特開2019-217067(P2019-217067A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217067(P2019-217067A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】成分濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20191129BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20191129BHJP
   G01N 21/00 20060101ALI20191129BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20191129BHJP
   A61B 8/13 20060101ALN20191129BHJP
【FI】
   A61B5/1455
   G01N21/17 620
   G01N21/00 A
   A61B5/107 100
   A61B8/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-117636(P2018-117636)
(22)【出願日】2018年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌人
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄次郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 倫子
(72)【発明者】
【氏名】味戸 克裕
(72)【発明者】
【氏名】松永 大地
【テーマコード(参考)】
2G059
4C038
4C601
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE09
2G059EE11
2G059EE16
2G059GG01
2G059GG03
2G059GG08
2G059GG09
2G059HH01
2G059JJ11
2G059KK02
2G059MM01
4C038KK10
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KX01
4C601DD01
4C601DE16
4C601EE09
(57)【要約】
【課題】 光音響法による人体内のグルコースの測定における、人体の経時変化による測定精度の低下を抑制する。
【解決手段】グルコースが吸収する波長のビーム光を測定部位151に照射する光照射部101と、光照射部101から出射されたビーム光を照射した測定部位151から発生する光音響信号を検出する検出部102とを備える。また、測定部位151の厚さを測定する厚測定部103と、厚測定部103が測定した厚さにより検出部102が検出した音響信号を補正する補正部104とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコースが吸収する波長のビーム光を測定部位に照射する光照射部と、
前記光照射部から出射された前記ビーム光を照射した前記測定部位から発生する光音響信号を検出する検出部と、
前記測定部位の厚さを測定する厚測定部と、
前記厚測定部が測定した厚さにより前記検出部が検出した音響信号を補正する補正部と
を備えることを特徴とする成分濃度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の成分濃度測定装置において、
前記光照射部と前記検出部とは、前記測定部位を挟んで向かい合って配置され、
前記厚測定部は、前記光照射部と前記検出部との間の前記測定部位の厚さを測定する
ことを特徴とする成分濃度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の成分濃度測定装置において、
前記厚測定部は、前記測定部位の光干渉断層撮影により前記測定部位の厚さを求めることを特徴とする成分濃度測定装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の成分濃度測定装置において、
前記厚測定部は、前記測定部位の超音波断層撮影により前記測定部位の厚さを求めることを特徴とする成分濃度測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の成分濃度測定装置において、
前記光照射部は、
グルコースが吸収する波長の前記ビーム光を生成する光源部と、
前記光源部が生成した前記ビーム光を設定したパルス幅のパルス光とするパルス制御部と
を備えることを特徴とする成分濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲にグルコースの濃度を測定する成分濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者に対するインスリンの投与量の決定や、糖尿病の予防などの観点より、血糖値を把握(測定)することが重要となる。血糖値は、血液中のグルコースの濃度であり、この種の成分濃度の測定方法として、光音響法がよく知られている(特許文献1参照)。
【0003】
生体にある量の光(電磁波)を照射した場合、照射した光は生体に含有される分子に吸収される。このため、光が照射された部分における測定対象の分子は、局所的に加熱されて膨張を起こし、音波を発生する。この音波の圧力は、光を吸収する分子の量に依存する。光音響法は、この音波を測定することにより、生体内の分子の量を測定する方法である。音波は生体内を伝搬する圧力波であり、電磁波に比べ散乱しにくいという特質があり、光音響法は生体の血液成分の測定に適しているものといえる。
【0004】
