【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程S06と、酸化膜を除去する除去工程S07と、表面にフッ化処理をおこなうフッ化処理工程S11と、を有する。
前記酸化膜形成工程において、形成される前記酸化膜の膜厚が10〜100μmの範囲に設定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のアルミニウム表面処理方法。
前記アルミニウム合金がマグネシウムを含み、前記フッ化処理工程によってフッ化マグネシウムを含む膜が形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか記載のアルミニウム表面処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような処理によって酸化皮膜の形成されたアルミニウム等からなる部材を真空処理の反応室等に配置した場合には、反応室等のクリーニングプロセスに用いるフッ素系ガスにより、フッ化アルミニウムができ、これが、パーティクル発生の原因となる可能性があるという問題があった。
【0006】
また、アルミニウム等からなる部材を真空処理の反応室等に配置した場合、特に、蒸気圧の高いマグネシウムなどの元素を含むアルミニウム合金の場合には、真空下にマグネシウムなどの元素が放出されてしまう可能性があり、これを解決するために、バリア性(蒸気圧の高い元素の放出防止性)を向上したいという要求があった。
【0007】
さらに、処理温度の無駄な高温化を防止するために、シャワープレート等のアルミニウム等からなる部材における放射率をよりいっそう低減し、被処理基板を支持するヒーター(基板支持部)の温度を低減して、処理温度を低下させたいという要求があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.耐フッ化性に優れたアルミニウム表面処理を提供する。
2.バリア性に優れたアルミニウム表面処理を提供する。
3.放射率の低減可能なアルミニウム表面処理を提供する。
4.プラズマ処理装置、真空処理装置等におけるアルミニウム等の部品において、パーティクル発生を低減可能な表面処理を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアルミニウム表面処理方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化皮膜を除去する除去工程と、
前記表面にフッ化処理をおこなうフッ化処理工程と、
を有することにより上記課題を解決した。
本発明において、前記フッ化処理工程における処理温度が、300℃以上380℃以下の範囲に設定されることがより好ましい。
本発明は、前記フッ化処理工程が、フッ化窒素によるドライ処理とされることが可能である。
また、本発明において、前記酸化膜形成工程が、陽極酸化処理とされる手段を採用することもできる。
また、前記酸化膜形成工程において、形成される前記酸化膜の膜厚が10〜100μmの範囲に設定されることができる。
また、前記除去工程が、アルカリ液によるウェット処理とされることが好ましい。
本発明においては、前記アルミニウム合金がマグネシウムを含み、前記フッ化処理工程によってフッ化マグネシウムを含む膜が形成されることができる。
【0010】
本発明のアルミニウム表面処理方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化皮膜を除去する除去工程と、
前記表面にフッ化処理をおこなうフッ化処理工程と、
を有することにより、酸化膜形成工程で形成した酸化膜を除去工程によって除去することで、クリーニングプロセス等で用いられるフッ素を含有するガスに露出した場合に形成されるフッ化アルミニウムの形成を防止して、フッ化アルミニウムによるパーティクル発生を防止することが可能となる。
同時に、アルミニウム表面におけるOH基を低減して、フッ化耐性を向上することができる。
また、アルミニウム表面に酸化膜を形成して除去工程においてこれを除去することにより、通常のバリア膜として用いられるアルマイト膜とは異なり、OH基の少ない緻密なアルミニウム表面状態とすることが可能となり、この表面を、フッ素を含有するガスに露出した場合に、パーティクルの発生原因となるフッ化アルミニウムの結晶が形成されることを防止できる。
