特開2019-218440(P2019-218440A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-218440(P2019-218440A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】含フッ素共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/26 20060101AFI20191129BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   C08F214/26
   C08F2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-115301(P2018-115301)
(22)【出願日】2018年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 香織
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA10
4J011HA03
4J011HB02
4J011HB04
4J100AA02Q
4J100AC22R
4J100AC26P
4J100AC41R
4J100AE39R
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA24
4J100DA36
4J100FA19
4J100FA30
(57)【要約】
【課題】環境負荷をより低減できる含フッ素共重合体の製造方法の提供。
【解決手段】炭素数4〜10の環状ハイドロフルオロカーボンの存在下で、テトラフルオロエチレンと、エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルおよびフルオロアルキルエチレンからなる群から選択される少なくとも一種の単量体とを共重合する、含フッ素共重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4〜10の環状ハイドロフルオロカーボンの存在下で、テトラフルオロエチレンと、エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルおよびフルオロアルキルエチレンからなる群から選択される少なくとも一種の単量体とを共重合する、含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレンとエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルおよびフルオロアルキルエチレンからなる群から選択される少なくとも一種の単量体との合計に対して、テトラフルオロエチレンの割合が50〜99.5mol%である、請求項1に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレンと共重合する単量体が、エチレンおよびフルオロアルキルエチレンである、請求項1または2に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレンと共重合する単量体が、パーフルオロアルキルビニルエーテルである、請求項1または2に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体やテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体等の含フッ素共重合体は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、耐候性等に優れているため種々の産業分野で用いられている。
含フッ素共重合体の製造方法として溶液重合法が挙げられる。重合媒体としては、クロロフルオロカーボンの代替媒体としてヒドロフルオロカーボン(HFC)が挙げられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/069278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で重合溶媒として用いられているCF(CF)CHFは、オゾン破壊係数(ODP)がゼロであるとともに含フッ素共重合体の重合が安定的に進むという特長があるものの、地球温暖化係数(GWP)は2000である。環境負荷をより低くするためには、GWPの低い重合媒体を用いることが重要である。
【0005】
本発明は、環境負荷をより低減できる含フッ素共重合体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]炭素数4〜10の環状ハイドロフルオロカーボンの存在下で、テトラフルオロエチレンと、エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルおよびフルオロアルキルエチレンからなる群から選択される少なくとも一種の単量体とを共重合する、含フッ素共重合体の製造方法。
[2]前記テトラフルオロエチレンと、エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルおよびフルオロアルキルエチレンからなる群から選択される少なくとも一種の単量体との合計に対して、テトラフルオロエチレンの割合が50〜99.5mol%である、[1]に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
[3]前記テトラフルオロエチレンと共重合する単量体が、エチレンおよびフルオロアルキルエチレンである、[1]または[2]に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
[4]前記テトラフルオロエチレンと共重合する単量体が、パーフルオロアルキルビニルエーテルである、[1]または[2]に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来よりも環境負荷を低減しつつ含フッ素共重合体を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「単位」とは、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団の総称である。
【0009】
本発明の含フッ素共重合体の製造方法は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)と、エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル(以下、PAVEと記す。)およびフルオロアルキルエチレン(以下、FAEと記す。)からなる群から選択される少なくとも一種の単量体(以下、単量体Aと記す。)とを共重合する。
