特開2019-220281(P2019-220281A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-220281(P2019-220281A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用多孔質層
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20191129BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20191129BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
   H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-114935(P2018-114935)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】倉金 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純次
【テーマコード(参考)】
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE09
5H021HH01
5H050AA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB05
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050DA09
5H050DA19
5H050FA13
5H050FA18
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】非水電解液二次電池の電池特性を向上させる非水電解液二次電池用多孔質層を提供する。
【解決手段】非水電解液二次電池用多孔質層は、特定の構造を有する単量体によって変性されたベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される単量体によって変性されたベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを含む非水電解液二次電池用多孔質層。
【化1】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、カルボキシル基または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。ただし式(1)は、R〜Rのうち、1つの基が水酸基であって残り2つの基が水素原子である化合物を除く化合物を表す。)
【請求項2】
前記フィラーの含有量が、前記非水電解液二次電池用多孔質層の全重量に対して、60重量%以上、99.5重量%以下である、請求項1に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項3】
ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池用多孔質層が積層している、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項4】
正極と、請求項1もしくは2に記載の非水電解液二次電池用多孔質層、または、請求項3に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されている、非水電解液二次電池用部材。
【請求項5】
請求項1もしくは2に記載の非水電解液二次電池用多孔質層、または、請求項3に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用多孔質層に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いのでパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用され、また最近では車載用の電池として開発が進められてきている。
【0003】
その非水電解液二次電池の部材として、耐熱性に優れたセパレータの開発が進められている。
【0004】
また、耐熱性に優れたセパレータを構成する非水電解液二次電池用多孔質層として、フィラーを含む多孔質層が開発されている。その一例として、特許文献1には、アルミナ等の無機物からなるフィラーを含むセパレータ(多孔質層)を備える非水電解液二次電池が開示されている。また、特許文献2には、正極と負極との間に、フェノール樹脂等の有機物からなる粒子状樹脂とバインダー樹脂とを有する多孔質層を設けた非水電解液二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−146822号公報
【特許文献2】特開2015−215987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来のセパレータを備える非水電解液二次電池は、電池特性に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]〜[5]に示す発明を含む。
[1]下記式(1)で表される単量体によって変性されたベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを含む非水電解液二次電池用多孔質層。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、カルボキシル基または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。ただし式(1)は、R〜Rのうち、1つの基が水酸基であって残り2つの基が水素原子である化合物を除く化合物を表す。)
[2]前記フィラーの含有量が、前記非水電解液二次電池用多孔質層の全重量に対して、60重量%以上、99.5重量%以下である、[1]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
[3]ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも一方の面に、[1]または[2]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層が積層している、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
[4]正極と、[1]もしくは[2]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層、または、[3]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されている、非水電解液二次電池用部材。
[5][1]もしくは[2]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層、または、[3]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層は、電池特性に優れる非水電解液二次電池を提供することができるとの効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
[非水電解液二次電池用多孔質層]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層(以下、単に「多孔質層」とも称する)は、下記式(1)で表される単量体によって変性されたベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを含む。
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、カルボキシル基または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。ただし式(1)は、R〜Rのうち、1つの基が水酸基であって残り2つの基が水素原子である化合物を除く化合物を表す。)
前記フィラーは、式(1)で表される単量体によって変性されたベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーである。本明細書において、式(1)で表される単量体によって変性されたベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を単に「変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂」とも称する。前記フィラーにおける、変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂の含有量は、前記フィラーの質量を基準として、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは98重量%以上である。
【0015】
前記ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂は、ベンゼンジオール系単量体と、アルデヒド系単量体とを重合してなる重合体である。本明細書において、「変性」とは、式(1)で表される単量体を用いることによって、ベンゼンジオール系単量体およびアルデヒド系単量体とは異なる構造を、ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂に導入することを意図している。すなわち、本明細書において、「変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂」とは、ベンゼンジオール系単量体と、式(1)で表される単量体と、アルデヒド系単量体とを重合してなる重合体を意図している。
