特開2019-214641(P2019-214641A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-214641(P2019-214641A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】成形体及び複合体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20191122BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20191122BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20191122BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20191122BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   C08J5/00CEW
   C08L27/18
   C08K3/22
   C08F214/26
   F16L11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-111109(P2018-111109)
(22)【出願日】2018年6月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】別府 祥太朗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 徹
(72)【発明者】
【氏名】田口 大輔
【テーマコード(参考)】
3H111
4F071
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111BA24
3H111BA32
3H111DA01
3H111DA09
3H111DA11
3H111DB20
4F071AA27X
4F071AA84X
4F071AA88X
4F071AB18
4F071AE05
4F071AF09Y
4F071AF13Y
4F071AF15Y
4F071AF17Y
4F071AF20Y
4F071BA01
4F071BB03
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC05
4J002AA013
4J002BD133
4J002BD143
4J002BD151
4J002BD152
4J002BD153
4J002BD163
4J002CF163
4J002CH093
4J002CM043
4J002CN013
4J002CN033
4J002DE096
4J002FD010
4J002FD066
4J002FD090
4J002GM00
4J002GN00
4J100AC26P
4J100AE39Q
4J100AK31R
4J100AK32R
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA24
4J100DA40
4J100DA42
4J100DA47
4J100DA50
4J100DA51
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】高温引張特性、燃料遮蔽性及び繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れ、かつ各種成形法によって製造しやすい成形体及び複合体の提供。
【解決手段】テトラフルオロエチレンに基づく単位と、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを有する共重合体Aを含む成形材料からなる成形体であり、共重合体Aにおけるテトラフルオロエチレンに基づく単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位との合計のうち、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位の割合が2.1〜6.9モル%であり、共重合体Aのメルトフローレートが8.5〜30g/10分であり、共重合体Aが、MIT折り曲げ試験で求めた耐折回数が28,000回以上となるものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンに基づく単位と、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを有する共重合体Aを含む成形材料からなる成形体であり、
前記共重合体Aにおける前記テトラフルオロエチレンに基づく単位と前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位との合計のうち、前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位の割合が2.1〜6.9モル%であり、
前記共重合体Aのメルトフローレートが、8.5〜30g/10分であり、
前記共重合体Aが、下記MIT折り曲げ試験で求めた耐折回数が28,000回以上となるものである、成形体。
(MIT折り曲げ試験)
前記共重合体Aから幅:12.5mm、長さ:130mm、厚さ:0.23mmの試験片を作製する。JIS P 8115:2001(対応国際規格ISO 5626:1993)に準拠したMIT試験機に試験片を装着し、温度:25℃、荷重:12.25N、折り曲げ角度:左右それぞれ135度、折り曲げ速度:175回/分の条件で試験片を折り曲げ、試験片が破断するまでの往復折曲げ回数を記録し、これを耐折回数とする。
【請求項2】
前記共重合体Aが、下記引張特性試験で求めた200℃における引張降伏ひずみが9.5%以上となるものであり、
前記共重合体Aが、下記引張特性試験で求めた200℃における引張破壊応力が12MPa以上となるものであり、
前記共重合体Aが、下記引張特性試験で求めた200℃における引張降伏応力が1.2MPa以上となるものであり、
前記共重合体Aが、下記カップ法で求めた燃料透過係数が1.0g・mm/(m・24hr)以下となるものであり、
前記共重合体Aの融点が240℃以上である、請求項1に記載の成形体。
(引張特性試験)
前記共重合体Aをプレス成形して厚さ1mmのフィルムを作製し、フィルムをASTM D638 Type Vに定める形状(ダンベル片)に打ち抜いて試験片を作製する。試験片についてJIS K 7161−1994(対応国際規格ISO 527−1:1993)に準拠して温度:200℃、試験速度:50mm/分で引張試験を行い、得られた応力−ひずみ曲線から、引張降伏ひずみ、引張破壊応力及び引張降伏応力を求める。
(カップ法)
前記共重合体Aをプレス成形して厚さ100μmのフィルムを作製する。JIS Z 0208−1976に規定されているカップ法に準拠し、燃料CE10(イソオクタン:トルエン:エタノール=50:50:10体積比)の4.6gを、透過面積:11.33cmのカップに入れ、フィルムでカップの上部を覆い、60℃で10日間保持した後の質量減少量を記録し、下式から燃料透過係数を求める。
燃料透過係数=質量減少量(g)・フィルムの厚さ(mm)/(透過面積(m)・透過日数)
