【解決手段】 アンテナ素子と、アンテナ素子が配置された位置を中心とする所定の半径の円周上に複数の無給電素子とが平面上に配置されたアンテナ部と、無給電素子に配置され、無給電素子の長さを調整する第1調整部と、無給電素子に配置され、平面に対して垂直方向に無給電素子の位置を調整する第2調整部とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。
【0018】
図1は、アンテナ装置の一実施形態を示す。
【0019】
図1に示したアンテナ装置100は、例えば、基地局に配置され、スマートフォンやタブレット型端末等の携帯通信端末から送信された電磁波を受信するとともに、データを含む信号の電磁波を携帯通信端末に送信する。アンテナ装置100は、アンテナ素子10、4つの無給電素子20(20(1)−20(4))、4つの昇降部30および結合部40を有する。
【0020】
アンテナ素子10は、例えば、スリーブアンテナであり、Z軸方向に2分の1波長の素子長を有する。そして、アンテナ素子10は、水平面のXY平面に対して垂直のZ軸方向に延在するように配置される。アンテナ素子10は、結合部40を介して、基地局からのデータを含む信号を携帯通信端末に電磁波で送信する。また、アンテナ装置100は、携帯通信端末から送信された電磁波を受信し、結合部40を介して受信した電磁波の信号を基地局に出力する。なお、アンテナ装置100は、ダイポールアンテナ等でもよい。
【0021】
無給電素子20は、アンテナ素子10が配置された位置を中心にして、半径Rの円周上に等間隔でXY平面に配置される。すなわち、無給電素子20(1)−20(4)の各々の位置は、アンテナ素子10の位置をXY平面の原点とする場合、(R,0)、(0,R)、(−R,0)および(0,−R)である。なお、半径Rは、アンテナ素子10との相互結合の影響を低減可能な自由空間波長で8分の1波長以上の距離に設定される。また、4つ以外の複数の無給電素子20が配置されてもよい。アンテナ素子10と無給電素子20とは、アンテナ部として動作する。
【0022】
図1に示すように、無給電素子20(1)は、例えば、円柱状の銅等の金属部材21、22と、ダイオード23とを有する。そして、金属部材21と金属部材22とは、ダイオード23を介して接続され、無給電素子20(1)は、アンテナ装置100または基地局に含まれる電源から印加される電圧に応じて素子長が調整される。例えば、無給電素子20(1)は、ダイオード23に電圧が印加されない場合、金属部材21の長さの素子長を有し、アンテナ素子10の導波器として動作する。一方、無給電素子20(1)は、ダイオード23に電圧が印加される場合、金属部材21と金属部材22との長さの素子長を有し、アンテナ素子10の反射器として動作する。
【0023】
なお、導波器として動作する場合の無給電素子20の素子長(金属部材21の長さ)は、自由空間波長において0.4波長に調整される。電磁波の周波数が5GHzの場合、0.4波長は約24mmである。また、反射器として動作する場合の無給電素子20の素子長は、自由空間波長において0.58波長に調整される。電磁波の周波数が5GHzの場合、0.58波長は約32mmである。なお、金属部材21、22の長さは、基地局が配置される通信環境や基地局に設置される箇所等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0024】
なお、無給電素子20(2)−20(4)についても、無給電素子20(1)と同様の要素を有し、無給電素子20(1)と同様に動作する。
【0025】
また、ダイオード23の代わりに、無給電素子20の素子長を切り替えるスイッチデバイスが用いられてもよい。ダイオード23は、第1調整部の一例である。
【0026】
昇降部30は、昇降機等であり、アンテナ装置100または基地局に含まれるプロセッサ等の制御部からの制御指示に基づいて、アンテナ素子10に対して無給電素子20の位置をZ軸方向に移動させる。例えば、昇降部30は、0.02波長から0.42波長(電磁波の周波数が5GHzの場合、約1mmから約25mm)のスライド量の範囲で無給電素子20を移動させる。これにより、アンテナ装置100は、水平面の指向性とともに、垂直方向の指向性を制御することができる。昇降部30は、第2調整部の一例である。
