特開2019-216852(P2019-216852A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧
特開2019-216852防火部材、防火構造体及びその施工方法
<>
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000003
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000004
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000005
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000006
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000007
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000008
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000009
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000010
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000011
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000012
  • 特開2019216852-防火部材、防火構造体及びその施工方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-216852(P2019-216852A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】防火部材、防火構造体及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/16 20060101AFI20191129BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20191129BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20191129BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20191129BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   A62C3/16 B
   E04B1/94 F
   E04B1/94 V
   F16L5/04
   F16L5/02 F
   H02G3/22
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-114898(P2018-114898)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】秀島 有
(72)【発明者】
【氏名】安東 和哉
(72)【発明者】
【氏名】小久保 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英史
(72)【発明者】
【氏名】多賀 壮一郎
【テーマコード(参考)】
2E001
5G363
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA34
2E001GA24
2E001GA47
2E001HA32
2E001HA33
2E001HB02
2E001HD03
2E001LA03
2E001LA09
2E001MA02
2E001MA04
2E001MA08
5G363AA05
5G363AA16
5G363BA01
5G363BA07
5G363CA08
5G363CB11
(57)【要約】
【課題】 作業性に優れ、大口径の貫通孔へも容易に適用することが可能な防火部材等を提供する。
【解決手段】 防火部材1は、主に、耐火材3、熱膨張部材5、袋体9、弾性部材7等から構成される。耐火材3は、圧縮変形可能な部材である。耐火材3は、袋体9に封入される。十分にサイズの大きな袋体9に耐火材3を挿入し、袋体9の内部を減圧した状態で封入する。袋体9は、ポリ袋などの気密性を有する部材であり、ヒートシールなどにより密封することが可能である。このようにすることで、耐火材3が圧縮されて潰れた状態となる。袋体9の一方の外面には、熱膨張部材5が設けられる。この状態で、袋体9に穴をあけると、袋体9の内部に空気が導入され、耐火材3を膨張させることが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮変形可能な耐火材と、
