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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-220717(P2019-220717A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20191129BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20191129BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20191129BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20191129BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20191129BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20191129BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   H05B33/22 A
   H05B33/28
   H05B33/14 A
   H05B33/22 C
   H05B33/10
   H05B33/04
   H05B33/26 Z
   H01L27/32
   G09F9/30 309
   G09F9/30 365
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2019-169142(P2019-169142)
(22)【出願日】2019年9月18日
(62)【分割の表示】特願2017-70492(P2017-70492)の分割
【原出願日】2014年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-39902(P2013-39902)
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深川 弘彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴央
(72)【発明者】
【氏名】森井 克行
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC05
3K107CC23
3K107CC42
3K107CC43
3K107CC45
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD44X
3K107DD44Y
3K107DD46X
3K107DD46Y
3K107DD72
3K107DD73
3K107DD75
3K107DD76
3K107DD78
3K107DD84
3K107EE45
3K107FF02
3K107FF14
3K107FF15
3K107GG06
3K107GG28
5C094AA38
5C094BA27
5C094DA07
5C094DA13
5C094EA04
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB02
5C094FB04
5C094FB12
5C094GB10
5C094JA01
5C094JA07
(57)【要約】
【課題】 最大の課題である封止に関して、原理的な観点から取り組み、厳密な封止なしでも良好に駆動する有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】 陽極と陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、該有機電界発光素子は、錫ドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化インジウム、アルミニウム、銀、金のいずれかの材料によって陽極及び陰極が構成され、陽極と陰極との間に有機層と酸化亜鉛を含む層とを有し、水蒸気透過率が10−5〜3×10−3g/m・dayである封止がされたものである有機電界発光素子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、
該有機電界発光素子は、錫ドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化インジウム、アルミニウム、銀、金のいずれかの材料によって陽極及び陰極が構成され、陽極と陰極との間に有機層と酸化亜鉛を含む層とを有し、
水蒸気透過率が10−5〜3×10−3g/m・dayである封止がされたものである
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記酸化亜鉛を含む層は、電極に隣接していることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記酸化亜鉛を含む層は、有機化合物を含む溶液を塗布して形成された層に隣接していることを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記有機電界発光素子は、500時間大気下に置いた後にダークスポットがないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記有機電界発光素子は、有機化合物を含む材料により形成されるバッファ層を有し、
該有機化合物を含む材料は、有機化合物に対する還元剤の含有量が0.1〜15質量%であり、
該バッファ層の平均厚さは、5〜30nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記有機電界発光素子は、有機化合物を含む材料により形成されるバッファ層を有し、
該有機化合物を含む材料は、有機化合物に対する還元剤の含有量が0〜0.1質量%であり、
該バッファ層の平均厚さは、5〜60nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記有機電界発光素子は、陰極が導電性金属酸化物、銀及び銀の合金から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の有機電界発光素子を含む表示装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の有機電界発光素子を含む照明装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の有機電界発光素子を製造する方法であって、該製造方法は、水蒸気透過率が10−5〜3×10−3g/m・dayのフィルムを含む薄膜材料を積層する工程を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関する。より詳しくは、電子機器の表示部等の表示装置や照明装置等としての利用可能な有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用デバイスや照明に適用できる新しい発光素子として有機電界発光素子(有機EL素子)が期待されている。
有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に発光性有機化合物を含んで形成される発光層を含む1種または複数種の層を挟んだ構造を持ち、陽極から注入されたホールと陰極から注入された電子が再結合する時のエネルギーを利用して発光性有機化合物を励起させ、発光を得るものである。有機電界発光素子は電流駆動型の素子であり、流れる電流をより効率的に活用するため、素子構造や、素子を構成する層の材料について種々検討されている。
【0003】
最も基本的で数多く検討されている有機電界発光素子の構造は、安達らによって提案された3層構造のものであり(非特許文献1参照。)、陽極と陰極との間に正孔輸送層、発光層、電子輸送層をこの順で挟んだ構造をとっている。この提案以降、有機電界発光素子は3層構造を基本とし、より役割を分担することで、効率、寿命等の性能向上を目指して数多くの研究がなされている。この考えの基本は、注入される電子はその時点で(電極中において)高いエネルギーを有していることである。
それ故、有機電界発光素子は一般的に酸素や水によって劣化しやすく、これらの侵入を防ぐために厳密な封止が不可欠であった。劣化の原因としては、有機化合物への電子注入の容易さから、陰極として用いることができる材料がアルカリ金属やアルカリ金属化合物等、仕事関数の小さなものに限られていることや、使われる有機化合物自体が酸素・水と反応しやすいことが挙げられる。厳密な封止を施すことにより、有機電界発光素子は他の発光素子と比べて優位となったが、同時に安価、フレキシブルといった特長を犠牲にすることにもなった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライドフィジクス(Japanese Journal of Applied Physics)」、1988年、第27巻 L269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、一般的に有機電界発光素子は厳密な封止が施され、それによって他の発光素子に対する優位性を有するものとなった一方、安価、フレキシブルといった特長を犠牲にしてきた。2013年、急速なフレキシブルデバイスの進歩、そして関心の拡大に伴い、現在、フレキシブルに現実的に対応できる有機電界発光素子技術が急速に求められている。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、最大の課題である封止に関して、原理的な観点から取り組み、厳密な封止なしでも良好に駆動する有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、厳密な封止なしでも駆動する有機電界発光素子について種々検討したところ、陽極と、基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された逆構造の有機電界発光素子に着目し、逆構造の有機電界発光素子が駆動する封止の条件について検討したところ、従来の厳密な封止(例えば、ガラス)である水蒸気透過率が10−6よりも封止性能が高い領域に比べて劣る領域で、10−3g/m・day程度に至るまでの封止(以下では、「水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayである封止」と記す)があれば、素子として良好な連続駆動寿命、及び、保存安定性が得られることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、陽極と、基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、上記有機電界発光素子は、水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayである封止がされたものである有機電界発光素子である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
本発明の有機電界発光素子は、水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayである封止がされたものである。
一般に厳密な封止が不可欠な有機電界発光素子の場合、水蒸気透過率が10−6g/m・dayよりも低い水蒸気透過率を有する封止が必要とされるが、本発明の有機電界発光素子は、その1000倍程度の水蒸気透過率まで許容する簡易封止の有機電界発光素子である。
このような簡易封止の有機電界発光素子の最大のメリットは、フレキシブル化が可能になること、安価に製造できることであるが、光取り出し効率を上げるフィルム等の、これまでその封止性能から制限を受けていた部材の使用が可能となることも大きなメリットである。これにより、低消費電力、長寿命の素子とすることができる。また、製品毎の品質のばらつきが減少し、大面積化が容易になるメリットもある。
【0010】
本発明の有機電界発光素子は、良好な発光特性が得られる簡易封止の領域として、水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayである封止がされたものである。良好な発光特性とは、ダークスポットがないことはもちろん、素子を作製して500時間大気下に置いた後の素子の基本特性、例えば、電圧−輝度特性が初期と同等であることを意味し、より好ましくは素子を作製して10000時間大気下に置いた後の素子の電圧−輝度特性が初期と同等であることを意味する。水蒸気透過率が10−2g/m・dayの封止になると、本発明における最適条件下でもダークスポットは発生しないが、シミが多く発生し、輝度低下が顕著になってくる。更に水蒸気透過率が大きな数字を有する封止になると、連続的に発光特性が悪くなっていくことになる。
有機電界発光素子は、製造コストの点からは厳密な封止を必要としないものであるほうが好ましく、素子の駆動寿命の点からは封止がより厳密であるほうが好ましいが、これらの両方を考慮すると、本発明の有機電界発光素子は、水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayの封止がされていることが好ましい。より好ましくは、水蒸気透過率が10−5〜10−3g/m・dayの封止がされていることである。さらに好ましくは、水蒸気透過率が10−5〜10−4g/m・dayの封止がされていることである。
有機電界発光素子の水蒸気透過率は、幾つかの測定装置が考案されており、そのうち本発明では10−6g/m・dayまで測定する必要があるためにCa腐食法により測定することができる。
【0011】
上記水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayである封止をする方法は特に制限されず、水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayである封止フィルムで有機電界発光素子を封止する方法等を用いることができる。また、このように水蒸気透過率を10−6〜10−3g/m・dayに封止すること(水蒸気透過率を10−6〜10−3g/m・dayに封止したシステム)及びこのような水蒸気透過率10−6〜10−3g/m・dayに封止するために使用する部材もまた、本発明の1つである。このような水蒸気透過率に封止するための部材としては、封止フィルムが好ましい。
封止フィルムで封止された有機電界発光素子とする場合、封止フィルム上に封止フィルムとは別に基板を設置して、該基板上に陰極を形成し、陰極の上に各層を積層してもよく、封止フィルムを基板として用いて、封止フィルム上に直接陰極を形成し、陰極の上に各層を積層してもよい。これらいずれの場合においても、有機電界発光素子は、水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayである封止フィルムを必須とする薄膜材料を用いて形成されることになる。
このような、本発明の有機電界発光素子の形成に用いられる薄膜材料であって、該薄膜材料は、水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayのフィルムを必須とする有機電界発光素子形成用薄膜材料もまた、本発明の1つである。
【0012】
上記有機電界発光素子形成用薄膜材料は、水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayのフィルムのみからなるものであってもよく、水蒸気透過率が10−6〜10−3g/m・dayのフィルムの上に、1つ又は複数の層が積層されたものであってもよい。
フィルムの上に、1つ又は複数の層が積層されたものである場合、積層される層の数や種類は特に制限されないが、好ましい形態は、フィルムとフィルム上に形成された基板とからなる形態;フィルム、並びに、フィルム上に順に形成された基板及び陰極からなる形態;フィルム、並びに、フィルム上に順に形成された基板、陰極及び電子注入層からなる形態;フィルム、並びに、フィルム上に順に形成された基板、陰極、電子注入層及びバッファ層からなる形態;フィルム、並びに、フィルム上に直接形成された陰極からなる形態;フィルム、並びに、フィルム上に直接形成された陰極、該陰極上に形成された電子注入層からなる形態;フィルム、並びに、フィルム上に直接形成された陰極、該陰極上に形成された電子注入層、該電子注入層上に形成されたバッファ層からなる形態;が挙げられる。
基板、陰極、電子注入層、バッファ層としては、後述のものが好ましい。
【0013】
有機電界発光素子を構成する層には、発光層の他、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層等があり、これらの層が適宜選択されて積層され、有機電界発光素子が構成される。
本発明の有機電界発光素子は、陽極と、基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有するものである限り、積層される層の構成は特に制限されないが、陰極、電子注入層、必要に応じて正孔阻止層、電子輸送層、発光層、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、陽極の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。
本発明の有機電界発光素子が後述するバッファ層を有する場合であって、電子輸送層を有さない場合、又は、バッファ層が電子輸送層も兼ねる場合には陰極、電子注入層、バッファ層、正孔阻止層、発光層、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、陽極の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。