さらに、除去工程において形成した酸化膜を除去した後にフッ化処理工程によってフッ化処理をおこなうことにより、アルミニウムの表面にアルミニウム合金に含まれるマグネシウムによってフッ化マグネシウム膜を形成し、このフッ化マグネシウム膜をマグネシウムバリアとすることで、フッ化マグネシウム膜形成後において、アルミニウム合金に含まれるマグネシウムなどの元素の放出を防止することが可能となる。
【0011】
本発明において、前記フッ化処理工程における処理温度が、300℃以上380℃以下の範囲に設定されることにより、マグネシウムバリアとして充分機能するフッ化マグネシウム膜を形成することが可能となる。
上記の範囲よりもフッ化処理温度が低い場合には、充分なフッ化マグネシウム膜が形成されないため好ましくなく、また、上記の範囲よりもフッ化処理温度が高い場合には、フッ化マグネシウム膜の膜厚が大きくなりすぎて、アルミニウム母材との熱膨張の差から、マグネシウムの放出を防止することが充分できない可能性があるため好ましくない。
【0012】
本発明は、前記フッ化処理工程が、フッ化窒素によるドライ処理とされることにより、クリーニングプロセス等フッ素を含有するガスにアルミニウム表面を露出した場合に、マグネシウムバリアとして充分機能するフッ化マグネシウム膜を形成することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記酸化膜形成工程が、陽極酸化処理とされる手段を採用することにより、形成した陽極酸化膜を除去して、OH基の少ない緻密なアルミニウム表面状態とすることが可能となり、この表面を、フッ素を含有するガスに露出した場合に、パーティクルの発生原因となるフッ化アルミニウムの結晶が形成されることを防止できる。
【0014】
また、前記酸化膜形成工程において、形成される前記酸化膜の膜厚が10〜100μmの範囲に設定されることにより、アルミニウム表面において、OH基を充分低減して緻密な酸化膜をアルミニウム表面に形成することが可能となり、この表面を、フッ素を含有するガスに露出した場合に、パーティクルの発生原因となるフッ化アルミニウムの結晶が形成されることを防止できる。
同時に、含有されるマグネシウムのうち、放出される可能性のあるものを低減して、マグネシウムバリアとして充分機能するアルミニウム表面状態とすることができる。
【0015】
また、前記除去工程が、アルカリ液によるウェット処理とされることにより、酸化膜形成工程で形成された酸化膜を容易に除去することができるとともに、OH基の少ない緻密なアルミニウム表面状態とすることが可能となる。
同時に、アルミニウム表面において、酸化膜のみを容易に除去することが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記アルミニウム合金がマグネシウムを含み、前記フッ化処理工程によってフッ化マグネシウムを含む膜が形成されることにより、フッ化処理により、マグネシウムなどの元素の放出を防止するバリアとして充分機能するフッ化マグネシウム膜を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐フッ化性に優れたアルミニウム表面処理を提供でき、マグネシウムバリア性に優れたアルミニウム表面処理を提供でき、放射率の低減可能なアルミニウム表面処理を提供でき、プラズマ処理装置、真空処理装置等におけるアルミニウム等の部品において、パーティクル発生を低減可能な表面処理を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るアルミニウム表面処理方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるアルミニウム表面処理方法における工程を示す断面図であり、
図2は、本実施形態におけるアルミニウム表面処理方法を示すフローチャートであり、図において、符号1は、アルミニウム母材である。
【0020】
本実施形態に係るアルミニウム表面処理方法は、300℃〜380℃程度の温度範囲における所定の雰囲気での処理をおこなう装置の処理雰囲気に露出するアルミニウム等からなる部品に対する表面処理とすることができ、対称となる装置としては、真空処理装置、プラズマ処理装置、CVD装置などを挙げることができる。
【0021】
本実施形態に係るアルミニウム表面処理方法は、
図1(a)に示すように、マグネシウムを含むアルミニウム母材A1を準備し、