前記耐火材が封入される袋体と、
前記袋体の一方の外面または内面に配置される熱膨張部材と、
を具備し、前記袋体は、内部が減圧され、前記耐火材が圧縮変形しており、前記袋体に穴をあけて、前記袋体の内部に空気を導入することで、前記耐火材を膨張させることが可能であることを特徴とする防火部材。
【請求項2】
前記袋体の前記熱膨張部材とは逆側の外面に、板状の弾性部材が配置されることを特徴とする請求項1記載の防火部材。
【請求項3】
前記弾性部材の少なくとも一方の辺において、前記袋体及び前記熱膨張部材がはみ出していることを特徴とする請求項2記載の防火部材。
【請求項4】
前記弾性部材の少なくとも一方の辺が折曲げられていることを特徴とする請求項3記載の防火部材。
【請求項5】
前記熱膨張部材の表面に、発泡体が配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の防火部材。
【請求項6】
防火部材を用いた防火構造体の施工方法であって、
前記防火部材は、圧縮変形可能な耐火材と、前記耐火材が封入される袋体と、前記袋体の一方の外面または内面に配置される熱膨張部材と、を具備し、前記袋体は、内部が減圧され、前記耐火材が圧縮変形しており、
前記防火部材を、前記熱膨張部材を内面側にして区画部に形成された貫通孔に配置する工程と、
前記防火部材の前記袋体に穴をあけて、前記袋体の内部に空気を導入することで、前記耐火材を膨張させ、前記貫通孔に挿通された長尺体の外面に前記熱膨張部材を押し付ける工程と、
を具備することを特徴とする防火構造体の施工方法。
【請求項7】
前記袋体の前記熱膨張部材とは逆側の外面に、板状の弾性部材が配置されており、前記弾性部材を丸めて前記貫通孔に挿通し、前記弾性部材の復元力で、前記防火部材が前記貫通孔の内面側に押し付けられることを特徴とする請求項6記載の防火構造体の施工方法。
【請求項8】
防火部材を用いた防火構造体であって、
前記防火部材は、圧縮変形可能な耐火材と、前記耐火材が収容される袋体と、前記袋体の一方の外面または内面に配置される熱膨張部材と、前記袋体の前記熱膨張部材とは逆側の外面に配置された板状の弾性部材と、を具備し、
区画部に形成された貫通孔に長尺体が挿通されており、
前記長尺体の外周に、前記防火部材が丸められて配置され、前記弾性部材の復元力で、前記防火部材が前記貫通孔の内面側に押し付けられるとともに、前記長尺体の外面に前記熱膨張部材が押し付けられることを特徴とする防火構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、配管やケーブルなどの区画部への貫通部に対して防火性能を確保するための防火部材等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物等において、区画部で区画された各部屋に配管やケーブル(以下、単に長尺体と称する場合がある)が敷設される場合がある。この場合、例えば一方の部屋で火災が発生すると、長尺体を伝って、火災が建造物全体に広がり、甚大な被害をもたらすおそれがある。
【0003】
このような区画部を貫通する長尺体の防火構造としては、例えば、熱膨張性部材をカバー体で覆った耐火処理材を、配線・配管材の貫通部に複数配置して、貫通部を閉鎖する方法がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、略筒状の本体部の内面に熱膨張部材を設け、熱膨張部材を覆うように弾性体を設けた耐火部材がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−19853号公報
【特許文献2】特開2016−112345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、使用する部材も多く、施工時間が長くなるという問題がある。また、作業者の技量によって施工ミスも生じやすい。例えば、貫通孔からの耐火処理材のはみ出しがなく、貫通孔に隙間なく耐火処理材を配置することは困難である。
【0007】
また、特許文献2の方法は、極めて短時間で施工することが可能であり、作業者の特殊な技量も不要であるが、長尺部材と貫通孔との隙間が大きい場合などにおいて、熱膨張部材の性能上、膨張した熱膨張部材が脱落しやすくなり、例えば大口径の貫通孔への適用が困難な場合がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、作業性に優れ、大口径の貫通孔へも容易に適用することが可能な防火部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、圧縮変形可能な耐火材と、前記耐火材が封入される袋体と、前記袋体の一方の外面または内面に配置される熱膨張部材と、を具備し、前記袋体は、内部が減圧され、前記耐火材が圧縮変形しており、前記袋体に穴をあけて、前記袋体の内部に空気を導入することで、前記耐火材を膨張させることが可能であることを特徴とする防火部材である。
