【解決手段】回転軸と、前記回転軸を経由する第1の磁気回路を形成することで前記回転軸にラジアル方向の支持力を磁気的に作用させるラジアルステータと、前記回転軸を経由する第2の磁気回路を形成することで前記回転軸にスラスト方向の支持力を磁気的に作用させる一対のスラストステータと、を備える磁気軸受であって、前記第1の磁気回路と前記第2の磁気回路とは、前記ラジアルステータのラジアルステータコアで一部が共用され、前記回転軸において、前記ラジアルステータコアに対向する第1の部位が積層鋼板で形成されている。
回転軸と、前記回転軸を経由する第1の磁気回路を形成することで前記回転軸にラジアル方向の支持力を磁気的に作用させるラジアルステータと、前記回転軸を経由する第2の磁気回路を形成することで前記回転軸にスラスト方向の支持力を磁気的に作用させる一対のスラストステータと、を備える磁気軸受であって、
前記第1の磁気回路と前記第2の磁気回路とは、前記ラジアルステータのラジアルステータコアで一部が共用され、
前記回転軸において、前記ラジアルステータコアに対向する第1の部位が積層鋼板で形成されていることを特徴とする磁気軸受。
前記第1の部位に形成された積層鋼板の両端面は、前記ラジアルステータコアの両端面と、面一になるように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の磁気軸受。
前記回転軸において、前記ラジアルステータコアと前記回転軸との間のギャップにより前記第1の磁気回路から漏れた磁束が集中する第2の部位が積層鋼板で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気軸受。
前記第2の部位は、前記第1の部位に対して前記スラスト方向に隣接しており、前記回転軸の径方向において、前記回転軸の外周面を含む一部の部位のみであることを特徴とする、請求項3に記載の磁気軸受。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る磁気軸受を、図面を用いて説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気軸受1の縦断面構造を示す斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係る磁気軸受1の構成を示す分解斜視図である。なお、視認性向上のため、
図1では、
図2に示す回転軸10を図示していない。また、
図2では、
図1に示すハウジング2を図示していない。
【0016】
磁気軸受1は、回転軸10にラジアル方向及びスラスト方向の支持力を磁気的に作用させることにより、回転軸10を回転自在に支持するものである。ここで、スラスト方向とは、回転軸10の軸方向である。ラジアル方向とは、スラスト方向に対して垂直な方向である。
【0017】
磁気軸受1は、回転軸10、ラジアルステータ20、及びスラストステータ30を備える。
【0018】
回転軸10は、
図2に示すように、所定の磁性材料からなる円筒状部材10aが円柱部材10bに嵌合してなる。そして、本実施形態では、円筒状部材10aの一部が積層鋼板で形成されている。なお、回転軸10は、
図3に示すように、所定の磁性材料からなる円筒状の部材であってもよい。
【0019】
ラジアルステータ20は、回転軸10の外周面に対向して配置されている。ラジアルステータ20は、回転軸10に対して、ラジアル方向における支持力を磁気的に作用させる。
【0020】
スラストステータ30は、スラスト方向においてラジアルステータ20を挟んで一対が一体に設けられている。スラストステータ30は、回転軸10に対して、スラスト方向に支持力を磁気的に作用させる。なお、以下の説明では、一対で設けられたスラストステータ30のうち、一方をスラストステータ30z1と称し、他方をスラストステータ30z2と称す。したがって、本実施形態に係る磁気軸受1は、一対のスラストステータ30z1,30z2がラジアルステータ20を挟んで一体に設けられている。
【0021】
ラジアルステータ20及び一対のスラストステータ30は、ハウジング2の内側に一体となって収容されている。ハウジング2の中央には、回転軸10が配置される孔部3が形成されている。ハウジング2は、筒部2aと、一対の蓋部2bと、を有する。筒部2aは、円筒状に形成され、ラジアルステータ20及び一対のスラストステータ30の外周面に嵌合している。一対の蓋部2bは、筒部2aの両端部に接続され、一対のスラストステータ30の端面を覆っている。このハウジング2は、非磁性材料であるステンレス鋼等から形成されている。
【0022】
以下に、ラジアルステータ20の構成について、
