【解決手段】基板と、n型不純物を含むn側窒化物半導体層と、p型不純物を含むp側窒化物半導体層とを下方から上方に向かって順に有する半導体ウエハを準備する工程と、基板にレーザ光を照射することにより、基板に加工変質部を形成する工程と、基板に加工変質部が形成された半導体ウエハを分割することにより、複数の発光素子を得る工程とを有する発光素子の製造方法において、半導体ウエハを準備する工程と基板に加工変質部を形成する工程との間に、p側窒化物半導体層の上面における複数の発光素子となる領域の境界を含む領域に保護層を形成する工程と、半導体ウエハをアニールすることにより、保護層が形成されていない領域においてp側窒化物半導体層を低抵抗化する工程と、を順に有することを特徴とする発光素子の製造方法。
前記p側窒化物半導体層の上面のうち前記外周部よりも内側の領域であって、前記外周部の近傍を含む領域に電流拡散層が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発光素子。
前記加工変質部は、第1ピッチで形成されている第1加工変質部と、前記第1ピッチよりも広い第2ピッチで形成されている第2加工変質部とを有し、前記第1加工変質部よりも上方に前記第2加工変質部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発光素子。
前記第1加工変質部が前記基板の厚みの半分より下の領域に形成され、前記第2加工変質部が前記基板の厚みの半分より上の領域に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態及び実施例について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す実施形態及び実施例は、本発明の技術思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明を特定するものではない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0009】
[実施形態1]
本実施形態に係る発光素子100の製造方法において、まず、
図1A及び
図1Bに示すように、基板11と、n型不純物を含むn側窒化物半導体層12nと、p型不純物を含むp側窒化物半導体層12pとを下方から上方に向かって順に有する半導体ウエハ1を準備する(以下、基板11上に設けられた「n側窒化物半導体層12n」と「p側窒化物半導体層12p」とを含む領域を「半導体部12」という。)。次に、
図3A及び
図3Bに示すように、p側窒化物半導体層12pの上面における複数の発光素子100となる領域の境界を含む領域に保護層14を形成する(以下、複数の発光素子100となる領域の境界を「分割予定線13」ともいう。)。なお、符号14として示すp側窒化物半導体層12pを高抵抗のまま維持するための保護層を「第1保護層14」といい、後述する符号18として示す発光素子100の上面を保護するための保護層を「第2保護層18」ということがある。また、
図3Aでは、図面での説明を簡便にするために、半導体ウエハ1のうち、後に4つの発光素子100となる領域について説明している。この点については、
図2A〜
図5A、
図7Aにおける模式平面図でも同様である。次に、
図4A及び
図4Bに示すように、半導体ウエハ1をアニール(熱処理)することにより、第1保護層14が形成されていない領域においてp側窒化物半導体層12pを低抵抗化する。p側窒化物半導体層12pのうち第1保護層14が設けられていない領域ではアニールによりp型不純物を不活性化している水素がp型不純物から離脱するのに対して、p側窒化物半導体層12pのうち第1保護層14が設けられている領域ではp型不純物を不活性化している水素がp型不純物から離脱しにくいため、第1保護層14が形成されていない領域においてp側窒化物半導体層12pを低抵抗化することができる一方、第1保護層14が形成されている領域ではp側窒化物半導体層12pが高抵抗のまま保持されるものと推測される。その後、
図5A及び
図5Bに示すように、基板11にレーザ光Lを照射することにより、前記基板11に加工変質部を形成する。そして、基板11に加工変質部が形成された半導体ウエハ1を分割することにより、
図6A及び
図6Bに示すような発光素子100を複数得る。
【0010】
これにより、
図6A及び
図6Bに示すように、得られる発光素子100の側面部分には、p側窒化物半導体層12pの一部に相当する高抵抗部12xが配置されることになるので、仮に半導体ウエハ1を分割する際に生じる屑が発光素子100の側面に付着したとしても、本来、低抵抗化されたp側窒化物半導体層12p及びその直下に位置するn側窒化物半導体層12nの全域においてある程度均等に流れるべき電流が屑を介して偏って流れることを軽減することができる。なお、以下では、半導体部12のうちある領域においてある程度均等に流れるべき電流が、ダメージを受けた領域など特定の領域に偏って流れることを「リーク電流が生じる」、「電流がリークする」などという。