【0016】
前記ベンゼンジオール系単量体としては、例えば、カテコール、レゾルシン(レゾルシノール)、ヒドロキノン等を挙げることができる。前記ベンゼンジオール系単量体は、レゾルシンであることがより好ましい。前記ベンゼンジオール系単量体は1種類でもよく、2種類以上の混合物でもよい。
【0017】
前記アルデヒド系単量体は、アルデヒドであれば特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール、チオフェンカルボキシアルデヒド等を挙げることができる。前記アルデヒド系単量体は、ホルムアルデヒドであることがより好ましい。ホルムアルデヒドの単量体は、前記ベンゼンジオール系単量体および式(1)で表される単量体との重合反応時に、ホルムアルデヒドの三量体であるトリオキサン、または、ホルムアルデヒドの多量体であるパラホルムアルデヒドから調整することもできる。なお前記アルデヒド系単量体は、1種類でもよく、2種類以上の混合物でもよい。
【0018】
前記式(1)で表される単量体は、ベンゼンジオール系単量体を除く化合物である。すなわち、式(1)は、R〜Rのうち、1つの基が水酸基であって残り2つの基が水素原子である化合物を含まない。
【0019】
式(1)における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐していてもよく、環状であってもよい。脂肪族炭化水素基は、脂肪族飽和炭化水素基であってもよく、脂肪族不飽和炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。上記炭化水素基は、一部の水素原子が例えば水酸基等で置換されていてもよい。すなわち、上記炭化水素基は、ヒドロキシアリール基、ヒドロキシアラルキル基等も含む。
【0020】
式(1)で表される単量体としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−tert−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−ネオペンチルフェノール、m−ネオペンチルフェノール、p−ネオペンチルフェノール、スチレン化レゾルシン、アナカルド酸、カルダノール、カードル、2−メチルカードル、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2−メチル−3−tert−ブチルフェノール、2−メチル−4−tert−ブチルフェノール、2−メチル−5−tert−ブチルフェノール、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、3−メチル−4−tert−ブチルフェノール、3−メチル−5−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ビスフェノールA、o−オクチルフェノール、m−オクチルフェノール、p−オクチルフェノール、o−ノニルフェノール、m−ノニルフェノール、p−ノニルフェノール等が挙げられる。
【0021】
アナカルド酸、カルダノール、カードル、2−メチルカードルは例えば、カシューオイルに含まれる。アナカルド酸は、式(1)においてR〜Rのうち、1つの基がカルボキシル基であり、別の1つの基が水素であり、さらに別の1つの基が炭素数15の脂肪族炭化水素基である化合物を指す。カルダノールは、式(1)においてR〜Rのうち、1つの基が炭素数15の脂肪族炭化水素基であり、残りの2つの基が水素である化合物を指す。カードルは、式(1)においてR〜Rのうち、1つの基が水酸基であり、別の1つの基が水素であり、さらに別の1つの基が炭素数15の脂肪族炭化水素基である化合物を指す。2−メチルカードルは、式(1)においてR〜Rのうち、1つの基が水酸基であり、別の1つの基がメチル基であり、さらに別の1つの基が炭素数15の脂肪族炭化水素基である化合物を指す。カルダノールとしては、3−ペンタデシルフェノール、3−ペンタデシルフェノール モノエン、3−ペンタデシルフェノール ジエン、3−ペンタデシルフェノール トリエン等が挙げられる。
【0022】
前記変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂は、前記ベンゼンジオール系単量体と、前記式(1)で表される単量体と、前記アルデヒド系単量体とを重合してなる重合体であれば特に限定されないが、ベンゼンジオール系単量体としてレゾルシンを用い、且つアルデヒド系単量体としてホルムアルデヒドを用いて得られる樹脂であることがさらに好ましい。本明細書において、このような樹脂を変性レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂(変性RF樹脂)とも称する。また、前記フィラーに含まれる変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0023】
前記変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂における、ベンゼンジオール系単量体と、式(1)で表される単量体と、アルデヒド系単量体との単量体比率は特に限定されるものではない。例えば、ベンゼンジオール系単量体および式(1)で表される単量体の合計と、アルデヒド系単量体とのモル比率が、1:0.5〜1:3であることが好ましい。また、ベンゼンジオール系単量体と、式(1)で表される単量体とのモル比率が、99:1〜1:99であることが好ましい。
【0024】
前記変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂は、三次元架橋構造を備えることが好ましい。これにより、電池内部で、前記変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂が非水電解液に溶解することを抑えることができ、且つ、電池作動時に酸化等の副反応によって劣化することを防ぐことができる。ここで、本明細書において、前記変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂が、三次元架橋構造を備えることは、25℃のエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒100gに対する当該樹脂の溶解度が、10g以下であることによって確認することができる。ここで、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒は、一般に非水電解液を構成する有機溶媒として用いられる溶媒であり、非水電解液を構成する一般的な有機溶媒と同様の溶解性を有する溶媒である。
【0025】
塩基触媒を用いて重合した変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂の場合は、当該樹脂を加熱することにより三次元架橋構造を形成することができる。また、硬化剤の存在下で加熱することによって三次元架橋構造を形成することもできる。
【0026】
通常、非水電解液二次電池用多孔質層に、プロトン酸である水酸基(−OH)を有するフィラーは、正極材や電解質塩を失活させ、電池の性能を低下させる恐れがあるため使用されない。また、プロトン酸性の有無に関わらず水酸基(−OH)を有するフィラーは、吸湿性が高いため、電池の長期サイクル特性の低下の原因となる水の電池内への持ち込み量を増加する原因となる。そのため、水酸基(−OH)を有するフィラーは、従来、非水電解液二次電池用多孔質層用の主成分の材料として使用されることはなく、また、電池組立前に十分な乾燥が必要になる等の制約もあった。しかしながら、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層では、水酸基(−OH)を含む変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを使用したところ、前記予測に反して、電池特性に優れることが見出された。そのような電池特性としては、セパレータ抵抗、初期レート特性、サイクル後の容量維持率、サイクル後のレート特性、設計容量比、充放電効率および保存安定性等が考えられる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、非水電解液二次電池を構成する部材として、ポリオレフィン多孔質フィルムと、正極及び負極の少なくともいずれか一方との間に配置され得る。前記多孔質層は、ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも一方の面に形成され得る。或いは、前記多孔質層は、正極及び負極の少なくともいずれか一方の活物質層上に形成され得る。或いは、前記多孔質層は、ポリオレフィン多孔質フィルムと、正極及び負極の少なくともいずれか一方との間に、これらと接するように配置されてもよい。ポリオレフィン多孔質フィルムと正極及び負極の少なくともいずれか一方との間に配置される多孔質層は1層でもよく2層以上であってもよい。
【0028】
ポリオレフィン多孔質フィルムの片面に多孔質層が積層される場合には、当該多孔質層は、好ましくは、ポリオレフィン多孔質フィルムにおける正極と対向する面に積層される。より好ましくは、当該多孔質層は、正極と接する面に積層される。多孔質層は、絶縁性の多孔質層であることが好ましい。
