特開2019-40978(P2019-40978A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-40978発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-40978(P2019-40978A)
(43)【公開日】2019年3月14日
(54)【発明の名称】発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20190215BHJP
   G01J 1/00 20060101ALN20190215BHJP
【FI】
   H01L33/56
   G01J1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-161197(P2017-161197)
(22)【出願日】2017年8月24日
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】柏尾 知明
(72)【発明者】
【氏名】大塚 剛史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智海
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
【テーマコード(参考)】
2G065
5F142
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB04
2G065AB30
2G065BA01
2G065BA40
2G065BB42
2G065DA02
5F142AA02
5F142AA03
5F142BA02
5F142BA03
5F142BA24
5F142CA02
5F142CB11
5F142CC26
5F142CD17
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG13
5F142CG14
5F142CG16
5F142CG25
5F142CG26
5F142CG43
5F142DA12
5F142DA14
5F142FA12
5F142FA18
5F142FA28
5F142FA50
5F142GA01
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】光の取り出し効率を向上させることができる発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法を提供する。
【解決手段】凹部を有する基板と、前記凹部の底面に配置された発光素子と、前記凹部に配置され、前記発光素子を封止する透明封止部材と、を有し、前記透明封止部材が樹脂と当該樹脂に分散する屈折率が1.7以上の金属酸化物粒子とを含む、発光装置における前記金属酸化物粒子の物理量の決定方法であって、前記金属酸化物粒子の物理量を変化させた場合を仮定して、仮定した前記金属酸化物粒子の物理量の変化の範囲において前記発光装置から放出される光の放射量または測光量を推定する第1の工程と、推定された前記放射量または測光量に基づき、前記金属酸化物粒子の物理量を決定する第2の工程と、を有する、発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する基板と、前記凹部の底面に配置された発光素子と、前記凹部に配置され、前記発光素子を封止する透明封止部材と、を有し、前記透明封止部材が樹脂と当該樹脂に分散する屈折率が1.7以上の金属酸化物粒子とを含む、発光装置における前記金属酸化物粒子の物理量の決定方法であって、
前記金属酸化物粒子の物理量を変化させた場合を仮定して、仮定した前記金属酸化物粒子の物理量の変化の範囲において前記発光装置から放出される光の放射量または測光量を推定する第1の工程と、
推定された前記放射量または前記測光量に基づき、前記金属酸化物粒子の物理量を決定する第2の工程と、
を有する、発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法。
【請求項2】
前記透明封止部材がさらに、蛍光体粒子を含み、
前記第1の工程において、前記金属酸化物粒子の物理量および前記蛍光体粒子の物理量を変化させた場合を仮定して、仮定した前記金属酸化物粒子の物理量および前記蛍光体粒子の物理量の変化の範囲において前記発光装置から放出される光の放射量または測光量を推定する、請求項1に記載の発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型、長寿命化、低電圧駆動等の長所を有する光源として、発光ダイオード(LED)が広く用いられている。LEDパッケージ中のLEDチップは、一般に、酸素、水分といった外部環境に存在する劣化因子との接触を防止するために、樹脂を含む封止材料で封止されている。したがって、LEDチップにおいて発した光は、封止材料を透過して外部に向かって出射される。そのため、LEDパッケージから放出される光束を増大させるためには、LEDチップにおいて放出された光をLEDパッケージ外部に効率よく取り出すことが重要となる。
【0003】
LEDチップから放出された光の取り出し効率を向上させるための封止材料として、分散粒径が1nm以上かつ20nm以下でありかつ屈折率が1.8以上である無機酸化物粒子と、シリコーン樹脂とを含有してなる組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この組成物では、分散粒径が小さく、かつ屈折率が高い金属酸化物粒子を含む分散液が、シリコーン樹脂に混合されている。そのため、組成物中の無機酸化物粒子が封止材料の屈折率を向上させることができ、LEDチップから発光された光が封止材料に進入する際に、LEDチップと封止材料の界面での光の全反射を抑制することができる。また、無機酸化物粒子の分散粒径が小さいため、封止材料の透明性の低下が抑制される。これらの結果として、光の取り出し効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−299981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LEDパッケージ等の発光装置から放出される光束をより一層増大させるために、光の取り出し効率のさらなる改良が求められていた。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、発光装置の光の取り出し効率を向上させることができる、発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、凹部を有する基板と、前記凹部の底面に配置された発光素子と、前記凹部に配置され、前記発光素子を封止する透明封止部材と、を有し、前記透明封止部材が樹脂と当該樹脂に分散する屈折率が1.7以上の金属酸化物粒子とを含む、発光装置における前記金属酸化物粒子の物理量の決定方法であって、
