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特開2019-217668ドライマイカテープ、絶縁物、回転電機用コイル及び回転電機用コイルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217668(P2019-217668A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】ドライマイカテープ、絶縁物、回転電機用コイル及び回転電機用コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20191129BHJP
   H01B 17/60 20060101ALI20191129BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20191129BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   H01B17/60 B
   H01F5/00 D
   H01F41/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-115843(P2018-115843)
(22)【出願日】2018年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 遼
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 晃一
【テーマコード(参考)】
4F100
5E062
5G333
【Fターム(参考)】
4F100AA14A
4F100AB18
4F100AC05B
4F100AD06A
4F100AG00
4F100AK01A
4F100AK53A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100DG11
4F100EH46
4F100EJ17
4F100EJ24
4F100EJ42
4F100EJ82
4F100GB41
4F100JB12
4F100JB13
4F100JG04C
4F100JJ01
4F100JK17
4F100YY00A
5E062EE08
5E062FF02
5G333AA03
5G333AB07
5G333BA03
5G333CB11
5G333CB12
5G333DA11
5G333DA26
(57)【要約】
【課題】柔軟性に優れ、高熱伝導性を示す絶縁層を形成可能なドライマイカテープの提供。
【解決手段】ドライマイカテープは、裏打ち材と、窒化ホウ素とバインダ樹脂とを含むバインダ材と、を含有する窒化ホウ素含有樹脂層と、前記窒化ホウ素含有樹脂層の面上に設けられたマイカを含有するマイカ層と、を有し、前記バインダ樹脂の含有率が、前記窒化ホウ素含有樹脂層及び前記マイカ層の合計に対して9質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏打ち材と、窒化ホウ素とバインダ樹脂とを含むバインダ材と、を含有する窒化ホウ素含有樹脂層と、
前記窒化ホウ素含有樹脂層の面上に設けられたマイカを含有するマイカ層と、を有し、
前記バインダ樹脂の含有率が、前記窒化ホウ素含有樹脂層及び前記マイカ層の合計に対して9質量%以下であるドライマイカテープ。
【請求項2】
前記バインダ樹脂が、エポキシ樹脂を含む請求項1に記載のドライマイカテープ。
【請求項3】
前記バインダ樹脂の含有率が、前記窒化ホウ素含有樹脂層及び前記マイカ層の合計に対して5質量%〜9質量%である請求項1又は請求項2に記載のドライマイカテープ。
【請求項4】
前記窒化ホウ素の含有率が、前記窒化ホウ素含有樹脂層及び前記マイカ層の合計に対して10質量%〜25質量%である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のドライマイカテープ。
【請求項5】
前記裏打ち材の平均厚みが、75μm以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のドライマイカテープ。
【請求項6】
被絶縁体と、
前記被絶縁体の少なくとも一部を覆う請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のドライマイカテープの積層体と、前記積層体に含浸された硬化性樹脂組成物の硬化物と、を含む絶縁層と、
を有する絶縁物。
【請求項7】
コイル導体の外周の少なくとも一部を覆う、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のドライマイカテープの積層体を形成する工程と、
前記積層体に硬化性樹脂組成物を含浸する工程と、
前記硬化性樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成する工程と、を有する回転電機用コイルの製造方法。
【請求項8】
コイル導体と、前記コイル導体の外周の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁層と、を有し、