【請求項3】
前記成形材料が、前記共重合体Aとして、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する共重合体Aを含む、請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
前記共重合体Aが、前記官能基として少なくともカルボニル基含有基を有する、請求項3に記載の成形体。
【請求項5】
前記成形材料が、前記官能基を有する共重合体Aと、前記官能基を有しない前記共重合体Aとを含む、請求項3又は4に記載の成形体。
【請求項6】
前記成形材料が、前記共重合体A以外の重合体を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項7】
前記成形材料が、添加剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項8】
前記成形材料が、前記添加剤として酸化第二銅を含む、請求項7に記載の成形体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形体と、他の部材とを有する、複合体。
【請求項10】
耐熱ホース、ターボホース又はEGRホースである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形体又は請求項9に記載の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及び複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車における各種ホース(燃料配管用ホース、ターボホース、EGRホース等)の小型化、軽量化のために、ホースの材料として含フッ素重合体が検討されている。ホースの材料に用いられる含フッ素重合体には、高温での使用に耐えられる高温引張特性、燃料等を透過しない燃料遮蔽性、ホース等に成形しやすい成形性、繰り返し振動及び衝撃を受けても割れにくいこと(繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性)が求められる。
【0003】
機械特性及び射出成形性に優れた含フッ素重合体としては、下記のものが提案されている。
(1)テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、「PAVE」とも記す。)単位とを有し、TFE単位/PAVE単位のモル比が98.1/1.9〜95.0/5.0であり、372℃におけるメルトフローレートが35〜60g/10分であり、Mw/Mnが1〜1.7である共重合体(特許文献1)。
【0004】
繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れた含フッ素重合体としては、下記のものが提案されている。
(2)エチレン単位とTFE単位と他の単量体単位とを有し、エチレン単位とTFE単位との合計のうち、エチレン単位の割合が40〜49モル%であり、TFE単位の割合が51〜60モル%であり、全単位のうち他の単量体単位が2.6〜6.0モル%であり、融点が230℃以上であり、297℃、荷重49Nにおけるメルトフローレートが1〜15g/10分である共重合体(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4792622号公報
【特許文献2】国際公開第2017/082417号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、(1)の共重合体は、高温引張特性、繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性が不充分である。
(2)の共重合体は、高温引張特性、燃料遮蔽性が不充分である。
【0007】
本発明は、高温引張特性、燃料遮蔽性及び繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れ、かつ各種成形法によって製造しやすい成形体及び複合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>テトラフルオロエチレンに基づく単位と、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを有する共重合体Aを含む成形材料からなる成形体であり、前記共重合体Aにおける前記テトラフルオロエチレンに基づく単位と前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位との合計のうち、前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位の割合が2.1〜6.9モル%であり、前記共重合体Aのメルトフローレートが、8.5〜30g/10分であり、前記共重合体Aが、下記MIT折り曲げ試験で求めた耐折回数が28,000回以上となるものである、成形体。
(MIT折り曲げ試験)
前記共重合体Aから幅:12.5mm、長さ:130mm、厚さ:0.23mmの試験片を作製する。JIS P 8115:2001(対応国際規格ISO 5626:1993)に準拠したMIT試験機に試験片を装着し、温度:25℃、荷重:12.25N、折り曲げ角度:左右それぞれ135度、折り曲げ速度:175回/分の条件で試験片を折り曲げ、試験片が破断するまでの往復折曲げ回数を記録し、これを耐折回数とする。
<2>前記共重合体Aが、下記引張特性試験で求めた200℃における引張降伏ひずみが9.5%以上となるものであり、前記共重合体Aが、下記引張特性試験で求めた200℃における引張破壊応力が12MPa以上となるものであり、前記共重合体Aが、下記引張特性試験で求めた200℃における引張降伏応力が1.2MPa以上となるものであり、前記共重合体Aが、下記カップ法で求めた燃料透過係数が1.0g・mm/(m・24hr)以下となるものであり、前記共重合体Aの融点が240℃以上である、前記<1>の成形体。
(引張特性試験)
前記共重合体Aをプレス成形して厚さ1mmのフィルムを作製し、フィルムをASTM D638 Type Vに定める形状(ダンベル片)に打ち抜いて試験片を作製する。試験片についてJIS K 7161−1994(対応国際規格ISO 527−1:1993)に準拠して温度:200℃、試験速度:50mm/分で引張試験を行い、得られた応力−ひずみ曲線から、引張降伏ひずみ、引張破壊応力及び引張降伏応力を求める。
(カップ法)
前記共重合体Aをプレス成形して厚さ100μmのフィルムを作製する。JIS Z 0208−1976に規定されているカップ法に準拠し、燃料CE10(イソオクタン:トルエン:エタノール=50:50:10体積比)の4.6gを、透過面積:11.33cmのカップに入れ、フィルムでカップの上部を覆い、60℃で10日間保持した後の質量減少量を記録し、下式から燃料透過係数を求める。
燃料透過係数=質量減少量(g)・フィルムの厚さ(mm)/(透過面積(m)・透過日数)
<3>前記成形材料が、前記共重合体Aとして、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する共重合体Aを含む、前記<1>又は<2>の成形体。
