【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るポーラスコンクリートについて説明する。
【0018】
本実施形態のポーラスコンクリートは、
早強ポルトランドセメントと、粗骨材と、細骨材と、減水剤と、消泡剤と、水とを含有する組成物が硬化したものである。
【0019】
前記セメントとしては、従来公知の早強ポルトランドセメントが挙げられる。かかる早強ポルトランドセメントとしては、例えば、JIS R 5210(2015)に記載の早強ポルトランドセメント、及び、超早強ポルトランドセメントが挙げられる。早強ポルトランドセメントには、早強ポルトランドセメント(低アルカリ)が含まれ、超早強ポルトランドセメントには、超早強ポルトランドセメント(低アルカリ)が含まれる。
【0020】
前記粗骨材としては、従来公知のコンクリート材料と使用される粗骨材が挙げられる。かかる粗骨材としては、例えば、道路用砕石の6号砕石および7号砕石が挙げられ、その粒径は、2.5mm〜15mmであることが好ましい。
【0021】
前記細骨材としては、従来公知のコンクリート材料と使用される細骨材が挙げられる。かかる細骨材としては、例えば、JIS A 5005(2009)コンクリート用砕石及び砕砂、JIS A 5308(2009)の附属書Aレディーミクストコンクリート用骨材に記載される細骨材が挙げられ、その粗粒率は、1.70〜3.20であることが好ましい。
【0022】
前記減水剤としては、従来公知の減水剤が挙げられる。
かかる減水剤は、粉体状であることが好ましい。減水剤が粉体状であることによって、ポーラスコンクリートに含有される他の粉体材料と同じ経路でミキサに投入し得るため、液体状の場合よりも作業性に優れる。
【0023】
前記減水剤は、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸系ポリマーと、マレイン酸系ポリマーとを含有していることが好ましい。
【0024】
ここで、早強ポルトランドセメントと、粗骨材と、細骨材と、減水剤と、消泡剤と、水とを共に混練し、得られた混練物を敷き均して締め固めることによってポーラスコンクリートを舗設する際、打設箇所への運搬時間の制約、打設現場での待機時間等によるフレッシュ性状の変動、施工性不良などの障害が発生するおそれがある。また、フレッシュ性状が変動すると、発現する強度に悪影響を及ぼすおそれがある。
しかし、減水剤が、(メタ)アクリル酸系ポリマーと、マレイン酸系ポリマーとを含有することによって、上記混練物のフレッシュ性状が変動することを、抑制することができ、さらに消泡剤を併用することによって、発現する強度に悪影響を及ぼすことを、抑制し得る。
従って、より確実に、十分な早期強度の発現が可能となる。
【0025】
前記(メタ)アクリル酸系ポリマー、及び、マレイン酸系ポリマーは、粉体状であることが好ましい。
【0026】
前記(メタ)アクリル酸系ポリマー(A)は、アクリル酸またはメタクリル酸をモノマー構成単位とするポリマーを意味する。
かかる(メタ)アクリル酸系ポリマー(A)としては、粉体セメンントへの分散性能に優れることから、(a)下記一般式(I)で表される単量体と、(b)メタクリル酸又はその塩と、(c)下記一般式(II)で表される単量体とを共重合してなる重量平均分子量5,000〜100,000の範囲である共重合体のアルカリ土類金属及び多価金属から選ばれる一種又は、二種以上の塩からなる(メタ)アクリル酸系ポリマーが好ましい。
【0027】
上記(a)の単量体は、下記一般式(I)で表されるものである。
CH
2=C(R
1)COO(R
2O)
nR
3 ・・・(I)
ここで、上記式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、例えば、−CH
2CH
2O−、−CH
2CH(CH
3)O−、−CH
2CH(CH
2CH
3)O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−等が挙げられる。また、nは、オキシアルキレン基の付加モル数を示し、この付加モル数(n)は5〜40の整数であり、好ましくは7〜35、より好ましくは9〜30である。また、R
3は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
当該(a)単量体の使用量は、上記(a)、(b)及び(c)の合計量に対して、好ましくは3〜25%モルであり、より好ましくは4〜20モル%、さらに好ましくは5〜17モル%である。
【0028】
上記(b)の単量体は、メタクリル酸及びその中和塩から選ばれる単量体である。
