の組成を有する分子からなるガスである、該工程と、(ii)第1のガスを供給する工程と同時に、又は、第1のガスを供給する工程の後に、多孔質膜をエッチングするために、当該多孔質膜のエッチング用の第2のガスのプラズマを生成する工程と、を含む。チャンバ内における第1のガスの分圧、又は、第1のガスのみがチャンバに供給されるときのチャンバ内における第1のガスの圧力は、第1のガスを供給する工程の実行中の被加工物の温度において、多孔質膜内で第1のガスの毛管凝縮が発生する臨界圧力よりも高く、第1のガスの飽和蒸気圧よりも低い。
多孔質膜をエッチングする方法であって、該方法は、前記多孔質膜、及び、該多孔質膜上に設けられており該多孔質膜を部分的に露出させる開口を提供するマスクを有する被加工物が、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられたステージ上に載置された状態で実行され、
前記チャンバに第1のガスを供給する工程であり、該第1のガスはCxFyOzの組成を有する分子からなるガスであり、ここで、xは6≦x≦22を満たす整数であり、yは1以上の整数であり、zは0以上の整数である、該工程と、
第1のガスを供給する前記工程と同時に、又は、第1のガスを供給する前記工程の後に、前記多孔質膜をエッチングするために、該多孔質膜のエッチング用の第2のガスのプラズマを生成する工程と、
を含み、
前記チャンバ内における前記第1のガスの分圧、又は、前記第1のガスのみが前記チャンバに供給されるときの前記チャンバ内における該第1のガスの圧力は、第1のガスを供給する前記工程の実行中の前記被加工物の温度において、前記多孔質膜内で該第1のガスの毛管凝縮が生じる臨界圧力よりも高く、該第1のガスの飽和蒸気圧よりも低い、
方法。
第1のガスを供給する前記工程と第2のガスのプラズマを生成する前記工程において、前記被加工物の温度が−50℃以上−30℃以下の温度に設定され、前記第1のガスの分圧が0.4Pa以上に設定され、且つ、前記チャンバ内のガスの全圧が3.333Pa以下に設定される、請求項7に記載の方法。
第2のガスのプラズマを生成する前記工程において、前記プラズマの生成のための第1の高周波及び前記被加工物にイオンを引き込むための第2の高周波のうち少なくとも一方のパワーが交互に増減される、請求項7又は8に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した液体が多孔質膜内で維持される時間が短い場合には、プラズマエッチングの時間を十分に長くとることができない。したがって、液体が多孔質膜内で維持される時間が短い場合には、多孔質膜内でその毛管凝縮が生じるガスの供給と短時間のプラズマエッチングとの多数の繰り返しを実行する必要が生じる。結果的に、多孔質膜のエッチングのスループットが低下する。かかる背景から、多孔質膜内で毛管凝縮により生成された液体が維持される時間を増大させることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様においては、多孔質膜をエッチングする方法が提供される。この方法は、被加工物が、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられたステージ上に載置された状態で実行される。被加工物は、多孔質膜及びマスクを有する。マスクは、多孔質膜上に設けられており、当該多孔質膜を部分的に露出させる開口を提供する。この方法は、(i)チャンバに第1のガスを供給する工程であり、第1のガスはC
xF
yO
zの組成を有する分子からなるガスであり、ここで、xは6≦x≦22を満たす整数であり、yは1以上の整数であり、zは0以上の整数である、該工程と、(ii)第1のガスを供給する工程と同時に、又は、第1のガスを供給する工程の後に、多孔質膜をエッチングするために、該多孔質膜のエッチング用の第2のガスのプラズマを生成する工程と、を含む。チャンバ内における第1のガスの分圧、又は、第1のガスのみがチャンバに供給されるときのチャンバ内における第1のガスの圧力は、第1のガスを供給する工程の実行中の被加工物の温度において、多孔質膜内で第1のガスの毛管凝縮が生じる臨界圧力よりも高く、第1のガスの飽和蒸気圧よりも低い。
【0008】
一実施形態においては、第1のガスは、P
C/P
Sが0.05以下であることを満たすガスであってもよい。ここで、P
Sは第1のガスの飽和蒸気圧であり、P
Cは多孔質膜内で第1のガスの毛管凝縮が生じる臨界圧力である。
【0009】
一実施形態において、C
xF
yO
zの組成を有する分子からなるガスは、8≦x≦12、及び、0≦z≦10を更に満たしてもよい。
【0010】
一実施形態において、C
xF
yO
zの組成を有する分子からなるガスは、4≦z≦6、及び、2x−2≦y≦2x+2を更に満たしてもよい。
【0011】
一実施形態において、C
xF
yO
zの組成を有する分子からなるガスは、y=2x+2を更に満たしてもよい。
【0012】
一実施形態において、C
xF
yO
zの組成を有する分子からなるガスから生成される液体の多孔質膜に対する接触角が5°以下であってもよい。
【0013】
一実施形態の第1のガスを供給する工程では、第1のガスと第2のガスを含む混合ガスがチャンバに供給され、第2のガスのプラズマを生成する工程では、チャンバ内で上記混合ガスのプラズマが生成されてもよい。
【0014】
一実施形態では、第1のガスを供給する工程と第2のガスのプラズマを生成する工程において、被加工物の温度が−50℃以上−30℃以下の温度に設定され、第1のガスの分圧が0.4Pa以上に設定され、且つ、チャンバ内のガスの全圧が3.333Pa以下に設定される。
【0015】
一実施形態では、第2のガスのプラズマを生成する工程において、プラズマの生成のための第1の高周波及び被加工物にイオンを引き込むための第2の高周波のうち少なくとも一方のパワーが交互に増減されてもよい。
【0016】
一実施形態においては、第1のガスを供給する工程と第2のガスのプラズマを生成する工程とが交互に実行される。この実施形態の方法は、第1のガスを供給する工程と第2のガスのプラズマを生成する工程との間にプラズマを生成せずにチャンバに第2のガスを供給する工程を更に含む。
【0017】
一実施形態では、第1のガスを供給する工程と第2のガスのプラズマを生成する工程において、被加工物の温度が−50℃以上−30℃以下の温度に設定され、第1のガスを供給する工程において、チャンバ内における第1のガスの分圧、又は、第1のガスのみがチャンバに供給されるときのチャンバ内における第1のガスの圧力が0.4Pa以上に設定される。
【0018】
一実施形態において、方法は、多孔質膜のエッチング後に、第1のガスから生成された多孔質膜内の液体を除去する工程を更に含み、液体を除去する工程では、真空引きされた環境下で該液体の圧力が臨界圧力よりも低くなるように被加工物が加熱される。
【0019】
一実施形態では、C
xF
yO
zの組成を有する分子からなるガスの、25℃での飽和蒸気圧が133.3Pa以上であってもよい。
【0020】
