【課題】本発明は、寒冷地においても、ヒートパイプに封入された作動流体の凍結を抑制して、ヒートパイプの熱輸送機能の低下を防止できるヒートシンクを提供することを目的とする。
【解決手段】発熱体と熱的に接続可能な背面部を有するベースブロックと、前記ベースブロックの正面部に固定され、前記ベースブロックの面内方向に沿って配設された第1筒部と、前記第1筒部に接続され、前記ベースブロックから立設する第2筒部とを有する主ヒートパイプの複数で構成されるヒートパイプ群と、前記主ヒートパイプ群の立設方向に並列して前記第2筒部に固定された複数のフィンで構成されるフィン群と、を備え、前記複数の主ヒートパイプのうち、少なくとも1つの前記主ヒートパイプ内部の、少なくとも前記第2筒部の部位に、前記第2筒部の長手方向に沿って延在した、少なくとも一方端が閉塞された管材が収容されているヒートシンク。
前記主ヒートパイプが側面視L字状、且つ前記補助ヒートパイプが側面視L字状、または前記主ヒートパイプが側面視U字状、且つ前記補助ヒートパイプが側面視U字状若しくは側面視L字状である請求項2に記載のヒートシンク。
前記主ヒートパイプの内部に設けられたウィック構造体が、細溝であり、前記補助ヒートパイプの内部に設けられたウィック構造体が、金属粉の焼結体または金属繊維の焼結体である請求項2に記載のヒートシンク。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を利用した制御機器等の冷却に使用する冷却装置として、密閉のコンテナに封入された作動流体が相変化する際の潜熱を利用して発熱体を冷却するヒートシンク、すなわち、熱輸送手段としてヒートパイプを使用したヒートシンクが用いられることがある。このヒートパイプを使用したヒートシンクは、鉄道の車両などの移動体が寒冷地を走行する場合に、ヒートパイプの凝縮部で気相から液相へ相変化した作動流体がヒートパイプの蒸発部へ還流する前に凝縮部にて凍結してしまい、ヒートパイプの熱輸送機能が低下してしまう場合がある。
【0003】
従って、寒冷地を走行する移動体に取り付けるヒートシンクには、作動流体の凍結防止対策が要求される。このようなヒートシンクに用いられるヒートパイプの凍結防止対策として、例えば、受熱部の基材となる冷却装置のベースブロックの温度を測定する受熱部温度センサおよび冷却装置に用いるヒートパイプの先端部の温度を測定する放熱部温度センサの各測定値の少なくとも一方がヒートパイプに封入された作動流体の融点以下になった場合に、受熱部温度センサおよび放熱部温度センサの各測定値に基づいて、作動流体が凍結しているかどうかを判断するための演算部を備えた装置を冷却装置に取り付けることが提案されている(特許文献1) 。
【0004】
しかし、特許文献1で開示された作動流体の凍結防止対策では、作動流体が凍結しているかどうかを判断する装置を、別途、設ける必要がある。従って、冷却装置とその周辺機器の構造が複雑化されてしまい、作動流体の凍結を精度よく検知することが十分ではない場合がある。
【0005】
また、特許文献1では、作動流体の凍結を感知してから、凍結した作動流体に熱を付与して作動流体を融解させるので、作動流体が凍結している間は、ヒートパイプの熱輸送機能が損なわれてしまう。従って、特許文献1では、特に、作動流体の凍結当初の期間において、発熱体に対する冷却機能が発揮できない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、寒冷地においても、ヒートパイプに封入された作動流体の凍結を抑制して、ヒートパイプの熱輸送機能の低下を防止できるヒートシンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、発熱体と熱的に接続可能な背面部を有するベースブロックと、
前記ベースブロックの正面部に固定され、前記ベースブロックの面内方向に沿って配設された第1筒部と、前記第1筒部に接続され、前記ベースブロックから立設する第2筒部とを有する主ヒートパイプの複数で構成されるヒートパイプ群と、
前記主ヒートパイプ群の立設方向に並列して前記第2筒部に固定された複数のフィンで構成されるフィン群と、
を備え、
