(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-29815(P2019-29815A)
(43)【公開日】2019年2月21日
(54)【発明の名称】導波管−伝送線路変換器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/103 20060101AFI20190125BHJP
H01P 5/107 20060101ALI20190125BHJP
【FI】
H01P5/103 B
H01P5/107 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-147265(P2017-147265)
(22)【出願日】2017年7月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】南谷 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】梅原 宏幸
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で広帯域化ができ、小型化、低コスト化を図ることが可能となるようにする。
【解決手段】導波管1の短絡面1aに直交する側面に挿入孔8を設けると共に、この挿入孔8を中心にした円形凹部9を形成し、この凹部9を覆うように同軸線路2の外導体4の金属板4aを取り付け、同軸線路2の中心導体3に繋がるプローブ5を挿入孔8から導波管1の内部に挿入することにより、導波管1の側面と同軸線路2との間に、凹部9の内周側面が先端短絡面となるラジアル線路6を設ける。これにより、導波管1と同軸線路2のインピーダンスの整合を図る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面を短絡した導波管と、
中心導体に接続されたプローブを有する同軸線路とを備え、
上記導波管の短絡面に直交する側面の挿入孔から導波管内部へ上記同軸線路のプローブを挿入する構成の導波管−伝送線路変換器において、
上記導波管の側面と上記同軸線路との間に、上記プローブを中心とするラジアル線路を設け、このラジアル線路で上記導波管と上記同軸線路のインピーダンス整合を図ることを特徴とする導波管−伝送線路変換器。
【請求項2】
上記ラジアル線路は、上記導波管の側面に上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この凹部を上記同軸線路の外導体に接続される導体部で覆うことにより、又は上記同軸線路の外導体に接続される導体部に上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この凹部を上記導波管の側面に接続することにより、又は独立した金属板に上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この金属板を上記導波管と上記同軸線路との間に接続することにより形成したことを特徴とする請求項1記載の導波管−伝送線路変換器。
【請求項3】
端面を短絡した導波管と、
表面にマイクロストリップ線路、裏面に接地導体面が形成され、この接地導体面の開口部を貫通させながらプローブを上記マイクロストリップ線路に接続したマイクロストリップ線路基板とを備え、
上記導波管の短絡面に直交する側面の挿入孔から導波管内部へ上記マイクロストリップ線路基板のプローブを挿入する構成の導波管−伝送線路変換器において、
上記導波管の側面と上記マイクロストリップ線路基板との間に、上記プローブを中心とするラジアル線路を設け、このラジアル線路で上記導波管と上記マイクロストリップ線路のインピーダンス整合を図ることを特徴とする導波管−伝送線路変換器。
【請求項4】
上記ラジアル線路は、上記導波管の側面に上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この凹部に上記マイクロストリップ線路基板を接続することにより、又は独立した金属板により上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この金属板を上記導波管と上記マイクロストリップ線路基板との間に接続することにより形成したことを特徴とする請求項3記載の導波管−伝送線路変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導波管−伝送線路変換器、特にマイクロ波装置に用いられる導波管と同軸線路又はマイクロストリップ線路等の伝送線路との間の変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロ波を伝送する線路として、導波管、同軸線路、マイクロストリップ線路等が多く用いられる。上記導波管は、伝送ロスが小さく、大電力を扱うことが可能であるが、製作コストが高いという欠点がある。上記マイクロストリップ線路は、導波管と比べ伝送ロスが大きいが、低コストでの製作が可能であり、半導体素子等を装着することも容易であり、マイクロ波増幅装置等に広く利用されている。また、可撓性のある同軸線路は、複数のマイクロ波装置の間を結線するのに都合がよく広く利用されている。マイクロ波装置では、このような各種の線路が混在する場合が多く、導波管と同軸線路を接続するための導波管−同軸線路変換器や導波管とマイクロストリップ線路を接続するための導波管−マイクロストリップ線路変換器等が必要となる。
【0003】
近年、通信の高度化等により、周波数帯域幅の広いマイクロ波装置が要求されることが多くなっている。それらに対応するために、例えば広帯域化された各種構成の同軸線路−導波管変換器が発明され、実用化されている。その例として、広帯域で製作誤差に強くなるようにリッジ導波管を利用するもの(下記特許文献1)、インピーダンス整合を図るために同軸線路の中心導体であるプローブから導波管をみたインピーダンスを段階的に大きくするもの(下記特許文献2)等が提案されている。
