特開2019-39199(P2019-39199A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧
特開2019-39199海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法
<>
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000003
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000004
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000005
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000006
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000007
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000008
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000009
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000010
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000011
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000012
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000013
  • 特開2019039199-海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-39199(P2019-39199A)
(43)【公開日】2019年3月14日
(54)【発明の名称】海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法
(51)【国際特許分類】
   E21C 50/00 20060101AFI20190215BHJP
【FI】
   E21C50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-161110(P2017-161110)
(22)【出願日】2017年8月24日
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
【住所又は居所】東京都文京区本郷七丁目3番1号
(71)【出願人】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内2丁目2番3号
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 豊久
(72)【発明者】
【氏名】ドドビバ ジョルジ
(72)【発明者】
【氏名】中村 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】林元 和智
【テーマコード(参考)】
2D065
【Fターム(参考)】
2D065EA19
2D065FA05
2D065FA23
2D065FA36
2D065GA01
(57)【要約】
【課題】海上から海底までの揚鉱用配管の延設を不要とし得る海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱用バルーンを備えた海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源揚鉱システムを用いた海洋資源の揚鉱方法を提供する。
【解決手段】海洋資源揚鉱用バルーン1は、海底Dに沈められて、レアアース泥Drを吸着結合したエマルションEmの混合物Maを貯留するものであり、海中で混合物Maを内部に貯留し、下部にホース接続口11を有するとともに、上部にカップラ12を備えたバルーン本体10と、バルーン本体10の下部に装着されたウェイト13と、バルーン本体10の上部に装着された浮力体14とを備える。海中で混合物Maをバルーン本体10の内部に貯留した後、ウェイト13をバルーン本体10から切り離すことにより、バルーン本体10が混合物Maと海水との比重差で海上まで浮上する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底に沈められて、レアアース泥を吸着結合したエマルションの混合物を貯留する海洋資源揚鉱用バルーンであって、
海中で前記混合物を内部に貯留し、下部にホース接続口を有するとともに、上部にカップラを備えたバルーン本体と、
該バルーン本体の下部に装着されたウェイトと、
前記バルーン本体の上部に装着された浮力体とを備え、
海中で前記混合物を前記バルーン本体の内部に貯留した後、前記ウェイトを前記バルーン本体から切り離すことにより、前記バルーン本体が前記混合物と海水との比重差で海上まで浮上することを特徴とする海洋資源揚鉱用バルーン。
【請求項2】
請求項1に記載の海洋資源揚鉱用バルーンを備えた海洋資源揚鉱システムであって、
海上から海中の採鉱位置に投入されて稼働することにより、泥質堆積層中のレアアース泥を解泥するとともに、解泥したレアアース泥とエマルションとを混合してレアアースを吸着結合したエマルションの混合物とする掘削装置と、
該掘削装置及び前記海洋資源揚鉱用バルーンのホース接続口に接続され、前記混合物を通過させて前記バルーン本体内に貯留する回収ホースと、
海上から海中に投入されて、前記掘削装置に接続された前記回収ホースを前記海洋資源揚鉱用バルーンのホース接続口に接続するとともにその接続状態を解除し、さらに、前記ウェイトを前記バルーン本体から切り離すロボットアーム付き無人潜水機と、
前記ウェイトが切り離されて海水と前記混合物との比重差で海上まで浮上した前記バルーン本体内に貯留された前記混合物を吸引回収する吸引回収装置とを備えたことを特徴とする海洋資源揚鉱システム。
【請求項3】
前記掘削装置は、海水よりも比重が軽いエマエルションで駆動するダウンホールモータであり、該ダウンホールモータには、前記ダウンホールモータを駆動するエマルションを噴射するビットノズルが形成されるとともに前記ダウンホールモータを駆動することにより回転する掘削用のビットが装着されていることを特徴とする請求項2に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項4】
前記ダウンホールモータには、前記ビットの上部の位置に前記ビットとともに回転する攪拌翼が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項5】
前記ダウンホールモータを囲う位置に配設された集鉱装置であって、上部及び下部が海中に開口している集鉱管と、該集鉱管の下部に設けられ、下方に向けて拡径して海中に開口している集鉱ホッパとを有する集鉱装置を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項6】
前記回収ホースは、前記集鉱管の上端に接続されることを特徴とする請求項5に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項7】
前記ダウンホールモータは、その基端部が前記集鉱装置に支持されるとともに前記基端部に前記エマルションの導入口が設けられ、該導入口に前記エマルションを供給可能に海上のエマルション供給船にエマルション供給ホースで連結されることを特徴とする請求項5又は6に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項8】
前記集鉱装置は、クローラ走行体に支持され、該クローラ走行体は、海上の前記エマルション供給船から水中ケーブルを介して電源が供給されるように構成されることを特徴とする請求項7に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項9】
前記吸引回収装置は、海上の混合物回収船に配置されており、海上に浮上した前記バルーン本体の前記カップラに接続される吸引カップラを先端に設けた混合物吸引ホースと、該混合物吸引ホースに接続され、前記バルーン本体内に貯留された前記混合物を吸引回収する吸引ポンプとを備えていることを特徴とする請求項2乃至8のうちいずれか一項に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項10】
前記ロボットアーム付き無人潜水機は、遠隔操作型の無人潜水機であり、海上の前記混合物回収船から水中ケーブルを介して動力が供給されるように構成されることを特徴とする請求項9に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項11】