前記複数の主ヒートパイプのうち、少なくとも1つの前記主ヒートパイプ内部の、少なくとも前記第2筒部の部位に、前記第2筒部の長手方向に沿って延在した、少なくとも一方端が閉塞された管材が収容されているヒートシンクである。
【0009】
上記態様のヒートシンクでは、主ヒートパイプは、ベースブロックの面内方向に沿って延在した第1筒部とベースブロックから立設する方向に沿って延在した第2筒部とを有するので、主ヒートパイプの熱輸送方向に曲げ部が形成されている。また、複数の主ヒートパイプのうち、少なくとも1つの主ヒートパイプ内部では、少なくとも第2筒部の部位に、第2筒部の長手方向に沿って管材が収容されているので、第2筒部は二重管構造となっている。
【0010】
また、主ヒートパイプは、ベースブロックに固定される第1筒部が蒸発部として機能する。また、主ヒートパイプは、第2筒部のうち、フィン群が固定された部位が凝縮部として機能する。
【0011】
本発明の態様は、前記管材が、ヒートパイプとして動作する補助ヒートパイプであるヒートシンクである。
【0012】
上記態様のヒートシンクでは、ヒートパイプは、主ヒートパイプの内部にさらに補助ヒートパイプが収容されている二重構造となっている。なお、本明細書中、主ヒートパイプの内部にさらに補助ヒートパイプが収容されている二重構造のヒートパイプのことを、便宜上、単に「ヒートパイプ」ということがある。
【0013】
本発明の態様は、前記管材が、前記ベースブロックの部位から前記フィンの部位まで延在するヒートシンクである。
【0014】
上記態様のヒートシンクでは、主ヒートパイプの内部に収容された管材が、主ヒートパイプの蒸発部から凝縮部まで延在している。
【0015】
本発明の態様は、前記主ヒートパイプが、側面視L字状または側面視U字状であり、前記管材が、側面視直線状であるヒートシンクである。
【0016】
本発明の態様は、前記主ヒートパイプが側面視L字状、且つ前記補助ヒートパイプが側面視L字状、または前記主ヒートパイプが側面視U字状、且つ前記補助ヒートパイプが側面視U字状若しくは側面視L字状であるヒートシンクである。
【0017】
本発明の態様は、前記主ヒートパイプの内部に設けられたウィック構造体が、細溝であり、前記補助ヒートパイプの内部に設けられたウィック構造体が、金属粉の焼結体または金属繊維の焼結体であるヒートシンクである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、主ヒートパイプ内部の、少なくとも前記第2筒部の部位に、第2筒部の長手方向に沿って、少なくとも一方端が閉塞された管材が延在していることにより、管材の内部空間にて第2筒部の長手方向に沿って熱が輸送される。従って、寒冷地においても、第2筒部の長手方向に沿って輸送された熱によって主ヒートパイプの凝縮部における作動流体の凍結を抑制して、主ヒートパイプの熱輸送機能の低下を防止できる。
【0019】
本発明の態様によれば、管材がヒートパイプとして動作する補助ヒートパイプであることにより、補助ヒートパイプが主ヒートパイプの蒸発部方向から凝縮部方向へ熱輸送を行うので、主ヒートパイプに封入された作動流体の凍結を確実に防止できる。
【0020】
本発明の態様によれば、管材がベースブロックの部位からフィンの部位まで延在することにより、管材の内部空間にて主ヒートパイプの蒸発部から凝縮部まで熱が輸送されるので、主ヒートパイプに封入された作動流体の凍結を確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態のヒートシンクを、図面を用いながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るヒートシンクの構成を概略的に示す断面図である。
図2は、
図1のヒートシンクの詳細構成を示す部分断面図である。
図3は、本発明の実施形態に係るヒートシンクに用いられる第1実施形態例に係るヒートパイプを概略的に示す側面断面図である。
図4は、第1実施形態例に係るヒートパイプに封入された作動流体の状態を示す説明図である。
図5は、本発明の実施形態に係るヒートシンクに用いられる第2実施形態例に係るヒートパイプを概略的に示す側面断面図である。
図6は、本発明の実施形態に係るヒートシンクに用いられる第3実施形態例に係るヒートパイプを概略的に示す側面断面図である。
【0023】