【0010】
前記袋体の前記熱膨張部材とは逆側の外面に、板状の弾性部材が配置されることが望ましい。
【0011】
前記弾性部材の少なくとも一方の辺において、前記袋体及び前記熱膨張部材がはみ出していてもよい。
【0012】
前記弾性部材の少なくとも一方の辺が折曲げられていてもよい。
【0013】
前記熱膨張部材の表面に、発泡体が配置されてもよい。
【0014】
第1の発明によれば、減圧状態の防火部材を用いるため、運搬時においてもかさばることがなく、また、軽量であるため作業性も良好である。また、長尺体の周りに配置して袋体に穴をあけるのみであるため、特殊な工具も不要であり、容易に貫通孔と長尺体との隙間を埋めることができる。また、減圧による圧縮状態からの復元量を調整することで、大口径の貫通孔に対しても適用が可能である。
【0015】
また、袋体の外面に板状の弾性部材を配置することで、防火部材を丸めて貫通孔に挿入した際に、弾性部材の復元力によって防火部材を貫通孔の内面に押し付けた状態とすることができる。このため、貫通孔に対して、防火部材を容易に保持することができる。また、防火部材の径が広がるため、設置作業の際に、内面側の熱膨張部材と長尺体とが接触することを抑制し、防火部材を貫通孔に容易に配置することができる。
【0016】
また、弾性部材の少なくとも一方の辺において、熱膨張部材等がはみ出すようにすることで、例えば、弾性部材の端部同士を突き合せて円形にし、貫通孔に配置した際、熱膨張部材同士及び耐火材同士の間に隙間が形成されることを抑制することができる。
【0017】
また、弾性部材の少なくとも一方の辺が折曲げられていれば、弾性部材の剛性が高くなり、潰れ等の変形を抑制することができる。
【0018】
また、熱膨張部材の表面に発泡体を配置することで、設置作業の際に、内面側の熱膨張部材と長尺体とが接触することを抑制し、防火部材を貫通孔に容易に配置することができる。また、例えば複数の長尺体を配置した場合など、長尺体同士の間に形成される外形の凹凸に対しても容易に追従し、隙間を埋めることができる。
【0019】
第2の発明は、防火部材を用いた防火構造体の施工方法であって、前記防火部材は、圧縮変形可能な耐火材と、前記耐火材が封入される袋体と、前記袋体の一方の外面または内面に配置される熱膨張部材と、を具備し、前記袋体は、内部が減圧され、前記耐火材が圧縮変形しており、前記防火部材を、前記熱膨張部材を内面側にして区画部に形成された貫通孔に配置する工程と、前記防火部材の前記袋体に穴をあけて、前記袋体の内部に空気を導入することで、前記耐火材を膨張させ、前記貫通孔に挿通された長尺体の外面に前記熱膨張部材を押し付ける工程と、を具備することを特徴とする防火構造体の施工方法である。
【0020】
前記袋体の前記熱膨張部材とは逆側の外面に、板状の弾性部材が配置されており、前記弾性部材を丸めて前記貫通孔に挿通し、前記弾性部材の復元力で、前記防火部材が前記貫通孔の内面側に押し付けられることが望ましい。
【0021】
第2の発明によれば、防火部材を貫通孔に丸めて配置した後に、袋体に穴をあけるだけで耐火材を膨張させて、長尺体と貫通孔との隙間を確実に埋めることができる。
【0022】
また、袋体の外面に板状の弾性部材を配置することで、設置作業の際に、内面側の熱膨張部材と長尺体とが接触することを抑制し、貫通孔に対して防火部材を容易に配置することができる。
【0023】
第3の発明は、防火部材を用いた防火構造体であって、前記防火部材は、圧縮変形可能な耐火材と、前記耐火材が収容される袋体と、前記袋体の一方の外面または内面に配置される熱膨張部材と、前記袋体の前記熱膨張部材とは逆側の外面に配置された板状の弾性部材と、を具備し、区画部に形成された貫通孔に長尺体が挿通されており、前記長尺体の外周に、前記防火部材が丸められて配置され、前記弾性部材の復元力で、前記防火部材が前記貫通孔の内面側に押し付けられるとともに、前記長尺体の外面に前記熱膨張部材が押し付けられることを特徴とする防火構造体である。
【0024】
第3の発明によれば、板部材がスリーブとしても機能するため、確実に貫通孔に防火部材を配置した状態で保持することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、作業性に優れ、大口径の貫通孔へも容易に適用することが可能な防火部材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】防火部材1を示す斜視図。
