【解決手段】DCDCコンバータ1のコントローラ3は、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinと同期整流回路2Bの出力電流Ioutとに基づいて、同期整流回路2Bの正極側のパワー半導体デバイスQ3をターンオンさせるタイミングの、ハーフブリッジ回路2Aの正極側のパワー半導体デバイスQ1のターンオンに対する位相遅れと、デューティー比とを、メモリのテーブル3Aから決定する。同様に、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinと同期整流回路2Bの出力電流Ioutとに基づいて、同期整流回路2Bの負極側のパワー半導体デバイスQ4をターンオンさせるタイミングの、ハーフブリッジ回路2Aの負極側のパワー半導体デバイスQ2のターンオンに対する位相遅れと、デューティー比とを、メモリのテーブル3Aから決定する。
前記コントローラ(3)は、前記入力電圧(Vin)及び前記出力電流(Iout)の組合わせとこれに対応する前記デューティー比とを対応付けたデューティー比のテーブル(3A)を参照して、前記整流用パワー半導体デバイス(Q3,Q4)をスイッチングさせる際の前記デューティー比を決定する請求項1記載のDCDCコンバータ(1)。
前記コントローラ(3)は、前記入力電圧(Vin)及び前記出力電流(Iout)の組合わせとこれに対応する前記位相とを対応付けた位相のテーブル(3A)を参照して、前記整流用パワー半導体デバイス(Q3,Q4)をスイッチングさせる際の前記位相を決定する請求項1又は2記載のDCDCコンバータ(1)。
前記コントローラ(3)は、前記同期整流回路(2B)の2つの前記整流用パワー半導体デバイス(Q3,Q4)のうち少なくとも一方について、前記整流用パワー半導体デバイス(Q3,Q4)のスイッチングの制御サイクル毎に前記テーブル(3A)を参照する請求項2又は3記載のDCDCコンバータ(1)。
前記位相は、前記ハーフブリッジ回路(2A)の逆変換用パワー半導体デバイス(Q1,Q2)のスイッチングの位相に対する位相遅れによって定義される請求項1、2、3又は4記載のDCDCコンバータ(1)。
前記コントローラ(3)は、前記同期整流回路(2B)の2つの前記整流用パワー半導体デバイス(Q3,Q4)を同一のデューティー比でそれぞれスイッチングさせる請求項1、2、3、4又は5記載のDCDCコンバータ(1)。
【背景技術】
【0002】
近年、パワー半導体デバイスの分野では、GaN(ガリウム・ナイトライド(窒化ガリウム))やSiC(シリコン・カーバイド(炭化珪素))等の化合物半導体材料が注目されている。この種のパワー半導体デバイスは、オン抵抗が小さく、高温環境(例えば、200°C以上)での動作が可能で、特に、電子飽和速度が速くキャリア移動度が高い。このため、高周波でのスイッチング動作が必要な場面での使用が期待されている。
【0003】
例えば、トランスの一次側において漏れインダクタンスと共振用コンデンサとを直列共振させる、非対称ハーフブリッジ型のLLCコンバータを用いた絶縁型DCDCコンバータに、化合物半導体材料を用いたパワー半導体デバイスを利用すると、共振周波数に近い高周波でパワー半導体デバイスをスイッチングさせることができる。これにより、パワー半導体デバイスをソフトスイッチング(ZVS)に近い状態でスイッチングさせて、低損失かつ高出力の電圧変換を実現することができる。
【0004】
ここで、トランスの二次側に現れる高周波の交流電流をダイオードにより整流すると、ダイオードの寄生容量と漏れインダクタンスとの振動が発生するので大きな損失が発生してしまう。この振動成分はスナバ回路によって除去することができるが、振動成分の除去自体が損失を生むので、二次側で発生する損失の根本的な改善にはつながらない。
【0005】
しかも、パワー半導体デバイスが高周波でスイッチングするようになると、スイッチング周波数が振動周波数に近づいて、トランスの二次側を流れるスイッチング周波数に応じた周波数の交流電流から、スイッチング周波数に近い振動成分だけをスナバ回路で除去することが難しくなる場合がある。
【0006】
そこで、トランスの二次側における交流電流の整流にも、化合物半導体材料を用いたパワー半導体デバイスを利用し、これを、トランスの一次側のパワー半導体デバイスに同期してオンオフさせて、トランスの二次側において高周波の交流電流を同期整流することが考えられる。
【0007】
なお、トランスの二次側においてパワー半導体デバイスを用いた同期整流を行うDCDCコンバータとして、トランスの一次側で検出した共振電流のゼロクロスポイントにおいて、二次側のパワー半導体デバイスをスイッチングさせるものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るDCDCコンバータを示す説明図である。
図1に示す本実施形態のDCDCコンバータ1は、非対称ハーフブリッジ型のLLCコンバータを用いた絶縁型DCDCコンバータである。