【0027】
結合部40は、アンテナコネクタ等であり、アンテナ装置100と基地局とを同軸ケーブル等で接続する。そして、結合部40は、アンテナ装置100が受信した電磁波の信号を基地局に出力するとともに、基地局からのデータを含む信号をアンテナ装置100に出力する。
【0028】
図2は、
図1に示したアンテナ装置100の指向性の一例を示す。
図2は、各無給電素子20のダイオード23に電圧を印加せずに、全ての無給電素子20が導波器として動作させることで、アンテナ装置100の水平面の指向性がオムニ特性となる場合のシミュレーションの結果を示す。なお、
図2のシミュレーションでは、電磁波の周波数は、5GHzに設定され、昇降部30によるスライド量は、0mmに設定される。
【0029】
図2(a)は、垂直面(XZ平面)における指向性を破線で示す。
図2(b)は、水平面(XY平面)における指向性を破線で示す。
図2(a)に示すように、アンテナ装置100の垂直面の指向性は、スリーブアンテナ、すなわち半波長ダイポールアンテナと同様のビームパターンを示す。一方、
図2(b)に示すように、アンテナ装置100の垂直面の指向性は、無指向性、すなわちオムニ特性を示す。
【0030】
図3は、
図1に示したアンテナ装置100の指向性の別例を示す。
図3は、
図2の場合と同様に、各無給電素子20のダイオード23に電圧を印加せず、全ての無給電素子20が導波器として動作させることで、アンテナ装置100の水平面の指向性がオムニ特性となる場合のシミュレーションの結果を示す。なお、
図3のシミュレーションでは、電磁波の周波数は、5GHzに設定され、昇降部30によるスライド量は、10mmに設定される。すなわち、無給電素子20は、正のZ軸方向に10mm移動している。
【0031】
図3(a)は、垂直面における指向性を破線で示し、
図3(b)は、水平面における指向性を破線で示す。
図3(a)に示すように、アンテナ装置100の垂直面の指向性は、無給電素子20が正のZ軸方向に10mm移動することにより、
図2(a)に示した指向性と比べて、正のX軸方向に対して負のZ軸方向に角度α(約25度)下がる。すなわち、昇降部30が無給電素子20の位置をZ軸方向に移動させることにより、アンテナ装置100は、垂直面の指向性を制御できる。一方、
図3(b)に示すように、アンテナ装置100の垂直面の指向性は、
図2(b)に示した指向性と同様に、オムニ特性を示す。
【0032】
図4は、
図1に示したアンテナ装置100の指向性の別例を示す。
図4では、無給電素子20(1)は、ダイオード23に電圧が印加されずに導波器として動作し、無給電素子20(2)−20(4)は、ダイオード23に電圧が印加されて反射器として動作することで、アンテナ装置100の水平面の指向性が正のX軸方向に向いたセクタ特性となる場合のシミュレーションの結果を示す。
図4のシミュレーションでは、電磁波の周波数は、5GHzに設定され、昇降部30によるスライド量は、0mmに設定される。
【0033】
図4(a)は、垂直面における指向性を破線で示し、
図4(b)は、水平面における指向性を破線で示す。
図4(a)に示すように、アンテナ装置100は、正のX軸方向に最大の利得を示すビームパターンを垂直面の指向性として有する。一方、
図4(b)に示すように、アンテナ装置100は、正のX軸方向に最大の利得を示すビームパターンのセクタ特性を水平面の指向性として有する。
【0034】
図5は、
図1に示したアンテナ装置100の指向性の別例を示す。
図5では、
図4の場合と同様に、無給電素子20(1)は、ダイオード23に電圧が印加されずに導波器として動作し、無給電素子20(2)−20(4)は、ダイオード23に電圧が印加されて反射器として動作することで、アンテナ装置100の水平面の指向性が正のX軸方向に向いたセクタ特性となる場合のシミュレーションの結果を示す。なお、