前記金属酸化物粒子の物理量を変化させた場合を仮定して、仮定した前記金属酸化物粒子の物理量の変化の範囲において前記発光装置から放出される光の放射量または測光量を推定する第1の工程と、
推定された前記放射量または前記測光量に基づき、前記金属酸化物粒子の物理量を決定する第2の工程と、
を有する、発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法が提供される。
【0009】
前記透明封止部材は、さらに、蛍光体粒子を含み、
前記第1の工程において、前記金属酸化物粒子の物理量および前記蛍光体粒子の物理量を変化させた場合を仮定して、仮定した前記金属酸化物粒子の物理量および前記蛍光体粒子の物理量変化の範囲において前記発光装置から放出される光の放射量または測光量を推定してもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、発光装置の光の取り出し効率を向上させることができる発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の模式的な断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る発光装置の変形例を示す模式的な断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る発光装置の模式的な長手方向断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る発光装置の模式的な幅方向断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る発光装置の変形例を示す模式的な長手方向断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る発光装置の変形例を示す模式的な幅方向断面図である。
図7】光線追跡シミュレーションにおいて仮定した発光素子のスペクトル、蛍光体粒子の吸収スペクトル、蛍光体の励起スペクトルおよび蛍光体の発光スペクトルである。
図8】光線追跡シミュレーションにおいて仮定した蛍光体粒子の粒度分布である。
図9】シミュレーション1における酸化ジルコニウムの含有量が0質量%の場合の光線追跡結果である。
図10】シミュレーション1における酸化ジルコニウムの含有量が0.6質量%の場合の光線追跡結果である。
図11】シミュレーション1における酸化ジルコニウム含有量と、推定された発光装置の全光束(lm)と放射束(W)との関係を示すグラフである。
図12】シミュレーション2における酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の全光束(lm)との関係を示すグラフである。
図13】シミュレーション2における酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の放射束(W)との関係を示すグラフである。
図14】シミュレーション2における酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の全光束(lm)の上昇率との関係を示すグラフである。
図15】シミュレーション2における酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の放射束(W)の上昇率との関係を示すグラフである。
図16】シミュレーション2における発光装置から放出される光の色度を白色点に調整するために必要な蛍光体粒子の体積濃度(体積%)と酸化ジルコニウム含有量との関係を示すグラフである。
図17】シミュレーション3における酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の全光束(lm)との関係を示すグラフである。
図18】シミュレーション3における酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の放射束(W)との関係を示すグラフである。
図19】シミュレーション3における発光装置から放出される光の色度を白色点に調整するために必要な蛍光体粒子の体積濃度(体積%)と酸化ジルコニウム含有量との関係を示すグラフである。
図20】シミュレーション4における酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の全光束(lm)との関係を示すグラフである。
図21】シミュレーション4における酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の放射束(W)との関係を示すグラフである。
図22】シミュレーション4における発光装置から放出される光の色度を白色点に調整するために必要な蛍光体粒子の体積濃度(体積%)と酸化ジルコニウム含有量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
なお、本明細書および図面において、異なる実施形態の類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。なお、図中、説明の容易化のため、適宜説明の必要のない部材を省略した。また、図示の各部材の寸法は、説明の容易化のため適宜拡大、縮小されており、実際の各部材の大きさを示すものではない。