中でも、TFEと単量体Aの合計に対して、TFEの割合が50〜99.5mol%であるのが好ましい。前記範囲であると、含フッ素共重合体が溶融成形しやすくなる。
【0010】
PAVEとしては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF(以下、PPVEと記す。)、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF等が挙げられ、PPVEが好ましい。
FAEとしては、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF(以下、PFBEと記す)、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH等が挙げられ、CH=CH(CFF、CH=CH(CFFが好ましい。
【0011】
含フッ素共重合体は、TFEに由来する単位(以下、TFE単位と記す。)と、単量体Aに由来する単位(以下、A単位と記す。)を含有する。
A単位がエチレンに由来する単位(以下、E単位と記す。)の場合、含フッ素共重合体は、TFE単位とA単位の合計に対して、TFE単位を40〜70モル%含むことが好ましく、45〜65モル%含むことがより好ましい。
A単位がPAVEに由来する単位(以下、PAVE単位と記す。)の場合、含フッ素共重合体は、TFE単位とA単位の合計に対して、TFE単位を90〜99.9モル%含むことが好ましく、95〜99.5モル%含むことがより好ましい。
A単位がFAEに由来する単位(以下、FAE単位と記す。)の場合、含フッ素共重合体は、TFE単位とA単位の合計に対して、TFE単位を60〜90モル%含むことが好ましく、70〜80モル%含むことがより好ましい。
A単位がE単位とFAE単位の両方を含む場合、含フッ素共重合体は、TFE単位とA単位の合計に対して、TFE単位を40〜70モル%含むことが好ましく、45〜65モル%含むことがより好ましい。
含フッ素共重合体における各単位の割合は、重合時の各単量体の仕込み量により調製することができる。また、溶融核磁気共鳴(NMR)分析等のNMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析等により測定できる。
【0012】
含フッ素共重合体は、接着性基を有していてもよい。接着性基としては、アルコキシカルボニル基、カーボネート基、カルボキシ基、フルオロホルミル基、酸無水物残基、ヒドロキシ基が好ましい。
接着性基としては、接着性基を有する末端基および接着性基含有単量体に由来する単位(以下、接着性基含有単位と記す。)が挙げられる。
接着性基を有する末端基は、接着性基を有する重合開始剤もしくは連鎖移動剤又は重合反応の際に接着性基を生じる重合開始剤もしくは連鎖移動剤を使用することにより、含フッ素共重合体に導入できる。また、含フッ素共重合体の製造後に含フッ素共重合体の末端基に接着性基を導入してもよい。
【0013】
含フッ素共重合体としては、接着性基含有単位を有する共重合体が好ましい。
接着性基含有単位は、カルボニル基含有基を有する単量体に由来する単位が好ましい。
カルボニル基含有基としては、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基及び酸無水物残基が好ましく、カルボキシ基及び酸無水物残基がより好ましい。
カルボニル基含有基を有する単量体としては、イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸等が挙げられる。
酸無水物残基を有する単量体としては、飽和ジカルボン酸無水物等が挙げられ、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物又は無水マレイン酸が好ましい。
【0014】
接着性基含有単位は、含フッ素共重合体の全単位に対して0.05〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましい。
【0015】
本発明で用いる炭素数4〜10の環状HFC(以下、本発明のHFCと記す。)は重合媒体であるが、本発明のHFCのみ用いる場合に限らず、水などの不活性媒体が含まれていてもよい。重合媒体の使用量は、重合させる単量体の種類により変更できる。本発明のHFCの使用量は、重合開始時の重合媒体と単量体の質量の合計に対して本発明のHFCの割合が20〜95質量%であるのが好ましく、25〜90質量%であるのがより好ましい。また、重合媒体の質量の合計に対して、本発明のHFCが20〜100質量%であるのが好ましく、30〜100質量%であるのがより好ましい。
【0016】
本発明のHFCの炭素数は、4〜10であり、4〜8が好ましく、4〜6がより好ましい。本発明のHFCの炭素数が前記範囲内の下限値以上であれば、沸点が低くなり過ぎることを抑制できる。環状HFCの炭素数が前記範囲内の上限値以下であれば、沸点が高くなり過ぎることを抑制できる。
【0017】
本発明のHFCは、水素原子の数と同数以上のフッ素原子を有することが好ましい。すなわち、環状HFCが有する水素原子の数(N)に対するフッ素原子の数(N)の比(N/N)は、1以上が好ましい。これにより、重合中の本発明のHFCの化学的安定性が保たれる。
/Nは、1以上が好ましく、1〜17がより好ましく、1〜11が特に好ましい。
【0018】
本発明のHFCの具体例としては、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロペンタン、1H,2H−オクタフルオロシクロペンタン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,4,5−ヘプタフルオロシクロペンタン、1H−ノナフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロシクロブタン、1,1,2,3,3−ペンタフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロブタン、1,1,2,3,3,4−ヘキサフルオロシクロブタン、cis−1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロシクロブタン、trans−1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロシクロブタン、1,2,3,4,5,6−ヘキサフルオロシクロヘキサン、1,1,2,3,4,4,5,6−オクタフルオロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロシクロヘキサンが挙げられる。なかでも、入手安定性の点から、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1H,2H−オクタフルオロシクロペンタンが好ましい。