【0029】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、内部に多数の細孔を有し、これら細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体或いは液体が通過可能となった層である。また、本発明の一実施形態に係る多孔質層が非水電解液二次電池用セパレータを構成する部材として使用される場合、前記多孔質層は、当該セパレータ(積層体)の最外層として、電極と接する層となり得る。
【0030】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、前記変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーの他に、バインダー樹脂を含み得る。前記バインダー樹脂は、前記フィラー同士、前記フィラーと正極もしくは負極、または、前記フィラーとポリオレフィン多孔質フィルムとを接着させる樹脂として機能し得る。以下では、変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを単に「フィラーA」と称することがある。
【0031】
前記バインダー樹脂は、非水電解液二次電池の非水電解液に不溶であり、また、当該非水電解液二次電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。前記バインダー樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、及びエチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、及びエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素樹脂;前記含フッ素樹脂の中でもガラス転移温度が23℃以下である含フッ素ゴム;芳香族ポリアミド;全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂);スチレン−ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド、ポリエステル等の融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等の水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0032】
また、本発明の一実施形態に係る多孔質層に含まれるバインダー樹脂としては、非水溶性ポリマーをも好適に用いることができる。言い換えると、本発明の一実施形態に係る多孔質層を製造する際に、例えば、アクリレート系樹脂等の非水溶性ポリマーを水系溶媒に分散させたエマルジョンを使用して、前記バインダー樹脂としての前記非水溶性ポリマーおよび前記フィラーを含む、本発明の一実施形態に係る多孔質層を製造することも好ましい。
【0033】
ここで、非水溶性ポリマーとは、水系溶媒には溶解せず、粒子となって水系溶媒に分散するポリマーである。「非水溶性ポリマー」とは、25℃において、当該ポリマー0.5gを水100gと混合した際に、不溶分が90重量%以上となるポリマーのことをいう。一方、「水溶性ポリマー」とは、25℃において、当該ポリマー0.5gを水100gと混合した際に、不溶分が0.5重量%未満となるポリマーのことをいう。前記非水溶性ポリマーの粒子の形状は特に限定されるものではないが、球状であることが望ましい。
【0034】
非水溶性ポリマーは、例えば、後述する単量体を含む単量体組成物を水系溶媒中で重合し、重合物の粒子とすることにより製造される。
【0035】
前記非水溶性ポリマーの単量体としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0036】
水系溶媒は、水を含み、前記非水溶性ポリマー粒子の分散が可能なものであれば格別限定されない。
【0037】
水系溶媒は、水へ任意の割合で溶解し得るメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒を含んでもよい。また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩などの分散剤等を含んでもよい。
【0038】
なお、本発明の一実施形態に係る多孔質層に含まれるバインダー樹脂は、1種類でもよく、2種類以上のバインダー樹脂の混合物でもよい。
【0039】
また、前記芳香族ポリアミドとしては、具体的には、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)がより好ましい。
【0040】
前記バインダー樹脂のうち、ポリオレフィン、含フッ素樹脂、芳香族ポリアミド、水溶性ポリマー、および、水系溶媒に分散された粒子状の非水溶性ポリマーがより好ましい。中でも、多孔質層が正極に対向して配置される場合には、電池作動時の酸性劣化による、非水電解液二次電池のレート特性、ハイレート特性、および、例えば液抵抗といった抵抗特性等の各種性能を維持し易いため、含フッ素樹脂がさらに好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が特に好ましい。前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデンと、ヘキサフロロプロピレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリクロロエチレンおよびフッ化ビニルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーとの共重合体、並びに、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ここで、ポリフッ化ビニリデンは、フッ化ビニリデンの単独重合体である。
【0041】
水溶性ポリマー、および、水系溶媒に分散された粒子状の非水溶性ポリマーは、多孔質層を形成するときの溶媒として水を用いることができるため、プロセスや環境負荷の面からより好ましい。前記水溶性ポリマーは、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウムがさらに好ましく、セルロースエーテルが特に好ましい。
【0042】
セルロースエーテルとしては、具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロース等が挙げられ、長時間にわたる使用における劣化が少なく、化学的な安定性に優れているCMCおよびHECがより好ましく、CMCが特に好ましい。
【0043】
また、前記水系溶媒に分散された粒子状の非水溶性ポリマーは、フィラー間の接着性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリレート系単量体の単独重合体、もしくは、2種類以上の単量体の共重合体であることが好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態に係る多孔質層におけるバインダー樹脂の含有量の下限値は、前記多孔質層の全重量に対して、0.5重量%より大きいことが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることがさらに好ましい。一方、本発明の一実施形態に係る多孔質層におけるバインダー樹脂の含有量の上限値は、前記多孔質層の全重量に対して、40重量%未満であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。前記バインダー樹脂の含有量が0.5重量%より大きいことは、フィラー間の密着性を向上させる観点、すなわち前記多孔質層からのフィラーの脱落防止の観点から好ましく、前記バインダー樹脂の含有量が40重量%未満であることは、電池特性(特にイオン透過抵抗)および耐熱性の観点から好ましい。
【0045】
本発明の一実施形態に係る多孔質層において、前記フィラーAの含有量は、前記多孔質層の全重量に対して、60重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。また、前記フィラーAの含有量は、多孔質層の全重量に対して、99.5重量%以下であることが好ましく、99重量%以下であることがより好ましく、98重量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
前記フィラーAの含有量が60重量%以上であることにより、前記多孔質層は耐熱性に優れる。また、前記フィラーAの含有量が99.5重量%以下であることにより、前記多孔質層はフィラー間の密着性に優れる。さらに、前記フィラーAを含有することにより、前記多孔質層を含む非水電解液二次電池用セパレータの滑り性および耐熱性を向上し得る。
【0047】
本発明の一実施形態に係る多孔質層において、前記フィラーAの体積粒度分布における平均粒子径D50の値(以下、単に「D50」とも称する)は、3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。また、前記フィラーAのD50は、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。前記フィラーAのD50は、4μm以下であることが好ましい。
【0048】
また、前記フィラーAの体積粒度分布におけるD10の値(以下、単に「D10」とも称する)は、0.01μm以上、0.7μm以下であることが好ましく、0.05μm以上、0.6μm以下であることがより好ましい。さらに、前記フィラーAの体積粒度分布におけるD90の値(以下、単に「D90」とも称する)は、0.3μm以上、7μm以下であることが好ましく、0.4μm以上、6μm以下であることがより好ましい。
【0049】