図1(b)に示すように、このアルミニウム母材A1に酸化膜A2を形成した後、
図1(c)に示すように、酸化膜A2を除去し、
図1(d)に示すように、フッ化処理をおこなってフッ化マグネシウム膜A3を形成するものとされる。
【0022】
本実施形態に係るアルミニウム表面処理方法においては、その詳細は正確には不明であるが、一度形成した酸化膜A2を除去することで、アルミニウム母材A1の表面近傍が変質して、OH基の含有量が低減されるとともに、アルミニウム母材A1に含有されるマグネシウムが表面近傍に移動する。同時に、アルミニウム母材A1の表面近傍を改質し、フッ化時に、パーティクルの原因となるフッ化アルミニウムの結晶が発生しないようにすることができる。
【0023】
そして、フッ化処理によってマグネシウムなどの元素のバリア性が高いフッ化マグネシウム膜A3が形成される。また、フッ化マグネシウム膜A3が形成されることで、パーティクルの原因となるフッ化アルミニウムの結晶が発生しないようにすることができる。
【0024】
本実施形態で形成されるフッ化マグネシウム膜A3は、所定範囲とされるフッ化処理でおこなうことにより、その膜厚を設定し、比較的薄い場合にマグネシウムなどの元素のバリア性が低下することを防止できるとともに、比較的厚い場合に、フッ化マグネシウム膜A3とアルミニウム母材A1との熱膨張差などに起因してクラックが入ることで、マグネシウムのバリア性が低下する。
【0025】
本実施形態に係るアルミニウム表面処理方法において、対象となるアルミニウム母材A1としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用することができる。アルミニウム合金の鋳物材料、ダイキャスト材料はシリコンを代表として、一般的に含有されている元素が多くいものでもよい。
本実施形態明によれば、このようなシリコンが多い鋳物、ダイキャストでも使用することができる。また、展伸材の中でもAl−Si合金の4000番系や、シリコンが析出していないような展伸材、1000番〜3000番、5000番から7000番台のアルミニウム合金についても複雑形状の場合や100℃以上の高温で使用する場合でも効果があり、特に、マグネシウムを含有するものを用いることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係るアルミニウム表面処理方法は、
図2に示すように、ブラスト工程S01と、硬質アルマイト工程S02と、アルカリ処理工程S03と、除去確認工程S04と、酸処理工程S05と、陽極酸化処理工程S06と、アルカリ処理工程S07と、除去確認工程S08と、酸処理工程S09と、高圧水処理工程S10と、フッ化処理工程S11と、を有する。
【0027】
図2に示すブラスト工程S01は、前処理工程とされ、
図1に示したアルミニウム母材A1の表面汚れ除去および、アルミニウム母材A1の表面粗さの設定をおこなうものとされる。具体的には、表面粗さRaが0.1〜5μm程度、好ましくは、1μm程度となるように設定される。
【0028】
図2に示す硬質アルマイト工程S02においては、
図1に示したアルミニウム母材A1の表面に硬質アルマイト層を形成する。
この際、硫酸・シュウ酸・クロム酸・ホウ酸・有機酸などを用いた陽極酸化処理などの方法によって硬質アルマイト層を形成することができる。
【0029】
また、形成される硬質アルマイト層の膜厚は、5〜25μm程度、好ましくは、10μm程度となるように設定され、膜特性として、ビッカース硬さHV350〜450のように設定することができる。
【0030】
図2に示すアルカリ処理工程S03は、硬質アルマイト除去工程とされ、水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ液によって、硬質アルマイト工程S02において形成された硬質アルマイト層を除去する。
【0031】
ここで、水酸化ナトリウム溶液に、アルミニウム母材A1の表面に形成された硬質アルマイト層を所定時間接触させて、硬質アルマイト層を除去する操作を繰り返す。
具体的には、一回の処理は、0.5〜5min程度に設定することができ、好ましくは、2min程度とすることができる。
【0032】
図2に示す除去確認工程S04においては、直前のアルカリ処理工程S03での操作により、アルミニウム母材A1の表面において硬質アルマイト層が除去されたかを確認する。硬質アルマイト層が残っている場合には、アルカリ処理工程S03へと戻り、さらに水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ液による処理をおこなう。また、硬質アルマイト層が除去されたことを確認したら、次工程へと進む。
