【解決手段】 発光装置は、半導体レーザ素子と、金属を主材料とする底部と、セラミックを主材料とする枠部と、が接合された基部と、を備え、基部は、半導体レーザ素子が配される配置面と、配された半導体レーザ素子の周りを囲う枠と、半導体レーザ素子を電気的に接続するための第1及び第2電極層と、を有し、底部は、配置面を有し、枠部は、配置面と接合する接合面と、接合面と交わり配置面よりも大きい枠を形成する内側面と、接合面と交わり配置面よりも小さい枠を形成する内側面と、を有し、第2電極層は、枠部において、配置面よりも小さい枠を形成する内側面の少なくとも一部と交わる平面であって、接合面とは異なる平面上に設けられる。
前記第2内側面は、前記接合面及び前記第2電極層が設けられる平面と交わる領域と、前記接合面と交わり前記第2電極層が設けられる平面とは交わらない領域と、を有する請求項1に記載の発光装置。
前記枠部は、前記第1内側面により形成された前記配置面よりも大きい枠であって、前記枠部の底面と交わる位置における枠の大きさが、前記第1内側面により形成された前記配置面よりも大きい枠であって、前記接合面と交わる位置における枠よりも大きい請求項7に記載の発光装置。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る発光装置の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る発光装置の内部構造を説明するための上面図である。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBI-BIを結ぶ直線における断面図である。
【
図4C】
図4Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBII-BIIを結ぶ直線における断面図である。
【
図4D】
図4Dは、第1実施形態に係る発光装置の底部の模式的な斜視図である。
【
図4E】
図4Eは、第1実施形態に係る発光装置の枠部の上面図である。
【
図4F】
図4Fは、第1実施形態に係る発光装置の枠部の下面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBI-BIを結ぶ直線における断面図である。
【
図5C】
図5Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBII-BIIを結ぶ直線における断面図である。
【
図6A】
図6Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBI-BIを結ぶ直線における断面図である。
【
図6C】
図6Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBII-BIIを結ぶ直線における断面図である。
【
図7A】
図7Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBI-BIを結ぶ直線における断面図である。
【
図7C】
図7Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBII-BIIを結ぶ直線における断面図である。
【
図8A】
図8Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【
図8B】
図8Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBI-BIを結ぶ直線における断面図である。
【
図8C】
図8Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBII-BIIを結ぶ直線における断面図である。
【
図9A】
図9Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【
図9B】
図9Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBI-BIを結ぶ直線における断面図である。
【
図9C】
図9Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBII-BIIを結ぶ直線における断面図である。
【
図9D】
図9Dは、第1実施形態に係る発光装置の基板の上面図である。
【
図10A】
図10Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための模式図である。
【
図10B】
図10Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBI-BIを結ぶ直線における断面図である。
【
図10C】
