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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-219188(P2019-219188A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】測位方法および測位端末
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/28 20100101AFI20191129BHJP
   G01S 19/43 20100101ALN20191129BHJP
【FI】
   G01S19/28
   G01S19/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-114775(P2018-114775)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 靖久
(72)【発明者】
【氏名】小口 傑
(72)【発明者】
【氏名】杁山 義弘
(72)【発明者】
【氏名】金山 守
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062BB01
5J062CC07
5J062DD05
5J062DD22
5J062DD23
(57)【要約】
【課題】除外すべき衛星をより適切に特定し、測位精度の向上を図ること。
【解決手段】ST504において、プロセッサ201が、衛星毎にSNR(Signal Noise Ratio)および仰角を取得する。次に、ST505において、プロセッサ201が、SNRが遮蔽用SNRマスク未満の衛星を、マルチパス衛星と判定し、除外対象として選択する。次に、ST506において、プロセッサ201が、除外対象以外の衛星からの測位信号を用いて測位端末測位データを生成する。次に、ST507において、プロセッサ201が、選択した衛星の基準局測位データおよび測位端末測位データを用いて、RTK演算を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位端末が複数の衛星から送信される情報に基づいて測位演算を行うことで、移動体の座標を決定する測位方法であって、
前記測位端末は、
各衛星の仰角を計算し、
前記各衛星から送信された信号の受信強度を測定し、
前記衛星毎に、前記受信強度と前記仰角が低くなるに応じて値が高くなる第1閾値とを比較し、
前記受信強度が前記第1閾値未満の衛星を除外対象として選択し、
前記除外対象以外の衛星から送信される情報に基づいて前記測位演算を行う、
測位方法。
【請求項2】
前記測位端末は、
前記仰角が高い衛星から順に前記受信強度と切替閾値とを比較し、
前記受信強度が前記切替閾値未満の判定基準衛星よりも前記仰角が高い全ての衛星について、前記受信電力と第2閾値とを比較し、
前記受信強度が前記第2閾値未満の衛星を除外対象として選択し、
前記判定基準衛星と、該判定基準衛星よりも前記仰角が低い全ての衛星について、前記受信電力と前記第1閾値との比較を行う、
請求項1に記載の測位方法。
【請求項3】
前記測位端末は、
所定の方位によって空間領域を複数に分割し、
前記分割した空間領域毎に、前記除外対象の衛星の選択を行う、
請求項2に記載の測位方法。
【請求項4】
前記測位端末は、
前記判定基準衛星の方位を基準に、前記空間領域を分割する、
請求項3に記載の測位方法。
【請求項5】
前記測位端末は、
前記判定基準衛星が含まれる空間領域を、該判定基準衛星の仰角が低くなるに応じて広く設定する、
請求項3または4に記載の測位方法。
【請求項6】
前記測位端末は、
複数の分割パターンのそれぞれで前記空間領域を分割し、前記分割パターン毎に前記測位演算を並列に行い、最も良好な測位演算によって得られた測位解を出力する、
請求項3または4に記載の測位方法。
【請求項7】
前記測位端末は、
前記最も良好な測位演算の分割パターンを測位地点と対応付けて記憶し、
前記測位地点に対応する分割パターンで前記空間領域を分割する、
請求項6に記載の測位方法。
【請求項8】
前記第2閾値は、前記仰角が高くなるに応じて値が高くなる、請求項2から7のいずれか一項に記載の測位方法。
【請求項9】
複数の衛星から送信される測位信号を受信する受信部と、
前記測位信号に含まれる情報に基づいて測位演算を行うことで、移動体の座標を決定するプロセッサと、
を具備し、
前記プロセッサは、
各衛星の仰角を計算し、
前記各衛星から送信された信号の受信強度を測定し、
前記衛星毎に、前記受信強度と前記仰角が低くなるに応じて値が高くなる第1閾値とを比較し、
前記受信強度が前記第1閾値未満の衛星を除外対象として選択し、
前記除外対象以外の衛星から送信される情報に基づいて前記測位演算を行う、
測位端末。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記仰角が高い衛星から順に前記受信強度と切替閾値とを比較し、
前記受信強度が前記切替閾値未満の判定基準衛星よりも前記仰角が高い全ての衛星について、前記受信電力と第2閾値とを比較し、
前記受信強度が前記第2閾値未満の衛星を除外対象として選択し、
前記判定基準衛星と、該判定基準衛星よりも前記仰角が低い全ての衛星について、前記受信電力と前記第1閾値との比較を行う、
請求項9に記載の測位端末。
【請求項11】
前記プロセッサは、
所定の方位によって空間領域を複数に分割し、
前記分割した空間領域毎に、前記除外対象の衛星の選択を行う、
請求項10に記載の測位端末。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記判定基準衛星の方位を基準に、前記空間領域を分割する、