【0015】
このDCDCコンバータ1は、トランスTの一次側のハーフブリッジ回路2Aに、逆変換(直流から交流への変換)用の正極側及び負極側のパワー半導体デバイスQ1,Q2(請求項中の逆変換用パワー半導体デバイスに相当)を設けている。
【0016】
また、DCDCコンバータ1は、トランスTの二次側の同期整流回路2Bに、整流(交流から直流への整流)用の正極側及び負極側のパワー半導体デバイスQ3,Q4(請求項中の整流用パワー半導体デバイスに相当)を設けている。
【0017】
これらの各パワー半導体デバイスQ1〜Q4は、コントローラ3の制御によってスイッチングされる。
【0018】
ところで、DCDCコンバータ1では、ハーフブリッジ回路2Aに負荷電流が流れると、トランスTの一次側の寄生インダクタンス(励磁インダクタンスLm及び漏れインダクタンスLr)のうち漏れインダクタンスLrと、共振用コンデンサCrとが共振する。
【0019】
例えば、ハーフブリッジ回路2Aの正極側のパワー半導体デバイスQ1をターンオンさせると、
図2の説明図に示すように、トランスTの一次側における漏れインダクタンスLrと共振用コンデンサCrとの共振電流ILrが、パワー半導体デバイスQ1を経由して共振用コンデンサCrに流れる。
【0020】
そして、この共振電流ILrのうち、トランスTの一次側における励磁インダクタンスLmに応じた励磁電流ILmを差し引いた残りの負荷電流(ILr−ILm)が、トランスTの一次側のコイルNpを流れる。このため、トランスTの二次側のコイルNsには、一次側のコイルNpとの巻数比に応じた負荷電流ID1が流れる。
【0021】
この負荷電流ID1は、同期整流回路2Bの正極側のパワー半導体デバイスQ3をターンオンさせることで、出力平滑コンデンサCoutと並列接続した負荷Rloadに出力電流として流れさせることができる。
【0022】
その後、トランスTの一次側における漏れインダクタンスLrと共振用コンデンサCrとの共振が終了すると、一次側のコイルNpを流れる負荷電流(ILr−ILm)はゼロとなり、
図3の説明図に示すように、ハーフブリッジ回路2Aには励磁電流ILmのみが流れる。このため、トランスTの二次側には負荷電流が流れない。
【0023】
そこで、ハーフブリッジ回路2Aと同期整流回路2Bの正極側の各パワー半導体デバイスQ1,Q3をターンオフさせ、さらに、ハーフブリッジ回路2Aの負極側のパワー半導体デバイスQ2をターンオンさせて、共振用コンデンサCrを放電させる。
【0024】
すると、トランスTの一次側における漏れインダクタンスLrと共振用コンデンサCrとが共振し、
図4の説明図に示すように、漏れインダクタンスLrと共振用コンデンサCrとの共振電流ILrが、正極側のパワー半導体デバイスQ1のターンオン時とは逆向きに、共振用コンデンサCrからパワー半導体デバイスQ2に向けて流れる。
【0025】
そして、この共振電流ILrのうち励磁電流ILmを差し引いた残りの負荷電流(ILr−ILm)が、トランスTの一次側のコイルNpを、正極側のパワー半導体デバイスQ1のターンオン時とは逆向きに流れる。このため、トランスTの二次側のコイルNsには、一次側のコイルNpとの巻数比に応じた負荷電流ID2が、正極側のパワー半導体デバイスQ1のターンオン時の負荷電流ID1とは逆向きに流れる。
【0026】
この負荷電流ID2は、同期整流回路2Bの負極側のパワー半導体デバイスQ4をターンオンさせることで、負荷Rloadに出力電流として流れさせることができる。
【0027】
ところで、本実施形態のDCDCコンバータ1では、ハーフブリッジ回路2Aに負荷電流ID1,ID2が流れると、トランスTの一次側の寄生インダクタンス(励磁インダクタンスLm及び漏れインダクタンスLr)のうち漏れインダクタンスLrと、共振用コンデンサCrとが共振する。
【0028】
このため、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2を交互にオンオフさせるスイッチング周波数を、トランスTの二次側のコイルNsに現れる電圧が漏れインダクタンスLrと共振用コンデンサCrとの自己共振によりゼロとなる自己共振周波数に近づけるほど(例えば、1.8〜2.6MHz)、パワー半導体デバイスQ1,Q2をソフトスイッチング(ZVS)に近い状態でスイッチングさせて、スイッチング損失を抑えることができる。
【0029】
そこで、本実施形態では、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2に、GaN(ガリウム・ナイトライド(窒化ガリウム))やSiC(シリコン・カーバイド(炭化珪素))等の化合物半導体材料を用いたパワー半導体デバイスを使用している。化合物半導体材料を用いたパワー半導体デバイスは、オン抵抗が小さく、高温環境(例えば、200°C以上)での動作が可能で、特に、電子飽和速度が速くキャリア移動度が高い。このため、高周波(例えば、1MHz以上)でスイッチングさせることができる。
