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特開2019-219298光周波数多重型コヒーレントOTDR、試験方法、信号処理装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-219298(P2019-219298A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】光周波数多重型コヒーレントOTDR、試験方法、信号処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20191129BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   G01M11/02 J
   G01M11/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-117419(P2018-117419)
(22)【出願日】2018年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】飯田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】廣田 栄伸
(72)【発明者】
【氏名】植松 卓威
【テーマコード(参考)】
2G086
【Fターム(参考)】
2G086CC03
2G086CC04
(57)【要約】
【課題】DFBレーザを用いた場合であっても、ファイバレーザや外部共振型レーザを用いたときと同等の空間分解能を維持できる光周波数多重型コヒーレントOTDR、試験方法、信号処理装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るOTDRは、 光源からの光の光周波数を所定時間毎に所定周波数間隔で変化させて試験光パルスを生成し、前記試験光パルスを順次、被試験光ファイバに入射する光入射手段と、前記光源からの光を局発光として前記被試験光ファイバからの後方散乱光をコヒーレント検波して受信信号を取得する光受信手段と、前記受信信号を前記所定周波数毎に分離し、周波数分離された信号の振幅をそれぞれ自乗して自乗値を生成し、前記自乗値に対してウィナーフィルタ処理を施した後に前記試験光パルスを前記被試験光ファイバに入射した時の遅延時間をそれぞれ補償して加算平均する演算手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光周波数多重型コヒーレントOTDR(Optical Time Domain Reflectometry)であって、
光源からの光の光周波数を所定時間毎に所定周波数間隔で変化させて試験光パルスを生成し、前記試験光パルスを順次、被試験光ファイバに入射する光入射手段と、
前記光源からの光を局発光として前記被試験光ファイバからの後方散乱光をコヒーレント検波して受信信号を取得する光受信手段と、
前記受信信号を前記所定周波数毎に分離し、周波数分離された信号の振幅をそれぞれ自乗して自乗値を生成し、前記自乗値に対してウィナーフィルタ処理を施した後に前記試験光パルスを前記被試験光ファイバに入射した時の遅延時間をそれぞれ補償して加算平均する演算手段と、
を備えることを特徴とする光周波数多重型コヒーレントOTDR。
【請求項2】
前記ウィナーフィルタ処理は、フーリエ変換した前記自乗値に、フーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの二乗に任意値を加算した値でフーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの複素共役を除した値を乗算し、逆フーリエ変換する処理であることを特徴とする請求項1に記載の光周波数多重型コヒーレントOTDR。
【請求項3】
前記光入射手段は、前記光源の光の波長と異なる波長のダミー光を前記試験光パルスに重畳することを特徴とする請求項1又は2に記載の光周波数多重型コヒーレントOTDR。
【請求項4】
光周波数多重型コヒーレントOTDRが行う試験方法であって、
光源からの光の光周波数を所定時間毎に所定周波数間隔で変化させて試験光パルスを生成し、前記試験光パルスを順次、被試験光ファイバに入射する光入射手順と、
前記光源からの光を局発光として前記被試験光ファイバからの後方散乱光をコヒーレント検波して受信信号を取得する光受信手順と、
前記受信信号を前記所定周波数毎に分離し、周波数分離された信号の振幅をそれぞれ自乗して自乗値を生成し、前記自乗値に対してウィナーフィルタ処理を施した後に前記試験光パルスを前記被試験光ファイバに入射した時の遅延時間をそれぞれ補償して加算平均する演算手順と、
を行うことを特徴とする試験方法。
【請求項5】
