(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217611(P2019-217611A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】研削砥石の目立て方法及び目立て用ウェーハ
(51)【国際特許分類】
B24B 53/02 20120101AFI20191129BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
B24B53/02
B24B53/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-118723(P2018-118723)
(22)【出願日】2018年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】廣沢 俊一郎
【テーマコード(参考)】
3C047
【Fターム(参考)】
3C047BB01
3C047BB19
3C047EE04
(57)【要約】
【課題】 目立て作業に使用するダミーウェーハの使用枚数を減らすことができ、効率的に研削砥石の目立て作業を実施できる研削砥石の目立て方法を提供することである。
【解決手段】 被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、複数の研削砥石が環状に配置された研削ホイールを該保持面と垂直な回転軸を有するスピンドルに装着し該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削ユニットと、該研削ユニットを該回転軸方向に研削送りする研削送りユニットと、を備えた研削装置を用いた研削砥石の目立て方法であって、
該スピンドルを回転させながら該研削ユニットを研削送りして、該チャックテーブルに保持された被加工物を、該チャックテーブルを回転させずに研削し、該被加工物の表面に円弧状の研削溝を形成することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、複数の研削砥石が環状に配置された研削ホイールを該保持面と垂直な回転軸を有するスピンドルに装着し該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削ユニットと、該研削ユニットを該回転軸方向に研削送りする研削送りユニットと、を備えた研削装置を用いた研削砥石の目立て方法であって、
該スピンドルを回転させながら該研削ユニットを研削送りして、該チャックテーブルに保持された被加工物を、該チャックテーブルを回転させずに研削し、該被加工物の表面に円弧状の研削溝を形成することを特徴とする研削砥石の目立て方法。
【請求項2】
該被加工物に該円弧状の研削溝を複数本形成し、該研削砥石の目立て状態を制御する請求項1記載の研削砥石の目立て方法。
【請求項3】
研削することで研削砥石を目立てするための目立て用ウェーハであって、
請求項1又は2記載の方法で円弧状の研削溝が形成された目立て用ウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削砥石の研削面を目立てする研削砥石の目立て方法及び目立て用ウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等各種板状の被加工物を研削する際に、複数の研削砥石がホイール基台に環状に配設された研削ホイールを用いる。研削砥石は、ダイヤモンド砥粒をレジンボンドやビトリファイドボンド、メタルボンド等で固めて形成されており、砥粒がボンドから部分的に突出した所謂目立てされた状態であることで良好な研削結果が得られる。
【0003】
そのため、研削前に製品以外の被加工物を研削することでボンドを消耗させて砥粒を突出させるドレッシング作業と、突出状態を製品に最適な状態にするための目立て作業(プリ研削又はプリカット)を行う必要がある。
【0004】
通常目立て作業は、製品と同様な材質の物を研削して実施するので、例えばシリコンウェーハが製品の場合、ダミーシリコンウェーハを複数枚研削して目立て作業を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−221360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ダミーシリコンウェーハを複数枚研削して目立て作業を実施すると、ダミーシリコンウェーハを複数枚準備するためのコストが掛かるという課題がある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、目立て作業に使用するダミーウェーハの使用枚数を減らすことができ、効率的に研削砥石の目立て作業を実施できる研削砥石の目立て方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