【0011】
レーザ光Lのエネルギーはレーザ光Lの光軸に近付くほど大きいので、典型的には、分割予定線13と重なる領域にレーザ光Lによるダメージが生じやすい。しかし、本実施形態では、分割予定線13と重なる領域に高抵抗部12xが配置されているので、仮にその領域にダメージが生じたとしても、そのダメージに起因してリーク電流が生じる可能性は低い。
【0012】
さらに、発明者らは、鋭意検討した結果、
図7A及び
図7Bに示す従来技術のように半導体部12のうち分割予定線13と重なる領域をエッチングにより除去する場合、エッチングにより形成された半導体部12の凹部20における側面と半導体部12の上面で規定される角部及びその近傍(以下「角部等21」という。)にレーザ光Lが集中しダメージが生じやすいという知見を得た。角部等21にレーザ光Lのエネルギーが集中する詳細な理由は不明だが、半導体部12に凹部20を形成すると、レーザ光Lが反射や屈折することによりレーザ光Lが角部等21に集まりやすいためであると考えられる。つまり、従来技術のように半導体部12に凹部20を形成する場合、半導体部12を除去する領域を十分に大きくしないと、半導体部12の角部等21にダメージが生じ、電流がリークするおそれがある。しかし、本実施形態では、半導体部12に凹部20を形成しない。つまり、本実施形態では、半導体部12の上面は実質的に平坦であり半導体部12に角部等21は存在しないので、角部等21においてダメージが生じ、そのダメージに起因して電流がリークするおそれもない。
【0013】
また、従来技術においても、半導体部12を除去する領域を十分大きくすれば、角部等21にダメージが生じることはないが、それでは一枚の半導体ウエハにおける発光領域が減ってしまう。しかし、本実施形態では角部等21が存在しないので、一枚の半導体ウエハ1における発光領域をより大きくとることができる。したがって、本実施形態では、従来技術と1つの発光素子の大きさを揃える場合は、1つの発光素子100における発光領域を大きくとることができるので発光出力を高めることができるとともに順方向電圧(以下「Vf」ともいう。)を低減することができる。また、従来技術と1つの発光素子における発光領域の大きさを揃える場合は、本実施形態では、発光に寄与しない領域を低減することができるので、一枚の半導体ウエハ1から取れる発光素子100の数を増やすことができる。
【0015】
(半導体ウエハの準備工程)
まず、
図1A及び
図1Bに示すように、基板11と、n型不純物を含むn側窒化物半導体層12nと、p型不純物を含むp側窒化物半導体層12pとを、下方から上方に向かって順に有する半導体ウエハ1を準備する。ここでは、n側窒化物半導体層12nとp側窒化物半導体層12pとの間に、活性層12aを有する場合について説明する。以下、n側窒化物半導体層12n、活性層12a及びp側窒化物半導体層12pをまとめて、半導体部12ということがある。半導体部12を構成する各層には、例えば、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物半導体を用いることができる。
n型不純物としては、例えば、Siを用いることができ、p型不純物としては、例えば、Mgを用いることができる。基板11としては、サファイアなどの絶縁性基板や、GaN、SiC、ZnS、ZnO、GaAs、Siなどの導電性基板を用いることができる。基板11の上面には、低温成長バッファ層などが下地層として形成されていてもよい。
【0016】
本明細書において、p側窒化物半導体層12pとn側窒化物半導体層12nとの界面又は活性層12aを基準として、半導体部12のうちp電極が設けられる側をp側窒化物半導体層12pといい、半導体部12のうちn電極が設けられる側をn側窒化物半導体層12nという。
【0017】
本実施形態では、
図2A及び
図2Bに示すように、
図1A及び
図1Bに示す状態から、p側窒化物半導体層12pの側から半導体部12の一部をエッチングしてn側窒化物半導体層12nを露出させることにより、後の工程においてnパッド電極16を設けるための領域を形成している。この際、p側窒化物半導体層12pのうち、半導体ウエハ1の分割予定線13と重なる領域はエッチングされない。