図5のシミュレーションでは、電磁波の周波数は、5GHzに設定され、昇降部30によるスライド量は、10mmに設定される。すなわち、無給電素子20は、正のZ軸方向に10mm移動している。
【0035】
図5(a)は、垂直面における指向性を破線で示し、
図5(b)は、水平面における指向性を破線で示す。
図5(a)に示すように、アンテナ装置100は、無給電素子20が正のZ軸方向に10mm移動することにより、
図4(a)の場合と比べて、正のX軸方向に対して負のZ軸方向に角度α(約10度)下がった方向に、最大の利得を示すビームパターンを垂直面の指向性として有する。すなわち、昇降部30が無給電素子20の位置をZ軸方向に移動させることにより、アンテナ装置100は、垂直面の指向性を制御できる。一方、
図5(b)に示すように、アンテナ装置100は、水平面において、
図4(b)の場合と同様のセクタ特性を有する。
【0036】
なお、昇降部30は、導波器として動作する少なくとも1つの無給電素子20(1)を移動させ、反射器として動作する無給電素子20(2)−20(4)を移動させなくてもよい。すなわち、アンテナ装置100は、
図4に示したセクタ特性の利得が最大となる正のZ軸方向に配置された無給電素子20(1)をZ軸方向に移動させることで、
図5と同様に垂直面の指向性を制御できる。
【0037】
図6は、
図1に示したアンテナ装置100における垂直面の指向性のうち最大の利得を示すビームの向きと正のX軸方向と間のなす角度αと、
図1に示した昇降部30によるスライド量との関係の一例を示す。
図6(a)は、水平面の指向性がオムニ特性の場合の角度αとスライド量との関係のシミュレーションの結果を示す。
図6(b)は、水平面の指向性がセクタ特性の場合の角度αとスライド量との関係のシミュレーションの結果を示す。なお、
図6の縦軸は、角度αを示し、横軸はスライド量を示す。また、
図6のシミュレーションでは、電磁波の周波数は、5GHzに設定される。
【0038】
図6(a)に示すように、水平面の指向性がオムニ特性の場合、スライド量が0mmから30mmに増加するに従い、角度αも比例して増加する。一方、
図6(b)に示すように、水平面の指向性がセクタ特性の場合、スライド量が0mmから30mmに増加するに従い、角度αも比例して増加する。これにより、昇降部30が無給電素子20の位置をZ軸方向に移動させることにより、アンテナ装置100は、垂直面の指向性を制御できる。
【0039】
以上、
図1から
図6に示した実施形態では、アンテナ装置100は、無給電素子20の素子長を制御することにより、水平面の指向性をオムニ特性またはセクタ特性に制御することができる。また、アンテナ装置100は、昇降部30を用いて、無給電素子20をZ軸方向に移動させることにより、水平面の指向性をオムニ特性またはセクタ特性に制御するとともに、垂直面の指向性を制御できる。
【0040】
図7は、アンテナ装置の別の実施形態を示す。
図1で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。
【0041】
図7に示したアンテナ装置100Aは、例えば、基地局に配置され、スマートフォンやタブレット型端末等の携帯通信端末から送信された電磁波を受信するとともに、データを含む信号の電磁波を携帯通信端末に送信する。アンテナ装置100Aは、アンテナ素子10、4つの無給電素子20a(20a(1)−20a(4))、4つの昇降部30および結合部40を有する。
【0042】
無給電素子20aは、
図1に示した無給電素子20と同様に、アンテナ素子10が配置された位置を中心にして、半径Rの円周上に等間隔で配置される。すなわち、無給電素子20a(1)−20a(4)の各々の位置は、アンテナ素子10の位置をXY平面の原点とする場合、(R,0)、(0,R)、(−R,0)および(0,−R)である。なお、半径Rは、アンテナ素子10との相互結合の影響を低減可能な自由空間波長で8分の1波長以上の距離に設定される。また、4つ以外の複数の無給電素子20aが配置されてもよい。