請求項11に記載の測位端末。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記判定基準衛星が含まれる空間領域を、該判定基準衛星の仰角が低くなるに応じて広く設定する、
請求項11または12に記載の測位端末。
【請求項14】
前記プロセッサは、
複数の分割パターンのそれぞれで前記空間領域を分割し、前記分割パターン毎に前記測位演算を並列に行い、最も良好な測位演算によって得られた測位解を出力する、
請求項11または12に記載の測位端末。
【請求項15】
前記プロセッサは、
前記最も良好な測位演算の分割パターンを測位地点と対応付けて記憶し、
前記測位地点に対応する分割パターンで前記空間領域を分割する、
請求項14に記載の測位端末。
【請求項16】
前記第2閾値は、前記仰角が高くなるに応じて値が高くなる、請求項10から15のいずれか一項に記載の測位端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位衛星(以下、測位に利用できる人工衛星を総称して「衛星」とする)からの信号を利用して干渉測位を行う場合の測位方法および測位端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静止状態の対象物を高精度に測量するために、RTK(Real Time Kinematic)法による干渉測位(RTK演算)が利用されている。RTK法とは、衛星が送信する測位信号の搬送波位相積算値を用いて所定の地点の測位を行うものである。このRTK法による干渉測位を、移動体の測位に適用することにより、移動体の高精度な測位を実現することが期待されている。
【0003】
車輌等の移動体に取り付けられた測位端末は、RTK演算を行う際、GNSS(Global Navigation Satellite System)の衛星(図示せず)からの測位信号を受信する。なお、GNSSとは、GPS(Global Positioning System)、BeiDou、GLONASS等の民間航空航法に使用可能な性能(精度・信頼性)を持つ衛星航法システムの総称である。測位信号には、GPS衛星から送信されるL1信号(1575.42MHz)、L2信号(1227.60MHz)等がある。
【0004】
遮蔽環境では、衛星からの直接波とマルチパス波との合成波、あるいは、マルチパス波のみが、測位端末のアンテナに入力される場合がある。マルチパスの影響を強く受けると、測位端末は、直接波とマルチパス波とを識別できず、干渉測位を誤る可能性が高くなり、RTK演算における収束時間、測位安定性に悪影響を及ぼし、測位精度が劣化してしまう。なお、干渉測位では、位相を用いて衛星までの距離の差を計算し、計算した距離の差を用いて測位を行う。そのため、マルチパス波の位相を用いてしまうと、マルチパス波が建築物等に反射して測位端末に届くまでに要する距離の分、本来の距離より長い距離が出てしまい、それを利用した測位結果にも誤りが発生しやすくなる。
【0005】
従来から、測位端末が、信号強度(SNR)に基づいて、マルチパス波を一定度以上受信している可能性の高い衛星(以下、「マルチパス衛星」という)を識別して除外し、残った衛星からの測位信号を用いてRTK演算を実施することにより、測位精度を向上させる技術が開示されている。特許文献1では、仰角に依存する理論的信号強度と受信機で取得した信号強度との差が所定の閾値(SNRマスク)を越えた衛星を除外している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/132003号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
仰角が低い(例えば、仰角が25°以下)の衛星から送信された信号は、通過する大気の影響により、減衰、散乱するため、直接波であってもSNRが低い。また、測位端末がマルチパス波を一定度以上受信していたときのSNRの変動量(バラツキ)は大きい。このため、低仰角の衛星からの信号では、直接波のみを受信した場合のSNRが、マルチパス波を受信した場合のSNRと大差ない場合もある。このように、低仰角の衛星からの信号はSNRの値が予測困難な挙動をするため、特許文献1の方法では、除外すべき衛星を正しく特定することが困難であり、測位精度の改善効果が少なくなってしまう。
【0008】
本開示の非限定的な実施例は、除外すべき衛星をより適切に特定し、測位精度の向上を図ることができる測位方法および測位端末を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る測位方法は、測位端末が複数の衛星から送信される情報に基づいて測位演算を行うことで、移動体の座標を決定する測位方法であって、前記測位端末は、各衛星の仰角を計算し、前記各衛星から送信された信号の受信強度を測定し、前記衛星毎に、前記受信強度と前記仰角が低くなるに応じて値が高くなる第1閾値とを比較し、前記受信強度が前記第1閾値未満の衛星を除外対象として選択し、前記除外対象以外の衛星から送信される情報に基づいて前記測位演算を行う。
【0010】
本開示の一態様に係る測位端末は、複数の衛星から送信される測位信号を受信する受信部と、前記測位信号に含まれる情報に基づいて測位演算を行うことで、移動体の座標を決定するプロセッサと、を具備し、前記プロセッサは、各衛星の仰角を計算し、前記各衛星から送信された信号の受信強度を測定し、前記衛星毎に、前記受信強度と前記仰角が低くなるに応じて値が高くなる第1閾値とを比較し、前記受信強度が前記第1閾値未満の衛星を除外対象として選択し、前記除外対象以外の衛星から送信される情報に基づいて前記測位演算を行う。
【0011】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、除外すべき衛星をより適切に特定し、測位精度の向上を図ることができる。