<4>前記共重合体Aが、前記官能基として少なくともカルボニル基含有基を有する、前記<3>の成形体。
<5>前記成形材料が、前記官能基を有する共重合体Aと、前記官能基を有しない前記共重合体Aとを含む、前記<3>又は<4>の成形体。
<6>前記成形材料が、前記共重合体A以外の重合体をさらに含む、前記<1>〜<5>のいずれかの成形体。
<7>前記成形材料が、添加剤をさらに含む、前記<1>〜<6>のいずれかの成形体。
<8>前記成形材料が、前記添加剤として酸化第二銅を含む、前記<7>の成形体。
<9>前記<1>〜<7>のいずれかの成形体と、他の部材とを有する、複合体。
<10>耐熱ホース、ターボホース又はEGRホースである、前記<1>〜<7>のいずれかの成形体又は前記<9>の複合体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成形体及び複合体は、高温引張特性、燃料遮蔽性及び繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れ、かつ各種成形法によって製造しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「メルトフローレート」(以下、「MFR」とも記す。)は、ASTM D3307に準拠して測定される、372℃、荷重49Nの条件下、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間で流出する共重合体の質量(g)である。
「融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。本明細書において、単量体に基づく単位を、単に、単量体単位とも記す。例えば、TFEに基づく単位を、TFE単位とも記す。
「単量体」とは、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
<成形体>
本発明の一態様である成形体は、後述する共重合体Aを含む成形材料からなる。
成形材料は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて共重合体A以外の重合体(以下、「他の重合体」とも記す。)をさらに含んでもよい。
成形材料は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて添加剤をさらに含んでもよい。
成形材料中の共重合体Aの割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0012】
(共重合体A)
共重合体Aは、TFE単位とPAVE単位とを有する。
共重合体Aは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてTFE単位及びPAVE単位以外の単量体(以下、「他の単量体」とも記す。)単位を有してもよい。
【0013】
PAVEとしては、共重合体Aの熱安定性に優れる点から、下式Iで表される化合物が好ましい。
CF=CFORf1 式I
ただし、Rf1は、炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基、又は炭素数2〜10のペルフルオロアルキル基の炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状でよく、分岐状でもよい。
f1の炭素数は、共重合体Aの熱安定性、機械強度の点から、2〜7が好ましい。
【0014】
CF=CFORf1としては、例えば、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCF(以下、「PHVE」とも記す。)が挙げられる。
CF=CFORf1としては、共重合体Aの熱安定性、機械強度、ならびに入手しやすさの点からは、PPVEやPHVEが好ましい。
【0015】
他の単量体としては、例えば、下記のものが挙げられる。
・フルオロオレフィン(ただし、TFEを除く。):フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、クロロトリフルオロエチレン等。
・CF=CFORf2SO(ただし、Rf2は炭素数1〜10のペルフルオロアルキレン基、又は炭素数2〜10のペルフルオロアルキレン基の炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、Xはハロゲン原子又は水酸基である。)。
・CF=CFORf3CO(ただし、Rf3は炭素数1〜10のペルフルオロアルキレン基、又は炭素数2〜10のペルフルオロアルキレン基の炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、Xは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。)。
・CF=CF(CFOCF=CF(ただし、pは1又は2である。)。
・CH=CX(CF(ただし、Xは水素原子又はフッ素原子であり、qは2〜10の整数であり、Xは水素原子又はフッ素原子である。)。
・環構造を有する含フッ素単量体:ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等。
・オレフィン:エチレン、プロピレン、1−ブテン等。
・ビニルエステル:酢酸ビニル等。
・後述する接着性官能基を有する非フッ素単量体。
【0016】
TFE単位とPAVE単位との合計のうち、TFE単位の割合は、93.1〜97.9モル%であり、94.0〜97.9モル%が好ましく、96.7〜97.3モル%がより好ましい。
【0017】
TFE単位とPAVE単位との合計のうち、PAVE単位の割合は、2.1〜6.9モル%であり、2.1〜6.0モル%が好ましく、2.7〜3.3モル%がより好ましい。PAVE単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、成形体の200℃における引張降伏ひずみが充分に高い。PAVE単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、成形体の200℃における引張降伏応力が充分に高く、かつ燃料遮蔽性に優れる。また、PAVE単位の割合が前記範囲内であり、かつ共重合体AのMFRが後述する範囲の上限値以下であれば、成形体の高温引張特性に優れる。また、PAVE単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、共重合体AのMFRが低めであっても、成形性(成形時の流動性)を保ちつつ、成形体が繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れる傾向にある。
【0018】
共重合体Aを構成する全単位のうち、TFE単位とPAVE単位との合計の割合は、本発明の効果が充分に発揮される点から、90〜100モル%が好ましく、95〜100モル%が好ましく、99〜100モル%がより好ましい。
共重合体Aを構成する全体のうち、他の単量体単位の割合は、本発明の効果が充分に発揮される点から、0〜10モル%が好ましく、0〜5モル%が好ましく、0〜1モル%がより好ましい。
【0019】
