特開2019-215458(P2019-215458A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ AGC株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2019215458-光学積層体 図000007
  • 特開2019215458-光学積層体 図000008
  • 特開2019215458-光学積層体 図000009
  • 特開2019215458-光学積層体 図000010
  • 特開2019215458-光学積層体 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-215458(P2019-215458A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20191122BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20191122BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20191122BHJP
   B32B 1/00 20060101ALI20191122BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   G02B1/115
   B32B7/02 103
   B32B9/00 A
   B32B1/00 Z
   G02B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-113157(P2018-113157)
(22)【出願日】2018年6月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴章
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊成
(72)【発明者】
【氏名】小林 友幸
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA09
2H042AA15
2H042AA26
2K009AA02
2K009BB02
2K009CC02
2K009CC03
2K009CC06
4F100AA05B
4F100AA06B
4F100AA12B
4F100AA12D
4F100AA19D
4F100AA20B
4F100AA21D
4F100AA25D
4F100AA28D
4F100AG00A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA13C
4F100DA20
4F100EH46C
4F100EH66B
4F100EH66D
4F100GB41
4F100HB31C
4F100JB13C
4F100JB14C
4F100JN02C
4F100JN06B
4F100JN18B
4F100JN18D
(57)【要約】      (修正有)
【課題】垂直方向だけでなく、斜めから入射した光に対する反射率も抑制し、さらに、斜めから入射した場合でもニュートラルな反射色調が得られる光学積層体を提供すること。
【解決手段】基材2と、基材の一方の面に設けられた反射防止膜3と、基材の他方の面に設けられた遮光膜4とを備える光学積層体1であって、前記光学積層体が下記(i)〜(iii)の特性を全て満たすことを特徴とする光学積層体。(i)0.5<R(λ1a,θ1a)/R(λ1b,θ1b)<1.5、(ii)Y(θ)≦3%、(iii)Y(θ)≦10%。ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、λ1a=380nm、θ1a=60°、λ1b=650nm、θ1b=60°である。Y(θ)は、入射角度θの視感反射率であり、θ=5°、θ=60°である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材の一方の面に設けられた反射防止膜と、基材の他方の面に設けられた遮光膜とを備える光学積層体であって、前記光学積層体が下記(i)〜(iii)の特性を全て満たすことを特徴とする光学積層体。
(i)0.5<R(λ1a,θ1a)/R(λ1b,θ1b)<1.5
(ii)Y(θ)≦3%
(iii)Y(θ)≦10%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、
λ1a=380nm、θ1a=60°、
λ1b=650nm、θ1b=60°である。
Y(θ)は、入射角度θの視感反射率であり、
θ=5°、
θ=60°である。
【請求項2】
前記光学積層体が下記(iv)の特性をさらに満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学積層体。
(iv)0.3<R(λ2a,θ2a)/R(λ2b,θ2b)<1.3(θ2a=θ2b=5°)
ここで、λ2aは、400〜450nmの波長範囲に存在し、λ2bは700〜790nmの波長範囲に存在する。
【請求項3】
前記光学積層体が下記(v)の特性をさらに満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の光学積層体。
(v)R(λ3a,θ3a)<2%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、λ3a=500nm、θ3a=5°である。
【請求項4】
遮光膜が設けられた領域において、前記光学積層体がT(850nm,0°)>60%の領域を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学積層体。
ここで、T(850nm,0°)は波長850nmの光を0°で入射した場合の透過率である。
【請求項5】
前記遮光膜が赤外線透過領域を有し、
基材と接する遮光膜が、以下の(a)及び(b)を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学積層体。
(a)波長450〜650nmにおいて、0.8×n≦n≦1.2×nかつ0.1×k≦k≦1.8×k
(b)波長850nmにてk≦0.2
:赤外線透過領域における、基材と接する遮光膜の屈折率
:赤外線透過領域における、基材と接する遮光膜の消衰係数
:赤外線透過領域以外の領域における、基材と接する遮光膜の屈折率
:赤外線透過領域以外の領域における、基材と接する遮光膜の消衰係数
【請求項6】
反射防止膜は、波長550nmの光に対する屈折率が1.2〜1.60の材料を含む層を1以上有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項7】
反射防止膜は、波長550nmの光に対する屈折率が1.61〜2.7の材料をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
反射防止膜は、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、フッ化アルミニウム、及びシリコン酸窒化物から選ばれる1種以上の材料を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項9】