【0013】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施の形態1に係る測位システムの構成を示す図
図2】本開示の実施の形態1に係る基準局の構成を示すブロック図
図3】本開示の実施の形態1に係る測位端末の構成を示すブロック図
図4】本開示の実施の形態1に係る遮蔽用SNRマスクを説明する図
図5】本開示の実施の形態1に係る測位処理を示すフロー図
図6】本開示の実施の形態2に係る切替閾値を説明する図
図7】本開示の実施の形態2に係る通常SNRマスクを説明する図
図8】本開示の実施の形態2に係る測位処理を示すフロー図
図9】本開示の実施の形態2のバリエーション1に係る空間領域の分割の一例を示す図
図10】本開示の実施の形態2のバリエーション2に係る空間領域の分割の一例を示す図
図11】本開示の実施の形態2のバリエーション3に係る空間領域の分割の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0017】
(実施の形態1)
<測位システムの構成>
まず、実施の形態1に係る測位システム1の構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、測位システム1は、基準局10と、測位端末20と、から構成される。基準局10は、地球上の座標が既知である箇所に設置される。測位端末20は、座標を求める対象である移動体(例えば車輌など)に設置される。
【0018】
測位システム1は、測位端末20の位置を計測し、測位端末20の地球上の座標を求める。座標は、例えば、緯度・経度・高度の三次元座標が一般的であるが、緯度・経度などの二次元座標であってもよい。
【0019】
基準局10は、GNSS衛星から受信した測位信号に基づいて基準局10の測位データ(以下、「基準局測位データ」という)を生成し、測位端末20に送信する。なお、測位データの詳細については後述する。
【0020】
測位端末20は、GNSS衛星から受信した測位信号に基づいて測位端末20の測位データ(以下、「測位端末測位データ」という)を生成し、基準局測位データ及び測位端末測位データを用いて1エポック毎にRTK法による干渉測位処理を行い、移動体の座標を出力する。エポックは、データ取得時刻のことであり、エポック間隔はデータ取得時刻の時間間隔(周期)を表す時間単位である。例えば、測位端末20が5Hzで動作する場合、1秒間に5つのデータが取得されるため、エポック間隔は0.2秒となる。なお、測位端末20には、測位用の専用端末、測位機能を有するパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット、測位サービスを行うサーバ等が含まれる。
【0021】
<基準局の構成>
次に、実施の形態1に係る基準局10の構成について図2を用いて説明する。図2に示すように、基準局10は、プロセッサ101と、記憶部102と、入力部103と、出力部104と、通信部105と、受信部106と、バス110と、を有している。
【0022】
プロセッサ101は、バス110を介して基準局10の他の要素を制御する。プロセッサ101として、例えば、汎用CPU(Central Processing Unit)が用いられる。また、プロセッサ101は、所定のプログラムを実行することにより、測位信号に基づいて基準局測位データを生成する。
【0023】
記憶部102は、他の要素から様々な情報を取得し、一時的あるいは恒久的にその情報を保持する。記憶部102は、いわゆる一次記憶装置と二次記憶装置の総称である。記憶部102は、物理的に複数配置されても良い。記憶部102として、例えば、DRAM(Direct Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)が用いられる。
【0024】
入力部103は、外部からの情報を受け付ける。入力部103が受け付ける外部からの情報には、基準局10の操作者からの入力に関する情報などが含まれる。一例としてキーボード等の入力インターフェースを用いることで入力部103を構成することができる。
【0025】
出力部104は、外部へ情報を提示する。出力部104が提示する情報には、測位に関する情報などが含まれる。一例としてディスプレイ等の既存の出力インターフェースを用いることで出力部104を構成することができる。
【0026】
通信部105は、通信路を介して外部の機器と通信を行う。通信部105が通信する対象(通信対象)の機器には、測位端末20が含まれる。一例として無線LAN通信網、3G通信網など既存の通信網と通信可能な通信インターフェースを用いることで通信部105を構成することができる。
【0027】
受信部106は、衛星からの測位信号を受信し、バス110を介して測位信号をプロセッサ101に出力する。
【0028】
なお、上記の基準局10の構成は一例である。基準局10の各構成要素の一部を統合して構成することもできる。基準局10の各構成要素の一部を複数の要素に分割して構成することもできる。基準局10の各構成要素の一部を省略することもできる。基準局10に他の要素を付加して構成することもできる。
【0029】
<測位端末の構成>
次に、実施の形態1に係る測位端末20の構成について図3を用いて説明する。図3に示すように、測位端末20は、プロセッサ201と、記憶部202と、入力部203と、出力部204と、通信部205と、受信部206と、バス210と、を備えている。
【0030】
プロセッサ201は、バス210を介して測位端末20の他の要素を制御する。プロセッサ201として、例えば、汎用CPUが用いられる。また、プロセッサ201は、所定のプログラムを実行することにより、測位信号に基づいて測位端末測位データを生成する。また、実施の形態1では、プロセッサ201が、移動体の座標を出力する機能を備えている。このプロセッサ201の機能の詳細については後述する。