図10Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのBII-BIIを結ぶ直線における断面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る発光装置の断面図である。
【
図12A】
図12Aは、第2実施形態に係る発光装置の底部の模式的な斜視図である。
【
図12B】
図12Bは、第2実施形態に係る発光装置の底部の模式的な斜視図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る発光装置の基板の上面図である。
【
図14】
図14は、第1変形例に係る発光装置の断面図である。
【
図15】
図15は、第2変形例に係る発光装置の断面図である。
【
図16】
図16は、第2変形例に係る発光装置の底部の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る発光装置1の模式図であり、
図2は発光装置1の基部の内部構造を説明するための上面図であり、
図3は
図1のIII-IIIを結ぶ直線における矢印方向の断面図を示す。
図2においては内部構造を記すため、蓋部120、接着部130及びレンズ部材140を破線で記し、これらの部材を透過した場合に見られる部分を実線で記す。また、図が煩雑になるのを避けるため、
図3で記されているワイヤ180は、
図2においては省略している。
【0010】
発光装置1は、複数の半導体レーザ素子170から放射された光が、光反射部材150の光反射面を介して反射され、レンズ部材140を通過して外部へと出射する装置である。
図2に示すように、3つのサブマウント160がそれぞれ半導体レーザ素子170を配置して並べられ、各半導体レーザ素子170に対応させて光反射部材150が配置される。各半導体レーザ素子170は対応する光反射部材150へと光を放射し、光反射部材150は半導体レーザ素子170からの光をレンズ部材140の方向へと反射する。また、発光装置1は、光を出射するパッケージと、パッケージを実装する実装基板と、を有している。なお、パッケージのみを発光装置1と捉えてもよい。
【0011】
発光装置1は、実装基板としての基板100と、パッケージを構成する構成要素としての基部110、蓋部120、接着部130、レンズ部材140、光反射部材150、サブマウント160、半導体レーザ素子170、及び、ワイヤ180、を有する。また、基部110と蓋部120とが接合することで形成される閉空間において、複数の光反射部材150と、それぞれが半導体レーザ素子170を配したサブマウント160と、が配置される。さらに基部110の上に配置された半導体レーザ素子170を電気的に接続するワイヤ180が張られる。また、
図3に示すように、基部110は、枠部111と、底部118と、を有する。
【0012】
基板100は、少なくとも枠部111あるいは底部118のいずれかと接合する。また、基板100との接合面とは反対の側で、枠部111は蓋部120と接合する。蓋部120とレンズ部材140とは接着剤を介して接合され、接着剤が固まって出来た接着部130によって、蓋部120とレンズ部材140との間に隙間が生じている。以下、発光装置1の製造工程を説明しながら、発光装置1について説明する。
【0013】
図4A〜10Aは、発光装置1が製造されるまでの各工程について説明するための模式図である。また、
図4B〜10B乃至
図4C〜10Cはそれぞれ、
図4A〜10Aに対応して、各工程における断面図を記したものである。
図4B〜10Bは、
図4Aで示すBI-BIを結ぶ直線に対応した断面図である。
図4C〜10Cは、
図4Aで示すBII-BIIを結ぶ直線に対応した断面図である。点線で記されるS1及びS2は、図面間で発光装置2の向きの対応を示すための補助線であり、発光装置2の構成要素ではない。また、断面図における補助線は、
図4A〜10Aの模式図において補助線が記されている側を正面としてみたときの断面図であることを表している。例えば、
図5BでS1線が記されている基部110の断面図は、
図5Aの基部110に対して、
図4AのBI-BIを結ぶ直線に対応した直線の断面図を、S1を正面にして見たものといえる。
【0014】
まず、
図4A及び4Dに示すように、基部110を構成する枠部111と底部118とがそれぞれ用意される。底部118としては、CuやAl等の金属を用いることができ、枠部111としては、アルミナ(Al
2O
3)、AlN等のセラミックを用いることができる。材料はこれに限定されるわけではないが、少なくとも、底部118は、枠部111よりも放熱性に優れており、底部118の方が枠部111よりも熱伝導率が高い。
【0015】