反射防止膜は、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、及び窒化シリコンから選ばれる1種以上の材料を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
基材が曲面を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、携帯電話、及び車両のインストルメントパネル等に備えられた画像表示装置(例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等)においては、室内照明や太陽光等の外光が表示面に映り込むと、反射像によって視認性が低下する。
【0003】
外光の映り込みを抑制する方法としては、画像表示装置の表示面側に反射防止膜を配置し、入射光の反射を抑えて反射像を不鮮明にする方法が知られている。反射防止膜としては、低屈折材料からなる単層膜、または、低屈折率材料の層と高屈折率材料の層とを組み合わせた多層膜が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−206392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の反射防止膜は垂直入射角による光路長をもとに設計されているため、外光の入射角または画像を見る人の位置によっては光路長が設計からずれてしまい、反射率が大きく上昇して反射抑制効果が損なわれるとともに、反射色調が変化して視認されることがある。さらに基材に曲面部が存在する場合に、平坦部と曲面部で異なる反射色調として視認される課題がある。
【0006】
本発明は、垂直方向だけでなく、斜めから入射した光に対する反射率も抑制し、さらに、斜めから入射した場合でもニュートラルな反射色調が得られる光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記光学積層体により上記課題を解決できることを見出した。
〔1〕
基材と、基材の一方の面に設けられた反射防止膜と、基材の他方の面に設けられた遮光膜とを備える光学積層体であって、前記光学積層体が下記(i)〜(iii)の特性を全て満たすことを特徴とする光学積層体。
(i)0.5<R(λ1a,θ1a)/R(λ1b,θ1b)<1.5
(ii)Y(θ)≦3%
(iii)Y(θ)≦10%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、
λ1a=380nm、θ1a=60°、
λ1b=650nm、θ1b=60°である。
Y(θ)は、入射角度θの視感反射率であり、
θ=5°、
θ=60°である。
〔2〕
前記光学積層体が下記(iv)の特性をさらに満たすことを特徴とする〔1〕に記載の光学積層体。
(iv)0.3<R(λ2a,θ2a)/R(λ2b,θ2b)<1.3(θ2a=θ2b=5°)
ここで、λ2aは、400〜450nmの波長範囲に存在し、λ2bは700〜790nmの波長範囲に存在する。
〔3〕
前記光学積層体が下記(v)の特性をさらに満たすことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の光学積層体。
(v)R(λ3a,θ3a)<2%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、λ3a=500nm、θ3a=5°である。
〔4〕
遮光膜が設けられた領域において、前記光学積層体がT(850nm,0°)>60%の領域を有することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1に記載の光学積層体。
ここで、T(850nm,0°)は波長850nmの光を0°で入射した場合の透過率である。
〔5〕
前記遮光膜が赤外線透過領域を有し、
基材と接する遮光膜が、以下の(a)及び(b)を満たす、〔1〕〜〔4〕のいずれか1に記載の光学積層体。
(a)波長450〜650nmにおいて、0.8×n≦n≦1.2×nかつ0.1×k≦k≦1.8×k
(b)波長850nmにてk≦0.2
:赤外線透過領域における、基材と接する遮光膜の屈折率
:赤外線透過領域における、基材と接する遮光膜の消衰係数
:赤外線透過領域以外の領域における、基材と接する遮光膜の屈折率
:赤外線透過領域以外の領域における、基材と接する遮光膜の消衰係数
〔6〕
反射防止膜は、波長550nmの光に対する屈折率が1.2〜1.60の材料を含む層を1以上有する、〔1〕〜〔5〕のいずれか1に記載の光学積層体。
〔7〕
反射防止膜は、波長550nmの光に対する屈折率が1.61〜2.7の材料をさらに含む、〔1〕〜〔6〕のいずれか1に記載の光学積層体。
〔8〕
反射防止膜は、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、フッ化アルミニウム、及びシリコン酸窒化物から選ばれる1種以上の材料を含む、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔9〕
反射防止膜は、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、及び窒化シリコンから選ばれる1種以上の材料を含む、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔10〕
基材が曲面を有する、〔1〕〜〔9〕に記載の光学積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学積層体によれば、外光の入射角によらず映り込みを抑制でき、かつニュートラルな反射色調を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の光学積層体の一態様を示す断面図である。
図2図2は、例3の光学積層体の入射角60°の分光反射率曲線を示すグラフである。
図3図3は、例3の光学積層体の入射角5°の分光反射率曲線を示すグラフである。
図4図4は、例6の光学積層体の入射角60°の分光反射率曲線を示すグラフである。
図5図5は、例6の光学積層体の入射角5°の分光反射率曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光学積層体1は、基材2と、基材2の一方の面に設けられた反射防止膜3と、基材の他方の面に設けられた遮光膜4とを備える。
【0011】
(基材)
基材の形状としては、反射防止膜と遮光膜を設けられる面が存在すれば特に限定されず、板状でもフィルム状でもよく、また、平坦な形状でも曲面を有する形状であってもよく、さらに平坦部分と曲面部分の両者を有する形状であってもよい。近年では表示面が曲面を有する画像表示装置も登場しており、画像を見る人の角度によらず反射性に優れた本発明の光学積層体はこのような用途に特に有用である。
【0012】
また、基材の材質としては反射防止膜と遮光膜を設けられ、透明性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ガラス、樹脂、又はそれらの組み合わせ(複合材料、積層材料等)からなるものが好ましく使用される。ガラスの中でも、強化処理が可能な組成であることが好ましく、例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
【0013】