前記ウィナーフィルタ処理は、フーリエ変換した前記自乗値に、フーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの二乗に任意値を加算した値でフーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの複素共役を除した値を乗算し、逆フーリエ変換する処理であることを特徴とする請求項4に記載の試験方法。
【請求項6】
光源からの光の光周波数を所定時間毎に所定周波数間隔で変化させて試験光パルスを生成し、前記試験光パルスを順次、被試験光ファイバに入射する光入射手段と、
前記光源からの光を局発光として前記被試験光ファイバからの後方散乱光をコヒーレント検波して受信信号を取得する光受信手段と、
を備える光周波数多重型コヒーレントOTDRの信号処理装置であって、
前記受信信号を前記所定周波数毎に分離し、周波数分離された信号の振幅をそれぞれ自乗して自乗値を生成し、前記自乗値に対してウィナーフィルタ処理を施した後に前記試験光パルスを前記被試験光ファイバに入射した時の遅延時間をそれぞれ補償して加算平均することを特徴とする信号処理装置。
【請求項7】
前記ウィナーフィルタ処理は、フーリエ変換した前記自乗値に、フーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの二乗に任意値を加算した値でフーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの複素共役を除した値を乗算し、逆フーリエ変換する処理であることを特徴とする請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の信号処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光線路の光損失分布や断線位置等を測定するための光パルス試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被試験光ファイバ(Fiber under test、以後FUTと称する)の距離や光損失分布、断線位置等を測定する技術として、光パルス試験器(Optical Time Domain Reflectometry、以後OTDRと称する)がある。このOTDRは、FUTに試験光パルスを送出し、試験光パルスによってFUT中で生じる反射光やレイリー後方散乱光(以後、単に後方散乱光と称する)のパワーを時間領域で測定することでFUTの各地点における光の反射率分布(以後、OTDR波形と称する)を測定する装置、方法である。
【0003】
海底光ケーブル試験用のOTDRとして特許文献1に光周波数多重型コヒーレントOTDR(以後、FDM−OTDRと称する)が開示されている。FDM−OTDRは、それぞれ光周波数の異なる複数の光パルスを時間軸に沿って並べた試験光パルス列をFUTに入射し、FUT中で生じた複数の光パルス分の後方散乱光を一度に受信処理することで、複数回分の測定を一度に測定できる特徴を持つ。
【0004】
以下に、特許文献1に記載されるFDM−OTDRについて簡単に説明する。図4は、特許文献1に記載されるFDM−OTDRの構成を説明する図である。当該FDM−OTDRは、光源11からの出力光を分岐素子12で2つに分岐し、この分岐された光の一方を局発光とし、他方を試験光とし、光周波数制御器13で所定時間間隔毎に試験光の光周波数を所定間隔だけ変化させ、試験光を光パルス化し、被試験光ファイバ18に繰り返し入射する(図5参照)。そして、当該FDM−OTDRは、被試験光ファイバ18の各地点で反射または散乱により発生する後方散乱光と前記局発光を結合素子19で結合し、その結合光を光受信して電流に変換し、この電流を周波数毎に分離し、試験光の複数の周波数成分による被試験光ファイバ18からの反射光および後方散乱光の反射率分布を演算処理装置25で求める。
【0005】
ここで、光源11からの出力光について、光周波数制御器13、演算処理装置25によって周波数を分離する方法は、次の条件を満足する必要がある。
(条件1)光源11からの出力光の線幅は、光周波数制御器13により所定周波数を持続させる時間の逆数よりも小さいこと。
(条件2)光周波数制御器13による周波数シフト間隔は、周波数を持続させる所定時間間隔の逆数の自然数倍であること。
(条件3)光周波数制御器13による所定周波数シフト総量は、数値化処理器24のサンプリングレートの1/2以下であること。
(条件4)演算処理によるフーリエ変換の周波数分解能の自然数倍は、光周波数制御器13による周波数シフト間隔であること。
【0006】