かかる(b)単量体としては、例えば、メタクリル酸又はそのナトリウムなどの1価金属塩、カルシウムなどの2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などの部分中和塩が挙げられる。また、これらの単独又は2種以上の組み合わせであってもよい。
当該(b)単量体の使用量は、上記(a)、(b)及び(c)の合計量に対して、55〜75モル%であり、好ましくは60〜75モル%である。
また、上記単量体(a)と単量体(b)のモル比(a)/(b)は、混和初期のセメント分散性能に優れることを考慮して、好ましくは0.05〜0.4、より好ましくは0.05〜0.3とすることが望ましい。
【0029】
上記(c)の単量体は、下記一般式(II)で表されるものである。
CH
2=C(R
4)COOR
5 ・・・(II)
ここで、上記式(II)中、R
4は水素原子又はメチル基であり、R
5は炭素数1〜5の水酸基により置換されていてもよいアルキル基である。
当該(c)単量体の使用量は、上記(a)、(b)及び(c)の合計量に対して、好ましくは5〜35モル%であり、より好ましくは5〜25モル%である。
【0030】
また、上記(メタ)アクリル酸系ポリマー(A)には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、共重合可能な他の単量体を適宜少量用いてもよい。このような他の単量体としては、例えば、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、マレイン酸、イソブチレン及びそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。また、これらの1種の単独又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
上記各単量体を共重合してなる共重合体の重量平均分子量は、セメントへの分散性能の点から、好ましくは5,000〜100,000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法、ポリエチレングリコール換算)、より好ましくは10,000〜70,000の範囲のものである。
上記した共重合体の塩を調製するのに用いられるアルカリ土類金属、多価金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等が挙げられるが、製造の容易さ及び価格の点からカルシウムが好ましい。なお、ナトリウム等の一価金属塩は粉体ではあるが、アルカリ土類金属塩や多価金属塩と比較して若干経時安定性が悪く、比較的好適には用いられ難い。
【0032】
上記共重合体の塩の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、重合に用いるメタクリル酸を予めアルカリ土類金属塩又は多価金属塩とした後で共重合する方法、並びに、メタクリル酸を用いた共重合体溶液をアルカリ土類金属、多価金属の塩又は水酸化物と反応させる方法、更に、共重合体塩の溶液をイオン交換する方法(例えば、メタクリル酸Naをモノマーとした場合、共重合後、NaとCaのイオン交換を行う)などが挙げられる。
【0033】
上記共重合体〔(メタ)アクリル酸系ポリマー(A)〕の粉体化の方法は、特に限定されず、共重合体塩の溶液を蒸発乾固した後粉砕する方法、共重合体塩の溶液を噴霧乾燥する方法、共重合体塩の容液を共重合体の貧溶媒に滴下し粉体を析出、濾過、乾燥する方法等、公知の粉体化方法などが挙げられる。
【0034】
前記マレイン酸系ポリマー(B)とは、マレイン酸をモノマーの構成単位とするポリマーを意味する。
かかるマレイン酸系ポリマー(B)としては、セメントへの分散性能に優れる点から、(d)下記一般式(III)で示される単量体と、(e)無水マレイン酸又はその加水分解物、及び/又は、(f)下記一般式(IV)で示されるポリアルキレングリコール系化合物の無水マレイン酸エステルとを共重合してなる重量平均分子量3,000〜100,000の範囲である共重体の、アルカリ土類金属及び多価金属から選ばれる一種又は二種以上の塩からなるマレイン酸系ポリマーが挙げられる。
【0035】
上記(d)の単量体は、下記一般式(III)で表されるものである。
CH
2=C(R
6)−(CH
2)
xO−(R
7O)
y−R
8 ・・・(III)
ここで、上記式(III)中R
6は、水素原子又はメチル基を示し、R
7Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、例えば、−CH
2CH
2O−、−CH
2CH(CH
3)O−、−CH
2CH(CH
2CH
3)O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−等が挙げられる。また、xは0又は1を示し、yは1〜100の整数、好ましくは1〜80、より好ましくは10〜50を表す。またR