なお、硬質アルマイト層が除去されたことを確認したら、アルミニウム母材A1の表面のアルカリ液を除去するために、純水等による洗浄処理をおこなうことができる。
【0033】
図2に示す酸処理工程S05は、アルカリ皮膜や電解処理でできた酸化皮膜の除去を目的とする表面洗浄処理とされ、硝酸、塩酸、フッ化水素などの酸溶液によって、アルカリ処理工程S03で処理されたアルミニウム母材A1の表面を処理する。
【0034】
ここで、酸溶液に、アルミニウム母材A1の表面を所定時間接触させる。
このとき、酸洗浄処理は、1〜10min程度に設定することができ、好ましくは、5min程度とすることができる。
なお、酸洗浄が終了したら、アルミニウム母材A1の表面の酸溶液を除去するために、純水等による洗浄処理をおこなうことができる。
【0035】
図2に示す陽極酸化処理工程S06においては、
図1(b)に示すように、アルミニウム母材A1の表面に酸化膜A2を形成する。この陽極酸化処理工程S06は、酸化膜形成工程とされている。
酸化膜A2は、例えば、酸化アルミニウムを主成分とし、これ以外に、例えば水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物を含む材料を含んでいてもよい。
この酸化膜A2の厚みは、例えば、10μm以上100μm以下、好ましくは30μm以上かつ70μm以下の範囲であればよい。
【0036】
陽極酸化処理工程S06は、火花放電を伴うアノード酸化処理とすることができる。
この際、硫酸、シュウ酸、クロム酸、リン酸といった酸性電解液を用いることができる。
【0037】
また、
図2に示す陽極酸化処理工程S06においては、アルカリ溶液の電解液を用いることもでき、例えば、リン酸水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、ウルトラポリリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化カリウム、二リン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム等の中の1種類又はこれらの中の混合物を、水に溶解させたものを用いることができる。
【0038】
この場合は、上述したアルミニウム母材A1を、アルカリ溶液中に浸漬して、火花放電を伴うアノード酸化処理をおこなうが、その際、200V以上の第1の電圧まで定電流密度で行う工程Aと、工程Aの第1の電圧による定電圧処理を行わずに、第1の電圧から、第1の電圧よりも低い電圧の第2の電圧まで、所定の時間で線形又は段階的に電圧を下降させて、前記アノード酸化処理を行う工程Bと、第2の電圧で、定電圧処理を行う工程Cと、を有することができる。
【0039】
工程Aでは、第1の電圧による処理時間は、200V以上の第1の電圧となるまで継続する。
第1の電圧の処理開始時の電流密度としては、1A/dm
2〜20A/dm
2の範囲とすることが好ましい。
【0040】
工程Bでは、工程Aで第1の電圧となった後に、第1の電圧による定電圧処理を行わずに、第1の電圧から、第1の電圧よりも低い電圧の第2の電圧まで、所定の時間で線形又は段階的に電圧を下降させて、アノード酸化処理をおこなうことができる。
【0041】
第2の電圧は、200V以上で、且つ、第1の電圧より低いものであれば良いが、第1の電圧の0.70倍〜0.99倍であることが好ましい。
なお、工程Bと工程Cとの間に、第2の電圧から第1の電圧まで電圧を上げる工程B’を行い、工程B及び工程B’を1組の工程とし、この1組の工程を、工程Aの後に複数回繰り返しおこなうことが好ましい。
【0042】
また、「段階的」とは、第1の電圧と第2の電圧との間の電圧で少なくとも1つの定電圧処理を行うことを意味し、段階的に電圧を下降させる場合には、少なくとも1つの段階における電圧は、30秒以上保持されることが好ましい。この時間の上限は最大でも10時間とする。
【0043】
また、印加する電圧及び電流の波形に関しては、交流、直流や交流と直流の重畳のいずれでもよく、交流の場合には、電流又は電圧は、正弦波でも、正弦波でなくてもよい。