環状HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
重合媒体は、本発明のHFC以外の他の重合媒体を含んでいてもよい。他の重合媒体は、例えば、水、鎖状HFCが挙げられる。
鎖状HFCは、例えば、C、CHFCFCFCHF、CHCFCFHCF、CFCHCFCH、CFCFHCFHCFCF、(CFCFC、CHCHFC、CHCFCFCFCFH、C、C、(CFCFCHFCHFCF、CHCFCFCFCFCFCFH、C13H、C13、C、C17が挙げられる。鎖状HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明では、本発明のHFCを主成分とする重合媒体を用いる重合により単量体混合物を重合する。
重合方法は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法を採用できるが、溶液重合、懸濁重合が好ましい。
重合に用いるラジカル開始剤としては、例えば、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキシド類、ビス(フルオロアルキル)パーオキシド類、アゾ化合物類、過硫酸塩類が挙げられる。
【0021】
重合時には、含フッ素共重合体の分子量や溶融粘度を制御するために、連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。
【0022】
本発明においては、広い範囲の重合条件が特に限定されることなく採用できる。例えば重合温度は、重合開始剤の種類などにより最適値が選定できるが、0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。また、重合圧力も適宜選定できるが、0.1〜10MPaG(ゲージ圧)が好ましく、0.5〜3MPaG(ゲージ圧)がより好ましい。重合時間は、1〜30時間が好ましい。
【0023】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0024】
[共重合組成(モル%)]
含フッ素共重合体の共重合組成(各単位の含有量)は、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)測定の結果から算出した。
【0025】
[融点]
示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製、DSC−7020)を用い、空気雰囲気下、10℃/分で実施例1は300℃、実施例2は340℃まで昇温し、含フッ素共重合体を加熱した際の吸熱ピークに対応する温度である。
【0026】
[Q値]
島津製作所社製のフローテスタを用いて、実施例1は温度297℃、実施例2は温度372℃、荷重はいずれも68.6N(=7kgf)の条件で、直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押し出すときの含フッ素共重合体の押出し速度(mm/秒)を求め、これをQ値とした。
【0027】
[実施例1]
内容積が1.2リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、重合媒体である1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(日本ゼオン社製「ゼオローラH」。以下、ゼオローラHと記す。)の1249.0g、連鎖移動剤であるメタノールの12.7g、モノマーとしてPFBEの6.0g、TFEの160.7g、エチレンの7.3gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温した。重合槽内の圧力は1.59MPaG(ゲージ圧)を示した。重合開始剤であるtert−ブチルペルオキシピバレートの濃度を1質量%としたゼオローラH溶液の13.1mLを仕込み、重合を開始させた。重合中、前記圧力を保持するように、組成TFE/エチレン=54/46(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、前記モノマー混合ガスを100モル%としたときに1.5モル%となる量のPFBEを連続的に仕込んだ。重合開始から140分後、モノマー混合ガスの80.0gを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を30℃まで降下させるとともに、0MPaGまでパージし、含フッ素共重合体を含むスラリーを得た。該スラリーをガラスフィルターで吸引ろ過し、150℃で15時間乾燥することにより、77gの含フッ素共重合体1を得た。
含フッ素共重合体1の融点は256.3℃、Q値は206mm/秒であった。
含フッ素共重合体1の共重合組成は、TFE単位/E単位/PFBEに由来する単位=52.8/45.7/1.5(モル%)であった。
【0028】
[実施例2]
内容積が1.2リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、重合媒体であるイオン交換水596g、ゼオローラHの336.4g、連鎖移動剤であるメタノールの59.0g、モノマーとしてPPVEの51.4g、TFEの85gを圧入し、重合槽内を50℃に昇温した。重合槽内の圧力は1.37MPaG(ゲージ圧)を示した。重合開始剤であるビス(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの濃度を0.05質量%とした1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製「AK225cb」)溶液の3.7mLを仕込み、重合を開始させた。重合中、前記圧力を保持するように、TFEを連続的に仕込んだ。重合の進行に伴い重合速度が低下するため、重合速度がほぼ一定になるように重合開始剤溶液を断続的に仕込んだ。TFEの導入量が48gになった時点で重合を終了させ、含フッ素共重合体2を得た。
含フッ素共重合体2の融点は296.0℃、Q値は81.1mm/秒であった。
含フッ素共重合体2の共重合組成は、TFE単位/PPVEに由来する単位=97.8/2.2(モル%)であった。
【0029】
本発明は、特定の重合媒体を用いることにより、環境負荷を低減しながらも含フッ素共重合体を容易に製造することができる。