【0031】
記憶部202は、他の要素から様々な情報を取得し、一時的あるいは恒久的にその情報を保持する。記憶部202は、いわゆる一次記憶装置と二次記憶装置の総称である。記憶部202は、物理的に複数配置されても良い。記憶部202として、例えば、DRAM、HDD、SSDが用いられる。
【0032】
実施の形態1では、記憶部202に、仰角に応じて値が変化する遮蔽用SNRマスク(第1閾値)が記憶されている。
【0033】
入力部203は、外部からの情報を受け付ける。入力部203が受け付ける外部からの情報には、測位端末20の操作者からの入力に関する情報などが含まれる。一例としてキーボード等の入力インターフェースを用いることで入力部203を構成することができる。
【0034】
出力部204は、外部へ情報を提示する。出力部204が提示する情報には、測位に関する情報などが含まれる。一例としてディスプレイ等の既存の出力インターフェースを用いることで出力部204を構成することができる。
【0035】
通信部205は、通信路を介して外部の機器と通信を行う。通信部205が通信する対象(通信対象)の機器には、基準局10が含まれる。一例として無線LAN通信網、3G通信網など既存の通信網と通信可能な通信インターフェースを用いることで通信部205を構成することができる。
【0036】
受信部206は、衛星からの測位信号を受信し、バス210を介して測位信号をプロセッサ201に出力する。
【0037】
なお、上記の測位端末20の構成は一例である。測位端末20の各構成要素の一部を統合して構成することもできる。測位端末20の各構成要素の一部を複数の要素に分割して構成することもできる。測位端末20の各構成要素の一部を省略することもできる。測位端末20に他の要素を付加して構成することもできる。
【0038】
<測位端末のプロセッサの移動体座標出力機能>
次に、測位端末20のプロセッサ201の移動体の座標を出力する機能について詳細に説明する。
【0039】
プロセッサ201は、基準局測位データと測位端末測位データとに基づいて1エポック毎にRTK法による干渉測位(RTK演算)を実行し、測位解(フィックス解またはフロート解)を算出する。以下、RTK演算によって得られる測位解を「RTK測位解」という。プロセッサ201は、RTK演算によって得られるAR(Ambiguity Ratio)値を用いて品質チェックを行い、AR値が所定の閾値(例えば3.0)以上の場合には、RTK測位解がフィックス解であると判定し、AR値が所定の閾値(例えば3.0)未満の場合には、RTK測位解がフロート解であると判定する。
【0040】
そして、プロセッサ201は、RTK測位解(フィックス解またはフロート解)を移動体の現在の座標とし、1エポック毎に移動体の現在の座標を出力部204に出力する。
【0041】
<測位データ>
次に、測位データについて説明する。実施の形態1において測位データには擬似距離情報、搬送波位相情報およびドップラー周波数情報が含まれる。
【0042】
擬似距離情報とは、衛星と自局(基準局10あるいは測位端末20)との距離に関する情報である。プロセッサ(プロセッサ101あるいはプロセッサ201)は、測位信号を解析することにより衛星と自局との距離を算出することができる。具体的には、プロセッサは、まず、(1)測位信号が搬送したコードのパターンと自局が生成したコードのパターンとの相違、および、(2)測位信号に含まれるメッセージ(NAVDATA)に含まれる衛星の信号生成時刻と自局の信号受信時刻、の2つの情報に基づいて測位信号の到達時間を求める。そして、プロセッサは、当該到達時間に光速を乗ずることにより衛星と自局との擬似距離を求める。この距離には衛星のクロックと自局のクロックとの相違等に起因する誤差が含まれる。通常、この誤差を軽減させるために4つ以上の衛星に対して擬似距離情報が生成される。
【0043】
搬送波位相情報とは、自局が受信した測位信号の位相である。測位信号は所定の正弦波である。プロセッサは、受信した測位信号を解析することにより測位信号の位相を算出することができる。
【0044】
ドップラー周波数情報とは、衛星と自局との相対的な速度に関する情報である。プロセッサは、測位信号を解析することによりドップラー周波数情報を生成することができる。
【0045】
以上のようにして、基準局10のプロセッサ101および測位端末20のプロセッサ201によって、それぞれ測位データが生成される。
【0046】
<RTK演算>
次に、RTK演算について説明する。RTK演算は干渉測位の一つであるRTK法を実行する演算である。
【0047】
RTK法とは、衛星が送信する測位信号の搬送波位相積算値を用いて所定の地点の測位を行うものである。搬送波位相積算値とは、衛星から所定の地点までの(1)測位信号の波の数と(2)位相との和である。搬送波位相積算値が求まれば、測位信号の周波数(および波長)が既知であるので、衛星から所定の地点までの距離を求めることができる。測位信号の波の数は、未知数であるので整数アンビギュイティまたは整数値バイアスと呼ばれる。
【0048】
RTK法を実行するにあたって重要なことはノイズの除去と、整数アンビギュイティの推定(決定)である。
【0049】
RTK法では、二重差と呼ばれる差を演算することにより、ノイズの除去を行うことができる。二重差とは2つの衛星に対する1つの受信機の搬送波位相積算値の差(一重差)を2つの受信機(実施の形態1においては基準局10と測位端末20)の間でそれぞれ算出した値の差である。実施の形態1においてはRTK法を用いた測位のために4つ以上の衛星を使用する。従って、4つ以上の衛星の組み合わせの数だけ二重差を演算することになる。この演算では、基準局測位データおよび測位端末測位データが用いられる。