底部118は、基板100と接合する接合面、及び、光反射部材150、サブマウント160、半導体レーザ素子170が配置される配置面において、矩形の四隅を丸めた形状を有する。また、接合面から配置面までの厚みは均一である。なお、本発明においては、矩形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が行われた形状も矩形と呼ぶものとする。同様に、例えば多角形の1以上の隅に対して角丸め等の加工が行われた形も多角形と呼ぶものとする。また、矩形または多角形における各辺についても、隅に加工が施されている場合には、加工された部分も含めて辺と捉える。なお、基板100と接合する接合面を底面と捉える。底面、配置面の形状はこれに限られない。
【0016】
枠部111は、基板100と接合する面である底面において第1電極層112を有する。第1電極層112は、例えば金属層で構成され、基板100の金属膜103と接合する。金属膜103を経由して半導体レーザ素子170に電力が供給される。また、枠部111は枠の内側に段差部を有しており、この段差部における底面側の平面が、底部118との接合面113となる。なお、便宜上、対向する二つの平面に関して、基板100に近い側を下面と呼び、反対側を上面と呼ぶ。あるいは、レンズ部材140に近い側を上面と呼び、反対側を下面と呼ぶ。
図4Aにおける枠部111は、上面と下面がひっくり返された状態で配されている。
【0017】
図4Eは枠部111の上面図であり、
図4Fは枠部111の下面図である。枠部111は、下面から見た段差部平面に接合面113を有し、上面から見た段差部平面に半導体レーザ素子170と電気的に接続するための第2電極層114が設けられる。第2電極層114は例えばビアホールを介して第1電極層112と電気的に接続されている。第2電極層114は、例えば金属層で構成され、セラミック層の上に配されるため、段差部の下面には露出していない。また、下面視において段差部は枠の四辺すべてを形成している一方で、上面視におけて段差部は枠の三辺のみに亘って設けられ、残りの一辺については、両端の二辺と重複する端部を除いて設けられていない。つまり、上面視でみた場合と下面視で見た場合とで、段差部を有する領域は異なっている。段差部における接合面113は底部118と接合するため、下面から見た段差部は全周に亘って設けられる。一方で、上面から見た段差部平面は第2電極層を設ける領域が確保されていればいいため、必ずしも全周に亘って設けられなくてよい。
【0018】
また、第2電極層114が設けられていない辺に対向する辺については、他の辺よりも接合面113の幅が大きい。一方で、基板100と接合する枠部111の接合面の幅については、第2電極層114が設けられていない辺と、その辺に対向する辺とで同じになるように設計される。言い換えると、枠部111の基板100との接合面と交わる二つの側面間の最短距離は、対向する辺の対応する位置同士で等しくなるようになっている。なお、等しいとは、比較する二以上の値に対して、それらの値の差が設計交差による誤差の範囲内に収まっている関係をいう。このようにすることで、はんだ付けで基板100と接合するときに基部110に掛かる力のバランスを取ることができる。なお、対向する辺の対応する位置とは、対向する二辺が平行関係にある場合において、一辺のある位置と、その位置から最短距離となる他辺の位置と、を示す。
【0019】
次に、
図5Aに示すように、枠部111の接合面113と底部118とが接合される。接合には、例えばAgを主成分とし、Cuを含んだ銀ろうが用いることができるが、他の金属ろうを利用することもできる。
図4Aで示したように枠部111は基板100と接合する底面を上に向けた状態で、接合面に銀ろうを付し、加熱によって銀ろうが溶けた状態で、枠部111の枠に底部118を嵌め込む。その上で銀ろうを冷まして枠部111と底部118とを接合することで、基部110が形成される。なお、枠部111と底部118の接合領域にはNiメッキが施された状態で銀ろうが付される。
【0020】
このため、
図5B及び5Cに示されるように、底部118において枠部111と接合する接合面の大きさは、枠部111の底面と交わる内側面115により形成される枠よりも小さく、かつ、包含される形となる。またさらに、底部118の配置面が、枠部111の段差部における接合面113と接合するように、枠部111の内側面115及び底部118の側面119の形状は設計される。第1実施形態に係る発光装置1においては、枠部111の底面から接合面113までの長さと、底部118の高さとは揃うように設計されており、底部118は、接合面113と交わる内側面115により形成される枠に収まるようになっている。
【0021】