【0030】
また、ハーフブリッジ回路2Aの化合物半導体材料を用いたパワー半導体デバイスQ1,Q2を高周波の共振周波数の周期でオンオフさせる場合は、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4も、トランスTの一次側における漏れインダクタンスLrと共振用コンデンサCrとの共振電流ILrと同期させて、高周波の周期で交互にオンオフさせる必要がある。
【0031】
このため、本実施形態では、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4にも、化合物半導体材料を用いたパワー半導体デバイスを使用している。
【0032】
ところで、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンオフを共振電流ILrに同期させる場合、従来のように、ハーフブリッジ回路2Aの負荷電流のゼロクロスポイントで同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4をオンオフさせる制御を行うと、制御遅れによって同期が成立しない可能性がある。
【0033】
そこで、本実施形態のDCDCコンバータ1では、コントローラ3が、メモリに記憶させたテーブル3A(
図1参照)を参照して、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンオフのタイミングとデューティー比とを決定する。そして、決定したタイミング及びデューティー比で、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4をオンオフさせる。
【0034】
コントローラ3が参照するテーブル3Aは、
図5の説明図にグラフの形式で示すように、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧(
図1のVin)と、同期整流回路2Bの出力電流(
図1のIout)とから、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2のオンオフに対する同期整流回路のパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンオフの位相遅れ(図中の細線、請求項中の位相のテーブルに相当)及びオンデューティー、即ち、デューティー比(図中の太線、請求項中のデューティー比のテーブルに相当)を割り出すものである。以下、このテーブル3Aについて説明する。
【0035】
まず、コントローラ3が参照するテーブル3Aにおいて、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧と同期整流回路の出力電流とから、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2のオンオフに対する同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンオフの位相遅れを割り出すことができる点について説明する。
【0036】
本実施形態のDCDCコンバータ1のハーフブリッジ回路2Aにおけるハーフブリッジの出力方形波は、
図6の説明図に示す交流等価回路のように、ハーフブリッジの出力方形波とエネルギーが等しい振幅電圧の単一正弦波による交流電圧源Vi.FHAで表すことができる。
【0037】
このとき、交流等価回路の出力電圧Vo.FHAは、DCDCコンバータ1のハーフブリッジ回路2Aにおける共振用コンデンサCr及び寄生インダクタンス(励磁インダクタンスLm及び漏れインダクタンスLr)とn:m理想トランスとからなる共振ネットワークを経て二次側に伝達される振幅電圧で表すことができる。
【0038】
なお、交流等価負荷抵抗Ro.ACは、DCDCコンバータ1の負荷Rloadを用いて、
図7の上段に示す計算式によって表すことができる。
【0039】
また、共振ネットワークの伝達関数H(s)は、sをラプラス演算子、Vi.FHA(s)を等価交流入力電圧、Vo.FHA(s)を等価交流出力電圧、Zin(s)を交流等価回路の入力インピーダンスとした場合、
図7の中段に示す計算式によって表すことができる。
【0040】
さらに、共振ネットワークの伝達関数H(s)の計算式における入力インピーダンスZin(s)は、等価交流入力電流をIrt(s)とした場合、
図7の下段に示す計算式によって表すことができる。
【0041】
そこで、
図7の各計算式を用いた計算により、交流等価負荷抵抗Ro.ACが1Ωのときの、交流等価回路の入力電圧Vi.FHAに対する出力電圧Vo.FHAの位相遅れを、交流等価回路の入力周波数(交流電圧源Vi.FHAの等価交流入力電圧Vi.FHA(s)の周波数)を1.0MHzから3.0MHzまで変化させて求めた。その結果を