通常、光パルス試験器は一測定につき1つのOTDR波形しか取得できない(通常光パルス試験器)が、上記条件を満たすように、試験光の周波数をY個、所定時間間隔毎に所定周波数間隔だけ変化させ、周波数分離して測定することで、Y個分のOTDR波形を同時に取得できる。これらの波形を加算平均処理することで、一回の測定当たりの加算数をY倍多くすることができる。このため、当該FDM−OTDRは、通常光パルス試験器と同じ測定時間で、5log√Y(dB)分のSWDRを向上させることができる(図6参照)。また、このことは、通常光パルス試験器と同じダイナミックレンジを得るのに、当該FDM−OTDRは測定時間を1/Y短縮できることも意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−164075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載のFDM−OTDRでは試験光パルスを発生させるレーザ光源のスペクトル線幅が試験光パルス幅の逆数となる信号帯域より十分小さくない場合、デッドゾーンが大きくなり、正しいファイバの損失分布および故障点での反射イベントを示した波形が精度良く得られないといった課題がある。
【0009】
一般に、レーザ光源の線幅が試験光パルスの帯域に比べ十分小さい条件を満たさない場合、それぞれの光周波数の後方散乱光信号スペクトルサードローブが高くなり、異なる周波数を持った試験光パルス同士のスペクトル成分の重なりが増加し、十分な性能を有した周波数応答フィルタを用いたとしても周波数分離が実行できなくなる。上記の理由により異なる周波数を持った試験光パルスを時間軸に沿って並べたFDM−OTDRは、周波数分離が十分でない場合、異なる時間に入射した試験パルス光の影響により測定で得られる波形が時間的に広がる傾向を示し、反射や中継機の利得といった急峻な反射率変動が起きる地点において大きなデッドゾーンが生じてしまうためである。
【0010】
上記の理由により、FDM−OTDRでは、試験光パルス幅の逆数となる信号帯域より十分小さいスペクトル線幅を持つ試験光パルス発生用のレーザ光源を用いる必要がある。例えば、海底光ケーブル測定でOTDR波形に要求される空間分解能1kmでは、試験パルス幅は10μsとなり、信号帯域は100kHzとなる。よって、空間分解能1kmの条件下では、信号帯域100kHzより十分小さい10kHz以下の線幅のレーザ光源を用いることが必要となる。
【0011】
しかしながら、通常、光通信で用いられている分布帰環型(Distributed Feedback:以下、DFBと称する)レーザは線幅100kHz程度となり、線幅10kHz以下の光学性能は満たさない。
【0012】
一般にレーザの線幅は、レーザの共振器長に依存するため、共振器長を長く取ることができる構造を持ったレーザ、例えばファイバレーザや外部共振型レーザといったレーザであれば線幅10kHz以下の光学特性を満足する。このようなレーザは、構成部品数も多くDFBレーザに比べれば一般に高価となる。
【0013】
以上より、FDM−OTDRには、空間分解能を高めて正しいファイバの損失分布および故障点での反射イベントを示した波形を測定するためには、高価なファイバレーザや外部共振型レーザを試験光パルス生成用の光源として使用しなければならならず、装置価格を低減することが困難という課題がある。
【0014】
そこで、本発明は上記課題を解決するために、DFBレーザを用いた場合であっても、ファイバレーザや外部共振型レーザを用いたときと同等の空間分解能を維持できる光周波数多重型コヒーレントOTDR、試験方法、信号処理装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係るFDM−OTDRでは、試験光の被試験光ファイバからの後方散乱光の反射率分布を求める演算処理において、フーリエ変換後の信号に対してウィナーフィルタの処理を施すこととした。
【0016】
具体的には、本発明に係る光周波数多重型コヒーレントOTDRは、
光源からの光の光周波数を所定時間毎に所定周波数間隔で変化させて試験光パルスを生成し、前記試験光パルスを順次、被試験光ファイバに入射する光入射手段と、
前記光源からの光を局発光として前記被試験光ファイバからの後方散乱光をコヒーレント検波して受信信号を取得する光受信手段と、
前記受信信号を前記所定周波数毎に分離し、周波数分離された信号の振幅をそれぞれ自乗して自乗値を生成し、前記自乗値に対してウィナーフィルタ処理を施した後に前記試験光パルスを前記被試験光ファイバに入射した時の遅延時間をそれぞれ補償して加算平均する演算手段と、
を備える。
【0017】
また、本発明に係る試験方法は、
光源からの光の光周波数を所定時間毎に所定周波数間隔で変化させて試験光パルスを生成し、前記試験光パルスを順次、被試験光ファイバに入射する光入射手順と、
前記光源からの光を局発光として前記被試験光ファイバからの後方散乱光をコヒーレント検波して受信信号を取得する光受信手順と、
前記受信信号を前記所定周波数毎に分離し、周波数分離された信号の振幅をそれぞれ自乗して自乗値を生成し、前記自乗値に対してウィナーフィルタ処理を施した後に前記試験光パルスを前記被試験光ファイバに入射した時の遅延時間をそれぞれ補償して加算平均する演算手順と、