本発明の有機電界発光素子が後述するバッファ層を有し、バッファ層とは別に独立した層として電子輸送層を有する場合には、本発明の有機電界発光素子は、陰極、電子注入層、バッファ層、正孔阻止層、電子輸送層、発光層、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、陽極の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。
なお、これらの各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
【0014】
本発明の有機電界発光素子において、陽極及び陰極としては、公知の導電性材料を適宜用いることができるが、光取り出しのために少なくともいずれか一方は透明であることが好ましい。公知の透明導電性材料の例としてはITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)などが上げられる。不透明な導電性材料の例としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、錫、インジウム、銅、銀、金、白金やこれらの合金などが挙げられる。
陰極としては、この中でも、ITO、IZO、FTOが好ましい。
陽極としては、これらの中でも、Au、Ag、Alが好ましい。
上記のように、一般に陽極に用いられる金属を陰極及び陽極に用いる事ができる事から、上部電極からの光の取り出しを想定する場合(トップエミッション構造の場合)も容易に実現でき、上記電極を種々選んでそれぞれの電極に用いる事ができる。例えば、下部電極としてAl、上部電極にITOなどである。
【0015】
上記陰極の平均厚さは、特に制限されないが、10〜500nmであることが好ましい。より好ましくは、100〜200nmである。陰極の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
上記陽極の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、30〜150nmである。また、不透過な材料を用いる場合でも、例えば平均厚さを10〜30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極として使用することができる。
陽極の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により製膜時に測定することができる。
【0016】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有することが好ましい。
陽極と陰極との間に金属酸化物層を有するものであると、簡易封止である有機電界発光素子がより連続駆動寿命や保存安定性に優れたものとなる。
より好ましくは、陰極と発光層との間に第1の金属酸化物層を有し、陽極と発光層との間に第2の金属酸化物層を有することである。前述の電子注入層の一つは、下記第1の金属酸化物層であることが好ましい。
なお、金属酸化物層の重要性は、第1の金属酸化物層の方が高く、第2の金属酸化物層は、最低非占有分子軌道の極端に深い有機材料、例えば、HATCNでも置き換える事ができる。
【0017】
第1の金属酸化物層は、単体の金属酸化物膜の一層からなる層、もしくは、単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層である半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層である。金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素からなる群から選ばれる。これらのうち、積層又は混合金属酸化物層を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましく、その中でも単体の金属酸化物ならば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物を含むことが好ましい。
【0018】
上記単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層の例としては、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウムなどの金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものや、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛などの三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものなどが挙げられる。これらの中には、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZOやエレクトライドである12CaO7Alも含まれる。
なお、本発明においては、比抵抗が10−4Ωcmより小さい物は導電体、比抵抗が10−4Ωcmより大きい物は半導体または絶縁体として分類される。従って、透明電極として知られているITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等の薄膜は、導電性が高く半導体または絶縁体の範疇に含まれないことから本発明の第1の金属酸化物層を構成する一層に該当しない。
【0019】
上記第2の金属酸化物層を形成する金属酸化物としては、特に制限されないが、酸化バナジウム(V)、酸化モリブテン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化ルテニウム(RuO)等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものが好ましい。第2の金属酸化物層が酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものにより構成されると、第2の金属酸化物層が陽極から正孔を注入して発光層又は正孔輸送層へ輸送するという正孔注入層としての機能により優れたものとなる。また、酸化バナジウム又は酸化モリブテンは、それ自体の正孔輸送性が高いため、陽極から発光層又は正孔輸送層への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止することもできるという利点がある。より好ましくは、酸化バナジウム及び/又は酸化モリブテンから構成されるものである。
【0020】
上記第1の金属酸化物層の平均厚さは、1nmから数μm程度まで許容できるが、低電圧で駆動できる有機電界発光素子とする点から、1〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、2〜100nmである。
上記第2の金属酸化物層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、5〜50nmである。
第1の金属酸化物層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
第2の金属酸化物層の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により製膜時に測定することができる。
【0021】
本発明の有機電界発光素子は、金属酸化物層と発光層との間に、有機化合物を含む材料により形成されるバッファ層を有することが好ましい。より好ましくは、有機化合物を含む溶液を塗布して形成されるバッファ層を有することである。
逆構造有機ELにおけるバッファ層の役目は、(1)電極から金属酸化物層により引き上げられたエネルギー準位から発光層等の有機化合物層の最低非占有分子軌道のエネルギー準位まで電子を引き上げること、(2)活性な金属酸化物層から主たる有機EL材料層を保護すること等が挙げられる。(1)を達成する手段として、バッファ層を還元剤によりドーピングすることや、窒素原子含有置換基等の双極子を有する部位を含む化合物によりバッファ層を形成することが考えられる。還元剤によりドーピングされたバッファ層を有することは有機電界発光素子の好ましい形態の1つであるが、本発明の有機電界発光素子は、簡易な封止の素子であり、そのような封止環境下でも素子が安定して駆動するために、バッファ層には大気安定性も求められる。このため、還元剤によりドーピングされたバッファ層を用いる場合には、バッファ層を薄膜化することが必要となる。一方、双極子を有する部位を含み、キャリア輸送性を有する化合物によりバッファ層を形成する場合には、薄膜化することは必ずしも必要ではない。
上記(2)について、有機電界発光素子の金属酸化物層は、後述するようにスプレー熱分解法、ゾルゲル法、スパッタ法等の方法で製膜され、表面は平滑ではなく凹凸を持つ。この金属酸化物層の上に、真空蒸着等の方法で発光層を製膜した場合、発光層の原料となる成分の種類によっては、金属酸化物層の表面の凹凸が結晶核となり、金属酸化物層に接する発光層を形成する材料の結晶化が促進される。このため、有機電界発光素子を完成させたとしても、大きなリーク電流が流れ、発光面が不均一化して、素子性能が低下する傾向にある。
しかし、バッファ層を、より好ましくは、溶液を塗布してバッファ層を形成すると、表面の平滑な層を形成することができるため、金属酸化物層と発光層との間に塗布によりバッファ層を形成すると、発光層を形成する材料の結晶化が抑制され、これによって、金属酸化物層を有する有機電界発光素子が発光層等として結晶化が起こりやすい材料を用いた場合でも、リーク電流の抑制と、均一な面発光を得ることができることになる。
【0022】
上記バッファ層は、平均厚さが5〜100nmであることが好ましい。平均厚さがこのような範囲であることで、発光層の結晶化を抑制する効果を充分に発揮することができる。バッファ層の平均厚さが5nmより薄いと、金属酸化物表面に存在する凹凸を十分に平滑化できず、リーク電流が大きくなってバッファ層を形成することの効果が小さくなる。また、バッファ層の平均厚さが100nmより厚いと、駆動電圧が著しく上昇する傾向がある。また、有機化合物として、後述する本発明における好ましい構造の化合物を用いた場合には、バッファ層は電子輸送層としての機能も充分に発揮することができる。上記バッファ層の平均厚さは、より好ましくは、5〜60nmであり、更に好ましくは、10〜60nmである。また、本発明の有機電界発光素子の連続駆動寿命の点も考えると、上記バッファ層の平均厚さは、10〜30nmであることが更に好ましい。
また、上述したように、還元剤によりドーピングされたバッファ層を用いる場合には、バッファ層を薄膜化することが素子の大気安定性の観点から好ましい。この場合、バッファ層の好ましい平均厚さは、バッファ層を形成する有機化合物を含む材料中の還元剤の量とも関係し、該材料が有機化合物に対する還元剤の含有量が0.1〜15質量%の場合、バッファ層の平均厚さが5〜30nmであることが好ましい。一方、還元剤のドーピングがない場合、もしくは極少量の場合、例えば、該材料が有機化合物に対する還元剤の含有量が0〜0.1質量%の場合には、膜厚をより厚くしても大気安定性が良好に維持される傾向にある。例えばそのような場合は、バッファ層の平均厚さが5〜60nmである形態も好ましい。素子作製上のプロセス安定性および素子安定性からは厚膜である方が好ましい。
すなわち、(1)有機化合物を含む材料により形成されるバッファ層を有し、該有機化合物を含む材料は、有機化合物に対する還元剤の含有量が0.1〜15質量%であり、該バッファ層の平均厚さは、5〜30nmである有機電界発光素子や、(2)有機化合物を含む材料により形成されるバッファ層を有し、該有機化合物を含む材料は、有機化合物に対する還元剤の含有量が0〜0.1質量%であり、該バッファ層の平均厚さは、5〜60nmである有機電界発光素子もまた、本発明の好適な実施形態である。
バッファ層の平均厚さは触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0023】
本発明の有機電界発光素子において、発光層を形成する材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
【0024】
上記発光層を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物;更には特願2010−230995号、特願2011−6457号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
【0025】
上記発光層を形成する低分子材料としては、後述するホストとして機能する金属錯体、及び、リン光発光材料の他、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、4,4’−ビス[9−ジカルバゾリル]−2,2’−ビフェニル(CBP)、4、4’−ビス(9−エチルー3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)のようなカルバゾール系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、さらには特開2009−155325号公報および特願2010−28273号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
本発明の有機電界発光素子は、発光層の材料として上記高分子化合物や低分子化合物も用いることができるが、発光層にホストとして機能する金属錯体を1種含み、そこにゲストとして低分子化合物である発光材料が分散したものであることが好ましい。このような、ともに低分子化合物であるホスト−ゲストを組み合わせた発光層とすることで、有機電界発光素子が発光効率や駆動寿命等の発光特性に優れたものとなる。その理由は、ある種の金属錯体をホスト材料とすることで、極端に速いホスト−ゲスト間のエネルギー移動が実現でき、高エネルギー環境下にキャリア(電子)を置く時間をより短くできるためである。そのための、ホスト材料に求められる物性要件は、一重項エネルギー準位と三重項エネルギー準位のエネルギーギャップを極力ゼロに近づけることである。これにより、速いエネルギー移動が実現でき、より大気に安定になる。具体的には以下の通りである。
発光層のホストは、ゲストとの間でエネルギーや電子を移動させてゲストを励起状態にする役割を有し、ゲストとの間でエネルギーや電子の移動を行うホストの励起エネルギーがゲストの励起エネルギーよりも大きいことが好ましい。発光層のホストとして用いる金属錯体は、電気伝導性を有し、アモルファスな材料であって、ホストとして用いる発光材料との間でそのような関係にあるものであれば使用することができるが、ホストとして用いる金属錯体としては、下記式(1);
【0027】
【化1】
【0028】
(式(1)中、点線の円弧は、酸素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部とともに環構造が形成されていることを表し、Zと窒素原子とを含んで形成される環構造は、複素環構造である。X、X’’は、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。X、X’’は、結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成してもよい。酸素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線は、点線で結ばれる2つの原子が単結合又は二重結合で結合していることを表す。Mは、金属原子を表す。Zは、炭素原子又は窒素原子を表す。窒素原子からMへの矢印は、窒素原子がM原子へ配位していることを表す。Rは、1価の置換基又は2価の連結基を表す。mはRの数を表し、0又は1の数である。nは、金属原子Mの価数を表す。rは、1又は2の数である。)で表される金属錯体、
下記式(2);
【0029】
【化2】
【0030】
(式(2)中、X、X’’は、同一又は異なって、水素原子、又は、キノリン環構造の置換基となる1価の置換基を表し、キノリン環構造に複数個結合していてもよい。Mは、金属原子を表す。窒素原子からMへの矢印は、窒素原子がM原子へ配位していることを表す。Rは、1価の置換基又は2価の連結基を表す。mはRの数を表し、0又は1の数である。nは、金属原子Mの価数を表す。rは、1又は2の数である。)で表される金属錯体、
下記式(3);
【0031】
【化3】
【0032】
(式(3)中、点線の円弧は、酸素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部とともに環構造が形成されていることを表し、Zと窒素原子とを含んで形成される環構造は、複素環構造である。X、X’’は、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。X、X’’は、結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成してもよい。酸素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線は、点線で結ばれる2つの原子が単結合又は二重結合で結合していることを表す。Mは、金属原子を表す。Zは、炭素原子又は窒素原子を表す。窒素原子からMへの矢印は、窒素原子がM原子へ配位していることを表す。nは、金属原子Mの価数を表す。XとXとを結ぶ実線の円弧は、XとXとが少なくとも1つの他の原子を介して結合していることを表し、XとXとともに環構造を形成していてもよい。また少なくとも1つの他の原子を介したXとXとの結合の中に配位結合を含んでいてもよい。X、Xは、同一又は異なって、酸素原子、窒素原子、炭素原子のいずれかを表す。XからMへの矢印は、XがM原子へ配位していることを表す。m’は、1〜3の数である。)で表される金属錯体が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
上記式(1)において、rが1である場合、M原子を構造中に1つ有する下記式(4−1)で表される金属錯体となり、rが2である場合、M原子を構造中に2つ有する下記式(4−2)で表される金属錯体となる。