また、内側面115と側面119との間には隙間が生じる。上述したように、枠部111はセラミックで形成することができるが、製造する際の焼結の度合いは常に同じであるとは限らない。このため、製造される枠部111間の形状やサイズに差が生じる場合がある。発光装置1の製造においては、設計交差を考慮して、枠部111と底部118との間に、0.1mm程度の隙間ができるように、枠部111と底部118の形状は設計されている。なお、0.1mm以上の隙間を設けるよう設計されていても、0.1mm以下の隙間となるよう設計されていてもよい。好ましくは、0.1mmから0.5mmまでで、隙間は設定されるのがよい。これにより、枠部111の接合面に適切に底部118を接合することができ、かつ、底部118の放熱性を良好にすることができるため、放熱性に優れた基部110を形成できる。
【0022】
底部118は、接合面113と接合する平面の大きさが、段差部により形成される空間の外枠よりも大きい。具体的には、枠部111の接合面113と接合する底部118の平面の大きさは、接合面113の内端において内側面116により形成される枠よりも大きく、底部118によってこの枠は覆われる。
【0023】
また、枠部111の底面の内端における内側面115が形成する枠と、枠部111の上面の内端における内側面117が形成する枠と、の関係は、S1方向で見ると内側面115の方が内側面117よりも大きく、S2方向で見ると内側面115及び117の大きさは等しく揃っている。S1方向は、上面視において第2電極層のための段差部を有していない辺があり、この辺に対して接合面を形成するために上面よりも下面の方が大きくなる。S2方向は、両辺共に第2電極層のための段差部を有しているため、この段差部を利用して接合面を形成できることから、下面側を大きくしなくてもよい。
【0024】
なお、S2方向から見たときの枠部111の両側辺には、その底面において第1電極層を有する。放熱性の観点からすると、底部118は大きい方が望ましいともいえるが、底面の幅が狭くなると、はんだ付けをする際に、はんだが第1電極層と底部118の両方に接触、あるいは、電気的に接続してしまうことが危惧される。S2方向で見たときに内側面115及び117は揃っていなくてもよいが、内側面115の大きさは、第1電極層から所定の距離を確保した位置に設けられる。好ましくは、0.5mm程度の幅を有する第1電極層に対して0.3mm程度の間隔を空けて、底面における内端の位置は決定されるのがよい。なお、枠部111の内部に設けられた導通部を介して、第1電極層112と第2電極層114とは電気的に接続する。
【0025】
ここで、枠部111と底部118の構造の決定について補足する。放熱性の観点からすると主な熱源である半導体レーザ素子170が配される位置から熱が拡散するように、底部118は放熱性の良好な材料が望まれるため、セラミックよりCu等の金属が好ましい。また、ある程度の大きさを有する方が良く、配置面として露出している部分は金属であるのが好ましい。さらに、基板100と接合し、そこから基板100へと熱を効率よく逃がすためには、配置面から基板100との接合面に亘って、間に放熱性の劣る材料を挟まない方が好ましい。
【0026】
また、強度面や発光装置1を使用するときの形状安定性の観点からすると基部の外枠はセラミックの方が好ましい。さらに、半導体レーザ素子を電気的に接続するための金属層を設けるため、セラミック枠の一部に段差を設ける必要がある。このことから、発光装置1における基部110としては、周囲を囲う枠、半導体レーザを配置する底部、金属層を設けるための段差、を少なくとも備える必要がある。
【0027】
なお、段差は枠の全周に設けられる必要はなく、発光装置1に配される半導体レーザ素子170の数や、複数の半導体レーザ素子170を配する場合の組合せなどによって、段差部を設ける領域は適宜調整できる。例えば、枠の一辺あるいは二辺に沿って設けられれば十分なこともあれば、全周に設ける必要があることもある。なお、複数の半導体レーザ素子170を配する場合の組合せとは、例えば、同色、同性能の半導体レーザ素子を複数配置するか、異なる色の半導体レーザ素子を配置するかなどである。
【0028】
発光装置1における枠部111及び底部118は、これらを考慮して、枠部111をセラミックで形成しつつ底部118に金属を採用し、放熱性を良好にするための枠部と底部との区切りを定めたものである。またさらに、セラミックによる設計交差を考慮して隙間を設けるようにしたものである。よって、半導体レーザ素子170が配置される基部110の配置面がセラミックで形成されているものよりも、放熱性に優れた基部110を提供できる。
【0029】
図6Aでは、形成された基部110の配置面に、光反射部材150と、半導体レーザ素子170が配されたサブマウント160と、を接合する。なお、光反射部材150及びサブマウント160を配置する位置は、底部118に基づく位置ではなく枠部111に基づく位置で決定される。つまり、底部118の特定の位置からの距離や座標ではなく、枠部111の特定の位置からの距離や座標が合うように、光反射部材150及びサブマウント160は配置される。