図8のグラフに示す。なお、
図8のグラフには、交流等価負荷抵抗Ro.ACが0.1Ω、0.5Ω、10Ωのときの結果も合わせて示している。
【0042】
また、
図7の各計算式を用いた計算により、交流等価回路の入力周波数が2.5MHzのときの、交流等価回路の入力電圧Vi.FHAに対する出力電圧Vo.FHAの位相遅れを、交流等価負荷抵抗Ro.ACを0.1Ωから100Ωまで変化させて求めた。その結果を
図9のグラフに示す。
【0043】
なお、
図7の各計算式を用いた計算には、
図1のハーフブリッジ回路2Aの漏れインダクタンスLrと共振用コンデンサCrとが共振するときの各パラメータを用いた。
【0044】
そして、
図8及び
図9の各グラフに示す結果から明らかなように、交流等価回路の入力電圧Vi.FHAに対する出力電圧Vo.FHAの位相遅れ、即ち、出力電圧Vo.FHAの位相角は、交流等価回路の入力周波数と交流等価負荷抵抗Ro.ACとに依存して変化する。
【0045】
ここで、本実施形態のDCDCコンバータ1の同期整流回路2Bの出力が定電圧であるとすると、交流等価回路の出力電圧Vo.FHAも定電圧となるので、交流等価回路の入力周波数は、交流等価回路の入力電圧Vi.FHAと交流等価負荷抵抗Ro.ACとによって相関することができる。また、交流等価負荷抵抗Ro.ACは、定電圧の交流等価回路の出力電圧Vo.FHAを除して得られる交流等価回路の出力電流と読み替えることができる。
【0046】
このため、交流等価回路の入力電圧Vi.FHAの位相と出力電流の位相との間には、共振ネットワークによって変化する相関、即ち、DCDCコンバータ1のハーフブリッジ回路2Aの入力電圧及び同期整流回路の出力電流に対する相関がある。
【0047】
したがって、DCDCコンバータ1のハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2のオンオフに対する、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンオフの位相遅れには、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vin及び同期整流回路2Bの出力電流Ioutに対する相関があることが分かった。
【0048】
次に、コントローラ3が参照するテーブル3Aにおいて、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinと同期整流回路2Bの出力電流Ioutとから、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンデューティー(デューティー比)を割り出すことができる点について説明する。
【0049】
図1のDCDCコンバータ1のハーフブリッジ回路2Aでは、
図3に示すように、漏れインダクタンスLrによる共振電流ILrが全て、励磁インダクタンスLmによる励磁電流ILmとしてハーフブリッジ回路2Aを流れ、負荷電流(ILr−ILm)がトランスTの一次側のコイルNpを流れない期間(
図3のT2の期間)がある。この期間T2は、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4をオフさせておくことが望ましい。
【0050】
ここで、共振電流ILr及び励磁電流ILmをそれぞれ近似することについて検討する。まず、共振電流ILrについては、ハーフブリッジ回路2Aの漏れインダクタンスLr、共振用コンデンサCr及び合成抵抗RcomからなるLCR直列共振回路の電流ILr*を、共振電流ILrを近似した電流とする。
【0051】
なお、合成抵抗Rcomは、ハーフブリッジ回路2Aの励磁インダクタンスLmのインピーダンスとn^2Ro.ACとの並列合成抵抗とする。また、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧は、振幅Vinの交流正弦波とする。
【0052】
次に、励磁電流ILmについては、その傾きが励磁インダクタンスLmによって定まるので、傾きが一定の三角波ILM*を、励磁電流ILmを近似した電流とする。
【0053】
そして、三角波ILM*の傾きが、電流ILr*のゼロクロスポイントを起点にして変化するものとして、|三角波ILM*|<|電流ILr*|となる期間を、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンデューティーの期間とする。
【0054】
このようにして決定した、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンデューティーの期間は、トランスTの一次側のコイルNpを負荷電流(ILr−ILm)が流れる期間(
図2のT1の期間)と、良好な精度で一致する。
【0055】
