特開2019-219651(P2019-219651A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ AGC株式会社の特許一覧
特開2019-219651反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法
<>
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000003
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000004
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000005
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000006
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000007
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000008
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000009
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000010
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000011
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000012
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000013
  • 特開2019219651-反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-219651(P2019-219651A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20191129BHJP
   G03F 1/52 20120101ALI20191129BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20191129BHJP
   G03F 1/38 20120101ALI20191129BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20191129BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20191129BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20191129BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20191129BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20191129BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20191129BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   G03F1/24
   G03F1/52
   G03F1/54
   G03F1/38
   G03F7/20 503
   G03F1/84
   G03F1/80
   C23C14/14 D
   C23C14/06 A
   C23C14/08 G
   C23C14/06 N
   C23C14/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-90435(P2019-90435)
(22)【出願日】2019年5月13日
(31)【優先権主張番号】特願2018-112601(P2018-112601)
(32)【優先日】2018年6月13日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田邊 容由
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
4K029
【Fターム(参考)】
2H195BC24
2H195CA01
2H195CA07
2H195CA11
2H195CA12
2H195CA15
2H195CA16
2H195CA17
2H195CA22
2H197AA06
2H197CA10
2H197GA01
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA21
4K029BA43
4K029BA58
4K029BB02
4K029BC07
4K029BD00
4K029CA05
4K029CA06
4K029DC03
4K029DC04
4K029DC16
4K029DC34
4K029DC39
4K029EA01
(57)【要約】
【課題】吸収層の表面が酸化して、吸収層の表面に欠陥が生じることを抑制できる反射型マスクブランクを提供する。
【解決手段】反射型マスクブランク10Aは、基板11上に、EUV光を反射する反射層12と、EUV光を吸収する吸収層14とを基板側からこの順に有する反射型マスクブランクであって、吸収層14はSnを含有し、吸収層14の上に吸収層14の酸化を防ぐ防止層15を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収層とを基板側からこの順に有する反射型マスクブランクであって、
前記吸収層はSnを含有し、
前記吸収層の上に前記吸収層の酸化を防ぐ防止層を有する反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記防止層は、Ta、Ru、Cr、Ti及びSiからなる群から選択される1種以上の元素を含有し、Sn及び酸素を含有しない請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記防止層は、Ta単体、Ru単体、Cr単体、Ti単体、Si単体、Taの窒化物、Ruの窒化物、Crの窒化物、Tiの窒化物、Siの窒化物、Taのホウ化物、Ruのホウ化物、Crのホウ化物、Tiのホウ化物、Siのホウ化物及びTaのホウ素窒化物からなる群から選択される1種以上の成分を含有する請求項2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記防止層は、He、Ne、Ar、Kr及びXeからなる群より選択される1種以上の元素を含む請求項1〜3の何れか一項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記防止層の膜厚は、10nm以下である請求項1〜4の何れか一項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記吸収層は、Ta、Cr及びTiからなる群から選択される1種以上の元素を含有する請求項1〜5の何れか一項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記防止層の上に安定層を有する請求項1〜6の何れか一項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記安定層は、Taを含む酸化物、酸窒化物及び酸ホウ化物からなる群から選択される1種以上を含有する請求項7に記載の反射型マスクブランク。