【0043】
図7に示すように、無給電素子20a(1)は、例えば、円柱状の銅等の金属部材21a、22a、22bと、ダイオード23a、23bとを有する。金属部材21aと金属部材22aとは、ダイオード23aを介して接続され、金属部材21aと金属部材22bとは、ダイオード23bを介して接続される。そして、ダイオード23a、23bは、アンテナ装置100または基地局の電源から印加される電圧に応じて容量を変化させることで、無給電素子20a(1)の素子長を調整する。すなわち、ダイオード23a、23bは、可変容量デバイスとして用いられる。ダイオード23a、23bは、第1調整部の一例である。
【0044】
そして、無給電素子20a(1)は、導波器として動作する場合、ダイオード23a、23bに印加される電圧が調整されることで、自由空間波長において0.4波長の素子長となるように調整される。また、無給電素子20a(1)は、反射器として動作する場合、ダイオード23a、23bに印加される電圧が調整されることで、自由空間波長において0.58波長の素子長となるように調整される。
【0045】
なお、金属部材21a、22a、22bの長さは、基地局が配置される通信環境や基地局に設置される箇所等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0046】
また、無給電素子20a(2)−20a(4)についても、無給電素子20a(1)と同様の要素を有し、無給電素子20a(1)と同様に動作する。
【0047】
なお、アンテナ装置100Aの指向性は、
図2から
図6に示したアンテナ装置100の指向性と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0048】
以上、
図7に示した実施形態では、アンテナ装置100Aは、無給電素子20aの素子長を制御することにより、水平面の指向性をオムニ特性またはセクタ特性に制御することができる。また、アンテナ装置100Aは、昇降部30を用いて、無給電素子20aをZ軸方向に移動させることにより、水平面の指向性をオムニ特性またはセクタ特性に制御するとともに、垂直面の指向性を制御できる。
【0049】
図8は、アンテナ装置の別の実施形態を示す。
図1および
図7で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。
【0050】
図8に示したアンテナ装置100Bは、例えば、基地局に配置され、スマートフォンやタブレット型端末等の携帯通信端末から送信された電磁波を受信するとともに、データを含む信号の電磁波を携帯通信端末に送信する。アンテナ装置100Bは、アンテナ素子10、4つの無給電素子20b(20b(1)−20b(4))および結合部40を有する。
【0051】
無給電素子20bは、
図1に示した無給電素子20と同様に、アンテナ素子10が配置された位置を中心にして、半径Rの円周上に等間隔で配置される。そして、半径Rは、アンテナ素子10との相互結合の影響を低減可能な自由空間波長で8分の1波長以上の距離に設定される。また、4つ以外の複数の無給電素子20bが配置されてもよい。
【0052】
図8に示すように、無給電素子20b(1)は、例えば、円柱状の銅等の金属部材21a、22a、22bと、ダイオード23c(23c(1)−23c(6))とを有する。金属部材21aと金属部材22aとは、直列に接続されたダイオード23c(1)−23c(3)を介して接続され、金属部材21aと金属部材22bとは、直列に接続されたダイオード23c(4)−23c(6)を介して接続される。そして、ダイオード23cは、アンテナ装置100Bまたは基地局の電源から印加される電圧に応じて容量を変化させることで、無給電素子20a(1)の素子長を調整する。すなわち、ダイオード23cは、可変容量デバイスとして用いられる。ダイオード23cは、第1調整部の一例である。
【0053】