【0014】
<1. 発光装置>
(1.1) 第1実施形態
まず、本発明の第1実施形態に係る発光装置について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の模式的な断面図である。図1に示す発光装置1は、いわゆるトップビュー型の表面実装(surface mount type)LEDパッケージである。発光装置1は、凹部11を有する基板10と、凹部11の底面15に配置された発光素子20と、凹部11に配置され、発光素子20を封止する透明封止部材30とを主に有する。
【0015】
基板10は、発光装置1のケーシングであり、発光装置1の各部材を担持および収納する。基板10は、凹部11を有している。凹部11は、深さDを有するキャビティであり、図1に示すようにその断面が底面15と底面15の周辺部に配置され底面と交差する壁面13とにより形成されており、平面視では底部15が正方形をなしている(図示せず)。なお、基板の形状は、上記態様に限定されず、その底部が、正方形の各角が曲線になった(Rを持った)形状や、円形であってもよい。
【0016】
また、凹部11は、対向する壁面13が、所定の角度αをなすようにして、底面15から開口部17へ向けて開口している。この結果、底面15の幅WB1は、開口部17の幅WT1と比べ通常小さい。角度α、幅WB1、幅WT1および深さDは、特に限定されるものではない。例えば、角度αは0°(垂直)以上165°以下の範囲内で適宜選択される。
【0017】
また、基板10は、樹脂材料、例えばポリプロピレン、ポリアミド、ガラスエポキシ等によって構成されている。なお、基板10の壁面13を発光素子20からの光線を反射するリフレクタとするために、例えば樹脂材料中に白色顔料等を含ませることもできる。基板10の材料構成は、上記に限定されるものではなく、公知の材料を適宜選択して用いることができる。
【0018】
発光素子20は、電圧の印加により発光可能な発光ダイオード(LED)であり、GaAs、GaP、AlGaInP、InGaN等の化合物半導体により構成されている。発光素子20は、凹部11の底面15に配置されている。より具体的には、発光素子20は、基板10の底面15付近に埋設された銀めっき等の金属からなるリードフレーム50上に配置される。また、2本の金等の金属からなるボンディングワイヤ40が発光素子20とリードフレーム50とを接続している。そして、ボンディングワイヤ40を介してリードフレーム50から電圧が印加されることにより発光素子20が発光する。
【0019】
本実施形態においては、発光素子20は例えば440nm以上475nm以下にピーク波長を有する青色光を放出することができる。なお、発光素子20の発光波長は、上記に限定されず適宜用途に応じて選択することが可能である。
【0020】
透明封止部材30は、凹部11に配置され、発光素子20を封止することにより、発光素子20と酸素、水分といった外部環境に存在する劣化因子との接触を防止する。また、透明封止部材30は、発光素子20やボンディングワイヤ40、リードフレーム50等の基板10上の各構成部材を衝撃から保護する。さらに透明封止部材30は、発光素子20から放出された光を透過することができ、発光装置1外に放出することができる。透明封止部材30は、樹脂と、屈折率が1.7以上の金属酸化物粒子とを含む。
【0021】
樹脂としては、封止材料として用いることができれば特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂や、エポキシ樹脂等の樹脂を用いることができる。特に、シリコーン樹脂が好ましい。
シリコーン樹脂としては、封止材料として使用されているものであれば特に限定されず、例えば、ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、有機変性シリコーン樹脂等を用いることができる。
【0022】
樹脂の構造としては、特に限定されるものではなく、二次元の鎖状の構造であってもよく、三次元網状構造であってもよく、かご型構造であってもよい。
【0023】
金属酸化物粒子は、1.7以上の屈折率を有し、封止部材の屈折率を向上させる。また、金属酸化物粒子は、後述するように封止部材中における光の散乱に用いられる。
【0024】
本実施形態で用いられる金属酸化物粒子は、屈折率が1.7以上である。このような金属酸化物粒子の屈折率は、封止部材の屈折率の向上および光の散乱効果の向上の観点から、好ましくは1.8以上、より好ましくは1.9以上、さらに好ましくは2.0以上である。
【0025】
1種の金属元素を含む屈折率が1.7以上の金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化鉄粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化銅粒子、酸化錫粒子、酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化タンタル粒子、酸化ニオブ粒子、酸化モリブデン粒子、酸化インジウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化ゲルマニウム粒子、酸化鉛粒子、酸化ビスマス粒子、酸化タングステン粒子、酸化ユーロピウム粒子、および酸化ハフニウム粒子からなる群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。
【0026】
2種の金属元素を含む屈折率が1.7以上の金属酸化物粒子としては、例えば、チタン酸カリウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、ニオブ酸カリウム粒子、ニオブ酸リチウム粒子、タングステン酸カルシウム粒子、イットリア安定化酸化ジルコニウム粒子、アンチモン添加酸化スズ粒子、およびインジウム添加酸化スズ粒子からなる群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。なお、3種以上の金属元素を含む金属酸化物粒子も、屈折率が1.7以上であれば用いることができる。また、上述した1種、2種および3種以上の金属元素を含む金属酸化物粒子を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0027】