図1に示すように、鉄道等の車両100の床下面101には、アタッチメント102を介して密閉状の筐体200が取り付けられている。筐体200の一方の側壁201には、開口部202が形成され、この開口部202を開閉する開閉カバー203が上部のヒンジ204によって取り付けられている。この開閉カバー203は、開口部202を閉じたとき図示しないロック手段によってロックできるように構成されている。
【0024】
一方で、筐体200の他方の側壁205には窓孔206が形成されている。窓孔206は、側壁205に外側から取り付けられたベースブロック10によって閉塞されており、これにより筐体200内が密閉状態で保持されている。このベースブロック10は、後述する本発明の実施形態に係るヒートシンク1のベースブロック10である。ベースブロック10の筐体200の内部に面する部分には、発熱体、例えば半導体モジュールなどの電気部品300の複数が取り付けられている。また、筐体200内には、例えば、他の発熱体として、スナバ抵抗器,スナバコンデンサ及びゲートアンプでそれぞれ構成される他の部品301,302,303が設置されている。
【0025】
筐体200の側壁205には、車両100の走行に伴う風(走行風)に沿うように筒状のカバー207が取り付けられており、このカバー207内にヒートシンク1が収容されている。また、カバー207内には、ヒートパイプ群20を補強的に支持する支持板208a,208bが取り付けられている。支持板208aは、ヒートパイプ群20を重力方向下方から支持しており、例えば、その一端部がカバー207の底壁209に固定され、他端部がヒートパイプ群20の一部に固定されている。支持板208bは、ヒートパイプ群20を重力方向上方から支持しており、例えば、その一端部がカバー207の上壁210に固定され、他端部がヒートパイプ群20の一部に固定されている。また、これら支持板208a,208bは、ヒートパイプ群20と熱的に接続されており、放熱プレートを兼ねている。
【0026】
図2に示すように、ヒートシンク1は、冷却対象の発熱体である電気部品300と熱的に接続された背面部10aを有するベースブロック10と、ベースブロック10の正面部10bに固定され、ベースブロック10の面内方向に沿って配設された第1筒部21aと、第1筒部21aに接続、連通され、ベースブロック10から立設する第2筒部21bとを有する第1実施形態例に係るヒートパイプ21の複数で構成されるヒートパイプ群20と、ヒートパイプ群20の立設方向、すなわち、第2筒部21bの延在方向に並列して第2筒部21bに固定された複数のフィン31,31,・・・で構成されるフィン群30と、を備える。
【0027】
ベースブロック10は、板状部材であり、電気部品300からの熱を受ける受熱部材である。ベースブロック10は、背面部10aが筐体200側に、正面部10bがカバー207側に向くように、側壁205に沿って筐体200に取り付けられている(
図1を参照)。ベースブロック10は、例えば、背面部10a及び正面部10bが、鉛直方向に沿って配置される。ベースブロック10の材料は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼などの金属材料で構成されている。
【0028】
ヒートパイプ群20を構成する複数のヒートパイプ21,21,・・・は、重力方向に対して略平行方向に、所定の間隔を空けて並べて設けられており、ヒートシンク1では、鉛直方向に並設されている。
【0029】
第1筒部21aは、ベースブロック10からの熱によって加熱される蒸発部としての機能を有する。第1筒部21aの長手方向の形状は、直線状となっている。第2筒部21bは、第1筒部21aからの熱を放出する凝縮部としての機能を有する。第2筒部21bの長手方向の形状は、直線状となっている。
【0030】
フィン群30を構成する複数のフィン31,31,・・・は、第2筒部21bの延在方向に、所定の間隔を空けて並設されており、例えば、ヒートシンク1では、複数のフィン31,31,・・・の主面が略平行となるように並設されている。フィン31は、ヒートパイプ21の第2筒部21bの位置、形状及び寸法に対応する1又は複数の孔部を有しており、例えば、この孔部に第2筒部21bを嵌挿することによって、フィン31は、ヒートパイプ21に固定されている。
【0031】