一実施形態では、多孔質膜は、シリコン、酸素、炭素、及び、水素を含む低誘電率膜であってもよい。
【0021】
一実施形態では、第2のガスは、フッ素含有ガスを含んでいてもよい。
【0022】
一実施形態では、フッ素含有ガスは、NF
3ガス、SiF
4ガス、及びCF
4ガスのうち少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0023】
別の態様においては、多孔質膜をエッチングする方法が提供される。この方法は、被加工物がプラズマ処理装置のチャンバ内に設けられたステージ上に載置された状態で実行される。被加工物は、多孔質膜及びマスクを有する。マスクは、多孔質膜上に設けられており、当該多孔質膜を部分的に露出させる開口を提供する。この方法は、(i)チャンバに第1のガスを供給する工程であり、第1のガスはパーフルオロテトラグリム(C
10F
20O
5)からなるガスである、該工程と、(ii)第1のガスを供給する工程と同時に、又は、第1のガスを供給する工程の後に、多孔質膜をエッチングするために、当該多孔質膜のエッチング用の第2のガスのプラズマを生成する工程と、を含む。チャンバ内における第1のガスの分圧、又は、第1のガスのみがチャンバに供給されるときのチャンバ内における第1のガスの圧力は、第1のガスを供給する工程の実行中の被加工物の温度において、多孔質膜内で第1のガスの毛管凝縮が生じる臨界圧力よりも高く、第1のガスの飽和蒸気圧よりも低い。
【0024】
第1のガス、即ち、パーフルオロテトラグリムガスが多孔質膜内において凝縮し、液体になると、当該液体は比較的長時間、多孔質膜内において維持される。したがって、この方法によれば、多孔質膜のエッチングのスループットが改善される。また、パーフルオロテトラグリムは、比較的多数の酸素原子を含む分子であるので、エッチング中に、酸素を含むフラグメントを発生させるが、酸素原子単体(酸素ラジカル)の発生は抑制される。したがって、エッチングによって発生する炭素を含有する反応生成物の量を、多量の酸素ガス等を供給することなく、減少させることが可能である。故に、多孔質膜のダメージが抑制される。
【0025】
一実施形態の第1のガスを供給する工程では、第1のガスと第2のガスを含む混合ガスがチャンバに供給され、第2のガスのプラズマを生成する工程では、チャンバ内で上記混合ガスのプラズマが生成されてもよい。即ち、第1のガスと第2のガスが同時に供給されている状態で、第1のガスと第2のガスを含む混合ガスのプラズマが生成されてもよい。一実施形態では、第1のガスを供給する工程と第2のガスのプラズマを生成する工程において、被加工物の温度が−50℃以上−30℃以下の温度に設定され、第1のガスの分圧が0.4Pa(3mTorr)以上に設定され、且つ、チャンバ内のガスの全圧が3.333Pa(25mTorr)以下に設定され得る。一実施形態では、第2のガスのプラズマを生成する工程において、プラズマの生成のための第1の高周波及び被加工物にイオンを引き込むための第2の高周波のうち少なくとも一方のパワーが交互に増減されてもよい。例えば、第1の高周波及び第2の高周波のうち少なくとも一方のONとOFFが交互に切り替えられてもよい。
【0026】
一実施形態では、第1のガスを供給する工程と第2のガスのプラズマを生成する工程とが交互に実行される。この実施形態の方法は、第1のガスを供給する工程と第2のガスのプラズマを生成する工程との間にプラズマを生成せずにチャンバに第2のガスを供給する工程を更に含む。一実施形態では、第1のガスを供給する工程と第2のガスのプラズマを生成する工程において、被加工物の温度が−50℃以上−30℃以下の温度に設定され、第1のガスを供給する工程において、チャンバ内における第1のガスの分圧、又は、第1のガスのみがチャンバに供給されるときのチャンバ内における該第1のガスの圧力が0.4Pa(3mTorr)以上に設定される。
【0027】
一実施形態において、方法は、多孔質膜のエッチング後に、第1のガスから生成された多孔質膜内の液体を除去する工程を更に含み、当該工程では、真空引きされた環境下で当該液体の圧力が臨界圧力よりも低くなるように被加工物が加熱される。
【0028】
一実施形態において、多孔質膜は、シリコン、酸素、炭素、及び、水素を含む低誘電率膜であり得る。一実施形態において、第2のガスは、三フッ化窒素(NF
3)ガスを含み得る。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、多孔質膜のエッチングにおいて、当該多孔質膜内で液体が維持される時間を増大させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0032】
図1は、一実施形態に係る多孔質膜をエッチングする方法を示す流れ図である。
図1に示す方法MT1は、第1のガスに基づく液体により被加工物の多孔質膜を保護しつつ、当該多孔質膜をエッチングする方法である。
図2は、被加工物の一例の一部拡大断面図である。
図2に示すように、被加工物Wは、下地層UL、多孔質膜PL、及び、マスクMKを備えている。被加工物Wは、例えば略円盤形状を有し得る。
【0033】
多孔質膜PLは、下地層UL上に設けられている。多孔質膜PLには、多数の細孔が形成されている。細孔は、数nm、例えば1nm〜2nmの平均の幅を有し得る。なお、平均の幅とは、各細孔の最大幅の平均値である。多孔質膜PLは、低誘電率材料から構成された膜である。多孔質膜PLは、低誘電率膜であり、例えば、シリコン、酸素、炭素、及び、水素を含む膜、即ちSiOCH膜であり得る。多孔質膜PLは、化学気相成長法又はスピン成膜法といった成膜法によって形成され得る。
【0034】
マスクMKは、多孔質膜PL上に設けられている。マスクMKは、一例では、第1層L1及び第2層L2を含み得る。第1層L1は、例えばシリコン酸化膜であり、第2層L2は、例えばTiN膜である。マスクMKは、開口を提供している。即ち、マスクMKには、多孔質膜PLに転写すべきパターンが形成されている。マスクMKは、リソグラフィ技術、及びプラズマエッチングを用いることにより形成され得る。
【0035】
方法MT1では、プラズマ処理装置のチャンバ内に被加工物Wが収容された状態で、多孔質膜のエッチングが行われる。
図3は、プラズマ処理装置を備える一実施形態の処理システムを示す図である。
図3に示す処理システム1は、方法MT1の実施において使用され得る。処理システム1は、台2a〜2d、容器4a〜4d、ローダモジュールLM、アライナAN、ロードロックモジュールLL1,LL2、プロセスモジュールPM1〜PM6、搬送モジュールTF、及び、制御部MCを備えている。なお、処理システム1における台の個数、容器の個数、ロードロックモジュールの個数は一以上の任意の個数であり得る。また、プロセスモジュールの個数は、二以上の任意の個数であり得る。
【0036】
台2a〜2dは、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。容器4a〜4dはそれぞれ、台2a〜2d上に搭載されている。容器4a〜4dの各々は、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)と称される容器である。容器4a〜4dの各々は、その内部に被加工物Wを収容するように構成されている。