p側窒化物半導体層12pの側から半導体部12の一部をエッチングしてn側窒化物半導体層12nを露出させた場合、発光素子100の上面において電位差が発生する。このため、半導体部12をエッチングしてから、後述する電流拡散層15を形成した場合、電流拡散層15の材料(例えば、Ag等)によっては電位差によりマイグレーションを起こす可能性がある。したがって、このような材料を電流拡散層15として使う場合には、電流拡散層15を形成した後に、半導体部12をエッチングすることが好ましい。これにより、例えば電流拡散層15をカバー層で覆った後に半導体部12を除去できるので、電位差による電流拡散層15のマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0018】
(保護層の形成工程)
次に、
図3A及び
図3Bに示すように、p側窒化物半導体層12pの上面であって、半導体ウエハ1の分割予定線13と重なる領域に、第1保護層14を形成する。半導体ウエハ1の分割予定線13は、後の工程において半導体ウエハ1を分割したときに、発光素子100が任意の形状となるように延伸させていればよく、典型的には、
図3Aなどに示すように、上面視において格子状に設けることができる。半導体ウエハ1の分割予定線13を格子状とすることで、上面視形状が矩形の発光素子100を得ることができる。発光素子100の他の形状としては、上面視において六角形等とすることもできる。第1保護層14は、半導体ウエハ1の分割予定線13と重なる領域に形成されていればどのような形状でもよいが、半導体ウエハ1の分割予定線13が格子状である場合、第1保護層14も、これら格子状の分割予定線13と重なるように格子状に形成することができる。これにより、矩形の発光素子100の、すべての側面において、リーク電流が流れるのを抑制することができる。
【0019】
第1保護層14としては、SiO
2、SiN、SiON、Al
2O
3、ZnO、ZrO
2、TiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5等を用いることができ、典型的にはSiO
2を用いることができる。第1保護層14は、CVDやスパッタ装置等で第1保護層14となる材料を半導体ウエハ1上に成膜することにより形成することができる。
【0020】
第1保護層14の厚みは、0.01μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。これにより、第1保護層14が形成された領域においてp側窒化物半導体層12pが低抵抗になるのをより確実に抑制することができる。第1保護層14の厚みは、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。これにより、第1保護層14にクラックが生じるのを抑制することができる。
【0021】
上面視において、第1保護層14の短手方向における幅(分割予定線13と垂直をなす方向における幅)は、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。これにより、半導体ウエハ1を、第1保護層14の直下でより確実に複数の発光素子100に分割することができる。上面視において、第1保護層14の短手方向における幅(分割予定線13と垂直をなす方向における幅)は、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。これにより、p側窒化物半導体層12pのうち、低抵抗となる領域を大きく取ることができる。
【0022】
第1保護層14を形成した後、p側窒化物半導体層12pの上面のうち第1保護層14が形成されていない領域であって、第1保護層14が形成されている領域の近傍を含む領域に電流拡散層15を形成することができる。ここでは、第1保護層14を形成した後、p側窒化物半導体層12pの上面であって、第1保護層14が形成されていない領域の略全面に、電流拡散層15を設けている。ここで、第1保護層14が形成されている領域の近傍とは、第1保護層14から20μm以内の領域をいう。これにより、発光素子100の面内における電流密度分布をより均一にすることができるため、発光素子100の発光効率を向上させることができる。なお、電流拡散層15を設けるタイミングは、例えば、第1保護層14を形成する前に設けてもよいし、後述するp側窒化物半導体層12pの低抵抗化工程の後に設けてもよい。
【0023】
電流拡散層15をp側窒化物半導体層12pの低抵抗化工程の後に設けることで、特定の材料がp側窒化物半導体層12pの低抵抗化を抑制するものであるとしても、それを電流拡散層15として用いることができる。
【0024】
電極拡散層として、ITO、ZnO、In
2O
3等の導電性金属酸化物等を用いることができる。電流拡散層15を反射層としても用いる場合には、Ag等を用いることができる。電流拡散層15は、例えばスパッタ装置等で電流拡散層15となる材料をp側窒化物半導体層12pの上面に成膜することにより設けることができる。
【0025】