【0030】
上述したように、枠部111と底部118との間には隙間が生じるため、底部118は、枠部111が形成する枠によって固定されるわけではない。従って、ろう付けによって接合するときに底部118が移動する可能性がある。例えば、発光装置1では、枠部111の枠の形と、底部118の接合面の形とは相似関係にあるが、接合した結果、それぞれの中心点が一致しないことや、枠部111から底部118までの距離が揃っていないことなどが起こり得る。従って、底部118がずれた場合であっても製造される発光装置1間での位置合わせがし易いように、枠部111に対する位置が揃うように配置位置の調整を行うのがよい。なお、上述した枠部111と底部118の間の隙間が小さい方が、移動によるずれは小さくなる。
【0031】
光反射部材150は、少なくとも一面に光反射面を有する。光反射部材150は、半導体レーザ素子170からの放射光を受けるため、熱に強い材料を主材として用い、反射率の高い材料を光反射面に用いることが望ましい。主材として、石英若しくはBK7(硼珪酸ガラス)等のガラス、アルミニウム等の金属、又はSi等を採用することができ、光反射面として金属や誘電体多層膜等を採用することができる。なお、発光装置1は、必要に応じて複数の光反射面を有する光反射部材150としてもよいし、光反射部材150以外に光反射部材を有していてもよい。また、各半導体レーザ素子170に応じて1の光反射部材150が設けられているが、3つの半導体レーザ素子170に対して1の光反射部材150を配するようにしてもよく、複数の半導体レーザ素子に対して1の光反射部材を設けるようにしてもよい。
【0032】
サブマウント160としては、窒化アルミニウム、又は炭化ケイ素を用いることができる。また、サブマウント160には金属膜が設けられ、半導体レーザ素子170はAu−Sn等の導電層によりサブマウント160に固定されている。
【0033】
半導体レーザ素子170は、その底面でサブマウント160と接合しており、光反射部材150に近い側の側面から光を放射する。半導体レーザ素子170から放射されるレーザ光は、光の出射端面と平行な面において、活性層を含む複数の半導体層の積層方向の長さがそれに垂直な方向の長さよりも長い、楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を有する。ここでいうFFPとは、半導体レーザ素子の光出射端面からある程度離れており且つ光出射端面と平行な面において放射光の光強度分布を測定したものである。FFPの形状は、光の主要部分による形状として特定される。ここで、レーザ素子による光の主要部分とは、レーザ光のピーク強度値から1/e
2等の任意の強度に落ちたところまでの強度範囲の部分を指す。
【0034】
発光装置1は、1以上の半導体レーザ素子170を有しており、
図6A乃至6Cで示されるように、3つの半導体レーザ素子170が配置されている。配置される半導体レーザ素子170の数はこれに限らず1以上でよい。また、これらの半導体レーザ素子170が放射する光は同じ色で揃っていてもよく、異なる色であってもよい。例えば、発光装置1が有する3つの半導体レーザ素子170はそれぞれ、赤色光を発する第1半導体レーザ素子、緑色光を発する第2半導体レーザ素子、青色光を発する第3半導体レーザ素子、の3つで構成することができる。
【0035】
赤色光の発光ピーク波長は、例えば605nm〜750nmの範囲内にある。赤色発光の半導体レーザ素子としては、例えば、InAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含むものが挙げられる。緑色光の発光ピーク波長は、例えば495nm〜570nmの範囲内にある。緑色のレーザ光を発する半導体レーザ素子としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。青色光の発光ピーク波長は、例えば420nm〜494nmの範囲内にある。青色のレーザ光を発する半導体レーザ素子としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、及びAlGaNを用いることができる。
【0036】
図7Aでは、ワイヤを、枠部111の第2電極層114及び半導体レーザ素子170に接合することで、第2電極層114と半導体レーザ素子170とを電気的に接続する。例えば、ワイヤーボンド装置を利用して、Auワイヤの一端を半導体レーザ素子170に、他端を第2電極層114に接合する。なお、サブマウント160に、ツェナーダイオード等の保護素子が配されている場合には、保護素子もワイヤ180によって電気的に接続される。
【0037】