【0050】
RTK法では、整数アンビギュイティの推定を様々な方法で行うことができる。例えば、(1)最小二乗法によるフロート解の推定、および、(2)フロート解に基づくフィックス解の検定という手順を実行することにより整数アンビギュイティの推定を行うことができる。
【0051】
最小二乗法によるフロート解の推定は、時間単位毎に生成した二重差の組み合わせを用いて連立方程式を作成し、作成した連立方程式を最小二乗法によって解くことにより実行される。連立方程式はエポック毎に生成される。この演算では、基準局測位データ、測位端末測位データおよび基準局10の既知の座標が用いられる。このようにして求められた整数アンビギュイティの実数推定値をフロート解(推測解)と呼ぶ。
【0052】
以上のようにして求められたフロート解は実数であるのに対して、整数アンビギュイティの真の値は整数である。よって、フロート解を丸めることにより整数値にする作業が必要になる。しかし、フロート解を丸める組み合わせには複数通りの候補が考えられる。従って、候補の中から正しい整数値を検定する必要がある。検定によって整数値バイアスとしてある程度確からしいとされた解をフィックス解(精密測位解)と呼ぶ。実施の形態1ではRTK演算によって得られるAR値を用いて品質チェックを行い、品質チェックの結果に基づいて正しい整数値を検定する。なお、整数値の候補の絞込みを効率化するために基準局測位データが用いられる。
【0053】
<遮蔽用SNRマスク>
次に、遮蔽用SNRマスクについて図4を用いて説明する。なお、図4の横軸は仰角(単位:degree)であり、図4の縦軸は遮蔽用SNRマスクの値(単位:dBHz)である。
【0054】
遮蔽用SNRマスクの値は、仰角が低くなるに応じて高くなるように設定される。なお、遮蔽用SNRマスクの値は、段階的に変化しても良く、連続的に変化しても良い。すなわち、図4に示すように、所定の仰角の範囲では遮蔽用SNRマスクの値が一定で、当該仰角の範囲より仰角が低くなると遮蔽用SNRが不連続に高くなるようにしても良いし、仰角が低くなるにつれて遮蔽用SNRマスクの値が直線状あるいは曲線状に連続的に高くなるようにしても良い。つまり、遮蔽用SNRマスクは、どの仰角においても、低い仰角に対応するSNRマスクの値は、高い仰角に対応するSNRマスクの値を上回らないようになっていればよい。なお、全体として仰角が低くなるにつれて遮蔽用SNRマスクの値が高くなるであれば、この関係が逆になる仰角が存在していても構わない。本明細書では、これらの状態を包括して「遮蔽用SNRマスクの値が、仰角が低くなるに応じて高くなる」と表現している。
【0055】
<測位処理のフロー>
次に、実施の形態1に係る測位処理のフローについて図5を用いて説明する。なお、実施の形態1では、測位端末20が測位処理を行う例を説明する。ただし、本開示の測位処理は、測位端末20によって行われるものに限定されず、例えば、測位システム1の内部に追加された汎用コンピュータによって実行されても良い。また、測位処理を開始するタイミングについては特に限定は無い。例えば、測位端末20の電源が投入された際に、測位処理を開始しても良い。また、測位端末20の入力部203によって測位処理を開始するコマンドが入力された際に、測位処理を開始しても良い。
【0056】
まず、ST501において、プロセッサ201が、記憶部202の記憶内部をクリアする。
【0057】
次に、ST502において、受信部206が、受信可能な全ての衛星のそれぞれから測位信号を受信する。また、ST503において、通信部205が基準局10から基準局測位データを受信する。
【0058】
次に、ST504において、プロセッサ201が、受信部206が受信した測位信号から衛星毎にSNR(Signal Noise Ratio)および仰角を取得する。なお、SNRおよび仰角を取得する手順については、既知であるため、説明を省略する。
【0059】
次に、ST505において、プロセッサ201が、SNRが遮蔽用SNRマスク未満の衛星を、マルチパス衛星と判定し、除外対象として選択する。
【0060】
上記に説明したように、遮蔽用SNRマスクの値は、仰角が低くなるに応じて高くなるように設定されている。従って、プロセッサ201が、SNRが遮蔽用SNRマスク未満衛星を選択することにより、仰角の低いマルチパス衛星を確実に除外することができる。
【0061】
次に、ST506において、プロセッサ201が、除外対象以外の衛星からの測位信号を用いて測位端末測位データを生成する。
【0062】
次に、ST507において、プロセッサ201が、選択した衛星の基準局測位データおよび測位端末測位データを用いて、RTK演算を実行する。
【0063】
次に、ST508において、プロセッサ201が、ST507のRTK演算によって得られたAR値を確認する。
【0064】
そして、ST509において、プロセッサ201が、十分な測位品質が得られたか否かの品質チェックを、AR値を確認することにより行う。
【0065】
AR値が閾値(例えば、3.0)以上の場合(ST509:YES)、ST510において、出力部204が、そのRTK演算の測位解をフィックス解、即ち、精密測位解として出力する。この精密測位解は、測位端末20が設置されている移動体の現在の座標を表すものである。
【0066】
一方、AR値が閾値未満の場合(ST509:NO)、ST511において、出力部204が、そのRTK演算の測位解をフロート解、即ち、推測解として出力する。
【0067】
<効果>