上面視において、電流拡散層15と第1保護層14との間の距離は、0μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。両者の間に一定以上の距離をあけることにより、発光の弱い発光素子100の外周部において電流拡散層15による光の吸収を低減できるので、光取出し効率を向上させることができる。上面視において、電流拡散層15と第1保護層14との間の距離は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。これにより、発光素子100における電流拡散層15の面積を大きくすることができるので、Vfを低減させることができる。
【0026】
(p側窒化物半導体層の低抵抗化工程)
次に、半導体ウエハ1をアニールすることで、第1保護層14が形成されていない領域において、p側窒化物半導体層12pを低抵抗化する。これにより、第1保護層14が形成されている領域におけるp側窒化物半導体層12pは高抵抗のまま維持され、高抵抗部12xを構成することとなる。このため、半導体ウエハ1を分割予定線13に沿って分割した際に、半導体ウエハ1の端面から飛散した屑が発光素子100の側面に付着したとしても、p側窒化物半導体層12pとn側窒化物半導体層12nとの間を屑を介して電流が流れることを抑制できる。
図4A及び
図4Bでは、理解を容易にするためにp側窒化物半導体層12pのうち、高抵抗のまま維持されている高抵抗部12xに対応する領域を斜線で示しており、
図5A〜
図6Bでも同様である。
【0027】
アニールは、実質的に水素を含まない雰囲気で行うことが好ましい。典型的には、窒素雰囲気中でアニールすることが好ましい。半導体ウエハ1をアニールする温度としては、350℃〜600℃が好ましい。半導体ウエハ1をアニールする時間としては、10分〜60分が好ましい。これにより、p側窒化物半導体層を効率よく低抵抗化することができる。
【0028】
次に、
図5A及び
図5Bに示すように、半導体部12にnパッド電極16及びpパッド電極17を形成する。ここでは、nパッド電極16及びpパッド電極17の上面の一部を除き、半導体ウエハ1の上面の略全面を第2保護層18で覆っている。第2保護層18は、第1保護層14を覆うように形成することもできるし、第1保護層14を除去してから形成することもできる。第2保護層18は、SiO
2、SiN、SiON、Al
2O
3、ZnO、ZrO
2、TiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5等を用いることができ、典型的にはSiO
2を用いることができる。第2保護層18は、CVDやスパッタ装置等で第2保護層18となる材料を半導体ウエハ1上に成膜することにより形成することができる。
【0029】
(レーザ光の照射工程)
次に、
図5A及び
図5Bに示すように、基板11のうち分割予定線13に対応する領域に、レーザ光Lを照射する。このとき、基板11の内側に焦点が合うように、レーザ光Lを集光して照射する。これにより、半導体ウエハ1を分割する際の起点となる加工変質部を基板11内に生じさせることができるため、後の工程において、半導体ウエハ1を分割しやすくすることができる。半導体部12に生じるダメージを可能な限り少なくするために、半導体ウエハ1の基板11側、すなわち半導体ウエハ1の下面側からレーザ光Lを照射することが好ましい。
【0030】
レーザ光Lを発するレーザ加工機としては、加工変質部が形成可能なものであればよい。具体的には、ファイバーレーザ、CO
2レーザ、YAGレーザ等を用いることができる。レーザ光Lは、波長を200nm〜5000nmとすることができ、360nm〜2000nmとすることが好ましい。レーザ光Lのパルス幅は、10fsec〜10μsecとすることができ、100fsec〜1nsecとすることが好ましい。レーザ光Lの出力は、0.01W〜10Wとすることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、従来のように、上面視において分割予定線13と重なる領域に半導体部12に凹部20を形成しないので角部等21も存在しない。このため、従来のように半導体部12に凹部20を形成する際における凹部20の分割予定線13に垂直をなす方向における幅と、本実施形態のように半導体部12に凹部20を形成せずに第1保護層14を形成する際における第1保護層14の分割予定線13に垂直をなす方向における幅とが同じ場合に、前者(従来)及び後者(本実施形態)においてレーザ光Lを照射する領域を半導体部12に同じように近づけると、後者(本実施形態)の方が前者(従来)よりもダメージを受けにくい。したがって、後者(本実施形態)の場合はレーザ光Lの照射位置を半導体部12により近づけることができる。
【0032】