本発明の一実施形態に係る多孔質層において、前記フィラーAのD10、D50およびD90が前述の好ましい範囲内であることによって、前記多孔質層は、良好な接着性、良好な滑り性および良好な通気性を確保することができ、かつ、優れた成形性を備え得る。
【0050】
また、前記フィラーAの圧壊強度は、100MPa〜2000MPaであることが好ましい。前記フィラーAは、その硬度が上記範囲内である場合、従来の非水電解液二次電池用多孔質層に使用される無機フィラー(例えば、高純度アルミナ:2400MPa)よりも、柔らかく、柔軟性に富む。よって、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層は、従来の無機フィラーを含む非水電解液二次電池用多孔質層よりも、充放電を繰りかえすことに伴う電極の膨張および収縮に対する追随性が高く、その構造を良好に維持できる。それゆえ、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層は、従来の無機フィラーを含む非水電解液二次電池用多孔質層よりも、長期サイクル特性に優れる。前記フィラーAの圧壊強度は、より好ましくは200MPa以上であり、さらに好ましくは300MPa以上である。また、前記フィラーAの圧壊強度は、より好ましくは1800MPa以下であり、さらに好ましくは1500MPa以下である。
【0051】
圧壊強度は、以下のようにして算出できる。まず、微小粒子の圧壊力を、ナノシーズ社製NS−A100型を用いて測定する。サンプルをステージに自由落下により散布した後、圧壊針により圧壊力を測定する。圧壊針の押し込み力の波形チャートを記録し、その波形チャートにおける圧壊時のピーク値とベースラインとの差を圧壊力F(N)とする。圧壊強度(Pa)は次式より算出される。
【0052】
圧壊強度=2.8×F/(π・D
Fは圧壊力(N)、D(m)は粒子径である。
粒子径Dは測定時の画像より画像解析ソフト(LeiCa EZ)を用いて計測することができる。
【0053】
前記フィラーAの形状は、任意であり、特に限定されない。前記フィラーAの形状は、粒子状であり得、例えば、球形状;楕円形状;板状;棒状;不定形状;繊維状並びにピーナッツ状およびテトラポット状のように球状や柱状の粒子が結合した形状が挙げられる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、フィラーAの他に、フィラーA以外のフィラーを含み得る。以下、このフィラーA以外のフィラーを「その他のフィラー」とも称する。
【0055】
前記その他のフィラーとしては、有機物を含む有機フィラー、および、有機物を含まない無機フィラーとが挙げられる。
【0056】
前記有機フィラーを構成する有機物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の含フッ素樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;等を挙げることができる。前記有機フィラーは、1種の有機物を含むものでもよいし、2種以上の有機物の混合物を含むものでもよい。
【0057】
前記無機フィラーとしては、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、ガラス、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。前記無機フィラーは、1種類のみ含んでいてもよく、2種類以上を混合して含んでいてもよい。
【0058】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、1種のその他のフィラーを含んでもよいし、2種以上のその他のフィラーを含んでもよい。
【0059】
また、本発明の一実施形態に係る多孔質層は、上述のフィラーA、その他のフィラー、およびバインダー樹脂以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤およびワックスなどを挙げることができる。また、前記その他の成分の含有量は、多孔質層の全重量に対して、0重量%〜10重量%であることが好ましい。
【0060】
本発明の一実施形態に係る多孔質層の膜厚は、電極との接着性および高エネルギー密度を確保する観点から、一層当たり、0.5μm〜10μmの範囲であることが好ましく、一層当たり、1μm〜7μmの範囲であることがより好ましい。
【0061】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、イオン透過性の観点から、十分に多孔化された構造であることが好ましい。具体的には、空孔率が30%〜70%の範囲であることが好ましい。
【0062】
前記空孔率の測定法としては、例えば、一定の体積(8cm×8cm×膜厚dcm)の多孔質層の重量W(g)、当該多孔質層の膜厚d(μm)および多孔質層の真比重ρ(g/cm)から、以下の式(α)に基づき算出する方法を挙げることができる。
空孔率(%)=(1−{(W/ρ)/(8×8×d)})×100 (α)
また、本発明の一実施形態に係る多孔質層は、平均孔径が20nm〜100nmの範囲であることが好ましい。
【0063】
前記平均孔径の測定法は、例えば、本発明の一実施形態に係る多孔質層を上面から走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、無作為に選択した複数の空孔における孔径を測定し、その平均値を取ることによって算出することができる。
【0064】
<変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーの調製方法>
本発明の一実施形態における変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーは、例えば、以下に示す工程(i)および(ii)を含む方法にて調製され得る。
(i)前記ベンゼンジオール系単量体、前記式(1)で表される単量体、前記アルデヒド系単量体、触媒および溶媒を混合し、一定の温度にて撹拌保温することで重合反応を行い、変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂の懸濁液を得る。
(ii)工程(i)にて得られる変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂の懸濁液から、変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを分離する。
【0065】
前記工程(i)における溶媒としては、例えば、水を使用し得る。また、前記工程(i)における触媒としては、例えば、炭酸ナトリウムを使用し得る。上述の三次元架橋構造の形成の観点から、前記工程(i)における触媒は、塩基性触媒であることが好ましい。
【0066】
前記工程(i)において、ベンゼンジオール系単量体および式(1)で表される単量体の合計と、アルデヒド系単量体とのモル比率が、1:0.5〜1:3であることが好ましい。また、ベンゼンジオール系単量体と、式(1)で表される単量体とのモル比率が、99:1〜1:99であることが好ましい。
【0067】
また、前記アルデヒド系単量体に代えて、前記アルデヒド系単量体の供給源となる化合物を使用することもできる。かかる化合物としては、例えば、パラホルムアルデヒド、グリオキサールを挙げることができる。
【0068】
前記工程(ii)において、前記懸濁液から、変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを分離する方法としては、特に限定されないが、遠心分離法などの公知の方法を採用することができる。
【0069】
<非水電解液二次電池用多孔質層の製造方法>
本発明の一実施形態に係る多孔質層の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、基材上に、以下に示す工程(1)〜(3)の何れかの1つの工程を用いて、前記フィラーAと、前記バインダー樹脂とを含む多孔質層を形成する方法を挙げることができる。以下に示す工程(2)および工程(3)の場合においては、前記バインダー樹脂を析出させた後にさらに乾燥させ、溶媒を除去することによって、製造され得る。工程(1)〜(3)における塗工液は、前記フィラーAが分散しており、かつ、前記バインダー樹脂が溶解している状態であってもよい。前記基材は、特に限定されないが、例えば、正極、負極、および、後述する本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの基材であるポリオレフィン多孔質フィルムなどを挙げることができる。なお、前記溶媒は、バインダー樹脂を溶解させる溶媒であるとともに、バインダー樹脂またはフィラーAを分散させる分散媒であるとも言える。
【0070】
(1)前記多孔質層を形成する前記フィラーAおよび前記バインダー樹脂を含む塗工液を、基材上に塗工し、前記塗工液中の溶媒を乾燥除去することによって多孔質層を形成させる工程。
【0071】
(2)前記多孔質層を形成する前記フィラーAおよび前記バインダー樹脂を含む塗工液を、前記基材の表面に塗工した後、その基材を前記バインダー樹脂に対して貧溶媒である、析出溶媒に浸漬することによって、前記バインダー樹脂を析出させ、多孔質層を形成する工程。
【0072】
(3)前記多孔質層を形成する前記フィラーAおよび前記バインダー樹脂を含む塗工液を、前記基材の表面に塗工した後、低沸点有機酸を用いて、前記塗工液の液性を酸性にすることによって、前記バインダー樹脂を析出させ、多孔質層を形成する工程。
【0073】