前記絶縁層が、前記コイル導体の外周の少なくとも一部を覆う請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のドライマイカテープの積層体と、前記積層体に含浸された硬化性樹脂組成物の硬化物とを含む回転電機用コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライマイカテープ、絶縁物、回転電機用コイル及び回転電機用コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁物に含まれる絶縁層を形成するために、プリプレグマイカテープ(レジンリッチマイカテープともいう。)又はドライマイカテープ(VPI(Vacuum Pressure Impregnation)マイカテープともいう。)が用いられる。プリプレグマイカテープは、主として、裏打ち材と、マイカペーパーと、マイカペーパーに予め含浸される硬化性樹脂等を含む硬化性樹脂組成物と、を含んで構成される。一方、ドライマイカテープは、主として、裏打ち材と、マイカペーパーと、裏打ち材とマイカペーパーとを一体的に結合する接着層と、を含んで構成される。
プリプレグマイカテープを用いて絶縁物に含まれる絶縁層を形成する場合、絶縁物の絶縁性を要する箇所にプリプレグマイカテープを巻き付け、加圧しながら加熱してマイカペーパーに予め含浸される硬化性樹脂組成物を硬化することで絶縁層が形成される。
一方、ドライマイカテープを用いて絶縁物に含まれる絶縁層を形成する場合、絶縁物の絶縁性を要する箇所にドライマイカテープを巻き付け、そのドライマイカテープに硬化性樹脂組成物を含浸させ、その後、加熱するか又は加圧しながら加熱してドライマイカテープ中に含浸させた硬化性樹脂組成物を硬化することで絶縁層が形成される。
絶縁物に含まれる絶縁層を形成するためにプリプレグマイカテープを用いると、巻き付けられたマイカテープに硬化性樹脂組成物を含浸させる必要がないため、製造工程が簡易になる傾向にある。一方、絶縁物に含まれる絶縁層を形成するためにドライマイカテープを用いると、硬化性樹脂組成物の種類を任意に選択できるため、絶縁層の構成を設計する際の自由度が高い傾向にある。
【0003】
また、絶縁層を備えるコイルの外側に水素ガス又は空気を通して冷却する間接冷却の方式を採用する発電機の分野では特に、コイルの絶縁層の厚み方向の高熱伝導化が望まれている。
【0004】
プリプレグマイカテープ又はドライマイカテープを用いて形成される絶縁層の熱伝導率を高めるためには、多くの場合、マイカ及び接着層に含まれるバインダ樹脂よりも熱伝導率の高い無機フィラーを、テープの中に加える手法が用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、マイカ層の中に無機フィラーとして熱伝導率の高いアルミナが充填されたマイカテープが開示されており、このマイカテープを用いることで0.32W/(m・K)〜0.36W/(m・K)の熱伝導率を有するマイカ板が得られるとされている。
【0006】
また、特許文献2には、通常のマイカテープの一方の面上に、さらに、熱伝導率の高い無機フィラーを含有する熱伝導層が付与されたマイカ基材シート状体が開示されており、0.35W/(m・K)〜0.48W/(m・K)の熱伝導率を有する絶縁層が得られるとされている。
【0007】
また、特許文献3には、織物層とマイカ層とを含む複合体テープの織物層にHTC(高熱伝導性)粒子を浸透させ、織物層を通して複合体テープの中に含浸樹脂を含浸させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−199562号公報
【特許文献2】特開2002−93257号公報
【特許文献3】特表2009−532242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまでのマイカテープの高熱伝導化の手法としては、マイカ層、裏打ち材、又は樹脂中にマイカ及び樹脂よりも高い熱伝導率を有する無機フィラーを充填する手法が一般的である。しかし、特許文献1〜3に記載されている手法には、それぞれ課題があると考えられる。
【0010】
特許文献1では、マイカ層に無機フィラーを含有させるためにマイカ片と無機フィラー粒子とを混合したスラリーを抄紙機等により抄造する手法が用いられる。しかし、無機フィラー粒子が抄紙機の網目から抜け落ちやすいため、無機フィラーを含有するマイカペーパーの抄造作業は困難であり、そのため、製造コストが上がる傾向にある。
【0011】
また、通常、無機フィラー粒子とマイカの比重等の違いで、均一に無機フィラーを含有するマイカペーパーを得ることは困難である。そのため、マイカ層内にボイド、内部剥離等が起きやすく、テープの絶縁信頼性の低下が生じやすく、熱伝導率の向上は難しい。特許文献1では、マイカ層に無機フィラーを充填したマイカテープを用いてマイカ板を形成しているが、熱伝導率は0.4W/(m・K)までも達成できていない。
【0012】
特許文献2では、通常のマイカテープにさらに無機フィラーを含有する熱伝導層を付与することで、0.4W/(m・K)以上の熱伝導率を有する絶縁層を形成可能なマイカテープが得られたが、厚みが0.22mm〜0.32mmの厚いテープになってしまう。
【0013】
コイル等へのテーピング作業の容易性の観点から、マイカテープには柔軟性が求められる。熱伝導層を厚くすればするほど、マイカテープを用いて形成される絶縁層の熱伝導率は上昇するが、厚み0.25mm以上のテープの場合、テープが硬くて、コイルに巻き付ける時にしわ又はひびが起きやすく、実機に適用するのは困難である。
【0014】
また、熱伝導層が厚くなると、硬化性樹脂組成物を注入する過程では、熱伝導層が障害になって硬化性樹脂組成物がマイカテープに浸透しにくいと考えられる。
【0015】