図4も参照して具体的に説明する。
図4は、第1の実施形態に係るラジアルステータ20の構成を示す磁気軸受の横断面図である。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。ラジアル方向において互いに直交する2軸をそれぞれX軸方向、Y軸方向とし、スラスト方向の1軸をZ軸方向とする。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交する。
【0023】
ラジアルステータ20は、ラジアルステータコア21及びラジアル巻線22を備える。例えば、ラジアルステータ20は、電磁石型ヘテロポーララジアル磁気軸受を形成している。
【0024】
ラジアルステータコア21は、所定の磁性材料から形成され、ラジアル巻線22が巻回された複数のラジアルステータ磁極23と、複数のラジアルステータ磁極23の間を接続するラジアルステータバックヨーク24と、を備える。
【0025】
ラジアルステータ磁極23は、ラジアルステータバックヨーク24の内周面から、回転軸10の外周面に向かって突設されている。ラジアルステータバックヨーク24は、円環状に形成され、回転軸10の外側に配置されている。
【0026】
ラジアルステータ磁極23は、回転軸10の外周面にギャップをあけて対向している。本実施形態のラジアルステータ磁極23は、回転軸10の周方向に45°間隔で8個設けられている。ラジアル巻線22は、周方向で隣り合うラジアルステータ磁極23間に形成されるスロット開口部を利用してラジアルステータ磁極23に巻回されている。ラジアル巻線22は、周方向で隣り合うラジアルステータ磁極23を二つ一組として巻回されている。
【0027】
具体的に、周方向で隣り合う二つ一組のラジアルステータ磁極23x1には、ラジアル巻線22x1が巻回されている。また、周方向で隣り合う二つ一組のラジアルステータ磁極23x2には、ラジアル巻線22x2が巻回されている。また、周方向で隣り合う二つ一組のラジアルステータ磁極23y1には、ラジアル巻線22y1が巻回されている。また、周方向で隣り合う二つ一組のラジアルステータ磁極23y2には、ラジアル巻線22y2が巻回されている。
【0028】
ラジアル巻線22x1,22x2,22y1,22y2は、外部に設けられた制御装置(不図示)により通電されることで、ラジアルステータコア21、回転軸10を経由する第1の磁気回路101をそれぞれ形成する。そして、この第1の磁気回路101が形成されることにより、ラジアルステータ20は、回転軸10にラジアル方向の支持力を磁気的に作用させることができる。
【0029】
第1の磁気回路101を形成する磁束(鎖交磁束)は、ラジアル巻線22が巻回された二つ一組のラジアルステータ磁極23、当該二つ一組のラジアルステータ磁極23を接続するラジアルステータバックヨーク24、及び回転軸10を経由する。
【0030】
ラジアル巻線22x1,22x2は、回転軸10の中心を通るX軸方向において対となって配置されている。これらラジアル巻線22x1,22x2に駆動電流が印加されると、その駆動電流に伴う磁束に由来する磁気吸引力が発生し、ラジアル方向に支持力を作用させる。
【0031】
また、ラジアル巻線22y1,22y2は、回転軸10の中心を通るY軸方向において対となって配置されている。これらラジアル巻線22y1,22y2に駆動電流がそれぞれ印加されると、その駆動電流に伴う磁束に由来する磁気吸引力が発生し、ラジアル方向の支持力に作用させる。
【0032】
ラジアル巻線22x1,22x2,22y1,22y2は、それぞれが形成する磁気回路の主磁束が他のラジアル巻線に干渉(磁束漏れ)をしないようにするため、隣り合う磁束は互いに逆方向となるようラジアル巻線22に通電し、ラジアルステータ磁極23で生じる極性を選択している。例えば、ラジアル巻線22x1,22x2が形成する第1の磁気回路101は反時計回りであり、ラジアル巻線22y1,22y2が形成する第1の磁気回路101は時計回りである。これらラジアルステータ磁極23の極性は、周方向においてN極→N極→S極→S極→N極→N極→S極…の順に交互に配置される。
【0033】
以下に、スラストステータ30及び回転軸10の構成について、
図5をも参照して具体に説明する。
図5は、第1の実施形態に係る磁気軸受1の縦断面図である。
【0034】
図5に示すように、スラストステータ30は、スラストステータコア31及びスラスト巻線32を備える。例えば、スラストステータ30は、電磁石型ホモポーラスラスト磁気軸受を形成している。
スラストステータコア31は、所定の磁性材料から形成され、ラジアルステータコア21と一体に設けられている。