これらの金属酸化物粒子の中でも、屈折率が高く、透明性が高い透明封止部材30を得るという観点において、金属酸化物粒子は、好ましくは酸化ジルコニウム粒子および/または酸化チタン粒子であり、より好ましくは酸化ジルコニウム粒子である。
【0028】
また、本実施形態においては、金属酸化物粒子の平均分散粒子径が40nm以上200nm以下である。本実施形態において、金属酸化物粒子の平均分散粒子径を40nm以上200nm以下とした理由は次のとおりである。
【0029】
従来は、光の取り出し効率を向上させるためには、封止材料として用いられる組成物の透明性(透過率)は高い方が好ましいと考えられていた。そのため、透明封止部材30における金属酸化物粒子の平均分散粒径はできる限り小さくした方が好ましいと考えられていた。
【0030】
しかしながら本発明者らは、透明封止部材30中の金属酸化物粒子の平均分散粒径を40nm以上200nm以下とし、発光素子から出射された光を後述する透明封止部材30中でより多く散乱させることで、透明封止部材30自体の透明性が多少低下したとしても、透明封止部材30における光の取り出し効率が向上することを見出した。
【0031】
光の取り出し効率をより向上させる観点においては、金属酸化物粒子の平均分散粒径は、好ましくは40nm以上150nm以下であり、より好ましくは45nm以上130nm以下である。
【0032】
平均分散粒径が40nm未満である場合には、光の散乱効果が十分には得られず、光の取り出し効率が小さくなるため好ましくない。一方で平均分散粒径が200nmを超える場合には、透明封止部材30の透過率が低くなりすぎて、光の取り出し効率が小さくなるため好ましくない。
【0033】
なお、金属酸化物粒子の平均分散粒径は、透明封止部材30の透過型電子顕微鏡観察(TEM)により測定される、個数分布基準の平均粒径(メジアン径、D50)である。また、本実施形態における金属酸化物粒子の平均分散粒径は、透明封止部材30中における金属酸化物粒子の分散粒径に基づいて測定、算出される値である。平均分散粒径は、金属酸化物粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の金属酸化物粒子の径に基づいて測定、算出される。また、本実施形態において、金属酸化物粒子のD50は、後述する表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子のD50として測定されてもよい。透明封止部材30中には、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子と、表面修飾材料が付着していない金属酸化物粒子とが存在し得るため、通常、金属酸化物粒子のD50は、これらの混合状態における値として測定される。
【0034】
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、例えば3nm以上20nm以下、好ましくは4nm以上20nm以下、より好ましくは5nm以上20nm以下である。平均一次粒子径が上記範囲であることにより、平均分散粒径を40nm以上200nm以下に制御することが容易となる。
【0035】
平均一次粒子径の測定方法は、金属酸化物粒子を所定数、例えば100個を選び出す。そして、これらの金属酸化物粒子各々の最長の直線分(最大長径)を測定し、これらの測定値を加重平均して求める。
ここで金属酸化物粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している金属酸化物粒子の粒子(一次粒子)の最大長径を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0036】
透明封止部材30中における屈折率が1.7以上の金属酸化物粒子の含有量は、所望の特性に応じて適宜調整して用いればよい。透明封止部材30中における金属酸化物粒子の含有量は、光散乱性と透明性を両立させる観点から、好ましくは0.2質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以上7.0質量%以下である。
【0037】
なお、以上の説明は、屈折率が1.7未満の金属酸化物粒子を透明封止部材30が含むことを排除するものではない。透明封止部材30は、その目的に応じて屈折率が1.7以上の金属酸化物粒子に加え、屈折率が1.7未満の金属酸化物粒子を含み得る。
【0038】
また、透明封止部材30は、蛍光体粒子を含んでいてもよい。蛍光体粒子は、発光素子から放出される特定の波長の光を吸収し、所定の波長の光を放出する。すなわち、蛍光体粒子により光の波長の変換ひいては色調の調整が可能となる。
【0039】
蛍光体粒子は、一般的な発光装置に使用できるものであれば、特に限定されず、発光装置1の発光色が所望の色となるように、適宜選択して用いることができる。例えば、発光素子20が青色光を放出し、一方で、発光装置1全体としては白色光を取り出すことを目的とする場合、青色光を吸収して黄色の蛍光を放出する蛍光体粒子を透明封止部材30に含ませることができる。
透明封止部材30中における蛍光体粒子の含有量は、所望の色調および所望の明るさが得られるように、適宜調整して用いることができる。
【0040】
また、透明封止部材30は、上述した以外の成分を含んでもよい。このような成分としては、例えば、シリカ粒子のような拡散材が挙げられる。
【0041】
なお、図1中、透明封止部材30は、基板10の開口部17に沿って平面を形成するように配置されているが、透明封止部材30の形状は、図示の態様に限定されない。例えば、透明封止部材30は、その上面が基板10の開口部17よりも底面15側に配置されてもよいし、開口部17より突出していてもよい。また、透明封止部材30は、その上面が凹形状または凸形状を有していてもよい。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、平均分散粒子径が40nm以上200nm以下であり、かつ屈折率が1.7以上である金属酸化物粒子が透明封止部材30中に分散していることにより、発光素子20から放出される放射光が好適に散乱して、基板10の平面方向における拡散を抑制される。この結果、発光装置1は光の取出し効率に優れる。