前記塗工液における溶媒は、前記基材に悪影響を及ぼさず、前記バインダー樹脂を均一かつ安定に溶解または分散し、前記フィラーAを均一かつ安定に分散させることができる溶媒であることが好ましい。前記溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、および水が挙げられる。
【0074】
前記析出溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコールまたはt−ブチルアルコールを用いることが好ましい。
【0075】
前記工程(3)において、低沸点有機酸としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、酢酸等を使用することができる。
【0076】
多孔質層の塗工量(目付)は、電極(電極シート)との接着性およびイオン透過性の観点から、前記基材の片面において、通常、固形分で0.5〜20g/mであることが好ましく、0.5〜10g/mであることがより好ましく、0.5g/m〜7g/mの範囲であることが好ましい。すなわち、得られる多孔質層の塗工量(目付)が前述の範囲となるように、前記基材上に塗布する前記塗工液の量を調節することが好ましい。
【0077】
前記工程(1)〜(3)において、多孔質層を形成するバインダー樹脂を溶解または分散させた溶液中のバインダー樹脂量を変化させることにより、電解液に浸漬した後の多孔質層1平方メートル当たりに含まれる、電解液を吸収したバインダー樹脂の体積を調整することができる。
【0078】
また、多孔質層を形成するバインダー樹脂を溶解または分散させる溶媒量を変化させることにより、電解液に浸漬した後の多孔質層の空孔率、平均孔径を調整することができる。
【0079】
前記塗工液の好適な固形分濃度は、フィラーの種類などによって変化し得るが、一般には、10重量%より大きく40重量%以下であることが好ましい。
【0080】
前記塗工液を基材上に塗工する際の塗工せん断速度は、フィラーの種類などによって変化し得るが、一般には、2(1/s)以上であることが好ましく、4(1/s)〜50(1/s)であることがより好ましい。
【0081】
[非水電解液二次電池用積層セパレータ]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも一方の面に、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層を積層している。
【0082】
<ポリオレフィン多孔質フィルム>
本発明の一実施形態におけるポリオレフィン多孔質フィルム(以下、単に「多孔質フィルム」とも称する)は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とし、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体および液体を通過させることが可能となっている。前記多孔質フィルムは、単独で非水電解液二次電池用セパレータとなり得る。また、上述の多孔質層が積層された非水電解液二次電池用積層セパレータの基材ともなり得る。
【0083】
前記ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも一方の面上に、前記多孔質層が積層されてなる積層体を、本明細書において、「非水電解液二次電池用積層セパレータ」とも称する。また、本発明の一実施形態における非水電解液二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムの他に、接着層、耐熱層、保護層等のその他の層をさらに備えていてもよい。
【0084】
多孔質フィルムに占めるポリオレフィンの割合は、多孔質フィルム全体の50体積%以上であり、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることがさらに好ましい。また、前記ポリオレフィンには、重量平均分子量が5×10〜15×10の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィンに重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、非水電解液二次電池用セパレータの強度が向上するのでより好ましい。
【0085】
熱可塑性樹脂である前記ポリオレフィンとしては、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−ヘキセン等の単量体を重合してなる、単独重合体または共重合体が挙げられる。前記単独重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを挙げることができる。また、前記共重合体としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体を挙げることができる。
【0086】
このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止することができるため、ポリエチレンがより好ましい。なお、この過大電流が流れることを阻止することをシャットダウンともいう。前記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。このうち、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0087】
多孔質フィルムの膜厚は、4〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、6〜15μmであることがさらに好ましい。
【0088】
多孔質フィルムの単位面積当たりの目付は、強度、膜厚、重量およびハンドリング性を考慮して適宜決定することができる。ただし、非水電解液二次電池の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度を高くすることができるように、前記目付は、4〜20g/mであることが好ましく、4〜12g/mであることがより好ましく、5〜10g/mであることがさらに好ましい。
【0089】
多孔質フィルムの透気度は、ガーレ値で30〜500sec/100mLであることが好ましく、50〜300sec/100mLであることがより好ましい。多孔質フィルムが前記透気度を有することにより、充分なイオン透過性を得ることができる。多孔質フィルムに上述の多孔質層を積層させた非水電解液二次電池用積層セパレータの透気度は、ガーレ値で30〜1000sec/100mLであることが好ましく、50〜800sec/100mLであることがより好ましい。非水電解液二次電池用積層セパレータは、前記透気度を有することにより、非水電解液二次電池において、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0090】
多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止する機能を得ることができるように、20〜80体積%であることが好ましく、30〜75体積%であることがより好ましい。また、多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、充分なイオン透過性を得ることができ、かつ、正極および負極への粒子の入り込みを防止することができるように、0.30μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましく、0.10μm以下であることがさらに好ましい。
【0091】
[ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法]
前記ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法は特に限定されるものではない。例えば、ポリオレフィン系樹脂と、無機充填剤および可塑剤等の孔形成剤と、任意で酸化防止剤等を混練した後に押し出すことで、シート状のポリオレフィン樹脂組成物を作製する。適当な溶媒にて当該孔形成剤を当該シート状のポリオレフィン樹脂組成物から除去した後、当該孔形成剤が除去されたポリオレフィン樹脂組成物を延伸することで、ポリオレフィン多孔質フィルムを製造することができる。
【0092】
上記無機充填剤としては、特に限定されるものではなく、無機フィラー、具体的には炭酸カルシウム等が挙げられる。上記可塑剤としては、特に限定されるものではなく、流動パラフィン等の低分子量の炭化水素が挙げられる。
【0093】
具体的には、以下に示すような工程を含む方法を挙げることができる。
(A)超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリエチレンと、炭酸カルシウムまたは可塑剤等の孔形成剤と、酸化防止剤とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(B)得られたポリオレフィン樹脂組成物を一対の圧延ローラで圧延し、速度比を変えた巻き取りローラで引っ張りながら段階的に冷却し、シートを成形する工程、
(C)得られたシートの中から適当な溶媒にて孔形成剤を除去する工程、
(D)孔形成剤が除去されたシートを適当な延伸倍率にて延伸する工程。
【0094】
<非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法としては、例えば、前述の「多孔質層の製造方法」において、前記塗工液を塗布する基材として、前述のポリオレフィン多孔質フィルムを使用する方法を挙げることができる。
【0095】