強化処理としては、風冷強化法(物理強化法)や化学強化法により、ガラス板表面に圧縮応力層を形成させる処理が挙げられる。化学強化されたガラス基材としては、例えば表面圧縮応力(CS)が450MPa〜1200MPa、応力層深さ(DOL)が10μm〜50μmである。
【0014】
基材の厚さは、用途に応じて適宜選択できる。例えばガラス基材を用いる場合、その厚さは0.1〜5mmが好ましく、0.2〜2.5mmがより好ましい。
【0015】
(反射防止膜)
本発明の光学積層体は、基材の一方の面に反射防止膜を有する。反射防止膜の材料は特に限定されるものではなく、可視光の反射を抑制できる材料であれば各種材料を利用できる。また、反射防止膜は低屈折率材料から形成される単層膜であっても、低屈折率材料の層と高屈折率材料の層とを積層した多層膜であってもよい。ここで、低屈折材料とは波長550nmの光に対する屈折率が1.2〜1.60の材料であり、高屈折率材料とは波長550nmの光に対する屈折率が1.61〜2.7の材料である。
【0016】
特に反射防止性能を高めるためには、反射防止膜は複数の層が積層された積層体であることが好ましく、例えば該積層体は全体で2層以上12層以下の層が積層されていることが好ましく、4層以上8層以下の層が積層されていることがより好ましい。ここでの積層体は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した積層体であることが好ましく、高屈折率層、低屈折率層各々の層数を合計したものが上記範囲であることが好ましい。
【0017】
高屈折率層、低屈折率層の材料は特に限定されるものではなく、要求される反射防止の程度や生産性等を考慮して選択できる。
高屈折率層を構成する材料としては、例えば酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化シリコン、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、及び、これらの材料を含有する混合物からなる材料から選択された1種以上を好ましく利用できる。
低屈折率層を構成する材料としては、酸化シリコン(SiO)、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、フッ化アルミニウム、及びシリコン酸窒化物、酸化シリコンと酸化スズの混合物、及び、これらの材料を含有する混合物からなる材料から選択された1種以上を好ましく利用できる。
【0018】
高屈折率層の材料として酸化ニオブ(Nb)、低屈折率層の材料として酸化シリコン(SiO)を用い、これらを交互に積層し4層から8層の反射防止膜を得る場合、基板から最も離れた最上層の酸化シリコン(SiO)は膜厚80〜120nm、かつ、基板に最も近い酸化シリコン(SiO)の膜厚は、最上層の酸化シリコン(SiO)の膜厚を1とすると、0.2〜0.8の範囲が好ましく、さらには0.3〜0.7の範囲が好ましく、最も好ましくは0.4〜0.6の範囲である。
また酸化ニオブ(Nb)と酸化シリコン(SiO)を交互に積層し6層から8層の反射防止膜を得る場合、基板から最も離れた酸化ニオブ(Nb)の膜厚は、最上層の酸化シリコン(SiO)の膜厚を1とすると0.1〜0.8の範囲が好ましく、さらには0.2〜0.7の範囲が好ましく、さらには0.2〜0.6の範囲が好ましい。また基板側から第3層目の酸化ニオブ(Nb)の膜厚は、前記基板から最も離れた酸化ニオブ(Nb)の膜厚を1とすると、0.3〜1.7の範囲が好ましく、さらには0.5〜1.5の範囲が好ましく、0.7〜1.4の範囲が最も好ましい。
また酸化ニオブ(Nb)と酸化シリコン(SiO)を交互に積層し4層から8層の反射防止膜を得る場合において、基板に最も近い最下層の酸化ニオブ(Nb)は、膜厚1〜30nmが好ましく、さらには1〜20nmが好ましく、最も好ましくは5〜15nmである。
酸化ニオブ(Nb)と酸化シリコン(SiO)を交互に積層し4層から8層の反射防止膜を得る場合、総膜厚は、150nm〜400nmが好ましく、さらに好ましくは200nm〜300nm、さらには220〜280nmが好ましい。
高屈折率材料として酸化ニオブ(Nb)以外の材料、例えば酸化チタン(TiO)を用い、酸化チタン(TiO)と酸化シリコン(SiO)を交互に積層した反射防止膜を得る場合は、前記酸化ニオブ(Nb)を用いた場合と高屈折率材料の光学膜厚が同じになるように酸化チタン(TiO)の膜厚を調整する。即ち、波長550nmにおける酸化ニオブ(Nb)の屈折率は2.2であり、酸化チタン(TiO)の膜厚は2.4である場合、酸化チタン(TiO)の膜厚は、前述の酸化ニオブ(Nb)の膜厚に0.92を乗じた膜厚となる。例えば、酸化ニオブの好ましい膜厚範囲が5〜15nmである場合、酸化チタンの好ましい膜厚は4.6nm〜13.8nmである。
【0019】
本発明の光学積層体は下記の光学特性(i)〜(iii)を全て満たすことを特徴とする。本発明は、これらの特性を満たす光学積層体であることで、垂直方向だけでなく斜めから入射した光に対する反射特性を向上できることを見出した。
(i)0.5<R(λ1a,θ1a)/R(λ1b,θ1b)<1.5
(ii)Y(θ)≦3%
(iii)Y(θ)≦10%
R(λ,θ):波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率
Y(θ):入射角度θの視感反射率
以下、各特性について詳述する。
(i)0.5<R(λ1a,θ1a)/R(λ1b,θ1b)<1.5(λ1a=380nm、θ1a=60°、λ1b=650nm、θ1b=60°)
特性(i)は入射角60°における赤色波長域光の反射率と青色波長域光の反射率の比を規定したもので、かかる比が0.5〜1.5の範囲にあることは両反射率が同程度であることを意味する。上記反射率比をこの範囲とすることで、斜めの入射角においても、反射色a,bの値が−5≦a≦5かつ−5≦b≦5の範囲となり、ニュートラルな反射色調を得ることができる。すなわち、斜めの入射角においても、反射光が赤色にも青色にも偏り過ぎることがなく、ニュートラルな反射色調であることを意味する。また、上記反射率の比は好ましくは0.7〜1.3である。
なお、特性(i)に関し、各波長域λの全範囲で上記関係式を満たす必要はなく、各波長域λの範囲内のいずれかの波長において上記関係式を満たせば足りる。
【0020】
(ii)Y(θ)≦3%(θ=5°)
特性(ii)は入射角5°の視感反射率を規定したもので、かかる反射率が3%以下であることで基板に対しほぼ垂直方向から見た場合に十分な反射防止性能を得ることができる。なお入射角5°としたのは、入射角0°(すなわち垂直入射)に近い状態を想定したものである。
(iii)Y(θ)≦10%(θ=60°)
特性(iii)は入射角60°の視感反射率を規定したもので、かかる反射率が10%以下であることで斜めからの入射光に対しても十分な反射防止性能を得ることができる、あるいは、基板に対して斜め方向から観察する場合においても、十分な反射防止性能を得ることができる。
【0021】
本発明の光学積層体は下記の光学特性(iv)をさらに満たすことが好ましい。
(iv)0.3<R(λ2a,θ2a)/R(λ2b,θ2b)<1.3(θ2a=θ2b=5°)
λ2aは、400〜450nmの波長範囲に存在し、λ2bは700〜790nmの波長範囲に存在する。