【請求項9】
前記安定層の膜厚は、10nm以下である請求項7又は8に記載の反射型マスクブランク。
【請求項10】
前記反射層と前記吸収層との間に保護層を有する請求項1〜9の何れか一項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項11】
前記防止層の上又は前記防止層の最表面側の層の上にハードマスク層を有する請求項1〜10の何れか一項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項12】
前記ハードマスク層は、Cr、Si及びRuからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む請求項11に記載の反射型マスクブランク。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の反射型マスクブランクの前記吸収層に、パターンが形成されている反射型マスク。
【請求項14】
基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収層とを前記基板側からこの順に有する反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記基板上に前記反射層を形成する工程と、
前記反射層の上に、Snを含有する前記吸収層を形成する工程と、
前記吸収層の上に前記吸収層の酸化を防止する防止層を形成する工程と、
を含む反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項15】
前記吸収層を形成する工程と、前記防止層を形成する工程とを、2元スパッタ法を用いることにより、成膜室内で連続して実施することを特徴とする請求項14に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型マスクブランク、反射型マスク及び反射型マスクブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスを構成する集積回路の微細化に伴い、可視光や紫外光(波長193〜365nm)又はArFエキシマレーザ光(波長193nm)等を用いた従来の露光技術に代わる露光方法として、極端紫外光(Etreme Ultra Violet:以下、「EUV」と呼ぶ。)リソグラフィが検討されている。
【0003】
EUVリソグラフィでは、露光に用いる光源として、ArFエキシマレーザ光よりも短波長のEUV光が用いられる。なお、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長の光をいい、具体的には、波長が0.2〜100nm程度の光である。EUV光としては、例えば、波長が13.5nm程度のEUV光が使用される。
【0004】
EUV光は、あらゆる物質に対して吸収され易いため、従来の露光技術で用いられていた屈折光学系を使用できない。そのため、EUVリソグラフィでは、反射型マスクやミラー等の反射光学系が用いられる。EUVリソグラフィにおいては、反射型マスクが転写用マスクとして用いられる。
【0005】
反射型マスクは、基板上にEUV光を反射する反射層が形成され、該反射層の上にEUV光を吸収する吸収層がパターン状に形成されている。反射型マスクは、基板上に反射層及び吸収層を基板側からこの順に積層して構成された反射型マスクブランクを原板として用いて、吸収層の一部を除去して所定のパターンに形成した後、洗浄液で洗浄することで得られる。
【0006】
反射型マスクに入射したEUV光は、吸収層で吸収され、反射層で反射される。反射されたEUV光は、光学系によって露光材料(レジストを塗布したウエハ)の表面に結像される。これにより、吸収層のパターンが露光材料の表面に転写される。
【0007】
EUVリソグラフィにおいては、EUV光は、通常、約6°傾斜した方向から反射型マスクに入射し、同様に斜めに反射している。そのため、吸収層の膜厚が厚いと、EUV光の光路が遮られる(シャドウィング(Shadowing))可能性がある。シャドウィングの影響により、基板等に吸収層の影となる部分が生じると、露光材料の表面上には反射型マスクのパターンが忠実に転写されず、パターン精度が悪化する可能性がある。一方、吸収層の膜厚を薄くすると、反射型マスクでのEUV光の遮光性能は低下し、EUV光の反射率が大きくなるため、反射型マスクのパターン部分とそれ以外の部分とのコントラストが低下する可能性がある。
【0008】
そこで、反射型マスクのパターンを忠実に転写しつつコントラストの低下を抑える反射型マスクブランクについて検討されている。例えば、特許文献1には、吸収体膜を、Taを主成分として50原子%(at%)以上含み、さらにTe、Sb、Pt、I、Bi、Ir、Os、W、Re、Sn、In、Po、Fe、Au、Hg、Ga及びAlから選ばれた少なくとも1種の元素を含む材料で構成した反射型マスクブランクが記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の反射型マスクブランクでは、吸収体膜の表面が酸化して吸収体膜の表面に微粒子が発生し、吸収体膜の表面に欠陥が生じる可能性がある。例えば、吸収体膜がTa及びSnの合金で形成されている場合、吸収体膜の表面が酸化して、吸収体膜の表面に酸化スズの微粒子が発生する可能性がある。反射型マスクを作製する際に、ドライエッチングで吸収体膜を削るべき場所に微粒子が存在すると、この部分がエッチングされずに吸収体膜が残ったパターン欠陥となる可能性がある。この場合、ウエハ露光時に反射型マスク上のパターン欠陥が、ウエハに塗布した露光材料(レジスト)に転写されるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−273678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一態様は、吸収層の表面が酸化して、吸収層の表面に欠陥が生じることを抑制できる反射型マスクブランクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る反射型マスクブランクの一態様は、基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収層とを基板側からこの順に有する反射型マスクブランクであって、前記吸収層はSnを含有し、前記吸収層の上に吸収層の酸化を防ぐ防止層を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、吸収層の表面が酸化して、吸収層の表面に欠陥が生じることを抑制できる反射型マスクブランクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る反射型マスクブランクの概略断面図である。