成形材料は、他材料と積層、複合化しやすくするために、共重合体Aとして、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基(以下、「接着性官能基」とも記す。)を有する共重合体Aを含むことが好ましい。
成形材料が接着性官能基を有する共重合体Aを含む場合、成形材料は、共重合体Aとして、接着性官能基を有する共重合体Aのみを含んでもよく、共重合体Aとして、接着性官能基を有する共重合体Aと、接着性官能基を有しない共重合体Aとを含んでもよい。
【0020】
接着性官能基を有する共重合体Aは、含フッ素共重合体への取り込まれやすさ(共重合性)、ならびに他材料との接着特性の点から、接着性官能基として少なくともカルボニル基含有基を有することが好ましい。
カルボニル基含有基としては、例えば、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基が挙げられる。
【0021】
炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基における炭化水素基としては、例えば、炭素数2〜8のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、カルボニル基を構成する炭素原子を含まない炭素数である。アルキレン基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
ハロホルミル基は、−C(=O)−X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよく、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。
【0022】
接着性官能基を有する共重合体Aとしては、接着性官能基を有する単位及び接着性官能基を有する末端基のいずれか一方又は両方を有する共重合体Aが挙げられる。
接着性官能基を有する共重合体Aとしては、他材料との接着特性、耐熱性や熱安定性の点から、TFE単位と、PAVE単位と、酸無水物基を有する環状炭化水素単量体(以下、「酸無水物単量体」とも記す。)単位とを有する共重合体Aが好ましい。
【0023】
酸無水物単量体としては、例えば、無水イタコン酸(以下、「IAH」とも記す。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」とも記す。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)、無水マレイン酸が挙げられる。酸無水物単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸無水物単量体としては、IAH、CAH及びNAHが好ましい。IAH、CAH及びNAHのいずれかを用いると、無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法(特開平11−193312号公報参照)を用いることなく、酸無水物基を有する共重合体Aを容易に製造できる。
【0024】
接着性官能基を有する共重合体Aを構成する全単位のうち、酸無水物単量体単位の割合は、0.01〜3モル%が好ましく、0.03〜2モル%がより好ましく、0.05〜1モル%がさらに好ましい。酸無水物単量体単位の割合が前記範囲内であれば、接着性官能基を有する共重合体Aにおける酸無水物基の量が適切になり、接着強度、耐熱性に優れ、ならびに共重合体Aの高温引張特性を損なわない。
接着性官能基を有する共重合体Aには、酸無水物単量体単位における酸無水物基の一部が加水分解し、その結果、酸無水物単量体に対応するジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、マレイン酸等)単位が含まれる場合がある。ジカルボン酸単位が含まれる場合、ジカルボン酸単位の含有量は、酸無水物単量体単位の含有量に含まれるものとする。
【0025】
共重合体AのMFRは、8.5〜30g/10分であり、10〜27g/10分が好ましく、15〜27g/10分がより好ましい。
共重合体AのMFRが前記範囲の下限値以上であれば、成形材料の成形性に優れる。なお、特許文献1では、含フッ素重合体の成形性の点から、MFRは35g/10分以上とされているが、本発明においては、MFRが低めであってもPAVE単位の割合を上述した範囲の下限値以上としているため、成形性(成形時の流動性)を保ちつつ、成形体の繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性を向上することができる。
共重合体AのMFRが前記範囲の上限値以下であり、かつPAVE単位の割合が上述した範囲内であれば、成形体の高温引張特性に優れる。また、共重合体AのMFRが前記範囲の上限値以下であり、かつPAVE単位の割合が上述した範囲の下限値以上であれば、成形体が繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れる傾向にある。
【0026】
共重合体Aは、上述したMIT折り曲げ試験で求めた耐折回数が28,000回以上となるものであり、耐折回数が40,000回以上となるものが好ましく、耐折回数が70,000回以上となるものがより好ましい。耐折回数が前記範囲の下限値以上であれば、成形体の繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れる。耐折回数は多ければ多いほどよく、上限値は特に限定されない。
【0027】
共重合体Aが、MIT折り曲げ試験で求めた耐折回数が前記範囲の下限値以上を達成するためには、共重合体AのMFRを前記範囲の上限値以下とし、PAVE単位の割合を上述した範囲の下限値以上とするとともに、MFRとPAVE単位の割合とのバランスを調整すればよい。本発明者らは、耐折回数が共重合体の結晶性と分子量に大きく影響を受けると考えた。PAVE単位の割合を増加することで、共重合体の結晶性を低下させ柔軟性を付与し、かつMFRを低めに制御し分子量を高め、共重合体の耐久性を向上することで耐折回数の向上を目指した。鋭意検討した結果、耐折回数が同程度である共重合体AにおいてMFRとPAVE単位の割合とに相関関係があり、下式IIの関係を満足することを見出した。
MFR=12×MPAVE−b 式II
ただし、MFRは共重合体AのMFR(g/10分)であり、MPAVEは、共重合体AにおけるTFE単位とPAVE単位との合計のうちのPAVE単位の割合(モル%)であり、bは、耐折回数で決まる耐折回数に固有の定数である。bは、耐折回数とほぼ比例関係にあって、耐折回数が多くなるほど大きくなる。
【0028】
共重合体Aが、28,000回以上の耐折回数を達成するためには、下式II−1の関係を満足することが好ましい。
MFR<12×MPAVE−5 式II−1
共重合体Aが、40,000回以上の耐折回数を達成するためには、下式II−2の関係を満足することが好ましい。
MFR<12×MPAVE−8 式II−2
共重合体Aが、70,000回以上の耐折回数を達成するためには、下式II−3の関係を満足することが好ましい。
MFR<12×MPAVE−12 式II−3
【0029】