8は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
当該(d)単量体の使用量は、上記(d)、(e)及び(f)の合計量に対して、好ましくは10〜90モル%であり、より好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%である。
【0036】
また、上記(e)の単量体としては、無水マレイン酸又はその加水分解物が挙げられる。また、これらの1種の単独又は2種以上の組み合わせであってもよい。
当該(e)単量体の使用量は、上記(d)、(e)及び(f)の合計量に対して、好ましくは40〜70モル%であり、より好ましくは45〜70モル%である。
【0037】
上記(f)の単量体としては、下記一般式(IV)で示されるポリアルキレングリコール系化合物の無水マレイン酸エステルが挙げられる。
R
9―(R
10O)
z−W ・・・(IV)
ここで、上記式(IV)中、R
9は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。また、R
10Oは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基、例えば、−CH
2CH
2O−、−CH
2CH(CH
3)O−、−CH
2CH(CH
2CH
3)O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−等が挙げられ、zは1〜100の整数を表し、好ましくは1〜70、更に好ましくは1〜50を表す。更に、Wは、水素原子又はR
11NH
2(R
11はアルキレン基を示す)を表す。
当該(f)単量体の使用量は、上記(d)、(e)及び(f)の合計量に対して、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%である。
【0038】
また、マレイン酸系ポリマー(B)には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、共重合可能な他の単量体を適宜少量用いてもよい。また、これらの1種の単独又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
上記各単量体を共重合してなる共重合体〔マレイン酸系ポリマー(B)〕の重量平均分子量は、セメントへの分散保持性能の点から、好ましくは、3,000〜100,000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法、ポリエチレングリコール換算)、より好ましくは、10,000〜70,000の範囲のものである。
上記した共重合体の塩を調製するにはアルカリ金属を用いることができるが、好ましくは、アルカリ土類金属、多価金属である。例えば、アルカリ土類金属、多価金属としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸系ポリマー(A)の場合と同様、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等が挙げられ、製造の容易さ、価格の点からカルシウムが好ましい。また、粉体化の方法としては、前述の〔(メタ)アクリル酸系ポリマー(A)〕の粉体化で記載した従来公知の粉体化方法により製造できる。
【0040】
前記(メタ)アクリル酸系ポリマー(A)及びマレイン酸系ポリマー(B)の合計配合量は、ポーラスコンクリートに含有される水を除く残りの成分の合計残配合量に対して、0.01〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.03〜1.0質量%である。
かかる合計配合量が0.01質量%以上であることによって、作業性に悪影響を及ぼすことを抑制し、一方2.0質量%以下であることによって、所望する空隙率を有するポーラスコンクリートを製造し易くなり、経済的にも有利となる。
【0041】
上記減水剤として、2種類以上の減水剤を用いる場合には、これら減水剤が予め混合された混合物として用いても、各減水剤を別々に用いてもよい。
例えば、上記減水剤が、(メタ)アクリル酸系ポリマーと、マレイン酸系ポリマーとを含有する場合には、これらが予め混合された混合物を用いることができ、該混合物として、市販品を用いてもよい。
【0042】
前記消泡剤としては、例えば、粉体状の消泡剤が挙げられる。
かかる粉体状の消泡剤は、粉末型消泡剤とも呼ばれる。かかる粉体状の消泡剤としては、例えば、シリカ等に鉱物油を担持させた鉱物油系の消泡剤や、シリコーン系の消泡剤等が挙げられる。
【0043】