図2】反射型マスクブランクの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3】反射型マスクブランクの他の形態の一例を示す概略断面図である。
図4】反射型マスクブランクの他の形態の一例を示す概略断面図である。
図5】反射型マスクの構成の一例を示す概略断面図である。
図6】反射型マスクの製造工程を説明する図である。
図7】第2の実施形態に係る反射型マスクブランクの概略断面図である。
図8】反射型マスクブランクの他の形態の一例を示す概略断面図である。
図9】比較例1の反射型マスクブランクの概略断面図である。
図10】比較例1の反射型マスクブランクの吸収層の表面の観察結果を示す図である。
図11】実施例1の反射型マスクブランクの吸収層の表面の観察結果を示す図である。
図12】実施例2の反射型マスクブランクの吸収層の表面の観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、基板の主面における座標をX軸方向及びY軸方向とし、高さ方向(厚さ方向)をZ軸方向とする。基板の下から上に向かう方向(基板の主面から反射層に向かう方向)を+Z軸方向とし、その反対方向を−Z軸方向とする。以下の説明において、+Z軸方向を上といい、−Z軸方向を下という場合がある。本明細書において数値範囲を示すチルダ「〜」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0016】
<反射型マスクブランク>
第1の実施形態に係る反射型マスクブランクについて説明する。図1は、第1の実施形態に係る反射型マスクブランクの概略断面図である。図1に示すように、反射型マスクブランク10Aは、基板11の上に、反射層12、保護層13、吸収層14及び防止層15をこの順に積層して構成している。
【0017】
(基板)
基板11は、熱膨張係数が小さいことが好ましい。基板11の熱膨張係数が小さい方が、EUV光による露光時の熱により吸収層14に形成されるパターンに歪みが生じるのを抑制できる。基板11の熱膨張係数は、具体的には、20℃において、0±1.0×10-7/℃が好ましく、0±0.3×10-7/℃がより好ましい。
【0018】
熱膨張係数が小さい材料としては、例えば、SiO−TiO系ガラス等を用いることができる。SiO2−TiO2系ガラスは、SiOを90質量%〜95質量%、TiOを5質量%〜10質量%含む石英ガラスを用いることが好ましい。TiOの含有量が5質量%〜10質量%であると、室温付近での線膨張係数が略ゼロであり、室温付近での寸法変化がほとんど生じない。なお、SiO2−TiO2系ガラスは、SiO及びTiO以外の微量成分を含んでもよい。
【0019】
基板11の反射層12が積層される側の第1主面11aは、高い平滑性を有することが好ましい。第1主面11aの平滑性は、原子間力顕微鏡で測定することで得られる表面粗さで評価できる。第1主面11aの表面粗さは、二乗平均平方根粗さRqで、0.15nm以下が好ましい。
【0020】
第1主面11aは、所定の平坦度となるように表面加工されることが好ましい。これは、反射型マスクが高いパターン転写精度及び位置精度を得るためである。基板11は、第1主面11aの所定の領域(例えば、132mm×132mmの領域)において、平坦度が100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。
【0021】
また、基板11は、反射型マスクブランク、パターン形成後の反射型マスクブランク又は反射型マスクの洗浄等に用いる洗浄液に対して耐性を有することが好ましい。
【0022】
さらに、基板11は、基板11上に形成される膜(反射層12等)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有するのが好ましい。例えば、基板11は、65GPa以上の高いヤング率を有しているのが好ましい。
【0023】
基板11の大きさや厚さ等は、反射型マスクの設計値等により適宜決定される。
【0024】
基板11の第1主面11aは、平面視において、矩形や円形に形成されている。本明細書において、矩形とは、長方形や正方形の他、長方形や正方形の角に丸みを形成した形を含む。
【0025】
(反射層)
反射層12は、EUV光に対して高い反射率を有する。具体的には、EUV光が入射角6°で反射層12の表面に入射した際、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。また、反射層12の上に、保護層13及び吸収層14が積層されている場合でも、同様に、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。
【0026】
反射層12は、屈折率の異なる元素を主成分とする各層が周期的に複数積層された多層膜である。反射層12は、一般に、EUV光に対して高い屈折率を示す高屈折率層と、EUV光に対して低い屈折率を示す低屈折率層とを基板11側から交互に複数積層させた多層反射膜が用いられる。
【0027】
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを基板11側からこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、低屈折率層と高屈折率層とをこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。なお、この場合、多層反射膜は、最表面の層(最上層)を、高屈折率層とすることが好ましい。これは、低屈折率層は容易に酸化され易いため、低屈折率層が反射層12の最上層となると、反射層12の反射率が減少する可能性があるためである。
【0028】
高屈折率層としては、Siを含む層を用いることができる。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、B、C、N及びOからなる群から選択される1種以上を含むSi化合物を用いることができる。Siを含む高屈折率層を用いることによって、EUV光の反射率に優れた反射型マスクが得られる。低屈折率層としては、Mo、Ru、Rh及びPtからなる群から選択される金属又はこれらの合金を用いることができる。本実施形態では、低屈折率層がMoを含む層であり、高屈折率層がSiを含む層であることが好ましい。なお、この場合、反射層12の最上層を高屈折率層(Siを含む層)とすることで、最上層(Siを含む層)と保護層13との間に、SiとOとを含むケイ素酸化物層を形成し、反射型マスクの洗浄耐性を向上させる。
【0029】
反射層12は、高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ複数備えているが、高屈折率層同士の膜厚又は低屈折率層同士の膜厚は、必ずしも同じでなくてもよい。
【0030】
反射層12を構成する各層の膜厚及び周期は、使用する膜材料、反射層12に要求されるEUV光の反射率又はEUV光の波長(露光波長)等により適宜選択することができる。例えば、反射層12が波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値を60%以上とする場合、低屈折率層(Moを含む層)と高屈折率層(Siを含む層)とを交互に30周期〜60周期積層したMo/Si多層反射膜が好ましく用いられる。