図2】(a)は防火部材1を示す断面図であり、図1のA−A線断面図、(b)は耐火材3を膨張させた状態の断面図。
図3】(a)は耐火材3を袋体9に挿入した状態を示す断面図、(b)は減圧した状態を示す断面図。
図4】防火構造体を施工する工程を示す図。
図5】防火構造体を施工する工程を示す図で、(a)は貫通孔13の軸方向に平行な断面図、(b)は貫通孔13の軸方向に垂直な断面図。
図6】防火構造体20を示す図。
図7】防火構造体20を示す図で、(a)は貫通孔13の軸方向に平行な断面図、(b)は貫通孔13の軸方向に垂直な断面図。
図8】防火部材1aを設置した状態を示す図。
図9】防火部材1bを示す図。
図10】(a)は防火部材1bを設置した状態を示す図、(b)は防火構造体20aを示す図。
図11】防火部材1cを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかる防火部材1を示す斜視図であり、図2(a)は、図1のA−A線断面図である。防火部材1は、主に、耐火材3、熱膨張部材5、弾性部材7、袋体9等から構成される。
【0028】
耐火材3は、圧縮変形可能な部材である。耐火材3としては、例えば、ガラスウールやロックウール等の繊維状であって、体積の多くを空気が占めており、収縮性を有する無機材料の不燃材や、その他の難燃材等を適用可能である。
【0029】
耐火材3は、袋体9に封入される。図3(a)、図3(b)は、耐火材3を袋体9で封入する工程を示す図である。図3(a)に示すように、耐火材3は、十分にサイズの大きな袋体9に収容され、袋体9の内部を減圧した状態で封入される。袋体9は、ポリ袋などの気密性を有する部材であり、ヒートシールなどにより密封することが可能である。このようにすることで、耐火材3が圧縮されて潰れた状態となる。なお、熱膨張部材1の保管期間等を考慮すると、封入後1年以上にわたって、元の厚みに戻らない程度の気密性があることが望ましい。
【0030】
なお、耐火材3が封入される袋体9は、例えば筒状のものが用いられることが望ましい。例えば、筒状の袋体素材が所定の長さで切断され、内部に耐火材3を収容した後、両切断部が封止される。
【0031】
封止部は、他の部位と比較して剛性があるため、袋体9の形態が変形しにくく、後述する袋体9内部の耐火材3の膨張時に、その膨張の抵抗となる。このため、耐火材3の長手方向の両端部(短辺側)を密封することで、封止部(封止長)を短くすることができる。また、耐火材3の長辺側を密封してもよく、この場合には、丸めた際に、周方向に封止部をなくすことができる。なお、袋体9は、可燃物であってもよい。
【0032】
袋体9の一方の外面には、熱膨張部材5が設けられる。なお、熱膨張部材5を袋体9の内面であって耐火材3の表面に配置してもよい。熱膨張部材5は、火災時等の熱によって膨張する部材である。熱膨張部材5は、例えば熱膨張性黒鉛のシートであり、表面には必要に応じて粘着シートが設けられる。熱膨張部材5の膨張倍率は、例えば、60分燃焼試験後に5倍以上であることが望ましい。なお、熱膨張部材5の長手方向の長さと、袋体9に封入された耐火材3の長さは、略同一である。
【0033】
袋体9の熱膨張部材5とは逆側の外面には、弾性部材7が配置される。弾性部材7は、板状の部材であり、例えば金属製である。弾性部材7としては、例えば、0.3〜0.5mm程度のばね鋼を適用することができる。弾性部材7の長手方向の長さは、耐火材3が封入された袋体9および熱膨張部材5の長さよりも短い。したがって、弾性部材7の長手方向の少なくとも一方の辺において、袋体9(耐火材3)及び熱膨張部材5がはみ出す。
【0034】
袋体9に穴をあけると、図2(b)に示すように、袋体9の内部に空気が導入され、耐火材3を膨張させることが可能である。例えば、袋体9の内部に空気を導入することで、封入時の耐火材3の体積を、3〜8倍程度に膨張させることができる。なお、耐火材3の種類や袋体9内の真空度等によって、所望の膨張倍率を得ることができる。
【0035】
次に、防火部材1を用いた防火構造体の施工方法について説明する。図4は、防火構造体の施工工程を示す図である。なお、以下の図において、袋体9の図示を省略する場合がある。まず、区画部11に貫通孔13を形成し、形成された貫通孔13に長尺体15を通す。
【0036】
なお、図示した例では、区画部11は壁であり、この場合には、RC造の壁や木造中空壁、石膏ボードによる中空壁等いずれでもよい。また、壁に代えて、床や天井であってもよく、RC造の床や、ALCの床など区画部の態様は限定されない。また、長尺体15は、一本でなくてもよく、複数本であってもよい。