図6A及び6Bで示したように、第2電極層114を設けるための段差部は、上面視において三辺に亘って設けられており、一辺については他辺との重複部分を除いて設けられていない。その一辺は、半導体レーザ素子170あるいはサブマウント160からその辺までの間に光反射部材150が存在する辺であり、光反射部材150を挟んで半導体レーザ素子170と反対側に位置する辺である。半導体レーザ素子170から放射された光は、光反射部材150を介して反射され上方へと進む。
図7A及び7Bからも明らかなように、その一辺に段差部を設けて、その辺の第2電極層114と半導体レーザ素子170とをワイヤで電気的に接続しようとすると、光に進行方向にワイヤが存在してしまい、光を遮ってしまう。そのために、光反射部材150側の辺については、第2電極層114のための段差部は設けないことで、適切に第2電極層114を配置し、発光装置1のサイズの小型化に寄与することができる。
【0038】
図8Aでは、基部110の枠部111と、蓋部120とが接合され、半導体レーザ素子170が配される空間が気密封止される。例えば、蓋部120の下面において、基部110と接合される領域には金属膜が設けられ、AuSn等を介して基部110と蓋部120は接合し固定される。この閉空間内に半導体レーザ素子170が配置されるため、半導体レーザ素子170の光出射端面に有機物等が集塵することを抑制することができる。
【0039】
蓋部120としては、例えば、ガラスに金属膜が設けられたもの又はサファイアに金属膜が設けられたものを用いることができ、中でもサファイアに金属膜が設けられたものを用いることが好ましい。光が拡がると、その光を通過させるレンズ部の形状は大きくなるが、サファイアは、比較的屈折率が高く光の拡がりを抑えることができるため、レンズ部材140のレンズ部の大きさを抑えることができる。また、比較的強度が高いため破損しにくいため、閉空間の気密信頼性を確保することができる。
【0040】
図9Aでは、基部110が基板100に実装される。基板100は、基部110の枠部111及び底部118の底面と接合する。接合は、はんだ付けによって行うことが出来る。
図9B及び9Cに示すように、基板100は、放熱部101、絶縁部102、金属膜103を有する。放熱部101は、例えばCu等の金属で形成され、絶縁部102は絶縁材料で形成され、金属膜103は、放熱部101と同様にCu等の金属で形成される。
【0041】
放熱部101が基部110の底部118と接合し、金属膜103あるいは絶縁部102が枠部111と接合する。そのため、金属膜103と放熱部101とが同じ平面に設けられるように基板100は設計される。具体的には、放熱部101は、断面視あるいは側面視において、基部110の側に突出した凸構造を有しており、基部110の底部118と接合する領域において露出するように成形されている。一方で、基板100が枠部111と接合する領域では放熱部101は突出しておらず、放熱部101の上に絶縁部102が配される。また、枠部111の第1電極層112を有する辺に対応した基板100の接合領域においては、絶縁部102の上に金属膜103が設けられる。また、放熱部101と金属膜103とは接触せず、また、電気的に接続しないように所定の間隔が空けられる。この所定の間隔が空けられた領域の一部と、枠部111と底部118との隙間の一部とが重なる。
【0042】
図9Dは、基板100の基部110と接合する接合面の上面図である。
図9Dに示されるように、基板100は接合面において、絶縁部102と、金属膜103と、放熱部101が露出した露出部106とを有する。また、金属膜103は、金属領域104と絶縁領域105を有する。露出部106は底部118と接合し、金属領域104は枠部111の底面と接合する。
【0043】
露出部106の形状は放熱部101が突出している領域を表している。また、この形状は底部118の底面の形状に合わせており、かつ、僅かに大きく設計される。同じ大きさとすると、はんだ付けの際にはんだが接合面の外に逃げられず、基板100と基部110との間に余計に厚みを有してしまうためである。また、金属領域104のうち絶縁領域105を挟んで基板100の中心に近い側が枠部111と接合する。この接合によって、金属領域104と第1電極層112とが電気的に接続する。
【0044】
このように、絶縁部102を挟んで設けられる金属膜103と、放熱部101の露出部106との高さを揃えるようにすることで、基部110との接合において、枠部111または底部118との間に発生し得る浮きを低減することができる。浮きが大きくなると、接合力が弱くなるか、あるいは部分的に接合していない領域が出来てしまうため、パッケージが実装基板から外れる可能性が高くなる。また、底部118の底面全体が放熱部101の露出部106と接合することで、効率的に基板100へと熱を逃がすことができる。
【0045】
図10Aでは、接着剤を用いてレンズ部材140を蓋部120に接着する。この接着工程によって、蓋部120とレンズ部材140との間に接着部130が形成され、