【0034】
【化4】
【0035】
上記式(1)、式(3)において点線の円弧で表される環構造としては、1つの環からなる環構造であってもよく、2つ以上の環からなる環構造であってもよい。このような環構造としては、炭素数2〜20の芳香環や複素環が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環;ジアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ジアジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環等の複素環が挙げられる。
これらの中でも、ベンゼン環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環が好ましい。
【0036】
上記式(1)〜(3)においてX、X’’で表される環構造が有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアラルキル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアリール基、アリールアミノ基、シアノ基、アミノ基、アシル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアラルキルアミノ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、カルバゾール基等が挙げられる。
なお、X、X’’で表される環構造が有する置換基がアリール基、アリールアミノ基である場合、アリール基、アリールアミノ基に含まれる芳香環が更に置換基を有していてもよく、その場合の置換基としては、上記X、X’’で表される置換基の具体例と同じものが挙げられる。
【0037】
上記式(1)、式(3)で表される点線の円弧で表される2つの環構造の置換基が結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成する場合、新たに形成される環構造としては、5員環構造や6員環構造が挙げられ、点線の円弧で表される2つの環構造と新たな環構造を合わせた環構造としては、例えば、下記(5−1)、(5−2)のような構造が挙げられる。
【0038】
【化5】
【0039】
上記式(1)〜(3)において、Mで表される金属原子としては、周期表の第1〜3族、9族、10族、12族又は13族の金属原子が好ましく、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、白金、ロジウム、イリジウム、ベリリウム、マグネシウムのいずれかが好ましい。
【0040】
上記式(1)、式(2)においてRが1価の置換基である場合、1価の置換基は、下記式(6−1)〜(6−3)のいずれかであることが好ましい。
【0041】
【化6】
【0042】
(式中、Ar〜Arは、置換基を有していてもよい芳香環、複素環、若しくは、芳香環又は複素環が2つ以上直接に結合した構造を表し、Ar〜Arは、同一の構造であっても異なる構造であっていてもよい。Qは、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を表す。)
Ar〜Arの芳香環又は複素環の具体例としては、上記式(1)において点線の円弧で表される環構造の芳香環又は複素環の具体例と同様のものを挙げることができ、芳香環又は複素環が2つ以上直接に結合した構造としては、これら芳香環又は複素環の具体例として挙げられた環構造が2つ以上直接に結合した構造が挙げられる。なおこの場合、直接に結合する2つ以上の芳香環や複素環は同一の環構造であってもよく、異なる環構造であってもよい。
芳香環又は複素環の置換基の具体例としては、上記式(1)において点線の円弧で表される環構造の芳香環又は複素環の置換基の具体例と同様のものを挙げることができる。
また、
【0043】
上記式(1)、式(2)においてRが2価の連結基である場合、Rは−O−、−CO−のいずれかであることが好ましい。
【0044】
上記式(3)において、X、Xと、XとXとを結ぶ実線の円弧とで形成される構造は、環構造を1つ又は複数含んでいてもよい。環構造は、X、Xを含んで形成されていてもよく、その場合の環構造としては、上記式(1)、式(3)において点線の円弧で表される環構造と同様のものや、ピラゾール環が挙げられる。好ましくは、X、Xを含んでピラゾール環が形成された構造である。
【0045】
上記式(3)において、XとXとを結ぶ実線の円弧は、炭素原子のみからなるものであってもよく、他の原子を含んでいてもよい。他の原子としては、ホウ素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
またXとXとを結ぶ実線の円弧は、X、Xを含んで形成される環構造以外の環構造を1つ又は2つ以上含んでいてもよく、その場合の環構造としては、上記式(1)、式(3)において点線の円弧で表される環構造と同様のものや、ピラゾール環が挙げられる。
【0046】
上記式(3)で表される構造の例としては、下記式(7)の構造等が挙げられる。
【0047】
【化7】
【0048】
(式(7)中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の置換基を表す。窒素原子からMへの矢印及び酸素原子からMへの矢印は、窒素原子、酸素原子がM原子へ配位していることを表す。点線の円弧、酸素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線、X、X’’、M、Z、n、m’は、式(3)と同様である。)
式(7)のR〜Rの1価の置換基としては、上記式(1)〜(3)においてX、X’’で表される環構造が有する置換基と同様のものが挙げられる。
【0049】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(8−1)〜(8−40)で表される構造の化合物等が挙げられる。
【0050】
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【0051】
上記式(2)で表される化合物の具体例としては、下記式(9−1)〜(9−3)で表される構造の化合物等が挙げられる。
【0052】
【化9】
【0053】
上記式(3)で表される化合物の具体例としては、下記式(10−1)〜(10−8)で表される構造の化合物等が挙げられる。
【0054】
【化10】
【0055】
本発明における金属錯体としては、上述のものの1種又は2種以上を用いることができるが、これらの中でも、上記式(8−11)で表されるビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛、上記式(8−34)で表されるビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(Bebq)、上記式(8−35)で表されるビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ピリジン]ベリリウム(Bepp)が好ましい。
【0056】
本発明の有機電界発光素子の発光層は、リン光発光材料を含むことが好ましい。リン光発光材料をゲストとして含むことで、本発明の有機電界発光素子が、発光効率及び駆動寿命により優れたものとなる。
リン光発光材料としては、下記式(11)、(12)のいずれかで表される化合物を好適に用いることができる。
【0057】
【化11】
【0058】
(式(11)中、点線の円弧は、酸素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分の一部とともに環構造が形成されていることを表し、窒素原子を含んで形成される環構造は、複素環構造である。X、X’’は、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。X、X’’は、結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成してもよい。また、nが2以上である場合には、複数のX同士又はX’’同士が結合して1つの置換基を形成していてもよい。窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分における点線は、点線で結ばれる2つの原子が単結合又は二重結合で結合していることを表す。M’は、金属原子を表す。窒素原子からM’への矢印は、窒素原子がM’原子へ配位していることを表す。nは、金属原子M’の価数を表す。)
【0059】
【化12】
【0060】
(式(12)中、点線の円弧は、酸素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分の一部とともに環構造が形成されていることを表し、窒素原子を含んで形成される環構造は、複素環構造である。X、X’’は、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。X、X’’は、結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成してもよい。窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分における点線は、点線で結ばれる2つの原子が単結合又は二重結合で結合していることを表す。M’は、金属原子を表す。窒素原子からM’への矢印は、窒素原子がM’原子へ配位していることを表す。nは、金属原子M’の価数を表す。XとXとを結ぶ実線の円弧は、XとXとが少なくとも1つの他の原子を介して結合していることを表し、XとXとともに環構造を形成していてもよい。X、Xは、同一又は異なって、酸素原子、窒素原子、炭素原子のいずれかを表す。XからM’への矢印は、XがM’原子へ配位していることを表す。m’は、1〜3の数である。)
【0061】
上記式(11)及び式(12)における点線の円弧で表される環構造としては、炭素数2〜20の芳香環や複素環が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾオキソール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、およびフェナントリジン環、チオフェン環、フラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環等の複素環が挙げられる。
【0062】
上記式(11)及び式(12)においてX、X’’で表される置換基としては、上記式(1)においてX、X’’で表される置換基と同様のものが挙げられる。
上記式(11)及び式(12)において、点線の円弧で表される2つの環構造が有する置換基同士が結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成している場合、点線の円弧で表される2つの環構造と新たな環構造を合わせた環構造としては、例えば、上記(5−1)、(5−2)のような構造が挙げられる。
【0063】
上記式(11)及び式(12)において、M’で表される金属原子としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金が挙げられる。
【0064】
上記式(12)で表される構造としては、下記式(13−1)、(13−2)の構造等が挙げられる。
【0065】
【化13】
【0066】
(式(13−1)、(13−2)中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の置換基を表す。式(13−2)において、R〜Rが1価の置換基の場合、環構造が複数の1価の置換基を有していてもよい。窒素原子からM’への矢印及び酸素原子からMへの矢印は、窒素原子、酸素原子がM’原子へ配位していることを表す。点線の円弧、窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分における点線、X、X’’、M’、n、m’は、式(12)と同様である。)
〜Rの1価の置換基としては、上記式(1)〜(3)においてX、X’’で表される環構造が有する置換基と同様のものが挙げられる。
【0067】
上記式(11)や式(12)で表される化合物の具体例としては、下記式(14−1)〜(14−30)で表される化合物が挙げられる。
【0068】
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
【0069】
本発明におけるリン光発光材料としては、上述のものの1種又は2種以上を用いることができるが、これらの中でも、上記式(14−1)で表されるイリジウム トリス(2−フェニルピリジン)(Ir(ppy))、上記式(14−19)で表されるイリジウム トリス(1−フェニルイソキノリン)(Ir(piq))、上記式(14−27)で表されるイリジウム ビス(2−メチルジベンゾ−[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトナート)(Ir(MDQ)(acac))、上記式(14−28)で表されるイリジウム トリス[3−メチル−2−フェニルピリジン](Ir(mpy))等が好ましい。
【0070】
上記発光層におけるリン光発光材料の含有量は、発光層を形成する材料100質量%に対して、0.5〜20質量%であることが好ましい。このような含有量であると、発光特性をより良好なものとすることができる。より好ましくは、0.5〜10質量%であり、更に好ましくは、1〜6質量%である。
【0071】
上記発光層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、20〜100nmである。
発光層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
【0072】
上記正孔輸送層の材料としては、正孔輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
またこれらの化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0073】
上記p型の低分子材料としては、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OxZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フルオレンのようなフルオレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、α−NPD、TPTEのようなアリールアミン系化合物が好ましい。
【0074】
本発明の有機電界発光素子が独立した層として正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、40〜100nmである。
正孔輸送層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
【0075】
上記電子輸送層の材料としては、電子輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、これらを混合して用いてもよい。
電子輸送層の材料として用いることができる低分子化合物の例としては、後述する式(15)で表されるホウ素含有化合物の他、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3’’−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ))、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、Alqのような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体が好ましい。
【0076】
本発明の有機電界発光素子が独立した層として電子輸送層を有する場合、電子輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、40〜100nmである。
電子輸送層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
【0077】
本発明の有機電界発光素子において、金属酸化物層、陰極、陽極、発光層、正孔輸送層、電子輸送層を形成する方法は特に制限されず、気相製膜法であるプラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射法、そして液相製膜法である電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、ゾル・ゲル法、MOD法、スプレー熱分解法、微粒子分散液を用いたドクターブレード法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーンプリンティング法等の印刷技術等を用いることができ、材料に応じた適切な方法を選択して用いることができる。
これらの方法は各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作製方法が異なっていても良い。第2の金属酸化物層は、これらの中でも、気相製膜法を用いて形成するのがより好ましい。気相製膜法によれば、有機化合物層の表面を壊すことなく清浄にかつ陽極と接触よく形成することができ、その結果、上述したような第2の金属酸化物層を有することによる効果がより顕著なものとなる。
【0078】
本発明の有機電界発光素子において、上述したバッファ層は、有機化合物を含む溶液を塗布することで形成される層であることが好ましい。塗布により所定の厚みのバッファ層を形成することでバッファ層上に製膜する層を形成する材料の結晶化を効果的に抑制することが可能となる。
上記有機化合物を含む溶液を塗布する方法は特に制限されず、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、バーコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布方法を用いることができる。このうち、膜厚をより制御しやすいという点でスピンコート法やスリットコート法が好ましい。