特性(iv)は入射角5°における赤色波長域光の反射率と青色波長域光の反射率の比を規定したもので、かかる比が0.5〜1.5の範囲にあることは各反射率が同程度であることを意味する。上記反射率比をこの範囲とすることで、入射角5°における反射色a,bの値が−5≦a≦5かつ−5≦b≦5の範囲となり、ニュートラルな反射色調を得ることができる。すなわち、反射光が赤色にも青色にも偏り過ぎることがなく、ニュートラルな反射色調であることを意味する。また、上記反射率の比は好ましくは0.7〜1.3である。
【0022】
なお、上記特性(i)及び(iv)は、換言すると下記特性(i’)及び(iv’)として規定することができる。
(i’)角度60°で入射した場合の反射率が、可視光域における反射率最小値(60°入射)+2%となる、波長の最小値をλmin.(60°)とし、最大値をλmax.(60°)とすると、λmin.(60°)≦400nm、かつ、λmax.(60°)≧600nmである。また反射率最小値(60°入射)+2%となる、低反射領域の波長幅Δλ(60°)(=λmax.(60°)−λmin.(60°))も、250nm以上となり、角度60°の場合においても広い波長範囲において低反射性能を得ることができる。
(iv’)角度5°で入射した場合の反射率が、可視光域における反射率最小値(5°入射)+2%となる、波長の最小値をλmin.(5°)とし、最大値をλmax.(5°)とすると、λmin.(5°)≦450nm、かつ、λmax.(5°)≧700nmである。また反射率最小値(5°入射)+2%となる、低反射領域の波長幅Δλ(5°)(=λmax.(5°)−λmin.(5°))は、300nm以上となり、広い波長範囲において低反射性能を得ることができる。
【0023】
本発明の光学積層体は下記(v)の特性をさらに満たすことが好ましい。
(v)R(λ3a,θ3a)<2%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、λ3a=500nm、θ3a=5°である。
特性(v)は緑色波長域光の反射率を規定したものであり、かかる反射率が上記範囲であることで、緑色が強すぎることなくよりニュートラルな色調を得ることができる。
【0024】
なお反射率は各波長における反射率についてはJIS K5602に基づき波長300〜1000nmにおける分光反射率を測定し、視感反射率についてはJIS R3106に準拠して、JIS Z8720に規定されるCIE標準の光D65に対する、CIE明順応の比視感度による視感反射率を求める。
【0025】
反射防止膜における各層の材料(屈折率)、膜厚、基材への積層順等を適宜調整することで、上記特性(i)〜(iii)を満たす光学積層体が設計できる。
反射防止膜の形成方法については製造方法の項で詳述する。
【0026】
(遮光膜)
遮光膜は、基材の反射防止膜が設けられた面とは他方の面に設けられ、光遮蔽性を有する膜である。
【0027】
本発明において遮光膜4は、膜内の全領域が遮光領域であってもよいし、図1に示すように、光学積層体1がT(850,0)>60%の領域を有してもよい。ここでT(850,0)は波長850nmの光を0°で入射した場合の透過率である。
上記関係式はすなわち遮光膜4が遮光領域4aと、赤外線透過領域4bとを一部に有することを意味する。
【0028】
遮光膜における遮光領域は、JIS R3106に準拠して測定した可視光透過率が0.1%以下であることが好ましい。赤外線透過領域は、JIS R3106に準拠して測定した可視光透過率が5%以下であること、かつ、波長850nm〜1000nmの赤外線の透過率が60%以上であることが好ましい。さらには波長900nm〜1000nmの赤外線の透過率が70%以上であることが好ましい。
【0029】
さらに、遮光膜の赤外線透過領域(A)における、基材と接する遮光膜の屈折率をn、消衰係数をkとし、赤外線透過領域以外の領域すなわち遮光領域(B)における、基材と接する遮光膜の屈折率をn、消衰係数をkとしたときに、以下の(a)及び(b)を満たすことが好ましい。
(a)波長450〜650nmにて、0.8×n≦n≦1.2×nかつ0.1×k≦k≦1.8×k
(b)波長850nmにてk≦0.2
上記条件を満たすことにより、赤外線透過領域Aと遮光領域Bにおける反射色の違いを示す値((Δa)+(Δb)1/2が2以下と小さく、かつ、視感反射率Y(5°)の値も十分小さくすることができる。すなわち、赤外線透過領域Aと遮光領域Bの境界が視認されにくく、好ましい。
【0030】
遮光膜は、所定の材料を溶媒に溶解した溶液(インク)を、基材表面に塗布または印刷し、溶媒を蒸発等により除去して形成される。
好ましくは、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂と各種顔料とを溶媒に溶解した溶液(インク)を、基材表面に塗布または印刷し、溶媒を蒸発等により除去し、光または熱により樹脂を硬化させることで形成される。
【0031】
遮光膜における赤外線透過領域は、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂と赤外線透過能を有する顔料とを含むことが好ましい。同顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれでも良く、無機顔料としては、酸化鉄、酸化チタン、複合酸化物系などが挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料等の金属錯体系顔料などが挙げられる。さらに色調を調整するために、黒色顔料・赤色顔料・黄色顔料・青色顔料・緑色顔料等を含んでもよい。
【0032】
遮光膜における遮光領域は、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂と上記した赤外線透過能を有する顔料を含んでもよく、色調調整のために黒色顔料・赤色顔料・黄色顔料・青色顔料・緑色顔料等を含んでもよい。さらに色調調整のために、基材と接する遮光膜の上に、1あるいは複数の、基材と接する遮光膜とは異なる材料からなる遮光膜を設けてもよい。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂等、アクリル樹脂等が挙げられる。
光硬化性樹脂の一構成例は、重合性基を有するモノマーを含有するものが挙げられる。重合性基を有するモノマーとしては、少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーが挙げられ、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン系化合物、アリルエーテル、アリルエステルが好ましく、硬化性と透明性の観点から(メタ)アクリレートモノマーがより好ましい。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの総称である。
その他にエポキシ基やグリシジル基、オキセタン基、オキサゾリン基などの環状エーテル構造を有するモノマーも使用できる。重合性基を有するモノマーにおける重合性基の数は、1〜6個が好ましく、1または2個がより好ましい。
【0034】
なお可視光透過率は、JIS R3106に準拠して、光源としてJIS Z8720(2012)に規定するCIE標準のD65光源を用いて室温で測定したときの値である。
【0035】
遮光膜の形成方法については製造方法の項で詳述する。
【0036】
(防眩層)
