
図4はコンパレータ9の具体例を示す回路である。コンパレータ9は、コンパレータ本体回路91と、そのコンパレータ本体回路91にバイアス電流Iaを供給するgmアンプ92によって構成されている。
【0033】
コンパレータ本体回路91において、M21,M22はゲートが非反転入力端子93と反転入力端子94に接続された差動接続のPMOSトランジスタである。反転入力端子94にゲートが接続されるトランジスタM21のソースに、前記したオフセット電圧Vofを発生する抵抗R6が接続されている。M23,M24はトランジスタM21,M22の能動負荷としてのカレントミラー接続のNMOSトランジスタである。M25はゲートがトランジスタM22のドレインに接続されドレインが出力端子95に接続されるNMOSトランジスタである。M26,M27,M28はカレントミラー接続のPMOSトランジスタであり、そのうちのトランジスタM27は差動接続のトランジスタM21,M22にバイアス電流Iaを供給し、トランジスタM28はそのドレインが出力端子95に接続される。出力端子95は図1図3のトランジスタM6のゲートに接続される。M29はトランジスタM26にバイアス電流Iaを供給するNMOSトランジスタであり、gmアンプ92によって制御される。
【0034】
gmアンプ92において、M31,M32はゲート間に基準電圧Vref2が印加されソースに電流源96が接続された差動接続のPMOSトランジスタである。M33,M34はトランジスタM31,M32の能動負荷としてカレントミラー接続されたNMOSトランジスタである。M35はトランジスタM29とカレントミラー接続さたNMOSトランジスタであり、トランジスタM32のドレイン電流をトランジスタM29にミラーする。M36はゲートとドレインが共通接続されたNMOSトランジスタであり、電圧Vref2をそのトランジスタM36の閾値電圧分だけ嵩上げするために接続されている。このように、gmアンプ92はgmアンプ6とほぼ同一回路構成である。本実施例では、請求項に記載の第2基準電圧を基準電圧Vref2で実現している。
【0035】
さて、本実施例では、コンパレータ本体回路91のトランジスタM21に流れる電流と抵抗R6によって、図1図2で説明したオフセット電圧Vofを生成させる。Vof=Vs2になったとき、トランジスタM21,M22には同じ電流が流れるので、このとき抵抗R6にはトランジスタM27に流れるバイアス電流Iaの半分の電流が流れる。よって、このとき抵抗R6に発生するオフセット電圧Vofは、
となる。この式(6)を式(5)に代入すると、
となる。
【0036】
このとき、コンパレータ本体回路91やgmアンプ92を、gmアンプ6や抵抗R5と同一半導体基板上に構成すれば、抵抗R6に発生させるオフセット電圧Vofを、gmアンプ6の出力側に得られる電圧Vs2と同じ製造ばらつき、同じ温度特性にすることができる。したがって、下記のようにして、オフセット電圧Vofの製造バラツキや温度特性をキャンセルできる。
【0037】
バイアス電流Iaは、gmアンプ92のトランスコンダクタンスをgm2とすると、
であるので、この式(8)を式(7)に代入すると、
となる。
【0038】
上記したように、コンパレータ本体回路91やgmアンプ92を、gmアンプ6や抵抗R5と同一半導体基板上に構成することで、抵抗R6とR5に同じ温度特性、同じ製造バラツキを持たせ、gm1とgm2に同じ温度特性、同じ製造バラツキを持たせることができるので、この式(9)から、急速充電電流Ichgを停止させるときのgmアンプ6の入力電圧Vin(off)について、それらの温度変動や製造バラツキによる変動を低減することができる。
【0039】
また、急速充電を停止する電圧Vin(off)は、電圧Vref2に比例するので、この電圧Vref2の調整によって急速充電を停止するタイミングを調整することができる。
【0040】
ここで、gmアンプ92の入力電圧である基準電圧Vref2が、基準電圧Vref1に応じた電圧であることによる利点を、図5のコンパレータ9も参照して説明する。以下、LED素子3に供給される出力電流の設定値(Vs1=Vref1のときの出力電流)をIout(con)、急速充電回路が停止した時の出力電流をIout(chg−stop)とする。図1に示したように、基準電圧Vref1は電流源7の電流Irefと抵抗R2の積によって示されるため、次の式(10)で表される。
【0041】
式(2)に式(10)を代入すると、設定電流Iout(con)と基準電圧Vref1の関係を式(11)で表すことができる。