特許文献3では、含浸時に、マイカテープの織物層と、さらにこの織物層を通してマイカ層とにHTC粒子を浸透させる手法を用いているため、マイカ層にHTC粒子を浸透させるためにはナノレベルの非常に小さいHTC粒子を使用しなくてはならない。しかし、小さいHTC粒子を使用する場合、パーコレーション(伝熱路)を確保することが難しくなることがあり、熱伝導率の向上が困難になることが知られている。
【0016】
また、特許文献3では、HTC粒子を乾燥充填させる手法も用いられている。いわゆるバインダ等により担持されていない粒子がマイカテープから粉落ちするのを防ぐために、マイカテープを樹脂バックコーティングしている。そうすると、熱抵抗層が形成されることとなり、熱伝導率の向上が難しいと考えられる。
【0017】
さらには、高熱伝導性を示す絶縁層を有するコイルの開発が待たれている。
【0018】
本発明の一態様は、上記事情に鑑み、柔軟性に優れ、高熱伝導性を示す絶縁層を形成可能なドライマイカテープ並びにこのドライマイカテープを用いた絶縁物、回転電機用コイル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を達成するための具体的な手段は以下の通りである。
<1> 裏打ち材と、窒化ホウ素とバインダ樹脂とを含むバインダ材と、を含有する窒化ホウ素含有樹脂層と、
前記窒化ホウ素含有樹脂層の面上に設けられたマイカを含有するマイカ層と、を有し、
前記バインダ樹脂の含有率が、前記窒化ホウ素含有樹脂層及び前記マイカ層の合計に対して9質量%以下であるドライマイカテープ。
<2> 前記バインダ樹脂が、エポキシ樹脂を含む<1>に記載のドライマイカテープ。
<3> 前記バインダ樹脂の含有率が、前記窒化ホウ素含有樹脂層及び前記マイカ層の合計に対して5質量%〜9質量%である<1>又は<2>に記載のドライマイカテープ。
<4> 前記窒化ホウ素の含有率が、前記窒化ホウ素含有樹脂層及び前記マイカ層の合計に対して10質量%〜25質量%である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のドライマイカテープ。
<5> 前記裏打ち材の平均厚みが、75μm以下である<1>〜<4>のいずれか1項に記載のドライマイカテープ。
<6> 被絶縁体と、
前記被絶縁体の少なくとも一部を覆う<1>〜<5>のいずれか1項に記載のドライマイカテープの積層体と、前記積層体に含浸された硬化性樹脂組成物の硬化物と、を含む絶縁層と、
を有する絶縁物。
<7> コイル導体の外周の少なくとも一部を覆う、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のドライマイカテープの積層体を形成する工程と、
前記積層体に硬化性樹脂組成物を含浸する工程と、
前記硬化性樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成する工程と、を有する回転電機用コイルの製造方法。
<8> コイル導体と、前記コイル導体の外周の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁層と、を有し、
前記絶縁層が、前記コイル導体の外周の少なくとも一部を覆う<1>〜<5>のいずれか1項に記載のドライマイカテープの積層体と、前記積層体に含浸された硬化性樹脂組成物の硬化物とを含む回転電機用コイル。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、柔軟性に優れ、高熱伝導性を示す絶縁層を形成可能なドライマイカテープ並びにこのドライマイカテープを用いた絶縁物、回転電機用コイル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0022】
本開示において、平均厚みは、マイクロメーター(MDC−25MX,株式会社ミツトヨ)を用いて測定対象について5点の厚みを測定し、その算術平均として求める。
【0023】
<ドライマイカテープ>
本開示のドライマイカテープは、裏打ち材と、窒化ホウ素とバインダ樹脂とを含むバインダ材と、を含有する窒化ホウ素含有樹脂層と、前記窒化ホウ素含有樹脂層の面上に設けられたマイカを含有するマイカ層と、を有し、前記バインダ樹脂の含有率が、前記窒化ホウ素含有樹脂層及び前記マイカ層の合計に対して9質量%以下である。
バインダ樹脂の含有率を窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対して9質量%以下とすることで、柔軟性に優れ、高熱伝導性を示す絶縁層を形成可能なドライマイカテープを得ることが可能となる。
【0024】
(ドライマイカテープの層構成)
本開示のドライマイカテープの層構成は、裏打ち材と、窒化ホウ素とバインダ樹脂とを含むバインダ材と、を含有する窒化ホウ素含有樹脂層と、窒化ホウ素含有樹脂層の面上に設けられたマイカを含有するマイカ層と、を有するものであればよく、必要に応じてその他の層を有していてもよい。必要に応じて設けられるその他の層としては、ドライマイカテープの最表面に設けられる保護層(保護フィルム)、接着層等が挙げられる。
【0025】
−窒化ホウ素含有樹脂層−
窒化ホウ素含有樹脂層は、裏打ち材と、窒化ホウ素とバインダ樹脂とを含むバインダ材と、を含有する。