本発明の光学積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、基材と反射防止膜と遮光膜以外の部材、例えば基材と反射防止膜の間に防眩層を有してもよい。防眩層は、例えば表面に凹凸形状のある層を形成することで反射光を散乱させ、反射光による眩しさを低減する機能を有する層である。
【0037】
(防汚膜)
またさらに、反射防止膜の基材と接しない面に防汚膜を備えてもよい。防汚膜は撥油性や撥水性の特性をもち、防汚膜を備えることにより、例えば指紋跡などの汚れの付着を抑えるあるいはふき取りやすくする、またタッチパネル操作の際にスムーズな指滑り性を得ることができる。防汚膜の材料としては、例えば含フッ素有機ケイ素化合物などが挙げられる。防汚膜の成膜方法は特に限定されるものではないが、上記したフッ素含有有機ケイ素化合物材料を用いて真空蒸着により成膜することが好ましい。
【0038】
<製造方法>
(反射防止膜の形成)
基材の一方の面に反射防止膜を成膜する方法は特に限定されるものではなく、各種成膜方法を利用可能である。特に、パルススパッタ、ACスパッタ、デジタルスパッタ等の方法により成膜を行うことが好ましい。これらの方法によれば、緻密な反射防止膜ができ、耐久性を確保できる。また各層の膜厚を厳密に制御可能であり、このため設計通りの積層膜を作製でき、所望の光学特性を有する反射防止膜を得ることができる。さらにこれらの方法によれば、基材面内において均一な膜厚で成膜可能である。このため基材面内の場所により反射色が異なること等なく、基材面内で均一な光学特性を有する反射防止膜を得ることができる。
【0039】
例えばパルススパッタにより成膜を行う際は、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気のチャンバ内にガラス基材を配置し、これに対して、所望の組成となるようにターゲットを選択し、成膜できる。不活性ガスのガス種は特に限定されるものではなく、アルゴンやヘリウム等、各種不活性ガスを利用できる。
【0040】
なお、反射防止膜を成膜するにあたっては、スパッタガス中の酸素ガス等の酸化性ガス濃度を30体積%以下とすることで、プラズマ中の酸素負イオンの生成量を抑制することができる。生成した酸素負イオンは、真空槽内壁等のスパッタカソードよりも高い電位(通常はグランド電位)の場所に、その電場勾配により加速され衝突する。スパッタ装置の真空槽内壁は、繰り返し成膜が行われることで成膜物質が堆積しており、これに酸素負イオンが衝突することで堆積物がスパッタされて放出され、反射防止膜中に不純物として取り込まれてしまう。スパッタガス中の酸化性ガス濃度を低減し酸素負イオンの生成量を抑制することで、反射防止膜中の不純物混入を抑制することができる。これにより緻密な膜質が得られ、低反射となる波長範囲の広い優れた光学特性の反射防止膜を得ることができる。また耐擦傷性や密着性などの機械的特性の優れた反射防止膜を得ることができる。
【0041】
(遮光膜の形成)
遮光膜は、例えば、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂と各種顔料とを溶媒に溶解した溶液(インク)を、基材表面に塗布または印刷し、溶媒を蒸発等により除去し、光または熱により樹脂を硬化させることで形成される。
光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料としては上述したものを使用できる。
溶媒としては、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤を用いてもよい。例えば、アルコール類としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等を使用でき、エステル類としては酢酸エチル、ケトン類としてはメチルエチルケトンを使用できる。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソTM100、ソルベッソTM150等を使用でき、脂肪族炭化水素系溶剤としてはヘキサン等を使用できる。
【0042】
各種材料の溶液を基材表面に印刷する方法としては、均一な膜厚で印刷が可能な方法が好ましく、ローラー印刷、カーテンフロー、ダイコート、グラビアコート、マイクログラビアコート、リバースコート、ロールコート、フローコート、スプレーコート等の印刷方法が例示される。
【0043】
遮光膜中に赤外線透過領域を設ける場合は、例えば、赤外線透過領域を形成する材料溶液を基材表面の一部分に印刷し、溶媒を除去した後に樹脂を硬化させ、次いで遮光領域を形成する材料溶液を基材表面の残りの領域に印刷し、溶媒を除去した後に樹脂を硬化させる方法が挙げられる。
【0044】
遮光膜の膜厚としては遮光性と耐擦傷性の観点から0.1〜50μmが好ましく、0.5〜30μmがより好ましい。
【0045】
赤外線透過領域を有する場合、遮光膜の全領域に占める割合は0.01〜1が好ましく、さらには0.01〜0.8が好ましく、さらには0.05〜0.5が好ましい。
【実施例】
【0046】
例1
まず、ガラス基板の一方の面の所定の場所に、波長550nmにおける屈折率が1.55、消衰係数が0.23であるインクを5μmの厚さに塗布した後、150℃で10分間保持して乾燥させて遮光膜を形成した。
次に、以下の手順で遮光膜を形成した面と反対の面に、反射防止膜を形成した。遮光膜とは反対の面が成膜面となるように、前記遮光膜を備えたガラス基板をマグネトロンスパッタ装置の真空槽内に配置し、真空槽内の真空度を1.3×10−4Paとした。次に、酸素ガス5体積%、アルゴンガス95体積%からなるスパッタガスを成膜室に導入し2×10−1Paとした。酸化ニオブターゲット(AGCセラミックス株式会社製;NBOターゲット)に、電力密度5.5W/cmの電力を投入し、ガラス基板表面に膜厚12nmの酸化ニオブからなる高屈折率層を形成した。次に、酸素ガス10体積%、アルゴンガス90体積%からなるスパッタガスを成膜室に導入し2×10−1Paとした。n型単結晶シリコンをスパッタターゲットとし、周波数20kHz、反転パルス幅5μsec、電力密度2.8W/cmの条件でパルススパッタリングを行い、前記酸化ニオブ膜の上に、膜厚39nmの酸化ケイ素からなる低屈折率層を形成した。さらに前記1層目と同様にして、2層目低屈折率層上に、酸化ニオブからなる高屈折率層を115nm形成した。さらに前記2層目と同様にして、酸化ケイ素からなる低屈折率層を90nm形成し、4層からなる反射防止膜とした。
【0047】
例1で得られた光学積層体について、裏面に遮光膜がある場所の反射防止膜面における分光反射率を測定し、これより視感反射率Y及び色度aを求めた。分光反射率は、反射防止膜面の法線方向より5°、10°、20°、30°、40°、50°、60°及び70°の角度からの入射光について測定し、各々について視感反射率Y及び色度aを求めた。代表して5°及び60°の入射光の場合について表1に示す。
また、例1で得られた光学積層体について、遮光膜がある領域の波長850nmの光を0°で入射した場合の透過率を測定した。
【0048】
さらに分光反射率より、以下の値を求め、低反射特性を示す指標とした。
・R(380nm,60°)/R(650nm,60°)
・波長300nm〜1000nmの範囲において、反射率が、「可視光波長領域における反射率最小値+2%以下」となる、
最小波長:λmin.