光音響法による測定によれば、連続的な血液中のグルコース濃度の監視が可能となる。また、光音響法の測定は、血液サンプルを必要とせず、測定対象者に不快感を与えることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−104858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の測定の対象となる人体の部位は、経時とともに厚さが変化する。例えば、この種の測定では、耳垂(耳たぶ)に検出部を装着するが、耳垂は人体の中でも変形しやすい部分であり、検出部を長く装着していると厚さが変化する。しかしながらこのように測定部位の厚さが変化すると、光音響法による人体内のグルコースの測定では、測定結果が変化するという問題があった。このような測定部位の厚さの変化により測定結果が変化するため、異なる時刻に測定した結果が異なっていても、実際には、同じ濃度である場合や、異なる時刻に測定した結果が同一であっても、実際には異なる濃度である場合などが発生し、正確な測定ができないという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、光音響法による人体内のグルコースの測定における、人体の経時変化による測定精度の低下の抑制を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る成分濃度測定装置は、グルコースが吸収する波長のビーム光を測定部位に照射する光照射部と、光照射部から出射されたビーム光を照射した測定部位から発生する光音響信号を検出する検出部と、測定部位の厚さを測定する厚測定部と、厚測定部が測定した厚さにより検出部が検出した音響信号を補正する補正部とを備える。
【0009】
上記成分濃度測定装置において、光照射部と検出部とは、測定部位を挟んで向かい合って配置され、厚測定部は、光照射部と検出部との間の測定部位の厚さを測定する。
【0010】
上記成分濃度測定装置において、厚測定部は、測定部位の光干渉断層撮影により測定部位の厚さを求める。
【0011】
上記成分濃度測定装置において、厚測定部は、測定部位の超音波断層撮影により測定部位の厚さを求める。
【0012】
上記成分濃度測定装置において、光照射部は、グルコースが吸収する波長のビーム光を生成する光源部と、光源部が生成したビーム光を設定したパルス幅のパルス光とするパルス制御部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、測定部位の厚さを測定し、測定した厚さにより検出部が検出した音響信号を補正するようにしたので、光音響法による人体内のグルコースの測定における、人体の経時変化による測定精度の低下が抑制できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態における成分濃度測定装置の構成を示す構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態における光源部105および検出部102のより詳細な構成を示す構成図である。
図3図3は、本発明の実施の形態における厚測定部103のより詳細な構成を示す構成図である。
図4図4は、実施の形態における成分濃度測定装置による生体中のグルコース濃度測定の実験結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態おける成分濃度測定装置について図1を参照して説明する。この成分濃度測定装置は、グルコースが吸収する波長のビーム光を測定部位151に照射する光照射部101と、光照射部101から出射されたビーム光を照射した測定部位151から発生する光音響信号を検出する検出部102とを備える。
【0016】
例えば、光照射部101は、グルコースが吸収する波長のビーム光121を生成する光源部105と、光源が生成したビーム光121を設定したパルス幅のパルス光とするパルス制御部106とを備える。グルコースは1.6μm近傍および2.1μm近傍の光の波長帯において吸収特性を示す(特許文献1参照)。ビーム光121は、例えばビーム径が100μm程度である。なお、図示していないが、レンズやコリメータなどを用い、ビーム光121を平行光にするなどの成形をしてもよい。
【0017】
また、この成分濃度測定装置は、測定部位151の厚さを測定する厚測定部103と、厚測定部103が測定した厚さにより検出部102が検出した音響信号を補正する補正部104とを備える。ここで、光照射部101と検出部102とは、測定部位151を挟んで向かい合って配置されている。厚測定部103は、実質的に、光照射部101と検出部102との間となる領域の測定部位151の厚さを測定する。厚測定部103は、光照射部101および検出部102が配置されている箇所の近傍に配置すればよい。
【0018】
厚測定部103は、例えば、測定部位151の光干渉断層撮影により測定部位151の厚さを求める。また、厚測定部103は、測定部位151の超音波断層撮影により測定部位151の厚さを求める。なお、測定部位151は、例えば、耳たぶなどの人体の一部である。
【0019】
補正部104は、検出部102が音響信号を検出した時点より所定の時間内に厚測定部103で測定された厚さにより検出部102が検出した音響信号を補正する。例えば、検出部102が音響信号を検出した時点において、厚測定部103で測定された厚さにより検出部102が検出した音響信号を補正する。
【0020】
ここで、光源部105は、図2に示すように、第1光源201、第2光源202、駆動回路203、駆動回路204、位相回路205、合波器206、検出器207、位相検波増幅器208、発振器209を備える。第1光源201、第2光源202、駆動回路203、駆動回路204、位相回路205、合波器206により光源部105が構成される。また、検出器207、位相検波増幅器208により、検出部102が構成される。
【0021】
発振器209は、信号線により駆動回路203、位相回路205、位相検波増幅器208にそれぞれ接続される。発振器209は、駆動回路203、位相回路205、位相検波増幅器208のそれぞれに信号を送信する。
【0022】
駆動回路203は、発振器209から送信された信号を受信し、信号線により接続されている第1光源201へ駆動電力を供給し、第1光源201を発光させる。第1光源201は、例えば、半導体レーザである。
【0023】
位相回路205は、発振器209から送信された信号を受信し、受信した信号に180°の位相変化を与えた信号を、信号線により接続されている駆動回路204へ送信する。
【0024】
駆動回路204は、位相回路205から送信された信号を受信し、信号線により接続されている第2光源202へ駆動電力を供給し、第2光源202を発光させる。第2光源202は、例えば、半導体レーザである。
【0025】
第1光源201および第2光源202の各々は、互いに異なる波長の光を出力し、各々が出力した光を光波伝送手段により合波器206へ導く。第1光源201および第2光源202の各々の波長は、一方の光の波長をグルコースが吸収する波長に設定し、他方の光の波長を、水が吸収をする波長に設定する。また、両者の吸収の程度が等しくなるように、各々の波長を設定する。