図1乃至3で示した発光装置1が製造される。接着部130は、蓋部120の上面の全域あるいはレンズ部材140の下面の全域に形成されてはおらず、半導体レーザ素子170から発せられた光の経路の邪魔にならない位置に設けられる。具体的には、発光装置1において、半導体レーザ素子170が発する光の主要部分はレンズ部材140のレンズ形状を有している領域に入射し、この領域から出射する。従って、レンズ形状を有している領域に対応するレンズ部材140の下面に接着部130は形成されず、レンズ部材140の外縁の領域に形成されるように利用するのが望ましい。接着部130を形成する接着剤としては、紫外線硬化型の樹脂を用いることが好ましい。紫外線硬化型の樹脂は加熱せずに比較的短い時間で硬化することができるため所望の位置にレンズ部材140を固定しやすい。
【0046】
図10B及び10Cが示すように、レンズ部材140は、複数のレンズ部が連結したレンズ形状を有している。また、1のレンズ部が1の半導体レーザ素子に対応し、各レンズ部が異なる半導体レーザ素子から放射された光の主要部分を通過させるように設計される。レンズ部材140には、例えば、BK7やB270等のガラス等を用いることができる。
【0047】
以上のようにして、第1実施形態に係る発光装置1が製造される。なお、発光装置1を製造する工程は、
図4A〜10Aで説明してきた工程に限らない。
【0048】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態に係る発光装置2の断面図を示す。なお、発光装置2の外観の模式図は
図1のものと変わらず、上面視における内部構造についても
図2のものと変わらない。第2実施形態に係る発光装置2は、第1実施形態に係る発光装置1と比べて、基部を構成する底部の構造が異なる。特に、基板と接合する底部の接合面が第1実施形態とは異なっており、基板の接合面における絶縁部や露出部の形状をこれに対応したものにすれば、その他の点については、第1実施形態で述べた構造や材料等を採用することができる。
【0049】
第1実施形態の発光装置1の
図5Aに係る工程において説明したが、枠部111と底部118を接合するときに、枠部111からの距離がどこも均一になるように底部118が配されることが望ましい。しかしながら、接合の過程においてずれることも考えられる。このとき、ずれが大きくなれば、底部118の一部が枠部111に接触する。また、底部118と枠部111との間隔が設計上の間隔よりも狭くなり、その部分における第1電極層112と底部118との距離が短くなったことで、枠部111及び底部118と基板100とをはんだ付けで接合するときに第1電極層112と底部118とが電気的に接続してしまうと、発光装置の不良に繋がってしまう。
【0050】
そこで、第2実施形態に係る発光装置2では、底部213の基板200との接合面215において、少なくともその外縁に窪み部214を設ける。このようにすることで、基板200との接合面215である基部210の底面における枠部211と底部213との間隔を、枠部211との接合面212における枠部211と底部213との間隔よりも広くする。
【0051】
図12A及び12Bは、窪み部214を有する底部213の例を示す。一例として、底部213を凸形状にすることで窪みを形成することができる。また、凸形状の突出した領域は、基板200との接合面215になるが、その形状は、
図12Aに示すように底部213の外枠の形状と同様の形状を縮小したものや、
図12Bに示すように円形としたものとすることも出来る。なお、
図13は、突出した領域の形状が円形であった場合の、基板200における接合面を示す模式図である。
図13に示すように、基部210の接合面215に合わせて露出部201も円形形状となる。
【0052】
窪み部214は、基板200とのはんだ付けの工程で、上述した不良が発生しないだけの十分な間隔と高さを確保できていればよい。例えば、第1実施形態の発光装置1は、0.1mm程度の間隔が空く設計としたが、最低限0.1mm程度の間隔を設ければいいのであれば、窪みの幅は0.1mm程度で設計すればよい。そうすれば、仮に枠部211との接合面212において枠部211と底部213とが接触していたとしても、基板200との接合面における枠部211と底部213との間隔は0.1mm程度を保つことができる。また例えば、第1実施形態の発光装置1は、底部118の側面119から第1電極層112までの距離が0.3mm以上空くように設計される。窪みの幅を設計するときには、同様に、第1電極層112までの距離が0.3mm程度に保たれるように、枠部の設計を考慮して決定してもよい。なお、0.3mmの間隔は、発光装置1における設計の一例を示したものであり、空けるべき所定の間隔はその発光装置の形状や材料などから適宜決めればよい。