一方、半導体ウエハ1を分割する際、基板11の結晶方位等によっては、半導体ウエハ1は、半導体ウエハ1の互いに平行な上面及び下面に垂直をなさずに、レーザ光Lにより形成される加工変質部から一定の角度をもって斜めに分割されることがある。この場合、分割予定線13からのずれの程度によっては、得られる発光素子100が不良品となってしまう。
【0033】
しかし、前述のように、本実施形態であれは従来に比較して、基板11におけるレーザ光Lを照射する領域、すなわち加工変質部を形成する領域を半導体部12に近づけることができる。加工変質部を形成する領域は、例えば基板11の厚みの半分よりも上の領域とすることができる。これにより、分割予定線13からのずれを小さくすることができるので歩留まりの向上が期待できる。
【0034】
基板11に加工変質部を形成する位置(基板11の厚み方向における位置)は1つである必要はなく、複数の位置に加工変質部を形成することもできる。このようすれば、基板11が厚くても比較的容易に半導体ウエハ1を分割することができる。基板11に加工変質部を複数の位置に形成する場合は、例えば半導体部12に最も近い位置にある加工変質部が基板11の厚みの半分よりも上の領域にあれば、分割予定線13からのずれを小さくすることができる。
さらに、加工変質部を形成する領域を半導体部12に近づけることにより、発光素子100を発光させたときに、半導体部12から基板11側に向けて出射される光が加工変質部に比較的早く達するようにすることができる。これにより、より多くの光を、レーザ光Lにより表面が粗面となっている加工変質部で反射させることができるため、発光素子100の光取出し量を向上させることができる。
このとき、深さ方向において加工変質部を基板11の複数の位置に形成する場合は、第1加工変質部を形成するとともに、第1加工変質部よりも上方に、第2加工変質部を形成することができる。例えば、基板11に、第1パルスエネルギー且つ第1ピッチでレーザ光Lを照射することで第1加工変質部が形成され、基板11に、第1パルスエネルギーよりも小さい第2パルスエネルギー且つ第1ピッチよりも広い第2ピッチでレーザ光Lを照射することで第2加工変質部が形成される。これにより、加工変質部を半導体部12に近づけて形成することで光取出し量を向上しつつ、レーザ光Lによる半導体部12に対するダメージを抑制することができる。つまり、半導体ウエハ1を割断するために十分な大きさの加工変質部を形成するためには、比較的大きいパルスエネルギーと比較的小さいピッチでレーザ光Lを基板11に照射する必要があるが、半導体部12に比較的近い位置にこのような加工変質部を形成すると、半導体部12にダメージが生じてしまう虞がある。そこで、基板11に、第1パルスエネルギーよりも小さい第2パルスエネルギー且つ第1ピッチよりも広い第2ピッチでレーザ光Lを照射することで、第2加工変質部を、第1加工変質部を形成する際の第1パルスエネルギーと第1ピッチと同じパルスエネルギーとピッチで形成した場合と比較して、レーザ光Lによる半導体部12に対するダメージを抑制することができる。
第1加工変質部及び第2加工変質部を形成する場合、第1加工変質部を基板11の厚みの半分より下の領域に形成し、第2加工変質部を基板11の厚みの半分より上の領域に形成することができる。これにより、加工変質部を半導体部12に近づけて形成することで光取り出し量をさらに向上しつつ、レーザ光Lによる半導体部12に対するダメージをさらに抑制することができる。
【0035】
さらに、本実施形態であれば角部等21が存在しないので従来に比較して、強いパルスエネルギーのレーザ光Lを照射することができる。これにより、比較的厚い基板11を用いても半導体ウエハ1を分割しやすくすることができる。
【0036】
具体的には、基板11の厚みを50μm〜500μmとすることができる。レーザ光Lは、基板11の上面から10μm〜150μmの位置に照射することが好ましく、20μm〜100μmの位置に照射することがより好ましい。換言すると、加工変質部を基板11の上面から10μm〜150μmの位置に形成することが好ましく、20μm〜100μmの位置に形成することがより好ましい。これにより半導体部12のダメージを抑制しつつ、半導体ウエハ1を精度良く分割することができる。
【0037】
(半導体ウエハの分割工程)
その後、半導体ウエハ1を分割予定線13に沿って分割することにより、
図6A及び
図6Bに示すような発光素子100を複数得ることができる。半導体ウエハ1を分割する方法としては、例えば、基板11の下面にローラーやブレード等を押し当てて力を加えることで分割することができる。
【0038】
[実施形態2]
本実施形態に係る発光素子100では、
図6A及び
図6Bに示すように、基板11と、n型不純物を含むn側窒化物半導体層12nと、p型不純物を含むp側窒化物半導体層12pとを下方から上方に向かって順に有する半導体構造を備える。半導体構造では、p側窒化物半導体層12p側が光取出し面側であり、n側窒化物半導体層12n側が実装面側である。換言すると、発光素子100は、フェイスアップ実装型の発光素子である。そして上面視において、p側窒化物半導体層12pの外周部が、p側窒化物半導体層12pの外周部の内側よりも高抵抗である。