【0037】
ローダモジュールLMは、チャンバを提供する。ローダモジュールLMによって提供されるチャンバの圧力は、大気圧に設定される。ローダモジュールLMのチャンバ内には、搬送装置TU1が設けられている。搬送装置TU1は、例えば、多関節ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置TU1は、容器4a〜4dの各々とアライナANとの間、アライナANとロードロックモジュールLL1〜LL2の各々との間、ロードロックモジュールLL1〜LL2の各々と容器4a〜4dの各々との間で被加工物Wを搬送するように構成されている。アライナANは、ローダモジュールLMに接続されている。アライナANは、被加工物Wの位置の調整(位置の較正)を行うように構成されている。
【0038】
ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、ローダモジュールLMと搬送モジュールTFとの間に設けられている。ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、予備減圧室を提供している。
【0039】
搬送モジュールTFは、ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2にゲートバルブを介して接続されている。搬送モジュールTFは、減圧可能な搬送チャンバTCを提供している。搬送チャンバTC内には、搬送装置TU2が設けられている。搬送装置TU2は、例えば、多関節ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置TU2は、ロードロックモジュールLL1〜LL2の各々とプロセスモジュールPM1〜PM6の各々との間、及び、プロセスモジュールPM1〜PM6のうち任意の二つのプロセスモジュールの間において、被加工物Wを搬送するように構成されている。
【0040】
プロセスモジュールPM1〜PM6の各々は、専用の基板処理を行うよう構成された処理装置である。プロセスモジュールPM1〜PM6の各々はチャンバを提供している。プロセスモジュールPM1〜PM6の各々のチャンバは、搬送モジュールTFのチャンバにゲートバルブを介して接続されている。プロセスモジュールPM1〜PM6のうち一つのプロセスモジュールは、プラズマ処理装置である。プロセスモジュールPM1〜PM6のうち別の一つのプロセスモジュールは、加熱処理装置である。なお、以下の説明では、プロセスモジュールPM5が加熱処理装置であるものとする。加熱処理装置は、後述するように多孔質膜PLのエッチング後に、そのチャンバPC内において被加工物Wを加熱することにより多孔質膜PL内の液体を気化させて、当該液体から生成された気体を排気するよう構成されている。
【0041】
制御部MCは、プロセッサ、メモリといった記憶装置、ディスプレイといった表示装置、キーボード、マウスといった入出力装置、制御信号の入出力インターフェイス、及び、通信装置等を備えるコンピュータ装置であり得る。記憶装置には、制御プログラム及びレシピデータが記憶されている。プロセッサは、制御プログラム及びレシピデータに従って動作して、処理システム1の各部に対して制御信号を送出することにより、処理システム1の各部を制御する。
【0042】
図4は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図4には、一実施形態に係るプラズマ処理装置が、その一部が破断された状態で、示されている。
図4に示すプラズマ処理装置10は、処理システム1のプロセスモジュールとして用いることが可能である。プラズマ処理装置10は、容量結合型プラズマエッチング装置である。
【0043】
プラズマ処理装置10は、チャンバ本体12を備えている。チャンバ本体12は、略円筒形状を有する。チャンバ本体12は、その内部空間をチャンバ12cとして提供している。チャンバ本体12の内壁面には、耐プラズマ性を有する被膜が形成されている。この被膜は、アルマイト膜、又は、酸化イットリウムから形成された膜であり得る。チャンバ本体12は、接地されている。チャンバ本体12の側壁には、開口12gが形成されている。チャンバ本体12の外部からチャンバ12cへの被加工物Wの搬入時、及び、チャンバ12cからチャンバ本体12の外部への被加工物Wの搬出時に、被加工物Wは開口12gを通過する。チャンバ本体12の側壁には、開口12gの開閉のために、ゲートバルブ14が取り付けられている。
【0044】
チャンバ本体12の底部上には、支持部15が設けられている。支持部15は、略円筒形状を有している。支持部15は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部15は、チャンバ12c内において、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。チャンバ12c内には、ステージ16が設けられている。ステージ16は、支持部15によって支持されている。
【0045】
ステージ16は、その上に載置された被加工物Wを保持するように構成されている。ステージ16は、下部電極18及び静電チャック20を有している。下部電極18は、第1プレート18a及び第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18a及び第2プレート18bは、例えばアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状を有している。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0046】
静電チャック20は、第2プレート18b上に設けられている。静電チャック20は、絶縁層、及び、当該絶縁層内に設けられた膜状の電極を有している。静電チャック20の電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。静電チャック20の電極には、直流電源22から直流電圧が印加される。静電チャック20の電極に直流電圧が印加されると、静電チャック20は、静電引力を発生して、被加工物Wを当該静電チャック20に引き付けて、当該被加工物Wを保持する。なお、静電チャック20内には、ヒータが内蔵されていてもよく、当該ヒータには、チャンバ本体12の外部に設けられたヒータ電源が接続されていてもよい。
【0047】
第2プレート18bの周縁部上には、フォーカスリング24が設けられる。フォーカスリング24は、略環状の板である。フォーカスリング24は、被加工物Wのエッジ及び静電チャック20を囲むように配置される。フォーカスリング24は、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリング24は、例えば、シリコン、石英といった材料から形成され得る。
【0048】