フィン31は、第2筒部21bからの熱を放出する熱交換手段としての機能を有する。フィン31が熱交換手段としての機能を発揮し得る構成であれば、フィン31の形状は、特に限定されず、ヒートシンク1では、薄い平板状となっている。また、フィン31は、ヒートパイプ群20の並設方向に関して複数のヒートパイプ21,21,・・・の全てと連結されているのが好ましい。但し、ヒートパイプ群20の並設方向に関して複数のヒートパイプ21,21,・・・のうちの一部と連結されたフィン32が設けられてもよい。
【0032】
複数の第1筒部21a,21a,・・・が、ベースブロック10を介して相互に連結されていると共に、複数の第2筒部21b,21b,・・・が、フィン群30を介して相互に連結されている。すなわち、複数のヒートパイプ21,21,・・・に連結された複数のフィン31,31,・・・で構成されるフィン群30は、フィン肉厚とその枚数を乗算した値の厚みを有する剛体と捉えることができる。よって、車両100の走行時に、ヒートパイプ群20及びフィン群30で構成されるヒートシンク1に振動が加えられた場合であっても、複数のヒートパイプ21,21,・・・の各ヒートパイプ21間距離がフィン群30によって維持され、その結果、立設された各ヒートパイプ21とベースブロック10との各固定部に力のモーメントが生じ難い構造となっている。
【0033】
第1筒部21aのベースブロック10への接続方法は、特に限定されず、例えば、
図2に示すように、ベースブロック10の正面部10bに設けられた凹溝11に第1筒部21aを嵌合し、この嵌合部をはんだ等の接合手段で固定することで、第1筒部21aをベースブロック10に固定することができる。
【0034】
次に、ヒートパイプ21の構造の詳細について、図面を用いながら説明する。
図3、4に示すように、ヒートパイプ21は、主ヒートパイプ41と、主ヒートパイプ41内部の、少なくとも第2筒部21bの部位に、第2筒部21bの長手方向に沿って延在した、少なくとも一方端が閉塞された管材が収容されている。第1実施形態例に係るヒートパイプ21では、少なくとも一方端が閉塞された上記管材として、ヒートパイプとして動作する補助ヒートパイプ42が収容されている。
【0035】
上記から、ヒートパイプ21は、主ヒートパイプ41と補助ヒートパイプ42とからなる二重構造のヒートパイプとなっている。また、第2筒部21bの部位は、二重管構造となっている。
【0036】
補助ヒートパイプ42は、熱輸送方向である長手方向の形状が直線状の管状体であり、側面視直線状となっている(
図3参照)。補助ヒートパイプ42は、主ヒートパイプ41のコンテナ24内部を、ベースブロック10の部位からフィン31の部位まで延在している。
【0037】
主ヒートパイプ41は、一方端22の端面と他方端23の端面とが封止された管形状のコンテナ24と、コンテナ24の内面に設けられたウィック構造体(図示せず)と、コンテナ24の内部空間である空洞部25に封入された作動流体26と、を備えている。主ヒートパイプ41のコンテナ24が、ヒートパイプ21のコンテナ24でもあり、主ヒートパイプ41の一方端22と他方端23が、それぞれ、ヒートパイプ21の一方端22と他方端23でもある。また、ヒートパイプ21の第1筒部21aが主ヒートパイプ41の第1筒部21aでもあり、ヒートパイプ21の第2筒部21bが主ヒートパイプ41の第2筒部21bでもある。上記から、主ヒートパイプ41の熱輸送方向が、ヒートパイプ21の熱輸送方向に対応している。
【0038】
主ヒートパイプ41のコンテナ24は、密閉された管材である。また、コンテナ24の空洞部25は、減圧処理されている。主ヒートパイプ41の熱輸送方向である長手方向の形状は、特に限定されないが、主ヒートパイプ41(ヒートパイプ21)では、熱輸送方向に曲げ部27が形成されている。すなわち、直線状である第1筒部21aと直線状である第2筒部21bとの間に曲げ部27が設けられている。より具体的には、主ヒートパイプ41(ヒートパイプ21)は、1つの第1筒部21aと2つの第2筒部21bを有する側面視U字形状を有する管状体であり、第1筒部21aを介して第2筒部21bが対向配置されている。上記から、主ヒートパイプ41(ヒートパイプ21)には、2つの曲げ部27が形成されている。コンテナ24の長手方向に対して直交方向の断面形状は、円形状、扁平形状、四角形等の多角形状など、特に限定されず、ヒートパイプ21では、略円形状となっている。補助ヒートパイプ42は、2つの第2筒部21bに、それぞれ1本ずつ、合計2本収容されている。