前記ロボットアーム付き無人潜水機は、海底に到達した前記海洋資源揚鉱用バルーンのカップラを開から閉に切り替えることを特徴とする請求項2乃至10の何れか一項に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項12】
前記混合物が吸引回収された前記バルーン本体を回収する回収アームを備えていることを特徴とする請求項2乃至11の何れか一項に記載の海洋資源揚鉱システム。
【請求項13】
請求項2〜12のいずれか一項に記載の海洋資源揚鉱システムを用いた海洋資源の揚鉱方法であって、
請求項1記載の海洋資源揚鉱用バルーンを海上から海底に沈めるバルーン沈下工程と、
前記掘削装置を海上から海中の採鉱位置に投入する掘削装置投入工程と、
前記ロボットアーム付き無人潜水機を海上から海中に投入する無人潜水機投入工程と、
前記掘削装置に接続された前記回収ホースを前記海洋資源揚鉱用バルーンのホース接続口に前記ロボッットアーム付き無人潜水機により接続する回収ホース接続工程と、
該回収ホース接続工程の後、前記掘削装置を稼働して、泥質堆積層中のレアアース泥を解泥するとともに、解泥したレアアース泥とエマルションとを混合してレアアースを吸着結合したエマルションの混合物とするとともに、該混合物を前記回収ホースを通して前記海洋資源揚鉱用バルーンの前記バルーン本体内に貯留する混合物貯留工程と、
該混合物貯留工程の後、前記ロボットアーム付き無人潜水機により、前記回収ホースの前記ホース接続口に対する接続状態を解除するとともに、前記ウェイトを前記バルーン本体から切り離す回収ホース及びウェイト接離工程と、
前記ウェイトが切り離された前記バルーン本体が海水と前記混合物との比重差で海上まで浮上した後、前記吸引回収装置で前記バルーン本体内に貯留された前記混合物を吸引回収する混合物吸引回収工程とを含むことを特徴とする海洋資源の揚鉱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法に係り、特に、海洋に存在するレアアース泥等の海洋資源の揚鉱用に好適な海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源の揚鉱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2012年、南鳥島の排他的経済水域の深海で極めて高濃度なレアアースを含む泥(以下、「レアアース泥」という)が発見された。ここで、海底石油の人工採油技術や深海のレアアース泥の回収技術としては、高揚程多段スラリーポンプを複数ヵ所で直列に連結して回収するポンプリフト方式や、船上の空気圧縮機から各水深層の数か所に高圧空気を注入するエアリフト方式が考えられている。ポンプリフト方式としては、例えば、特許文献1(ターボ形)や特許文献2(斜流形インペラ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5490582号公報
【特許文献2】特開昭51−72902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のポンプリフト方式は、装置の構造が複雑であり、軽量化が困難なことから、安定した運転を確保する上で課題が多く、水中機器の信頼性、特に、高圧水深下での水中モータの軸シールの耐久性と信頼性に問題がある。また、深海からのレアアース泥の揚泥には、水深分の揚程を圧送するための多大なエネルギーが必要となる。
一方、エアリフト方式は、水中機器が極めて少ないことから、ポンプリフト方式に比べて信頼性および耐久性に優れるものの、エネルギー効率が悪く、ポンプリフト方式以上のさらに多大なエネルギーを要するという問題がある。
【0005】
また、いずれのリフト方式の場合も、レアアース泥のスラリー液を船上に回収する際は、海上から海底までライザー管等の揚鉱用配管を延設する必要があり、この種の揚鉱用配管の敷設には、多大な費用と多大な作業時間を要するという問題がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、海上から海底までの揚鉱用配管の延設を不要とし得る海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱用バルーンを備えた海洋資源揚鉱システムおよび海洋資源揚鉱システムを用いた海洋資源の揚鉱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る海洋資源揚鉱用バルーンは、海底に沈められて、レアアース泥を吸着結合したエマルションの混合物を貯留する海洋資源揚鉱用バルーンであって、海中で前記混合物を内部に貯留し、下部にホース接続口を有するとともに、上部にカップラを備えたバルーン本体と、該バルーン本体の下部に装着されたウェイトと、前記バルーン本体の上部に装着された浮力体とを備え、海中で前記混合物を前記バルーン本体の内部に貯留した後、前記ウェイトを前記バルーン本体から切り離すことにより、前記バルーン本体が前記混合物と海水との比重差で海上まで浮上することを要旨とする。
【0007】
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムは、前述の海洋資源揚鉱用バルーンを備えた海洋資源揚鉱システムであって、海上から海中の採鉱位置に投入されて稼働することにより、泥質堆積層中のレアアース泥を解泥するとともに、解泥したレアアース泥とエマルションとを混合してレアアースを吸着結合したエマルションの混合物とする掘削装置と、該掘削装置及び前記海洋資源揚鉱用バルーンのホース接続口に接続され、前記混合物を通過させて前記バルーン本体内に貯留する回収ホースと、海上から海中に投入されて、前記掘削装置に接続された前記回収ホースを前記海洋資源揚鉱用バルーンのホース接続口に接続するとともにその接続状態を解除し、さらに、前記ウェイトを前記バルーン本体から切り離すロボットアーム付き無人潜水機と、前記ウェイトが切り離されて海水と前記混合物との比重差で海上まで浮上した前記バルーン本体内に貯留された前記混合物を吸引回収する吸引回収装置とを備えたことを要旨とする。
【0008】
更に、本発明の別の態様に係る海洋資源の揚鉱方法は、前述の海洋資源揚鉱システムを用いた海洋資源の揚鉱方法であって、前述の海洋資源揚鉱用バルーンを海上から海底に沈めるバルーン沈下工程と、前記掘削装置を海上から海中の採鉱位置に投入する掘削装置投入工程と、前記ロボットアーム付き無人潜水機を海上から海中に投入する無人潜水機投入工程と、前記掘削装置に接続された前記回収ホースを前記海洋資源揚鉱用バルーンのホース接続口に前記ロボッットアーム付き無人潜水機により接続する回収ホース接続工程と、該回収ホース接続工程の後、前記掘削装置を稼働して、泥質堆積層中のレアアース泥を解泥するとともに、解泥したレアアース泥とエマルションとを混合してレアアースを吸着結合したエマルションの混合物とするとともに、該混合物を前記回収ホースを通して前記海洋資源揚鉱用バルーンの前記バルーン本体内に貯留する混合物貯留工程と、該混合物貯留工程の後、前記ロボットアーム付き無人潜水機により、前記回収ホースの前記ホース接続口に対する接続状態を解除するとともに、前記ウェイトを前記バルーン本体から切り離す回収ホース及びウェイト接離工程と、前記ウェイトが切り離された前記バルーン本体が海水と前記混合物との比重差で海上まで浮上した後、前記吸引回収装置で前記バルーン本体内に貯留された前記混合物を吸引回収する混合物吸引回収工程とを含むことを要旨とする。
【0009】
なお、本明細書において、「解泥」とは、泥質堆積層の泥を解きほぐすことをいう。また、「泥質堆積層」とは、「非レアアース泥堆積層」および「レアアース泥堆積層」のいずれをも含む意味である。
本発明の一態様に係る海洋資源揚鉱用バルーン、別の態様に係る海洋資源揚鉱システム及び別の態様に係る海洋資源の揚鉱方法によれば、レアアース泥を吸着結合したエマルションの混合物を貯留した海洋資源揚鉱用バルーンを海水と前記混合物との比重差で海底から海上まで浮上させ、吸引回収装置により当該混合物を回収することができる。このため、海上から海底までの揚鉱用配管を設置することなく、レアアース泥を吸着結合したエマルションの混合物(アパタイト吸着エマルション)を回収することができる。
【0010】
従って、従来のポンプリフト方式では、深海からの海洋資源の揚鉱には水深分の揚程を圧送することが必要で多大なエネルギーが必要であり、また、エアーリフト方式では、エネルギー効率が悪く、ポンプリフト方式以上の多大なるエネルギーが必要となり、さらに海上から深海の海底まで配管を設置することに多大な費用と時間を要したが、本発明の一態様に係る海洋資源揚鉱用バルーン、別の態様に係る海洋資源揚鉱システム及び別の態様に係る海洋資源の揚鉱方法によれば、使用エネルギーの大幅な削減が可能で、多大な費用と時間を要した海上から深海の海底までの揚鉱用配管の設置を不要とすることができる。