これにより、発光素子100の側面部分には、p側窒化物半導体層12pの一部に相当する高抵抗部12xが配置されることになるので、仮に発光素子100の側面にリーク源となる屑等が付着していた場合でも、リーク電流が生じるのを抑制することができる。また、仮に高抵抗部12xにダメージが生じていた場合でも、そのダメージに起因してリーク電流が生じるのを抑制することができる。
発光素子100では、p側窒化物半導体層12pの上面のうち、外周部に対応する領域に、第1保護層14を形成することができる。半導体ウエハ1がアニールされる際、第1保護層14が形成されている領域におけるp側窒化物半導体層12pは高抵抗のまま維持されるので、第1保護層14の下方に高抵抗部12xを構成することができる。なお、第1保護層14は、半導体ウエハ1がアニールされた後に、除去されていてもよい。
半導体構造の上方であって、第1保護層14の上面を含む領域に、第2保護層18を形成することができる。これにより、発光素子100の上面を保護することができる。
p側窒化物半導体層12pの上面のうち外周部よりも内側の領域であって、外周部の近傍を含む領域には、電流拡散層15を形成することができる。ここでは、p側窒化物半導体層12pの上面であって、外周部よりも内側の領域の略全面に、電流拡散層15を形成している。ここで、p側窒化物半導体層12pの外周部の近傍とは、外周部から内側に向けて20μm以下の領域をいう。これにより、発光素子100の面内における電流密度分布をより均一にすることができるため、発光素子100の発光効率を向上させることができる。また、発光素子100の面内において電流が流れる面積を比較的大きくすることができるため、発光素子100からの光取出し量を向上させることができる。
基板11の側面には、加工変質部が形成されている。これにより、半導体ウエハ1を分割しやすくすることができるため、発光素子100を得やすくすることができる。加工変質部は、基板11の厚みの半分より上に形成することができる。これにより、半導体ウエハ1を分割して発光素子100を得るときの分割予定線13からのずれを小さくすることができる。さらに、加工変質部が形成される領域を半導体部12に近づけることにより、より多くの光を加工変質部で反射させることができるため、発光素子100からの光取出し量を向上させることができる。
深さ方向において加工変質部が基板11の複数の位置に形成されている場合は、加工変質部は、第1ピッチで形成されている第1加工変質部と、第1ピッチよりも広い第2ピッチで形成されている第2加工変質部とを有することができる。そして、第1加工変質部よりも上方に、第2加工変質部を形成することができる。これにより、加工変質部が半導体部12に近づけて形成されるため、発光素子100からの光取出し量を向上することができる。また、第1加工変質部のピッチよりも広いピッチで第2加工変質部が形成されるため、レーザ光Lによる半導体部12に対するダメージを抑制することができる。
第1加工変質部及び第2加工変質部が形成されている場合、第1加工変質部を基板11の厚みの半分より下の領域に形成し、第2加工変質部を基板11の厚みの半分より上の領域に形成することができる。これにより、加工変質部を半導体部12に近づけて形成することで光取り出し量をさらに向上しつつ、レーザ光Lによる半導体部12に対するダメージをさらに抑制することができる。
[実施例1]
図1A〜
図6Bに基づいて、本実施例について説明する。
【0039】
まず、
図1A及び
図1Bに示すように、基板11上に、n型不純物としてSiを含むn側窒化物半導体層12nと、活性層12aと、p型不純物としてMgを含むp側窒化物半導体層12pとを積層して、半導体ウエハ1を得た。基板11として厚み800μmのサファイア基板を使用し、n側窒化物半導体層12nと、活性層12aと、p側窒化物半導体層12pとしてGaN、AlGaN、InGaN等をそれぞれ形成した。その後、
図2A及び
図2Bに示すように、p側窒化物半導体層12pの側から半導体部の一部をエッチングしてn側窒化物半導体層12nを露出させることにより、後の工程においてnパッド電極16を設けるための領域を形成した。なお、このときのp側窒化物半導体層12pのエッチングでは、p側窒化物半導体層12pのうち、半導体ウエハ1の分割予定線13と重なる領域はエッチングしていない。
【0040】
次に、
図3A及び
図3Bに示すように、p側窒化物半導体層12pの上面であって、半導体ウエハ1の分割予定線13と重なる領域に、SiO