【0039】
主ヒートパイプ41のコンテナ24の内面には、一方端22から他方端23まで、コンテナ24の長手方向に沿ってウィック構造体(図示せず)が設けられている。すなわち、ウィック構造体は、コンテナ24の長手方向に沿って延在している。ウィック構造体としては、毛細管力を生じる構造体であれば、特に限定されず、例えば、コンテナ24の長手方向に沿って延在した複数の細溝(グルーブ)、金属粉の焼結体、金属繊維の焼結体、金属メッシュ等を挙げることができる。このうち、液相の作動流体26の還流抵抗の増大を防止する点からグルーブが好ましい。
【0040】
コンテナ24の材質は、特に限定されず、例えば、熱伝導率に優れた点から銅、銅合金、軽量性の点からアルミニウム、アルミニウム合金、強度の改善の点からステンレス等を使用することができる。その他、使用状況に応じて、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金等を用いてもよい。
【0041】
また、コンテナ24に封入する作動流体26としては、コンテナ24の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、代替フロン、パーフルオロカーボン、シクロペンタン等を挙げることができる。
【0042】
図3、4に示すように、ヒートパイプ21では、補助ヒートパイプ42は、第2筒部21bの部位をベースブロック10の部位からフィン31の部位まで直線状に延在している。上記から、補助ヒートパイプ42は、ベースブロック10から立設された状態となっている。一方で、第1筒部21aの部位には、補助ヒートパイプ42は設けられていない。
【0043】
ベースブロック10が発熱体から受熱すると、第2筒部21bのうち、ベースブロック10側の部位はフィン31側の部位よりも高温状態となる。従って、補助ヒートパイプ42のうち、ベースブロック10側の部位は蒸発部として機能し、フィン31側の部位は凝縮部として機能する。上記から、補助ヒートパイプ42は、第2筒部21b内部をベースブロック10側の部位からフィン31側の部位へ熱輸送することができる。
【0044】
補助ヒートパイプ42は、一方端52の端面と他方端53の端面とが封止された管形状のコンテナ44と、コンテナ44の内面に設けられたウィック構造体(図示せず)と、コンテナ44の内部空間である空洞部45に封入された作動流体46と、を備えている。補助ヒートパイプ42のコンテナ44は、密閉された管材である。また、コンテナ44の空洞部45は、減圧処理されている。上記から、補助ヒートパイプ42に封入された作動流体46は、主ヒートパイプ41に封入された作動流体26と分離されており、主ヒートパイプ41に封入された作動流体26の動作は、補助ヒートパイプ42に封入された作動流体46の動作とは独立している。
【0045】
補助ヒートパイプ42の熱輸送方向である長手方向の形状は、直線状である。コンテナ44の長手方向に対して直交方向の断面形状は、円形状、扁平形状、四角形等の多角形状など、特に限定されず、ヒートパイプ21では、略円形状となっている。
【0046】
補助ヒートパイプ42のコンテナ44の内面には、一方端52から他方端53まで、コンテナ44の長手方向に沿ってウィック構造体(図示せず)が設けられている。すなわち、補助ヒートパイプ42のウィック構造体は、コンテナ44の長手方向に沿って延在している。ウィック構造体としては、毛細管力を生じる構造体であれば、特に限定されず、例えば、コンテナ44の長手方向に沿って延在した複数の細溝(グルーブ)、金属粉の焼結体、金属繊維の焼結体、金属メッシュ等を挙げることができる。このうち、ウィック構造体の毛細管力を向上させて補助ヒートパイプ42に優れた熱輸送特性を付与する点から金属粉の焼結体が好ましい。
【0047】
補助ヒートパイプ42のコンテナ44の材質は、特に限定されず、主ヒートパイプ41のコンテナ24の材質と同じでもよく、異なっていてもよい。コンテナ44の材質としては、例えば、熱伝導率に優れた点から銅、銅合金、軽量性の点からアルミニウム、アルミニウム合金、強度の改善の点からステンレス等を使用することができる。その他、使用状況に応じて、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金等を用いてもよい。