を行う。
【0018】
さらに、本発明に係る信号処理装置は、
光源からの光の光周波数を所定時間毎に所定周波数間隔で変化させて試験光パルスを生成し、前記試験光パルスを順次、被試験光ファイバに入射する光入射手段と、
前記光源からの光を局発光として前記被試験光ファイバからの後方散乱光をコヒーレント検波して受信信号を取得する光受信手段と、
を備える光周波数多重型コヒーレントOTDRの信号処理装置であって、
前記受信信号を前記所定周波数毎に分離し、周波数分離された信号の振幅をそれぞれ自乗して自乗値を生成し、前記自乗値に対してウィナーフィルタ処理を施した後に前記試験光パルスを前記被試験光ファイバに入射した時の遅延時間をそれぞれ補償して加算平均することを特徴とする。
【0019】
ウィナーフィルタを用いることで、FUTからの戻り光を受信した受信信号に含まれるレーザ光源のスペクトル線幅の影響を補償することができる。このため、安価なDFBレーザを光源に使用してもデッドゾーンの広がりを低減することができる。従って、本発明は、DFBレーザを用いた場合であっても、ファイバレーザや外部共振型レーザを用いたときと同等の空間分解能を維持できる光周波数多重型コヒーレントOTDR、試験方法、及び信号処理装置を提供することができる。
【0020】
ここで、ウィナーフィルタ処理は、フーリエ変換した前記自乗値に、フーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの二乗に任意値を加算した値でフーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの複素共役を除した値を乗算し、逆フーリエ変換する処理であることが好ましい。
【0021】
また、前記光入射手段は、前記光源の光の波長と異なる波長のダミー光を前記試験光パルスに重畳することが好ましい。ダミー光を試験光パルスに重畳させて試験光全体の強度変動を抑えることで、その強度を通信用の信号光強度とほぼ同程度に調整し、光サージの影響を抑制することができる。
【0022】
また、本発明に係るプログラムは、前記信号処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。前記信号処理装置はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、DFBレーザを用いた場合であっても、ファイバレーザや外部共振型レーザを用いたときと同等の空間分解能を維持できる光周波数多重型コヒーレントOTDR、試験方法、信号処理装置、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る光周波数多重型コヒーレントOTDRの構成を説明する図である。
図2】本発明に係る光周波数多重型コヒーレントOTDRの信号処理方法を説明する図である。
図3】本発明に係る光周波数多重型コヒーレントOTDRの効果を説明する図である。
図4】特許文献1に記載される光周波数多重型コヒーレントOTDRの構成を説明する図である。
図5】光周波数多重型コヒーレントOTDRの試験光を説明する図である。
図6】光周波数多重型コヒーレントOTDRの効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0026】
図1は、本実施形態の光周波数多重型コヒーレントOTDR301(以下、光パルス試験装置301と記載することがある。)の構成を示す図である。光パルス試験装置301は、試験光の各周波数成分によるFUTからの反射光および後方散乱光の反射率分布を求めることができる。
【0027】
光パルス試験装置301は、光周波数多重型コヒーレントOTDRであって、
光源からの光の光周波数を所定時間毎に所定周波数間隔で変化させて試験光パルスを生成し、前記試験光パルスを順次、被試験光ファイバに入射する光入射手段と、
前記光源からの光を局発光として前記被試験光ファイバからの後方散乱光をコヒーレント検波して受信信号を取得する光受信手段と、
前記受信信号を前記所定周波数毎に分離し、周波数分離された信号の振幅をそれぞれ自乗して自乗値を生成し、前記自乗値に対してウィナーフィルタ処理を施した後に前記試験光パルスを前記被試験光ファイバに入射した時の遅延時間をそれぞれ補償して加算平均する演算手段と、
を備える。
【0028】
[光入射手段]
スペクトル線幅Δνの光波を発生する第一の光源11からの出力光は合分波器12で二系統に分岐され、分岐された光の一方を局発光とし、他方は試験光として光周波数制御器13に入射される。ここで、合分波器12は具体的には光カプラ等で構成される。
【0029】