よって、上述した、共振電流ILr及び励磁電流ILmをそれぞれ近似した、LCR直列共振回路の電流ILr*と、傾きが一定の三角波ILM*とを用いて、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンデューティー(デューティー比)を割り出すことができることが分かった。
【0056】
ここで、単一のインダクタLm*による三角波ILM*の振幅の大きさは、トランスTの一次側のコイルNpを負荷電流(ILr−ILm)が流れる期間(
図2のT1の期間)、即ち、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のデューティー比(ダイオード導通角)に依存する。
【0057】
一方、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2のオンオフ周期(スイッチング周波数Fsw)は、本実施形態のDCDCコンバータ1が、同期整流回路2Bの出力電圧Voutを定電圧とするものであるとすると、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinの変化に応じて、ハーフブリッジ回路2Aの出力電圧Voutを一定にするように変化する。
【0058】
そして、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinの振幅の大きさは、励磁インダクタンスLmの実効抵抗と、同期整流回路2Bの負荷Rloadにおけるn^2Ro.ACとに依存して変化する。
【0059】
以上から、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のデューティー比も、共振ネットワークによって変化する相関、即ち、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vin及び同期整流回路2Bの出力電流Ioutに対する相関があることが分かった。
【0060】
そこで、本実施形態のDCDCコンバータ1では、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinと同期整流回路2Bの出力電流Ioutと、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2のオンオフに対する同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンオフの位相遅れ及びデューティー比との相関を、予め求めてテーブル化し、
図5に示すテーブル3Aとしてコントローラ3のメモリに記憶させておくようにした。
【0061】
なお、本実施形態では、
図5に示すように、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinが200V、250V、300Vの各場合について、同期整流回路2Bの出力電流Ioutに対応する、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2のオンオフに対する同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンオフの位相遅れ及びデューティー比の相関を、テーブル3Aにおいて定義するものとした。
【0062】
しかし、テーブル3Aにおいて同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のオンオフの位相遅れ及びデューティー比の相関を定義する、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vin及び同期整流回路2Bの出力電流Ioutの組み合わせのパターンは、
図5に示す本実施形態のパターンに限定されない。例えば、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinのパターンを、
図5に示す3パターン以上に増やしてもよい。
【0063】
このため、コントローラ3は、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinと同期整流回路2Bの出力電流Ioutとに基づいて、同期整流回路2Bの正極側のパワー半導体デバイスQ3をターンオンさせるタイミングの、ハーフブリッジ回路2Aの正極側のパワー半導体デバイスQ1のターンオンに対する位相遅れと、デューティー比とを、メモリのテーブル3Aから決定する。
【0064】
同様に、コントローラ3は、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinと同期整流回路2Bの出力電流Ioutとに基づいて、同期整流回路2Bの負極側のパワー半導体デバイスQ4をターンオンさせるタイミングの、ハーフブリッジ回路2Aの負極側のパワー半導体デバイスQ2のターンオンに対する位相遅れと、デューティー比とを、メモリのテーブル3Aから決定する。