[非水電解液二次電池用部材、非水電解液二次電池]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材は、正極と、本発明の一実施形態に係る多孔質層、または、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる。
【0096】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、本発明の一実施形態に係る多孔質層、または、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを含む。
【0097】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、例えば、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、本発明の一実施形態に係る多孔質層と、ポリオレフィン多孔質フィルムと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材、すなわち、正極と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材を備えるリチウムイオン二次電池である。なお、多孔質層以外の非水電解液二次電池の構成要素は、下記説明の構成要素に限定されるものではない。
【0098】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、本発明の一実施形態に係る多孔質層または本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを介して対向した構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入された構造を有する。本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、非水電解質二次電池、特にはリチウムイオン二次電池であることが好ましい。なお、ドープとは、吸蔵、担持、吸着、または挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0099】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材は、変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを含む本発明の一実施形態に係る多孔質層を備えていることから、非水電解液二次電池に組み込まれた際に、電池特性を向上させることができるという効果を奏する。本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、変性ベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂を含むフィラーを含む、本発明の一実施形態に係る多孔質層を備えていることから、電池特性に優れるという効果を奏する。
【0100】
<正極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における正極としては、一般に非水電解液二次電池の正極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、正極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0101】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、V、Mn、Fe、Co、Ni等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。前記リチウム複合酸化物のうち、平均放電電位が高いことから、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等のα−NaFeO型構造を有するリチウム複合酸化物、リチウムマンガンスピネル等のスピネル型構造を有するリチウム複合酸化物がより好ましい。当該リチウム複合酸化物は、種々の金属元素を含んでいてもよく、複合ニッケル酸リチウムがさらに好ましい。
【0102】
さらに、Ti、Zr、Ce、Y、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、InおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素のモル数とニッケル酸リチウム中のNiのモル数との和に対して、前記少なくとも1種の金属元素の割合が0.1〜20モル%となるように当該金属元素を含む複合ニッケル酸リチウムを用いると、高容量での使用におけるサイクル特性に優れるのでさらにより好ましい。中でもAlまたはMnを含み、かつ、Ni比率が85%以上、さらに好ましくは90%以上である活物質が、当該活物質を含む正極を備える非水電解液二次電池の高容量での使用におけるサイクル特性に優れることから、特に好ましい。
【0103】
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等が挙げられる。前記導電剤は、1種類のみを用いてもよく、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用いる等、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン−トリクロロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン−フッ化ビニルの共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、およびポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、並びに、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。尚、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0105】
正極合剤を得る方法としては、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧して正極合剤を得る方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電剤および結着剤をペースト状にして正極合剤を得る方法;等が挙げられる。
【0106】
前記正極集電体としては、例えば、Al、Ni、ステンレス等の導電体が挙げられ、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0107】
シート状の正極の製造方法、即ち、正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、例えば、正極合剤となる正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電剤および結着剤をペースト状にして正極合剤を得た後、当該正極合剤を正極集電体に塗工し、乾燥して得られたシート状の正極合剤を加圧して正極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0108】
<負極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における負極としては、一般に非水電解液二次電池の負極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、負極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0109】
前記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金等が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料;正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープ・脱ドープを行う酸化物、硫化物等のカルコゲン化合物;アルカリ金属と合金化するアルミニウム(Al)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、シリコン(Si)などの金属、アルカリ金属を格子間に挿入可能な立方晶系の金属間化合物(AlSb、MgSi、NiSi)、リチウム窒素化合物(Li3-xN(M:遷移金属))等が挙げられる。
【0110】
前記負極活物質のうち、電位平坦性が高く、また平均放電電位が低いために正極と組み合わせた場合に大きなエネルギー密度が得られることから、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を主成分とする炭素質材料がより好ましい。また、黒鉛とシリコンの混合物であってもよく、その黒鉛を構成する炭素(C)に対するSiの比率が5%以上である負極活物質が好ましく、10%以上である負極活物質がより好ましい。
【0111】
負極合剤を得る方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧して負極合剤を得る方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にして負極合剤を得る方法;等が挙げられる。
【0112】
前記負極集電体としては、例えば、Cu、Ni、ステンレス等の導電体が挙げられ、特にリチウムイオン二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0113】