前記消泡剤の配合量は、早強ポルトランドセメント(100質量%)に対して0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.2〜0.3質量%であることが好ましい。
【0044】
なお、上記消泡剤は、他の添加材料と共に予め混合した混合物として用いてもよい。
【0045】
本実施形態のポーラスコンクリートの製造に用いる水の量は、例えば、ポーラスコンクリートに含有される成分のうち、水を除いた残りの成分の合計100質量部に対して、好ましくは4.0〜6.0質量部、より好ましくは4.7〜5.4質量部である。
【0046】
本実施形態のポーラスコンクリートは、材齢1日での曲げ強度が、4.5N/mm
2以上であることが好ましい。
【0047】
かかる構成によれば、従来のような特殊な材料を配合しなくても、より十分な早期強度の発現が可能となる。
【0048】
次に、本実施形態のポーラスコンクリートの製造方法について説明する。
【0049】
本実施形態のポーラスコンクリートの製造方法では、セメント、粗骨材、細骨材と、減水剤と、消泡剤と、その他の添加材と、水とを混練し、得られた混練物(組成物)を敷き均し、締固めることによってポーラスコンクリートが作製される。
【0050】
本実施形態のポーラスコンクリートの製造方法において、ポーラスコンクリート用の組成物の混練に用いるミキサは、特に限定されるものではなく、例えば、二軸強制練りミキサ、パン型ミキサ、傾胴式ミキサ等の従来公知のミキサによって上記組成物を混練することが可能である。
また、混練方法も、特に限定されるものではなく、例えば、材料を一括してミキサに投入して混練する方法、水以外の材料をミキサに投入し空練りした後に、水を投入して混練する方法等が挙げられる。
本実施形態のポーラスコンクリートの製造方法において、水以外の材料のミキサヘの投入方法としては、当該水以外の材料を直接ミキサヘ投入する方法、当該水以外の材料の所定量を、アルカリ解砕性を有するペーパーで予めパック化し、ミキサヘ投入する方法、その他の添加材と共にミキサに投入する方法等の任意の方法を採用し得る。
【0051】
以上の通り、本実施形態のポーラスコンクリートは、
早強ポルトランドセメントと、粗骨材と、細骨材と、減水剤と、消泡剤と、水とを含有する組成物が硬化したものである。
【0052】
かかる構成によれば、減水剤を用いることによって、その分、モルタルの流動性が向上し、消泡剤を用いることによって、その分、モルタル中の気泡が低下することになる。
かかる流動性の向上と、気泡の低下とが相俟って、モルタルが粗骨材の表面に、より十分に付着し易くなり、しかも、モルタルと粗骨材との界面の気泡も低下する。
これにより、粗骨材同士の間に介されるモルタルと、各粗骨材との結合力が増加するため、ポーラスコンクリート全体として、粗骨材の骨格の強度が増加する。
従って、従来のような特殊な材料を配合しなくても、十分な早期強度の発現が可能となる。
【0053】
本実施形態のポーラスコンクリートにおいては、
前記減水剤が、(メタ)アクリル酸系ポリマーと、マレイン酸系ポリマーとを含有していてもよい。
【0054】
減水剤が、(メタ)アクリル酸系ポリマーと、マレイン酸系ポリマーとを含有することによって、上記混練物のフレッシュ性状が変動することを、抑制することができ、さらに消泡剤を併用することによって、発現する強度に悪影響を及ぼすことを、抑制し得る。
従って、より確実に、十分な早期強度の発現が可能となる。
【0055】
本実施形態のポーラスコンクリートにおいては、
材齢1日での曲げ強度が、4.5N/mm
2以上であることが好ましい。
【0056】
かかる構成によれば、従来のような特殊な材料を配合しなくても、より十分な早期強度の発現が可能となる。
【0057】
本実施形態によれば、従来のような特殊な材料を配合しなくても、十分な早期強度の発現を可能とするポーラスコンクリートが提供される。
【0058】
本実施形態のポーラスコンクリートは以上の通りであるが、本発明は、上記実施形態に特に限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(実験例1)モルタルでの検討
【0061】
(1)配合
使用材料を表1に示し、ベースのコンクリート配合(消泡剤抜き)を表2に示し、粗骨材を除いたモルタルの配合を表3に示す。表3において、%は、質量%である。
表1において、混和材(P)として、粉体状の減水剤(SP1)及び(SP2)と、無機系粉体とを予め混合したものを用いた。
なお、減水剤(SP1)は、(メタ)アクリル酸系ポリマーであり、減水剤(SP2)は、マレイン酸系ポリマーであり、混和材(P)において、(メタ)アクリル酸系ポリマー(SP1)とマレイン酸系ポリマー(SP2)との配合比は、質量比で、1:2であった。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