【0043】
さらに、透明封止部材30が蛍光体粒子を含む場合、金属酸化物粒子による放射光の散乱が生じることにより、透明封止部材30中における蛍光体粒子に放射光が入射する確率が上昇する。このため、比較的蛍光体粒子の量を少量とした場合であっても、十分に目的とする色調の光を発光装置1から取り出すことが可能となる。また、蛍光体粒子による放射光の波長変換時のエネルギーの損失を抑制することができ、結果として発光装置1の発光効率が向上する。さらに、蛍光体粒子の量を低減できるため、発光装置1の製造コストを比較的少なくすることができる。
【0044】
なお、上述した本実施形態に係るトップビュー型の発光装置1は、種々の変更が可能である。例えば、透明封止部材は、複数の層を有していてもよい。このような発光装置としては、図2に示すものが挙げられる。図2は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の変形例を示す模式的な断面図である。以下、発光装置1と、図2に示す発光装置1Aとの差異について説明し、同様の構成については説明を省略する。なお、発光装置1において説明した一部の部材については、以下の図面においては説明の容易化のため省略している。
【0045】
図2に示す発光装置1Aは、透明封止部材30Aの構成が、発光装置1の透明封止部材30の構成と異なっている。具体的には、透明封止部材30Aは、蛍光体粒子を含む第1の層31Aと、第1の層31A上に配置される第2の層33Aとを有している。また、第1の層31Aおよび第2の層33Aのいずれの層においても、上述したような金属酸化物粒子が分散している。以上により、発光装置1Aも、発光装置1と同様の機構により光の取出し効率が向上している。
【0046】
なお、本発明において、透明封止部材の層構成は図示の態様に限定されず、例えば透明封止部材は3層以上の異なる層を有していてもよい。また、透明封止部材は、全ての層において金属酸化物粒子を含まなくてもよい。例えば透明封止部材の一部分のみ金属酸化物粒子が含まれていてもよい。
【0047】
(1.2) 第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る発光装置について説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る発光装置の模式的な長手方向断面図、図4は、図3に示す発光装置の模式的な幅方向断面図である。
【0048】
図3図4に示す発光装置1Bは、いわゆるサイドビュー型の表面実装LEDパッケージである。発光装置1Bは、基板10Bを平面視した際に凹部11Bが長方形をなしており、これに対応するように基板10Bも長方形をなしている。したがって、底部15Bの長さLB3は、幅WB3よりも大きい。また、開口部17Bの長さLT3は、幅WT3よりも大きい。なお、壁面13Bは、基板10Bの長手方向および幅方向の両方において所定の角度をなして、底面15Bから開口部17Bへ向けて開口している。したがって、底面15Bの長さLB3、幅WB3は、それぞれ、開口部17Bの長さLT3、幅WT3と比べ通常小さい。
【0049】
そして、発光素子20Bは、底部15Bのリードフレーム50B上に配置される。
また、透明封止部材30Bは、蛍光体粒子を含む第1の層31Bと、第1の層31B上に配置される第2の層33Bとを有する。そして、第1の層31B、第2の層33Bのいずれにも、透明封止部材30の説明において詳述した金属酸化物粒子が分散している。
【0050】
以上のような構成を有する発光装置1Bにおいても、発光装置1と同様に、光の取出し効率が向上している。
【0051】
なお、上述した本実施形態に係るサイドビュー型の発光装置1Bは、種々の変更が可能である。例えば、透明封止部材は、複数の層を有していてもよいし、1層のみで構成されてもよい。また、発光装置は、複数の発光素子を有していてもよい。このような変形例としては、図5図6に示すような発光装置が挙げられる。図5は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の変形例を示す模式的な長手方向断面図、図6は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の変形例を示す模式的な幅方向断面図である。
【0052】
図5図6に示す発光装置1Cは、凹部11Bの底面15Bにおいてリードフレーム50C上に発光素子20Cが長手方向に沿って2つ配置されている点で発光装置1Bと異なり、その他は、発光装置1Bと同様の構成を有する。
以上のような構成を有する発光装置1Cにおいても、発光装置1と同様に、光の取出し効率が向上している。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態に係る発光装置について説明した。なお、本発明は、上記の実施態様に限定されない。例えば、第1実施形態および第2実施形態における各構成要素は可能な限り適宜交換可能である。また、上述した説明では、発光素子が発光ダイオードであるとして説明したが、これに限定されず発光素子は、例えば有機発光ダイオード(OLED)であってもよい。
また、本発明に係る発光装置はいかなる方法によって製造されてもよいが、例えば後述する発光装置の製造方法により製造することもできる。
【0054】
<2.照明器具および表示装置>
次に、本実施形態に係る照明器具および表示装置について説明する。本実施形態に係る照明器具および表示装置は、上述した本発明の実施形態に係る発光装置を備える。
【0055】
照明器具としては例えば、室内灯、室外灯等の一般照明装置、携帯電話やOA機器等の電子機器のスイッチ部の照明等が挙げられる。
本実施形態に係る照明器具は、上述したような本発明の実施形態に係る発光装置を備えるため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、周囲環境をより明るくすることができる。