【0011】
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、掘削装置は、海水よりも比重が軽いエマエルションで駆動するダウンホールモータであり、ダウンホールモータには、ダウンホールモータを駆動するエマルションを噴射するビットノズルが形成されるとともにダウンホールモータを駆動することにより回転する掘削用のビットが装着されていることが好ましい。これにより、ビットによる掘削力とノズルから噴射されるエマルションの流体力とで泥質堆積層中のレアアース泥を解泥することができる。
【0012】
そして、このエマルションは、海水よりも比重が軽く、また、このエマルションとレアアース泥とが結合された混合物も海水よりも比重が軽いものにすることができる。そのため、解泥したレアアース泥をエマルションに吸着させた混合物をダウンホールモータから自ら浮上させて回収ホースを通して海洋資源揚鉱用バルーンのバルーン本体内に円滑に貯留することができる。
【0013】
ここで、本発明に係るエマルションとして、油(例えばケロシン)に界面活性剤(例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウム)を混ぜたエマルションを用いることは好ましい。このようなエマルションを用いれば、比重が0.8から0.85になる。そのため、海水よりもエマルションが軽いので、混合物を自ら浮上させるためのエマルションとして好適である。
【0014】
そして、レアアース泥に含まれるレアアースの品位はppmオーダーである。そのため、揚鉱前に海底で選鉱を行い、不要な脈石を予め取り除くことができれば、揚泥にかかるコストを大幅に減らす上でより好ましい。
これに対し、本発明を完成する過程での研究によれば、レアアース泥中のアパタイトには、高品位にレアアースが吸着されている。そこで、上記エマルションにアパタイトを吸着させることにより、レアアース泥から不要な脈石を除き、高品位にレアアースが吸着されているアパタイトを効率良く液分離できる。そのため、エネルギー効率を向上させる上でより好適である。
【0015】
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、前記ダウンホールモータには、前記ビットの上部の位置に前記ビットとともに回転する攪拌翼が設けられていることが好ましい。
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、前記ダウンホールモータを囲う位置に配設された集鉱装置であって、上部及び下部が海中に開口している集鉱管と、該集鉱管の下部に設けられ、下方に向けて拡径して海中に開口している集鉱ホッパとを有する集鉱装置を備えていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、前記回収ホースは、前記集鉱管の上端に接続されることが好ましい。
更に、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、前記ダウンホールモータは、その基端部が前記集鉱装置に支持されるとともに前記基端部に前記エマルションの導入口が設けられ、該導入口に前記エマルションを供給可能に海上のエマルション供給船にエマルション供給ホースで連結されることが好ましい。
【0017】
これにより、海上のエマルション供給船からエマルション供給ホースを介してエマルションをダウンホールモータの導入口に供給することができる。
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、前記集鉱装置は、クローラ走行体に支持され、該クローラ走行体は、海上の前記エマルション供給船から水中ケーブルを介して電源が供給されるように構成されることが好ましい。
【0018】
これにより、海上のエマルション供給船からクローラ走行体を駆動し、ダウホータを海底上で移動させることができる。
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、前記吸引回収装置は、海上の混合物回収船に配置されており、海上に浮上した前記バルーン本体の前記カップラに接続される吸引カップラを先端に設けた混合物吸引ホースと、該混合物吸引ホースに接続され、前記バルーン本体内に貯留された前記混合物を吸引回収する吸引ポンプとを備えていることが好ましい。
【0019】
これにより、海上の混合物回収船に配置された吸引ポンプを駆動することにより、バルーン本体内に貯留された混合物を混合物吸引ホースを介して吸引回収することができる。
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、前記ロボットアーム付き無人潜水機は、遠隔操作型の無人潜水機であり、海上の前記混合物回収船から水中ケーブルを介して動力が供給されるように構成されることが好ましい。
【0020】
これにより、海上の混合物回収船からロボットアーム付き無人潜水機を駆動して、ダウンホールモータ(掘削装置)に接続された回収ホースを海洋資源揚鉱用バルーンのバルーン本体のホース接続口に接続するとともにその接続状態を解除し、さらに、ウェイトをバルーン本体から切り離すことができる。
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、前記ロボットアーム付き無人潜水機は、海底に到達した前記海洋資源揚鉱用バルーンのカップラを開から閉に切り替えることが好ましい。
【0021】
また、本発明の別の態様に係る海洋資源揚鉱システムにおいて、前記混合物が吸引回収された前記バルーン本体を回収する回収アームを備えていることが好ましい。
これにより、混合物が吸引回収されたバルーン本体を回収し、回収されたバルーン本体にウェイトを装着して再度利用することができる。
【発明の効果】
【0022】
上述のように、本発明によれば、深海からレアアース泥を回収するに際し、レアアース泥を吸着結合したエマルションの混合物を貯留した海洋資源揚鉱用バルーンを海水と前記混合物との比重差で海底から海上まで浮上させ、吸引回収装置により当該混合物を回収することができる。このため、海上から海底までの揚鉱用配管を設置することなく、レアアース泥を吸着結合したエマルションの混合物(アパタイト吸着エマルション)を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、海洋資源揚鉱用バルーンを海上から海底に沈める状態を示している。
図2】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、ダウンホールモータを海上から海中に投入し、ロボットアーム付き無人潜水機を海上から海中に投入する状態を示している。
図3】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、海底に到達した海洋資源揚鉱用バルーンのカップラをロボッットアーム付き無人潜水機により開から閉に切り替える状態を示している。
図4】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、海洋資源揚鉱用バルーンのカップラを開から閉に切り替えた後、ロボッットアーム付き無人潜水機により、回収ホースを海洋資源揚鉱用バルーンのホース接続口に接続する状態を示している。
図5】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、ダウンホールモータを稼働して、泥質堆積層中のレアアース泥を解泥するとともに、解泥したレアアース泥とエマルションとを混合してレアアースを吸着結合したエマルションの混合物とするとともに、該混合物を回収ホースを通して海洋資源揚鉱用バルーンのバルーン本体内に貯留する状態を示している。
図6図5における矢印6で示す部分の拡大図である。
図7図6におけるダウンホールモータの部分の拡大図である。
図8】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、ロボットアーム付き無人潜水機により、回収ホースのホース接続口に対する接続状態を解除する状態を示している。
図9】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、ロボットアーム付き無人潜水機により、ウェイトをバルーン本体から切り離す状態を示している。
図10】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、ウェイトが切り離されたバルーン本体が海水と混合物との比重差で海上まで浮上する状態を示している。