明によると、被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、複数の研削砥石が環状に配置された研削ホイールを該保持面と垂直な回転軸を有するスピンドルに装着し該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削ユニットと、該研削ユニットを該回転軸方向に研削送りする研削送りユニットと、を備えた研削装置を用いた研削砥石の目立て方法であって、該スピンドルを回転させながら該研削ユニットを研削送りして、該チャックテーブルに保持された被加工物を、該チャックテーブルを回転させずに研削し、該被加工物の表面に円弧状の研削溝を形成することを特徴とする研削砥石の目立て方法が提供される。
【0009】
好ましくは、被加工物に円弧状の研削溝を複数本形成し、研削砥石の目立て状態を制御する。
【0010】
請求項3記載の発明によると、研削することで研削砥石を目立てするための目立て用ウェーハであって、1本又は複数本の円弧状の研削溝が形成された目立て用ウェーハが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の研削砥石の目立て方法によると、被加工物を保持したチャックテーブルを回転させずに被加工物の研削を行うため、研削砥石にかかる負荷が高く、研削体積が少なくても高い目立て効果が得られるので、目立て作業に使用する被加工物の枚数を減らすことができる。また、目立て具合に合わせて円弧状の研削溝を1枚の被加工物に複数本形成できるので、被加工物の使用量を増やさずに目立て研削量を調整できるという効果もある。
【0012】
更に、本発明の目立て方法に使用した被加工物は環状の研削溝が形成されており、平坦な被加工物に比べて研削負荷が高いので、被加工物を保持したチャックテーブルを回転させると共に研削砥石を研削させて目立て作業を実施する通常の目立て作業時の被加工物として用いることもできるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の研削方法を示す一部断面側面図である。
【
図3】本発明の目立て方法を示す模式的平面図である。
【
図4】
図4(A)は本発明の目立て方法により円弧状の研削溝を1本形成した後のダミーシリコンウェーハの平面図、
図4(B)は円弧状の研削溝を複数本形成した後のダミーシリコンウェーハの平面図である。
【
図5】円弧状の研削溝を複数本有するダミーシリコンウェーハを使用してチャックテーブルと研削ホイールとを共に回転させて通常の目立て作業を実施している様子を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明の目立て方法を実施するのに適した研削装置2の外観斜視図が示されている。4は研削装置2のベースであり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール8が固定されている。
【0015】
この一対のガイドレール8に沿って研削ユニット(研削手段)10が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット10は、スピンドルハウジング12と、スピンドルハウジング12を保持する支持部14を有しており、支持部14が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台16に取り付けられている。
【0016】
研削ユニット10は、スピンドルハウジング12中に回転可能に収容されたスピンドル18と、スピンドル18を回転駆動するモータ20と、スピンドル18の先端に固定されたホイールマウント22と、ホイールマウント22に着脱可能に装着された研削ホイール24とを含んでいる。
【0017】
研削装置2は、研削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ30とパルスモータ32とから構成される研削送りユニット34を備えている。パルスモータ32を駆動すると、ボールねじ30が回転し、移動基台16が上下方向に移動される。
【0018】
ベース4の上面には凹部4aが形成されており、この凹部4aにチャックテーブル機構36が配設されている。チャックテーブル機構36はチャックテーブル38を有し、図示しない移動機構によりウェーハ着脱位置Aと、研削ユニット10に対向する研削位置Bとの間でY軸方向に移動される。40,42は蛇腹である。ベース4の前方側には、研削装置2のオペレータが研削条件等を入力する操作パネル44が配設されている。
【0019】
図2を参照すると、被加工物として表面にLSI等のデバイスが形成されていないダミーシリコンウェーハ11を使用して、本発明の方法により研削砥石28の目立て方法を実施している様子を示す一部断面側面図が示されている。
【0020】