共重合体Aは、上述した引張特性試験で求めた200℃における引張降伏ひずみが9.5%以上となるものが好ましく、200℃における引張降伏ひずみが9.8%以上となるものがより好ましく、200℃における引張降伏ひずみが10.0%以上となるものがさらに好ましい。200℃における引張降伏ひずみが前記範囲の下限値以上であれば、成形体の高温引張特性がさらに優れる。200℃における引張降伏ひずみは大きければ大きいほどよく、上限値は特に限定されない。
共重合体Aが、引張特性試験で求めた200℃における引張降伏ひずみが前記範囲の下限値以上を達成するためには、PAVE単位の割合を上述した範囲の下限値以上とすればよい。
【0030】
共重合体Aは、上述した引張特性試験で求めた200℃における引張破壊応力が12MPa以上となるものが好ましく、200℃における引張破壊応力が13MPa以上となるものがより好ましく、200℃における引張破壊応力が13.5MPa以上となるものがさらに好ましい。200℃における引張破壊応力が前記範囲の下限値以上であれば、成形体の高温引張特性がさらに優れる。200℃における引張破壊応力は大きければ大きいほどよく、上限値は特に限定されない。
共重合体Aが、引張特性試験で求めた200℃における引張破壊応力が前記範囲の下限値以上を達成するためには、共重合体AのMFRを前記範囲の上限値以下とすればよい。
【0031】
共重合体Aは、上述した引張特性試験で求めた200℃における引張降伏応力が1.2MPa以上となるものが好ましく、200℃における引張降伏応力が2.0MPa以上となるものがより好ましく、200℃における引張降伏応力が2.5MPa以上となるものがさらに好ましい。200℃における引張降伏応力が前記範囲の下限値以上であれば、成形体の高温引張特性がさらに優れる。200℃における引張降伏応力は大きければ大きいほどよく、上限値は特に限定されない。
共重合体Aが、引張特性試験で求めた200℃における引張降伏応力が前記範囲の下限値以上を達成するためには、PAVE単位の割合を上述した範囲の上限値以下とすればよい。
【0032】
共重合体Aは、上述したカップ法で求めた燃料透過係数が1.0g・mm/(m・24hr)以下となるものが好ましく、燃料透過係数が0.7g・mm/(m・24hr)以下となるものがより好ましく、燃料透過係数が0.5g・mm/(m・24hr)以下となるものがさらに好ましい。燃料透過係数が前記範囲の上限値以下であれば、成形体の燃料遮蔽性がさらに優れる。燃料透過係数は小さければ小さいほどよく、下限値は0g・mm/(m・24hr)である。
共重合体Aが、カップ法で求めた燃料透過係数が前記範囲の上限値以下を達成するためには、PAVE単位の割合を上述した範囲の上限値以下とすればよい。
【0033】
共重合体Aの融点は、240℃以上が好ましく、260〜310℃がより好ましく、270〜300℃がさらに好ましい。融点が前記範囲の下限値以上であれば、成形体の高温引張特性がさらに優れる。融点が前記範囲の上限値以下であれば、成形時の温度を低くできる。
共重合体Aの融点は、PAVE単位の割合によって調整できる。例えば、PAVE単位の割合が多くなると、共重合体Aの融点が低下する傾向にある。
【0034】
共重合体Aは、常法により製造できる。単量体の重合によって共重合体Aを製造する場合、重合方法としては、ラジカル重合開始剤を用いる方法が好ましい。単量体の重合によって共重合体Aを製造する場合、連鎖移動剤を用いてもよい。
重合方法としては、塊状重合法、有機溶媒(フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等)を用いる溶液重合法、水性媒体と必要に応じて適当な有機溶媒とを用いる懸濁重合法、水性媒体と乳化剤とを用いる乳化重合法が挙げられる。接着性官能基を有しない共重合体Aを製造する場合は懸濁重合法が好ましく、接着性官能基を有する共重合体Aを製造する場合は溶液重合法が好ましい。懸濁重合法としては、例えば、特許文献1に記載の方法が挙げられる。溶液重合法としては、例えば、国際公開第2016/017801号に記載の方法が挙げられる。
【0035】
(他の重合体)
成形材料が含んでもよい他の重合体としては、例えば、共重合体A以外の溶融成形可能な含フッ素重合体、含フッ素重合体以外の熱可塑性樹脂が挙げられる。
溶融成形可能な含フッ素重合体としては、例えば、TFE−PAVE共重合体(ただし共重合体Aを除く。)、TFE−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−TFE共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、変性ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、芳香族ポリエステル、液晶ポリエステルが挙げられる。
【0036】
(添加剤)
成形材料が含んでもよい添加剤としては、例えば、熱安定剤、フィラー、顔料、紫外線吸収剤が挙げられる。成形材料は、成形体の熱安定性の点から、熱安定剤を含むことが好ましい。
【0037】
熱安定剤としては、酸化第一銅(酸化銅(I))、酸化第二銅(酸化銅(II))、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅が好ましい。熱安定剤としては、湿度の高い空気中でも安定性に優れる点から、酸化第二銅がより好ましい。
熱安定剤の含有量は、成形材料中、1〜10000質量ppmが好ましく、1〜1000質量ppmがより好ましく、5〜100質量ppmがさらに好ましい。熱安定剤の含有量が前記範囲内であれば、成形体の高温引張特性がさらに優れ、また、成形体の着色も抑えられる。
【0038】
フィラーとしては、例えば、導電性フィラー、補強用フィラー(ただし、導電性フィラーを除く。)が挙げられる。
導電性フィラーとしては、例えば、導電性を有するカーボンナノ繊維(気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等)が挙げられる。導電性フィラーとしては、成形体の耐屈曲性の向上の点から、カーボンナノチューブが好ましい。
【0039】
補強用フィラーとしては、例えば、繊維状フィラー(ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ステンレス鋼マイクロファイバー等)、粉末状フィラー(タルク、マイカ、グラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、炭酸カルシウム、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、二酸化チタン等)が挙げられる。
【0040】
顔料としては、有機顔料、無機顔料等の着色顔料が挙げられる。顔料としては、例えば、カーボンブラック(黒色顔料)、酸化鉄(赤色顔料)、アルミコバルト酸化物(青色顔料)、銅フタロシアニン(青色顔料、緑色顔料)、ペリレン(赤色顔料)、バナジン酸ビスマス(黄色顔料)が挙げられる。
【0041】
(成形体の製造方法)
本発明の成形体は、共重合体Aを含む成形材料を公知の成形法によって成形することによって製造できる。
成形法としては、例えば、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法が挙げられる。