【0031】
なお、反射層12を構成する各層は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等の公知の成膜方法を用いて所望の膜厚になるように成膜することができる。例えば、イオンビームスパッタリング法を用いて反射層12を作製する場合、高屈折率材料のターゲット及び低屈折率材料のターゲットに対して、イオン源からイオン粒子を供給することにより行う。反射層12がMo/Si多層反射膜である場合、イオンビームスパッタリング法により、例えば、まずSiターゲットを用いて、所定の膜厚のSiを含む層を基板11上に成膜する。その後、Moターゲットを用いて、所定の膜厚のMoを含む層を成膜する。このSiを含む層及びMoを含む層を1周期として、30周期〜60周期積層させることにより、Mo/Si多層反射膜が成膜される。
【0032】
(保護層)
保護層13は、後述する反射型マスク20(図5参照)の製造時において、吸収層14をエッチング(通常、ドライエッチング)して吸収層14に吸収体パターン141(図5参照)を形成する際、反射層12の表面がエッチングによりダメージを受けるのを抑制し、反射層12を保護する。また、エッチング後の反射型マスクブランクに残っているレジスト層19(図6参照)を洗浄液で剥離して、反射型マスクブランクを洗浄する際に、反射層12を洗浄液から保護する。そのため、得られる反射型マスク20(図5参照)のEUV光に対する反射率は良好となる。
【0033】
図1では、保護層13が1層の場合を示しているが、保護層13は複数層でもよい。
【0034】
保護層13を形成する材料としては、吸収層14のエッチングの際に、エッチングによる損傷を受け難い物質が選択される。この条件を満たす物質としては、例えば、Ru金属単体、Ruに、B、Si、Ti、Nb、Mo、Zr、Y、La、Co及びReからなる群から選択される1種以上の金属を含有したRu合金、Ru合金に窒素を含む窒化物等のRu系材料;Cr、Al、Ta及びこれらに窒素を含む窒化物;SiO2、Si34、Al23又はこれらの混合物等が例示される。これらの中でも、Ru金属単体及びRu合金、CrN及びSiO2が好ましい。Ru金属単体及びRu合金は、酸素を含まないガスに対してエッチングされ難く、反射型マスクの加工時のエッチングストッパとして機能する点から、特に好ましい。
【0035】
保護層13がRu合金で形成される場合、Ru合金中のRu含有量は、95at%以上100at%未満が好ましい。Ru含有量が上記範囲内であれば、反射層12がMo/Si多層反射膜である場合、反射層12のSi層からSiが保護層13に拡散することを抑制することができる。また、保護層13は、EUV光の反射率を十分確保しながら、吸収層14をエッチング加工した時のエッチングストッパとしての機能を有することができる。さらに、反射型マスクの洗浄耐性を有することができると共に反射層12の経時的劣化を防止できる。
【0036】
保護層13の膜厚は、保護層13としての機能を果たすことができる限り特に制限されない。反射層12で反射されたEUV光の反射率を保つ点から、保護層13の膜厚は、1nm以上が好ましく、1.5nm以上がより好ましく、2nm以上がさらに好ましい。保護層13の膜厚は、8nm以下が好ましく、6nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましい。
【0037】
保護層13の形成方法としては、マグネトロンスパッタリング法又はイオンビームスパッタリング法等の公知の膜形成方法を用いることができる。
【0038】
(吸収層)
吸収層14は、EUVリソグラフィの反射型マスクに使用するためには、EUV光の吸収係数が高いこと、容易にエッチングできること及び洗浄液に対する洗浄耐性が高いこと等の特性を有する必要がある。
【0039】
吸収層14は、EUV光を吸収し、EUV光の反射率が極めて低い。具体的には、EUV光が吸収層14の表面に照射された際の、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。そのため、吸収層14は、EUV光の吸収係数が高いことが必要である。
【0040】
また、吸収層14は、Cl、SiCl4及びCHCl3等の塩素(Cl)系ガス又はCF、CHF等のフッ素(F)系ガスを用いたドライエッチング等によりエッチングして加工される。そのため、吸収層14は、容易にエッチングできる必要がある。
【0041】
さらに、吸収層14は、後述する反射型マスク20(図5参照)の製造時において、エッチング後の反射型マスクブランクに残っているレジストパターン191(図6参照)を洗浄液で除去する際に洗浄液に晒される。その際、洗浄液としては、硫酸過水(SPM)、硫酸、アンモニア、アンモニア過水(APM)、OHラジカル洗浄水及びオゾン水等が用いられる。EUVリソグラフィでは、レジストの洗浄液としてSPMが、一般に使用される。なお、SPMとは、硫酸と過酸化水素とを混合した溶液であり、例えば、硫酸と過酸化水素とを体積比で3:1の割合で混合した溶液である。このとき、SPMの温度は、エッチング速度を向上させる点から、100℃以上に制御することが好ましい。そのため、吸収層14は、洗浄液に対する洗浄耐性を高くする必要がある。吸収層14は、例えば、硫酸が75vol%、過酸化水素が25vol%の100℃の溶液に浸漬したときのエッチング速度が低い(例えば、0.10nm/分以下)ことが好ましい。
【0042】
上記のような特性を達成するため、吸収層14はSnを含有する。Snは吸収係数が大きいため、吸収層14はSnを含有することで、吸収層14の反射率を低くできる。また、吸収層14は、Snを含有することで、Cl系ガス等で容易にエッチングできる。
【0043】
吸収層14は、Snの他に、Ta、Cr又はTiを含むことが好ましい。これらの元素は1種単独で含んでもよいし、二種以上を含んでもよい。吸収層14は、Snの他にこれらの元素の1種以上をさらに含有することで、洗浄耐性を高める。
【0044】
吸収層14は、Sn以外に、さらに、N、B、Hf又はHを含んでもよい。これらの元素は1種単独で含んでもよいし、二種以上を含んでもよい。特に、吸収層14は、これらの元素の中でも、N又はBの少なくとも一方を含むことが好ましい。吸収層14は、N又はBの少なくとも一方を含むことで、吸収層14の結晶状態をアモルファス又は微結晶の構造にできる。
【0045】
吸収層14の好ましい組成は、例えば、SnTa、SnTaN、SnTaB又はSnTaBNである。
【0046】
吸収層14は、結晶状態がアモルファスであることが好ましい。これにより、吸収層14は、優れた平滑性及び平坦度を有することできる。また、吸収層14の平滑性及び平坦度が向上することで、吸収体パターン141(図5参照)のエッジラフネスが小さくなり、吸収体パターン141(図5参照)の寸法精度を高くできる。
【0047】
吸収層14は、単層の膜でもよいし、複数の膜からなる多層膜でもよい。吸収層14が単層膜である場合は、マスクブランク製造時の工程数を削減できて生産効率を向上できる。吸収層14が多層膜である場合、吸収層14の上層側の層の光学定数や膜厚を適切に設定することで、吸収層14の上層側の層は、検査光を用いて吸収体パターン141(図5参照)を検査する際の反射防止膜として使用できる。これにより、吸収体パターンの検査時における検査感度を向上できる。