バインダ材の含有率は特に限定されるものではなく、窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対して5質量%〜45質量%の範囲であることが好ましく、10質量%〜40質量%の範囲であることがより好ましく、15質量%〜37質量%の範囲であることがさらに好ましい。バインダ材の占める割合が窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対して5質量%以上であれば、熱伝導率の向上効果が大きくなる傾向にある。一方、バインダ材の占める割合が窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対して45質量%以下であれば、ドライマイカテープの厚みが厚くなりすぎることが防止される傾向にある。さらに、硬化性樹脂組成物を含浸させる際に、含浸が進みやすい傾向にある。
【0026】
−マイカ層−
マイカ層は、マイカを含有する。マイカ層は、必要に応じてマイカ以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、バインダ樹脂、硬化剤、硬化触媒及び各種添加剤を挙げることができる。マイカ層がマイカ以外のその他の成分を含有する場合、その他の成分は、窒化ホウ素含有樹脂層に含有されるバインダ材の成分がマイカ層に移行したものであってもよい。
マイカ層のマイカ量は、特に限定されるものではなく、100g/m〜230g/mの範囲であることが好ましく、120g/m〜200g/mの範囲であることがより好ましい。マイカ層のマイカ量が100g/m以上であれば、絶縁性の低下が抑制される傾向にある。マイカ層のマイカ量が230g/m以下であれば、ドライマイカテープが厚くなったり、熱伝導率が低くなったりすることが抑制される傾向にある。
【0027】
マイカ層中には、マイカ以外のその他の無機フィラー(窒化ホウ素等)が含有されていないことが好ましい。マイカ層中に含有される無機フィラーの全量に占めるマイカ以外のその他の無機フィラーの含有率は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0028】
マイカ層中には、マイカ以外のフィブリットが含有されていないことが好ましい。マイカ層に占めるフィブリットの含有率は、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。マイカ層に占めるフィブリットの含有率が1質量%以下であれば、熱伝導率の低下が抑制される傾向にある。
【0029】
マイカ層中のバインダ樹脂の含有率は、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
(ドライマイカテープの構成材料)
以下、本開示のドライマイカテープを構成する裏打ち材、バインダ樹脂、窒化ホウ素、マイカ及び必要に応じて用いられるその他の材料について説明する。
【0031】
−裏打ち材−
裏打ち材としては、例えば、有機材料で構成される繊維を全部又は一部用いて得られるクロス(cloth)を用いてもよい。クロスを得るのに使用される有機材料としては、アラミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル等が挙げられる。有機材料で構成される繊維以外の他の繊維として、ガラス繊維等の無機繊維を用いてもよい。ガラス繊維を用いたガラスクロスと有機高分子フィルムとを併用してもよい。
本開示においては、裏打ち材としてガラスクロスが好ましく用いられる。裏打ち材としてガラスクロスを用いることで、ガラスクロスの織目がバインダ材を構成する窒化ホウ素とバインダ樹脂で埋められ、ガラスクロスが窒化ホウ素含有樹脂層中に含まれ、バインダ材と一体化する。ガラスクロスとバインダ材とが一体化することは、熱伝導率の向上に有利である。
【0032】
本開示で用いられるガラスクロスの一部は、有機材料で構成される繊維が用いられていてもよい。
ガラスクロスの一部を構成する、有機材料で構成される繊維としては、特に限定されるものではなく、アラミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル等の繊維が挙げられる。有機材料で構成される繊維を一部用いる場合には、縦糸、横糸又はその両方として用いてもよい。
【0033】
裏打ち材の平均厚みは、特に限定されるものではなく、75μm以下であることが好ましく、30μm〜75μmであることがより好ましく、35μm〜50μmであることがさらに好ましい。裏打ち材の平均厚みが30μm以上であれば、ドライマイカテープ中に含浸させた硬化性樹脂組成物を加圧しながら加熱して硬化する際に、窒化ホウ素含有樹脂層が裏打ち材の厚みに追従して薄くなりすぎるのが抑制されるため、熱伝導率の低下が抑制される傾向にある。裏打ち材の平均厚みが75μm以下であれば、ドライマイカテープが厚くなり過ぎることが防止され、テーピングのときにしわ又はひびが入りにくくなる傾向にある。
【0034】
裏打ち材は、表面処理されたものでもよい。裏打ち材の表面処理方法としては、例えば、シランカップリング剤による処理が挙げられる。
【0035】
−窒化ホウ素−
バインダ材に含有される窒化ホウ素としては、特に限定されるものではなく、六方晶窒化ホウ素(h−BN)、立方晶窒化ホウ素(c−BN)、ウルツ鉱型窒化ホウ素等が挙げられる。これらの中でも、六方晶窒化ホウ素(h−BN)が好ましい。窒化ホウ素は、鱗片状に形成されている窒化ホウ素の一次粒子であっても、このような一次粒子が凝集されて形成された二次粒子であってもよい。
【0036】
窒化ホウ素の平均粒子径は、特に限定されるものではなく、1μm〜40μmであることが好ましく、5μm〜20μmであることがより好ましく、5μm〜10μmであることがさらに好ましい。