図11】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、吸引回収装置でバルーン本体内に貯留された混合物を吸引回収する状態を示している。
図12】本発明に係る海洋資源の揚鉱方法を説明するための図で、混合物を吸引回収したバルーン本体を回収アームで回収する状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。各実施形態は、深海に存在するレアアース泥等の海洋資源の揚鉱技術として、従来のポンプリフト方式やエアリフト方式に替わる、海洋資源揚鉱用バルーン、海洋資源揚鉱システム及び海洋資源の揚鉱方法の例である。
なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0025】
まず、本発明に係る海洋資源揚鉱用バルーンの一実施形態について図1図6及び図8乃至図10を適宜参照しつつ説明する。
図1乃至図6に示すように、海洋資源揚鉱用バルーン1は、海面C上から海底Dに沈められて、レアアース泥Drを吸着結合したエマルションEmの混合物Maを貯留するものであり、海中で混合物Maを内部に貯留するバルーン本体10を備えている。海洋資源揚鉱用バルーン1は、混合物回収船B上に設置されたバルーン投入装置58から海底Dに向けて投入される。
【0026】
そして、バルーン本体10の下部には、後述の回収ホース3を接続するためのホース接続口11が設けられ、バルーン本体10の上部には、開閉可能なカップラ12が設けられている。カップラ12は、開状態のときに、バルーン本体10の内部と外部とを連通させ、海中に沈められるときにバルーン本体10の外部から内部に海水が充填可能となる。また、カップラ12は、閉状態のときに、バルーン本体10の内部と外部との連通状態を遮断するとともに、後述する吸引カップラ55と接続可能となる。
【0027】
また、バルーン本体10の下部には、連結ロープ13aを介してウェイト13が装着されている。ウェイト13は、海洋資源揚鉱用バルーン1を海中に投入した際に、その自重によりバルーン本体10を海底Dにまで沈め、かつバルーン本体10の内部に混合物Maを十分に貯留した際にその自重によりバルーン本体10の浮上を阻止する荷重に設定される。
【0028】
更に、バルーン本体10の上部には、浮力体14が装着されている。この浮力体14は、後述するように、海中で混合物Maをバルーン本体10の内部に貯留した後、ウェイト13をバルーン本体10から切り離すことにより、バルーン本体10が混合物Maと海水との比重差で海上まで浮上するときに、バルーン本体10の浮上力を補助する程度の浮力を有する。
【0029】
そして、海洋資源揚鉱用バルーン1のバルーン本体10は、図8乃至図10に示すように、海中で混合物Maをバルーン本体10の内部に貯留した後、回収ホース3の接続を解除するともに、ウェイト13をバルーン本体10から切り離すことにより、バルーン本体10が混合物Maと海水との比重差で海上まで浮上する。
次に、この海洋資源揚鉱用バルーン1を用いた海洋資源揚鉱システムの一実施形態について、図1乃至図12を適宜参照しつつ説明する。
【0030】
図2乃至図12に示すように、海洋資源揚鉱システム100は、前述の海洋資源揚鉱用バルーン1と、掘削装置としてのダウンホールモータ2と、回収ホース3と、ロボットアーム付き無人潜水機4と、吸引回収装置5と、回収アーム57とを備えている。
ここで、ダウンホールモータ2は、海上のエマルション供給船Aから海中の採鉱位置に投入されて稼働することにより、レアアース泥床OD(図6参照)の泥質堆積層中のレアアース泥Drを解泥するとともに、解泥したレアアース泥DrとエマルションEmとを混合してレアアースを吸着結合したエマルションの混合物Maとするものである。
【0031】
ダウンホールモータ2の構成について具体的に述べると、図7に示すように、上下方向に延びる連結ハウジング23と一体に形成されたハウジング15を備えている。連結ハウジング23内には、ダウンホールモータ2の駆動流体としての海水よりも比重が軽いエマルションEmが注入される駆動流体供給路23aが形成される。連結ハウジング23上端には、図示しないエマルション供給用カップラを介して図2に示すエマルション供給ホース26が接続される。エマルション供給ホース26は、図2に示すように、エマルション供給船A上のホースリール27に巻回されているとともに、エマルション供給船A上に設置されたエマルション圧送ポンプ(図示せず)に連結されている。エマルション供給船A上には、エマルション圧送ポンプの駆動をオペレータの操作に応じて制御するコントローラ(図示せず)が設けられている。
【0032】
連結ハウジング23と一体に形成されたハウジング15は、図7に示すように、上部ハウジング16と、上部ハウジング16の下端に同軸に装着された中空円筒状の下部ハウジング17とを有する。ダウンホールモータ2は、使用時には、ハウジング15の軸線を上下方向として海中に配備される。ハウジング15は、内部が軸方向に沿って貫通しており、上端部及び下端部に開口を有している。
【0033】
ハウジング15の上部ハウジング16の上部開口に連通するエマルション流路が、エマルションEmをダウンホールモータ2に導入するエマルション供給路18になっている。このエマルション供給路18が、エマルションEmの導入口を構成する。本実施形態では、駆動流体として、高圧のエマルションEmが、エマルション供給ホース26から連結ハウジング23の駆動流体供給路23aを介してエマルション供給路18に導入される。
【0034】
上部ハウジング16の下端には、インロー凸部16tが設けられ、下部ハウジング17の上端には、インロー凹部17dが設けられている。インロー凸部16tとインロー凹部17dとは、インロー嵌合され、その状態で相互が連結されている。そして、上部ハウジング16には、第1シャフト20が回転自在に支持され、下部ハウジング17には、第2シャフト30が回転自在に支持されている。
【0035】
上部ハウジング16は、軸方向で下部の位置に、第1シャフト支持部51を備えている。第1シャフト支持部51は、複数の軸受51jと、複数の軸受51jを上下の軸方向から自身の鍔部で挟持するようにそれぞれ装着される第1のブッシュ41及び第2のブッシュ42と、第1のブッシュ41の内周面と第1シャフト20の基端部21の外周面との間に介装された第1のシール61と、第2のブッシュ42の内周面と第1シャフト20の基端部21の外周面との間に介装された第2のシール62と、下部開口に装着される円環状の支軸部キャップ82と、を有する。
【0036】
第1シャフト支持部51は、上記インロー嵌合による連結時に、上部ハウジング16内の凹の段部に装着された複数の軸受51jおよびその両側の二つのブッシュ41、42が、上部ハウジング16の下部開口部に装着された支軸部キャップ82によって軸方向に挟圧されることにより、装着状態が保持される。
その装着状態において、第1シャフト支持部51は、上部ハウジング16の軸線に対して所定の偏心距離Eだけ偏心した位置に第1シャフト20の基端部21を支持するように複数の軸受51jが軸線方向に沿って配置され、複数の軸受51jを介して第1シャフト20の基端部21を回転自在に支持する。第1シャフト支持部51の複数の軸受51jの両側は、第1のシール61および第2のシール62により、第1シャフト20の基端部21の外周面と上部ハウジング16の内周面との間がシールされる。
【0037】
下部ハウジング17には、軸方向の上下に離隔して、二つの第2シャフト支持部52、53が設けられている。上部側を支持する第2シャフト支持部52は、複数の軸受52jと、複数の軸受52jを軸方向の上方から自身鍔部で挟持するように装着される第3のブッシュ43と、第3のブッシュ43の内周面と第2シャフト30の外周面との間に介装された第3のシール63と、を有して構成されている。
【0038】
また、下部側を支持する第2シャフト支持部53は、複数の軸受53jと、複数の軸受53jを軸方向の下方から自身鍔部で挟持するように装着される第4のブッシュ44と、第4のブッシュ44の内周面と第2シャフト30の外周面との間に介装された第4のシール64と、円環状のフロントキャップ81と、を有して構成されている。
第2シャフト30の外周面には、軸方向の中央部に、凸の段部31mが形成されており、上下の軸受52j、53jの凸の段部31m側の側面が、凸の段部31mの側面に当接するように装着されるとともに、下部ハウジング17の下部開口部に装着されたフロントキャップ81の装着によって軸方向に挟圧されることにより、装着状態が保持される。なお、フロントキャップ81は、図示しない複数の埋め込みボルトにより下方から固定される。
【0039】
その装着状態において、上下の第2シャフト支持部52、53は、下部ハウジング17の軸線に対して同軸となる位置に第2シャフト30の外周面を支持するように、複数の軸受52j、53jが軸線方向に沿って配置され、複数の軸受52j、53jを介して第2シャフト30の外周面を回転自在に支持する。