【0048】
吸収層14の膜厚は、吸収層14の組成等により適宜設計可能であるが、シャドウィングの影響を抑える点から、薄い方が好ましい。吸収層14の膜厚は、吸収層14の反射率を1%以下に維持しつつ、十分なコントラストを得る点から、例えば、40nm以下であることが好ましい。吸収層14の膜厚は、35nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましく、25nm以下がさらに好ましく、20nm以下が特に好ましい。吸収層14の膜厚は反射率で決定され、薄いほどよい。吸収層14の膜厚は、例えば、X線反射率法(XRR)又はTEM等を用いて測定できる。
【0049】
吸収層14は、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法等の公知の成膜方法を用いて形成できる。例えば、吸収層14として、マグネトロンスパッタリング法を用いてSnTa膜を形成する場合、Sn及びTaを含むターゲットを用い、Arガスを用いたスパッタリング法により、吸収層14を成膜できる。また、SnターゲットとTaターゲットを同時に用いる2元スパッタ法でも、吸収層14を成膜できる。
【0050】
(防止層)
防止層15は、吸収層14の上方(+Z軸方向)の主面上に形成されている。
【0051】
防止層15を形成する材料としては、Ta、Ru、Cr、Ti又はSiを用いることができる。これらの元素は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0052】
防止層15は、Ta単体、Ru単体、Cr単体、Ti単体、Si単体、Taの窒化物、Ruの窒化物、Crの窒化物、Tiの窒化物、Siの窒化物、Taのホウ化物、Ruのホウ化物、Crのホウ化物、Tiのホウ化物、Siのホウ化物又はTaのホウ素窒化物を用いることができる。これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0053】
防止層15の好ましい組成は、例えば、Ta、TaN、TaB又はTaBNである。例えば、後述するように、防止層15の上に安定層21を有する第2の実施形態に係る反射型マスクブランク10B(図7参照)を形成するとする。そして、安定層21がTaを含む酸化物、酸窒化物又は酸ホウ化物を含むとする。この場合、防止層15がこれらの材料であれば、防止層15と安定層21とを成膜する際に、同じターゲットを用いることができる。そのため、必要な成膜室の数を削減できる等、反射型マスクブランク10B(図7参照)の生産性に優れる。
【0054】
防止層15は、さらに、He、Ne、Ar、Kr又はXe等の元素を含んでもよい。
【0055】
防止層15は、Sn及び酸素を含有しない層である。Sn及び酸素を含有しないとは、防止層15を成膜した直後には、防止層15の表面及び内部にSn及び酸素が存在しないことをいう。防止層15が酸素を含む雰囲気中に晒されると、防止層15が酸素と接触する面には、防止層15に含まれる成分が酸素と反応(酸化)することで、防止層15の表面に酸化物の膜が生成される場合がある。このとき、もし、防止層15にSnが含有されていると、防止層15の表面に存在するSnが酸素と反応して、防止層15の表面に、酸化スズ等のSnを含む微粒子が析出物として発生する可能性があるので、防止層15はSnを含まない。
【0056】
なお、防止層15が酸素を含有しないとは、防止層15を成膜した後の工程で、防止層15が酸素と接触した面において生成した酸化物の膜がある場合、その酸化物の膜に含まれる酸素は含まない。一方、吸収層14と防止層15との界面は、酸素に触れることがないため、防止層15と吸収層14との界面には酸素は含まれない。
【0057】
防止層15は、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法等の公知の成膜方法を用いて、不活性ガス雰囲気中、又は不活性ガスに窒素を選択的に加えたガス雰囲気中で形成できる。例えば、防止層15として、マグネトロンスパッタリング法を用いてTa膜、Ru膜、Cr膜又はSi膜を形成する場合、Ta、Ru、Cr又はSiを含むターゲットを用い、スパッタガスとして、He、Ar又はKr等の不活性ガス、又は不活性ガスに窒素を選択的に加えたガスを用いることにより、防止層15が成膜される。
【0058】
防止層15の膜厚は、防止層15が厚すぎると、防止層15のエッチングに時間がかかる。また、シャドウィング等が大きくなる可能性がある。一方、防止層15が薄すぎると、防止層15としての機能が安定して十分発揮できない可能性がある。そのため、防止層15の膜厚は、反射型マスクブランク10Aのパターンの厚さを抑える点から、数nm程度であればよく、10nm以下であることが好ましい。防止層15の膜厚は、8nm以下がより好ましく、6nm以下がさらに好ましく、5nm以下がさらに好ましく、4nmが特に好ましい。防止層15の膜厚は、0.5nm以上がより好ましく、1nm以上がさらに好ましく、1.5nm以上がさらに好ましく、2nm以上が特に好ましい。防止層15の膜厚は、例えば、XRRやTEM等を用いて測定できる。
【0059】
このように、反射型マスクブランク10Aは、Snを含有する吸収層14の上に防止層15を有している。吸収層14が酸素と接触するとできる。これにより、吸収層14の表面が酸化して、吸収層14の表面に析出物、吸収層14の表面に存在する、一部のSnが酸素と反応して、吸収層14の表面に、酸化スズ等からなる、Snを含む微粒子が析出物として発生する可能性がある。防止層15は、上述の通り、吸収層14の上に、スパッタガスとして、He、Ar又はKr等の不活性ガス、又は不活性ガスに窒素を選択的に加えたガスのみを使用して成膜される。そのため、吸収層14が酸素等のガスに触れる前に防止層15を形成することで、吸収層14が酸素等に触れることを防止が発生するのを防止し、吸収層14の表面に欠陥が生じることを抑制できる。
【0060】
よって、反射型マスクブランク10Aを用いて、反射型マスク20(図5参照)を作製する際、反射型マスク20(図5参照)に欠陥が発生するのを抑制できる。したがって、反射型マスクブランク10Aを用いれば、欠陥のないパターンを安定して形成できる。
【0061】
反射型マスクブランク10Aは、防止層15を、Ta、Ru、Cr又はSiの少なくとも1つ以上の元素を含んで形成できる。これらの元素はドライエッチングが容易であり、洗浄耐性にも優れる。よって、防止層15がTa等を含んで構成すれば、吸収層14がSnを含んでいても、吸収層14の表面の酸化を防止しつつ、洗浄耐性の強い吸収体パターン141(図5参照)が形成できる。
【0062】
反射型マスクブランク10Aは、防止層15を、Ta単体、Ru単体、Cr単体、Si単体、Taの窒化物、Ruの窒化物、Crの窒化物、Siの窒化物、Taのホウ化物、Ruのホウ化物、Crのホウ化物、Siのホウ化物又はTaのホウ素窒化物を用いて形成できる。これらの単体、窒化物、ホウ化物及びホウ素窒化物はアモルファスであるため、吸収体パターン141(図5参照)のエッジラフネスを抑制できる。よって、防止層15をTaの窒化物等を含んで構成すれば、Snを含む吸収層14の表面の酸化を防止しつつ、高精度の吸収体パターン141(図5参照)が形成できる。