【0035】
スラストステータコア31は、略有底円筒状に形成され、その内側にスラスト巻線32を収容している。スラストステータコア31は、回転軸10を配置する孔部3が中央に形成された円板状のスラストステータ磁極33と、スラストステータ磁極33の周縁部からラジアルステータコア21に向かって突出する円筒状のスラストステータバックヨーク34と、を備える。
【0036】
スラストステータバックヨーク34は、スラストステータ磁極33とラジアルステータコア21との間に設けられるのであり、その先端はラジアルステータバックヨーク24と一体に設けられている。
【0037】
スラストステータ磁極33は、ラジアル巻線22に対しスラスト方向において第1の空間201をあけて配置されている。
スラストステータバックヨーク34は、ラジアル巻線22に対しラジアル方向に第2の空間202をあけて配置されている。これら第1の空間201及び第2の空間202には、スラスト巻線32が配置されている。
このスラストステータ30z1のスラスト巻線32(スラスト巻線32z1)とスラストステータ30z2のスラスト巻線32(スラスト巻線32z2)とは、回転軸10が延びるZ軸方向において対となって配置されている。
【0038】
スラスト巻線32は、外部に設けられた制御装置(不図示)により通電されることで、磁束(鎖交磁束)が通る、スラストステータコア31、回転軸10及びラジアルステータコア21を経由する第2の磁気回路102を形成する。例えば、一対のスラストステータ30z1,30z2のそれぞれは、回転軸10及びラジアルステータ磁極23を経由する各第2の磁気回路102z1,102z2を形成する。したがって、一対のスラストステータ30z1,30z2は、第2の磁気回路102z1,102z2を形成することにより、回転軸10にスラスト方向の支持力を磁気的に作用させることができる。
【0039】
このように、一対のスラストステータ30z1,30z2のそれぞれは、ラジアルステータ磁極23を経由する第2の磁気回路102z1,102z2を形成する。ここで、ラジアルステータ磁極23は、ラジアルステータ20の磁路であると共に、一対のスラストステータ30z1,30z2の共有の磁路となっている。すなわち、第1の磁気回路101と第2の磁気回路102(102z1,102z2)とは、ラジアルステータコア21で一部が共用されている。
【0040】
また、一対のスラストステータ30z1,30z2は、
図5に示すように、ラジアルステータ磁極23において磁束の向きが互いに逆方向となるように第2の磁気回路102z1,102z2を形成している。すなわち、スラスト巻線32z1,32z2は、ラジアルステータ磁極23における磁気飽和を抑制するため、ラジアルステータ磁極23において互いに逆方向になるように極性を選択している。
【0041】
例えば、スラスト巻線32z1が形成する第2の磁気回路102z1は時計回りであり、スラスト巻線32z2が形成する第2の磁気回路102z2も時計回りである。回転軸10においては、スラスト巻線32z1による磁束の向きと、スラスト巻線32z2による磁束の向きが、共にZ軸方向の+側を向いている。
【0042】
すなわち、一体のスラスト巻線32(スラスト巻線32z1とスラスト巻線32z2)に通電される駆動電流の向きは、回転軸10に対するスラスト方向の支持力がスラスト方向において同一方向に作用するように設定される。これにより、回転軸10は、スラストステータ30z1,30z2からスラスト方向における同一方向の支持力を得ることができるため、より大きな磁気吸引力で回転自在に支持される。
【0043】
なお、スラスト方向の支持力、すなわち磁気吸引力の大きさは、スラスト巻線32に通電する駆動電流の大きさに起因する。すなわち、スラスト巻線32に通電する駆動電流の電流値が大きいほど、より大きなスラスト方向の支持力を発生させることが可能となる。また、スラスト方向に発生させる支持力の向き(±Z方向)は、スラスト巻線32に通電する駆動電流の向きにより変更可能である。
【0044】
回転軸10は、ラジアルステータコア21に対向する第1の部位11が積層鋼板で形成されている。例えば、第1の部位11は、回転軸10の円筒状部材10aにおいて、ラジアルステータコア21のラジアルステータ磁極23に対向する部位である。この第1の部位11は、第1の磁気回路101の一部と第2の磁気回路102の一部とがラジアルステータ磁極23で共用されている磁気軸受において、渦電流が発生しやすい箇所である。すなわち、ラジアルステータ磁極23と回転軸10(円筒状部材10a)の外周面との間にギャップが形成されているため、漏れ磁束が発生する。そして、この漏れ磁束の影響により、回転軸10の第1の部位11において渦電流が発生する。そのため、この第1の部位11を積層鋼板で形成することで、渦電流の発生を抑制し、回転軸10における渦電流損失を低減させることができる。