第2プレート18bの内部には、流路18fが設けられている。流路18fには、チャンバ本体12の外部に設けられているチラーユニットから、配管26aを介して冷媒が供給される。流路18fに供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。即ち、流路18fとチラーユニットとの間では、冷媒が循環される。この冷媒の温度を制御することにより、ステージ16(又は静電チャック20)の温度及び被加工物Wの温度が調整される。なお、冷媒としては、被加工物Wの温度を−60℃以上の温度、例えば−50℃以上−30℃以下の温度に設定し得る一般的な冷媒が用いられる。このような冷媒としては、例えばガルデン(登録商標)が例示される。
【0049】
プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック20の上面と被加工物Wの裏面との間に供給する。
【0050】
プラズマ処理装置10は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、ステージ16の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34及び支持体36を含み得る。電極板34の下面は、チャンバ12cに面している。電極板34には、複数のガス吐出孔34aが設けられている。この電極板34は、シリコン又は酸化シリコンといった材料から形成され得る。
【0051】
支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、アルミニウムといった導電性材料から形成されている。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。支持体36には、ガス拡散室36aにガスを導くガス導入口36cが形成されている。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0052】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。複数のガスソースは、第1のガスのソース、及び、第2のガスの一以上のソースを含んでいる。第1のガスは、多孔質膜PL内においてその毛管凝縮が生じるガスである。第2のガスは、多孔質膜PLのエッチング用のガスである。複数のガスソースは、これらのガス以外のガスのソースを含んでいてもよい。
【0053】
バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器といった複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。
【0054】
支持部15とチャンバ本体12の側壁との間にはバッフル部材48が設けられている。バッフル部材48は、例えば、板状の部材であり、アルミニウム製の母材の表面にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより形成され得る。バッフル部材48には、当該バッフル部材48を貫通する複数の孔が形成されている。バッフル部材48の下方において、チャンバ本体12の底部には、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁といった圧力制御器、及び、ターボ分子ポンプといった真空ポンプを有しており、チャンバ12cを所望の圧力に減圧することができる。
【0055】
プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波(高周波電気エネルギー)を発生する電源である。第1の高周波は、例えば27〜100MHzの範囲内の周波数を有する。第1の高周波電源62は、整合器63を介して上部電極30に接続されている。整合器63は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(上部電極30側)のインピーダンスを整合させるための回路を有している。なお、第1の高周波電源62は、整合器63を介して下部電極18に接続されていてもよい。
【0056】
第2の高周波電源64は、被加工物Wにイオンを引き込むための第2の高周波(高周波電気エネルギー)を発生する電源である。第2の高周波は、例えば400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数を有する。第2の高周波電源64は、整合器65を介して下部電極18に接続されている。整合器65は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0057】
以下、プラズマ処理装置10を一つのプロセスモジュールとして有する処理システム1を用いて、被加工物Wに方法MT1が適用される場合に関連して、方法MT1を説明する。しかしながら、方法MT1は、任意のプラズマ処理装置又は任意の処理システムを用いて実行することができる。また、方法MT1は、多孔質膜を有する任意の被加工物に適用され得る。
【0058】
以下の説明では、
図1に加えて、
図5〜
図8を参照する。
図5は、
図1に示す方法に関連するタイミングチャートである。
図5において、横軸は時間を示している。
図5内の第1のガスの供給に関するタイミングチャートにおいて、高レベル(図中「H」で示すレベル)はチャンバ12cに第1のガスが供給されていることを示しており、低レベル(図中「L」で示すレベル)はチャンバ12cに第1のガスが供給されていないことを示している。また、
図5内の第2のガスの供給に関するタイミングチャートにおいて、高レベル(図中「H」で示すレベル)はチャンバ12cに第2のガスが供給されていることを示しており、低レベル(図中「L」で示すレベル)はチャンバ12cに第2のガスが供給されていないことを示している。また、
図5内の高周波の供給に関するタイミングチャートにおいて、高レベル(図中「H」で示すレベル)は、第1の高周波及び第2の高周波が供給されていることを示しており、低レベル(図中「L」で示すレベル)は、第1の高周波及び第2の高周波の供給が停止されていることを示している。
図6及び
図7は、
図1に示す方法の実行中に得られる被加工物の一部拡大断面図である。
図8は、
図1に示す方法の実行によって得られる被加工物の一部拡大断面図である。
【0059】
方法MT1の工程ST1〜工程ST3は、プラズマ処理装置10のチャンバ12c内で被加工物Wがステージ16上に載置された状態で実行される。方法MT1の工程ST1では、第1のガスがチャンバ12cに供給される。第1のガスは、多孔質膜PL内でその毛管凝縮が生じるガスである。第1のガスは、一実施形態では、パーフルオロテトラグリムからなるガス(以下、「パーフルオロテトラグリムガス」ということがある)である。工程ST1では、第1のガスと共に希ガスといった不活性ガスがチャンバ12cに供給されてもよい。希ガスは、Heガス、Neガス、Arガス、Krガスといった任意の希ガスであり得る。
図5に示すように、工程ST1では、第1の高周波及び第2の高周波の供給は停止されている。即ち、工程ST1では、チャンバ12c内でプラズマは生成されない。