窒化ホウ素の平均粒子径が1μm以上であると、熱伝導率及び絶縁耐電圧がより向上する傾向がある。窒化ホウ素の平均粒子径が40μm以下であると、粒子形状の異方性による熱伝導率の異方性が大きくなりすぎることが抑制できる。
【0037】
窒化ホウ素の平均粒子径は、レーザー回折散乱方式粒度分布測定装置(マイクロトラック MT3000II、日機装株式会社)を用いることで測定可能である。純水中に窒化ホウ素粉末を投入した後に、超音波分散機で分散する。この分散液の粒子径分布を測定することで窒化ホウ素の粒子径分布が測定される。粒子径分布に基づいて、平均粒子径は、小径側からの体積累積50%に対応する粒子径として求められる。
【0038】
本開示においては、窒化ホウ素の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。なお、窒化ホウ素を2種類以上併用するとは、例えば、同じ結晶構造で平均粒子径が異なる窒化ホウ素を2種類以上用いる場合、平均粒子径が同じで結晶構造の異なる窒化ホウ素を2種類以上用いる場合並びに平均粒子径及び結晶構造の異なる窒化ホウ素を2種類以上用いる場合が挙げられる。
【0039】
窒化ホウ素の含有率は、特に限定されるものではなく、ドライマイカテープに含有されるバインダ材に対し20体積%〜50体積%であることが好ましく、25体積%〜45体積%であることがより好ましい。窒化ホウ素の含有率がバインダ材に対し20体積%以上であれば、ドライマイカテープを用いて形成される絶縁層の熱伝導率がより向上する傾向にある。窒化ホウ素の含有率がバインダ材に対し50体積%以下であれば、窒化ホウ素のバインダ樹脂への充填が困難になりにくい傾向にある。
【0040】
また、窒化ホウ素の含有率は、特に限定されるものではなく、窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対して10質量%〜25質量%であることが好ましく、15質量%〜25質量%であることがより好ましく、17質量%〜23質量%であることがさらに好ましい。窒化ホウ素の含有率が窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対し10質量%以上であれば、ドライマイカテープを用いて形成される絶縁層の熱伝導率がより向上する傾向にある。窒化ホウ素の含有率が窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対し25質量%以下であれば、窒化ホウ素のバインダ樹脂への充填が困難になりにくい傾向にある。
【0041】
バインダ材に含有される窒化ホウ素としては、カップリング剤、熱処理又は光処理により表面処理されたものでもよい。
【0042】
例えば、熱処理の場合、窒化ホウ素を適切な高温(例えば、250℃〜800℃)で1時間〜3時間加熱することにより、窒化ホウ素の表面状態が改質され、窒化ホウ素とバインダ樹脂との混合時における親和性が向上する。そのため、窒化ホウ素とバインダ樹脂とを含む塗布ワニスの粘度が下がり、塗布しやすくなる。なお、この場合、裏打ち材としてガラスクロスを用いると、窒化ホウ素はガラスクロスの織目の隙間に充填されやすくなる。
【0043】
本開示においては、窒化ホウ素含有樹脂層に窒化ホウ素以外のその他の無機フィラーが含まれていてもよい。その他の無機フィラーとしては、アルミナ、シリカ、マイカ等が挙げられる。窒化ホウ素含有樹脂層に窒化ホウ素以外のその他の無機フィラーが含まれる場合、窒化ホウ素の含有率は、無機フィラーに対し90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。なお、本開示においては、窒化ホウ素含有樹脂層に含まれる無機フィラーの全てが窒化ホウ素であることが好ましい。
【0044】
−バインダ樹脂−
バインダ材に含有されるバインダ樹脂は特に限定されるものではない。
本開示においては、バインダ樹脂として硬化性樹脂を用いることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びシリコーン樹脂が挙げられる。接着性及び電気絶縁性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0045】
バインダ樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0046】
また、エポキシ樹脂の数平均分子量としては特には制限されず、例えば、流動性の観点から、100〜100000であることが好ましく、200〜50000であることがより好ましく、300〜10000であることがさらに好ましい。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
エポキシ樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)を用いて定法に従い測定する。
【0047】
〔測定条件〕
ポンプ:L−6000(株式会社日立製作所)
カラム:TSKgel(登録商標) G4000HHR+G3000HHR+G2000HXL(東ソー株式会社)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(クロマトグラフィー用安定剤不含、和光純薬工業株式会社)
試料濃度:5g/L(テトラヒドロフラン可溶分)
注入量:100μL
流速:1.0mL/分
検出器:示差屈折率計RI−8020(東ソー株式会社)
分子量較正標準物質:標準ポリスチレン