バッファ層を塗布製膜することで、金属酸化物層表面に存在する凹凸が平滑化されるため、次にバッファ層上に製膜する層を形成する材料の結晶化が抑制される。
【0079】
上記有機化合物を含む溶液を調製するために使用する溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
これらの中でも、THF、トルエン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンが好ましい。
【0080】
上記有機化合物を含む溶液は、溶媒中の有機化合物の濃度が0.05〜10質量%であることが好ましい。このような濃度であると、塗布した時の塗りムラや凹凸の発生を抑えることができる。溶媒中の有機化合物の濃度はより好ましくは、0.1〜5質量%であり、更に好ましくは0.1〜3質量%である。
【0081】
本発明の有機電界発光素子は、基板がある側とは反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよく、基板がある側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
【0082】
本発明の有機電界発光素子に用いられる基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、環状オレフィンのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。フレキシブル化の観点からは、上記樹脂材料を用いることが好ましい。
また、トップエミッション型の場合には、上記基板材料に加え、不透明基板も用いることができ、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの等、さらにそれらを1種又は2種以上組み合わせたものも用いることができる。また、フレキシブル化の観点からは、これらが薄膜であることが好ましい。
【0083】
上記基板の平均厚さは、0.1〜30mmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10mmである。
基板の平均厚さはデジタルマルチメーター、ノギスにより測定することができる。
【0084】
本発明の有機電界発光素子において、バッファ層を形成する有機化合物は、塗布により有機化合物の層の形成が可能なものであれば特に制限されないが、有機化合物の例としては、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジオクチルフルオレンのようなポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物や、下記の式(15)、下記の式(21)、下記の式(26)で表されるホウ素含有化合物、ポリアミン類又はトリアジン環含有化合物等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0085】
本発明の有機電界発光素子において、バッファ層を形成する有機化合物は、ホウ素原子を有する有機化合物であることが好ましい。より好ましくは、ホウ素原子を有する有機化合物が下記式(15)または下記式(21)または下記式(26)で表される構造の化合物である。
【0086】
本発明の有機電界発光素子において、第1の金属酸化物層から効率の良い電子注入を実現するために、バッファ層を形成する有機化合物としては、発光層に含まれる発光性化合物のLUMO準位よりも深いLUMO準位を持つ化合物を選択することが好ましい。
さらに、発光層で生成したエキシトンのエネルギーがバッファ層の化合物に移動して発光することを避けるため、発光層に含まれる発光性化合物のHOMO−LUMOエネルギーギャップよりも広いHOMO−LUMOエネルギーギャップを持つ化合物を選択することがより好ましい。
【0087】
下記式(15)および(21)および(26)で表されるホウ素含有化合物は、(i)熱的に安定な化合物である、(ii)HOMO、LUMOのエネルギー準位が低い、(iii)良好な塗布膜を作製することが可能である等の種々の特性を有するものであり、本発明の有機電界発光素子の材料として好適に用いることができるものである。
すなわち、本発明の有機電界発光素子において、バッファ層を形成するホウ素原子を有する有機化合物は、下記式(15);
【0088】
【化15】
【0089】
(式(15)中、点線の円弧は、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。X、X、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。nは2〜10の整数を表す。Yは直接結合又はn価の連結基であり、n個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所で結合していることを表す。)で表されるホウ素含有化合物であることが好ましい。
【0090】
上記式(15)において、点線の円弧は、実線で表される骨格部分、すなわちホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部又はホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分の一部、と共に環構造が形成されていることを表している。これは、上記式(15)で表される化合物が構造中に少なくとも4つ環構造を有し、上記式(15)において、ホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分及びホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分が、該環構造の一部として含まれていることを表している。なお、Xの結合する環構造は、その環構造骨格が炭素原子以外の原子を含まず、炭素原子からなるものである。
上記式(15)において、実線で表される骨格部分、すなわちホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分及びホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分、における点線部分は、それぞれの骨格部分において点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。
【0091】
上記式(15)において、窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。ここで、配位しているとは、窒素原子がホウ素原子に対して配位子と同様に作用して化学的に影響していることを意味し、配位結合(共有結合)となっていてもよく、配位結合を形成していなくてもよい。好ましくは、配位結合となっていることである。
【0092】
上記式(15)において、Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しているものであって、置換基を有していてもよい。これは、Q及びQがそれぞれ、該環構造の一部として組み込まれていることを表している。
上記式(15)において、X、X、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。すなわち、X、X、X及びXが水素原子である場合には、上記式(15)で表される化合物の構造中、X、X、X及びXを有する4つの環構造は置換基を有していないことを示し、X、X、X及びXのいずれか、又は、全てが、1価の置換基である場合には、該4つの環構造のいずれか、又は、いずれもが置換基を有することとなる。その場合には、1つの環構造の有する置換基の数は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
なお、本明細書中において置換基とは、炭素を含む有機基と、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等の炭素を含まない基とを含めた基を意味している。
【0093】
上記式(15)において、nは2〜10の整数を表し、Yは、直接結合又はn価の連結基である。すなわち、上記式(15)で表される化合物においては、Yが、直接結合であり、2個存在するY以外の構造部分どうしがそれぞれ独立に、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所で結合しているか、又は、Yがn価の連結基であり、上記式(15)におけるY以外の構造部分が複数存在し、それらが連結基であるYを介して結合することとなる。
【0094】
上記式(15)において、Yが、直接結合である場合、上記式(15)は、2個存在するY以外の構造部分の一方の、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所と、もう一方の、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所とが直接結合していることを表す。当該結合位置は特に制限されないが、Y以外の構造部分の一方のXが結合している環又はXが結合している環と、もう一方のXが結合している環又はXが結合している環とが直接結合していることが好ましい。より好ましくは、Y以外の構造部分の一方のXが結合している環と、もう一方のXが結合している環とが直接結合していることである。
この場合、2個存在するY以外の構造部分の構造は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0095】
上記式(15)において、Yが、n価の連結基であり、上記式(15)におけるY以外の構造部分が複数存在し、それらが連結基であるYを介して結合している場合、このように複数存在する上記式(15)におけるY以外の構造部分が連結基であるYを介して結合する構造は、Y以外の構造部分が直接結合している構造よりも、更に酸化に強くなり製膜性も向上することから、より好ましい。
なお、Yが、n価の連結基である場合、Yは、n個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所で結合しているものであるが、これは、Y以外の構造部分が、点線の円弧部分を形成する環構造、Q、Q、X、X、X、Xにおけるいずれか1箇所でYと結合していればよく、Y以外の構造部分のYとの結合部位は、n個存在するY以外の構造部分それぞれに独立であって、全て同一部位であってもよいし、一部が同一部位であってもよいし、全て異なる部位であってもよい、ということを意味している。当該結合位置は特に制限されないが、n個存在するY以外の構造部分の全てが、Xが結合している環又はXが結合している環でYと結合していることが好ましい。より好ましくは、n個存在するY以外の構造部分の全てが、Xが結合している環でYと結合していることである。
また、n個存在するY以外の構造部分の構造は、全て同一であってもよいし、一部が同一であってもよいし、全て異なっていてもよい。
【0096】
上記式(15)におけるYがn価の連結基である場合、該連結基としては、例えば、置換基を有していてもよい鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、置換基を有していてもよいヘテロ元素を含む基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基が挙げられる。これらの中でも、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基といった芳香環を有する基であることが好ましい。すなわち、上記式(15)におけるYは、芳香環を有する基であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
更に、Yは、上述した連結基が複数組み合わさった構造を有する連結基であってもよい。
【0097】
上記鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基としては、下記式(16−1)〜(16−8)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記式(16−1)、(16−7)がより好ましい。
上記へテロ元素を含む基としては、下記式(16−9)〜(16−13)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記式(16−12)、(16−13)がより好ましい。
【0098】
上記アリール基としては、下記式(16−14)〜(16−20)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記式(16−14)、(16−20)がより好ましい。
【0099】
上記複素環基としては、下記式(16−21)〜(16−27)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記式(16−23)、(16−24)がより好ましい。
【0100】
【化16】
【0101】
上記鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、ヘテロ元素を含む基、アリール基、複素環基が有する置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のハロゲン原子;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜10のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基等のジアリールアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、スチリル基等の炭素数2〜30のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基等の炭素数2〜30のアルキニル基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基等で置換されていてもよいアリール基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基で置換されていてもよい複素環基;N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基等のN,N−ジアルキルカルバモイル基;ジオキサボロラニル基、スタニル基、シリル基、エステル基、ホルミル基、チオエーテル基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子やヘテロ元素、アルキル基、芳香環等で置換されていてもよい。
これらの中でも、Yにおける鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、ヘテロ元素を含む基、アリール基、複素環基が有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、ジアリールアミノ基が好ましい。より好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ジアリールアミノ基である。
上記Yにおける鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、ヘテロ元素を含む基、アリール基、複素環基が置換基を有する場合、置換基が結合する位置や数は特に制限されない。
【0102】
上記式(15)におけるnは、2〜10の整数を表すが、好ましくは、2〜6の整数である。より好ましくは、2〜5の整数であり、更に好ましくは、2〜4の整数であり、特に好ましくは、溶媒への溶解性の観点から、2又は3である。最も好ましくは2である。すなわち、上記式(15)で表されるホウ素含有化合物は、二量体であることが最も好ましい。
【0103】
上記式(15)におけるQ及びQとしては、下記式(17−1)〜(17−8);
【0104】
【化17】
【0105】
で表される構造が挙げられる。なお、上記式(17−2)は、炭素原子に水素原子が2つ結合し、更に3つの原子が結合する構造であるが、当該水素原子以外の、炭素原子に結合する3つの原子は、いずれも水素原子以外の原子である。上記式(17−1)〜(17−8)の中でも、(17−1)、(17−7)、(17−8)のいずれかが好ましい。より好ましくは、(17−1)である。すなわち、Q及びQが、同一又は異なって、炭素数1の連結基を表すこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0106】
上記式(15)において、点線の円弧と、実線で表される骨格部分の一部とによって形成される環構造は、Xの結合する環構造の骨格が炭素原子からなる限り、環状構造であれば特に制限されない。
上記式(15)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、トリフェニレン環、ピレン環、フルオレン環、インデン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インドール環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環が挙げられ、これらはそれぞれ、下記式(18−1)〜(18−33)で表される。
これらの中でも、環構造骨格が炭素原子のみからなるものが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、トリフェニレン環、ピレン環、フルオレン環、インデン環が好ましい。より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、更に好ましくは、ベンゼン環である。
【0107】
【化18】
【0108】