また、第2シャフト支持部52、53の複数の軸受52j、53jの上下の側は、第3のシール63および第4のシール64により、第2シャフト30の外周面と下部ハウジング17の内周面との間がシールされる。なお、本実施形態では、各シャフト20、30を支持する複数の軸受51j、52j、53jに、スラスト荷重およびラジアル荷重を受ける深溝玉軸受を使用しているが、これに限定されず、種々の軸受を用いることができる。
【0040】
ここで、本実施形態のダウンホールモータ2は、前述した下部ハウジング17内に、流体モータ機構を構成する駆動機構部70が設けられている。
詳しくは、第1シャフト20は、基端部21と、基端部21の先端側に形成されたインナロータ部22とを一体に有して構成されている。基端部21の上面には、前述したエマルション供給路18に連通して、基端部21の軸方向に沿ってエマルション導入路25が形成されている。基端部21のエマルション導入路25は、基端部21とインナロータ部22との境となる位置まで延設されている。
【0041】
そして、基端部21とインナロータ部22との境となる位置には、複数のエマルション導出口24が、エマルション導入路25の先端部と下部ハウジング17の内部とを連通するように径方向に形成されている。つまり、第1シャフト20には、エマルション供給路18側から順に連通形成された、エマルション導入路25およびエマルション導出口24によって、自身基端側の連結ハウジング23内部の駆動流体供給路23aから導入されたエマルションEmを自身先端側のエマルション導出口24から吐出可能な駆動流体流路が設けられている。
【0042】
さらに、インナロータ部22は、第1シャフト20の基端部21の先端から軸方向に沿って同軸に下方に向けて垂下された状態で延設され、その延設された部分に、雄ねじ状の外周面を有している。一方、第2シャフト30は、金属製で中空円筒状をなす外筒部31と、外筒部31内に配置されたゴム製のアウタロータ部32とを一体にして構成され、アウタロータ部32は、雌ねじ状の内周面を有している。
【0043】
本実施形態の駆動機構部70は、内周面に(N+1)条雌ねじを有するアウタロータ部32と、外周面にN条雄ねじを有するインナロータ部22とを備える。そして、アウタロータ部32の回転軸線CL2に対し、インナロータ部22の回転軸線CL1は、相互の軸心が所定の偏心距離Eだけ離れた平行な2軸となるように配置され、インナロータ部22とともにアウタロータ部32が、N/(N+1)の回転角度で連れ回り駆動可能に構成されている。但し、Nは1以上の自然数である。
【0044】
本実施形態の例では、駆動機構部70は、インナロータ部22の螺旋部22rが、左巻き2条雄ねじになっており、アウタロータ部32の螺旋部32rの形状が、120度間隔の頂点を有する横断面が3角リング形状の左巻き3条雌ねじになっている。そしてインナロータ部22外周面の螺旋部22rがアウタロータ部32の螺旋部32rに内装され、相互の隙間には、駆動に応じて独立した密閉空間とされるキャビティKが軸方向の複数個所に画成されている。
【0045】
第2シャフト30の先端には、掘削用のビット90が装着される。本実施形態では、第2シャフト30の外筒部31の先端は、フロントキャップ81よりも下部ハウジング17の下方に張り出してビット装着部33とされている。ビット装着部33の外周面には、ビット90を接続可能な雄ねじが形成され、ビット90は、自身基端部が第2シャフト30先端のビット装着部33に接続される。
【0046】
ビット90の下面には、エマルションEmを吐出するビットノズル91が、中央部から放射状に複数に分岐して開口しており、複数のキャビティKを経た高圧のエマルションEmをビットノズル91から噴射可能になっている。なお、ビットノズル91を設ける位置は、本実施形態のようにビット90自体に形成する他、ビット90の近傍に設けることができる。
【0047】
これにより、このダウンホールモータ2は、インナロータ部22とアウタロータ部32とが、インナロータ部22の回転軸線CL1とアウタロータ部32の回転軸線CL2とを並列に且つ所定の偏心距離Eだけ離してそれぞれ回転自在に支承される。そして、このダウンホールモータ2を駆動するときは、エマルション供給路18、エマルション導入路25、エマルション導出口24を介して駆動機構部70の上部の位置31uにエマルションEmを導入し、インナロータ部22とアウタロータ部32とで画成されるキャビティKに高圧のエマルションEmを流し込む。
【0048】
これにより、このダウンホールモータ2は、ねじポンプの原理(逆作動)でインナロータ部22とアウタロータ部32とが所定比率で回転され、アウタロータ部32と一体の第2シャフト30を回転部として回転駆動し、その外筒部31を延設してなるビット装着部33に装着されたビット90を回転しつつ、ビット90の回転による掘削力と、ビット90のビットノズル91から噴射されるエマルションEmの流体力とによってレアアース泥床ODの泥質堆積層を解泥可能になっている。なお、本実施形態では、レアアース泥床ODの泥質堆積層を解泥する掘削装置としてダウンホールモータを例に説明したが、これに限らず、レアアース泥床ODの泥質堆積層を解泥可能な掘削装置であれば、種々の掘削装置を採用できる。
【0049】
さらに、ダウンホールモータ2の外周であってビット90の上部の位置には、複数の攪拌翼212〜217を有する攪拌部218が設けられている。本実施形態の攪拌部218は、ビット90と一体に形成された中空円筒状の攪拌軸200を有する。攪拌軸200は、ハウジング15の外周面を囲繞するようにハウジング15と同軸に配置される。攪拌軸200は、ハウジング15との間に軸受201が介装され、ハウジング15と干渉することなく、回転部である第2シャフト30と一体で回転するように構成されている。
【0050】
ここで、攪拌部218は、複数の攪拌翼として、6枚の攪拌翼212〜217を有する。各攪拌翼212〜217は、中心部がそれぞれ攪拌軸200と一体に設けられ、相互が軸方向上下に離隔配置されている。各攪拌翼212〜217は、攪拌軸200の中心から径方向に放射状に延びる複数の羽根を有する。
攪拌部218は、所定方向に回転駆動されると、上方に配置された第1から第3の攪拌翼212〜214は下降流を形成し、下方に配置された第4から第6の攪拌翼215〜217は上昇流を形成するようになっている。これにより、ダウンホールモータ2が駆動されると、第2シャフト30の回転とともに、6枚の攪拌翼212〜217をも同時に回転し、所期の攪拌動作が行えるようになっている。なお、第1の攪拌翼212が上昇流を形成するように構成してもよい。
【0051】
そして、図6及び図7に示すように、ダウンホールモータ2を囲う位置には、ダウンホールモータ2と同軸上に集鉱装置101が配設されている。集鉱装置101は、上部及び下部が海中に開口している集鉱管102と、集鉱管102の下部に設けられ、下方に向けて拡径して海中に開口している集鉱ホッパ103とを有する。
ダウンホールモータ2の基端部、即ちハウジング15から一体に延びる連結ハウジング23は、集鉱装置101の集鉱管102に支持されている。
【0052】
また、集鉱装置101は、図6に示すように、海底D上を走行可能なクローラ走行体6に支持されている。クローラ走行体6は、走行体本体6aと、走行体本体6aの下部に設けられたクローラ部6bとを備えている。集鉱装置101は、クローラ走行体6の走行体本体6aに支持されている。このため、クローラ走行体6が海底D上を走行することにより、集鉱装置101及びその内部にあるダウンホールモータ2はクローラ走行体6とともに海底D上を移動する。
【0053】
なお、集鉱装置101は、クローラ走行体6の走行体本体6aに上下移動不可能に支持されているが、用途に応じ走行体本体6aに対し昇降可能に支持されていてもよい。
クローラ走行体6は、図2に示すように、海上のエマルション供給船A上に配置された巻き揚げ機29から滑車28aを介して延びるワイヤロープ28によって吊り下げられ、ダウンホールモータ2とともに海中に投入されるようになっている。
【0054】
そして、クローラ走行体6は、図2に示すように、海上のエマルション供給船Aから水中ケーブル65を介して電源が供給されるように構成される。水中ケーブル65は、エマルション供給船A上に設置されたケーブルリール67から起立ポスト66の先端に設けられた滑車65aを介して延びている。
次に、回収ホース3は、図5及び図6に示すように、掘削装置としてのダウンホールモータ2及び海洋資源揚鉱用バルーン1のホース接続口11に接続され、レアアースを吸着結合したエマルションの混合物Maを通過させてバルーン本体10内に貯留するものである。回収ホース3は、具体的には、図6に示すように、一端が集鉱管102の上端に接続され、他端が、後述するように、ロボットアーム付き無人潜水機4により、海洋資源揚鉱用バルーン1のホース接続口11に接続されるとともに、その接続状態が解除される。