このように、実施の形態1では、遮蔽用SNRマスクの値を、仰角が低くなるに応じて高くなるように設定し、SNRが遮蔽用SNRマスク未満の衛星を除外対象として選択する。これにより、仰角の低いマルチパス衛星を確実に除外してRTK演算を実行することができるので、測位精度の向上を図ることができる。なお、この場合、仰角の低い非マルチパス衛星も除外される可能性が高まるが、仰角の高い(例えば、仰角が25°より大きい)衛星を一定数確保できれば、RTK演算の精度劣化を抑制できる。したがって、非マルチパス衛星を除外することによる精度劣化よりも、マルチパス衛星を除外することによる精度向上の効果の方が大きい。
【0068】
(実施の形態2)
測位端末20周辺の遮蔽物が中仰角(例えば、仰角が25°以上45°以下)の衛星からの信号にも影響を与える場合、実施の形態1で説明したように、低仰角の衛星について、SNRが極めて高いもの以外を除外することにより、マルチパス衛星を確実に除外した方が測位精度を向上させることができる。
【0069】
一方、測位端末20周辺の遮蔽物が低仰角の衛星からの信号のみに影響を与える場合、SNRが極めて低い衛星以外を残してRTK演算に使用した方が測位精度を向上させることができる可能性もある。例えば、周囲に極めて低い遮蔽物しかない場合、測位端末20は、低仰角の衛星からも直接波を受信できる可能性が高い。しかしながら、前述した通り、低仰角の衛星からの信号のSNRは直接波であるか否かにかかわらず低くなりがちである。そのため、除外する衛星の選択に用いるSNRの閾値を高くしすぎると、低仰角の衛星からの直接波をRTK演算に使用することができなくなってしまう。このような場合は、除外する衛星を選択する基準を緩め、SNRが極めて低い衛星以外を残してRTK演算に使用した方が測位精度を向上させることができる。
【0070】
実施の形態2は、上記の点に着目したものである。なお、実施の形態2において、測位システム1の構成、基準局10の構成および測位端末20の構成は実施の形態1で説明した内容と同一であるので、その説明を省略する。ただし、実施の形態2では、測位端末20の記憶部202に、遮蔽用SNRマスク(第1閾値)に加えて、切替閾値、通常SNRマスク(第2閾値)が記憶されている。
【0071】
<切替閾値>
次に、遮蔽用SNRマスクについて図6を用いて説明する。なお、図6の横軸は仰角(単位:degree)であり、図6の縦軸は切替閾値の値(単位:dBHz)である。
【0072】
切替閾値の値は、仰角が基準仰角値以上の第1領域では、仰角が低くなるに応じて高くなるように設定され、仰角が基準仰角値未満の第2領域では、一定値となるように設定される。基準仰角値は、予めユーザによって設定される。
【0073】
なお、切替閾値の第1領域の値は、段階的に変化しても良く、連続的に変化しても良い。すなわち、図6に示すように、所定の仰角の範囲では切替閾値の値が一定で、当該仰角の範囲より仰角が低くなると切替閾値が不連続に高くなるようにしても良いし、仰角が低くなるにつれて切替閾値の値が直線状あるいは曲線状に連続的に高くなるようにしても良い。つまり、切替閾値の第1領域は、どの仰角においても、低い仰角に対応する切替閾値の値は、高い仰角に対応する切替閾値の値を上回らないようになっていればよい。本明細書では、これらの状態を包括して「切替閾値の値が、仰角が低くなるに応じて高くなる」と表現している。
【0074】
また、切替閾値の第2領域の値は、通常SNRマスクの値よりも低く設定される。
【0075】
切替閾値を上述のように設定することにより、中程度の仰角(例えば30°)まで遮蔽用SNRマスクへの切り替えが発生しなかった場合には、遮蔽用SNRマスクへの切り替えを発生しにくくすることができる。これにより、低仰角の衛星からの信号が過度に除外される可能性を低減させることができる。また、第2領域における切替閾値の値は通常SNRマスクよりも更に低く設定されるので、測位端末20は、中程度の仰角まで遮蔽用SNRマスクへの切り替えが発生しなかった場合であっても、SNRが極めて低い場合には遮蔽用SNRマスクへの厳しい基準で衛星を除外するか否かを判断することができる。
【0076】
<通常SNRマスク>
次に、通常SNRマスクについて図7を用いて説明する。なお、図7の横軸は仰角(単位:degree)であり、図7の縦軸は通常SNRマスクの値(単位:dBHz)である。
【0077】
通常SNRマスクは、図7に示すように、通常SNRマスクの値が、仰角に依らず、一定値となるように設定される。なお、通常SNRマスクは、仰角が高くなるにつれて通常SNRマスクの値が直線状あるいは曲線状に連続的に高くなるように設定されても良い。ここで「仰角が高くなるにつれて値が高くなるように設定する」という表現は、値が段階的に上がる場合、値が連続的に上がる場合、値が一部の仰角において下がっていても全体的に上がる場合のすべてを含む。なお、仰角が高くなるにつれて値が高くなる通常SNRマスクは、各仰角において、その仰角ではマルチパスの影響が少ない衛星を選んでRTK演算に使用することができるという特徴を持つ。一般的に、高仰角の衛星からの信号ほどSNRが高くなるため、高仰角の衛星からの信号ほど平均的なSNRも高い。そこで、仰角が高くなるにつれて値が高くなる通常SNRマスクを用いることで、それぞれの仰角における水準と照らし合わせてSNRが高い衛星を選ぶことができる。これにより、多様な仰角の衛星からの信号をRTK演算に利用しやすくなるため、一部の仰角において大気の乱れなどが発生していたとしても、その影響を抑制することができる。
【0078】
<測位処理のフロー>
次に、実施の形態2に係る測位処理のフローについて図8を用いて説明する。なお、図8に示すフローにおいて、図5に示したフローと共通するステップには、図5と同一符号を付してその詳しい説明を省略する。図8に示すフローは、図5に示したフローと比較して、ST505が削除され、代わりにST601、ST602およびST603が追加される。
【0079】