【0042】
電流Iout(chg−stop)について、以下に示す。急速充電回路が停止する時の抵抗R1に発生している電位差VR1は次の式(12)で表される。
【0043】
急速充電回路が停止した時の出力電流Iout(chg−stop)は、電圧VR1と抵抗R1の値の除算によって示すことができる。
【0044】
式(13)に式(12)を代入すると、
となる。出力電流の設定値Iout(con)に対する、急速充電回路が停止した時の出力電流値Iout(chg−stop)の割合Irateを式(15)示す。
【0045】
この式(15)に式(11)と式(14)を代入すると、
となるので、式(16)に式(9)を代入すると、
となる。
【0046】
ここで、出力電流の設定値Iout(con)を変更した際の割合Irateについて説明する。この種の定電流駆動回路において、出力電流の設定値を変更する場合、抵抗R1,R2、基準電流Irefのいずれかを変更するのが一般的である。しかし、抵抗R2及び基準電流Irefを変更した場合、式(10)に示したように、基準電圧Vref1が変化する。
【0047】
基準電圧Vref2が基準電圧Vref1に依存しない定数の場合は、式(17)の他の項、gm1、gm2,R5,R6は定数であるため、基準電圧Vref1の変動によって割合Irateが変化する。割合Irateが変化するということは、急速充電回路が停止する時刻が変化することであり、出力電流の設定値によってはオーバーシュートや急速充電不足が発生する懸念がある。
【0048】
そこで、第2基準電圧Vref2を第1基準電圧Vref1に対応した電圧にすることで、割合Irateが一定値に制御されるようにして、急速充電回路を最適なタイミングで停止させる。
【0049】
基準電圧Vref2を基準電圧Vref1に対応した電圧にする方法として、例えば図5に示す構成がある。この図5の回路は、図1で説明した電流源7の電流Irefと同じ電流が流れる電流源97を使用することで、出力電流の設定値Iout(con)を変更する際に有効な働きをする回路である。基準電圧Vref2は電流源97の電流Irefを抵抗R7に流すことで生成している。
【0050】
式(15)に式(9)と式(18)を代入すると、
となる。この式(19)を構成する要素は、すべて定数のため、出力電流の設定値Iout(con)によらず一定値とすることができる。すなわち、出力電流の設定値Iout(con)を変更するために抵抗R2の値を変更したときは、R7/R2の関係が同一となるように抵抗R7の値を設定すれば、割合Irateが変化せず、急速充電が停止する時刻が変化しない。
【0051】
なお、本実施例では、簡単化のため、出力電流の設定値によらず割合Irateを一定する例を紹介したが、出力電流の設定値が大きくなればなるほど急速充電が停止するときのトランジスタM1のゲート電圧は高くなる。つまり、位相補償容量であるキャパシタC1に充電しなければならない電荷の量も大きくなり、充電時間が長くなる。また、10mAのオーバーシュートが発生した時でも、設定電流Iout(con)が100mAならば10%のオーバーシュートであるが、設定電流Iout(con)が1Aならば1%のオーバーシュートで収まる。
【0052】
すなわち、出力電流Ioutが大きいときは、充電時間を短くすることは困難であるが、オーバーシュートの問題は小さい。逆に、出力電流が小さいときは、充電時間を短くすることは容易だが、オーバーシュートの問題は大きい。割合Irateを大きくすれば、急速充電の時間が延びるため、トータルの充電時間は短くなるが、その分だけオーバーシュートが発生し易くなる。
【0053】
そこで、出力電流の設定値Iout(con)が大きいとき、すなわち第1基準電圧Vref1が大きいときは割合Irateを高く設定し、逆に出力電流の設定値Iout(con)が小さいとき、すなわち第1基準電圧Vref1が小さいときは割合Irateを小さくする等、条件に合わせて急速充電の停止タイミングを調整してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:電源端子、2:接地端子、3:出力端子、4:入力端子、5:LED素子、6:gmアンプ、7:電流源、8:急速充電回路、81:電流源、9:充電停止回路としてのコンパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7