【0063】
反射型マスクブランク10Aは、防止層15に、He、Ne、Ar、Kr又はXeの少なくとも1つ以上の元素を含んで形成できる。防止層15の成膜時にこれらの元素がスパッタガスとして使用されることで、これらの元素が防止層15に微量含まれる場合がある。この場合でも、防止層15の性質に影響を与えることなく、防止層15の機能を発揮できる。
【0064】
反射型マスクブランク10Aは、防止層15の膜厚を10nm以下とすることができる。これにより、防止層15の厚さを抑えることができるので、反射型マスクブランク10Aは、吸収体パターン141(図5参照)と、その上に形成される防止層15のパターンとの全体の厚さを抑えることができる。
【0065】
反射型マスクブランク10Aは、吸収層14を、Ta、Cr及びTiからなる群から選択される1種以上の元素を含んで構成できる。これらの元素が吸収層14に含まれることにより、吸収層14の洗浄耐性をより高めることができるので、吸収層14をより薄くできる。この結果、薄くしてもEUV光の吸収率が高い吸収層14を得ることができる。よって、反射型マスクブランク10Aの薄膜化及び反射型マスク20(図5参照)のパターンの薄膜化を図りつつ、吸収層14でのEUV光の反射率を低くできる。
【0066】
反射型マスクブランク10Aは、保護層13を反射層12と吸収層14との間に設けることが好ましい。これにより、反射型マスク20(図5参照)の製造時に、吸収層14をエッチングする際や反射型マスクブランクを洗浄する際に、反射層12を保護できる。そのため、得られる反射型マスク20(図5参照)のEUV光に対する反射率を良好とすることができる。
【0067】
<反射型マスクブランクの製造方法>
次に、図1に示す反射型マスクブランク10Aの製造方法について説明する。図2は、反射型マスクブランク10Aの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0068】
図2に示すように、基板11上に反射層12を形成する(反射層12の形成工程:ステップS11)。反射層12は、基板11上に、上記のように、公知の成膜方法を用いて所望の膜厚になるように成膜する。
【0069】
次いで、反射層12上に、保護層13を形成する(保護層13の形成工程:ステップS12)。保護層13は、反射層12上に、公知の膜形成方法を用いて、所望の膜厚になるように成膜する。
【0070】
次いで、保護層13上に吸収層14を形成する(吸収層14の形成工程:ステップS13)。吸収層14は、保護層13の上に、公知の成膜方法を用いて、所望の膜厚になるように成膜する。例えば、吸収層14は、公知の成膜装置を用い、成膜装置の成膜室内で形成できる。
【0071】
また、吸収層14の形成後、吸収層14の形成に用いた成膜装置の成膜室から取り出して保管室に移した後、保管室内を高真空状態として、例えば吸収層14の上に防止層15を形成するまで等、使用するまで保管してもよい。
【0072】
次いで、吸収層14上に防止層15を形成する(防止層15の形成工程:ステップS14)。防止層15は、吸収層14の上に、公知の成膜方法を用いて、不活性ガス雰囲気中、又は不活性ガスに窒素を選択的に加えたガス雰囲気中で、所望の膜厚になるように成膜する。
【0073】
これにより、図1に示すような反射型マスクブランク10Aが得られる。
【0074】
また、本実施形態においては、反射型マスクブランク10Aの製造方法は、吸収層14の形成工程(ステップS13)と防止層15の形成工程(ステップS14)とを連続して実施できる。この場合、Snターゲット等の吸収層14を構成する金属等のターゲットと、Taターゲット等の防止層15を構成する金属等のターゲットとを用いる2元スパッタ法を用いることができる。2元スパッタ法を用い、吸収層14を構成する金属等のターゲットへの荷電を防止層15を構成する金属等のターゲットへの荷電よりも早く終了することにより、成膜装置の成膜室内で、吸収層14の形成と防止層15の形成とを連続して行うことができる。
【0075】
(その他の層)
反射型マスクブランク10Aは、図3に示すように、防止層15上にハードマスク層17を備えることができる。ハードマスク層17としては、Cr系膜、Si系膜及びRu系膜等のエッチングに対して耐性の高い材料が用いられる。
【0076】
Cr系膜としては、例えば、Cr単体及びCrにO又はNを加えた材料等が挙げられる。具体的には、CrO、CrN及びCrON等が挙げられる。
【0077】
Si系膜としては、Si単体並びにSiにO、N、C及びHからなる群から選択される1種以上を加えた材料等が挙げられる。具体的には、SiO、SiON、SiN、SiO、Si、SiC、SiCO、SiCN及びSiCON等が挙げられる。中でも、Si系膜は、吸収層14をドライエッチングする際に側壁の後退が生じ難いため、好ましい。
【0078】
Ru系膜としては、例えば、Ru及びRuにO又はNを加えた材料等が挙げられる。具体的には、RuO、RuN及びRuON等が挙げられる。
【0079】
防止層15の上にハードマスク層17を形成することで、吸収体パターン141の最小線幅が小さくなっても、ドライエッチングを実施できる。そのため、吸収体パターン141の微細化に対して有効である。なお、防止層15の上に他の層が積層される場合には、ハードマスク層17は防止層15の最表面側の層の上に設ければよい。
【0080】
反射型マスクブランク10Aは、図4に示すように、基板11の反射層12が積層される側とは反対側の第2主面11bに、静電チャック用の裏面導電層18を備えることができる。裏面導電層18には、特性として、シート抵抗値が低いことが要求される。裏面導電層18のシート抵抗値は、例えば、250Ω/□以下であり、200Ω/□以下が好ましい。
【0081】
裏面導電層18を含む材料は、例えば、Cr若しくはTa等の金属又はこれらの合金を用いることができる。Crを含む合金としては、Crに、B、N、O及びCからなる群から選択される1種以上を含有したCr化合物を用いることができる。Cr化合物としては、例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCN等を挙げることができる。Taを含む合金としては、Taに、B、N、O及びCからなる群から選択される1種以上を含有したTa化合物を用いることができる。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON及びTaSiCON等を挙げることができる。
【0082】
裏面導電層18の膜厚は、静電チャック用としての機能を満足する限り特に限定されないが、例えば、10〜400nmとする。また、この裏面導電層18は、反射型マスクブランク10Aの第2主面11b側の応力調整も備えることができる。すなわち、裏面導電層18は、第1主面11a側に形成された各種層からの応力とバランスをとって、反射型マスクブランク10Aを平坦にするように調整できる。
【0083】
裏面導電層18の形成方法は、マグネトロンスパッタリング法又はイオンビームスパッタリング法等公知の成膜方法を用いることができる。
【0084】
裏面導電層18は、例えば、保護層13を形成する前に、基板11の第2主面11bに形成できる。
【0085】