【0055】
回収ホース3には、複数の浮力体3aが取り付けられており、海中にあるときには複数の浮力体3aにより浮力が付与される。
また、ロボットアーム付き無人潜水機4は、海上の混合物回収船Bから海中に投入されて、図3に示すように、海底Dに到達した海洋資源揚鉱用バルーン1のカップラ12を開から閉に切り替える。
【0056】
また、ロボットアーム付き無人潜水機4は、海洋資源揚鉱用バルーン1のカップラ12を開から閉に切り替えた後、図4に示すように、掘削装置としてのダウンホールモータ2に接続された回収ホース3を海洋資源揚鉱用バルーン1のホース接続口11に接続する。
更に、ロボットアーム付き無人潜水機4は、レアアースを吸着結合したエマルションの混合物Maをバルーン本体10内に貯留した後、図8に示すように、海洋資源揚鉱用バルーン1のホース接続口11に接続した回収ホース3の接続状態を解除する。
【0057】
また、ロボットアーム付き無人潜水機4は、回収ホース3の接続状態を解除した後、図9に示すように、バルーン本体10に連結ロープ13aを介して装着されたウェイト13を連結ロープ13aのところで切断し、ウェイト13をバルーン本体10から切り離す。
このロボットアーム付き無人潜水機4は、遠隔操作型の無人潜水機であり、海上の混合物回収船Bの動力供給装置46から水中ケーブル45を介して動力が供給されるように構成される。混合物回収船B上には、動力供給装置46の駆動をオペレータの操作に応じて制御するコントローラ(図示せず)が設けられている。
【0058】
なお、ロボットアーム付き無人潜水機4の電源は、ロボットアーム付き無人潜水機4内に内蔵されているが、混合物回収船Bから水中ケーブル45とは別途の水中ケーブルにより供給するようにしてもよい。
次に、吸引回収装置5は、図10及び図11に示すように、ウェイト13が切り離されたバルーン本体10が海水と混合物Maとの比重差で海上まで浮上した後、バルーン本体10内に貯留された混合物Maを吸引回収するものである。
【0059】
このため、吸引回収装置5は、海上の混合物回収船Bに配置されており、図11に示すように、海上に浮上したバルーン本体10のカップラ12に接続される吸引カップラ55を先端に設けた混合物吸引ホース54と、混合物吸引ホース54に接続され、バルーン本体10内に貯留された混合物Maを吸引回収する吸引ポンプ56とを備えている。
また、回収アーム57は、海上の混合物回収船Bに設置され、その先端に吸引カップラ55を取り付けている。そして、回収アーム57は、吸引回収装置5がバルーン本体10内に貯留された混合物Maを吸引回収した後、先端に取り付けた吸引カップラ55及びカップラ12を介してバルーン本体10を混合物回収船B上に回収する。
【0060】
次に、前述の海洋資源揚鉱システム100を用いた本発明に係る海洋資源の揚鉱方法の一実施形態について、図1乃至図12を適宜参照しつつ説明する。
海洋資源としてのレアアース泥Drを吸着結合したエマルションEmの混合物Maを揚鉱するには、先ず、エマルション供給船A及び混合物回収船Bを目的とする海域の海上に停泊させる。
【0061】
そして、図1に示すように、複数の海洋資源揚鉱用バルーン1を、海上の混合物回収船Bのバルーン投入装置58から所定の間隔で海底Dに沈める(バルーン沈下工程)。
このバルーン沈下工程においては、海洋資源揚鉱用バルーン1のカップラ12は開いた状態となっており、バルーン本体10内に海水が入り込む。
次いで、図2に示すように、掘削装置としてのダウンホールモータ2をクローラ走行体6とともに海上のエマルション供給船Aから海中の採鉱位置に投入する(掘削装置投入工程)。
【0062】
この掘削装置投入工程においては、巻き揚げ機29から滑車28aを介してワイヤロープ28を繰り出しダウンホールモータ2をクローラ走行体6とともに海底Dに沈める(図3参照)。
なお、ダウンホールモータ2の投入に際し、図2及び図6に示すように、回収ホース3の一端を、ダウンホールモータ2を支持する集鉱管102の上端に接続しておく。
【0063】
また、ダウンホールモータ2の投入に際し、ダウンホールモータ2は、ビット90が集鉱ホッパ103の下端から張り出しているので、ビット90をレアアース泥床ODに押し当てる位置に配備しておく。
そして、図2に示すように、ダウンホールモータ2の海中への投入と同時にロボットアーム付き無人潜水機4を海上の混合物回収船Bから海中に投入する(無人潜水機投入工程)。
【0064】
そして、ロボットアーム付き無人潜水機4を海中に投入した後、オペレータが混合物回収船B上からロボットアーム付き無人潜水機4を操作し、図3に示すように、ロボットアーム付き無人潜水機4により海底Dに到達した海洋資源揚鉱用バルーン1のカップラ12を開から閉に切り替える(カップラ閉鎖工程)。
次いで、図4に示すように、オペレータが混合物回収船B上からロボットアーム付き無人潜水機4を操作し、ダウンホールモータ2(集鉱管102)に一端が接続された回収ホース3の他端を、海洋資源揚鉱用バルーン1のホース接続口11にロボットアーム付き無人潜水機4により接続する(回収ホース接続工程)。
【0065】
ここで、回収ホース3の一端がダウンホールモータ2(集鉱管102)に接続された状態では、図3に示すように、複数の浮力体3aの作用により回収ホース3の他端が海中で浮遊している。このため、ロボットアーム付き無人潜水機4による回収ホース3の接続作業を容易に行うことができる。
そして、回収ホース接続工程の後、図5及び図6に示すように、掘削装置としてのダウンホールモータ2を稼働して、泥質堆積層中のレアアース泥Drを解泥するとともに、解泥したレアアース泥DrとエマルションEmとを混合してレアアースを吸着結合したエマルションの混合物Maとするとともに、混合物Maを回収ホース3を通して海洋資源揚鉱用バルーン1のバルーン本体10内に貯留する(混合物貯留工程)。
【0066】
ここで、ダウンホールモータ2の稼働に際しては、エマルション供給船A上のエマルション圧送ポンプを駆動して高圧のエマルションEmをエマルション供給ホース26から連結ハウジング23内の駆動流体供給路23aに注入し、ダウンホールモータ2のエマルション供給路18に導入する。そして、エマルション供給路18に導入された高圧のエマルションEmは、第1シャフト20のエマルション導入路25を介してエマルション導出口24から導出されて駆動機構部70の上部の位置31uに供給される(図7の符号M1)。
【0067】
さらに、高圧のエマルションEmは、インナロータ部22とアウタロータ部32との対向空間に画成された複数のキャビティKに順次に導入される。これにより、駆動機構部70は、キャビティKに作用するエマルションEmの導入圧により、インナロータ部22とアウタロータ部32とが所定比率で連れ回りを開始する。
つまり、駆動機構部70において、エマルションEmの導入圧が第2シャフト30の回転駆動力に変換される。駆動機構部70で第2シャフト30が回転駆動すると、第2シャフト30の先端に設けられたビット90が共に回転する。エマルション供給路18から導入されたエマルションEmは、駆動機構部70の下部の位置31sを経て(図7の符号M2)、ビット90先端のビットノズル91から装置外に噴射される(図7の符号M3)。
【0068】
これにより、このダウンホールモータ2は、図6に示すように、ビット90の回転による掘削力と、ビット90のビットノズル91から噴射されるエマルションEmの流体力とによってレアアース泥床ODのレアアース泥Drを解泥できる。そして、このダウンホールモータ2では、ビット90が回転駆動されると、ビット90の上部の位置にビット90と一体に設けられた攪拌部218の複数の攪拌翼212〜217が共に回転する。
【0069】
これにより、ビット90および攪拌部218の複数の攪拌翼212〜217の回転による流れに導かれ、解泥されたレアアース泥Drおよびその周囲の海水WがエマルションEmとともに集鉱ホッパ103内に送り込まれる(図7の符号M4)。
さらに、集鉱ホッパ103下部の複数の攪拌翼215〜217が上昇流を形成しているので、集鉱ホッパ103の下部に導かれたレアアース泥Drは、攪拌されつつ集鉱ホッパ103の上方に移動していく。一方、集鉱ホッパ103上部の複数の攪拌翼212〜214が下降流を形成しているので、集鉱ホッパ103上部のエマルションEmは、攪拌されつつ集鉱ホッパ103の下方に移動していく。
【0070】
集鉱ホッパ103内に導入されたレアアース泥DrとエマルションEmは、集鉱ホッパ103内で相互に混合される。そして、レアアース泥DrがエマルションEmに接触することにより、レアアース元素が濃集したアパタイトがエマルションEmに吸着される。これにより、海中で液分離された混合物Maとしてアパタイト吸着エマルションが生成される。
【0071】