シート状の負極の製造方法、即ち、負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、例えば、負極合剤となる負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にして負極合剤を得た後、当該負極合剤を負極集電体に塗工し、乾燥して得られたシート状の負極合剤を加圧して負極集電体に固着する方法;等が挙げられる。前記ペーストには、好ましくは前記導電剤、および、前記結着剤が含まれる。
【0114】
<非水電解液>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池における非水電解液は、一般に非水電解液二次電池に使用される非水電解液であり、特に限定されないが、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl等が挙げられる。前記リチウム塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。前記リチウム塩のうち、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、およびLiC(CFSOからなる群から選択される少なくとも1種のフッ素含有リチウム塩がより好ましい。
【0115】
本発明における非水電解液を構成する有機溶媒としては、具体的には、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタン等のカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドン等のカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトン等の含硫黄化合物;並びに、前記有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒;等が挙げられる。前記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。前記有機溶媒のうち、カーボネート類がより好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒、または、環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、作動温度範囲が広く、かつ、負極活物質として天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛材料を用いた場合においても難分解性を示すことから、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒がさらに好ましい。
【0116】
<非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池の製造方法>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材の製造方法としては、例えば、前記正極と、本発明の一実施形態に係る多孔質層または本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とをこの順で配置する方法が挙げられる。
【0117】
また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池の製造方法としては、例えば、前記方法にて非水電解液二次電池用部材を形成した後、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れ、次いで、当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ密閉することにより、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池を製造することができる。
【0118】
非水電解液二次電池の形状は、特に限定されるものではなく、薄板(ペーパー)型、円盤型、円筒型、直方体等の角柱型等のどのような形状であってもよい。尚、非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を採用することができる。
【0119】
本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0121】
実施例および比較例における非水電解液二次電池用積層セパレータ、A層(ポリオレフィン多孔質フィルム)、B層(多孔質層)および非水電解液二次電池の物性等を、以下の方法で測定した。
【0122】
(1)膜厚(単位:μm):
非水電解液二次電池用積層セパレータ全体の膜厚、A層の膜厚、およびB層の膜厚は、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機を用いて測定した。
【0123】
(2)目付(単位:g/m):
非水電解液二次電池用積層セパレータから、一辺の長さ6.4cm×4cmの長方形のサンプルを切り取り、当該サンプルの重量W(g)を測定した。そして、以下の式に従い、非水電解液二次電池用積層セパレータの目付を算出した。
【0124】
目付(g/m)=W/(0.064×0.04)
同様にして、A層の目付を算出した。B層の目付は、非水電解液二次電池用積層セパレータの目付からA層の目付を差し引くことにより算出した。
【0125】
(3)体積粒度分布における平均粒子径D50(単位:μm):
D50を、日揮装株式会社製のMICROTRAC(MODEL:MT-3300EXII)を用いて測定した。
【0126】
[実施例1]
下記A層(多孔質フィルム)、およびB層(多孔質層)を用いて、非水電解液二次電池用積層セパレータを形成した。
【0127】
<A層>
ポリエチレンを用いてポリオレフィン多孔質フィルムを作製した。具体的には、超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学株式会社製)70重量部と、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞株式会社製)30重量部とを混合して混合ポリエチレンを得た。得られた混合ポリエチレン100重量部に対して、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.4重量部、酸化防止剤(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.1重量部、およびステアリン酸ナトリウム1.3重量部を加え、さらに、全体積に占める割合が38体積%となるように、平均粒子径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)を加えた。この組成物を粉末のまま、ヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練することにより、ポリエチレン樹脂組成物を得た。次いで、このポリエチレン樹脂組成物を、表面温度が150℃に設定された一対のロールにて圧延することにより、シートを作製した。このシートを、4mol/Lの塩酸に0.5重量%の非イオン系界面活性剤を配合して調製した塩酸水溶液に浸漬させることにより炭酸カルシウムを溶解して除去した。続いて、前記炭酸カルシウムを除去したシートを105℃で6倍に延伸することにより、ポリオレフィン多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0128】
<B層>
水、レゾルシン、フェノール、37%のホルマリン、および触媒としての水酸化カルシウムを、当該レゾルシンおよびフェノールの合計と、当該ホルマリン中のホルムアルデヒドとのモル比率が1:1.5となるように混合した。なお、レゾルシンとフェノールとのモル比率は0.75:0.25とした。得られた混合物を80℃にて撹拌保温することによって重合反応を行い、これにより、フェノール変性したレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂の微粒子を含む懸濁液を得た。このフェノール変性したレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂をフェノール変性RF樹脂とも称する。得られた懸濁液を遠心分離することによりフェノール変性RF樹脂の微粒子を沈降させ、その後、沈降したフェノール変性RF樹脂の微粒子を残しながら上澄みの分散媒を除去した。フェノール変性RF樹脂の微粒子に、さらに、洗浄液である水を加え、撹拌、遠心分離し、洗浄液を除去するという洗浄操作を2回繰り返すことによって、フェノール変性RF樹脂の微粒子を洗浄した。洗浄されたフェノール変性RF樹脂の微粒子をt−ブチルアルコールに浸漬後、凍結乾燥にてt-ブチルアルコールを除去し、フィラー1を得た。前記フィラー1は、実質的にフェノール変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂のみからなる。すなわち、フィラー1におけるフェノール変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂の含有量は98%以上である。フィラー1のD50は、0.6μmであった。
【0129】
前記フィラー1と、CMCと、水およびイソプロピルアルコールの混合溶媒とを、下記割合となるように混合した。即ち、100重量部のフィラー1に対してCMCが8重量部混合され、得られる混合液における固形分濃度(即ち、フィラー1とCMCとの合計濃度)が15.0重量%であり、かつ、溶媒組成が水95重量%およびイソプロピルアルコール5重量%となるように、フィラー1とCMCと水およびイソプロピルアルコールの混合溶媒とを混合し、混合液を得た。得られた混合液は、フィラー1の分散液であった。この得られた分散液を、高圧分散装置(株式会社スギノマシン製;スターバースト)を用いて高圧分散(高圧分散条件;100MPa×3パス)することにより、塗工液1を作製した。