【0065】
そして、コントローラ3は、決定したタイミングにおいて、同期整流回路2Bの正極側及び負極側の各パワー半導体デバイスQ3,Q4をそれぞれターンオンさせ、かつ、決定したデューティー比の期間後に各パワー半導体デバイスQ3,Q4をそれぞれターンオフさせる。
【0066】
このため、コントローラ3が、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2を、漏れインダクタンスLrと共振用コンデンサCrとの自己共振周波数前後の周波数(例えば、1.8〜2.6MHz)で交互にオンオフさせても、共振電流ILrの検出結果に基づいた制御のような制御遅れを起こすことなく、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4を高周波周期でオンオフさせて、両者の同期を確実に成立させることができる。
【0067】
なお、テーブル3Aを参照してコントローラ3が決定するパワー半導体デバイスQ3,Q4のターンオンの位相遅れの大きさと、デューティー比とは、ハーフブリッジ回路2Aの入力電圧Vinと同期整流回路2Bの出力電流Ioutとが変わらない限り同じ値となる。
【0068】
このため、コントローラ3は、パワー半導体デバイスQ3,Q4をそれぞれターンオンさせる度に、パワー半導体デバイスQ3,Q4のターンオンの位相遅れの大きさとデューティー比とを、テーブル3Aを参照して決定してもよい。
【0069】
あるいは、単位時間毎にテーブル3Aを参照して、パワー半導体デバイスQ3,Q4のターンオンの位相遅れの大きさとデューティー比とを決定してもよく、位相遅れの大きさとデューティー比とを更新する制御周期毎に、テーブル3Aを参照して新たなターンオンの位相遅れの大きさとデューティー比とを決定し、同じ制御周期内では、決定した位相遅れとデューティー比を、パワー半導体デバイスQ3,Q4をターンオンさせる度に繰り返して用いてもよい。
【0070】
また、コントローラ3は、メモリの同じテーブル3Aを参照して、パワー半導体デバイスQ1のターンオンに対するパワー半導体デバイスQ3のターンオンの位相遅れ及びパワー半導体デバイスQ3のデューティー比と、パワー半導体デバイスQ2のターンオンに対するパワー半導体デバイスQ4のターンオンの位相遅れ及びパワー半導体デバイスQ4のデューティー比とを、それぞれ決定する。
【0071】
このため、コントローラ3は、パワー半導体デバイスQ1のターンオンに対するパワー半導体デバイスQ3のターンオンの位相遅れと、パワー半導体デバイスQ2のターンオンに対するパワー半導体デバイスQ4のターンオンの位相遅れとのうちいずれか一方を、メモリのテーブル3Aを参照して決定し、他方を、決定した位相からさらに180゜遅れた位相に決定してもよい。
【0072】
なお、この180゜とは、ハーフブリッジ回路2Aの正極側のパワー半導体デバイスQ1と負極側のパワー半導体デバイスQ2とのうち、一方がターンオンしてから他方がターンオンするまでの位相差である。
【0073】
同様に、コントローラ3は、パワー半導体デバイスQ1のターンオンに対するパワー半導体デバイスQ3のディーティー比と、パワー半導体デバイスQ2のターンオンに対するパワー半導体デバイスQ4のディーティー比ととのうちいずれか一方を、メモリのテーブル3Aを参照して決定し、他方を、決定したデューティー比と同じデューティー比に決定してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、コントローラ3のメモリのテーブル3Aが、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2のターンオンの位相に対する、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のターンオンの位相遅れを定義したものである場合について説明した。
【0075】
しかし、同期整流回路2Bのパワー半導体デバイスQ3,Q4のターンオンの位相遅れを、ハーフブリッジ回路2Aのパワー半導体デバイスQ1,Q2のターンオンの位相以外の基準となる位相に対する位相遅れとして、コントローラ3のメモリのテーブル3Aに定義するようにしてもよい。
【0076】
さらに、本実施形態では、ハーフブリッジ回路2Aの正極側及び負極側の各パワー半導体デバイスQ1,Q2と、同期整流回路2Bの正極側及び負極側の各パワー半導体デバイスQ3,Q4とに、化合物半導体材料を用いたパワー半導体デバイスをそれぞれ利用する場合を例に取って説明した。
【0077】
しかし、本発明は、ハーフブリッジ回路2A及び同期整流回路2Bのどちらか一方又は両方のパワー半導体デバイスQ1〜Q4に、例えばIGBTやパワーMOSFET等、化合物半導体材料を用いていないパワー半導体デバイスを利用する場合にも、広く適用可能である。