【0004】
これらの変換器の構造は、低インピーダンスの同軸線路と高インピーダンスの導波管の間に、それらの中間のインピーダンスの線路を設けるものであり、この中間のインピーダンスの線路として、特許文献1ではリッジ導波管が用いられ、特許文献2では同軸線路の外導体の径を段階的に大きくする構造が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5692242号公報、
【特許文献2】特開平05−136608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなリッジ導波管を用いた同軸導波管変換器では、リッジ部分の構造が複雑となるため、低コスト化、小型化を図ることは困難である。
また、同軸線路の外導体の径を段階的(ステップ状)に大きくする構造において、インピーダンスの整合をとる場合、そのステップの1段につき約λ/4の線路長が必要になると考えられ、更に広帯域化するためには多段のステップが必要であり、小型化は困難となる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で広帯域化ができ、小型化、低コスト化を図ることが可能となる導波管−伝送線路変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、端面を短絡した導波管と、中心導体に接続されたプローブを有する同軸線路とを備え、上記導波管の短絡面に直交する側面の挿入孔から導波管内部へ上記同軸線路のプローブを挿入する構成の導波管−伝送線路変換器において、上記導波管の側面と上記同軸線路との間に、上記プローブを中心とするラジアル線路を設け、このラジアル線路で上記導波管と上記同軸線路のインピーダンス整合を図ることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記ラジアル線路は、上記導波管の側面に上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この凹部を上記同軸線路の外導体に接続される導体部で覆うことにより、又は上記同軸線路の外導体に接続される導体部に上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この凹部を上記導波管の側面に接続することにより、又は独立した金属板に上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この金属板を上記導波管と上記同軸線路との間に接続することにより形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、端面を短絡した導波管と、表面にマイクロストリップ線路、裏面に接地導体面が形成され、この接地導体面の開口部を貫通させながらプローブを上記マイクロストリップ線路に接続したマイクロストリップ線路基板とを備え、上記導波管の短絡面に直交する側面の挿入孔から導波管内部へ上記マイクロストリップ線路基板のプローブを挿入する構成の導波管−伝送線路変換器において、上記導波管の側面と上記マイクロストリップ線路基板との間に、上記プローブを中心とするラジアル線路を設け、このラジアル線路で上記導波管と上記マイクロストリップ線路のインピーダンス整合を図ることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3の構成において、上記ラジアル線路は、上記導波管の側面に上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この凹部に上記マイクロストリップ線路基板を接続することにより、又は独立した金属板により上記挿入孔を中心とする凹部を形成し、この金属板を上記導波管と上記マイクロストリップ線路基板との間に接続することにより形成したことを特徴とする。
【0010】
上記請求項1の構成によれば、導波管−伝送線路変換器である導波管−同軸線路変換器において、例えば導波管の側面に挿入孔とこの挿入孔を中心とする凹部を形成し、この凹部を覆うように同軸線路を接続して挿入孔からプローブを配置することにより(又は同軸線路側に凹部を形成する構成でもよい)、導波管の側面と同軸線路との間にラジアル線路を形成しており、このラジアル線路によって導波管と同軸線路のインピーダンス整合を図ることが可能となる。
【0011】
また、請求項3によれば、導波管−伝送線路変換器である導波管−マイクロストリップ線路変換器において、マイクロストリップ線路基板裏面の接地導体面の開口部を貫通させながら表面のマイクロストリップ線路にプローブが接続され、このプローブを導波管の側面に形成された凹部の挿入孔から内部へ挿入し、凹部を基板裏面の接地導体で覆うことにより、導波管の側面とマイクロストリップ線路基板との間にラジアル線路が設けられ、このラジアル線路によって導波管とマイクロストリップ線路のインピーダンス整合を図ることができる。この構成では、マイクロストリップ線路に接続されたプローブが接地導体面を貫通する開口部で同軸線路の中心導体として機能するので、この導波管−マイクロストリップ線路変換器は中間に同軸線路を介した変換器であり、その同軸線路と導波管の間に先端短絡のラジアル線路を設けた構造となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導波管の側面と同軸線路又はマイクロストリップ線路との間に、ラジアル線路を設けることにより、簡単な構成で、小型かつ広帯域な変換器が得られるという効果がある。
また、上記ラジアル線路が導波管の側面に凹部を設けたり、同軸線路側に金属製の凹部を設けたりするだけで形成できるため、低コスト化と小型化を図ることが可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る第1実施例の導波管−伝送線路(同軸線路)変換器の構成を示す断面図である。
【
図2】第2実施例の導波管−伝送線路(同軸線路)変換器の他の例の構成を示す断面図である。