ST504の後、ST601において、プロセッサ201が、仰角が高い衛星から順にSNRと切替閾値とを比較し、SNRが切替閾値未満の衛星(以下、「判定基準衛星」という)を選択する。
【0080】
次に、ST602において、プロセッサ201が、判定基準衛星より仰角が高い衛星の中で、SNRが通常SNRマスク未満の衛星を、マルチパス衛星と判定し、除外対象として選択する。
【0081】
また、ST603において、プロセッサ201が、判定基準衛星と、判定基準衛星より仰角が低い衛星の中で、SNRが遮蔽用SNRマスク未満の衛星を、マルチパス衛星と判定し、除外対象として選択する。その後、フローは、ST506に進む。
【0082】
<効果>
このように、実施の形態2では、仰角が高い衛星から順にSNRと切替閾値とを比較し、SNRが切替閾値未満の判定基準衛星を選択する。そして、判定基準衛星より仰角が高い衛星の中で、SNRが通常SNRマスク未満の衛星、および、判定基準衛星と、判定基準衛星より仰角が低い衛星の中で、SNRが遮蔽用SNRマスク未満の衛星を、除外対象として選択する。判定基準衛星が存在するということはSNRが低い値の衛星が見つかったことを意味するので、その仰角よりも低い仰角ではSNRが予測困難な値になる可能性が高い。そこで、実施の形態2では、判定基準衛星より仰角が低い衛星に対して、遮蔽用SNRマスクによる衛星の選別を行うことで、マルチパスが発生しやすい環境にあるにもかかわらずSNRが高い値になった衛星も除外できるようにする。
【0083】
なお、判定基準衛星が存在しない場合には、遮蔽用SNRマスクによる衛星の選別は行われず、通常SNRマスクによる衛星の選別のみが行われる。この場合、低仰角の衛星からの信号についてもSNRが安定して高いため、マルチパス衛星が存在しない可能性が高く、マルチパス衛星が残ることに起因する精度劣化よりも、低仰角衛星を利用することによる精度向上の効果の方が大きい。
【0084】
したがって、実施の形態2によれば、さらに測位精度の向上を図ることができる。
【0085】
<バリエーション1>
実施の形態2では、方位によって空間領域を複数に分割し、分割した空間領域(以下、「分割領域」という)毎に、ST601乃至ST603の処理を行っても良い。例えば、図9に示すように、方位0°(N方向)、60°、120°、180°、240°、300°で空間領域を分割し、6つの分割領域毎にST601乃至ST603の処理を行っても良い。
【0086】
なお、この場合の空間領域とは、測位端末20を中心として、方位角が0°から360°、仰角が0°から90°の3次元空間を指す。
【0087】
これにより、方位ごとに判定基準衛星が存在するかどうかを確認し、遮蔽用SNRマスクを適用する仰角を変えることができる。遮蔽物が特定の方位にしか存在しなかったり、方位によって遮蔽物の高さが異なったりする場合、方位によってマルチパスの発生し易さが異なる。したがって、判定基準衛星を方位ごとに選び、遮蔽用SNRマスクを適用する仰角を方位ごとに設定することで、遮蔽物が存在しない、あるいは、低い遮蔽物しか存在しない方位については、遮蔽用SNRマスクによる厳しい選別が行われる仰角を下げることができる。これにより、マルチパス衛星が存在する可能性の低い方位については低仰角の衛星からの信号もRTK演算に反映することができるので、遮蔽物が特定の方位にのみ存在するような場合、さらに測位精度の向上を図ることができる。
【0088】
<バリエーション2>
また、実施の形態2では、判定基準衛星の方位を基準(中心)に空間領域を分割しても良い。例えば、図10に示すように、空間領域を6分割する場合、判定基準衛星#1の方位から+30°、+90°、+150°、+210°、+270°、+330°(=−30°)の各方位で空間領域を分割する。この場合、判定基準衛星が含まれる分割領域は、判定基準衛星の方位を中心として±30°の方位で区切られた領域となる。
【0089】
バリエーション1では、東西南北の方位を基準に空間領域を分割していたが、現実の環境では、遮蔽物となりうる山や高層ビル群が、方位に沿って配置されている可能性は低く、また、遮蔽物が極めて狭い範囲のみに存在する可能性も低い。したがって、最初に見つかった判定基準衛星(すなわち、最も高仰角にもかかわらず、切替閾値を下回った衛星)が存在する方位を基準に空間領域を分割することにより、最も高い遮蔽物を含む範囲と、その他の範囲を区別して、遮蔽用SNRマスクを適用すべきかを評価することができる。これにより、効果的に方位分割を行うことができ、さらに測位精度の向上を図ることができる。
【0090】
<バリエーション3>
また、実施の形態2では、判定基準衛星が含まれる分割領域を、判定基準衛星の仰角が低くなるに応じて広く設定しても良い。例えば、図11に示すように、判定基準衛星#1の仰角が60°の場合、判定基準衛星#1の方位から±30°を、判定基準衛星#1が含まれる分割領域とし、判定基準衛星#2の仰角が30°の場合、判定基準衛星#2の方位から±45°を、判定基準衛星#2が含まれる分割領域とする。なお、判定基準衛星の仰角が低くなるに応じて広く設定するという表現は、分割領域が段階的に広がる場合、連続的に広がる場合、一部の仰角において狭まっていても全体的に広がる場合のすべてを含む。
【0091】
現実の環境では、より高さが低いほど、遮蔽物となる建造物等が存在する可能性が高まる。そのため、判定基準衛星の仰角が低い程、その方位には広い角度で遮蔽物が存在する可能性が高いと考えられることから、判定基準衛星が含まれる分割領域を、判定基準衛星の仰角が低くなるに従って広く設定することにより、効果的に方位分割を行うことができ、さらに測位精度の向上を図ることができる。
【0092】
なお、方位を分割する基準となる判定基準衛星は、高仰角の衛星から評価していった際に最初に見つかる判定基準衛星であるものとしてもよいし、複数の判定基準衛星を抽出し、それぞれの判定基準衛星を囲むよう分割の範囲を決定するものとしてもよい。