上記式(15)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環としては、例えば、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、フェナントリジン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環が挙げられる。これらはそれぞれ、下記式(19−1)〜(19−17)で表される。なお、下記式(19−1)〜(19−17)中の*印は、Xが結合している環を構成し、かつ、上記式(15)におけるホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分を構成する炭素原子が、*印の付された炭素原子のいずれか1つと結合することを表している。また、*印の付された炭素原子を除く位置で他の環構造と縮環していてもよい。これらの中でも、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、フェナントリジン環が好ましい。より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環である。更に好ましくは、ピリジン環である。
【0109】
【化19】
【0110】
また、上記式(15)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環及びXが結合している環としては、上記式(18−1)〜(18−33)で表される環が挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。より好ましくは、ベンゼン環である。
【0111】
上記式(15)において、X、X、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表す。該1価の置換基としては特に制限されないが、X、X、X及びXとしては、例えば、水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、チオール基、エポキシ基、アシル基、置換基を有していてもよいオリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アゾ基、スタニル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルフィニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルフィニル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基;メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基等のアルキルスルホネート基;ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基等のアリールスルホネート基;ベンジルスルホネート基等のアリールアルキルスルホネート基、ボリル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アリールスルホネート基、アルデヒド基、アセトニトリル基等が挙げられる。
【0112】
上記X、X、X及びXにおける置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のハロゲン原子;塩化メチル基、臭化メチル基、ヨウ化メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ヒドロキシ基;チオール基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;アゾ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜40のアルキル基を有するモノ又はジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基などのアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、フェニルアセチニル等の炭素数2〜20のアルキニル基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基;エチニルオキシ基、フェニルアセチルオキシ基等のアルキニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、ピレニルオキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロフェニル基等のパーフルオロ基及び更に長鎖のパーフルオロ基;ジフェニルボリル基、ジメシチルボリル基、ビス(パーフルオロフェニル)ボリル基等のボリル基;アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル基;アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等のスルフィニル基;アルキルスルホニルオキシ基;アリールスルホニルオキシ基;ホスフィノ基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリフェニルシリル基等のシリル基;シリルオキシ基;スタニル基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基等で置換されていてもよいフェニル基、2,6−キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、フェナンスレニル基等のアリール基;チエニル基、フリル基、シラシクロペンタジエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、アクリジニル基、キノリル基、キノキサロイル基、フェナンスロリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基等のヘテロ環基;カルボキシル基;カルボン酸エステル;エポキシ基;イソシアノ基;シアネート基;イソシアネート基;チオシアネート基;イソチオシアネート基;カルバモイル基;N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基等のN,N−ジアルキルカルバモイル基;ホルミル基;ニトロソ基;ホルミルオキシ基;等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子やアルキル基、アリール基等で置換されていてもよく、更に、これらの基がお互いに任意の場所で結合して環を形成していてもよい。
【0113】
これらの中でも、X、X、X及びXとしては、水素原子;ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオール基、エポキシ基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等の反応性基;炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;アリール基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アリール基;オリゴアリール基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、オリゴアリール基;1価の複素環基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、1価のオリゴ複素環基;アルキルチオ基;アリールオキシ基;アリールチオ基;アリールアルキル基;アリールアルコキシ基;アリールアルキルチオ基;アルケニル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アルケニル基;アルキニル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アルキニル基が好ましい。
より好ましくは、水素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アミノ基、ボリル基、アルキニル基、アルケニル基、ホルミル基、シリル基、スタニル基、ホスフィノ基、該反応性基で置換されたアリール基、該反応性基で置換されたオリゴアリール基、1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基、該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基、アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基、アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基である。中でも、X及びXとして更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、含窒素複素芳香族基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基等の還元に強い官能基である。特に好ましくは、水素原子、アリール基、含窒素複素芳香族基である。また、X及びXとして更に好ましくは、水素原子、カルバゾリル基、トリフェニルアミノ基、チエニル基、フラニル基、アルキル基、アリール基、インドリル基等の酸化に強い官能基である。特に好ましくは、水素原子、カルバゾリル基、トリフェニルアミノ基、チエニル基である。このように、X及びXとして還元に強い官能基を有し、X及びXとして酸化に強い官能基を有するものとすると、ホウ素含有化合物全体として更に還元にも酸化にも強い化合物となるものと考えられる。
なお、上記式(15)において、X、X、X及びXが1価の置換基である場合、環構造に対するX、X、X及びXの結合位置や結合する数は、特に制限されない。
【0114】
上記式(15)において、Yがn価の連結基であり、nが2〜10である場合、Xが結合している環としては、上記式(15)において、Yが直接結合であり、nが2である場合にXが結合している環と同様である。それらの環の中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。より好ましくは、ベンゼン環である。
【0115】
上記式(15)において、Yがn価の連結基であり、nが2〜10である場合、Xが結合している環、Xが結合している環、及び、Xが結合している環としては、それぞれ、上記式(15)においてYが直接結合であり、nが2である場合にXが結合している環、Xが結合している環、及びXが結合している環として挙げられた環と同様であり、好ましい構造も同様である。
【0116】
すなわち、上記式(15)におけるYが直接結合であって、nが2である場合、及び、Yがn価の連結基であり、nが2〜10である場合のいずれの場合においても、上記式(15)で表されるホウ素含有化合物が、下記式(20);
【0117】
【化20】
【0118】
(式(20)中、窒素原子からホウ素原子への矢印、X、X、X、X、n及びYは式(15)と同様である。)で表されるホウ素含有化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0119】
上記式(15)で表されるホウ素含有化合物は、Suzukiカップリング反応等の通常用いられる種々の反応を用いることにより合成することができる。また、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of the American Chemical Society)、2009年、第131巻、第40号、14549−14559頁に記載の手法によっても合成可能である。
上記式(15)で表されるホウ素含有化合物の合成スキームの一例を挙げると下記反応式のように表される。下記反応式(I)は、上記式(15)で表されるホウ素含有化合物であって、Yが直接結合であり、nが2であるものの合成スキームの一例を表し、下記反応式(II)は、上記式(15)で表されるホウ素含有化合物であって、Yがn価の連結基であり、nが2〜10であるものの合成スキームの一例を表している。ただし、上記式(15)で表されるホウ素含有化合物の製造方法は、これに制限されない。
なお、下記スキームにおいて、原料となる(a)の化合物は、例えば、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)、2010年、第75巻、第24号、8709−8712頁に記載の手法により合成可能である。また、原料となる(b)の化合物は、(a)の化合物に対して下記反応式(III)で表されるホウ素化反応により合成することができる。
【0120】
【化21】
【0121】
【化22】
【0122】
【化23】
【0123】
また、本発明の有機電界発光素子のバッファ層を形成する有機化合物としては、下記式(21)で表されるホウ素含有化合物も好ましい。このホウ素含有化合物もまた、本発明の1つである。
【0124】
【化24】
【0125】
(式中、点線の円弧は、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。X、Xは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表す。X、Xは、同一又は異なって、環構造の置換基となる電子輸送性の1価の置換基を表す。X、X、X及びXは、それぞれ点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。)
【0126】
上記式(21)において、点線の円弧は、実線で表される骨格部分、すなわちホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分の一部又は、ホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表している。これは、式(21)で表される化合物が構造中に少なくとも4つ環構造を有し、式(21)において、ホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分及びホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分が、該環構造の一部として含まれていることを表している。
上記式(21)において、実線で表される骨格部分、すなわちホウ素原子とQとを繋ぐ骨格部分、及び、ホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、それぞれの骨格部分において点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。
【0127】
上記式(21)において、窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。ここで、配位しているとは、窒素原子がホウ素原子に対して配位子と同様に作用して化学的に影響していることを意味する。
【0128】
上記式(21)において、Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しているものであって、置換基を有していてもよい。これは、Q及びQがそれぞれ、該環構造の一部として組み込まれていることを表している。
上記式(21)におけるQ及びQとしては、上記式(17−1)〜(17−8)で表される構造が挙げられる。なお、一般式(17−2)は、炭素原子に水素原子が2つ結合し、更に3つの原子が結合する構造であるが、当該水素原子以外の、炭素原子に結合する3つの原子は、いずれも水素原子以外の原子である。上記一般式(17−1)〜(17−8)の中でも、(17−1)、(17−7)、(17−8)のいずれかが好ましい。より好ましくは、(17−1)である。すなわち、Q及びQが、同一又は異なって、炭素数1の連結基を表すこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0129】
上記式(21)において、X〜Xが結合している環としては、上記式(15)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環の具体例と同様の環が挙げられる。それらの中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。より好ましくは、ベンゼン環である。
【0130】
上記式(21)において、Xが結合している環としては、上記式(15)において、Yが直接結合であって、nが2である場合、Xが結合している環の具体例と同様の環が挙げられ、その中での好ましい環構造も同様である。なお、上記式(19−1)〜(19−17)中の*印は、Xが結合している環を構成し、かつ、式(1)におけるホウ素原子とQと窒素原子とを繋ぐ骨格部分を構成する炭素原子が、*印の付された炭素原子のいずれか1つと結合することを表している。また、*印の付された炭素原子を除く位置で他の環構造と縮環していてもよい。
【0131】
すなわち、上記式(21)で表されるホウ素含有化合物が、下記式(22);
【0132】
【化25】
【0133】
(式中、窒素原子からホウ素原子への矢印、X、X、X及びXは式(21)と同様である。)で表されるホウ素含有化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。本発明のホウ素含有化合物は上記式(22)で表される構造を有することにより、ホウ素原子に配位している窒素原子を除いて、X、X、X、Xが結合している環が炭素原子のみで構成されることとなるため、Sなどのヘテロ原子を環内に含む化合物の場合に比べて、軌道の広がりが小さくなり、一般論としてHOMO−LUMOのエネルギーギャップが広く保たれるといった特徴を有することとなる。このような特徴から、例えば、有機EL素子のりん光ホスト材料としてより好適に用いることができる。
【0134】