本発明の成形体の形態としては、例えば、チューブ、ホース、タンク、シール、被覆材、フィルム、シート、ボトル、繊維が挙げられる。
【0042】
(作用機序)
以上説明した本発明の成形体にあっては、TFE単位とPAVE単位とを有する共重合体Aを含む成形材料からなる成形体であり、共重合体AにおけるTFE単位とPAVE単位との合計のうちPAVE単位の割合が2.1〜6.9モル%であり、共重合体AのMFRが30g/10分以下であるため、高温引張特性に優れる。
また、本発明の成形体にあっては、共重合体AにおけるTFE単位とPAVE単位との合計のうちPAVE単位の割合が6.9モル%以下であるため、燃料遮蔽性に優れる。
また、本発明の成形体にあっては、共重合体AにおけるTFE単位とPAVE単位との合計のうちPAVE単位の割合が2.1モル%以上であり、共重合体AのMFRが30g/10分以下であり、共重合体Aが、MIT折り曲げ試験で求めた耐折回数が28,000回以上となるものであるため、繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れる。
また、本発明の成形体にあっては、共重合体AにおけるTFE単位とPAVE単位との合計のうちPAVE単位の割合が2.1モル%以上であり、共重合体AのMFRが8.5g/10分以上であるため、共重合体Aの流動性に優れ、その結果、各種成形法によって製造しやすい。
【0043】
<複合体>
本発明の一態様である複合体は、本発明の成形体と、他の部材とを有する。
他の部材の形態としては、例えば、チューブ、ホース、タンク、シール、被覆材、フィルム(箔を含む。)、シート、ボトル、繊維、各種部品が挙げられる。
他の部材の材料としては、例えば、樹脂(ただし、共重合体Aを含むものを除く。)、金属、強化繊維が挙げられる。
複合体の形態としては、本発明の成形体と他の部材とを積層した積層体、本発明の成形体と他の部材とを接合した接合体、本発明の成形体と他の部材とを組み合わせた組立品、プリプレグ、プリント基板等が挙げられる。
【0044】
<成形体及び複合体の用途>
本発明の成形体及び複合体の用途としては、例えば、下記のものが挙げられる。
チューブ又はホース:薬液チューブ又はホース、農薬用チューブ又はホース、飲料用チューブ又はホース、油圧チューブ又はホース、自動車における各種ホース(燃料配管用チューブ又はホース、ラジエーターホース、ターボホース、ブレーキホース、EGRホース等)、エアコンホース、燃料電池用ホース、工業用ホース(電気部品用ホース、果汁、ペースト状食品等の輸送用ホース等)、ケミカルチューブ、空圧チューブ又はホース、燃料(ガソリン、軽油、アルコール等)輸送用ホース、給湯用ホース等。
タンク:自動車のラジエータータンク、薬液タンク、薬液バッグ、薬液保存容器向けの多層ボトル、燃料タンク、腐食性、侵食性の強い薬液(半導体用薬液等の酸・アルカリ等)の容器、研磨材のスラリー用の容器、ディーゼルエンジン排ガスに尿素水を噴霧してNOXを低減するシステムにおける尿素水用容器等。
シール:LIBアルミラミネート用シール層、各種自動車用シール(燃料ポンプのOリング等)、化学関係(化学薬品用ポンプ、流量計等)のシール、各種機械関係(油圧機器等)のシール等。
被覆材:各種ワイヤー又はケーブルの被覆材等。
ワイヤー又はケーブル:ラッピング電線、自動車用電線、航空機用電線、ロボット用電線、モーターコイルの電線、発泡電線等。
フィルム又はシート:電子基板用層間絶縁フィルム、鋼板(建材用鋼板、溶剤又は溶液保管用製罐に用いる鋼板等)のラミネート用フィルム、金属箔(アルミニウム箔等)と積層した軟質防湿包装材(リチウムイオン電池等の電池包装材)、フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等)と積層した軟質包装材(医療又は化学薬液用包装材)、輸液バック又は血液バック用積層フィルム、工業用フィルム、離型フィルム(キャストフィルム製造用の単層又は多層離型フィルム、配線基板又はICチップ製造用離型フィルム、ポリエチレンテレフタレート等との積層体からなる離型フィルム、発光ダイオード封止材料のモールド成形に用いられる離型フィルム等)、食品包装用フィルム、ラッピングフィルム、高度の耐薬品性が要求される摺動部材(ダイヤフラムポンプのダイヤフラム、各種パッキン等)、ベルトコンベア、電線の絶縁被覆用フィルム、ステンレス鋼シートとの積層体からなる飲料用缶材料、調理器具表面保護板、内外装用の化粧板保護フィルム、加湿器の蒸気出口部品被覆フィルム、ポリカーボネート等との積層板からなる外装材又は屋根材、ウレタン樹脂又はガラスクロスとの積層体からなるベルト、アラミド織布等との積層体からなる気球材料、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル樹脂、ゴム等との積層体からなる膜構造物用フィルム、アルミニウムシートとの積層体からなる太陽電池用表面材料、アルミニウム箔等との積層体からなるヒートシール包装材料、ホワイトボード用多層フィルム、高速道路防音壁用保護フィルム、シャワー遮蔽カーテン用積層フィルム、壁紙用積層フィルム、耐熱パウチ用フィルム、合わせガラス中間膜、農業ハウス用フィルム、接着用フィルム、ゴム栓用耐薬品性被覆フィルム、太陽電池用保護フィルム、モーター絶縁用フィルム、含フッ素重合体フィルムを積層してなるオフィスオートメーション(OA)用ロール又はOA用ベルト、工業分野(高周波特性が必要なレーダー、ネットワークのルーター、バックプレーン、無線インフラ等)で用いられるプリント配線板(共重合体Aとポリイミドとの積層体に金属箔(銅箔等)を積層した積層体を用いたプリント配線板、共重合体Aと繊維基材との繊維強化樹脂に金属箔を積層した積層体を用いたプリント配線板等)等。
【0045】
本発明の成形体及び複合体の用途としては、本発明の成形体及び複合体が高温引張特性、燃料遮蔽性及び繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れる点から、耐熱ホース、ターボホース又はEGRホースが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例1〜11は実施例であり、例12〜19は比較例である。
【0047】
(PAVE単位の割合)
共重合体から厚さ約30μmのフィルムを作製し、フィルムについて赤外吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトルにおける(985cm−1における吸収量の値)/(2370cm−1における吸収量)×0.95の値(質量比)を、PPVE単位/TFE単位のモル比に換算して、PAVE単位の割合(モル%)を求めた。
【0048】
(NAH単位の割合)
赤外吸収スペクトルにおける(1778cm−1における吸収量の値)/(2370cm−1における吸収量)×0.15の値を、NAH単位の割合(モル%)とした。
【0049】
(MFR)
ASTM D3307に準拠し、メルトインデクサー(テクノセブン社製)を用いて372℃、荷重49Nの条件下、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に流出する共重合体の質量(g)を測定し、MFRとした。
【0050】
(融点)