【0056】
表示装置としては、例えば携帯電話、携帯情報端末、電子辞書、デジタルカメラ、コンピュータ、テレビ、およびこれらの周辺機器等が挙げられる。
本実施形態に係る表示装置は、上述したような本発明の実施形態に係る発光装置を備えるため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、例えばより鮮明かつ明度の高い表示を行うことができる。
【0057】
<3.発光装置の製造方法および発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法>
次に、本発明の一実施形態に係る発光装置の製造方法および発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法を説明する。
【0058】
本実施形態に係る発光装置における金属酸化物粒子の物理量の決定方法は、上述したような発光装置における前記金属酸化物粒子の物理量の決定方法であって、前記金属酸化物粒子の物理量を変化させた場合を仮定して、仮定した前記金属酸化物粒子の物理量の変化の範囲において前記発光装置から放出される光の放射量または測光量を推定する第1の工程と、推定された前記放射量または前記測光量に基づき、前記金属酸化物粒子の物理量を決定する第2の工程と、を有する。
また、本実施形態に係る発光装置の製造方法は、上述した第1の工程と第2の工程とに加え、決定した前記物理量に基づき、前記発光装置を製造する第3の工程を有する。
【0059】
以下、各工程について詳細に説明する。なお、各工程の説明においては、必要に応じて図1に示す発光装置1に基づき説明するが、言うまでもなく、本実施形態に係る各方法は発光装置1についての方法に限定されない。
【0060】
まず、第1の工程においては、金属酸化物粒子の物理量を変化させた場合を仮定して、仮定した金属酸化物粒子の物理量の変化の範囲において発光装置1から放出される光の放射量または測光量を推定する。
【0061】
金属酸化物粒子の物理量としては、特に限定されず、例えば、平均分散粒径、平均一次粒径、透明封止部材30中の濃度、屈折率、位置(偏在しているか、均一に分散しているか、一部の層中に存在するか等)等が挙げられる。上述した中でも、金属酸化物粒子の物理量は、平均分散粒径および/または透明封止部材30中の濃度を含むことが好ましい。これらの物理量は、発光装置1の光の取出し効率において比較的大きな影響を与え得る。
【0062】
例えば、金属酸化物粒子の透明封止部材30中における濃度は、例えば0.1質量%以上15.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以上7.0質量%以下の範囲で変化させることができる。このような低濃度の範囲は、透明封止部材30の光の透過性を維持しやすい範囲である。
また、金属酸化物粒子の平均分散粒径は、例えば40nm以上200nm以下、好ましくは40nm以上150nm以下、より好ましくは、45nm以上130nm以下の範囲で変化させることができる。
【0063】
また、透明封止部材30が蛍光体粒子を含む場合、本工程において、金属酸化物粒子の物理量に加えて蛍光体粒子の物理量を変化させた場合も仮定して、発光装置1から放出される光の放射量または測光量を推定することが好ましい。
【0064】
蛍光体粒子の物理量としては、特に限定されないが、平均分散粒径、透明封止部材30中の濃度、励起波長、吸収波長、発光波長、位置(偏在しているか、均一に分散しているか、一部の層中に存在するか等)等が挙げられる。
蛍光体粒子の透明封止部材30中における濃度は、例えば0.01質量%以上5質量%以下の範囲で変化させることができる。
【0065】
また、本工程において、放射量としては、例えば、放射束、放射エネルギー、放射照度、放射発散度、放射強度、放射輝度等が挙げられる。また、測光量としては、例えば、光束、光量、照度、光束発散度、光度、輝度等が挙げられる。上述した中でも、発光装置1を表示用途または照明用途に用いる場合、人の目の比視感度を考慮した測光量について推定を行うことが好ましい。
【0066】
なお、発光装置1から放出される光の放射量または測光量の推定は、発光装置1の構成および上記の金属酸化物粒子および蛍光体粒子の物理量の変化を仮定して、情報処理装置において発光素子20より放出される光の光線追跡シミュレーションを実行することにより、行うことができる。
【0067】
情報処理装置としては、例えば、処理装置(プロセッサ)、主記憶装置(メインメモリ)、補助記憶装置(外部記憶装置)、入出力手段等を有する公知のコンピュータを用いることができる。
【0068】
次に、第2の工程においては、推定された放射量または測光量に基づき、金属酸化物粒子の物理量を決定する。例えば、本工程においては、推定された放射量または測光量の範囲のうち放射量または測光量の最大値から5.0%以内、好ましくは10.0%以内の範囲に対応する物理量を選択することにより、金属酸化物粒子の物理量を決定することができる。なお、決定される金属酸化物粒子の物理量は、値であってもよいが、一定の範囲を有していてもよい。
【0069】
また、本工程においては、金属酸化物粒子の物理量に加え、蛍光体粒子の物理量を決定してもよい。
【0070】
本工程においても、情報処理装置を用いて、推定された放射量または測光量と金属酸化物粒子の物理量および蛍光体粒子の物理量との関係を特定し、製造に用いられる金属酸化物粒子の物理量を決定してもよい。
【0071】
次に、第3の工程においては、決定した金属酸化物粒子の物理量に基づき、発光装置1を製造する。本工程においては、公知の方法を使用して、決定した物理量の金属酸化物粒子を用いて発光装置1を製造することができる。
【0072】
例えば、予め成形した基板10上に発光素子20を配置し、ボンディングワイヤ40を形成するとともに、透明封止部材30により発光素子20を封止することにより、発光装置1を製造することができる。
【0073】
ここで、透明封止部材30を形成するための樹脂組成物について説明する。
樹脂組成物は、上述した金属酸化物粒子と、樹脂成分、すなわち樹脂および/またはその前駆体を含む。
【0074】