上記のように、電圧を一定で処理することにより、電流の流れやすいところ、即ち、酸化皮膜が形成されていないところに順次酸化膜A2を形成させることができ、母材中の凹んだ部分や貫通孔内に電極を配置することなく孔の内部表面までも酸化膜A2を形成させることができる。
【0044】
工程Cは、工程Bの終了時の電圧、即ち、第2の電圧で所定の時間、定電圧処理を行うものである。処理時間としては、5分〜10時間とすることが好ましい。
さらに、酸化膜A2が形成されたアルミニウム母材A1は、大気下において、150℃〜500℃で加熱することが好ましい。
【0045】
あるいは、この
図2に示す陽極酸化処理工程S06においては、アルカリ金属を含まない電解液で火花放電を伴うマイクロアーク型のアノード酸化処理を行うこともできる。
【0046】
この場合、電解液としては、リン酸アンモニウム塩、ほう酸アンモニウム塩及び有機酸アンモニウムの塩(アルカリ金属を含むものを除く。)の単独又は2種以上の混合させた電解液に、アンモニア、ヒドラジン、エタノールアミン及び炭酸アンモニウムのうちの少なくとも1つを添加し、pH7.5〜11としたアルカリ性溶液を使用する。
【0047】
有機酸アンモニウムの塩としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びデカンジカルボン酸等のHOOC(CH
2)
nCOOHで表せる鎖状ジカルボン酸の塩や、シュウ酸、タルトロン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、りんご酸及び酒石酸等のその他のジカルボン酸の塩、或いは、フタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロフタル酸及びボロジサリチル酸等の環式ジカルボン酸の塩を使用することができる。
【0048】
ここで、アンモニア、ヒドラジン、エタノールアミン及び炭酸アンモニウムの少なくとも何れかを、電解液のpHが7.5〜11となるように調製しながら添加してアノード酸化処理を行うことができる。
また、リン酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩及び有機酸アンモニウム塩を溶液中に2〜15重量%含有することが好ましい。
【0049】
アノード酸化処理の過程において目標の電圧値に達した後、この電圧を維持した状態(定電圧)で処理を継続することが好ましい。
なお、処理時間は電流値が十分低下する30min以下でよく、特に電流値が半分以下に低下する15min以内とすることが好ましい。
【0050】
図2に示すアルカリ処理工程S07は、酸化膜A2除去工程とされ、水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ液によって、陽極酸化処理工程S06において形成された酸化膜A2を除去する。
このアルカリ処理工程S07は、除去工程を構成する。
【0051】
ここで、水酸化ナトリウム溶液に、アルミニウム母材A1の表面に形成された酸化膜A2を所定時間接触させて、酸化膜A2を除去する操作を繰り返す。
具体的には、一回の処理は、0.5〜5min程度に設定することができ、好ましくは、2min程度とすることができる。
【0052】
図2に示す除去確認工程S08においては、直前のアルカリ処理工程S07での操作により、アルミニウム母材A1の表面において酸化膜A2が除去されたかを確認する。酸化膜A2が残っている場合には、アルカリ処理工程S07へと戻り、さらに水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ液による処理をおこなう。また、酸化膜A2が除去されたことを確認したら、次工程へと進む。
なお、酸化膜A2が除去されたことを確認したら、アルミニウム母材A1の表面のアルカリ液を除去するために、純水等による洗浄処理をおこなうことができる。
【0053】
図2に示す酸処理工程S09は、アルカリ皮膜や電解処理でできた酸化皮膜の除去を目的とする表面洗浄処理とされ、硝酸、塩酸、フッ化水素などの酸溶液によって、アルカリ処理工程S07で処理されたアルミニウム母材A1の表面を処理する。
【0054】
ここで、酸溶液に、アルミニウム母材A1の表面を所定時間接触させる。
このとき、酸洗浄処理は、1〜10min程度に設定することができ、好ましくは、5min程度とすることができる。
なお、酸洗浄が終了したら、アルミニウム母材A1の表面の酸溶液を除去するために、純水等による洗浄処理をおこなうことができる。