また、6つのダイオード23cがZ軸方向に配置されることにより、ダイオード23cは、アンテナ装置100Bまたは基地局の電源からの電圧の印加に応じてオンオフ動作することにより、無給電素子20b(1)の位置をZ軸方向に移動させる。ダイオード23cは、第2調整部の一例である。
【0054】
例えば、無給電素子20b(1)は、スライド量が0mmの導波器として動作させる場合、素子長が0.4波長となるように、ダイオード23c(4)、23c(5)の各々に電圧を調整して印加する。また、無給電素子20b(1)は、スライド量が0mmの反射器として動作させる場合、素子長が0.58波長となるように、ダイオード23c(4)、23c(5)の各々に電圧を調整して印加する。なお、少なくともダイオード23c(3)、23c(6)には、電圧を印加しない。これにより、無給電素子20b(1)の有効長をダイオード23c(3)とダイオード23c(6)との間に設定する。
【0055】
また、無給電素子20b(1)、正のZ軸方向に移動させた導波器として動作させる場合、素子長が0.4波長となるように、例えば、ダイオード23c(2)、23c(3)の各々に電圧を調整して印加する。すなわち、無給電素子20b(1)は、ダイオード23c(5)、23c(6)の2つ分のスライド量だけ、正のZ軸方向に移動する。また、無給電素子20b(1)は、正のZ軸方向に移動させた反射器として動作させる場合、素子長が0.58波長となるように、ダイオード23c(2)、23c(3)の各々に電圧を調整して印加する。なお、少なくともダイオード23c(1)、23c(4)には、電圧を印加しない。これにより、無給電素子20b(1)の有効長をダイオード23c(1)とダイオード23c(4)との間に設定する。
【0056】
なお、6つ以外の複数のダイオード23cが配置されてもよい。ダイオード23cの数が多くなるに従い、Z軸方向に無給電素子20b(1)を移動させるスライド量を細かく制御できる。
【0057】
また、無給電素子20b(2)−20b(4)についても、無給電素子20b(1)と同様の要素を有し、無給電素子20b(1)と同様に動作する。
【0058】
なお、アンテナ装置100Bの指向性は、
図2から
図6に示したアンテナ装置100の指向性と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0059】
以上、
図8に示した実施形態では、アンテナ装置100Bは、無給電素子20bの素子長を制御することにより、水平面の指向性をオムニ特性またはセクタ特性に制御することができる。また、アンテナ装置100Bは、ダイオード23cを用いて、無給電素子20bをZ軸方向に移動させることにより、水平面の指向性をオムニ特性またはセクタ特性に制御するとともに、垂直面の指向性を制御できる。
【0060】
図9は、アンテナ装置の別の実施形態を示す。
図1で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。
【0061】
図9に示したアンテナ装置100Cは、例えば、
図1に示したアンテナ装置100と同様に、基地局に配置され、スマートフォンやタブレット型端末等の携帯通信端末から送信された電磁波を受信するとともに、データを含む信号の電磁波を携帯通信端末に送信する。アンテナ装置100Cは、アンテナ素子10、4つの無給電素子20(20(1)−20(4))、4つの昇降部30、結合部40および制御装置50を有する。
【0062】
制御装置50は、プロセッサ等の演算処理部と、メモリ等の記憶部とを有するコンピュータ装置である。例えば、基地局からの制御指示に基づいて、演算処理部が、記憶部に記憶されているプログラムを実行することにより、制御装置50は、アンテナ装置100Cの各要素を制御する。
【0063】
図10は、
図9に示した制御装置50の一例を示す。
図10に示すように、制御装置50は、受信部60、測定部70、制御部80および記憶部90を有する。
【0064】
受信部60は、例えば、結合部40を介して、アンテナ素子10が受信した携帯通信端末からの電磁波の信号を受信する。
【0065】