上記式(21)において、X、Xは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表す。該1価の置換基としては特に制限されないが、上記式(15)におけるX、X、X及びXの1価の置換基の具体例と同様のものが挙げられ、より好ましい置換基にオリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基も含まれる他は、好ましい置換基も同様である。
なお、上記式(21)において、X、X、X及びXが1価の置換基である場合、環構造に対するX、X、X及びXの結合位置や結合する数は、特に制限されない。
【0135】
上記式(21)において、X、Xは、同一又は異なって、環構造の置換基となる電子輸送性の1価の置換基を表す。X、Xとして電子輸送性の置換基を有することで、上記式(21)で表されるホウ素含有化合物は、電子輸送性に優れた材料となる。
該電子輸送性の1価の置換基としては、例えば、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環等の環内に炭素−窒素二重結合(C=N)を有する窒素原子含有複素環由来1価の基;一つ以上の電子求引性置換基を有するベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環等の環内に炭素−窒素二重結合を有しない芳香族炭化水素環または芳香族複素環由来の1価の基;ジベンゾチオフェンジオキシド環、ジベンゾホスホールオキシド環、シロール環等が挙げられる。
上記電子求引性置換基としては、−CN、−COR、−COOR、−CHO、−CF、−SOPh、−PO(Ph)等が挙げられる。ここで、Rは、水素原子又は1価の炭化水素基を表す。
これらの中でも、電子輸送性の1価の置換基は、環内に炭素−窒素二重結合(C=N)を有する窒素原子含有複素環由来の基であることが好ましい。
電子輸送性の1価の置換基は、環内に炭素−窒素二重結合を有する複素芳香環化合物由来の1価の基のいずれかであることがより好ましい。
【0136】
上記X、X、X及びXにおける置換基としては、上記式(15)のX、X、X及びXにおける置換基と同様である。
【0137】
上記式(21)で表されるホウ素含有化合物は、下記式(23)のような合成方法により合成することが好ましい。なお、下記式中、Zは、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0138】
【化26】
【0139】
このような合成方法により、上記式(21)で表されるホウ素含有化合物を製造することにより、このホウ素含有化合物を安価に製造することができる。この合成方法の第2工程は、これまでにはない新たな反応である。このような反応を用いた上記式(21)で表されるホウ素含有化合物の製造方法、すなわち、下記式(21);
【0140】
【化27】
【0141】
(式中、点線の円弧は、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。X、Xは、同一又は異なって、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表す。X、Xは、同一又は異なって、環構造の置換基となる電子輸送性の1価の置換基を表す。X、X、X及びXは、それぞれ点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。)で表されるホウ素含有化合物を製造する方法であって、該製造方法は、下記式(24);
【0142】
【化28】
【0143】
(式中、点線の円弧、実線で表される骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印、Q、X、及び、Xは、式(21)と同様である。Zは、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される化合物(I)と、下記式(25);
【0144】
【化29】
【0145】
(式中、点線の円弧はそれぞれ、2つのMgZをつなぐ骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。骨格部分の2つの炭素原子間の点線部分、及び、炭素原子とQとの間の点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。Q、X、Xは、式(21)と同様である。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される化合物(II)とを反応させる工程を含むことを特徴とするホウ素含有化合物の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0146】
上記式(23)で表される合成方法の第1工程に用いる溶媒は特に制限されないがヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
なお、上記式(23)で表される合成方法の第1工程は、特開2011−184430号公報の記載を参照して行うことができる。
【0147】
第2工程の反応を行う温度は、0℃〜40℃が好ましく、常圧、減圧、加圧のいずれの条件で反応を行ってもよい。
また、第2工程の反応を行う時間は、3〜48時間が好ましい。
【0148】
上記式(23)で表される合成方法では、上記第2工程の後に更に、X〜Xのいずれか1つ以上の置換基を別の置換基に交換する1つ又は複数の工程を行ってもよい。例えば、X〜Xのいずれかがハロゲン原子である場合は、Stillクロスカップリング反応や鈴木−宮浦クロスカップリング反応、園頭クロスカップリング反応、Heckクロスカップリング反応、桧山カップリング反応、根岸カップリング反応等を用いることで、ハロゲン原子を置換基Xに交換することができる。
また、上記カップリング反応の反応条件としては、各カップリング反応が通常行われる反応条件を適宜採用することができる。
【0149】
また、本発明の有機電界発光素子のバッファ層を形成する材料としては、下記式(26);
【0150】
【化30】
【0151】
(式中、点線の円弧は、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Q及びQは、同一又は異なって、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。X、X10、X11及びX12は、同一又は異なって、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、又は、直接結合を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。Aは、同一又は異なって、2価の基を表す。nを付した括弧内の構造単位は、X、X10、X11及びX12のいずれか2つで隣の構造単位と結合している。n、nは、それぞれ独立に、同一又は異なって、1以上の数を表す。)で表される繰り返し単位の構造を有する重合体も好ましい。このホウ素含有重合体もまた、本発明の1つである。
【0152】
上記式(26)におけるQ、Qはそれぞれ、上記式(21)におけるQ、Qと同様であり、好ましい形態も同様である。すなわち、Q及びQは、同一又は異なって、炭素数1の連結基を表すことが好ましい。
上記式(26)において、点線の円弧、実線で表される骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印は、上記式(21)と同様の意味であり、点線の円弧の好ましい構造も上記式(21)と同様である。すなわち、本発明のホウ素含有重合体(26)は、下記式(27);
【0153】
【化31】
【0154】
(式中、窒素原子からホウ素原子への矢印、X、X10、X11、X12、A、n及びnは、式(26)と同様である。nを付した括弧内の構造単位の隣の構造単位との結合も式(26)と同様である。)で表される繰り返し単位の構造を有することが好ましい。
【0155】
上記式(26)において、nは、nを付した括弧内の構造単位の数を表し、1以上の数を表す。nは、nを付した括弧内の構造単位の数を表し、1以上の数を表す。n、nは、それぞれ独立に、同一又は異なって、1以上の数を表すが、これは、以下のような意味である。
、nは、それぞれ独立した数である。このため、n、nは同じ数であっても異なる数であってもよい。
上記式(26)で表されるホウ素含有重合体は、上記式(26)で表される構造を1つ有するものであってもよく、複数有するものであってもよい。ホウ素含有重合体が上記式(26)で表される構造を複数有するものである場合、ある構造におけるn、nと、隣り合う構造におけるn、nとは、同一であっても異なっていてもよい。
したがって、上記式(26)で表されるホウ素含有重合体には、交互共重合体(上記式(26)で表される構造を2つ以上有し、全ての式(26)で表される構造において、nが同じ数であり、nも同じ数である)、ブロック共重合体(上記式(26)で表される構造を1つ有し、n、nの少なくとも1つが2以上)、ランダム共重合体(上記式(26)で表される構造を2つ以上有し、該複数の式(26)で表される構造の中に少なくとも1つ、n、nのいずれか又は両方が他の構造におけるn、nと異なるものがある)のいずれの構造のものも含まれる。
上記式(26)で表されるホウ素含有重合体は、これらの中でも、交互共重合体であることが好ましい。
【0156】
上記式(26)において、X、X10、X11及びX12は、同一又は異なって、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、又は、直接結合を表す。
上記式(26)では、X、X10、X11及びX12のいずれか2つが、重合体の主鎖の一部として結合を形成することになる。X〜X12のうち、重合体の主鎖の一部として結合を形成するものは、直接結合となる。X、X10、X11及びX12のうち、重合に関与しないものは、水素原子又は1価の置換基となる。
、X10、X11及びX12のうち、重合に関与しない1価の基の具体例及び好ましいものは、上述した式(21)で表されるホウ素含有化合物のX、Xの具体例及び好ましいものと同様である。
【0157】
上記式(26)で表されるホウ素含有重合体において、X、X10、X11及びX12のうち、直接結合は、X、X10、X11及びX12のいずれのものであってもよいが、XとX10、又は、X11とX12とが直接結合であることが好ましい。この場合、上記式(26)で表されるホウ素含有重合体は、下記式(28−1)、式(28−2)で表される繰り返し単位の構造を有する重合体となる。
【0158】
【化32】
【0159】
(式中、点線の円弧、実線で表される骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印、Q、Q、A、n及びnは、式(26)と同様である。式(28−1)中、X、X10は、直接結合を表し、X11、X12は、水素原子又は1価の置換基を表す。式(28−2)中、X11、X12は、直接結合を表し、X、X10は、水素原子又は1価の置換基を表す。)
【0160】
上記式(26)で表されるホウ素含有重合体は、下記式(29);
【0161】
【化33】
【0162】
(式中、点線の円弧、実線で表される骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印、Q及びQは、式(26)と同様である。X’、X10’、X11’及びX12’は、同一又は異なって、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、X’、X10’、X11’及びX12’のうち少なくとも2つは、下記式(30)のX13、X14と反応する反応性基である。)で表される反応性基を有するホウ素含有化合物(26’)と、下記式(30)
13−A−X14 (30)
(式中、Aは、式(26)と同様である。X13、X14は、反応性基を表す。)で表される化合物とを反応させることで製造することが好ましい。
このようなホウ素含有化合物(26’)と式(30)で表される化合物とを反応させると、重縮合反応によりホウ素含有重合体(26)が合成されることになる。
’〜X12’のうち、式(30)のX13、X14と反応する反応性基以外の1価の置換基は、上記式(26)におけるX〜X12の1価の置換基と同様である。
【0163】
重縮合し得る反応性基の組み合わせとしては、以下のいずれかのものが好ましく、ホウ素含有化合物(26’)と式(30)で表される化合物とが、これらのいずれかの重縮合し得る反応性基の組み合わせにより重縮合反応を行うことが好ましい。
ボリル基とハロゲン原子、スタニル基とハロゲン原子、アルデヒド基とホスホニウムメチル基、ビニル基とハロゲン原子、アルデヒド基とホスホネートメチル基、ハロゲン原子とハロゲン化マグネシウム、ハロゲン原子とハロゲン原子、ハロゲン原子とシリル基、ハロゲン原子と水素原子。
【0164】
上記式(26)におけるAとしては、2価の基であれば、特に制限されないが、アルケニル基、アリーレン基、2価の芳香族複素環基のいずれかが好ましい。
上記アリーレン基とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団であり、環を構成する炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは6〜20である。該芳香族炭化水素としては、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環または縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。
上記アリーレン基としては、例えば、下記式(31−1)〜(31−23)で表される基等が挙げられる。これらの中でもフェニレン基、ビフェニレン基、フルオレン−ジイル基、スチルベン−ジイル基が好ましい。
なお、式(31−1)〜(31−23)において、Rは、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミド基、イミン残基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基またはシアノ基を表す。式(31−1)中においてx−yで示した線のように、環構造に交差して付された線は、環構造が被結合部分における原子と直接結合していることを意味する。すなわち、式(31−1)においては、x−yで示される線が付された環を構成する炭素原子のいずれかと直接結合することを意味し、その環構造における結合位置は限定されない。式(31−10)中においてz−で示した線のように、環構造の頂点に付された線は、その位置において環構造が被結合部分における原子と直接結合していることを意味する。また、環構造に交差して付されたRの付いた線は、Rが、その環構造に対して1つ結合していてもよく、複数結合していてもよいことを意味し、その結合位置も限定されない。
また、式(31−1)〜(31−10)及び(31−15)〜(31−20)において、炭素原子は、窒素原子と置き換えられていてもよく、水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
【0165】
【化34-1】
【0166】
【化34-2】
【0167】
上記2価の芳香族複素環基とは、芳香族複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、環を構成する炭素数は通常3〜60程度である。該芳香族複素環化合物としては、環式構造をもつ芳香族有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素などのヘテロ原子を環内に含むものも含まれる。
【0168】
上記2価の複素環基としては、例えば、下記式(32−1)〜(32−38)で表される複素環基等が挙げられる。
なお、式(32−1)〜(32−38)において、Rは、上記アリーレン基の有するRと同様である。Yは、O、S、SO、SO、Se、又は、Teを表す。環構造に交差して付された線、環構造の頂点に付された線、環構造に交差して付されたRの付いた線については、式(31−1)〜(31−23)と同様である。
また、式(32−1)〜(32−38)において、炭素原子は、窒素原子と置き換えられていてもよく、水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
【0169】
【化35-1】
【0170】
【化35-2】
【0171】
上記式(26)で表されるホウ素含有重合体の塗布による製膜性を向上させる点からは、Aとしては上述したものの中でも、(31−1)、(31−9)、(32−1)、(32−9)、(32−16)、(32−17)が好ましい。より好ましくは、(31−1)、(31−9)である。
【0172】
上記式(26)で表されるホウ素含有重合体は、重量平均分子量が5,000〜1,000,000であることが好ましい。
重量平均分子量がこのような範囲であると、良好に薄膜化できる。より好ましくは、10,000〜500,000であり、更に好ましくは30,000〜200,000である。
上記重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;クロロホルム)によって以下の装置、及び、測定条件で測定することができる。
高速GPC装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)を用いて測定した。
展開溶媒 クロロホルム
カラム TSK−gel GMHXL ×2本
溶離液流量 1ml/min
カラム温度 40℃
【0173】
上記式(26)で表されるホウ素含有重合体は、例えば、上述したホウ素含有化合物(26’)と式(30)で表される化合物とを含む単量体成分を反応させることにより製造することができる。
該単量体成分は、ホウ素含有化合物(26’)と式(30)で表される化合物とを含む限り、その他の単量体を含んでいてもよいが、単量体成分全体100モル%に対して、ホウ素含有化合物(26’)と式(30)で表される化合物との合計が90モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、95モル%以上であり、最も好ましくは、100モル%、すなわち、単量体成分がホウ素含有化合物(26’)と式(30)で表される化合物のみを含むことである。