【0055】
図2に示す高圧水処理工程S10は、残存している薬液の除去を目的とする表面洗浄処理とされ、純水によって、酸処理工程S09で処理されたアルミニウム母材A1の表面を処理する。
【0056】
図2に示すフッ化処理工程S11としては、フッ化窒素ガスによるドライ工程とすることができる。
具体的には、300℃〜380℃程度の温度範囲における圧力400Pa、ラジカル源を通して導入されたフッ化窒素ガス15slm、処理時間2h、Arガス35slm等のように設定することができる。
このフッ化処理によって、アルミニウム母材A1表面にフッ化マグネシウム膜A3が形成される。フッ化マグネシウム膜A3の厚みは、例えば、10nm以上50nm以下、好ましくは10nm以上かつ20nm以下の範囲であればよい。
【0057】
なお、このフッ化処理工程S11は、実機にアルミニウム母材A1からなる部品を込み込んだ後、クリーニングプロセスとしておこなうこともできる。
【0058】
本実施形態におけるアルミニウム表面処理方法によれば、陽極酸化処理工程S06によって酸化膜A2を形成して、その酸化膜A2をアルカリ処理工程S07によって除去することで、アルミニウム母材A1表面を改質して、通常のバリア膜として用いられるアルマイト膜とは異なり、OH基の少ない緻密な酸化膜のできたアルミニウム表面状態とすることが可能となり、フッ化耐性を向上して、この表面をフッ素を含有するガスに露出した場合に、パーティクルの発生原因となるフッ化アルミニウムの結晶が形成されることを防止できる。
【0059】
このように、クリーニングプロセス等で用いられるフッ素を含有するガスに露出した場合に形成されるフッ化アルミニウムの形成を防止して、フッ化アルミニウムによるパーティクル発生を防止することが可能となる。
【0060】
同時に、アルミニウム母材A1表面近傍におけるOH基を低減して、フッ化耐性を向上することができる。
さらに、アルカリ処理工程S07において形成した酸化膜を除去した後にフッ化処理工程S11によってフッ化処理をおこなうことにより、アルミニウム母材A1の表面にアルミニウム合金に含まれるマグネシウムによってフッ化マグネシウム膜A3を形成し、このフッ化マグネシウム膜A3をマグネシウムバリアとすることで、フッ化マグネシウム膜A3形成後において、アルミニウム合金からなるアルミニウム母材A1に含まれるマグネシウムなどの元素の放出を防止することが可能となる。
【0061】
フッ化処理工程S11において、処理温度を300℃以上380℃以下の範囲に設定されることにより、フッ化マグネシウム膜A3の膜厚を条規の範囲にすることができ、フッ化マグネシウム膜A3にクラックが発生することを防止して、マグネシウムバリアとして充分機能するフッ化マグネシウム膜A3を形成することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態は、次のように、真空処理装置に組み込まれるアルミニウム部品に適用することが可能である。
図3は、本実施形態におけるアルミニウム表面処理方法を適用した真空処理装置10を示す模式断面図である。
【0063】
例示する真空処理装置(成膜装置)10は、例えば、CVD法あるいはALD法による成膜処理をおこなう装置とされ、
図3に示すように、被処理基板(基板)Sの成膜をおこなう成膜室11と、成膜原料となる原料ガスを供給する原料ガス供給手段20と、および、成膜室11のクリーニングをおこなうクリーニング手段30を有する。
【0064】
成膜室11は、例えばアルミニウムなどからなる処理容器とされている。前記成膜室11の側壁には被処理基板(基板)Sを搬出入する際に開閉されるゲートバルブ(図示せず)が設けられる。
【0065】
成膜室11には、成膜時に基板Sが載置される基板ステージ13が配設されている。
基板Sは、基板ステージ13に載置されることによって、成膜室11内での位置が決められる。基板ステージ13の下方には、基板Sの搬出入を行う際などに基板ステージ13を上下方向に動かす昇降機構13aが連結されている。昇降機構13aは、成膜時に基板Sを回転させる場合には、基板ステージ13を回転させる回転駆動機構を兼ねることができる。
基板ステージ13下側には、基板Sの搬出入を行う際等に基板Sを昇降させるリフトピンなどの基板昇降機構(図示せず)が設けられることができる。
【0066】