光周波数制御器13に入射された試験光は、光周波数制御器13によって所定時間間隔T毎に所定周波数f’(k=1、2、…、N、Nは周波数多重数)だけ周波数シフトされる。本実施例では、T=10μs、N=40、f’=108.4+(k−1)×0.8MHzとする。ここで光周波数制御器13は、搬送波や高次変調側波帯を抑圧し、バイアス電圧調整により、+1次もしくは−1次の変調側波帯のみ出力できる搬送波抑圧光単側波帯変調器(SSB−SC変調器)を用いる。本実施例では、+1次の変調側波帯が出力されるようバイアス調整を行う。
【0030】
上記によって周波数制御を受けた試験光は、光パルス化処理器16に入力され、パルス発生器28で制御されたタイミングおよびパルス幅で光パルス化される。本実施例では、光パルスの時間波形は矩形波とする。この光パルス化処理器16は、具体的には音響光学変調器をパルス駆動した音響光学スイッチである。ここで、音響光学スイッチからの出力光は予め音響光学スイッチ製造時に設定されている固定の周波数シフト(fAOMとする)を受けるため、各周波数の試験光パルスは局発光に対して
|f’+fAOM|=f
の周波数シフト量を持つことになる。
本実施例では、fAOM=−100[MHz]とするため、f=8.4+k×0.8[MHz]となる。
【0031】
なお、光周波数制御器13と光パルス化処理器16は、信号タイミング制御器17によって同期された正弦波発生器14とパルス発生器28によってそれぞれ駆動されており、光周波数制御器13で周波数制御を受けた時間の試験光のみが光パルス化して出力されるようにタイミング調整されている。
【0032】
第二の光源31は、第一の光源11とは波長の異なる光源である。例えば、FUTが海底光増幅中継伝送システムの光ファイバの場合に、第二の光源31の光をダミー光として試験光パルスに重畳させて試験光全体の強度変動を抑え、その強度を通信用の信号光強度とほぼ同程度に調整することで光サージの影響を抑制することができる。第二の光源31からのダミー光は、2つの光パルス化処理器(16、36)によって消光比を高くした状態で試験光パルスに重畳される。
【0033】
光パルス化処理器16より出力される試験光パルスとダミーパルスは光増幅器15により増幅された後、サーキュレータ17を通過し、FUTに入射される。
【0034】
[光受信手段]
試験光パルスによってFUT中で生じた後方散乱光は、サーキュレータ17を通過した後、偏波によるコヒーレント検波効率の変動を抑えるため偏波制御器29によって測定ごとに偏波状態を変えられた局発光と合分波器19で合波し、バランス型光受信器20で受信される。バランス型光受信器20から出力される後方散乱光と局発光のビート信号は帯域ろ過フィルタ23によって、不要な高周波成分がカットされた後、数値化処理器24でサンプリングされる。
【0035】
[演算手段]
サンプリングされた後の各周波数成分のビート信号は数値演算処理器25によって周波数分離され、全て加算平均処理のために足し合わされる。最後に、一連の測定および演算処理を繰り返し行い、得られた結果について加算平均処理し、処理された数値列を対数表示し、最終的にOTDR波形を得ることができる。
【0036】
図2(i)は、OTDR波形を得るために、特許文献1の演算処理器25にて行われる、サンプリングされた信号に対する周波数分離演算処理の方法を説明する図である。ここで、反射光と局発光の偏波面は常に一致しているものと仮定して記述する。まず任意の位置τにて反射したフレネル反射光の受信信号i(t)は、以下のように記述される。
【数1】
【数2】
ここで、w(t)は時刻tにおける入射試験パルスの強度、θ(t)は時刻tにおける位相雑音を表す。式(1)は特許文献1の式(18)に相当する。
【0037】
受信信号i(t)を周波数分離処理するために、以下の短時間フーリエ変換を行う。
【数3】
ここで、wは窓関数を表す。式(3)は窓関数wを時間軸上でτだけ移動させながら信号i(t)との積をとった信号w(t−τ)i(t)に対して、フーリエ変換を行っていることを示す。式(3)は特許文献1の式(19)に相当する。
【0038】
上記の演算処理を行うことで、受信信号i(t)について、周波数分離処理された中心周波数fの試験光パルスによる反射光の振幅I(f,τ)を得ることができる。
【0039】
周波数分離された反射光の振幅I(f,τ)を自乗し、各周波数の信号毎にパルス入射時の遅延時間(k−1)Tをそれぞれ時間シフトさせ、N波分の周波数信号を加算平均処理する。即ち、式(3−1)よりFDM−OTDRにおけるフレネル反射波形を得られる。
【数3-1】
【0040】
以上の方法が、図2(i)に示した通常の周波数分離の信号処理方法となる。
【0041】
OTDR波形においても同じ信号処理方法にて波形を表示する。OTDR波形は、フェーディング雑音と偏波の影響を無視すれば、下記の1次元インパルス応答からシミュレートすることができる。
【数3-2】
【0042】
以下、光源11のレーザ線幅が信号帯域に比べ十分小さくない場合の周波数分離信号処理について説明する。
まず、式(3)は、式(6)のように変形できる。
【数6】
ここで、F[・]はフーリエ変換を示し、W(f)とI(f)はそれぞれ