上記その他の単量体としては、ホウ素含有化合物(26’)又は式(30)で表される化合物と反応し得る反応性基を有する化合物が挙げられる。なお、上記単量体成分は、ホウ素含有化合物(26’)、式(30)で表される化合物とも、1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0174】
上記式(26)で表されるホウ素含有重合体の原料となる単量体成分におけるホウ素含有化合物(26’)と式(30)で表される化合物とのモル比は、100/0〜10/90であることが好ましい。より好ましくは、70/30〜30/70であり、最も好ましくは、50/50である。
【0175】
また、重合反応の際には、単量体成分の固形分濃度は、0.01質量%〜溶解する最大濃度の範囲で適宜設定することができるが、希薄すぎると反応の効率が悪く、濃すぎると反応の制御が難しくなる恐れがあることから、好ましくは、0.05〜10質量%である。
【0176】
上記式(26)で表されるホウ素含有重合体の製造方法は特に制限されないが、例えば、特開2011−184430号公報に記載の製造方法により製造することができる。
【0177】
以上まとめると、上記式(15)で表されるホウ素含有化合物、式(21)で表されるホウ素含有化合物は、塗布による均一な製膜が可能であり、低いHOMO、LUMO準位を持ち、式(21)で表されるホウ素含有化合物に関しては電子輸送性を併せ持ち、上記式(26)で表されるホウ素含有重合体に関しては、低いHOMO、LUMO準位を持ち、より高い塗布製膜性を併せ持つため、本発明の有機電界発光素子の材料として好適に用いることができるものである。
【0178】
上述した有機化合物の他、本発明の有機電界発光素子のバッファ層を形成する有機化合物としてポリアミン類又はトリアジン環含有化合物を用いることで高い電子注入性が得られる。
ポリアミン類としては、塗布により層を形成することができるものが好ましく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、ジエチレントリアミンのようなポリアルキレンポリアミンが好適に用いられ、高分子化合物では、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が好適に用いられる。特にポリエチレンイミンが好ましい。
なお、ここで低分子化合物とは、高分子化合物(重合体)ではない化合物を意味し、分子量の低い化合物を必ずしも意味するものではない。
【0179】
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体のポリアルキレンイミン構造は、炭素数2〜4のアルキレンイミンにより形成された構造であることが好ましい。より好ましくは、炭素数2又は3のアルキレンイミンにより形成された構造である。
【0180】
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、主鎖骨格にポリアルキレンイミン構造を有するものであればよく、主鎖骨格にポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する共重合体であってもよい。
【0181】
上記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体がポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する場合、ポリアルキレンイミン構造以外の構造の原料となる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、アクリル酸、スチレン、又は、ビニルカルバゾール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの単量体の炭素原子に結合した水素原子が他の有機基に置換された構造のものも好適に用いることができる。水素原子と置換する他の有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基等が挙げられる。
【0182】
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、重合体の主鎖骨格を形成する単量体成分100質量%のうち、ポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、66質量%以上であり、更に好ましくは、80質量%以上である。最も好ましくは、ポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が100質量%であること、すなわち、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体がポリアルキレンイミンのホモポリマーであることである。
【0183】
上記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体は、重量平均分子量が100000以下であることが好ましい。このような重量平均分子量のものを用い、重合体が分解する温度での加熱処理を行って層を形成することで、有機電界発光素子をより駆動安定性に優れたものとすることができる。より好ましくは、10000以下であり、更に好ましくは、100〜1000である。
重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:Waters Alliance(2695)(商品名、Waters社製)
分子量カラム:TSKguard column α、TSKgel α−3000、TSKgel α−4000、TSKgel α−5000(いずれも東ソー社製)を直列に接続して使用
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶液
検量線用標準物質:ポリエチレングリコール(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるように溶離液に溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
【0184】
上記トリアジン環含有化合物としては、メラミンやベンゾグアナミン/アセトグアナミン等のグアナミン類の他、メチロール化されたメラミンやグアナミン類、メラミン/グアナミン樹脂等のメラミン/グアナミン骨格を有する化合物の1種又は2種以上を用いることができるが、これらの中でも、メラミンが好ましい。
【0185】
本発明の有機電界発光素子のバッファ層を形成する有機化合物としてはまた、下記式(33)〜(41)で表される構造の繰り返し単位を有する重合体や、式(42)のトリエチルアミン、式(43)のエチレンジアミンも好適に用いることができる。
【0186】
【化36-1】
【化36-2】
【0187】
上記バッファ層は、還元剤を含むものであってもよい。還元剤はn−ドーパントとして働くため、バッファ層が還元剤を含むことで陰極から発光層への電子の供給が充分に行われるため、発光の効率が向上する。
上記バッファ層が含む還元剤は、電子供与性の化合物であれば特に制限されないが、1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1,3−ジメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、1,3,5−トリメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール化合物;ロイコクリスタルバイオレット(=トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン)、ロイコマラカイトグリーン(=ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン)、トリフェニルメタン等のトリフェニルメタン化合物;2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)等のジヒドロピリジン化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物や、ジヒドロピリジン化合物が好ましい。より好ましくは、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、または2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)である。
【0188】
上記バッファ層が含む還元剤の量は、バッファ層を形成する有機化合物100質量%に対して、0.1〜15質量%であることが好ましい。還元剤をこのような割合で含むと、有機電界発光素子の発光効率を充分に高いものとすることができる。より好ましくは、バッファ層を形成する有機化合物100質量%に対して、0.5〜10質量%であり、更に好ましくは、0.5〜5質量%である。
【0189】
本発明の電界発光素子は、陽極と陰極との間に電圧(通常は15ボルト以下)を印加することによって発光させることができる。通常は直流電圧を印加するが、交流成分が含まれていても良い。
本発明の有機電界発光素子は、厳密な封止が施された従来の有機電界発光素子に比べて簡易な封止でありながら、良好な連続駆動寿命、及び、保存安定性を有するものである。また、有機化合物層の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。このため、表示装置や照明装置の材料として好適に用いることができるものである。
このような、本発明の有機電界発光素子を用いて形成される表示装置もまた、本発明の1つである。更に本発明の有機電界発光素子を用いて形成される照明装置もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0190】
本発明の有機電界発光素子は、上述の構成よりなり、従来の有機電界発光素子のような厳密な封止を必要とせずに良好な連続駆動寿命、及び、保存安定性を有するものである。また、発光層の材料や素子の層構成を上述した好ましい構成とすることで、更に発光特性等に優れたものとすることができることから、表示装置や照明装置の材料等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
図1】本発明の封止構造を含む有機電界発光素子の構造の一例を示した概略図である。
図2】合成例5で製造したホウ素含有重合体CのH−NMRの測定結果を示した図である。
図3】実施例1で作製した有機電界発光素子1の6V下での1日後、12日後、80日後、336日後のEL発光写真(差し込み図は5VのEL発光写真)を示した図である。
図4】実施例2で作製した有機電界発光素子3の4V下での1日後、14日後、93日後のEL発光写真(差し込み図は3Vもしくは3.3VのEL発光写真)を示した図である。
図5】比較例1で作製した有機電界発光素子4の4V下での1日後、14日後、93日後のEL発光写真(差し込み図は3VのEL発光写真)を示した図である。
図6】実施例3で作製した有機電界発光素子4の6V下での2日後、12日後、80日後のEL発光写真を示した図である。
図7】実施例4で作製した有機電界発光素子5の6V下での1日後、12日後、80日後、336日後、384日後のEL発光写真を示した図である。
図8】実施例6で作製した有機電界発光素子7の6V下での1日後、17日後のEL発光写真を示した図である。
図9】比較例2で作製した有機電界発光素子8の6V下での7日後のEL発光写真を示した図である。
図10】実施例4で作製した有機電界発光素子5の、封止直後A(初期)、封止直後B(初期)、398日後の電圧−輝度特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0192】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0193】
合成例1(ホウ素含有化合物Aの合成)
100mL二口ナスフラスコに、2−(ジベンゾボロリルフェニル)−5−ブロモピリジン(2.6g、6.5mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラニル)−9,9’−スピロフルオレン(1.5g、2.7mmol)、Pd(PBu(170mg、0.32mmol)を入れた。フラスコ内を窒素雰囲気下にし、THF(65mL)を加え、攪拌した。
これに、2M リン酸三カリウム水溶液(11mL、22mmol)を加え、70℃で還流させながら加熱攪拌した。12時間後、室温まで冷却し、反応溶液を分液ロートに移して水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を3N塩酸、水、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過した濾液を濃縮して、得られた固体をメタノールで洗浄し、2,7−ビス(3−ジベンゾボロリル−4−ピリジルフェニル)−9,9’−スピロフルオレン(ホウ素含有化合物A)を収率47%で得た(1.2g、1.3mmol)。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl):δ6.67(d,J=7.6Hz,2H),6.75(d,J=1.2Hz,2H),6.82(d,J=7.2Hz,4H),6.97(dt,J=7.2,1.2Hz,4H),7.09(dt,J=7.2,0.8Hz,2H),7.24−7.40(m,14H),7.74−7.77(m,6H),7.84−7.95(m,10H)
また、合成例1の反応は、下記反応式(44)のように表される。
【0194】
【化37】
【0195】
合成例2(ホウ素化合物1の合成)
アルゴン雰囲気下、5−ブロモ−2−(4−ブロモフェニル)ピリジン(94mg、0.30mmol)を含むジクロロメタン溶液(0.3ml)に、エチルジイソプロピルアミン(39mg、0.30mmol)を加えた後、0℃で三臭化ホウ素(1.0Mジクロロメタン溶液、0.9ml、0.9mmol)を加え、室温で9時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、飽和炭酸カリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、ヘキサンで洗浄することにより、ホウ素化合物1(40mg、0.082mmol)を収率28%で得た。この反応は、下記式(45)の反応である。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl):7.57−7.59(m,2H),7.80(dd,J=8.4,0.6Hz,1H),7.99(s,1H),8.27(dd,J=8.4,2.1Hz,1H),9.01(d,J=1.5Hz,1H).
【0196】
【化38】
【0197】
合成例3(ホウ素化合物2の合成)
50mL2口フラスコにマグネシウム(561mg,23.1mmol)を入れ反応容器内を窒素雰囲気下にした後、シクロペンチルメチルエーテル(10mL)を入れ、ヨウ素をひとかけら投入し、着色がなくなるまで攪拌した。これに2,2‘−ジブロモビフェニル(3.0g,9.6mmol)のシクロペンチルメチルエーテル溶液(9mL)を滴下し、室温で12時間、50℃で1時間攪拌しGrignard試薬を調製した。
別の200mL3つ口フラスコにホウ素化合物1(3.71g,7.7mmol)を入れ窒素雰囲気下にした後、トルエン(77mL)を入れた。これを−78℃にて攪拌しながら上記Grignard試薬をキャヌラーで一度に加えた。10分攪拌後、室温まで昇温しさらに12時間攪拌した。この反応溶液に水をくわえ、トルエンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。ろ液を濃縮し残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することによりホウ素化合物2を3.0g(収率82%)得た。この反応は、下記式(46)の反応である。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl):6.85(d,J=7.04Hz,2H),7.05(t,J=7.19Hz,2H),7.32(t,J=7.48Hz,2H), 7.47(s、1H)7.49−7.57(m、1H),7.74−7.84 (m,3H),7.90−8.00(m,2H),8.07−8.20(m,1H).
【0198】
【化39】
【0199】
合成例4(ホウ素含有化合物Bの合成)
100mL2口フラスコにホウ素化合物2(2.0g,4.2mmol)、Pd(PPh(240mg,0.21mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした。これにトルエン(21mL)、トリブチル(2−ピリジル)スズ(3.7g,10.1mmol)を入れ、120℃で終夜攪拌した。反応終了後、濃縮し、残差をカラムクロマトグラフィーで精製することにより本発明のホウ素含有化合物Bを800mg得た(収率40%)。この反応は、下記式(47)の反応である。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl):6.93(m,J=7.04Hz,2H),7.03(t,J=7.19Hz,2H),7.13−7.20(m,1H),7.21−7.26(m,1H),7.30(t,J=7.48Hz,2H),7.51(d,J=7.92Hz,1H),7.60−7.74(m,3H),7.82(m,J=7.63Hz,2H),7.87(s,1H),8.12(d,J=8.22Hz,1H),8.18(d,J=7.92Hz,1H),8.22(d,J=8.51Hz,1H),8.39(s,1H),8.59−8.69(m,2H),8.76(dd,J=8.51,1.17Hz,1H).