(2)モルタルの製造
上記表3に示す配合で1.5L/バッチなるように、各原料をホバートミキサ(HOBART社製)に投入した。具体的には、セメント(C)と混和材(P)と消泡剤(D1)とを先に空練りした後、JIS R 5201(2009)に準拠して、各原料を投入し、練り混ぜを行った。さらに具体的には、セメント(C)と混和材(P)と消泡剤(D1)とを投入した後、低速(自転速度:毎分140±5回転、公転速度:62±5回転)で10秒間空練りし、水(W)をさらに投入した後、低速で30秒間練り混ぜ、この練り混ぜ後、ミキサの回転を続けながら細骨材(S)をさらに投入して低速で30秒間練り混ぜた後、高速(自転速度:毎分285±10回転、公転速度:125±10回転)で30秒間練り混ぜ、この練り混ぜ後、90秒間停止し(最初の30秒間で内部を掻き落とし)、この停止後、再び高速で60秒間練り混ぜることによって、モルタルを製造した。
【0066】
(3)試験
得られたNo.1〜No.4のモルタルを用いて、下記表4に示す試験項目について評価し、基準の配合(No.1)と比較した。なお、No.5のモルタルは練り混ぜることができなかった。
試験結果のうち、粘度の降伏値を
図1、塑性粘度を
図2に示し、モルタルフローを
図3に示し、15打フローを
図4に示し、容積質量を
図5に示し、圧縮強度(実測値)を
図6に示し、圧縮強度(基準品(No.1)の圧縮強度を100としたときの各モルタルの圧縮強度の比率)を
図7に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
(4)試験結果
図1、
図2に示すように、No.1〜No.4の結果から、消泡剤の添加量が多い程、降伏値及び塑性粘度が大きくなることがわかった。また、超早強ポルトランドセメントを用いたNo.5では、粘度が高くなり過ぎて練り混ぜることができなかった。
【0069】
(実験例2)ポーラスコンクリートでの検討
【0070】
(1)配合
上記表1に示す材料を使用した。上記表2に示すコンクリート配合(消泡剤抜き)に基づいて設定した、下記表5に示すコンクリート配合を使用した。表5において、%は、質量%である。
なお、上記モルタルの製造において、超早強ポルトランドセメントを用いたNo.5では練り混ぜることができなかったため、下記No.11では、混和材(P)に加えて、減水剤(SP1)を、セメント(100質量%)に対して0.15質量%(C×0.15%)となるように配合した。
【0071】
【表5】
【0072】
(2)ポーラスコンクリートの製造
上記表5に示す配合で、25L/バッチなるように、各原料全てを二軸強制練りミキサ(関西機器社製)に投入し、30秒間空練りした後、水を投入して120秒間練り混ぜた。得られた混練物を型枠(100×100×400mmの角柱型枠)に投入(打設)することによって、ポーラスコンクリートを製造した。
【0073】
(3)試験
得られたNo.7〜15のポーラスコンクリートを用いて、下記表6に示す試験項目について評価し、基準の配合(No.7)と比較した。
試験結果を下記表7に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
(4)試験結果
ダレ率、及び、締固めについては、No.7〜N.13のいずれも、目標範囲を満たし、これらは、ほぼ同様のフレッシュ性状であった。
【0077】
曲げ強度については、No.7〜No.11の結果から、消泡剤を添加することによって、また、その添加量が多い程、材齢1日での曲げ強度が大きくなることがわかった。
No7、No.11〜No.13の結果から、超早強ポルトランドセメントを用いた場合(No.13)であっても、消泡剤を添加することによって、材齢1日での曲げ強度が大きくなることがわかった。
No.14、No.15の結果から、減水剤(SP1、SP2)を減水剤(SP3)に変更しても、消泡剤を添加することによって曲げ強度が大きくなることがわかった。
減水剤と共に消泡剤を配合したNo7〜No.13、No.15では、いずれも材齢1日での曲げ強度が4.5N/mm
2以上であり、早期の交通開放を実現し得ることがわかった。
また、モルタルでは、減水剤に加えて消泡剤を配合しても、強度の向上にそれ程寄与しない(圧縮強度がそれ程向上しない)のに対し、ポーラスコンクリートでは、減水剤に加えて消泡剤を配合することによって、曲げ強度が顕著に増加する(強度の向上に顕著に寄与する)ことがわかった。
【0078】
(実験例3)モルタルでの検討
【0079】
(1)配合
使用材料を表8に示し、ベースのコンクリート配合(消泡剤抜き)を表9に示し、粗骨材を除いたモルタルの配合を表10に示す。表10において、%は、質量%である。