ダウンホールモータ2が引き続き駆動されると、集鉱ホッパ103内の混合物Ma(アパタイト吸着エマルション)は、次第に集鉱ホッパ103上部の集鉱管102の端部まで満たされていく。そして、集鉱ホッパ103から集鉱管102の上部に行くほど、第1の攪拌翼212による下降流の力が弱くなる。
そのため、上部の集鉱管102にて集鉱ホッパ103から一定の距離を超えて移動した混合物Maは、海水Wとの比重差によって自ら集鉱管102内で浮上を開始する。なお、第1の攪拌翼212が上昇流を形成するように構成すれば、浮上を開始させるタイミングを調整することができる。そして、集鉱管102の上部には、回収ホース3が接続されているため、図5及び図6に示すように、浮上を開始した混合物Maを、回収ホース3を通して海洋資源揚鉱用バルーン1のバルーン本体10内に貯留することができる。
【0072】
以降、ビット90の張り出し長さに応じた所定の掘削深度まで掘削後、図6に示すように、クローラ走行体6を水平方向に移動させて、所定の掘削深度での採鉱を継続する。本実施形態では、クローラ走行体6を水平方向に移動させることで、集鉱装置101と共にダウンホールモータ2を一体で水平方向に平行移動させながらレアアース泥床ODからレアアース泥Drを連続的に採鉱することができる。
【0073】
そして、駆動流体として供給されるエマルションEmは、海水よりも比重が軽く、また、このエマルションEmとレアアース泥Drとが結合された混合物Maも海水よりも比重が軽いものにすることができる。そのため、図5に示すように、エマルションEmにレアアース泥Drを吸着させた混合物Maを海洋資源揚鉱用バルーン1のバルーン本体10内で海水と置換させて充填させることができる。
【0074】
そして、この混合物貯留工程の後、図8に示すように、オペレータが混合物回収船B上からロボットアーム付き無人潜水機4を操作し、ロボットアーム付き無人潜水機4により、回収ホース3のホース接続口11に対する接続状態を解除するとともに、図9に示すように、連結ロープ13aのところで切断し、ウェイト13をバルーン本体10から切り離す(回収ホース及びウェイト接離工程)。
【0075】
回収ホース3のホース接続口11に対する接続状態を解除するともにウェイト13をバルーン本体10から切り離すと、図10に示すように、バルーン本体10は、海水と混合物Maとの比重差で海上に向かって浮上する。
そして、図11に示すように、ウェイト13が切り離されたバルーン本体10が海水と混合物Maとの比重差で海上まで浮上した後、混合物回収船B上の吸引回収装置5でバルーン本体10内に貯留された混合物Maを吸引回収する(混合物吸引回収工程)。
【0076】
この混合物吸引回収工程においては、混合物吸引ホース54の先端に設けられ且つ回収アーム57の先端に配置された吸引カップラ55を、海上に浮上したバルーン本体10のカップラ12に接続し、混合物吸引ホース54に接続された吸引ポンプ56で、バルーン本体10内に貯留された混合物Maを吸引回収する。吸引回収された混合物Maは図示しない回収器に回収される。
【0077】
最後に、この混合物吸引回収工程の後、図12に示すように、回収アーム57を駆動して、回収アーム57の先端に取り付けた吸引カップラ55及びカップラ12を介して、混合物Maが回収されたバルーン本体10を混合物回収船B上に回収する(バルーン本体回収工程)。
そして、混合物回収船B上に回収されたバルーン本体10にウェイト13を装着し、再度海底Dへ投入して上記一連のバルーン沈下工程、掘削装置投入工程、無人潜水機投入工程、カップラ閉鎖工程、回収ホース接続工程、混合物貯留工程、回収ホース及びウェイト接離工程、混合物吸引回収工程、及びバルーン本体回収工程を繰り返し、海洋資源の揚鉱工程が終了する。
【0078】
このように、本実施形態に係る海洋資源揚鉱用バルーン1、海洋資源揚鉱システム100及び海洋資源の揚鉱方法によれば、レアアース泥Drを吸着結合したエマルションEmの混合物Maを貯留した海洋資源揚鉱用バルーン1を海水と混合物Maとの比重差で海底Dから海面C上まで浮上させ、吸引回収装置5により当該混合物Maを回収することができる。このため、海上から海底までの揚鉱用配管を設置することなく、レアアース泥Drを吸着結合したエマルションEmの混合物Ma(アパタイト吸着エマルション)を回収することができる。
【0079】
従って、従来のポンプリフト方式では、深海からの海洋資源の揚鉱には水深分の揚程を圧送することが必要で多大なエネルギーが必要であり、また、エアーリフト方式では、エネルギー効率が悪く、ポンプリフト方式以上の多大なるエネルギーが必要となり、さらに海上から深海の海底まで配管を設置することに多大な費用と時間を要したが、本実施形態に係る海洋資源揚鉱用バルーン1、海洋資源揚鉱システム100及び海洋資源の揚鉱方法によれば、使用エネルギーの大幅な削減が可能で、多大な費用と時間を要した海上から深海の海底までの揚鉱用配管の設置を不要とすることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る海洋資源揚鉱システム100において、掘削装置は、海水よりも比重が軽いエマエルションで駆動するダウンホールモータ2であり、ダウンホールモータ2には、ダウンホールモータ2を駆動するエマルションEmを噴射するビットノズル91が形成されるとともにダウンホールモータ2を駆動することにより回転する掘削用のビット90が装着されている。これにより、ビット90の回転による掘削力とビットノズル91から噴射されるエマルションEmの噴射による流体力とで泥質堆積層中のレアアース泥Drを解泥することができる。
【0081】
そして、このエマルションEmは、海水よりも比重が軽く、また、このエマルションEmとレアアース泥Drとが結合された混合物Maも海水よりも比重が軽いものにすることができる。そのため、解泥したレアアース泥DrをエマルションEmに吸着させた混合物Maをダウンホールモータ2から自ら浮上させて回収ホース3を通して海洋資源揚鉱用バルーン1のバルーン本体10内に円滑に貯留することができる。
【0082】
そして、レアアース泥Drに含まれるレアアースの品位はppmオーダーである。そのため、揚鉱前に海底で選鉱を行い、不要な脈石を予め取り除くことができれば、揚泥にかかるコストを大幅に減らす上でより好ましい。
これに対し、本発明を完成する過程での研究によれば、レアアース泥Dr中のアパタイトには、高品位にレアアースが吸着されている。そこで、上記エマルションEmにアパタイトを吸着させることにより、レアアース泥Drから不要な脈石を除き、高品位にレアアースが吸着されているアパタイトを効率良く液分離できる。そのため、エネルギー効率を向上させる上でより好適である。
【0083】
また、本実施形態に係る海洋資源揚鉱システム100において、ダウンホールモータ2には、ビット90の上部の位置にビット90とともに回転する攪拌翼212〜217が設けられ、更に、ダウンホールモータ2を囲う位置に配設された集鉱装置101であって、上部及び下部が海中に開口している集鉱管102と、集鉱管102の下部に設けられ、下方に向けて拡径して海中に開口している集鉱ホッパ103とを有する集鉱装置101を備えている。
【0084】
これにより、ダウンホールモータ2のビット90の回転による掘削力とビットノズル91から噴射されるエマルションEmの噴射による流体力とで泥質堆積層中のレアアース泥Drを解泥しつつ、集鉱ホッパ103内にて、ビット90の上部の位置にある攪拌翼212〜217でレアアース泥Drと海水W及びエマルションEmを混合し、レアアース泥Drを吸着結合したエマルションEmの混合物Ma(アパタイト吸着エマルション)を生成することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る海洋資源揚鉱システム100において、回収ホース3は、集鉱管102の上端に接続される。
これにより、集鉱ホッパ103内で順次生成された混合物Maを集鉱ホッパ103から集鉱管102へと移動させて混合物Maを安定させつつ、海水Wとの比重差によって混合物Ma自ら集鉱管102内を浮上させ、混合物Maを集鉱管102に接続された回収ホース3内を通過させてバルーン本体10内で海水と置換させて充填させることができる。
【0086】
そして、バルーン本体10内に混合物Maを充填後には、バルーン本体10は、海水と混合物Maとの比重差で海底Dから海面C上まで浮上できるので、エマルションEmにレアアース泥Drを吸着させた混合物Maを容易に回収することができる。このため、前述したように、従来のポンプリフト方式やエアリフト方式で必要とする海上から海底までのライザー管等の揚鉱用配管の延設が不要である。
【0087】
なお、バルーン本体10自体の重さは非常に軽いため、混合物Maを貯留したバルーン本体10を海水と混合物Maとの比重差で海底Dから海面C上まで容易に浮上させることができる。