【0060】
工程ST1では、チャンバ12cにおける第1のガスの分圧、又は、第1のガスのみがチャンバ12cに供給されるときのチャンバ12cにおける第1のガスの圧力は、工程ST1の実行中の被加工物Wの温度において、多孔質膜PL内で第1のガスの毛管凝縮が生じる臨界圧力よりも高く、且つ、第1のガスの飽和蒸気圧よりも低い。なお、チャンバ12cにおける第1のガスの分圧、又は、第1のガスのみがチャンバ12cに供給されるときのチャンバ12cにおける第1のガスの圧力が臨界圧力以上であると、多孔質膜PL内で第1のガスの毛管凝縮が生じる。
【0061】
工程ST1において、被加工物Wの温度は、常温(25℃)よりも低く、上述した冷媒によって設定し得る下限温度、例えば−60℃以上の温度に設定される。一実施形態の工程ST1では、被加工物Wの温度は−50℃以上−30℃以下の温度、例えば−40℃に設定される。被加工物Wの温度は、ステージ16に供給される冷媒によって調整される。被加工物Wの温度は、ステージ16の温度と略同一の温度であり得る。一実施形態の工程ST1では、チャンバ12cにおける第1のガスの分圧、又は、第1のガスのみがチャンバ12cに供給されるときのチャンバ12cにおける第1のガスの圧力は、被加工物Wの設定温度が−40℃の場合には、3mTorr(0.4Pa)以上、10mTorr(1.333Pa)以下の圧力に設定される。一実施形態の工程ST1では、チャンバ12c内のガスの全圧は、例えば11mTorr(1.47Pa)以上、23mTorr(3.07Pa)以下の圧力に設定される。
【0062】
工程ST1では、多孔質膜PL内で第1のガスの毛管凝縮が生じ、第1のガスが多孔質膜PL内で液化する。その結果、
図6に示すように、多孔質膜PL内には、領域SRが形成される。領域SR内において、多孔質膜PLの細孔は、第1のガスから生成された液体で充填されている。
【0063】
図1に示すように、方法MT1では、次いで、工程ST2が実行される。工程ST2では、チャンバ12cに第2のガスが供給される。即ち、工程ST2では、チャンバ12c内のガスが第1のガスから第2のガスに置換される。第2のガスは、フッ素含有ガスを含む。第2のガスに含まれるフッ素含有ガスは、NF
3ガス(三フッ化窒素ガス)、SiF
4ガス、CF
4ガスといったガス、又は、これらのうち二以上の混合ガスであり得る。第2のガスは、希ガスといった不活性ガスを更に含んでいてもよい。希ガスは、Heガス、Neガス、Arガス、Krガスといった任意の希ガスであり得る。第2のガスは、O
2ガスといった酸素含有ガスを更に含んでいてもよい。
【0064】
工程ST2では、
図5に示すように、第1の高周波及び第2の高周波の供給は停止される。即ち、工程ST2では、プラズマは生成されない。工程ST2では、チャンバ12cの圧力が所定の圧力に設定される。この所定の圧力は、工程ST3の実行中のチャンバ12cの圧力と同様の圧力である。また、工程ST2では、被加工物Wの温度が、工程ST3の実行中の被加工物Wの温度と同様の温度、例えば、−50℃以上−30℃以下の温度に設定される。被加工物Wの温度は、ステージ16に供給される冷媒によって調整される。被加工物Wの温度は、ステージ16の温度と略同一の温度であり得る。
【0065】
方法MT1では、次いで、工程ST3が実行される。工程ST3では、チャンバ12c内で第2のガスのプラズマが生成される。
図5に示すように、工程ST3では、工程ST2に引き続き、第2のガスがチャンバ12cに供給される。また、工程ST3では、第1の高周波が上部電極30に供給され、第2の高周波が下部電極18に供給される。なお、工程ST3において、第2の高周波は供給されなくてもよい。
【0066】
工程ST3では、チャンバ12cの圧力が所定の圧力に設定される。この所定の圧力は、例えば300mTorr(40Pa)以下の圧力である。この所定の圧力は、100mTorr(13.33Pa)以下の圧力であってもよい。工程ST3では、被加工物Wの温度が、例えば−50℃以上−30℃以下の温度に設定される。被加工物Wの温度は、ステージ16に供給される冷媒によって調整される。被加工物Wの温度は、工程ST3においてはプラズマから被加工物Wへの入熱が生じるので、ステージ16の温度よりも若干高くなる。
【0067】
工程ST3では、活性種、例えばラジカルによって多孔質膜PLがエッチングされる。これにより、
図7に示すように、マスクMKから露出されている部分において多孔質膜PLがエッチングされる。
図7に示すように、工程ST3では、領域SR内で、その表面から多孔質膜PLがエッチングされる。
【0068】
方法MT1では、続く工程ST4において、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、工程ST1〜工程ST3を含むシーケンスの実行回数が所定回数に達しているときに満たされるものと判断される。工程ST4において停止条件が満たされていないと判定されると、再び工程ST1が実行される。即ち、方法MT1では、工程ST1及び工程ST3が交互に繰り返される。一方、工程ST4において停止条件が満たされていると判定されると、工程ST1〜工程ST3を含むシーケンスの実行が終了する。しかる後に、被加工物Wは、搬送モジュールTFを介してプラズマ処理装置10から加熱処理装置に搬送される。
【0069】
方法MT1では、次いで、工程ST5が実行される。工程ST5では、多孔質膜PL内の、第1のガスに基づく液体が除去される。工程ST5では、真空引きされた環境下で液体の圧力が臨界圧力よりも低くなるように、加熱処理装置により被加工物Wが加熱される。工程ST5では、被加工物の温度は常温(25℃)以上の温度に設定される。工程ST5では、被加工物Wの加熱により多孔質膜PL内に残留している液体が気化し、当該液体から生成された気体が排気される。工程ST5の実行が終了すると、被加工物Wは、
図8に示すように、多孔質膜PLが下地層ULの表面までエッチングされた状態となる。
【0070】
ここで、多孔質膜PLを第1のガスから生成される液体で充填するのに要する時間T
1について考察する。多孔質膜PLを液体で充填するのに必要な単位面積当りのモル数M
Aは、下記の式(1)で表される。式(1)において、T
PLは多孔質膜PLの膜厚であり、ρ
poreは単位面積当りの多孔質膜PLの空孔率であり、V
mは第1のガスから形成される液体のモル体積である。
【数1】
また、単位時間当りに平面に入射するガス分子のモル数M
Bは下記の式(2)で表される。式(2)において、P
1は、チャンバ内の第1のガスの分圧、又は、第1のガスのみがチャンバに供給される場合の第1のガスの圧力である。式(2)において、mは第1のガスの分子の質量であり、k
Bはボルツマン定数であり、T
gasは第1のガスの温度であり、N
Aはアボガドロ数である。
【数2】
時間T
1は、多孔質膜PLを液体で充填するのに必要な単位面積当りのモル数M
Aを、単位時間当りに平面に入射するガス分子のモル数M
Bで除することにより得られるので、下記の式(3)で表される。
【数3】
第1のガスがパーフルオロテトラグリムガスであり、T