<反射型マスク>
次に、上述の、図1に示す反射型マスクブランク10Aを用いて得られる反射型マスクについて説明する。図5は、反射型マスクの構成の一例を示す概略断面図である。図5に示すように、反射型マスク20は、図1に示す反射型マスクブランク10Aの吸収層14に、所望の吸収体パターン141を形成したものである。
【0086】
反射型マスク20の製造方法の一例について説明する。図6は、反射型マスク20の製造工程を説明する図である。図6(a)に示すように、上述の、図1に示す反射型マスクブランク10Aの吸収層14上にレジスト層19を形成する。
【0087】
その後、レジスト層19に所望のパターンを露光する。露光後、レジスト層19の露光部分を現像して、純水で洗浄(リンス)することで、図6(b)に示すように、レジスト層19に所定のレジストパターン191を形成する。
【0088】
その後、レジストパターン191が形成されたレジスト層19をマスクとして使用して、吸収層14をドライエッチングする。これにより、図6(c)に示すように、レジストパターン191に対応した吸収体パターン141を吸収層14に形成する。
【0089】
エッチングガスとしては、F系ガス、Cl系ガス、Cl系ガスと、O2、He又はArとを所定の割合で含む混合ガス等を用いることができる。
【0090】
その後、レジスト剥離液等によりレジスト層19を除去し、吸収層14に所望の吸収体パターン141を形成する。これにより、図5に示すように、吸収層14に、所望の吸収体パターン141が形成された反射型マスク20を得ることができる。
【0091】
得られた反射型マスク20に、露光装置の照明光学系よりEUV光を照射させる。反射型マスク20に入射したEUV光は、吸収層14のない部分(吸収体パターン141の部分)では反射され、吸収層14のある部分では吸収される。その結果、吸収層14で反射されたEUV光の反射光は、露光装置の縮小投影光学系を通って、露光材料(例えば、ウエハ等)に照射される。これにより、吸収層14の吸収体パターン141が露光材料上に転写され、露光材料上に回路パターンが形成される。
【0092】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る反射型マスクブランクについて、図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0093】
図7は、第2の実施形態に係る反射型マスクブランクの概略断面図である。図7に示すように、反射型マスクブランク10Bは、図1に示す反射型マスクブランク10Aの防止層15の上に、安定層21を有する。すなわち、反射型マスクブランク10Bは、基板11、反射層12、保護層13、吸収層14、防止層15及び安定層21を、基板11側からこの順に積層して構成している。
【0094】
安定層21としては、Taを含む酸化物、酸窒化物及び酸ホウ化物を用いることができる。Taを含む酸化物、酸窒化物及び酸ホウ化物としては、例えば、TaO、Ta、TaON、TaCON、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHfO、TaHfON、TaHfCON、TaSiO、TaSiON及びTaSiCON等を挙げることができる。
【0095】
安定層21の膜厚は、10nm以下が好ましい。安定層21の膜厚は、7nm以下がより好ましく、6nm以下がさらに好ましく、5nm以下がさらに好ましく、4nm以下が特に好ましい。安定層21の膜厚は、1nm以上がより好ましく、2nm以上がさらに好ましく、3nm以上が特に好ましい。
【0096】
安定層21は、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法等公知の成膜方法を用いて形成できる。
【0097】
このように、反射型マスクブランク10Bは、防止層15上に安定層21を有することで、防止層15の耐洗浄性をさらに高くできる。安定層21を有することにより、強固で安定した膜を再現性良く形成でき、反射型マスクブランク及び反射型マスクの特性を安定化できる。
【0098】
反射型マスクブランク10Bは、Snを含有する吸収層14の上に防止層15を有しているため、防止層15上に安定層21を形成する際に、吸収層14の表面が酸素に触れることはない。例えば、安定層21が反応性スパッタリング法を用いて形成される場合、上述の通り、スパッタガスとして、He、Ar又はKr等の不活性ガスに酸素を混合した混合ガス、又は不活性ガスに窒素を選択的に加え、さらに酸素を混合した混合ガスが使用される。防止層15は、吸収層14の上に形成されているので、安定層21を形成する際に吸収層14の表面がスパッタガスである混合ガスに触れることはない。そのため、吸収層14の表面が酸化することはなく、吸収層14の表面に析出物が発生するのを防止できる。
【0099】
反射型マスクブランク10Bは、安定層21を、Taを含む酸化物、酸窒化物又は酸ホウ化物を用いて形成することで、洗浄により安定層21中の組成の変化は生じないため、より耐洗浄性に優れる反射型マスクブランク及び反射型マスクを得ることできる。
【0100】
反射型マスクブランク10Bは、安定層21の膜厚を10nm以下にすることで、反射型マスクブランク10Bの薄膜化、反射型マスクのパターンの薄膜化を図りつつ、防止層15の耐洗浄性を維持できる。
【0101】
なお、反射型マスクブランク10Bは、図8に示すように、図4に示す第1の実施形態に係る反射型マスクブランク10Aと同様に、安定層21上にハードマスク層17を備えてもよい。
【実施例】
【0102】
例1は比較例であり、例2〜例4は実施例である。
【0103】
[例1]
反射型マスクブランク100を図9に示す。反射型マスクブランク100は、図1に示す第1の実施形態に係る反射型マスクブランク10Aにおいて、吸収層14の上に防止層15を有していないものである。
(反射型マスクブランクの作製)
成膜用の基板として、SiO2−TiO2系のガラス基板(外形が約152mm角、厚さが約6.3mm)を使用した。なお、ガラス基板の熱膨張係数は0.02×10−7/℃以下であった。ガラス基板を研磨して、表面粗さを二乗平均平方根粗さRqで0.15nm以下、平坦度を100nm以下の平滑な表面に加工した。ガラス基板の裏面上には、マグネトロンスパッタリング法を用いて、膜厚が約100nmのCr層を成膜し、静電チャック用の裏面導電層(導電膜)を形成した。Cr層のシート抵抗値は100Ω/□程度であった。Cr膜を用いてガラス基板を固定した後、ガラス基板の表面上にイオンビームスパッタリング法を用いて、Si膜及びMo膜を交互に成膜することを40周期繰り返した。Si膜の膜厚は、約4.5nmとし、Mo膜の膜厚は、約2.3nmとした。これにより、合計の膜厚が約272nm((Si膜:4.5nm+Mo膜:2.3nm)×40)の反射層(多層反射膜)を形成した。その後、反射層の上に、イオンビームスパッタリング法を用いてRu層(膜厚が約2.5nm)を成膜して、保護層(保護膜)を形成した。次に、保護層の上に、Sn−Ta合金からなる膜厚40nmの吸収層(吸収体膜)をマグネトロンスパッタリング法により成膜した。スパッタガスにはArガスを用いた。スパッタに用いたターゲットは、Snが60at%、Taが40at%であったが、スパッタされた吸収層中のTa含有量は、48at%であった。なお、吸収層中のSn含有量及びTa含有量は、蛍光X線分析法(XRF)(オリンパス社製、Delta)を用いて測定した。これにより、図9に示す反射型マスクブランク100を作製した。吸収層の膜厚は、X線回折装置(株式会社リガク社製、SmartLab HTP)を用いてXRRにて測定した。なお、同装置を用いたX線回折(XRD)測定結果よりSn−Ta合金からなる吸収層はアモルファスであることが確認された。