【0037】
次に、長尺体15の外周であって、区画部11に形成された貫通孔13の内部に、防火部材1を配置する。この際、防火部材1を、熱膨張部材5が内面側となるように丸めて、貫通孔13内に挿入する。
【0038】
図5(a)は、防火構造体を施工する工程を示す貫通孔の軸方向に平行な断面図であり、図5(b)は貫通孔の軸方向に垂直な断面図である。防火部材1を丸めると、最外周の弾性部材7の復元力によって、防火部材1は、外周方向に広がる方向に元の形態に戻ろうとする。このため、防火部材1を貫通孔13の内部に配置した際には、防火部材1(弾性部材7)が貫通孔13の内面側に押し付けられる。このため、設置後の防火部材1の位置ずれや脱落が抑制される。なお、弾性部材7が無くても、耐火材3等によって反発力が十分にあれば、弾性部材7は、必ずしも必要ではない。
【0039】
また、防火部材1の総厚みは、貫通孔13の内面と長尺体15の間のクリアランスよりも薄い。このため、防火部材1の最内層の熱膨張部材5と長尺体15との間には隙間が形成される。このため、熱膨張部材5は長尺体15と接触せずに、容易に防火部材1を貫通孔13に配置することができる。
【0040】
ここで、貫通孔13の内周長と弾性部材7の長手方向(貫通孔13の周方向に対応)の長さはほぼ一致する。このため、防火部材1を貫通孔13に設置した際に、弾性部材7の両端部同士を突き合せて配置することができる。この際、熱膨張部材5と耐火材3は、弾性部材7よりも長いため、熱膨張部材5と耐火材3の両端部が互いにラップして、両端部の間に隙間が形成されることがない。なお、熱膨張部材5と耐火材3の周方向に隙間が形成されなければ、弾性部材7の端部同士もラップさせてもよく、又は多少の隙間が形成されてもよい。
【0041】
また、図示したように、弾性部材7の幅(貫通孔13の軸方向に対応)に対して、熱膨張部材5と耐火材3の幅は狭くてもよい。熱膨張部材5と耐火材3の幅は、必要な防火性能によって設定される。
【0042】
なお、弾性部材7の幅を区画部11の厚みに対応させることで、弾性部材7をスリーブとして機能させることができる。例えば、区画部11が中空壁である場合にも、弾性部材7を丸めて筒状にすることで、スリーブとして使用することができる。なお、この場合には、弾性部材7の周方向の端部同士に隙間が形成されず、筒形状を維持するために、弾性部材7の周方向の両端部に、両者を係合する係合爪等を設けてもよい。
【0043】
次に、防火部材1の袋体9に穴をあけて、袋体9の内部に空気を導入する。なお、袋体9は、ドライバーなどの通常の工具で容易に穴をあけることができる。これにより、耐火材3の自己弾性回復力によって、体積を膨張させることができる。
【0044】
図6は、防火部材1を用いた防火構造体20を示す図で、図7(a)は、防火構造体20を示す貫通孔の軸方向に平行な断面図、図7(b)は貫通孔の軸方向に垂直な断面図である。耐火材3を膨張させることで、貫通孔13と長尺体15との隙間を埋め、貫通孔13に挿通された長尺体15の外面に熱膨張部材5を押し付けることができる。以上により、区画部11に形成された貫通孔13に長尺体15が挿通され、防火部材1が貫通孔13の内面側に押し付けられるとともに、長尺体15の外面に熱膨張部材5が押し付けられた防火構造体20を得ることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態にかかる防火部材1によれば、貫通孔13に防火部材1を設置する際には、内面の熱膨張部材5と長尺体15との干渉がなく、容易に取り付けることができる。また、貫通孔13へ防火部材1を設置した際には、弾性部材7の復元力によって、防火部材1が貫通孔13に保持される。このため、防火部材1の位置ずれや脱落を抑制することができ、その後の袋体9の穴あけ作業も容易である。
【0046】
また、防火部材1を貫通孔13へ設置した後、袋体9に穴をあけるのみで、長尺体15との隙間を埋めることができるため、シーリング施工も不要であり、見た目にも優れ、耐火性能も確保することができる。
【0047】
また、熱膨張部材5を長尺体15の近傍に配置することができるため、火災等の際にも、確実に熱膨張部材5の膨張によって長尺体15の燃焼に伴う隙間をうめることができる。このため、大口径の貫通孔にも適用が容易である。
【0048】
次に、第2の実施形態について説明する。図8は、第2の実施形態にかかる防火部材1aを用いた例を示す図である。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一の機能を奏する構成については図1図7と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