最大波長:λmax.
Δλ=λmax.−λmin.
バンド幅比=λmax./λmin.
【0049】
例2〜6
反射防止膜の層数と各層の膜厚を表1に示すものとした以外は、例1と同様にして、光学積層体を得た。例1と同様に分光反射率及び透過率を測定し、これより求めた、視感反射率Y、色度a、及び、前述のλmin.λmax.Δλ、バンド幅比を表1に示す。
【0050】
なお、例1〜5は実施例であり、例6は比較例である。
【0051】
【表1】
【0052】
例1〜5のように0.5<R(380nm,60°)/R(650nm,60°)<1.5を満たすことで、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aが、−5<a<5かつ−5<b<5を満たす、ニュートラルな反射色調を得ることができた。
一方、例6のように0.5<R(380nm,60°)/R(650nm,60°)<1.5を満たさず、0.5よりも小さい値の場合、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aは、−5<a<5かつ−5<b<5の範囲を大きくはずれ、ニュートラルな反射色調を得ることができず、赤色の強い反射色調となった。
【0053】
例1〜5のように入射角60°からの入射光に対する、バンド幅比が1.600よりも大きい場合、−5<a<5かつ−5<b<5を満たす、ニュートラルな反射色調を得ることができた。
一方、例6のように入射角60°からの入射光に対する、バンド幅比が1.600よりも小さい場合、−5<a<5かつ−5<b<5を満たす、の範囲を大きくはずれ、ニュートラルな反射色調を得ることができず、赤色の強い反射色調となった。
【0054】
例1〜5のように入射角5°からの入射光に対するΔλ(5°)>300nmかつ入射角60°からの入射光に対するΔλ(60°)>250nmを満たす場合、入射光の入射角度が変わってもニュートラルな反射色調が得られ、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aは、−5<a<5かつ−5<b<5を満たすことができた。
【0055】
例1〜5のように入射角5°からの入射光に対する、λmin(5°)≦450nmかつλmax(5°)≧700nmであり、入射角60°からの入射光に対する、λmin(60°)≦400nmかつλmax(60°)≧600nmである場合、入射光の入射角度が変わってもニュートラルな反射色調が得られ、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aは、−5<a<5かつ−5<b<5を満たすことができた。
【0056】
例7
遮光膜を形成するインクを、表2に記載の屈折率と消衰係数と組成を有するインクとした以外は例3と同様にして、光学積層体を作製した。
得られた光学積層体について、例3と同様に、入射角5°からの入射光に対する分光反射率を測定し、視感反射率Y、色度aを求めた値を表2に示す。さらに例3の反射色との違いを表すために、両者の色度aの差をΔa、色度bの差をΔbとし、((Δa)+(Δb)1/2の値を指標として求めた。表2に合わせて示す。
【0057】
例8〜12
例7と同様に、遮光膜を形成するインクを表2に記載の屈折率と消衰係数と組成を有するインクとした以外は例3と同様にして、光学積層体を得た。得られた光学積層体について、例7と同様にして、入射角5°からのの入射光に対する視感反射率Y、色度a、及び、((Δa)+(Δb)1/2の値を求めた。これらを表2に合わせて示す。
【0058】
また、例3の遮光膜のインクの屈折率及び消衰係数を、nII及びkIIとし、例7〜11及び例12の遮光膜のインクの屈折率及び消衰係数を、nI及びkIとした場合、450nm、550nm、650nmにおける各係数の数値を表3に示す。
【0059】
なお、例7〜11は実施例であり、例12は比較例である。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
例7〜11のように、波長450〜650nmにおいて
0.8×nII≦nI≦1.2×nII かつ
0.1×kII≦kI≦1.8×kII を満たす場合
例7〜11の((Δa)+(Δb)1/2は、2以下と十分小さい値であり、例3との反射色の違いは十分小さい。
同時に、例7〜11のY値は2%以下で、例3のY値との差は1.2%以下であり、例3との反射率の差は十分小さい。
【0063】
例7〜11の領域と、例3の領域が隣り合っていた場合、反射色及び反射率の差が十分小さいことで、例7〜11の領域と、例3の領域との境界は視認されにくく、好ましい。
【0064】
例12のように、波長450〜650nmにおいて
0.8×nII≦nI≦1.2×nII かつ
0.1×kII≦kI≦1.8×kII
を満たさない場合、例12の((Δa)+(Δb)1/2は、2以下と十分小さいが、Y値は2%を超え、例3のY値との差は1.5%を超え、反射率の差は大きい。
【0065】
例12の場所と、例3の場所が隣り合っていた場合、反射色の違いは十分小さいが、反射率の差が大きいため例12の場所と、例3との境界は視認されやすく、好ましくない。
【0066】
例13
ガラス基板の一方の面に、アルコキシシランの加水分解重合物及びシリカ微粒子を含有した塗布液を塗布した後に450℃で30分間保持し、表面に凹凸を有する防眩層を200nmの厚みで形成した。
次に、防眩層を形成した面と反対の面の所定の場所(領域B)に、波長450nmにて屈折率1.52及び消衰係数0.10、波長550nmにて屈折率1.54及び消衰係数0.12、波長650nmにて屈折率1.56及び消衰係数0.13であるインクを2μmの厚さに塗布した。また同様に、防眩層を形成した面と反対の面の、領域Bと異なる所定の場所(領域A)に、波長450nmにて屈折率1.54及び消衰係数0.03、波長550nmにて屈折率1.52及び消衰係数0.10、波長650nmにて屈折率1.64及び消衰係数0.11、波長850nmにて屈折率1.65及び消衰係数0.007、波長940nmにて屈折率1.64及び消衰係数0.002であるインクを2μmの厚さに塗布した。塗布後の基板を150℃で10分間保持し乾燥させた後、さらに領域Bには、波長550nmにて屈折率1.55及び消衰係数0.23であるインクを3μmの厚さに塗布し、再度150℃で10分間保持し乾燥させた。以上の手順で、防眩層を形成した面と反対の面の一部に、2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を形成した。
さらに、反射防止膜の層数と各層の膜厚を表4に示すものとした以外は、例1と同様にして、防眩層の上に反射防止膜を形成した。