【0104】
(反射型マスクブランクの表面の観察)
反射型マスクブランク100の表面を走査型電子顕微鏡(カール・ツァイス社製、Ultra60)を用いて観察した。反射型マスクブランクの表面の観察結果を図10に示す。図10に示すように、反射型マスクブランクの表面には微粒子が観察された。この微粒子をエネルギー分散型X線分析(EDX)で解析した結果、微粒子は酸化スズで形成されていることが確認された。吸収層の表面の微粒子は、吸収層が大気に曝されたとき、吸収層に含まれるSnが大気中の酸素と反応して生じたものと考えられる。このような微粒子は、吸収層のエッチング後に、反射型マスクにパターン欠陥として残る場合があるため、好ましくない。
【0105】
[例2]
本例では、例1において、作製した反射型マスクブランク100の吸収層の上に、防止層となるTaN膜を4nm成膜し、図1に示す反射型マスクブランク10Aを作製した。なお、防止層は、反応性スパッタリング法を用いて、スパッタガスとしてAr及び窒素を混合した混合ガスを用い、Arの流量は70sccmとし、窒素の流量は2sccmとした。なお、例1において作製した反射型マスクブランク100は、その吸収層の上に防止層を形成するまで、吸収層の形成に用いた成膜装置の成膜室から保管室に移して、保管室内を高真空状態して保管した。
【0106】
(反射型マスクブランクの表面の観察)
反射型マスクブランク10Aの表面を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。反射型マスクブランク10Aの吸収層の表面の観察結果を図11に示す。図11に示すように、反射型マスクブランク10Aの吸収層の表面には微粒子は発生しなかった。これは、吸収層の表面に防止層が存在するため、大気中の酸素が吸収層に含まれるSnと接触しないためといえる。
【0107】
[例3]
本例では、例1において、作製した反射型マスクブランク100の吸収層の上に、Taからなる防止層をマグネトロンスパッタリング法により2nm成膜し、さらに防止層の上に、TaOからなる安定層を反応性スパッタ法を用いて2nm成膜した。これにより、図7に示す反射型マスクブランク10Bを作製した。なお、防止層をマグネトロンスパッタリング法を用いて成膜する際、スパッタガスにはArガスを用いた。安定層を反応性スパッタ法を用いて成膜する際、スパッタガスとしてAr及び酸素を混合した混合ガスを用い、Arの流量は40sccmとし、酸素の流量は30sccmとした。なお、例1において作製した反射型マスクブランク100は、その吸収層の上に防止層を形成するまで、吸収層の形成に用いた成膜装置の成膜室から保管室に移して、保管室内を高真空状態として保管した。
【0108】
成膜後の反射型マスクブランク10Bの防止層及び安定層をXRRで測定したところ、Taの膜厚は0.9nm、TaOの膜厚は4.6nmとなっていた。これはTa膜上にTaO膜を成膜する際に、スパッタガス中に含まれる酸素とTa膜のTaが反応してTaO膜となり、膨張したためだと考えられる。
【0109】
その後、図7に示す反射型マスクブランク10Bを、ドライエッチング装置を用いてドライエッチングした。ドライエッチングは、F系ガスを用いて防止層及び安定層を除去した後、Cl系ガスを用いて吸収層を除去した。
【0110】
(反射型マスクブランクの表面の観察)
反射型マスクブランク10Bの表面を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。反射型マスクブランク10Bの表面の吸収層の観察結果を図12に示す。図12に示すように、反射型マスクブランクの表面には微粒子等の析出物は観察されなかった。本例では、防止層を成膜する際、スパッタガスとしてはArのみを用いている。そのため、吸収層の表面が酸素を含む雰囲気に晒されることがないため、吸収層の表面に存在するSnが酸素と反応することはない。これにより、吸収層の表面に析出物が発生することが抑えられたといえる。
【0111】
[例4]
(反射型マスクブランクの作製)
本例では、例3において、Sn−Ta合金からなる吸収層を成膜する際、Sn−Ta合金ターゲットに代えて、Snターゲット及びTaターゲットを同時に用いる2元スパッタ法を用いた。そして、スパッタガスにはArガスを用い、Arの流量は70sccmとし、Snターゲットへの入力パワーを130W、Taターゲットへの入力パワーを200Wとした。2元スパッタを行った際、Snターゲット及びTaターゲットへの荷電は同時に開始した。Snターゲット及びTaターゲットへの荷電の終了時刻は、Snターゲットでは荷電開始から520秒後とし、Taターゲットでは荷電開始から608秒後とした。これにより、Sn−Ta合金からなる膜厚35nmの吸収層及び吸収層の上にTaからなる膜厚2nmの防止層が1回のスパッタで連続して形成された。その後、防止層の上に、例3と同様に、TaOからなる安定層を反応性スパッタ法を用いて2nm成膜した。これにより、図7に示す反射型マスクブランク10Bを作製した。なお、スパッタされた吸収層中のTa含有量をXRFを用いて測定したところ、35%であった。
【0112】
(反射型マスクブランクの表面の観察)
本例で作成された反射型マスクブランク10Bの表面を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、反射型マスクブランク10Bの表面には微粒子等の析出物は観察されなかった。例2又は例3のように、吸収層と防止層を2回のスパッタで成膜する場合、例1において吸収層を成膜して作製した反射型マスクブランク100を、吸収層の形成に用いた成膜装置の成膜室から保管室に戻す必要がある。保管室は高真空に保たれているが、微量に残留している酸素により、吸収膜の表面に酸化物の微粒子が発生する危険性がある。本例では、吸収層及び防止層を成膜装置の成膜室の中で連続して成膜して、反射型マスクブランク10Bを作製しているため、保管室での酸化物の微粒子の発生を低減できる。また、スパッタが1回で済むため、反射型マスクブランク10Bの作製時間を短縮できる。
【0113】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0114】
本出願は、2018年6月12日に日本国特許庁に出願した特願2018−112601号に基づく優先権を主張するものであり、特願2018−112601号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0115】
10A、10B 反射型マスクブランク
11 基板
12 反射層
13 保護層
14 吸収層
15 防止層
17 ハードマスク層
18 裏面導電層
19 レジスト層
20 反射型マスク
21 安定層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12