また、従来のポンプリフト方式では、深海からの揚泥には水深分の揚程を圧送する多大なエネルギーが必要となり、エアリフト方式では、エネルギー効率が悪く、ポンプリフト方式以上のさらなる多大なエネルギーが必要となるところ、本実施形態に係る海洋資源揚鉱用バルーン1、海洋資源揚鉱システム100及び海洋資源の揚鉱方法によれば、前述したように、安定した運転性能を確保するとともに、揚鉱に要するエネルギーを大幅に削減可能なので、エネルギー効率を向上させることができる。
【0088】
また、特許文献1に記載されるようなターボ形のポンプの場合、機器はかなり複雑な形状のため、深海(例えば水深6000m)の高圧下では、局部的形状や各部の肉厚に強度的に十分な考慮が必要となる。これに対し、本実施形態の海洋資源揚鉱システム100であれば、ダウンホールモータ2が円筒形状のシンプルな形状のため、深海の高圧下での強度的対応に優位な形状である。よって、安定した運転性能を確保する上で好適である。
【0089】
さらに、特許文献1に記載されるようなターボ形のポンプの場合、機器はかなり大型かつ複雑な形状のため、複数のポンプの、各号機相互の接続に大きな横幅を必要とする。これに対し、本実施形態の海洋資源揚鉱システム100であれば、ダウンホールモータ2は単純な円筒形状のため、シンプルな配管接続が可能である。
また、本実施形態に係る海洋資源揚鉱システム100において、ダウンホールモータ2は、その基端部が集鉱装置101に支持されるとともに基端部にエマルションEmの導入口(エマルション供給路18)が設けられ、導入口にエマルションEmを供給可能に海上のエマルション供給船Aにエマルション供給ホース26で連結されている。これにより、海上のエマルション供給船Aからエマルション供給ホース26を介してエマルションEmをダウンホールモータ2の導入口に供給することができる。
【0090】
そして、本実施形態に係る海洋資源揚鉱システム100におけるダウンホールモータ2によれば、従来のダウンホールモータのような、高圧の駆動流体で作り出されたロータの回転力を、ユニバーサルジョイントを介してシャフトに伝達していた構成と比べて、アウタロータ部32の回転駆動にユニバーサルジョイントが不要なので、駆動機構部70の全長を短くしてコンパクトに構成できる。
【0091】
また、このダウンホールモータ2によれば、アウタロータ部32の回転駆動にユニバーサルジョイントが不要なので、ユニバーサルジョイントやその連結用ロッドも不要なことから、これらの強度に依存するという問題も解消される。
また、インナロータ部22の回転よりも減速されたアウタロータ部32の回転力をビット90に直接伝達できる。そのため、第1シャフト20のトルクよりも大きな回転トルクを、第2シャフト30の先端に設けられたビット90に効率良く伝達可能なので、より高トルクに対応できる。
【0092】
さらに、このダウンホールモータ2によれば、インナロータ部22の外径よりも大きなアウタロータ部32の外筒部31を支承する大きな軸受52j、53jを有する第2シャフト支持部52、53によって、ビット90に加わる負荷を受けることができる。そのため、駆動機構部70の全長をコンパクトに構成しつつも、より信頼性の高い海洋資源揚鉱システム100を提供できる。
【0093】
また、本実施形態に係る海洋資源揚鉱システム100において、集鉱装置101は、クローラ走行体6に支持され、クローラ走行体6は、海上のエマルション供給船Aから水中ケーブル65を介して電源が供給されるように構成される。これにより、海上のエマルション供給船Aからクローラ走行体6を駆動し、ダウンホールモータ2を海底D上で移動させることができる。
【0094】
また、本実施形態に係る海洋資源揚鉱システム100において、吸引回収装置5は、海上の混合物回収船Bに配置されており、海上に浮上したバルーン本体10のカップラ12に接続される吸引カップラ55を先端に設けた混合物吸引ホース54と、混合物吸引ホース54に接続され、バルーン本体10内に貯留された混合物Maを吸引回収する吸引ポンプ56とを備えている。
【0095】
これにより、海上の混合物回収船Bに配置された吸引ポンプ56を駆動することにより、バルーン本体10内に貯留された混合物Maを混合物吸引ホース54を介して吸引回収することができる。
また、本実施形態に係る海洋資源揚鉱システム100において、ロボットアーム付き無人潜水機4は、遠隔操作型の無人潜水機であり、海上の混合物回収船Bから水中ケーブル45を介して動力が供給されるように構成される。
【0096】
これにより、海上の混合物回収船Bからロボットアーム付き無人潜水機4を駆動して、ダウンホールモータ(掘削装置)2に接続された回収ホース3を海洋資源揚鉱用バルーン1のホース接続口11に接続するとともにその接続状態を解除し、さらに、ウェイト13をバルーン本体10から切り離すことができる。
また、本実施形態に係る海洋資源揚鉱システム100において、混合物Maが吸引回収されたバルーン本体10を回収する回収アーム57を備えている。これにより、混合物Maが吸引回収されたバルーン本体10を回収し、回収されたバルーン本体10にウェイト13を装着して再度利用することができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、掘削装置としてダウンホールモータ2を用いた例について説明したが、電動機を用いたビットや攪拌翼を用いた掘削装置であったり、電動ポンプや水流を利用したジェットポンプと攪拌翼を使用した掘削装置であってもよい。
【0098】
また、ダウンホールモータ2は、ねじポンプを駆動機構部70に使用し、その出力を、ユニバーサルジョイントを介することなく出力軸となるビット装着部33に出力し、これにより、省スペース化を実現し、駆動機構部70での駆動力を効率良く伝達する構成例を示したが、これに限らず、駆動機構部70での出力を、ユニバーサルジョイントを介して出力軸に出力する一軸偏心ねじポンプで構成してもよい。
【0099】
また、実施形態では、集鉱ホッパ103等を含む集鉱装置101を設けた例を示したが、これに限らず、集鉱ホッパ103等を含む集鉱装置101を設けない場合であってもよい。但し、より効率良く採鉱する上では、集鉱装置101を設けることが望ましい。
また、エマルション供給船Aと混合物回収船Bとを別の船で構成しているが、一つの船で構成してもよい。
【0100】
更に、海洋資源揚鉱用バルーン1及びロボットアーム付き無人潜水機4はそれぞれ混合物回収船Bから海中に投入されるようにしてあるが、それぞれエマルション供給船Aから海中に投入されるようにしてもよい。
また、ロボットアーム付き無人潜水機4は、エマルション供給船A上からオペレータが操作するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
100 海洋資源揚鉱システム
1 海洋資源揚鉱用バルーン
2 ダウンホールモータ(掘削装置)
3 回収ホース
3a 浮力体
4 ロボットアーム付き無人潜水機
5 吸引回収装置
6 クローラ走行体
10 バルーン本体
11 ホース接続口
12 カップラ
13 ウェイト
13a 連結ロープ
14 浮力体
15 ハウジング
16 上部ハウジング
17 下部ハウジング
18 エマルション供給路(エマルションの導入口)
20 第1シャフト
21 基端部
22 インナロータ部
23 連結ハウジング
23a 駆動流体供給路
24 エマルション導出口
25 エマルション導入路
26 エマルション供給ホース
27 ホースリール
28 ワイヤロープ
28a 滑車
29 巻き揚げ機
30 第2シャフト
31 外筒部
32 アウタロータ部
33 ビット装着部
41 第1のブッシュ
42 第2のブッシュ
43 第3のブッシュ
44 第4のブッシュ
45 水中ケーブル
46 動力供給装置
51 第1シャフト支持部
52 第2シャフト支持部
53 第2シャフト支持部
54 混合物吸引ホース
55 吸引カップラ
56 吸引ポンプ
57 回収アーム
58 バルーン投入装置
61 第1のシール
62 第2のシール
63 第3のシール
64 第4のシール
65 水中ケーブル
65a 滑車
66 起立ポスト
67 ケーブルリール
70 駆動機構部
81 フロントキャップ
82 支軸部キャップ
90 ビット
91 ビットノズル(噴射口)
101 集鉱装置
102 集鉱管
103 集鉱ホッパ
200 攪拌軸
212〜217 攪拌翼
218 攪拌部
A エマルション供給船
B 混合物回収船
C 海面
D 海底
CL1 第1シャフトの回転軸線
CL2 第2シャフトの回転軸線
E 偏心距離
K キャビティ
Em エマルション(駆動流体、噴射流体)
Ma 混合物(移送流体:アパタイト吸着エマルション)
Dr (解泥された)レアアース泥
W 海水
OD レアアース泥床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12