表8において、混和材(P)として、粉体状の減水剤(SP1)及び(SP2)と、無機系粉体とを予め混合したものを用いた。
なお、減水剤(SP1)は、(メタ)アクリル酸系ポリマーであり、減水剤(SP2)は、マレイン酸系ポリマーであり、混和材(P)において、(メタ)アクリル酸系ポリマー(SP1)とマレイン酸系ポリマー(SP2)との配合比は、質量比で、1:2であった。
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
(2)モルタルの製造
上記表10に示す配合で1.5L/バッチなるように、各原料をホバートミキサ(HOBART社製)に投入した。具体的には、セメント(C)と混和材(P)と消泡剤(D2〜D4)とを先に空練りした後、JIS R 5201(2009)に準拠して、各原料を投入し、練り混ぜを行った。さらに具体的には、セメント(C)と混和材(P)と消泡剤(D2、D3)とを投入した後、低速(自転速度:毎分140±5回転、公転速度:62±5回転)で10秒間空練りし、水(W)、または、水(W)及び消泡剤(D4、D5)をさらに投入した後、低速で30秒間練り混ぜ、この練り混ぜ後、ミキサの回転を続けながら細骨材(S)をさらに投入して低速で30秒間練り混ぜた後、高速(自転速度:毎分285±10回転、公転速度:125±10回転)で30秒間練り混ぜ、この練り混ぜ後、90秒間停止し(最初の30秒間で内部を掻き落とし)、この停止後、再び高速で60秒間練り混ぜることによって、モルタルを製造した。
【0084】
(3)試験
得られたNo.16〜No.30のモルタルを用いて、下記表11に示す試験項目について評価し、基準の配合(No.16)と比較した。
試験結果のうち、粘度の降伏値を
図8、塑性粘度を
図9に示し、モルタルフローを
図10に示し、15打フローを
図11に示し、曲げ強度(基準品(No.16)の曲げ強度を100としたときの各モルタルの曲げ強度の比率)を
図12に示し、圧縮強度(基準品(No.16)の圧縮強度を100としたときの各モルタルの圧縮強度の比率)を
図13に示す。
【0085】
【表11】
【0086】
(4)試験結果
図8に示すように、No.16〜No.21の結果から、消泡剤としてSNデフォーマー(粉体)を用いると、消泡剤の添加量が多くなるにつれて、ある程度の添加量までは降伏値が大きく変わらず、それより多い添加量では降伏値が大きくなる傾向にあり、ある程度の添加量であると、降伏値がNo.16(基準値)と同程度となり得ることがわかった。
No.16、No.22〜25の結果から、消泡剤としてアデカネート(粉体)を用いると、消泡剤の添加量が多くなるにつれて、ある程度の添加量までは降伏値が大きく変わらず、それより多い添加量では降伏値が大きくなる傾向にあり、ある程度以上の添加量であると、降伏値がNo.16(基準値)と同程度となり得ることがわかった。
No.16、No.26〜30の結果から、消泡剤として、マスターエア(液体)を用いると、消泡剤の添加量が多くなるにつれて、降伏値が小さくなる傾向にあり、ある程度の添加量であると、降伏値がNo.16(基準値)と同程度となり得ることがわかった。また、シリコーン系消泡剤を用いると、マスターエアを用いる場合と同様の傾向になると推察され得ることがわかった。
【0087】
図9に示すように、No.16〜No.21の結果から、消泡剤としてSNデフォーマー(粉体)を用いると、消泡剤の添加量が多くなるにつれて、塑性粘度が大きくなる傾向にあり、ある程度以上の添加量であると、塑性粘度がNo.16(基準値)と同程度となり得ることがわかった。
No.16、No.22〜25の結果から、消泡剤としてアデカネート(粉体)を用いると、消泡剤の添加量が多くなるにつれて、塑性粘度が大きくなる傾向にあり、ある程度以上の添加量であると、塑性粘度がNo.16(基準値)と同程度となり得ることがわかった。
No.16、No.26〜30の結果から、消泡剤として、マスターエア(液体)を用いると、消泡剤の添加量が多くなるにつれて、ある程度までは塑性粘度が小さくなり、それよりも多くなると塑性粘度が大きくなる傾向にあり、ある程度の添加量であると、塑性粘度がNo.16(基準値)と同程度となり得ることがわかった。また、シリコーン系消泡剤を用いると、マスターエアを用いる場合と同様の傾向になると推察され得ることがわかった。
【0088】
図10に示すように、No.16〜No.21の結果から、消泡剤としてSNデフォーマー(粉体)を用いると、添加量が少ないときには若干モルタルフローが大きくなる傾向にあるものの、全体としては、モルタルフローがNo.16(基準値)と同程度となり得ることがわかった。