測定部70は、受信部60が受信した信号の受信電力を測定する。また、測定部70は、受信した信号に付加される携帯通信端末の位置を示す位置情報を取得する。そして、測定部70は、例えば、携帯通信端末の受信電力および位置情報と、携帯通信端末を示す識別情報とを、アンテナ装置100Cに設定されている指向性を示す指向性情報とともに、記憶部90に出力し、測定テーブルMTに格納する。
【0066】
制御部80は、プロセッサ等であり、記憶部90に記憶されているプログラムを実行することにより動作する。例えば、制御部80は、アンテナ装置100Cの指向性を設定するにあたり、予め決められた複数の指向性をアンテナ装置100Cに順次に設定する。制御部80は、測定部70に対して、各指向性における携帯通信端末からの信号の受信電力を測定させ、測定テーブルMTを格納させる。そして、制御部80は、測定テーブルMTを参照して、アンテナ装置100Cの指向性を決定する。制御部80は、決定した指向性に設定する制御指示を無給電素子20のダイオード23および昇降部30を出力する。制御部80の動作については、
図12で説明する。
【0067】
記憶部90は、メモリ等であり、プロセッサ等が実行するプログラムや測定テーブルMT等を記憶する。測定テーブルMTについては、
図11で説明する。
【0068】
図11は、
図10に示した測定テーブルMTの一例を示す。測定テーブルMTは、水平面の指向性を保持する指向性領域RAと、スライド量を保持するスライド量領域RBと、N個の携帯通信端末の各々の受信電力と位置とを保持する端末領域R1−RNとを有する。
【0069】
指向性領域RAには、制御部80がアンテナ装置100Cに設定する水平面の指向性を示す“オムニ特性”と、M個のセクタ特性の“セクタ1”や“セクタM”等が格納される。例えば、制御部80は、測定テーブルMTを参照して、指向性領域RAから“オムニ特性”を選択した場合、アンテナ装置100Cの各無給電素子20を導波器として動作させるために、ダイオード23に電圧を印加しない制御指示を、各無給電素子20のダイオード23に出力する。また、制御部80は、指向性領域RAから“セクタ1”を選択した場合、“セクタ1”で設定される水平面の指向性に応じて、アンテナ装置100Cの無給電素子20のうち、導波器として動作する無給電素子20のダイオード23に対して電圧を印加しない制御指示を出力する。また、制御部80は、反射器として動作する無給電素子20のダイオード23に対して電圧を印加する制御指示を出力する。
【0070】
スライド量領域RBには、制御部80がアンテナ装置100Cの昇降部30に対して設定する正のZ軸方向のスライド量が、指向性領域RAに格納される指向性毎に格納される。
図11に示したスライド量領域RBでは、例えば、スライド量は5mm等の所定の間隔で0mmから30mmの範囲の値が格納される。そして、制御部80は、測定テーブルMTを参照し、指向性領域RAから水平面の指向性を選択するとともに、スライド量領域RBからスライド量を選択し、選択したスライド量の移動を指示する制御指示を各昇降部30に出力する。
【0071】
端末領域RC1−RCNには、アンテナ装置100Cに設定される指向性領域RAの各指向性において、測定部70により測定されたN個の携帯通信端末の各々からの信号の受信電力および位置が格納される。なお、N個の携帯通信端末の各々が、アンテナ装置100Cの指向性が順次に変化する間、同じ位置に留まっていてもよく、1つの携帯通信端末が、アンテナ装置100Cの指向性が1つのものに設定されている間、N個の位置それぞれに移動してもよい。また、携帯通信端末は、一般のユーザの携帯通信端末でもよく、測定用に使用され予め登録された通信事業者の通信端末でもよい。
【0072】
図12は、
図9に示したアンテナ装置100Cにおける指向性の設定処理の一例を示す。
図12に示した処理は、アンテナ装置100Cが基地局に設けられる場合に実行されてもよく、1年等の所定の期間毎に実行されてもよい。
【0073】
ステップS100では、制御部80は、例えば、