以上の手順で、ガラス基板の一方の面に反射防止膜と防眩層が施され、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を備えた、光学積層体を得た。
得られた光学積層体の遮光領域Bについて、例1〜6と同様に、分光反射率及び透過率を測定し、これより求めた、視感反射率Y、色度a、及び、前述のλmin.λmax.Δλ、バンド幅比、さらに反射色0°(a,b)SCI、反射色0°(a,b)SCE、拡散反射率(0°)(SCI,SCE)を表4に合わせて示す。また赤外線透過領域Aにおける、波長550nm、850nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。さらに遮光膜が施されていない領域における、波長550nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。
【0067】
例14
反射防止膜の層数と各層の膜厚を表4に示すものとした以外は、例13と同様にして、ガラス基板の一方の面に反射防止膜と防眩層が施され、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を備えた、光学積層体を得た。得られた光学積層体について、例13と同様に、視感反射率Y、色度a、及び、前述のλmin.λmax.Δλ、バンド幅比、反射色0°(a,b)SCI、反射色0°(a,b)SCE、拡散反射率(0°)(SCI,SCE)、及び各波長における透過率を、表4に合わせて示す。
【0068】
例13、14においても、0.5<R(380nm,60°)/R(650nm,60°)<1.5を満たすことで、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aが、−5<a<5かつ−5<b<5を、さらには−3<a<3かつ−3<b<3を満たす、よりニュートラルな反射色調を得ることができた。
例13、14においては、入射角60°からの入射光に対する、バンド幅比は1.700よりも大きい値であり、−2<a<2かつ−2<b<2を満たす、よりニュートラルな反射色調を得ることができた。
【0069】
例13、14においては、入射角5°からの入射光に対するΔλ(5°)>350nmかつ入射角60°からの入射光に対するΔλ(60°)>270nmであり、入射光の入射角度が変わっても、よりニュートラルな反射色調が得られ、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aは、−2<a<2かつ−2<b<2を満たすことができた。
【0070】
例13、14においては、入射角5°からの入射光に対する、λmin(5°)≦420nmかつλmax(5°)≧750nmであり、入射角60°からの入射光に対する、λmin(60°)≦400nmかつλmax(60°)≧640nmであり、入射光の入射角度が変わっても、ニュートラルな反射色調が得られ、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aは、−2<a<2かつ−2<b<2を満たすことができた。
【0071】
例13、14においては、波長450〜650nmにおいて
0.8×n≦n≦1.2×nかつ0.1×k≦k≦1.8×k
:赤外線透過領域Aにおいて基材と接する遮光膜の屈折率
:赤外線透過領域Aにおいて基材と接する遮光膜の消衰係数
:遮光領域Bにおいて基材と接する遮光膜の屈折率
:遮光領域Bにおいて基材と接する遮光膜の消衰係数
を満たしたことで、反射防止膜面から観察した際に、赤外線透過領域Aと遮光領域Bの境界が視認されにくい、光学積層体を得ることができた。
【0072】
また例13、14においては、波長850nmにてk≦0.2を満たし、さらにはk≦0.1を満たしたことで、領域Aにおける波長850nmの光の透過率が80%を超える、高い赤外線透過率を有する領域を備えた光学積層体を得ることができた。
さらには波長940nmにおいてもk≦0.2を満たし、さらにはk≦0.1を満たしたことで、領域Aにおける波長940nmの光の透過率が77%を超える、高い赤外線透過率を有する領域を備えた光学積層体を得ることができた。
【0073】
例15
例13と同様にして、ガラス基板の一方の面に防眩層を形成し、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を形成した。
次に、以下の手順で、防眩層の上に、後反応スパッタ法を用いて反射防止膜を形成した。後反応スパッタ法は、スパッタリング法による金属極薄膜の形成と後反応(成膜後の酸化あるいは窒化など)を繰り返すことで、無機酸化膜あるいは無機窒化膜等を成膜する方法である。真空槽内に、スパッタリング法による成膜を行う領域と、酸化源あるいは窒化源等を備えた領域を有し、2領域間を、基材を繰り返し搬送することで、所望の膜厚の無機酸化膜あるいは無機窒化膜等を得る。前記防眩層と2種の遮光部を備えたガラス基板を、防眩層が成膜面となるように、前記の後反応スパッタ法による成膜を実施可能な真空槽内に配置し、真空槽内の真空度を1.3×10−4Paとした。次に、真空槽内のスパッタリング成膜を行う領域に、アルゴンガス100体積%からなるスパッタガスを導入して2×10−1Paとした。酸化源を備えた領域には、酸素ガスを導入し4×10−1Paとした。金属ニオブターゲットに電力密度5.5W/cmの電力を投入し、酸化源電力を1kwとし、防眩層上に膜厚9nmの酸化ニオブからなる高屈折率層を形成した。次に、同様にアルゴンガス100体積%を導入し2×10−1Paとした条件で、n型単結晶シリコンターゲットに、電力密度5.5W/cm(周波数20kHz、反転パルス幅5μsec)を投入し、酸化源電力を1kwとし、前記酸化ニオブ膜の上に、膜厚50nmの酸化ケイ素からなる低屈折率層を形成した。同様に、酸化ニオブは前記1層目と同様にして、酸化ケイ素は前記2層目と同様にして、表4に示す各層の膜厚からなる8層の反射防止膜を形成した。
以上の手順で、ガラス基板の一方の面に反射防止膜と防眩層が施され、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を備えた、光学積層体を得た。
【0074】
得られた光学積層体の領域Bについて、例13と同様に、分光反射率及び透過率を測定し、これより求めた、視感反射率Y、色度a、及び、前述のλmin.λmax.Δλ、バンド幅比、さらに反射色0°(a,b)SCI、反射色0°(a,b)SCE、拡散反射率(0°)を表4に合わせて示す。また赤外線透過領域Aにおける、波長550nm、850nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。さらに遮光膜が施されていない領域における、波長550nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。
【0075】