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、DSC−7020)を用い、空気雰囲気下にて、共重合体の5mgを300℃まで10℃/分で加熱して5分間保持した後、150℃まで10℃/分で冷却して5分間保持し、再び300℃まで10℃/分で加熱したときの融解ピークを記録し、最大値に対応する温度(℃)を融点とした。
【0051】
(MIT折り曲げ試験)
共重合体をプレス成形して厚さ0.23mmのフィルムを作製し、フィルムから幅:12.5mm、長さ:130mm、厚さ:0.23mmの試験片を切り出した。JIS P 8115:2001(対応国際規格ISO 5626:1993)に準拠したMIT試験機(東洋精機製作所社製、MIT耐折疲労試験機)に試験片を装着し、温度:25℃、荷重:12.25N、折り曲げ角度:左右それぞれ135度、折り曲げ速度:175回/分の条件で試験片を折り曲げ、試験片が破断するまでの往復折曲げ回数を記録し、これを耐折回数とした。
【0052】
(引張特性試験)
共重合体をプレス成形して厚さ1mmのフィルムを作製し、フィルムをASTM D638 Type Vに定める形状(ダンベル片)に打ち抜いて試験片を作製した。試験片についてJIS K 7161−1994(対応国際規格ISO 527−1:1993)に準拠して温度:200℃、試験速度:50mm/分で引張試験を行い、得られた応力−ひずみ曲線から、引張降伏ひずみ、引張破壊応力及び引張降伏応力を求めた。
【0053】
(カップ法)
共重合体をプレス成形して厚さ100μmのフィルムを作製した。JIS Z 0208−1976に規定されているカップ法に準拠し、燃料CE10(イソオクタン:トルエン:エタノール=50:50:10体積比)の4.6gを、透過面積:11.33cmのカップに入れ、フィルムでカップの上部を覆い、60℃で10日間保持した後の質量減少量を記録し、下式から燃料透過係数を求めた。
燃料透過係数=質量減少量(g)・フィルムの厚さ(mm)/(透過面積(m)・透過日数)
【0054】
(例1)
内容積1.2Lのジャケット付きの重合槽(ステンレス鋼製)を脱気し、重合槽内に、水の277g、AE−3000(旭硝子社製)の765g、PHVEの269g、TFEの203g、メタノールの11.5gを仕込んだ。温度を50℃に保持して、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.12質量%溶液(溶媒:HFE−347pc−f)の3.8mLを仕込み、重合を開始させた。重合中、重合槽内にTFEを導入し、重合圧力を1.284MPa[gauge]に保持した。重合の進行に伴い重合速度が低下するため、重合速度がほぼ一定になるように重合開始剤溶液を断続的に仕込んだ。TFEの導入量が159gになった時点で重合を終了させ、共重合体A−1を得た。結果を表1に示す。
【0055】
(例2)
AE−3000を762g、PHVEの代わりにPPVEを254g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.16質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A−2を得た。結果を表1に示す。
【0056】
(例3)
水を268g、AE−3000を839g、PHVEの代わりにPPVEを172g、メタノールを18.6g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.075質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A−3を得た。結果を表1に示す。
【0057】
(例4)
水を270g、AE−3000を810g、PHVEの代わりにPPVEを203g、メタノールを17.2g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.10質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A−4を得た。結果を表1に示す。
【0058】
(例5)
水を279g、AE−3000を615g、PHVEの代わりにPPVEを410g、メタノールを10.1g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.34質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A−5を得た。結果を表1に示す。
【0059】
(例6)
水を280g、AE−3000を615g、PHVEの代わりにPPVEを410g、メタノールを8.7g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.34質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A−6を得た。結果を表1に示す。
【0060】
(例7)
あらかじめ脱気された内容積1.2Lの撹拌機付き重合槽に、AK−225(旭硝子社製)の732g、PPVEの67.9gを仕込んだ。重合槽内を加熱して50℃に昇温し、TFEの122gを仕込んだ後、重合槽内の圧力を0.90MPa[gauge]まで昇圧した。重合槽中に、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%及びPPVEの2質量%溶液(溶媒:HCFC225cb)の31mLを、10分間に1.7mLの速度にて連続的に添加しながら重合を行った。重合中の重合槽内の圧力が0.90MPa[gauge]を保持するように、TFEを連続的に仕込んだ。また、NAH(日立化成社製、無水ハイミックス酸)の1.1質量%溶液(溶媒:HCFC225cb)を、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.1モル%に相当する量ずつ連続的に仕込んだ。重合開始から3時間後、TFEの112gを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を25℃まで降温するとともに、圧力を常圧までパージした。得られたスラリーを、HCFC225cbと固液分離した後、150℃で15時間乾燥することによって、共重合体A−7を得た。結果を表1に示す。
【0061】
(例8)
共重合体A−1の20gと共重合体A−7の20gとをドライブレンドし、ラボプラストミル混錬機(東洋精機社製)に投入し、スクリュー回転数:150rpm、設定樹脂温度:340℃の条件にて溶融混練し、共重合体A−1と共重合体A−7からなる樹脂組成物を得た。結果を表1に示す。
【0062】
(例9)
AE−3000を810g、PHVEの代わりにPPVEを203g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.10質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A−8を得た。
共重合体A−8の40gと酸化第二銅の0.26mgとをドライブレンドし、ラボプラストミル混錬機(東洋精機社製)に投入し、スクリュー回転数:150rpm、設定樹脂温度:340℃の条件にて溶融混練し、共重合体A−8と酸化第二銅からなる樹脂組成物を得た。結果を表1に示す。