【0048】
また、補助ヒートパイプ42のコンテナ44に封入する作動流体46としては、主ヒートパイプ41のコンテナ24に封入する作動流体26と同じでもよく、異なっていてもよい。補助ヒートパイプ42の作動流体46は、コンテナ44の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、代替フロン、パーフルオロカーボン、シクロペンタン等を挙げることができる。
【0049】
ヒートパイプ21では、主ヒートパイプ41内部の第2筒部21bの部位に、第2筒部21bの長手方向に沿って、補助ヒートパイプ42がベースブロック10の部位からフィン31の部位まで延在していることにより、補助ヒートパイプ42によって、第2筒部21bの長手方向に沿って主ヒートパイプ41(ヒートパイプ21)の蒸発部から凝縮部方向へ熱が輸送される。また、補助ヒートパイプ42の空洞部45は、主ヒートパイプ41の空洞部25よりも、外気温の影響を受け難い。よって、補助ヒートパイプ42の空洞部45においては、寒冷地においても作動流体46の凍結が防止され、補助ヒートパイプ42の熱輸送特性を維持することができる。 従って、寒冷地においても、補助ヒートパイプ42の熱輸送機能にて第2筒部21bの長手方向に沿って蒸発部から凝縮部方向へ輸送された熱によって、主ヒートパイプ41(ヒートパイプ21)の凝縮部における作動流体26の凍結を抑制できる。結果として、主ヒートパイプ41(ヒートパイプ21)の熱輸送機能の低下を防止できる。従って、寒冷地を走行する車両100に本発明の実施形態に係るヒートシンク1が設置されても、ヒートパイプ21の熱輸送特性が得られて、ヒートシンク1の冷却特性を維持することができる。
【0050】
次に、本発明の実施形態に係るヒートシンク1の冷却メカニズムについて説明する。ヒートシンク1のベースブロック10が背面部10aにて発熱体である電気部品300から受熱すると、ベースブロック10の背面部10aから正面部10bへ熱が伝達され、正面部10bへ伝達された熱は、さらに、正面部10bからヒートパイプ21(主ヒートパイプ41)の第1筒部21aへ伝達される。第1筒部21aへ熱が伝達されると、第1筒部21aが主ヒートパイプ41の蒸発部として機能する。蒸発部にて主ヒートパイプ41の作動流体26が液相から気相へ相変化する。気相に相変化した作動流体26が、主ヒートパイプ41の空洞部25を、コンテナ24の長手方向に蒸発部から第2筒部21bの凝縮部へ流れることで、発熱体である電気部品300からの熱が主ヒートパイプ41の蒸発部から凝縮部へ輸送される。主ヒートパイプ41の蒸発部から凝縮部へ輸送された熱は、熱交換手段であるフィン31の設けられた第2筒部21bの凝縮部にて、気相の作動流体26が液相へ相変化することで、潜熱として放出される。
【0051】
第1筒部21aが主ヒートパイプ41の蒸発部として機能し、第2筒部21bが主ヒートパイプ41の凝縮部として機能するとともに、補助ヒートパイプ42は、ベースブロック10側の部位は蒸発部として機能し、フィン31側の部位は凝縮部として機能する。このとき、補助ヒートパイプ42が、その熱輸送機能により、第2筒部21b内部をベースブロック10側の部位からフィン31側の部位へ熱を輸送する。補助ヒートパイプ42によって第2筒部21b内部をベースブロック10側の部位からフィン31側の部位へ輸送された熱により、寒冷地においても、主ヒートパイプ41の凝縮部にて液相へ相変化した作動流体26の凍結が防止される。
【0052】
主ヒートパイプ41の凝縮部にて放出された潜熱は、主ヒートパイプ41の凝縮部に設けられたフィン31を介して、主ヒートパイプ41の凝縮部からヒートシンク1の外部環境へ放出される。また、主ヒートパイプ41の凝縮部にて液相に相変化した作動流体26は、主ヒートパイプ41に設けられたウィック構造体の毛細管力によって、主ヒートパイプ41の凝縮部から蒸発部へ還流される。
【0053】