No.16、No.22〜25の結果から、消泡剤としてアデカネート(粉体)を用いると、添加量によらず、モルタルフローがNo.16(基準値)と同程度であることがわかった。
No.16、No.26〜30の結果から、消泡剤として、マスターエア(液体)を用いると、添加量によらず、モルタルフローがNo.16(基準値)と同程度であることがわかった。また、シリコーン系消泡剤を用いると、モルタルフローがNo.16(基準値)よりも若干大きくなったものの、全体としては同程度になると推察され得ることがわかった。
【0089】
図11に示すように、No.16〜No.21の結果から、消泡剤としてSNデフォーマー(粉体)を用いると、消泡剤の添加量が多くなるにつれて、15打フローが小さくなる傾向にあり、ある程度の添加量であると、15打フローがNo.16(基準値)と同程度となり得ることがわかった。
No.16、No.22〜25の結果から、消泡剤としてアデカネート(粉体)を用いると、消泡剤の添加量が多くなるにつれて、15打フローが小さくなる傾向にあり、全体として15打フローがNo.16よりも小さいことがわかった。
No.16、No.26〜30の結果から、消泡剤として、マスターエア(液体)を用いると、消泡剤の添加量が多くなるにつれて、ある程度の添加量までは15打フローが大きくなり、それよりも多い添加量では15打フローが変わらなくなる傾向にあり、ある程度の添加量以下であると、15打フローはNo.16(基準値)と同程度となり得ることがわかった。また、シリコーン系消泡剤を用いると、マスターエアを用いる場合と同様の傾向になると推察され得ることがわかった。
【0090】
図12に示すように、No.16〜No.29の結果から、消泡剤としてSNデフォーマー(粉体)、アデカネート(粉体)及びマスターエア(液体)のいずれを用いた場合であっても、添加量が少ない場合には曲げ強度が大きくなるものの、それよりも添加量が多くなると、一旦、曲げ強度が小さくなった後、添加量が多くなると共に曲げ強度が大きくなる傾向にあり、しかも、いずれもNo.16(基準値)よりも曲げ強度が大きくなる傾向にあることがわかった。また、シリコーン系消泡剤を用いると、No.16(基準値)よりも曲げ強度が大きくなり得ることがわかった。
【0091】
図13に示すように、No.16〜No.21の結果から、消泡剤としてSNデフォーマー(粉体)を用いると、添加量が少ない場合には圧縮強度が大きくなり、それよりも添加量が多くなると、一旦、圧縮強度が小さくなった後、さらに添加量が多くなると圧縮強度が大きくなり、最終的に頭打ち(平衡状態)になる傾向にあることがわかった。また、添加量によらず、No.16(基準値)よりも圧縮強度が大きくなる傾向にあることがわかった。
No.16、No.22〜25の結果から、消泡剤としてアデカネート(粉体)を用いると、添加量が少ない場合には圧縮強度が大きくなるものの、それよりも添加量が多くなるにつれて、圧縮強度が小さくなり、多過ぎると圧縮強度がNo.16(基準値)よりも小さくなる傾向にあった。
No.16、No.26〜30の結果から、消泡剤として、マスターエア(液体)を用いると、少しの添加量で圧縮強度が大きくなった後、さらに添加量が多くなっても、圧縮強度が変わらず、頭打ちとなる傾向にあることがわかった。また、添加量によらず、No.16(基準値)よりも圧縮強度が大きくなる傾向にあることがわかった。さらに、シリコーン系消泡剤を用いると、No.16(基準値)よりも圧縮強度が大きくなり得ることがわかった。
【0092】
(実験例4)ポーラスコンクリートでの検討
(1)配合
上記表8に示す材料を使用した。下記表12に示すコンクリート配合(消泡剤抜き)に基づいて設定した、下記表13に示すコンクリート配合を使用した。表13において、%は、質量%である。
【0093】
【表12】
【0094】
【表13】
【0095】
(2)ポーラスコンクリートの製造
上記表13に示す配合で、25L/バッチなるように、各粉体原料全てを二軸強制練りミキサ(関西機器社製)に投入し、30秒間空練りした後、水、または、水と液体原料(D4)とを投入して120秒間練り混ぜた。得られた混練物を型枠(100×100×400mmの角柱型枠)に投入(打設)することによって、ポーラスコンクリートを製造した。
【0096】
(3)試験
得られたNo.31、32のポーラスコンクリートを用いて、下記表14に示す試験項目について評価した。
試験結果を下記表15に示す。
【0097】
【表14】
【0098】
【表15】
【0099】
(4)試験結果
ダレ率、及び、締固めについては、No.31、32のいずれも、目標範囲を満たし、これらは、ほぼ同様のフレッシュ性状であった。
【0100】
曲げ強度については、No.31、32の結果から、粉体消泡剤及び液体消泡剤のいずれを添加しても、材齢1日での曲げ強度が目標範囲を満たすことがわかった。