【0093】
前者の場合、測位端末は、最初に判定基準衛星が見つかった時点で、全方位の分割領域の範囲が、その判定基準衛星の仰角に応じて決定される。
【0094】
後者の場合、測位端末は、最初の判定基準衛星が見つかった時点では、その判定基準衛星を囲む範囲と、それ以外の全方位に分割する。例えば、上記の例で仰角60°の判定基準衛星#1が見つかった場合、判定基準衛星#1の周囲±30°と、それ以外の300°の範囲に分割する。その後、それ以外の範囲(上記の具体例だと300°の範囲)において更に判定基準衛星の探索を行い、判定基準衛星が見つかった場合は、その判定基準衛星を囲む範囲と、それ以外の方位に分割する。例えば、仰角30°の判定基準衛星#2が見つかった場合、300°の範囲を、判定基準衛星の周囲±45°の範囲と、残りの210°の範囲に分ける。このような処理を仰角が0°になるまで繰り返すことにより、それぞれの方位における判定基準衛星に合わせた範囲で分割領域を設定することができる。なお、複数の判定基準衛星間で分割領域が重複する領域については、基本的にはより高仰角の判定基準衛星に対応する分割領域に属するものとして処理する。高仰角において判定基準衛星が見つかっている場合、低仰角の評価を待つまでもなく、すでにその判定基準衛星周辺の方位はマルチパスの影響が発生している可能性が高いためである。ただし、逆に、低仰角の判定基準衛星に対応する分割領域に属するものとしてもよい。このような基準が有益な例としては、高仰角の判定基準衛星の分割領域に属するものとして評価すると利用できる衛星が少なすぎる場合などが考えられる。また、後者のように複数の判定基準衛星を評価していく場合、バリエーション2と同様に、分割領域の角度は仰角に関わらず固定の幅(バリエーション2では60度ごと)としてもよい。
【0095】
<バリエーション4>
また、実施の形態2では、複数の分割パターンのそれぞれで空間領域を分割し、分割パターン毎に測位演算を並列に行い、最も良好な測位演算によって得られた測位解を出力するようにしても良い。複数の分割パターンの例としては、例えば、分割の角度を変えることが考えられる。また、他の例として、分割の手順を変えてもよい。例えば、上述したバリエーション1から3の何れかを使用することが考えられる。
【0096】
遮蔽物の状況は測位地点毎に異なるので、最適な分割パターンも測位地点毎に変化すると考えられることから、分割パターン毎に測位演算を並列に行い、最も良好な測位演算によって得られた測位解を出力することにより、さらに測位精度の向上を図ることができる。
【0097】
<バリエーション5>
また、実施の形態2では、複数の分割パターンの中で、最も良好な測位演算の分割パターンを測位地点と対応付けて記憶し、測位地点に対応する分割パターンで空間領域を分割するようにしても良い。
【0098】
これにより、演算負荷を軽減させつつ、測位精度の向上を図ることができる。
【0099】
なお、本開示は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施の形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【0100】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0101】
上記各実施の形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0102】
また、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力と出力を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、各機能ブロックの一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0103】
また、集積回路化の手法にはLSIに限らず、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続、設定が再構成可能なリコンフィグラブル・プロセッサーを利用してもよい。
【0104】
更には、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、別技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあり得る。
【0105】
なお、本開示は、無線通信装置、または制御装置において実行される制御方法として表現することが可能である。また、本開示は、かかる制御方法をコンピュータにより動作させるためのプログラムとして表現することも可能である。更に、本開示は、かかるプログラムをコンピュータによる読み取りが可能な状態で記録した記録媒体として表現することも可能である。すなわち、本開示は、装置、方法、プログラム、記録媒体のうち、いずれのカテゴリーにおいても表現可能である。
【0106】
また、本開示は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施の形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示は、衛星からの信号を利用して干渉測位を行う場合に好適である。
【符号の説明】
【0108】
1 測位システム
10 基準局
20 測位端末
101、201 プロセッサ
102、202 記憶部
103、203 入力部
104、204 出力部
105、205 通信部
106、206 受信部
110、210 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11