次に、第1実施形態例に係るヒートパイプ21の製造方法について説明する。前記製造方法は、特に限定されず、例えば、側面視U字状である管材の一方の端部から、補助ヒートパイプ42を挿入する。この管材は、両方の端部が開口しており、管材の内面には、管材の長手方向に沿って複数のグルーブが設けられている。次に、封入口を残して管材の両方の端部を封止し、上記封入口から作動流体26を注入した後、管材内部を、加熱脱気、真空脱気等の脱気処理をして減圧状態とする。その後、封入口を封止することでコンテナ24が形成されて、ヒートパイプ21を製造することができる。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係るヒートシンクに用いられる第2実施形態例に係るヒートパイプについて、図面を用いながら説明する。なお、第1実施形態例に係るヒートパイプ21と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0055】
第1実施形態例に係るヒートパイプ21では、補助ヒートパイプ42は直線状であり、2つの第2筒部21bに、それぞれ1本ずつ、合計2本収容されていたが、これに代えて、
図5に示すように、第2実施形態例に係るヒートパイプ61では、側面視U字状である主ヒートパイプ41のコンテナ24と同じく、補助ヒートパイプ62のコンテナ64も、側面視U字状となっている。ヒートパイプ61では、コンテナ24の一方端22から他方端23まで、二重構造のヒートパイプとなっている。従って、ヒートパイプ61では、第2筒部21bだけではなく、第1筒部21aにも、補助ヒートパイプ62が延在している。第2実施形態例に係るヒートパイプ61でも、第1実施形態例に係るヒートパイプ21と同様に、補助ヒートパイプ62に封入された作動流体46は、主ヒートパイプ41に封入された作動流体26と分離されている。
【0056】
第2実施形態例に係るヒートパイプ61でも、第1実施形態例に係るヒートパイプ21と同様に、補助ヒートパイプ62の熱輸送機能によって第2筒部21b内部をベースブロック10側の部位からフィン31側の部位へ輸送された熱により、寒冷地においても、主ヒートパイプ41の凝縮部にて液相へ相変化した作動流体26の凍結を防止することができる。
【0057】
次に、本発明の実施形態に係るヒートシンクに用いられる第3実施形態例に係るヒートパイプについて、図面を用いながら説明する。なお、第1、第2実施形態例に係るヒートパイプと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0058】
第1実施形態例に係るヒートパイプ21では、第2筒部21bの長手方向に沿って延在した、少なくとも一方端が閉塞された管材として、ヒートパイプ(補助ヒートパイプ42)が用いられていたが、これに代えて、
図6に示すように、第3実施形態例に係るヒートパイプ71では、一方端が閉塞され、他方端が開放された管部材72が用いられている。管部材72は、重力方向上方側の一方端が閉塞され、重力方向下方側であるベースブロック10側が開放されている。
【0059】
上記から、第3実施形態例に係るヒートパイプ71では、主ヒートパイプ41に封入された作動流体26が、管部材72内部も流通する。管部材72の内部空間は、補助ヒートパイプ42と同様に、主ヒートパイプ41の空洞部25よりも、外気温の影響を受け難い。従って、管部材72の内部空間においては、寒冷地においても作動流体26の凍結を防止することができ、主ヒートパイプ41の熱輸送特性を維持することができる。
【0060】
次に、本発明のヒートシンクの他の実施形態について説明する。上記実施形態例では、主ヒートパイプの形状は、側面視U字状であったが、これに代えて、側面視L字状等、熱輸送方向に曲げ部を有する他の形状でもよい。また、上記実施形態例では、補助ヒートパイプの形状は、側面視U字状または直線状であったが、これに代えて、側面視L字状でもよい。
【0061】
また、本発明のヒートシンクでは、ヒートシンクの使用条件等に応じて、複数の主ヒートパイプの全てに、補助ヒートパイプ等の少なくとも一方端が閉塞された管材が収容されている態様でもよく、複数の主ヒートパイプのうち、一部の主ヒートパイプの内部に補助ヒートパイプ等の少なくとも一方端が閉塞された管材が収容され、他の主ヒートパイプの内部には補助ヒートパイプ等の少なくとも一方端が閉塞された管材が収容されていない態様でもよい。