【数7】
【数8】
を示す。
【0043】
ここで、受信信号のパワースペクトルS(f)=|I(f)|は、試験光パルスのパワースペクトルS(f)とレーザ光源の周波数スペクトルS(f)を用いて
【数9】
なる畳み込み演算で表すことができる。ここで、S(f)はパルス形状のみで一意に決まり、レーザ光源の位相雑音特性には依存しない。レーザ光源のFM雑音スペクトルが白色雑音であると仮定すると、レーザ光源の周波数スペクトルS(f)は以下のローレンツ関数で記述できる。
【数10】
ここで、Δνは光源11のスペクトル線幅を示している。
【0044】
これより式(3)の短時間フーリエ変換で求めた受信信号のパワースペクトログラムは式(13)で記述できる。
【数13】
【0045】
式(13)においてS(f)がレーザ光源の線幅の影響を表す。つまり、式(13)を解き、
【数13-1】
を求めることでOTDR波形においてレーザ光源の線幅の影響を補償することができる。
【0046】
以下、式(13)の解き方を示す。簡単のため、
【数13-2】
と書くと、
【数14】
となり、両辺フーリエ変換すると
【数15】
となる。ここで、Y(t)、H(t)、X(t)はそれぞれ、
Y(t)=F[y(f)]、
H(t)=F[h(f)]、
X(t)=F[x(f)]
を示す。式(15)を変形し逆フーリエ変換すると、
【数16】
となり、式(16)が式(13)の解となる。
【0047】
この解は、受信信号|I(f、τ)|に雑音が付加されていない条件下では厳密に正しく、式(13)で表される線形応答に対してY(t)/H(t)は逆フィルタと呼ばれる。|I(f、τ)|に雑音n(f)が付加されている場合は、式(17)のウィナーフィルタにより解く事が可能となる。
【数17】
ここで*は複素共役を意味し、N(t)=F[n(f)]で定義する。一般に
【数18】
は未知の関数となるため、定数Γで置き換える。
【0048】
上述した通り、式(17)で表されるウィナーフィルタを用いることで式(3)にて示した受信信号|I(f、τ)|に含まれるレーザ光源のスペクトル線幅の影響を補償する事が可能となる。
【0049】
すなわち、図2(ii)に示されるように、本実施形態の光パルス試験装置301の数値演算処理器25は、図2(i)の光パルス試験装置の数値演算処理器25の処理に対して、周波数分離された反射光の振幅I(f,τ)の自乗後にウィナーフィルタ処理を施した後にN波分の周波数信号を加算平均処理する。
【0050】
当該ウィナーフィルタ処理は、式(17)であって、フーリエ変換した前記自乗値(Y(t))に、フーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの二乗(|H(t)|)に任意値(定数Γ)を加算した値でフーリエ変換した前記光源の周波数スペクトルの複素共役(H(t))を除した値を乗算し、逆フーリエ変換(F−1[・])する処理である。
【0051】
(実施例)
図3は、全長400kmの光増幅中継線路に対して(i)特許文献1の信号処理方法と(ii)光パルス試験装置301を用いたOTDR波形のシミュレーション結果である。
図3(a)−1及び(b)−1は光増幅中継線路全体に対するOTDR波形、図3(a)−2及び(b)−2は距離150kmにおける増幅器利得40dBの反射率変動点近傍の拡大図である。
【0052】
特許文献1の信号処理方法では、レーザ線幅が4kHzと信号帯域(B=1/T)100kHzに比べ十分小さい場合、デッドゾーンは3.1kmであるのに対し、レーザ線幅が35kHzと信号帯域(B=1/T)100kHzに比べ十分小さくない場合、デッドゾーンは15.0kmと広くなる。
【0053】
一方、光パルス試験装置301を用いることでレーザ線幅が35kHzの場合においてもデッドゾーンは3.1kmとなり、これはレーザ線幅が4kHzの結果と一致する。よって、数値演算処理器25でウィナーフィルタを用いることによって、光源11のレーザ線幅によるデッドゾーン広がりを補償することができる。
【0054】
(発明の効果)
本発明によれば、受信後の信号処理においてにウィナーフィルタを用いることで、高価なスペクトル線幅の小さい挟線幅レーザ光源を用いること無く、通常の光通信で用いられる安価なDFBレーザによる光周波数多重型コヒーレントOTDRを提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
11:第一の光源
12:合分波器
13:光周波数制御器
14:正弦波発生器
15:光増幅器
16:光パルス化処理器
17:サーキュレータ
19:合分波器
20:バランス型光受信器
21:ミキサー
22:正弦波発生器
23:帯域濾過フィルタ
24:数値化処理器
25:数値演算処理器
27:信号タイミング制御器
28:パルス発生器
29:偏波制御器
31:第二の光源
32:合分波器
36:光パルス化処理器
図1
図2
図3
図4
図5
図6