PL、ρ
pore、P
1、T
gasがそれぞれ、100nm、0.4、2mTorr、20℃であるものとすると、時間T
1は400ミリ秒となる。故に、一例において、工程ST1の実行時間は400ミリ秒以上に設定され得る。また、工程ST2の実行時間と工程ST3の実行時間の和は、第1のガスから生成された液体が多孔質膜PL内で維持される時間を超えないように設定される。
【0071】
上述したように、方法MT1では、第1のガス、即ち、パーフルオロテトラグリムガスが工程ST1において用いられる。かかる第1のガスの飽和蒸気圧は、多孔質膜PL内で当該第1のガスの毛管凝縮が生じる臨界圧力に対して相当に大きい。即ち、第1のガスの飽和蒸気圧と多孔質膜PL内で当該第1のガスの毛管凝縮が生じる臨界圧力との間の差は相当に大きい。したがって、第1のガスが多孔質膜PL内において凝縮し、液体になると、上述した工程ST2及び工程ST3のステージ16の温度、並びに、チャンバ12c内のガスの圧力の下では、当該液体は比較的長時間、多孔質膜PL内において維持される。故に、方法MT1では、工程ST2及び工程ST3の実行時間を長く確保することができる。その結果、方法MT1によれば、多孔質膜PLのエッチングのスループットが改善される。また、パーフルオロテトラグリムは、比較的多数の酸素原子を含む分子であるので、エッチング中に、酸素を含むフラグメントを発生させるが、酸素原子単体(酸素ラジカル)の発生は抑制される。したがって、エッチングによって発生する炭素を含有する反応生成物の量を、多量の酸素ガス等を供給することなく、減少させることが可能である。故に、多孔質膜PLのダメージが抑制される。また、反応生成物の量が減少されるので、エッチングによって多孔質膜PLに形成される開口の垂直性が高められる。
【0072】
以下、別の実施形態に係る多孔質膜をエッチングする方法について説明する。
図9は、別の実施形態に係る多孔質膜をエッチングする方法を示す流れ図である。
図9に示す方法MT2は、方法MT1と同様に、第1のガスから生成される液体により多孔質膜PLを保護しつつ、当該多孔質膜PLをエッチングするために実行される。以下、プラズマ処理装置10を一つのプロセスモジュールとして有する処理システム1を用いて、被加工物Wに方法MT2が適用される場合に関連して方法MT2を説明する。しかしながら、方法MT2は、任意のプラズマ処理装置又は任意の処理システムを用いて実行することができる。また、方法MT2は、多孔質膜を有する任意の被加工物に適用され得る。
【0073】
以下の説明では、
図9に加えて、
図10を参照する。
図10は、
図9に示す方法に関連するタイミングチャートである。
図10において、横軸は時間を示している。
図10内の第1のガスの供給に関するタイミングチャートにおいて、高レベル(図中「H」で示すレベル)はチャンバ12cに第1のガスが供給されていることを示しており、低レベル(図中「L」で示すレベル)はチャンバ12cに第1のガスが供給されていないことを示している。また、
図10内の第2のガスの供給に関するタイミングチャートにおいて、高レベル(図中「H」で示すレベル)はチャンバ12cに第2のガスが供給されていることを示しており、低レベル(図中「L」で示すレベル)はチャンバ12cに第2のガスが供給されていないことを示している。また、
図10内の高周波の供給に関するタイミングチャートにおいて、高レベル(図中「H」で示すレベル)は、プラズマの生成及びイオンの引き込みのために第1の高周波及び第2の高周波が供給されていることを示しており、低レベル(図中「L」で示すレベル)は、第1の高周波及び第2の高周波の供給が停止されていることを示している。
【0074】
方法MT2の工程ST11及び工程ST12は、プラズマ処理装置10のチャンバ12c内で被加工物Wがステージ16上に載置された状態で実行される。方法MT2の工程ST11では、第1のガスがチャンバ12cに供給される。第1のガスは、方法MT1で用いられる第1のガスと同様のガスである。工程ST11では、第1のガスに加えて第2のガスもチャンバ12cに供給される。第2のガスは、方法MT2で用いられる第2のガスと同様のガスである。即ち、工程ST11では、第1のガスと第2のガスを含む混合ガスが、チャンバ12cに供給される。
図10に示すように、工程ST11の開始時点から工程ST12の開始時点までの間の期間では、第1の高周波及び第2の高周波の供給は停止されている。即ち、工程ST11の開始時点から工程ST12の開始時点までの間の期間では、プラズマは生成されない。
【0075】
続く工程ST12では、多孔質膜PLのエッチングのために、チャンバ12c内で第1のガス及び第2のガスを含む混合ガスのプラズマが生成される。
図10に示すように、工程ST12は、工程ST11の開始時点と終了時点との間の時点で開始する。即ち、工程ST11の開始時点と終了時点との間の時点から第1の高周波及び第2の高周波の供給が開始され、当該第1の高周波及び第2の高周波の供給が工程ST11及び工程ST12の共通の終了時点まで継続する。
【0076】
一実施形態の工程ST12では、第1の高周波及び第2の高周波の少なくとも一方のパワーが交互に増減される。例えば、工程ST12において、第1の高周波及び第2の高周波の少なくとも一方のONとOFFが交互に切り替えられる。第1の高周波がONである場合には、第1の高周波が上部電極30(又は下部電極18)に供給され、第1の高周波がOFFである場合には、第1の高周波の上部電極30(又は下部電極18)への供給が停止される。また、第2の高周波がONである場合には、第2の高周波が下部電極18に供給され、第2の高周波がOFFである場合には、第2の高周波の下部電極18への供給が停止される。以下、そのパワーが交互に増減された高周波、及び、そのON/OFFが交互に切り替えられた高周波を、「パルス波」ということがある。
【0077】
工程ST11及び工程ST12では、被加工物Wの温度が、−60℃以上、且つ、常温(25℃)よりも低い温度に設定される。例えば、工程ST11及び工程ST12において、被加工物Wの温度は、−50℃以上−30℃以下の温度に設定される。被加工物Wの温度は、ステージ16に供給される冷媒によって調整される。また、工程ST11及び工程ST12では、チャンバ12c内における第1のガスの分圧が0.4Pa(3mTorr)以上に設定され、且つ、チャンバ12c内のガスの全圧が3.333Pa(25mTorr)以下に設定される。
【0078】
図9に示すように、方法MT2では、工程ST12に続き、工程ST5が実行される。方法MT2における工程ST5は、方法MT1における工程ST5と同様の工程である。
【0079】
かかる方法MT2によれば、方法MT1と同様に、第1のガスが多孔質膜PL内において液化して、多孔質膜PL内で液体が生成される。生成された液体は、多孔質膜PL内で比較的長時間維持される。また、方法MT2では、工程ST12の実行中、即ち、プラズマエッチングの実行中にもチャンバ12cに第1のガスが供給されるので、多孔質膜PLを保護する液体が工程ST12の実行中に補充される。かかる方法MT2によれば、多孔質膜PLのダメージを抑制することができ、且つ、多孔質膜PLのエッチングのスループットが改善される。また、エッチングによって多孔質膜PLに形成される開口の垂直性が高められる。