図11に示した測定テーブルMTを参照し、指向性領域RAとスライド量領域RBとを組み合わせた複数の指向性のうち、一の指向性をアンテナ装置100Cに設定する。指向性領域RAとスライド量領域RBとを組み合わせた複数の指向性は、複数の第1指向性の一例である。
【0074】
ステップS110では、測定部70は、ステップS100で設定された指向性を有するアンテナ装置100Cを介して、受信したN個の携帯通信端末の各々からの信号の受信電力を測定する。そして、測定部70は、携帯通信端末の受信電力および位置情報と、携帯通信端末を示す識別情報とを、アンテナ装置100Cに設定されている指向性を示す指向性情報とともに、記憶部90に出力し、測定テーブルMTに格納する。
【0075】
ステップS120では、制御部80は、指向性領域RAとスライド量領域RBとを組み合わせた複数の指向性のうち、アンテナ装置100Cに設定する次の指向性があるか否かを判定する。次の指向性がある場合、アンテナ装置100Cの処理は、ステップS100に移る。一方、次の指向性がない、すなわち複数の指向性のすべてをアンテナ装置100Cに設定した場合、アンテナ装置100Cの処理は、ステップS130に移る。
【0076】
ステップS130では、制御部80は、記憶部90に記憶された測定テーブルMTを参照し、アンテナ装置100Cの指向性を決定する。例えば、制御部80は、測定テーブルMTにおいて、予め登録された通信事業者の通信端末の受信電力を取得する。そして、制御部80は、通信事業者の通信端末において、受信電力が最大値を示した時の水平面の指向性およびスライド量を、指向性領域RAおよびスライド量領域RBから抽出する。制御部80は、抽出した指向性およびスライド量を、アンテナ装置100Cに設定する指向性に決定する。
【0077】
なお、制御部80は、通信事業者の通信端末において、受信電力が最小値を示した時の水平面の指向性およびスライド量を、指向性領域RAおよびスライド量領域RBから抽出してもよい。これにより、制御部80は、隣接する他の基地局に対して干渉等の影響を低減でき、通信品質の向上を図ることができる。
【0078】
ステップS140では、制御部80は、決定した指向性を設定する制御指示を無給電素子20のダイオード23および昇降部30を出力する。
【0079】
そして、アンテナ装置100Cは、設定処理を終了する。
【0080】
なお、制御装置50は、
図7に示したアンテナ装置100Aおよび
図8に示したアンテナ装置100Bに対しても、アンテナ装置100Cの場合と同様に、
図12に示した設定処理を実行できる。
【0081】
また、制御装置50は、アンテナ装置100Cを介して受信した複数の携帯通信端末からの信号の受信電力に基づいて、アンテナ装置100Cの指向性を決定したが、これに限定されない。例えば、基地局がIEEE802.ax等の規格に基づいて携帯通信端末と無線通信する場合、携帯通信端末からの信号には、携帯通信端末がいずれの基地局のセルに位置するかを示すセル識別子が付加される。この場合、制御装置50は、携帯通信端末の代わりに、各指向性における受信電力をセル識別子毎に格納したテーブルを生成してもよい。そして、制御装置50は、例えば、生成したテーブルを用いて、予め登録された通信事業者の通信端末の信号に付加されるセル識別子に対する受信電力が最大または最小となるアンテナ装置100Cの指向性を決定してもよい。これにより、制御装置50は、隣接する他の基地局に対して干渉等の影響を低減でき、通信品質の向上を図ることができる。
【0082】
以上、
図9から
図12に示した実施形態では、アンテナ装置100Cは、無給電素子20bの素子長を制御することにより、水平面の指向性をオムニ特性またはセクタ特性に制御することができる。また、アンテナ装置100Cは、昇降部30を用いて、無給電素子20bをZ軸方向に移動させることにより、水平面の指向性をオムニ特性またはセクタ特性に制御するとともに、垂直面の指向性を制御できる。
【0083】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。