2からなる第1保護層14を膜厚約0.3μmで形成した。半導体ウエハ1の分割予定線13は、上面視において、格子状とし、隣接する分割予定線13と分割予定線13との間の距離は、650μmとした。第1保護層14の短手方向の幅は、20μmとした。その後、p側窒化物半導体層12pの上面であって、第1保護層14が形成されていない領域の略全面に、電流拡散層15としてITOを膜厚約0.1μmで形成した。電流拡散層15と第1保護層14との間の距離は、6μmとした。
【0041】
次に、
図4A及び
図4Bに示すように、半導体ウエハ1を窒素雰囲気において約500度で40分アニールすることにより、第1保護層14が形成されていない領域においてp側窒化物半導体層12pを低抵抗化した。
【0042】
次に、
図5A及び
図5Bに示すように、p側窒化物半導体層12pの上面に形成された電流拡散層15上に、pパッド電極17を形成し、露出されたn側窒化物半導体層12n上に、nパッド電極16を形成した。pパッド電極として、Cr、Rh、Pt、Auを順に積層した。nパッド電極として、Ti、Al、Ti、Ru、Ti、Cr、Rh、Pt、Auを順に積層した。pパッド電極17及びnパッド電極16を除く半導体ウエハ1の上面の略全面に、SiO
2からなる第2保護層18を膜厚約0.2μmで形成した。その後、基板11を下面側から削って、厚み150μmにした。
【0043】
次に、
図5A及び
図5Bに示すように、基板11の下面側から、基板11の分割予定線13に対応する領域に、レーザ光Lを照射した。レーザ光Lは、基板11の上面から100μmの位置に照射した。レーザ光Lとして、波長が1064nmであり、パルス幅が約1psec、出力が約0.3Wであるファイバーレーザを使用した。
【0044】
その後、半導体ウエハ1を分割予定線13に沿って分割することにより、複数の発光素子100を得た。半導体ウエハ1は、半導体ウエハ1の分割予定線13に沿って、基板11の下面側にローラーを押し当てて力を加えることで、分割した。
【0045】
この結果、
図6A及び
図6Bに示すような、矩形であり、各辺の長さが650μmの発光素子100を5529個得ることができた。これらの発光素子100に対して、逆方向に5Vの電圧をかけたときに流れる電流(以下、「Ir」ともいう。)を測る試験を行った。この結果、
図8に示すように、実施例1では発光素子100においてIrが0.01以上のものが39個(発生率0.7%)となり、リーク電流が十分に抑制できていることがわかった。
【0046】
[実施例2]
図9に、第1保護層14の短手方向の幅を30μmに設定した以外、実施例1と同様に形成した5542個の実施例2に係る発光素子100の試験結果を示す。このように、実施例2では、発光素子100においてIrが0.01以上のものが42個(発生率0.8%)となり、リーク電流が十分に抑制できていることがわかった。
【0047】
[実施例3]
図10に、第1保護層14の短手方向の幅を40μmに設定した以外、実施例1と同様に形成した実施例3に係る発光素子100の試験結果を示す。このように、実施例3では、発光素子100においてIrが0.01以上のものが36個(発生率0.7%)となり、リーク電流が十分に抑制できていることがわかった。
【0048】
[比較例]
比較例として、実施例1とは、p側窒化物半導体層12pのうち、半導体ウエハ2の分割予定線13と重なる領域をエッチングしている点が異なる発光素子200を準備した。
つまり、半導体ウエハ2ではエッチングにより半導体部12に凹部20が形成されているため、角部等21が存在する。それ以外については、実施例1と同様である。
【0049】
比較例では、
図7A及び
図7Bに示すように、半導体部の凹部20の短手方向における幅を50μmとしている。換言すると、発光素子200のp側窒化物半導体層12pのうち、外周縁を25μmずつエッチングしている。
【0050】
比較例では、矩形であり、各辺の長さが650μmの発光素子200を4050個作成した。これらの発光素子200に対して、逆方向に5Vの電圧をかけたときに流れるIrを測る試験を行った。この結果、
図11に示すように、比較例では発光素子200のうち、Irが0.01以上の発光素子200が599個(発生率14.8%)となり、リーク電流が十分に抑制できていないことがわかった。
【0051】
比較例に係る発光素子200では、実施例1〜3の第1保護層14の短手方向における幅と比較して、凹部20の短手方向における幅を大きく取っている。しかし、エッチングにより半導体部12に凹部20が形成されているため、半導体部12の角部等21がレーザ光Lによりダメージを受けてしまい、リーク電流が生じたものと考えられる。一方で、実施例1〜3における発光素子100では、発光素子200の凹部20の短手方向における幅と比較して、保護層14の短手方向における幅を小さくしているにも関わらず、リーク電流を十分に抑制できていた。