【0080】
また、一実施形態の工程ST12では、第1の高周波及び第2の高周波の少なくとも一方のパワーが交互に増減される。これにより、多孔質膜PLに形成された開口の上端近傍における付着物(炭素含有の反応生成物)の量が低減される。その結果、エッチングによって多孔質膜PLに形成される開口の垂直性が更に高められる。
【0081】
以下、パーフルオロテトラグリムガスから生成された液体が多孔質膜内で維持される時間について調査した第1の実験について説明する。第1の実験では、チャンバ12c内のステージ16上に多孔質膜を有する被加工物を載置し、被加工物の温度を様々な温度に設定した。そして、チャンバ12cにパーフルオロテトラグリムガスとSF
6ガスの混合ガスを供給した。多孔質膜は、比誘電率が2.2のSiOCH膜であった。また、混合ガスの圧力は22.5mTorr(3Pa)であり、パーフルオロテトラグリムガスの分圧は2.65mTorr(0.35Pa)であった。多孔質膜がパーフルオロテトラグリムガスから生成された液体により充填された後に、真空引きされた環境下に被加工物を配置し、種々の温度環境下での多孔質膜の屈折率の経時変化をエリプソメトリ法により取得した。なお、多孔質膜の屈折率は、多孔質膜内の液体の量の減少につれて、減少する。
【0082】
図11に、第1の実験において取得した多孔質膜の屈折率の経時変化を示す。
図11において、横軸は真空引き開始後の経過時間を示しており、縦軸は多孔質膜の屈折率を示している。
図11に示すように、真空引き開始後に被加工物の温度が−35℃以下の温度に設定された場合には、多孔質膜の屈折率は、数分の間、高い値に維持されていた。即ち、真空引き開始後に被加工物の温度が−35℃以下の温度に設定された場合には、多孔質膜内で液体が、数分の間、維持された。また、真空引き開始後に被加工物の温度が−30℃に設定された場合であっても、多孔質膜内の液体は十秒程度維持されることが確認された。したがって、第1のガスとして、パーフルオロテトラグリムガスが用いられる場合には、工程ST2、工程ST3、及び、工程ST12において、被加工物Wの温度が−30℃以下の温度又は−35℃以下の温度に設定されることにより、多孔質膜PL内に液体を長時間維持可能であることが確認された。
【0083】
以下、方法MT2の評価のために行った第2の実験について説明する。第2の実験では、プラズマ処理装置10を有する処理システム1を用いて、方法MT2を実行することにより、
図2に示した構造を有する複数の被加工物の多孔質膜のエッチングを行った。各多孔質膜は、比誘電率が2.2のSiOCH膜であり、その膜厚は100nmであった。複数の被加工物の各々のマスクの膜厚は、20nmであり、マスクのパターンは22nmのライン部と22nmのスペースとを有するラインアンドスペースパターンであった。第2の実験において、複数の被加工物のそれぞれに対する工程ST11及び工程ST12の実行時の第1のガスの分圧は、以下の(2−1)〜(2−3)に示すように、互いに異なっていた。以下、第2の実験における諸条件を示す。
【0084】
<第2の実験における工程ST11及び工程ST12の条件>
混合ガス中の第1のガス:パーフルオロテトラグリムガス
混合ガス中の第2のガス:NF
3ガス
第1のガスの分圧
(2−1):2.8mTorr(0.37Pa)、
(2−2)4.8mTorr(0.64Pa)、
(2−3)6.8mTorr(0.91Pa)
チャンバ12c内のガスの全圧:23mTorr(3.07Pa)
被加工物の温度:−40℃
工程ST11の実行時間:170(秒)
工程ST11の開始時点と工程ST12の開始時点との時間差:60秒
工程ST12における第1の高周波:27MHz、100Wの連続波
工程ST12における第2の高周波:400kHz、50Wの連続波
工程ST12の実行時間:110(秒)
<第2の実験における工程ST5の条件>
被加工物の温度:60℃
処理時間:120秒
加熱処理装置のチャンバの圧力:真空引きされた状態、0.1mTorr以下(0.013Pa以下)
【0085】
第2の実験では、方法MT2の実行直後の各被加工物の多孔質膜PLのラインの幅CDIと、方法MT2の実行直後の各被加工物に対してフッ酸処理を施した後の多孔質膜PLのラインの幅CDFとを測定し(
図12参照)、各被加工物の多孔質膜の幅CDIと幅CDFの差、即ちCDI−CDFを求めた。プラズマエッチング時にラジカルによってダメージが与えられた多孔質膜内の領域は、フッ酸溶液によって除去される。したがって、CDI−CDFは、方法MT2におけるプラズマエッチングによる多孔質膜のダメージの尺度として利用できる。第2の実験の結果、第1のガスの分圧が上述の(2−1)〜(2−3)に設定された場合に、CDI−CDFの値はそれぞれ、5.3nm、4.0nm、4.0nmであった。これらのCDI−CDFは非常に小さい値である。したがって、方法MT2によって多孔質膜をラジカルから保護しつつ、当該多孔質膜をエッチングすることが可能であることが確認された。
【0086】
以下、方法MT2の評価のために行った第3の実験について説明する。第3の実験では、プラズマ処理装置10を有する処理システム1を用いて、方法MT2を実行することにより、
図2に示した構造を有する複数の被加工物の多孔質膜のエッチングを行った。各多孔質膜は、比誘電率が2.2のSiOCH膜であり、その膜厚は100nmであった。複数の被加工物の各々のマスクの膜厚は、20nmであり、マスクのパターンは22nmのライン部と22nmのスペースとを有するラインアンドスペースパターンであった。第3の実験において、複数の被加工物のそれぞれに対する工程ST12の実行時の第2の高周波の種別は、以下の(3−1)〜(3−4)に示すように、互いに異なっていた。以下、第3の実験における諸条件を示す。
【0087】
<第3の実験における工程ST11及び工程ST12の条件>
混合ガス中の第1のガス:パーフルオロテトラグリムガス
混合ガス中の第2のガス:NF
3ガス
第1のガスの分圧:4.8mTorr(0.64Pa)
チャンバ12c内のガスの全圧:23mTorr(3.07Pa)
被加工物の温度:−40℃
工程ST11の実行時間:260(秒)
工程ST11の開始時点と工程ST12の開始時点との時間差:60秒
工程ST12における第1の高周波:27MHz、30Wの連続波
工程ST12における第2の高周波:400kHz、100W
(3−1)連続波
(3−2)パルス波(100Hzのパルス周波数、50%のONデューティ)
(3−3)パルス波(100Hzのパルス周波数、20%のONデューティ)
(3−4)パルス波(100Hzのパルス周波数、10%のONデューティ)
工程ST12の実行時間:200(秒)
<第3の実験における工程ST5の条件>
被加工物の温度:60℃
処理時間:120秒
加熱処理装置のチャンバの圧力:真空引きされた状態、0.1mTorr以下(0.013Pa以下)
【0088】
第3の実験では、各多孔質膜PLに形成された開口の上端近傍の幅CDS(