【0026】
第1光源201の出力した光と第2光源202の出力した光は、合波器206において合波されて、1の光ビームとしてパルス制御部106に入射する。光ビームが入射されたパルス制御部106では、入射した光ビームを所定のパルス幅のパルス光として測定部位151に照射する。このようにしてパルス状の光ビームが照射された測定部位151では、この内部で光音響信号を発生させる。
【0027】
検出器207は、測定部位151で発生した光音響信号を検出し、電気信号に変換して、信号線により接続されている位相検波増幅器208へ送信する。 位相検波増幅器208は、発振器209から送信される同期検波に必要な同期信号を受信するとともに、検出器207から送信されてくる光音響信号に比例する電気信号を受信し、同期検波、増幅、濾波を行って、光音響信号に比例する電気信号を出力する。
【0028】
第1光源201は、発振器209の発振周波数に同期して強度変調された光を出力する。一方、第2光源202は、発振器209の発振周波数で、かつ位相回路205により180°の位相変化を受けた信号に同期して強度変調された光を出力する。
【0029】
ここで、位相検波増幅器208より出力される信号の強度は、第1光源201および第2光源202の各々が出力する光が、測定部位151内の成分(グルコース、水)により吸収された量に比例するので、信号の強度は測定部位151内の成分の量に比例する。
【0030】
上記のように、第1光源201の出力した光と第2光源202の出力した光は、同一の周波数の信号により強度変調されているので、複数の周波数の信号により強度変調している場合に問題となる測定系の周波数特性の不均一性の影響は存在しない。
【0031】
一方、光音響法による測定において問題となる光音響信号の測定値に存在する非線形的な吸収係数依存性は、上述したように等しい吸収係数を与える複数の波長の光を用いて測定することにより解決できる(特許文献1参照)。
【0032】
上述したように検出部102から出力される音響信号の強度を、補正部104で補正し、補正した補正値を元に、成分濃度導出部(図示せず)が、測定部位151内の血液中のグルコースの成分の量を求める。
【0033】
次に、補正部104における、厚測定部103が測定した測定部位151の厚さによる検出部102が検出した音響信号の補正について説明する。
【0034】
はじめに、厚測定部103について、より詳細に説明する。厚測定部103は、例えば、図3に示すように、光源131,ビームスプリッタ132,ミラー133,光検出器134を備える、公知の光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography;OCT)装置である。なお、この例では、ビーム光121を平行光にするためのコリメータ107を備えている。
【0035】
光源131より出射した光は、ビームスプリッタ132で2つに分岐し、一方は、コリメータ107を介して測定部位151に入射させ、他方は、ミラー133に入射させる。測定部位151の一方の側より入射した光は、測定部位151の内部組織と測定部位151の外側とによる屈折率の差がある測定部位151の他方の側で反射し、再度、測定部位151の一方の側より出射する。
【0036】
上述したように測定部位151より戻ってきた光と、ミラー133で反射した光は、ビームスプリッタ132で重ね合わされる。このとき、光の干渉により、双方の光が通ってきた距離が等しければ、2つの光は強め合い、一方、距離にずれがあれば、2つの光は打ち消し合う。ミラー133を移動させ、光検出器134により光強度の検出で、上述した2つの光が干渉して強め合う位置を求めれば、光が測定部位151の中を通過してきた距離が分かり、測定部位151の厚さがわかる。
【0037】
次に、検出部102で検出される光音響信号について説明する。一次元の系において,任意の濃度分布を持つ物質のある時刻tにおける光音響信号は、式(1)で表される。
【0038】
【数1】
【0039】
式(1)において、Pは光音響信号の出力、β(x)は光源の照射端面をx=0としたときのある波長での深さxにおける吸収係数、μsは熱拡散長である。発生した音波(光音響信号)は、コリメータ107と検出部102との間で共振現象を起こすことで増幅された音響信号を取得することができる。
【0040】
ここで、音響信号のq次の共振モードは、以下の式(2)で表される。
【0041】
【数2】
【0042】
式(2)において、νは音速、fは光の変調周波数、Lは測定部位151の厚さである。
【0043】
経時変化により測定部位151の厚さが変化した場合、音波の共振モードと測定成分が同時に変化することにより、測定精度が低下してしまう。そこで、OCT測定を実施することにより測定部位151の厚さを測定する。ミラー133を5〜8mm程度駆動させてのある時刻tにおける厚さL(t)を測定する。測定開始時刻をt0とする。
【0044】
共振モードは、以下の式(3)により示される。
【0045】
【数3】
【0046】
なお、「ΔL=L(t)/L(t0)・・・(4)」である。
【0047】
変調周波数を「f’=f/ΔL・・・(5)」となるように調整すると、式(3)のqは、初期値と同じ共振モードをとることができる。時刻t0において感度が最大となるような変調周波数を設定しておくことにより、時間変化による測定部位151の状態変化が起きたとしても、常に高感度な共振モードで光音響測定が実施できる。
【0048】
上述した実施の形態における成分濃度測定装置による生体中のグルコース濃度測定の実験結果を図4に示す。図4において、破線は補正前を示し、実線は補正後を示す。図4に示すように、実施の形態によれば、水分含有率の影響が抑制され、対象成分濃度を正確に測定することができるようになっている。
【0049】
以上に説明したように、本発明によれば、測定部位の厚さを測定し、測定した厚さにより検出部が検出した音響信号を補正するようにしたので、光音響法による人体内のグルコースの測定における、人体の経時変化による測定精度の低下が抑制できるようになる。
【0050】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0051】
101…光照射部、102…検出部、103…厚測定部、104…補正部、105…光源部、106…パルス制御部、121…ビーム光、151…測定部位。
図1
図2
図3
図4