【0045】
なお、スラスト方向において、第1の部位11に形成された積層鋼板の両端面は、ラジアルステータコア21(ラジアルステータ磁極23)の両端面と、面一になるように形成されている。なお、面一とは、完全に面一でなくても、面一と同視し得る範囲であればよい。
【0046】
回転軸10の第1の部位11に形成されている積層鋼板は、絶縁被膜付き鋼板をスラスト方向に積層したものである。そして、回転軸10において、第1の部位11以外の部位は、積層鋼板よりも磁気抵抗が低い、例えばバルク材により形成される。
【0047】
上述したように、第1の実施形態に係る磁気軸受1は、ラジアルステータ20の第1の磁気回路101の一部とスラストステータ30の第2の磁気回路102の一部とがラジアルステータコア21で共用するように構成されている。そして、回転軸10において、ラジアルステータコア21に対向する第1の部位11が積層鋼板で形成されている。
【0048】
このような構成によれば、第1の磁気回路や第2の磁気回路からの漏れ磁束の影響により回転軸10に生じる渦電流を抑制することができる。したがって、磁気軸受1は、回転軸10の渦電流損失を低減することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係る磁気軸受1Aについて、説明する。第2の実施形態に係る磁気軸受1Aは、第1の実施形態に係る磁気軸受1と比較して、回転軸10において積層鋼板で形成される部位が異なる点で相違し、その他の構成(ラジアルステータ20及びスラストステータ30)については第1の実施形態と同様である。
【0050】
以下、第2の実施形態に係る磁気軸受1Aの回転軸10を、「回転軸10A」と表記して、第1の実施形態に係る磁気軸受1の回転軸10と区別する。
【0051】
磁気軸受1Aは、回転軸10A、ラジアルステータ20、及びスラストステータ30を備える。
【0052】
回転軸10Aは、
図2と同様に、所定の磁性材料からなる円筒状部材10aが円柱部材10bに嵌合してなる。そして、本実施形態では、円筒状部材10aの一部が積層鋼板で形成されている。なお、回転軸10Aは、
図3と同様に、所定の磁性材料からなる円筒状の部材であってもよい。
【0053】
以下、第2の実施形態に係る回転軸10Aの構成について、
図6を用いて説明する。
図6は、第2の実施形態に係る磁気軸受1Aの縦断面図である。
【0054】
回転軸10Aは、回転軸10と同様に、ラジアルステータコア21に対向する第1の部位11が積層鋼板で形成されている。
さらに、回転軸10Aの円筒状部材10aにおいて、ラジアルステータコア21と回転軸10Aとの間のギャップにより第1の磁気回路101からの漏れ磁束が集中する第2の部位12が積層鋼板で形成されている。この第1の磁気回路101からの漏れ磁束が集中する第2の部位12とは、回転軸10Aにおいて、第1の磁気回路101からの漏れ磁束の変化が大きい領域である。例えば、第1の磁気回路101からの漏れ磁束の変化が大きい領域とは、当該漏れ磁束の変化が所定値以上の領域であって、例えば、ラジアル巻線に流れる駆動電流に応じて変化する。例えば、第2の部位12は、ラジアル巻線に流れる駆動電流の最大値と最小値とから特定される部位であってもよい。
【0055】
なお、回転軸10Aにおいて、第1の部位11及び第2の部位12以外の部位は、積層鋼板よりも磁気抵抗が低い、例えばバルク材により形成される。
【0056】
例えば、第2の部位12は、第1の部位11に対してスラスト方向の両端面に隣接している部位であって、ラジアル巻線22の少なくとも一部と対向する部位である。
そして、第2の部位12は、回転軸10Aにおいて、径方向のすべての部位ではなく、径方向における外周面側の一部の部位のみに限定する。外周面側の一部の部位とは、回転軸10Aの外周面を含む一部の部位であって、例えば、回転軸10Aの外周面のみとしてもよい。
【0057】
例えば、
図6に示すように、第2の部位12は、回転軸10Aの径方向において、回転軸10Aの外周面から内向きに所定の長さt1までの一部のみの部位である。すなわち、円筒状部材10aの径方向の全てではなく、径方向において表面からの一部の部位のみを積層鋼板で形成する。なお、内向きとは、回転軸10Aの回転中心に向かう方向である。
【0058】
例えば、円筒状部材10aの内径がr1