図12参照)を測定した。その結果、第2の高周波の種別が上述の(3−1)〜(3−4)に設定された場合に、CDSの値はそれぞれ、22.48nm、26.45nm、27.78nm、27.76nmであった。この第3の実験から、第2の高周波がパルス波である場合に、多孔質膜PLに形成された開口の上端近傍の幅が広くなることが確認された。したがって、第2の高周波がパルス波である場合には、多孔質膜PLに形成された開口の上端近傍における反応生成物の量が低減されることが確認された。
【0089】
種々の実施形態について説明したが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、方法MT1及び方法MT2の実行に用いることが可能なプラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置に限定されるものではない。方法MT1及び方法MT2の実行においては、誘導結合型のプラズマ処理装置、プラズマの生成のためにマイクロ波といった表面波を用いるプラズマ処理装置といった任意のタイプのプラズマ処理装置を用いることができる。
【0090】
また、上述した実施形態では、第1のガスはパーフルオロテトラグリムガスであった。しかしながら、第1のガスはパーフルオロテトラグリムガス以外のガスであってもよい。以下、第1のガスとして利用されるガスが満たすことが望ましい幾つかの条件についての説明を提供する。この説明に先立って、まず、実験によって得た各種の数値について説明する。
【0091】
実験では、C
6F
6ガス、C
7F
8ガス、C
10F
20O
5ガス(パーフルオロテトラグリムガス)、及び、C
9F
20ガスの各々が多孔質膜内で毛管凝縮を生じる臨界温度及び臨界圧力を得た。この実験では、これらのガスの各々を多孔質膜に供給しつつ、多孔質膜の温度と当該多孔質膜の屈折率の関係をエリプソメトリ法により得た。多孔質膜としては、比誘電率が2.2のSiOCH膜を用いた。実験では、C
6F
6ガス及びC
7F
8ガスの各々の圧力を7.5mTorr(1Pa)に設定し、C
10F
20O
5ガス及びC
9F
20ガスの各々の圧力を3mTorr(4Pa)に設定した。実験によって得た多孔質膜の温度と当該多孔質膜の屈折率の関係を、
図13に示す。実験では、各ガスについて、設定したその圧力を臨界圧力として用い、
図13に示すグラフから、多孔質膜の屈折率が急激に変化している区間の屈折率の中央値に対応する多孔質膜の温度を臨界温度として求めた。
【0092】
また、C
6F
6ガス、C
7F
8ガス、C
10F
20O
5ガス、及び、C
9F
20ガスの各々の常温(25℃)での平面に対する接触角を求めた。さらに、多孔質膜内でC
6F
6ガス、C
7F
8ガス、C
10F
20O
5ガス、及び、C
9F
20ガスの各々の毛管凝縮を生じさせて、真空引きされた環境下で多孔質膜内で液体が維持される時間(以下、「維持時間」という)を、エリプソメトリ法を用いて測定した多孔質膜の屈折率から求めた。
【0093】
各ガスについて、毛管凝縮が発生する臨界温度及び臨界圧力P
C、当該臨界温度での飽和蒸気圧P
S、P
C/P
S、常温での接触角、分子量、及び、維持時間を表1に示す。
【表1】
【0094】
以下、表1を参照しつつ、第1のガスとして利用されるガスが満たことが望ましい幾つかの条件について説明する。
【0095】
第1の条件は、第1のガスとして利用されるガスはC
xF
yO
zの組成を有する分子からなるガスであるという条件である。ここで、x、yは1以上の整数であり、zは0以上の整数である。
【0096】
第2の条件は、第1のガスとして利用されるガスの毛管凝縮が−60℃以上の温度で生じるという条件である。第2の条件が満たされれば、ステージ16に供給される冷媒として、比較的安価な通常の冷媒を用いることができる。
【0097】
第3の条件は、第1のガスとして利用されるガスの常温(25℃)での飽和蒸気圧が1Torr(133.3Pa)以上であるという条件である。第3の条件が満たされれば、多孔質膜内の液体を、常温以上の温度で気化させて、排気することが可能となる。
【0098】
第4の条件は、第1のガスとして利用されるガスの上述の飽和蒸気圧P
Sと臨界圧力P
Cとの差が大きいこと、即ち、P
C/P
Sが小さいという条件である。例えば、ガスのP
C/P
Sが0.05以下又は0.01以下であれば、当該ガスは、第4の条件を満たし得る。
【0099】
なお、P
C/P
Sは、理論的には以下の式(4)、即ちKelvin式で表される。式(4)において、V
mは多孔質膜内の液体のモル体積であり、γは当該液体の表面張力であり、Rは気体定数であり、Tは多孔質膜の絶対温度であり、rは多孔質膜内の空孔の半径であり、θは液体と多孔質膜の接触角である。
【数4】
【0100】
式(4)及び表1を参照すれば明らかなように、P
C/P
Sは接触角θと相関を有する。パーフルオロテトラグリムガス、即ち、C
10F
20O
5ガスから生成される液体の接触角θは、表1に示すように、5°以下である。したがって、第1のガスとして利用されるガスから生成される液体の多孔質膜に対する接触角が5°以下であるという条件が第5の条件として設定され得る。
【0101】
第6の条件は、第1のガスとして利用されるガスの分子中の炭素原子数に対する酸素原子数の比率が0.5以上であるという条件である。第6の条件が満たされれば、多孔質膜のダメージが抑制され、且つ、エッチングによって発生する炭素含有の反応生成物の量が減少される。
【0102】
第7の条件は、第1のガスとして利用されるガスから生成される液体が多孔質膜内で維持される時間が長いという条件である。多孔質膜内の液体の揮発速度f
eは、以下の式(5)によって表される。式(5)において、P
vはガスの毛管凝縮が生じる臨界圧力であり、mはガスを構成する分子の分子量であり、kはボルツマン定数であり、Tは多孔質膜の絶対温度である。
【数5】
式(5)から理解できるように、多孔質膜内の液体の揮発速度f
eは、ガスを構成する分子の分子量が大きいほど小さくなる。即ち、ガスを構成する分子の分子量が大きいほど、当該ガスから生成された液体は多孔質膜内で長時間維持される。第1のガスから生成される液体の維持時間は、C
6F
6ガスに基づく液体の維持時間よりも大きいことが必要である。したがって、第7の条件は、第1のガスとして利用されるガスを構成する分子の分子量が、C
6F
6の分子量、即ち186よりも大きいという条件であってもよい。また、C
9F
20ガスに基づく液体は、数分以上、多孔質膜内で維持されるので、第7の条件は、第1のガスとして利用されるガスを構成する分子の分子量が、488以上であるという条件であってもよい。
【0103】
第1のガスとして利用されるガスは、C
xF
yO
zの組成を有する分子からなるガスのうち、上述した第1〜第7の条件を満たすガスから選択される。当該組成は、6≦x≦22を満たし、より望ましくは、8≦x≦12、及び、0≦z≦10を満たし、より望ましくは、4≦z≦6、及び、2x−2≦y≦2x+2を満たし、より望ましくは、y=2x+2を満たす。