チャックテーブル38はダミーシリコンウェーハ11を保持面で保持し、ホイールマウント22に着脱可能に装着された研削ホイール24は、環状のホイール基台26と、ホイール基台26の下端に環状に固着された複数の研削砥石28とから構成される。研削砥石28は、ダイヤモンド砥粒をレジンボンドやビトリファイドボンド、メタルボンド等で固めて形成される。
【0021】
スピンドル18はチャックテーブル38の保持面に対して垂直な回転軸回りに回転される。研削送りユニット34は研削ユニット10をスピンドル18の回転軸方向に研削送りする。
【0022】
本発明の研削砥石の目立て方法は、ダミーシリコンウェーハ11を保持したチャックテーブル38を回転させずに、スピンドル18を矢印b方向に例えば6000rpmで回転させながら研削送りユニット34で研削ユニット10を矢印Z方向に研削送りして、チャックテーブル38に保持されたダミーシリコンウェーハ11を研削する。即ち、本発明の研削砥石の目立て方法では、チャックテーブル38を回転させずに研削砥石28の目立て作業を実施するのが大きな特徴である。
【0023】
図3は本発明の研削砥石の目立て方法を模式的に示す平面図である。本発明の研削砥石の目立て方法では、チャックテーブル38を回転させずに研削ホイール24のみを矢印b方向に回転させて、ダミーシリコンウェーハ11を研削して研削砥石28の目立てを行うため、ダミーシリコンウェーハ11には円弧状の研削溝13が形成される。
【0024】
このようにダミーシリコンウェーハ11を回転させずに研削して研削砥石28の目立てを行うため、研削砥石28にかかる負荷が高く、ダミーシリコンウェーハ11の研削体積が少なくても高い目立て効果を得ることができる。従って、研削砥石28の目立て作業に使用するダミーシリコンウェーハ11の枚数を減らすことができる。
【0025】
図4(A)は研削砥石28の目立て作業を実施して円弧状の研削溝13を1本形成した後のダミーシリコンウェーハ11の平面図である。このように、研削砥石28の1回の目立て作業では円弧状の研削溝13を1本形成するだけなので、ダミーシリコンウェーハ11を保持したチャックテーブル38を円周方向に僅かばかり回転させて研削砥石28の目立て作業を複数回実施することができる。
【0026】
即ち、研削砥石28の目立て具合に合わせて円弧状の研削溝13を1枚のダミーシリコンウェーハ11に、
図4(B)に示すように、複数本形成できるので、ダミーシリコンウェーハ11の使用量を増やさずに目立て研削量を調整することができる。
図4(B)は、1枚のダミーシリコンウェーハ11に円弧状の研削溝13を複数本形成した後のダミーシリコンウェーハ11の平面図である。
【0027】
本発明の研削砥石の目立て方法に使用したダミーシリコンウェーハ11は円弧状の研削溝13が1本乃至複数本形成されており、表面が凹凸になっている。そのため、表面の凹凸に研削砥石が高速で衝突しつつ研削を実施するので、平坦なダミーシリコンウェーハ11を研削するのに比べて研削負荷が高いので、チャックテーブル38及び研削ホイール24共に回転しながら研削砥石28の目立てを実施する従来の目立て方法の目立て用ウェーハとしても用いることができる。
【0028】
図5を参照すると、複数本の円弧状の研削溝13が形成されたダミーシリコンウェーハ1を使用して従来方法の目立て作業を実施している様子を示す一部断面側面図が示されている。
【0029】
この従来の目立て方法では、複数本の円弧状の研削溝13が形成されたダミーシリコンウェーハ11を吸引保持したチャックテーブル38を矢印a方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール24を矢印b方向に例えば6000rpmで回転させながら研削送りユニット34で研削ホイール34を矢印Z方向に研削送りして、ダミーシリコンウェーハ11の研削を実施する。
【0030】
ダミーシリコンウェーハ11には複数本の円弧状の研削溝13が形成されているため、平坦なウェーハに比べて研削負荷が高いので、研削砥石28の目立て作業を効率的に実施することができる。また、研削負荷が高いため砥石の消耗も多いのを利用して、目立てだけではなく、通常は砥粒を含むドレッシングボードを研削して実施するドレッシングでも、複数本の円弧状の研削溝13が形成されたダミーシリコンウェーハ1をドレッシングボードの代わりに利用する事も出来る。
【0031】
尚、上述した実施形態では、研削装置2で研削する被加工物としてシリコンウェーハを使用するものとして説明したので、研削砥石28の目立て作業にはダミーシリコンウェーハを採用したが、研削対象となる被加工物が他の材質から成る場合には、研削対象の被加工物と同一の材質の被加工物を目立て用ウェーハとして使用するのが好ましい。
【符号の説明】
【0032】
10 研削ユニット
11 ダミーシリコンウェーハ
13 円弧状の研削溝
18 スピンドル
22 ホイールマウント
24 研削ホイール
26 ホイール基台
28 研削砥石
34 研削送りユニット
38 チャックテーブル