、外径がr2、厚さがt1よりも長いt2(=r2−r1)とすると、第2の部位12には、内径が(r2−t1)、外径がr2である複数の鋼板がスラスト方向に積層されることになる。
一方、円筒状部材10aにおいて、ラジアルステータ磁極23に対向する第1の部位11には、内径がr1、外径がr2である複数の鋼板がスラスト方向に積層されることになる。すなわち、ラジアルステータ磁極23に対向する円筒状部材10aの部位においては、径方向の全てが積層鋼板で形成される。
【0059】
以下、第2の実施形態に係る磁気軸受1Aの作用効果について説明する。
第1の実施形態に係る磁気軸受1では、回転軸10のラジアルステータコア21に対向する第1の部位11が積層鋼板で形成されている。これにより、漏れ磁束の影響により回転軸10に生じる渦電流を低減することができる。
【0060】
ただし、第1の部位11に形成された積層鋼板は、主に第2の磁気回路102からの漏れ磁束による渦電流を低減させるものであって、第1の磁気回路101からの漏れ磁束による渦電流を効果的に低減することができない。
【0061】
そこで、第1の磁気回路101からの漏れ磁束により回転軸10に生じる渦電流を低減するために、第1の部位11に形成された積層鋼板の積厚をスラスト方向に増加させる方法が考えられる。しかしながら、この方法では、回転軸10のスラスト方向における透磁率が低下して、スラスト方向の支持力が低下してしまう。すなわち、第2の磁気回路102の磁気抵抗が増加してしまい、スラスト方向の支持力が低下してしまう。
【0062】
これに対して、第2の実施形態に係る磁気軸受1Aは、回転軸10Aにおいて、ラジアルステータコア21と回転軸10Aとの間のギャップにより第1の磁気回路101から漏れた磁束が集中する第2の部位12のみが積層鋼板で形成されている構成を有する。そして、この第2の部位12は、回転軸10Aにおいて、径方向のすべての部位ではなく、径方向における外周面側の一部の部位のみに限定する。
【0063】
このような構成によれば、第2の磁気回路102における磁気抵抗の増加を抑制(回転軸10Aのスラスト方向における透磁率の低下を抑制)することができ、スラスト方向の磁束量の低下を抑制することができる。その結果、回転軸10Aにおいて、渦電流損失の低減を図ると共に、スラスト方向における支持力の低下を抑制することができる。したがって、磁気軸受1Aの装置サイズを大型化させることなく、磁気軸受としての性能を発揮することができる。
【0064】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0065】
(変形例1)第2の実施形態では、第2の部位12において、内径が同じ複数の鋼板をスラスト方向に積層した積層鋼板で形成される場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第2の部位12に形成される積層鋼板は、回転軸10Aにおいて、径方向における外周面側の一部の部位のみに形成されていればよく、その形状には特に限定されない。
【0066】
例えば、回転軸10Aにおける第2の部位12において、内径の異なる複数の鋼板をスラスト方向に積層した積層鋼板で形成されていてもよい。そして、その複数の積層鋼板の各内径は、スラスト方向における回転軸10Aの端面側に向かう程大きくなるように構成されてもよい。例えば、
図7に示すように、第2の部位12における積層鋼板を構成する複数の鋼板の各内径が回転軸10Aの端面側に向かう程大きくなるように構成されていてもよい。すなわち、磁気軸受1Aの縦断面図において、Y軸方向から見て第2の部位12における積層鋼板の形状が三角形状になるように構成されていてもよい。
また、
図8に示すように、磁気軸受1Aの縦断面図において、Y軸方向から見て第2の部位12における積層鋼板の形状が階段状になるように構成されていてもよい。
【0067】
(変形例2)上記実施形態では、第1の部位11や第2の部位12において、スラスト方向に沿って鋼板を積層した積層鋼板によって形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、例えば樹脂を含んで形成される圧粉磁心で形成されてもよい。
【0068】
(変形例3)上記実施形態では、円筒状部材10aにおいて、第1の部位11や第2の部位12が積層鋼板で形成される場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、回転軸が所定の磁性材料からなる円筒状の部材(
図3)である場合においては、この円筒状の部材において、第1の部位11や第2の部位12が積層鋼板で形成されてもよい。