基板ステージ13の周縁外側は、成膜室11の側部と接触しないように離間しており、基板ステージ13が回転・昇降可能とされている。
成膜室11の基板ステージ13下側には、原料ガスが基板ステージ13外周隙間から、基板ステージ13下側に侵入しないように裏面ガスを供給する裏面ガス供給部19が接続されている。
【0067】
成膜室11の側部には、排気ポート11pを介して成膜室11内の原料ガス等を排気する排気ポンプなどの排気機構11vcが接続されている。また排気ポート11pと排気機構11vcとの間には、チャンバ本体(成膜室)11内の圧力を調節するための圧力調節バルブなどが設置されていてもよい。排気ポンプ(排気機構)11vcは、ターボ分子ポンプやドライポンプ等の各種ポンプによって構成されるものであって、プラズマCVDあるいはALDにより成膜装置(真空処理装置)10での成膜処理をおこなうときには、圧力調節バルブでの調節によって成膜室11内の圧力を所定圧力に制御することが可能とされる。排気ポート11pは、成膜室11内で、基板ステージ13外周隙間から原料ガスが基板ステージ13下側に侵入しないように配置される。
【0068】
成膜室11の基板ステージ13の上側には、複数の供給孔16aを有するシャワープレート16が取り付けられている。シャワープレート16は、基板ステージ13と対向する平板状とされるとともに、基板ステージ13の載置面と略平行状態として配置される。
成膜装置10がプラズマCVDによる成膜をおこなう場合には、成膜室11内に供給されたガスをプラズマ化するシャワープレート側高周波電源がシャワープレート16に接続されて、シャワープレート16に高周波電力を供給して、シャワープレート16が所定の電位を維持可能な状態として支持されることもできる。
【0069】
成膜室11のシャワープレート16のさらに上側には、複数の供給孔17aを有するシャワープレート17が取り付けられている。シャワープレート17は、シャワープレート16と対向する平板状とされるとともに、シャワープレート17はシャワープレート16と離間するとともに、平行状態に配置される。
シャワープレート17においては、複数の供給孔17aが供給孔16aとは異なる配置および大きさとされることができる。シャワープレート17はシャワープレート16と同様に支持されることができる。
本実施形態ではシャワープレート16,17を2段として配置したが、一枚のシャワープレート、あるいは、より多段のシャワープレートを有する構成とすることもできる。
【0070】
成膜室11のシャワープレート17のさらに上側には、複数の供給孔18aを有するガス分散板18が取り付けられている。ガス分散板18は、その下面がシャワープレート17と対向する平板状とされるとともに、ガス分散板18はシャワープレート17と離間するとともに、略平行状態に配置される。ガス分散板18の上面は、中央から縁部に向かって下降するように形成すること、つまり、中央から縁部に向かって基板ステージ13に近接するように傾斜した形状とすることもできる。
【0071】
ガス分散板18においては、複数の供給孔18aが供給孔17aおよび供給孔16aとは異なる配置および大きさとされることができる。なお、図において、供給孔18a、供給孔17a、供給孔16aは模式的に記載している。
【0072】
シャワープレート16およびシャワープレート17はアルミニウムを含む金属製とされ、例えばアルミニウム−マグネシウム合金に表面処理を施したものとすることができる。ガス分散板18はアルミニウムを含む金属製とされ、例えばアルミニウム−マグネシウム合金とすることができる。
【0073】
このような真空処理装置10においては、シャワープレート16、シャワープレート17、ガス分散板18、成膜室11、基板ステージ13に本実施形態におけるアルミニウム表面処理方法を適用することが可能である。
【実施例】
【0074】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0075】
なお、本発明における具体例について説明する。
ここでは、アルミニウム合金(A6061)からなる20×20×2mmのテストピースに次の表面処理を施した。
<実験例1>
従来からあるアルマイトをテストピース表面に形成した。
具体的には硫酸系の電界溶液を用いた陽極酸化によって、アルマイトを形成した。
<実験例2>
VACAL(アルバックテクノ株式会社、登録商標)によってアルミニウム母材(A6061)に形成したアルマイトをテストピース表面に形成した。