【0200】
【化40】
【0201】
合成例5(ホウ素含有化合物C(ホウ素含有重合体)の合成)
シュレンクフラスコにホウ素化合物2(474mg,1.00mmol)、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ボロン酸−ビス(プロパンジオール)エステル(568mg,1.02mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした後、THF(6mL)を入れ溶解させた。これに35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム(1.68mL,3.99mmol)、水(2.2mL)、Aliquat(登録商標)(40mg,0.10mmol)のトルエン溶液(6mL)を加えた。90℃に加熱し、Pd(PPh(23mg,0.020mmol)を入れ、90℃で12時間攪拌した。ブロモベンゼン(204mg,1.30mmol)を加えて5時間攪拌後、フェニルボロン酸(572mg,4.69mmol)を加えて終夜攪拌した。室温まで冷却後、反応溶液をトルエンで希釈して有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過して濃縮後残渣をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルショートカラムに通した。この溶液を濃縮し、メタノールに投入して得られる黄色沈澱物ろ取し、ホウ素含有化合物C(ホウ素含有重合体)を386mg得た。この反応は、下記式(48)の反応である。ホウ素含有化合物CのH−NMR測定結果を図2に示す。
得られたホウ素含有重合体は、Mn=14,304、Mw=36,646、PDI=2.56であった。
【0202】
【化41】
【0203】
(実施例1)
[1]市販されている平均厚さ0.7mmのITO電極層付き透明ガラス基板を用意した。この時、基板のITO電極(陰極)は幅2mmにパターニングされているものを用いた。この基板をアセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄後、イソプロパノール中で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[2]この基板を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに固定した。約1×10−4Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタし、膜厚約2nmの酸化亜鉛層を作成した。この時にメタルマスクを併用して、電極取り出しのためITO電極の一部は酸化亜鉛が製膜されないようにした。
[3]バッファ層としてホウ素含有化合物Aの1重量%、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)の0.01重量%1,2−ジクロロエタン混合溶液を作製した。工程[2]で作製した酸化亜鉛薄膜付き基板をスピンコーターにセットした。この基板上にホウ素含有化合物A、N−DMBI混合溶液を滴下し、毎分2000回転で30秒間回転させ、ホウ素含有有機化合物を含むバッファ層を形成した。さらに、これを窒素雰囲気下100℃にセットしたホットプレートで1時間アニール処理を施した。バッファ層の平均厚さは30nmであった。
[4]ホウ素含有化合物の層まで形成した基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ピリジン]ベリリウム(Bepp)、トリス[3−メチル−2−フェニルピリジン]イリジウム(III)(Ir(mpy))、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)をそれぞれアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10−5Paまで減圧し、Beppをホスト、(Ir(mpy))をドーパントとして35nm共蒸着し、発光層を製膜した。この時、ドープ濃度は(Ir(mpy))が発光層全体に対して6%となるようにした。次に、α−NPDを60nm蒸着し、正孔輸送層を製膜した。次に、一度窒素パージした後、三酸化モリブデン、金をアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10−5Paまで減圧し、三酸化モリブデン(第2の金属酸化物層)を膜厚10nmになるように蒸着した。次に、金(陽極)を膜厚50nmになるように蒸着し、有機電界発光素子3を作製した。第2の電極を蒸着する時、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅2mmの帯状になるようにした。すなわち、作製した有機電界発光素子の発光面積は、4mmとした。
[5][4]までで作製した素子の周囲(素子形成エリアよりも大きく基板よりも小さな部位)にUV硬化樹脂を塗布し、その上に同サイズのガラス枠を設置、さらにその上にUV硬化樹脂を塗布し、最後に尾池工業社製封止フィルム(水分透過率3×10−4g/m・day)を貼り付け、UVにより硬化させた。これにより有機電界発光素子1を作製した。
【0204】
(実施例2)
工程[3]を下記工程[3−2]とした以外は実施例1と同様にして、有機電界発光素子2を作製した。なお、バッファ層の平均厚さは、6nmであった。
[3−2]次にバッファ層として日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.5重量%に希釈したものを2000rpm30秒の条件でスピンコートする。ここで用いたエポミンは分子量70000のP1000である。
【0205】
(比較例1)
実施例2の工程[5]において、尾池工業社製封止フィルム(水分透過率3×10−4g/m・day)に代えて、ガラスを封止基材として用いた以外は実施例2と同様にして、有機電界発光素子3を作製した。
【0206】
(実施例3)
実施例1の工程[3]において、バッファ層の平均厚さを60nmとした以外は実施例1と同様にして有機電界発光素子4を作製した。
【0207】
(実施例4)
実施例1の工程[3]において、バッファ層の平均厚さを10nmとした以外は実施例1と同様にして有機電界発光素子5を作製した。
【0208】
(実施例5)
工程[3]を下記工程[3−3]とした以外は実施例1と同様にして、有機電界発光素子6を作製した。なお、バッファ層の平均厚さは、10nmであった。
[3−3]次にバッファ層としてホウ素含有化合物Aを、還元剤を入れること無しに、1,2−ジクロロエタンにより0.25重量%に希釈したものを2000rpm30秒の条件でスピンコートする。
【0209】
(実施例6)
実施例5内の工程[5]において、尾池工業社製封止フィルム(水分透過率3×10−4g/m・day)に代えて、尾池工業社製フィルム(水分透過率3×10−3g/m・day)を封止基材として用いた以外は実施例5と同様にして、有機電界発光素子7を作製した。
【0210】
(比較例2)
工程[3]を下記工程[3−4]とし、工程[5]において、尾池工業社製封止フィルム(水分透過率3×10−4g/m・day)に代えて、尾池工業社製フィルム(水分透過率5×10−2g/m・day)を封止基材として用いた以外は実施例1と同様にして、有機電界発光素子8を作製した。なお、バッファ層の平均厚さは、30nmであった。
[3−4]次にバッファ層としてホウ素含有化合物Bを、還元剤を入れること無しに、テトラヒドロフランにより1重量%に希釈したものを2000rpm30秒の条件でスピンコートする。
【0211】
(実施例7)
比較例2内の工程[5]において、尾池工業社製封止フィルム(水分透過率5×10−2g/m・day)に代えて、尾池工業社製フィルム(水分透過率3×10−4g/m・day)を封止基材として用いた以外は比較例2と同様にして、有機電界発光素子9を作製した。
【0212】
(実施例8)
比較例2内の工程[5]において、尾池工業社製封止フィルム(水分透過率5×10−2g/m・day)に代えて、尾池工業社製フィルム(水分透過率3×10−3g/m・day)を封止基材として用いた以外は比較例2と同様にして、有機電界発光素子10を作製した。
【0213】
(比較例3)
実施例5の工程[3−3]において、バッファ層の平均厚さを30nmとし、工程[5]において、尾池工業社製封止フィルム(水分透過率3×10−4g/m・day)に代えて、尾池工業社製フィルム(水分透過率2×10−1g/m・day)を封止基材として用いた以外は実施例5と同様にして、有機電界発光素子11を作製した。
【0214】
(実施例9)
実施例1の工程[3]を下記工程[3−5]とした以外は実施例1と同様にして、有機電界発光素子12を作製した。なお、バッファ層の平均厚さは、30nmであった。
[3−5]次にバッファ層としてホウ素含有化合物Cを、還元剤を入れること無しに、1,2−ジクロロエタンにより1重量%に希釈したものを2000rpm30秒の条件でスピンコートする。
【0215】
(実施例10)
実施例1の工程[1]を下記工程[1−2]とした以外は実施例1と同様にして、有機電界発光素子13を作製した。
[1−2]市販されているITO電極層付きポリエチレンナフタレートフィルム基板(水蒸気透過率10−4g/m・dayになるようなバリア加工が施されている)を用意した。この時、基板のITO電極(陰極)は幅2mmにパターニングされているものを用いた。この基板を保護フィルムをはがし、イソプロパノール中で10分間超音波洗浄後、この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
【0216】
(有機電界発光素子の発光観察)
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加を行った。素子は、それぞれ示された期間、大気下に放置した後、EL発光の様子を撮影した。有機電界発光素子1、3〜5、7、8の結果をそれぞれ図3〜9に示す。
【0217】
(有機電界発光素子の発光特性測定)
実施例4で作製した有機電界発光素子5について、封止直後(初期)の異なる発光エリア2カ所A、B、及び、398日後の発光について、ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。またコニカミノルタ社製の「LS−100」により、発光輝度を測定した。
有機電界発光素子を、アルゴン雰囲気下直流電圧を印加した時の電圧−輝度特性を図10に示す。
【0218】
実施例1、3、4から、バッファ層として還元剤をドープしたホウ素化合物Aを用いた場合、水分透過率3×10−4g/m・dayの封止膜では、12日後まで大きなダークスポットは見受けられず、特に、バッファ層の平均厚みが30nm、10nmの実施例1、4では、それぞれ336日後、384日後まで大きなダークスポットは見受けられない。また、実施例4では、初期と398日後の電圧−輝度特性が同等であることも確認された。
更に、バッファ層として還元剤なしのホウ素化合物Aを用い、水分透過率3×10−3g/m・dayの封止膜で封止した実施例6でも、初期に汚れからくるダークスポットはあるものの、17日後でも成長する様子はない。なお、実施例6と同じ還元剤なしのホウ素化合物Aを用い、実施例6よりも水分透過率の低い、実施例1と同じ封止膜で封止した実施例5でも、良好な結果が得られることが確認されている。
これに対し、水分透過率5×10−2g/m・dayの封止膜で封止した比較例2では、7日後に非発光部ではないが暗部が観測されており、明らかに輝度の低下と発光ムラが観測されている。また、比較例2よりも更に水分透過率の大きき封止膜を用いた比較例3では、同様の7日後でさらに顕著な暗部が確認されている。
比較例2で示した素子構成において、水蒸気透過率を向上させた封止フィルムを用いた場合(実施例7および実施例8)においては良好な結果を得ており、実施例4同様の長期の保存安定性(ダークスポットが確認されないこと、その撮影時の電圧が変わっていないことから電圧−輝度特性に大きな変化がないと推測されること)を確認している。
同様に、実施例9において、バッファ材料をホウ素化合物Cのようなポリマーにした場合においても、長期の保存安定性が確認されている。
またさらに、実施例10に示すように、基板をガラスからバリア性能を有したフィルム基板に変更しても、その長期保存安定性は維持されることが確認されている。
以上より、100cd/m程度の実用範囲の高輝度においては、水分透過率10−3g/m・day程度の封止性能で遜色ないことが明らかとなった。
さらに、バッファ層としてポリエチレンイミンを用いた場合の比較を実施例2および比較例1で行った。ガラス封止の結果と何ら遜色ない発光が100日程度まで観測されていることがわかる。本比較により、本素子形態を有すれば、水分透過率10−3g/m・day程度の封止性能でガラス封止のものと同程度の素子特性を長期間観測できることを示すことができた。
【符号の説明】
【0219】
1:基板
2:陰極
3:第1の金属酸化物層
4:バッファ層
5:有機化合物層
6:第2の金属酸化物層
7:陽極
8:UV硬化樹脂
9:ガラス枠
10:封止基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10