【
図3】第3実施例の導波管−伝送線路(マイクロストリップ線路)変換器の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、第1実施例の導波管−伝送線路変換器(導波管−同軸線路変換器)の構成が示されており、
図1の符号1は矩形の導波管、1aは短絡面、2は同軸線路、3は同軸線路2の中心導体、4は同軸線路2の外導体、4aは外導体4の端部に設けられた導体部となる円形金属板、5は中心導体3を延伸させたプローブ、6はプローブ5を中心とする円形空間を持つラジアル線路である。
第1実施例では、図示されるように、導波管1の短絡面1aに直交する側面に挿入孔(円形孔)8を設けると共に、この挿入孔8を中心にした円形凹部9を形成し、この凹部9を覆うように同軸線路2の外導体4に接続するように金属板(導体部)4aを取り付けており、中心導体3に繋がるプローブ5を挿入孔8から導波管内部に挿入することにより、導波管1の側面と同軸線路2との間にラジアル線路6が設けられる。このラジアル線路6は、円形凹部9の内周面(側面)が先端短絡面となる。
【0015】
このような第1実施例の構成によれば、導波管1はプローブ5から距離Pの位置で短絡しており、この距離Pはおおよそ管内波長の1/4の長さとなる。従って、プローブ5の位置でマイクロ波の高周波電界は最大値となり、プローブ5と導波管壁面との間の容量によって導波管1とプローブ5は結合する。このとき、プローブ5の長さDと距離Pの値を適宜選択することによって、異なったインピーダンスの導波管1と同軸線路2はインピーダンス変換され、良好な伝送特性が得られる。
【0016】
ところで、マイクロ波はプローブ5に連結している中心導体3に導かれて同軸線路2に伝わるが、このプローブ5の位置P、長さDを適宜選択するだけでは、特定の周波数でインピーダンス整合するのみで、狭帯域な変換器となる。この狭帯域な特性は、プローブ5の先端の容量の周波数特性が大きいことに由来する。
そこで、本発明は、この狭帯域の変換器に先端短絡のラジアル線路6を設置することで、広帯域化した変換器を実現させたものである。先端短絡のラジアル線路6の短絡距離Lは、波長の1/4よりも短い距離で行うので、同軸線路上からラジアル線路側をみた場合、等価回路でインダクタンスが並列に形成される構成となる。
【0017】
また、ラジアル線路6と導波管1の側面壁までの距離Xは波長の1/8以下で、距離によるインピーダンスの差の小さな近接した位置の設置としているので、導波管側面からラジアル線路側をみても、インダクタンスである。先端短絡のラジアル線路6を設置することで、等価回路では、先端短絡のラジアル線路6のインダクタンスと、プローブ5の容量の周波数特性は逆方向になっていて、その周波数特性を打ち消すため、広帯域な導波管−伝送線路変換器が得られる。
【0018】
図2に、第2実施例の導波管−伝送線路変換器(導波管−同軸線路変換器)の構成が示されており、この第2実施例は、ラジアル線路6を形成する凹部9を同軸線路側に設けたものである。即ち、同軸線路2の外導体4の端部に一体となる金属板4bの裏面側に凹部9を形成し、この凹部9を有する金属板4bを導波管11の側面に取り付けると共に、プローブ5を挿入孔8から導波管内部へ挿入することにより、導波管11の側面と同軸線路2との間にラジアル線路6が設けられる。
このような構成の第2実施例においても、上記第1実施例と同様に、広帯域な導波管−伝送線路変換器となる。
【0019】
なお、第1、第2実施例において、ラジアル線路6を構成する凹部9は、導波管1側又は同軸線路2(導体部)に設けたが、独立した金属板に挿入孔8を中心とする凹部9を形成し、この金属板を導波管1,11と同軸線路2との間に接続するようにしてもよい。
【0020】
図3に、第3実施例の導波管−伝送線路変換器(導波管−マイクロストリップ線路変換器)の構成が示されており、
図3の符号12はマイクロストリップ線路基板、13は誘電体基板、14は誘電体基板13の表面に形成されたマイクロストリップ線路、15は誘電体基板13の裏面に形成された接地導体面、16は接地導体面に開けられた円形開口部である。
そして、第2実施例のプローブ5は、接地導体面15の開口部16から誘電体基板13を貫通する状態でマイクロストリップ線路14にはんだ付けされており、このマイクロストリップ線路基板12を導波管1の側面に配置し、このプローブ5を凹部9の挿入孔8から導波管内部へ挿入することにより、導波管1とマイクロストリップ線路14の裏面の接地導体面15との間にラジアル線路6が設けられる。
【0021】
この第3実施例では、プローブ5が中心導体、接地導体面15の開口部16が外導体となる同軸線路が形成されていると考えられ、第3実施例は、ラジアル線路6を設けた第1実施例の導波管−同軸線路変換器の先に、マイクロストリップ線路14を結線した構造と同等となり、広帯域化された変換器となる。
【0022】
なお、上記第3実施例では、導波管11に凹部9を形成する場合について説明したが、独立した金属板に凹部を形成し、或いは独立して金属板に貫通孔を形成し、導波管1とマイクロストリップ線路基板12との間に配置し、導波管1の側面及び接地導体面15に接続して凹部9を形成してもよい。
【0023】
以上のように、第1実施例と第3実施例のラジアル線路6は、導波管1の筐体側面に凹部9を形成することで、第2実施例のラジアル線路6は同軸線路2の外導体4につながる金属板4bに凹部9を形成することで、簡単に配置することができ、小型化、低コスト化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1,11…矩形導波管、 1a…短絡面、
2…同軸線路、 3…同軸線路の中心導体、
4…同軸線路の外導体、 4a,4b…金属板、
5…プローブ、 6…ラジアル線路、
8…挿入孔、 9…凹部、
12…マイクロストリップ線路基板、
13…絶縁体基板、 14…マイクロストリップ線路、
15…接地導体面、 16…開口部。