データ処理装置:GPC−8020(東ソー株式会社)
【0048】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されるものではなく、130g/eq〜500g/eqであることが好ましく、135g/eq〜400g/eqであることがより好ましく、140g/eq〜300g/eqであることがさらに好ましい。
エポキシ当量は、精秤したエポキシ樹脂をメチルエチルケトン等の溶媒に溶解させ、酢酸と臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加えた後、過塩素酸酢酸標準液によって電位差滴定することにより測定される。この滴定には、指示薬を用いてもよい。
【0049】
バインダ樹脂の含有率は特に限定されるものではなく、バインダ材に対して20質量%〜40質量%であることが好ましく、25質量%〜35質量%であることがより好ましい。バインダ樹脂の含有率がバインダ材に対して20質量%以上であれば、窒化ホウ素含有樹脂層とマイカ層との接着性が向上する傾向がある。一方、バインダ樹脂の含有率がバインダ材に対して40質量%以下であれば、高熱伝導率化に寄与する傾向がある。
【0050】
また、バインダ樹脂の含有率は、窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対して9質量%以下であり、5質量%〜9質量%であることが好ましく、7質量%〜9質量%であることがより好ましい。
【0051】
−マイカ−
マイカ層に含有されるマイカとしては、未焼成硬質マイカ、焼成硬質マイカ、未焼成軟質マイカ、焼成軟質マイカ、合成マイカ、フレークマイカ等を用いることができる。これらの中でも、価格及び入手のしやすさの観点からマイカとして未焼成硬質マイカを用いることが好ましい。
【0052】
本開示においては、マイカの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。なお、マイカを2種類以上併用するとは、例えば、同じ成分で平均粒子径が異なるマイカを2種類以上用いる場合、平均粒子径が同じで成分の異なるマイカを2種類以上用いる場合並びに平均粒子径及び成分の異なるマイカを2種類以上用いる場合が挙げられる。
【0053】
−その他の成分−
バインダ材に含有されてもよいその他の成分としては、例えば、硬化剤、硬化触媒及び各種添加剤を挙げることができる。
【0054】
(硬化剤)
バインダ樹脂として硬化性樹脂を用いた場合、バインダ材には、硬化性成分として硬化性樹脂に加えて少なくとも1種の硬化剤を含んでもよい。前記硬化剤としては特に制限はなく、硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択できる。
特に、硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としてはエポキシ樹脂用硬化剤として通常用いられる硬化剤から適宜選択して用いることができる。具体的には、ジシアンジアミド、芳香族ジアミン等のアミン硬化剤;フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール樹脂硬化剤などを挙げることができる。
硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、該硬化剤とエポキシ樹脂の割合は、当量比(硬化剤/エポキシ樹脂)で0.8〜1.2とすることが硬化性及び硬化物の電気特性の観点から好ましい。
【0055】
(硬化触媒)
バインダ樹脂として硬化性樹脂を用いた場合、バインダ材には、硬化性樹脂の硬化反応を加速させる目的で硬化触媒を含有してもよい。硬化触媒としては特に制限はなく、バインダ樹脂及び必要により用いられる硬化剤の種類に応じて適宜選択して用いることができる。硬化触媒としては、トリメチルアミン等の第3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、錫、亜鉛、コバルト等の有機金属塩、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のルイス酸のアミン錯体、有機ホスフィン化合物等の有機リン化合物などを挙げることができる。
硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合の硬化触媒の含有率は、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂及び必要に応じて用いられる硬化剤の合計量に対して、0.01質量%〜5質量%の範囲が一般的である。
【0056】
(添加剤)
バインダ材には、各種添加剤を必要に応じてさらに含むことができる。その他の添加剤としては、カップリング剤、エラストマ、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、難燃剤、増粘剤等の樹脂組成物に一般に用いられる各種添加剤を挙げることができる。バインダ材が添加剤をさらに含有する場合、これらの添加剤の含有量は特に制限されない。
【0057】
<ドライマイカテープの製造方法>
ドライマイカテープは、いかなる工程を経て製造されたものであってもよく、従来から公知の製造方法を適用することができる。