防火部材1aは、防火部材1とほぼ同様の構成であるが、弾性部材7の形態が異なる。防火部材1aでは、弾性部材7の少なくとも一方の辺に折曲げ部17が形成される。折曲げ部17は、弾性部材7の幅方向(貫通孔13の軸方向に対応)の端部が、全体を丸めた際に外側に突出するように折り曲げられて形成される。
【0050】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、折曲げ部17がフランジとして機能するため、防火部材1aを貫通孔13に挿通した際の位置決めと脱落防止の効果を得ることができる。
【0051】
また、折曲げ部17によって、丸めた際の防火部材1aの剛性を高めることができるため、防火部材1aの変形や潰れなどを抑制し、より確実に、防火部材1aを貫通孔13の内面に押し付けた状態を得ることができる。
【0052】
次に、第3の実施形態について説明する。図9は、第3の実施形態にかかる防火部材1bを示す図である。防火部材1bは、防火部材1とほぼ同様の構成であるが、熱膨張部材5の表面に、発泡体19が配置される点で異なる。すなわち、防火部材1bは、丸めた際に、最内層が発泡体19となる。
【0053】
発泡体19は、耐火材3よりも柔軟性が高く、圧縮変形が容易である。発泡体19としては、例えばウレタン弾性体であり、難燃性スポンジであることが望ましい。
【0054】
図10(a)は、防火部材1bを貫通孔13へ設置した状態を示す図である。本実施形態では、貫通孔13に複数本の長尺体15が挿通される。なお、複数の長尺体15が、互いに異なる径であってもよい。
【0055】
防火部材1bを、複数の長尺体15の外周であって、貫通孔13の内部に配置すると、防火部材1cの総厚みが、貫通孔13の内面と長尺体15の間のクリアランスよりも薄いため、発泡体19と長尺体15との間に隙間が形成される。このため、容易に防火部材1cを貫通孔13に配置することができる。なお、発泡体19は、熱膨張部材5と比較して滑りが良いため、仮に長尺体15と接触したとしても、容易に貫通孔13へ配置することができる。
【0056】
図10(b)は、袋体9に穴をあけて耐火材3を膨張させた防火構造体20aを示す図である。前述した各実施形態では、耐火材3の復元力によって、熱膨張部材5を長尺体15の外周に押し付けて隙間を埋める例を説明した。しかし、複数本の長尺体15が配置された場合には、長尺体15全体の外形が単純な丸形状などではなく、長尺体15同士の間に凹形状が形成される。
【0057】
熱膨張部材5の変形能力は、耐火材3等の変形能力と比較して小さい。このため、圧縮されていた耐火材3の復元力のみでは、熱膨張部材5を、長尺体15全体の外形に沿って変形させて、長尺体15の凹部の隙間を埋めることが困難である場合がある。
【0058】
これに対し、熱膨張部材5の内面側に、所定の厚みの発泡体19を配置することで、熱膨張部材5の変形量が足らずに、熱膨張部材5と長尺体15との間に隙間が形成されても、この隙間を、より変形能力の高い発泡体19によって埋めることができる。なお、発泡体19によって、効率よく隙間を埋めるためには、発泡体19の厚みを、複数の長尺体15の外接円と凹形状の底部までの距離以上とすることが望ましい。
【0059】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、最内層に発泡体19を配置することで、より確実に、長尺体15の外周面に防火部材1cの内面を密着させて、隙間を埋めることができる。なお、熱膨張部材5と長尺体15の間に発泡体19が形成された場合でも、熱膨張部材5が、耐火材3によって外側から押し付けられている状態を、熱膨張部材5が長尺体15の外面に押し付けられているものとする。
【0060】
なお、耐火材3の膨張に対する熱膨張部材5の追随性を高める方法としては、例えば、図11に示す防火部材1cのように、熱膨張部材5を長手方向に(貫通孔13の周方向に対応する)対して複数に分割してもよい。このようにすることで、防火部材1cを貫通孔13に設置した後、袋体9に穴をあけて耐火材3を膨張させた際、熱膨張部材5をより確実に長尺体15の外面に密着させることができる。
【0061】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
例えば、前述した各実施形態における各構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b、1c………防火部材
3………耐火材
5………熱膨張部材
7………弾性部材
9………袋体
11………区画部
13………貫通孔
15………長尺体
17………折曲げ部
19………発泡体
20、20a………防火構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11