例16
ガラス基板の一部に曲面部(曲率半径:200mm)を有し、平坦部から連続的に曲面となるガラス基板上に、曲面部にてガラス表面が凸となる側に、例13と同様に、防眩層を形成した。次に、防眩層を形成した面と反対の面の一部に、例13と同様に、2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を形成した。次に、反射防止膜の層数と各層の膜厚を表4に示すものとした以外は、例15と同様にして、防眩層の上に反射防止膜を形成した。さらに反射防止膜の上に、膜厚5nmの防汚膜を形成した。防汚膜は以下の方法で成膜した。
前記の後反応スパッタ法による成膜を実施可能な真空槽内に、防汚膜を蒸着可能な領域を設け、反射防止膜を形成後に真空槽から取り出すことなく、反射防止膜形成後に連続して真空中で防汚膜を成膜した。具体的には、フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用組成物(旭硝子製、Afluid(登録商標)S550)を加熱容器に入れ280℃に加熱し、真空槽内に設置した水晶振動子モニタにより膜厚を測定しながら、反射防止膜上のフッ素含有有機ケイ素化合物膜の膜厚が5nmになるまで成膜を行った。なお、フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用組成物は、本実施例による光学積層体の作製を開始する前に、あらかじめ、真空槽内で脱気して溶媒を適切に除去した後、加熱容器を280℃まで昇温後、該組成物の温度が安定するまで保持した。
なお防汚膜は、撥水性、撥油性を付与できる材料から選択できるが、フッ素含有ケイ素化合物が好ましく、例えばパーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基から選ばれる1つ以上の基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。前記の有機ケイ素化合物の市販品としては、KY−178、KY−185(いずれも信越化学社製)、オプツールDSX(ダイキン社製)、Afluid(登録商標)S550(旭硝子製)等を好ましく使用できる。
以上の手順で、曲面部を有したガラス基板上に、曲面部でガラス表面が凸となる側に、防汚膜と反射防止膜と防眩層が施され、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を備えた、光学積層体を得た。
得られた光学積層体の領域Bについて、例13と同様に、分光反射率及び透過率を測定し、これより求めた、視感反射率Y、色度a、及び、前述のλmin.λmax.Δλ、バンド幅比、反射色0°(a,b)SCI、反射色0°(a,b)SCE、拡散反射率(0°)(SCI,SCE)を表4に合わせて示す。また領域Aにおける、波長550nm、850nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。さらに遮光膜が施されていない領域における、波長550nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。なお上記光学特性の測定は、基板の曲面部でない平坦部において行った。
【0076】
例15、16においても、0.5<R(380nm,60°)/R(650nm,60°)<1.5を満たすことで、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aが、−5<a<5かつ−5<b<5を、さらには−3<a<3かつ−3<b<3満たす、よりニュートラルな反射色調を得ることができた。
例15、16においては、入射角60°からの入射光に対する、バンド幅比は1.700よりも大きい値であり、−3<a<3かつ−3<b<3を満たす、よりニュートラルな反射色調を得ることができた。
【0077】
例15、16においては、入射角5°からの入射光に対するΔλ(5°)>350nmかつ入射角60°からの入射光に対するΔλ(60°)>270nmであり、入射光の入射角度が変わっても、よりニュートラルな反射色調が得られ、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aは、−3<a<3かつ−3<b<3を満たすことができた。
例15、16においては、入射角5°からの入射光に対する、λmin(5°)≦420nmかつλmax(5°)≧750nmであり、入射角60°からの入射光に対する、λmin(60°)≦400nmかつλmax(60°)≧640nmであり、入射光の入射角度が変わっても、ニュートラルな反射色調が得られ、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度aは、−3<a<3かつ−3<b<3を満たすことができた。
例16においては、上記の入射角60°からの入射光に対する、各反射特性を満たしたことで、曲面部においても、ニュートラルな反射色調を得ることができた。また平坦部から曲面部へ、光の入射角度が連続的に変わる箇所においても、反射色が大きく変わることなく、ニュートラルな反射色調を得ることができた。また平坦部から曲面部へ、観察者が観測する角度が連続的に変わる箇所においても、反射色が大きく変わることなく、ニュートラルな反射色調を得ることができた。
【0078】
例15、16においては、波長450〜650nmにおいて
0.8×n≦n≦1.2×nかつ0.1×k≦k≦1.8×k
:領域Aにおいて基材と接する遮光膜の屈折率
:領域Aにおいて基材と接する遮光膜の消衰係数
:領域Bにおいて基材と接する遮光膜の屈折率
:領域Bにおいて基材と接する遮光膜の消衰係数
を満たしたことで、反射防止膜面から観察した際に、領域Aと領域Bの境界が視認されにくい、光学積層体を得ることができた。
【0079】
また例15、16においては、波長850nmにてk≦0.2を満たし、さらにはk≦0.1を満たしたことで、領域Aにおける波長850nmの光の透過率が80%を超える、高い赤外線透過率を有する領域を備えた光学積層体を得ることができた。
さらには波長940nmにおいてもk≦0.2を満たし、さらにはk≦0.1を満たしたことで、領域Aにおける波長940nmの光の透過率が78%を超える、高い赤外線透過率を有する領域を備えた光学積層体を得ることができた。
【0080】
例13〜16は実施例である。
【0081】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の光学積層体は、各種画像表示装置のカバー部材等として有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 光学積層体
2 基材
3 反射防止膜
4 遮光膜
4a 遮光領域
4b 赤外線透過領域
図1
図2
図3
図4
図5