ドライマイカテープの製造方法の一例としては、バインダ樹脂と窒化ホウ素と必要に応じて用いられるその他の材料を含むバインダ材が溶剤に混合された窒化ホウ素混合液(BN含有樹脂ワニス)を準備する窒化ホウ素混合液準備工程と、マイカペーパーの一方の面上に裏打ち材を重ね、裏打ち材側から窒化ホウ素混合液を塗布する塗布工程と、を経ることでドライマイカシートを作製し、ドライマイカシートを所望の幅に裁断してドライマイカテープを得る方法が挙げられる。
【0058】
バインダ樹脂の中に窒化ホウ素を充填するために、溶剤でバインダ樹脂を希釈してもよい。用いられる溶剤としては、通常用いられる有機溶剤から適宜選択される。具体的には、メチルエチルケトン、トルエン、メタノール、シクロヘキサノン等の溶剤を挙げることができる。
【0059】
塗布工程において窒化ホウ素混合液が裏打ち材の一方の面上に塗布される際、窒化ホウ素混合液の一部が裏打ち材の他方の面側ににじみ出てマイカペーパーに浸透する。そのため、フィブリット混抄のマイカペーパーでなくても、マイカペーパーが自立可能となりやすく、崩れにくい。フィブリットを含まないマイカペーパーを使用する場合は熱伝導率的に有利になる。
【0060】
ドライマイカテープは、コイル等の被絶縁体の絶縁層の形成に用いることができる。特に、回転電機コイル等に用いられるコイル導体等の被絶縁体の外周に設けられる絶縁層の形成に有用である。
【0061】
本開示のドライマイカテープの平均厚みは、125μm〜140μmであることが好ましく、125μm〜136μmであることがより好ましい。
【0062】
<絶縁物>
本開示の絶縁物は、被絶縁体と、前記被絶縁体の少なくとも一部を覆う本開示のドライマイカテープの積層体と、前記積層体に含浸された硬化性樹脂組成物の硬化物と、を含む絶縁層と、を有する。
本開示のドライマイカテープを用いて絶縁層を形成する方法について説明すると、本開示のドライマイカテープを用いて被絶縁体の絶縁層を形成すべき箇所に該テープを巻回させてドライマイカテープの積層体とした後、真空加圧含浸等によって硬化性樹脂組成物をドライマイカテープの積層体に注入した後、加熱するか又は加熱及び加圧してドライマイカテープの積層体に含浸させた硬化性樹脂組成物を硬化することにより、絶縁層を形成する方法が挙げられる。
【0063】
本開示の絶縁物に適用されうる被絶縁体としては、特に限定されるものではなく、コイル、棒状の銅、板状の銅等が挙げられる。
本開示で用いられる硬化性樹脂組成物は、少なくとも硬化性樹脂を含み、必要に応じて硬化剤等を含むワニス(含浸樹脂ワニス)の状態であってもよい。
含浸樹脂ワニスに含まれる硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の硬化性樹脂が挙げられる。また、エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、含浸樹脂ワニスに必要に応じて含まれる硬化剤としては、硬化性樹脂の種類に基づいて適宜選択される。硬化性樹脂が例えばエポキシ樹脂の場合、硬化剤としては脂環式酸無水物等が挙げられる。真空加圧含浸等による含浸樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)の注入方法、含浸樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)を注入した後の硬化条件、含浸樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)がエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とを含む場合のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤との比率等は、従来から公知の方法、公知の条件等を参照できる。
【0064】
<回転電機用コイル及びその製造方法>
本開示の回転電機用コイルは、コイル導体と、前記コイル導体の外周の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁層と、を有し、前記絶縁層が、前記コイル導体の外周の少なくとも一部を覆う本開示のドライマイカテープの積層体と、前記積層体に含浸された硬化性樹脂組成物の硬化物とを含む。
本開示の回転電機用コイルはいかなる製造方法により製造されたものであってもよい。本開示の回転電機用コイルの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、コイル導体の外周の少なくとも一部を覆う、本開示のドライマイカテープの積層体を形成する工程と、前記積層体に硬化性樹脂組成物を含浸する工程と、前記硬化性樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成する工程と、を有するものであってもよい。
【0065】
コイル導体の外周の少なくとも一部を覆う、ドライマイカテープの積層体を形成する方法は特に制限されず、通常行われる方法を採用することができる。例えば、コイル導体の外周に、ドライマイカテープを巻き付ける方法が挙げられる。この場合、ドライマイカテープを一部(例えば、ドライマイカテープの幅の半分の部分)が互いに重なるように複数回巻き付けてもよい。
【0066】
ドライマイカテープの積層体に硬化性樹脂組成物を含浸する方法は特に制限されない。例えば、ドライマイカテープの積層体に真空加圧含浸法(Vacuum Pressure Impregnation、VPI)にて硬化性樹脂組成物を含浸する方法が挙げられる。その他の方法としては、真空含浸法、常圧含浸法等が挙げられる。