【0053】
従って、底部213が窪み部214を有さず、かつ、枠部211に対するずれが生じていないとした場合に確保したい隙間と同程度の幅を有するように窪み部214を設けるのが好ましい。なお、窪み部214がそれ以上の幅を有していてもよく、
図12で記した突出領域が円形の底部213のように一部がそれ以上の幅を有するような形状であってもよい。但し、窪みの幅が広くなることは、基板200との接合面積が小さくなることでもあるため、十分な接合を得るには必要以上に窪み部の幅を広くしない方が望ましく、幅は0.1mmから0.5mmまでが望ましい。例えば、
図12に示すような円形の接合面を設ける場合、窪みの幅が最も狭くなる位置において確保したい隙間と同程度の幅を有するように設計することが考えられる。
【0054】
また、窪み部214が確保する高さについては、底部213の基板200との接合面215からはみ出たはんだが、基板200との接合面215と交わる側面を伝って隆起し、窪み内に留まるだけの高さが確保されていればよい。確保するに望ましい高さは、接合に使用するはんだの材料や量によって変わるが、例えば、発光装置2においては0.2mm程度の高さを確保する。
【0055】
なお、発光装置1で記した底部118や、
図12で一例として記した底部213のように、基板との接合面が長方形あるいは正方形の四隅を加工したような形状である場合、基板側の露出部もこれに合わせた形状で設けられ、これによって底部を基板に接合するときにセルフアライメントが働く。
【0056】
一方で、
図12で一例として記した底部213のように、基板200との接合面が円形形状である場合、基板側の露出部201もこれに合わせて円形形状で設けられることで、底部213の接合面は露出部201に収まるが、基板200と底部213とがはんだを介して接した状態であっても、はんだが固まるまでは円を回転させる方向には可動性を有している。上述したように、枠部211と底部213との配置にずれが生じる場合には、基板200との接合面215を円形形状とすることで回転方向の調整ができ、基板200に対する枠部211のずれを補正することができる。
【0057】
≪第1変形例≫
第1変形例の発光装置3は、第2実施形態で示した発光装置2とは他の方法で、基板との接合面における枠部と底部との間隔が、枠部との接合面における枠部と底部との間隔よりも広い発光装置を実現する。
【0058】
図14は、第1変形例に係る発光装置3の断面図を示す。
図14に示すように、発光装置3は、枠部311に窪み部312を有することで、基板300との接合面における枠部311と底部313との間隔を、枠部311との接合面における枠部311と底部313との間隔よりも広くする。このように、枠部311の形状を加工する方法で実現してもよく、発光装置3においては、発光装置2と違い、第1実施形態の基板100をそのまま採用することができる。
【0059】
≪第2変形例≫
図15は、第2変形例に係る発光装置4の断面図を示す。また
図16は、第2変形例に係る底部の模式図を示す。
図15に示すように、発光装置4は、底部412において、基板400との接合面が枠部411との接合面よりも小さく、側面413が傾斜を有している。このように側面413に傾斜を設けることで、基板400との接合面における枠部411と底部412との間隔を、枠部411との接合面における枠部411と底部412との間隔よりも広くすることができる。なお、第1変形例と同様に、底部412に傾斜を設ける代わりに、枠部411に設けるようにしてもよい。
【0060】
以上、本発明に係る発光装置を、各実施形態、変形例に基づき説明してきたが、本発明の技術思想を実現する発光装置はこれに限らない。例えば、3つの半導体レーザ素子が配される発光装置を説明したが、1または複数の半導体レーザ素子が配される発光装置であってもよい。また、光反射部材150を有さず、半導体レーザ素子から放射される光がレンズ部材140の方向に進むような発光装置であってもよい。
【0061】
また、本発明により開示される技術的特徴を有する発光装置は、発光装置1乃至4の構造に限られるわけではない。例えば、いずれの発光装置にも開示のない構成要素を有する発光装置においても本発明は適用され得るものであり、開示された発光装置と違いがあることは本発明を適用できないことの根拠とはならない。
【0062】
一方で、各実施形態及び変形例により開示された発光装置の全ての構成要素を必要十分に備えることを必須とせずとも、本発明は適用され得る。例えば、特許請求の範囲に、第1実施形態により開示された発光装置の一部の構成要素が記載されていなかった場合、その構成要素については、本実施形態に開示されたものに限らず、代替、省略、形状の変形、材料の変更などといった当業者による設計の自由度を認め、その上で特許請求の範囲に記載された発明が適用されることを請求するものである。