<実験例3>
図2に示す高圧水処理工程S10までの工程によってテストピース表面処理をおこなった。具体的にはVACAL(アルバックテクノ株式会社、登録商標)によってアルミニウム母材(A6061)に形成した酸化皮膜を水酸化ナトリウム水溶液にて除去した。
<実験例4>
参考のためY
2O
3層をテストピース表面に形成した。
【0076】
これらに対して、400℃、ラジカル源を通したフッ化窒素ガス雰囲気として120min保持して、フッ化処理をおこなった。
その後、その表面に対してX線回折(XRD)をおこなうとともに、SEM観察をおこなった。
【0077】
XRD分析の結果を
図4に示す。
この結果から、実験例3、実験例4においては、フッ化アルミニウムのピークが現れていない。これに対して、実験例1,2においては、フッ化アルミニウムのピークが現れていることがわかる。
【0078】
SEM画像を
図5に示す。
この結果から、
図5(a)に示す実験例1、
図5(b)に示す実験例2には、いずれもフッ化アルミニウムの結晶が堆積していることがわかる。これに対して、実験例3、実験例4においては、フッ化アルミニウム結晶の堆積物が現れていない。
【0079】
次に、上記の実験例3のテストピースに対して、フッ化処理の温度を300〜450℃の範囲で変化させた。
その後、同様に、表面に対してX線回折(XRD)をおこなうとともに、SEM観察をおこなった。
さらに、フッ化処理後にMgバリア試験として、真空中で460℃に保持して、マグネシウムを放出しているかを検出する試験をおこなった。
【0080】
300℃でのフッ化処理後におけるXRD分析の結果を
図6(a)に示す。なお、
図6(a)のグラフにおいて横軸は表面からの深さ、縦軸は元素比を示す。
この結果から、テストピース表面にフッ化マグネシウムが薄く形成されていることがわかる。
【0081】
さらに、300℃でのフッ化処理後におけるSEM画像を
図6(b)に示す。
同様に、フッ化アルミニウム結晶の堆積物はできていないことがわかる。
【0082】
また、300℃でのフッ化処理後に真空中で460℃に保持して240時間後でも、マグネシウムは放出されていなかった。
【0083】
380℃でのフッ化処理後におけるXRD分析の結果を
図7(a)に示す。なお、
図7(a)のグラフにおいて横軸は表面からの深さ、縦軸は元素比を示す。
この結果から、300℃の場合に比べて、テストピース表面にフッ化マグネシウムが厚く形成されていることがわかる。
【0084】
さらに、380℃でのフッ化処理後におけるSEM画像を
図7(b)に示す。
同様に、フッ化アルミニウム結晶の堆積物はできていないことがわかる。
【0085】
また、380℃でのフッ化処理後に真空中で460℃に保持して120時間後に、マグネシウムの放出を検出した。
【0086】
450℃でのフッ化処理後におけるXRD分析の結果を
図8(a)に示す。なお、
図8(a)のグラフにおいて横軸は表面からの深さ、縦軸は元素比を示す。
この結果から、380℃の場合に比べても、テストピース表面にフッ化マグネシウムがさらに厚く形成されていることがわかる。
【0087】
さらに、450℃でのフッ化処理後におけるSEM画像を
図8(b)に示す。
同様に、フッ化アルミニウム結晶の堆積物はできていないことがわかる。
【0088】
また、450℃でのフッ化処理後に真空中で460℃に保持して120時間後に、マグネシウムの放出を検出した。
【0089】
さらに、
図3に示す真空処理装置10において、シャワープレートとなる部材をアルミニウム合金(A6061)からなるものとし、
図2に示す工程により実験例3と同様に表面処理をおこなった後、基板ステージ13に設けられたヒータによって加熱しながら、プラズマ処理をおこなった。比較のため、実験例2と同様の表面処理をおこなったシャワープレートとして、プラズマ処理をおこなった。
【0090】
このとき、測定した基板ステージ13の温度を横軸に、シャワープレートの温度を縦軸にして
図9に示す。
【0091】
この結果から、本発明の表面処理を施したシャワープレートでは、約50℃低下していることがわかる。また、ヒータ設定温度が約5℃低下している。
【0092】
Displayの高精細化・OLED化に伴い、Particle起因によるDeviceの不良・歩留りの低下が問題であるが、本発明によれば、AlF
3の発生を抑制することで、このParticleの削減を実現することができることがわかる。