【0130】
<非水電解液二次電池用積層セパレータ>
前記A層の片面に、20W/(m/分)でコロナ処理を施した。次いで、コロナ処理を施したA層の面に、グラビアコーターを用いて、前記塗工液1を塗工した。このとき、A層に塗工液1を均一に塗工することができるように、塗工位置の前後をピンチロールで挟んでA層に張力を与えた。その後、塗膜を乾燥することでB層を形成した。これにより、A層の片面にB層が積層された非水電解液二次電池用積層セパレータ1を得た。
【0131】
<非水電解液二次電池の作製>
(正極の作製)
LiNi0.5Mn0.3Co0.2/導電剤/PVDF(重量比92/5/3)をアルミニウム箔に塗布することにより製造された市販の正極を用いた。前記正極を、正極活物質層が形成された部分の大きさが45mm×30mmであり、かつその外周に幅13mmで正極活物質層が形成されていない部分が残るように、アルミニウム箔を切り取って正極とした。正極活物質層の厚さは58μm、密度は2.50g/cm、正極容量は174mAh/gであった。
【0132】
(負極の作製)
黒鉛/スチレン−1,3−ブタジエン共重合体/カルボキシメチルセルロースナトリウム(重量比98/1/1)を銅箔に塗布することにより製造された市販の負極を用いた。前記負極を、負極活物質層が形成された部分の大きさが50mm×35mmであり、かつその外周に幅13mmで負極活物質層が形成されていない部分が残るように、銅箔を切り取って負極とした。負極活物質層の厚さは49μm、密度は1.40g/cm、負極容量は372mAh/gであった。
【0133】
<非水電解液二次電池の組立て>
ラミネートパウチ内で、非水電解液二次電池用積層セパレータ1のB層と正極の正極活物質層とが接するように、かつ、非水電解液二次電池用積層セパレータ1のA層と負極の負極活物質層とが接するようにして、前記正極と、非水電解液二次電池用積層セパレータ1と、負極とをこの順で積層(配置)することにより、非水電解液二次電池用部材を得た。このとき、正極の正極活物質層における主面の全部が、負極の負極活物質層における主面の範囲に含まれるように、正極および負極を配置した。すなわち、得られる非水電解液二次電池用部材1において、正極の正極活物質層における主面の全部が、負極の負極活物質層における主面に重なるように、正極および負極を配置した。
【0134】
続いて、前記非水電解液二次電池用部材を、アルミニウム層とヒートシール層とが積層されてなる袋に入れ、さらにこの袋に非水電解液を0.23mL入れた。前記非水電解液は、LiPFを、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒に、LiPFの濃度が1mol/Lとなるように溶解して調製した。そして、袋内を減圧しつつ、当該袋をヒートシールすることにより、非水電解液二次電池1を作製した。
【0135】
[実施例2]
水、レゾルシン、o−クレゾール、37%のホルマリン、および触媒としての水酸化カルシウムを、当該レゾルシンおよびo−クレゾールの合計と当該ホルマリン中のホルムアルデヒドとのモル比率が1:1.5となるように混合したこと以外は実施例1と同様にしてフィラーを得た。なお、レゾルシンとo−クレゾールとのモル比率は0.75:0.25とした。得られたフィラーをフィラー2とした。前記フィラー2は、実質的にo−クレゾール変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂のみからなる。すなわち、フィラー2におけるo−クレゾール変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂の含有量は98%以上である。得られたフィラー2のD50は、1.0μmであった。
【0136】
フィラー1の代わりに、フィラー2を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池用積層セパレータ2を得た。その後、非水電解液二次電池用積層セパレータ1の代わりに、非水電解液二次電池用積層セパレータ2を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池2を得た。
【0137】
[実施例3]
水、レゾルシン、m−クレゾール、37%のホルマリン、および触媒としての水酸化カルシウムを、当該レゾルシンおよびm−クレゾールの合計と当該ホルマリン中のホルムアルデヒドとのモル比率が1:1.5となるように混合したこと以外は実施例1と同様にしてフィラーを得た。なお、レゾルシンとm−クレゾールとのモル比率は0.75:0.25とした。得られたフィラーをフィラー3とした。前記フィラー3は、実質的にm−クレゾール変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂のみからなる。すなわち、フィラー3におけるm−クレゾール変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂の含有量は98%以上である。フィラー3のD50は、3.0μmであった。
【0138】
フィラー1の代わりに、フィラー3を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池用積層セパレータ3を得た。その後、非水電解液二次電池用積層セパレータ1の代わりに、非水電解液二次電池用積層セパレータ3を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池3を得た。
【0139】
[実施例4]
水、レゾルシン、p−クレゾール、37%のホルマリン、および触媒としての炭酸ナトリウムを、当該レゾルシンおよびp−クレゾールの合計と当該ホルマリン中のホルムアルデヒドとのモル比率が1:1.5となるように混合したこと以外は実施例1と同様にしてフィラーを得た。なお、レゾルシンとp−クレゾールとのモル比率は0.75:0.25とした。得られたフィラーをフィラー4とした。前記フィラー4は、実質的にp−クレゾール変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂のみからなる。すなわち、フィラー4におけるp−クレゾール変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂の含有量は98%以上である。フィラー4のD50が、1.0μmであった。
【0140】
フィラー1の代わりに、フィラー4を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池用積層セパレータ4を得た。その後、非水電解液二次電池用積層セパレータ1の代わりに、非水電解液二次電池用積層セパレータ4を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池4を得た。
【0141】
[実施例5]
水、レゾルシン、スチレン化レゾルシン、37%のホルマリン、および触媒としての炭酸ナトリウムを、当該レゾルシンおよびスチレン化レゾルシンの合計と当該ホルマリン中のホルムアルデヒドとのモル比率が1:1.5となるように混合したこと以外は実施例1と同様にしてフィラーを得た。なお、レゾルシンとスチレン化レゾルシンとのモル比率は0.90:0.10とした。得られたフィラーをフィラー5とした。前記フィラー5は、実質的にスチレン化レゾルシン変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂のみからなる。すなわち、フィラー5におけるスチレン化レゾルシン変性したベンゼンジオール−アルデヒド系樹脂の含有量は98%以上である。フィラー5のD50は、3.9μmであった。
【0142】
フィラー1の代わりに、フィラー5を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池用積層セパレータ5を得た。その後、非水電解液二次電池用積層セパレータ1の代わりに、非水電解液二次電池用積層セパレータ5を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池5を得た。
【0143】
[比較例1]
フィラー1の代わりにフィラー6として市販のフェノール樹脂(群栄化学工業製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、塗工液を作製し、塗工液6とした。
【0144】
塗工液1の代わりに、塗工液6を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池用積層セパレータ6を得た。その後、非水電解液二次電池用積層セパレータ1の代わりに、非水電解液二次電池用積層セパレータ6を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、非水電解液二次電池6を得た。
【0145】
フィラー6のD50は、8.6μmであった。
【0146】
実施例および比較例のフィラーの組成等を表1に示す。なお、実施例1〜5については便宜的にレゾルシンを第一成分、式(1)で表される単量体を第二成分と称している。比較例1については、レゾルシンを用いていないのでフェノールを第一成分と称している。
【0147】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層は、電池特性に優れる非水電解液二次電池の製造に利用することができる。