金属酸化物粒子は、第1の工程および第2の工程において決定された物理量に基づき樹脂組成物に配合される。
【0075】
樹脂成分は、樹脂組成物における主成分である。このような樹脂成分としては、一般的な封止部材として用いることができれば特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂や、エポキシ樹脂等の樹脂を用いることができる。特に、シリコーン樹脂が好ましい。
【0076】
シリコーン樹脂としては、特に限定されず、例えば、ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、有機変性シリコーン樹脂等を用いることができる。
【0077】
特に、樹脂組成物が後述する表面修飾材料を含み、表面修飾材料が、アルケニル基、H−Si基、およびアルコキシ基の群から選択される少なくとも1種の官能基をし、かつ樹脂成分としてシリコーン樹脂を用いた場合、当該シリコーン樹脂は、H−Si基、アルケニル基、およびアルコキ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。理由を以下に説明する。
【0078】
表面修飾材料のアルケニル基は、シリコーン樹脂中のH−Si基と反応することにより架橋する。表面修飾材料のH−Si基は、シリコーン樹脂中のアルケニル基と反応することにより架橋する。表面修飾材料のアルコキシ基は、シリコーン樹脂中のアルコキシ基と加水分解を経て縮合する。このような結合により、シリコーン樹脂と表面修飾材料とが一体化することから、得られる硬化体の強度や緻密性を向上させることができる。
【0079】
樹脂成分の構造としては、特に限定されるものではなく、二次元の鎖状の構造であってもよく、三次元網状構造であってもよく、かご型構造であってもよい。
【0080】
樹脂成分は、透明封止部材30として用いた際に硬化したポリマー状となっていればよく、樹脂組成物中において、樹脂硬化前の状態、すなわち前駆体であってもよい。したがって、樹脂組成物中に存在する樹脂成分は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、プレポリマーであってもよく、ポリマーであってもよい。
樹脂成分は、付加反応型のものを用いてもよく、縮合反応型のものを用いてもよく、ラジカル重合反応型のものを用いてもよい。
【0081】
樹脂成分の粘度は、例えば、10mPa・s以上100,000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以上10,000mPa・s以下、より好ましくは1,000mPa・s以上7,000mPa・s以下である。
【0082】
また、本実施形態に係る樹脂組成物中における樹脂成分の含有量は、他の成分の残部とすることができるが、例えば10質量%以上70質量%以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物中における樹脂成分と金属酸化物粒子との質量比率は、樹脂成分:金属酸化物粒子で、50:50〜90:10の範囲にあることが好ましく、60:40〜80:20の範囲にあることがより好ましい。
【0083】
また、樹脂組成物は、表面修飾材料を含んでもよい。この表面修飾材料は、樹脂組成物中において少なくともその一部が金属酸化物粒子の表面に付着して、金属酸化物粒子の凝集を防止する。さらに、金属酸化物粒子の上述した樹脂成分との相溶性を向上させる。
【0084】
ここで、表面修飾材料が金属酸化物粒子に「付着する」とは、表面修飾材料が金属酸化物粒子に対し、これらの間の相互作用により接触または結合することをいう。接触としては、例えば物理吸着が挙げられる。また、結合としては、イオン結合、水素結合、共有結合等が挙げられる。
【0085】
このような表面修飾材料としては、金属酸化物粒子に付着でき、樹脂成分との相溶性が良好なものであれば、特に限定されない。
このような表面修飾材料としては、反応性官能基、例えばアルケニル基、H−Si基、およびアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する表面修飾材料が好適に用いられる。このような官能基を有する表面修飾材料は、分散媒および樹脂成分との親和性に優れ、金属酸化物粒子の樹脂組成物中における分散性を向上させることができる。
【0086】
アルケニル基としては、例えば炭素数2〜5の直鎖または分岐状アルケニル基を用いることができ、具体的にはビニル基、2−プロペニル基、プロパ−2−エン−1−イル基
等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば炭素数1〜5の直鎖または分岐状アルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0087】
アルケニル基、H−Si基、およびアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する表面修飾材料としては、ビニルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシ片末端ビニル片末端ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端ビニル片末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ片末端ビニル片末端フェニルシリコーン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリル酸等炭素−炭素不飽和結合含有脂肪酸、ジメチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルハイドロジェンシリコーン、フェニルハイドロジェンシリコーン、ジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジエチルクロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、モノメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシモノメチルシラン、モノエトキシジメチルシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルモノメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルモノエトキシシラン、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーンオリゴマー、アルコキシ基含有ジメチルシリコーンレジン、アルコキシ基含有フェニルシリコーンレジン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジン、およびアルコキシ片末端トリメチル片末端ジメチルシリコーンの群から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0088】