ドライマイカテープの積層体に硬化性樹脂組成物を含浸する場合、例えば、ドライマイカテープの積層体で少なくとも一部を覆われたコイル導体を、コイルの鉄芯に配置した状態で硬化性樹脂組成物を含浸する全含浸方式、及びドライマイカテープの積層体で少なくとも一部を覆われたコイル導体の状態で、硬化性樹脂組成物を含浸するコイル単体含浸方式が挙げられる。
【0067】
硬化性樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成する工程は特に制限されず、通常行われる方法を採用することができる。例えば、全含浸方式を採用した場合には、コイル導体を配置されたコイルの鉄芯を加熱炉内で加熱して硬化性樹脂組成物を硬化することができる。一方、コイル単体含浸方式を採用した場合には、コイル導体をドライマイカテープの積層体の外側から型締めすることにより、積層体に圧力を加えた状態で加熱等することにより、硬化性樹脂組成物を硬化することができる。
【0068】
本開示の回転電機用コイル及びその製造方法で用いられるコイル導体の材質、形状、大きさ等は特に制限されず、コイルの用途等に応じて選択できる。さらに、硬化性樹脂組成物(含浸樹脂ワニス)の詳細は、既述の本開示の絶縁物の場合と同様である。
【0069】
本開示のドライマイカテープを用いることで、高熱伝導性を示す絶縁層を形成可能となるため、被絶縁体がコイルである場合、当該コイルを冷却する際、従来では水直接冷却方式を採用されていた規模のコイルに対しても、水素冷却方式又は空冷方式を採用することができるようになり、コイルの構造を簡素化することが可能となる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例に関して記述する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
(1)マイカペーパーの作製
未焼成硬質マイカ片を水中に分散し、抄紙機にて抄造し、マイカ量が120g/mのマイカペーパーを作製した。
【0072】
(2)BN含有樹脂ワニスの調製
樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、「エピコート828」)100質量部と、硬化触媒として亜鉛(II)アセチルアセトナート(純正化学株式会社)1質量部と、溶剤としてメチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社)120質量部と、を混合した。その後、窒化ホウ素(平均粒子径5μm、デンカ株式会社、「SP−3」)250質量部を加えてさらに混合し、BN含有樹脂ワニスを調製した。
【0073】
(3)ドライマイカシートの作製
マイカペーパーの上にガラスクロス(平均厚み:35μm)を重ね、このガラスクロス側から得られたBN含有樹脂ワニスをロールコーターにより塗布した。その後乾燥し、ドライマイカシートを作製した。ドライマイカシートにおける、窒化ホウ素の含有率(BN含有率)は窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対して21.3質量%であった。
得られたドライマイカシートの平均厚み(厚み)を上述の方法により測定した。得られた結果を表1に示す。
【0074】
(4)柔軟性の評価
上記で得られたドライマイカシートについて、クラーク剛度試験機(熊谷理機工業株式会社)を用いて、剛度(N)を測定した。得られた剛度を、ドライマイカシートの幅で除することにより、Stiffness値(N/m)を算出した。結果を表1に示す。
【0075】
(5)熱伝導性の評価
上述の方法によって得たドライマイカシートを5層に重ねて、含浸樹脂ワニスを真空含浸により注入した後に、130℃で2時間、次いで190℃で2時間ヒートプレスにて加熱して硬化し、積層硬化物を作製した。
含浸樹脂ワニスとしては、エピコート828とHN−5500(3又は4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、日立化成株式会社)とを質量基準で1:1で混合したものを用いた。
得られた積層硬化物について、熱抵抗装置(ヤマヨ試験器有限会社、「YST−901S」)を用いて、積層硬化物の熱抵抗値を測定した。得られた熱抵抗値を逆算することによって、熱伝導率(W/(m・K))を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0076】
[実施例2、比較例1〜2]
ドライマイカシートの作製に用いたマイカペーパーのガラスクロスの平均厚みと樹脂含有率(窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対するバインダ樹脂の含有率)を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてドライマイカシートを作製した。また、ドライマイカシートの評価を行った。結果を表1に示す。表1において、「BN含有率」とは、窒化ホウ素含有樹脂層及びマイカ層の合計に対する窒化ホウ素の含有率をいう。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、樹脂量が9質量%以下のドライマイカシートは、樹脂量が9質量%よりも高いドライマイカシートに比べて低いStiffness値を持ち、柔軟性に優れていた。また、窒化ホウ素含有樹脂層を設けることにより、積層硬化物の熱伝導率は高い値を示した。
このことから、本開示のドライマイカテープは柔軟性に優れ、高熱伝導性を示す絶縁層を形成可能であることが分かった。