【0063】
(例10)
水を269.6g、AE−3000を838.6g、PHVEの代わりにPPVEを171.8g、メタノールを17.20g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.075質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A−9を得た。結果を表1に示す。
【0064】
(例11)
水を272.1g、AE−3000を872g、PHVEの代わりにPPVEを136.1g、メタノールを15.24g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.05質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A−10を得た。結果を表1に示す。
【0065】
(例12)
水を270g、AE−3000を810g、PHVEを174g、メタノールを17.2g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.05質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A’−1を得た。結果を表1に示す。
【0066】
(例13)
AE−3000を807g、PHVEを221g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.11質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A’−2を得た。結果を表1に示す。
【0067】
(例14)
水を596g、AE−3000を343g、PHVEの代わりにPPVEを45g、メタノールを45g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.09質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A’−3を得た。結果を表1に示す。
【0068】
(例15)
AE−3000を839g、PHVEの代わりにPPVEを172g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.075質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A’−4を得た。結果を表1に示す。
【0069】
(例16)
水を263g、AE−3000を872g、PHVEの代わりにPPVEを136g、メタノールを22.9g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.05質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A’−5を得た。結果を表1に示す。
【0070】
(例17)
AE−3000を615g、PHVEの代わりにPPVEを410g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.34質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A’−6を得た。結果を表1に示す。
【0071】
(例18)
水を280g、AE−3000を564g、PHVEの代わりにPPVEを461g、メタノールを8.7g、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.34質量%溶液に変更した以外は、例1と同様にして共重合体A’−7を得た。結果を表1に示す。
【0072】
(例19)
あらかじめ脱気された内容積1.2Lの撹拌機付き重合槽に、AE−3000の692g、PPVEの70g、メタノールの1.3gを仕込んだ。重合槽内を加熱して50℃に昇温し、TFEの122gを仕込んだ後、重合槽内の圧力を0.90MPa[gauge]まで昇圧した。重合槽中に、ビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%及びPPVEの2質量%溶液(溶媒:AE−3000)の31mLを、10分間に1.7mLの速度にて連続的に添加しながら重合を行った。重合中の重合槽内の圧力が0.90MPa[gauge]を保持するように、TFEを連続的に仕込んだ。また、NAHの1.1質量%溶液(溶媒:AE−3000)を、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.1モル%に相当する量ずつ連続的に仕込んだ。重合開始から3時間後、TFEの112gを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を25℃まで降温するとともに、圧力を常圧までパージした。得られたスラリーを、AE−3000と固液分離した後、150℃で15時間乾燥することによって、共重合体A’−8を得た。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
例1〜11の共重合体Aからなる成形体は、共重合体AにおけるTFE単位とPAVE単位との合計のうちPAVE単位の割合が2.1〜6.9モル%であり、共重合体AのMFRが8.5〜30g/10分であり、共重合体Aが、MIT折り曲げ試験で求めた耐折回数が28,000回以上となるものであるため、高温引張特性及び燃料遮蔽性に優れ、繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に優れると予想され、各種成形法によって製造しやすいと予想される。
【0075】
例12の共重合体からなる成形体は、共重合体におけるPAVE単位の割合が2.1モル%未満であるため、200℃における引張降伏ひずみに劣る。
例13、例15の共重合体からなる成形体は、共重合体のMFRが8.5g/10分未満であることから、試験片の作製時に成形温度の高温化、保持時間の延長等の条件設定が必要であったため、各種成形法によって製造しにくいと予想される。
例14、例16の共重合体からなる成形体は、共重合体が、MIT折り曲げ試験で求めた耐折回数が28,000回未満となるものであるため、繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に劣ると予想される。
例17の共重合体からなる成形体は、共重合体のMFRが30g/10分超であるため、200℃における引張破壊応力に劣る。
例18の共重合体からなる成形体は、共重合体におけるPAVE単位の割合が6.9モル%超であるため、200℃における引張降伏応力に劣る。
例19の共重合体からなる成形体は、共重合体が、MIT折り曲げ試験で求めた耐折回数が28,000回未満となるものであるため、繰り返しの振動及び衝撃に対する耐性に劣ると予想される。また、共重合体のMFRが30g/10分超であるため、200℃における引張破壊応力に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の成形体及び複合体は、自動車における各種ホース(燃料配管用ホース、ターボホース、EGRホース等)として特に有用である。