これらの表面修飾材料のなかでも、樹脂組成物において、金属酸化物粒子同士の凝集を抑制し、透明性の高い封止部材が得られやすい観点において、ビニルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシ片末端トリメチル片末端ジメチルシリコーン、およびメチルフェニルシリコーンオリゴマーの群から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0089】
樹脂組成物中における表面修飾材料の含有量は、金属酸化物粒子の質量に対して好ましくは1質量%以上80質量%以下、より好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
【0090】
また、表面修飾材料を金属酸化物粒子に付着させる方法としては例えば、金属酸化物粒子に表面修飾材料を直接混合、噴霧等する乾式方法や、表面修飾材料を溶解させた水や有機溶媒に金属酸化物粒子を投入し、溶媒中で表面修飾する湿式方法が挙げられる。
【0091】
また、樹脂組成物は、適宜蛍光体粒子を含んでいてもよい。蛍光体粒子は、特に限定されず、発光装置の発光色が所望の色となるように、適宜選択して用いることができる。樹脂組成物中における蛍光体粒子の含有量は、所望の明るさが得られるように、適宜調整して用いることができる。なお、第2の工程において蛍光体粒子の物理量も決定した場合、当該決定された物理量に基づき蛍光体粒子が樹脂組成物に配合される。
【0092】
また、樹脂組成物は、分散媒を含んでいてもよい。分散媒は、金属酸化物粒子の分散を補助するとともに、樹脂組成物の希釈剤としても作用する。このような分散媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、芳香族類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類等の有機溶剤が挙げられる。これらの溶媒は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。シリコーン樹脂との相溶性の観点からは、芳香環を有する有機溶剤が好ましく、トルエン、キシレン、ベンゼン等が特に好ましく用いられる。
【0093】
分散媒は、樹脂組成物の質量に対し例えば、1質量%以上10質量%以下、具体的には2質量%以上5質量%以下含まれ得る。
【0094】
また、樹脂組成物は、防腐剤、重合開始剤、重合禁止剤、硬化触媒等の一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0095】
透明封止部材30は、以上の樹脂組成物を例えばディスペンサー等により基板10の凹部11中に付与し、紫外線等のエネルギー線を照射するまたは加熱することにより形成することができる。
【0096】
以上、説明したような本実施形態に係る方法によれば、光の取出し効率を向上させるための金属酸化物粒子の物理量を適切に決定することができる。例えば、上述した発光装置1の製造にあたり、金属酸化物粒子の平均分散粒径や含有量のより適切な値を決定することが可能となる。したがって、本実施形態に係る方法に基づき製造された発光装置は、光の取出し効率が向上している。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
【0098】
<1.光線追跡シミュレーション>
まず、金属酸化物粒子の物理量および蛍光体粒子の物理量を変化させて、光線追跡シミュレーションを行い、発光装置の光の取出し効率を推定、評価した。
【0099】
なお、発光装置の各構成部材の構成は、以下のように仮定した。
【0100】
【表1】
【0101】
仮定した発光素子のスペクトル、蛍光体粒子の吸収スペクトル、蛍光体の励起スペクトルおよび蛍光体の発光スペクトルを、図7に示す。仮定した蛍光体粒子の粒度分布を図8に示す。
【0102】
[1.1 シミュレーション1 蛍光体粒子を含まない発光装置モデル]
まず、図1に示す発光装置1を仮定して光線追跡シミュレーションを行った。透明封止部材30は、蛍光体粒子を含まず、平均粒子径が100nmの金属酸化物粒子(酸化ジルコニウム)を均一に混合した樹脂である。本シミュレーションにおいては、開口部の幅WT1を2.40mm、底面の幅WB1を2.20mm、凹部の深さD1を0.35mm、発光素子の幅を0.55mm、厚みを0.15mmとなるように設定した。このような設定のモデルにおいて、酸化ジルコニウムの含有量を0質量%〜3.0質量%の間で変化させた場合の光線追跡シミュレーションを行い、発光装置から放出される全光束(lm)と放射束(W)とを推定した。
【0103】
図9に酸化ジルコニウムの含有量が0質量%の場合の光線追跡結果を、図10に酸化ジルコニウムの含有量が0.6質量%の場合の光線追跡結果を示す。また、酸化ジルコニウム含有量と、推定された発光装置の全光束(lm)と放射束(W)との関係を図11に示す。
【0104】
図9に示すように透明封止部材中に酸化ジルコニウムを含まない場合、発光素子から放出される光が発光素子付近のみならず基板の壁面(リフレクタ)まで届く確率が高かった。したがって、リフレクタにおいて一旦反射されて外部に射出される光線が多かった。これに対し、図10に示すように透明封止部材中に酸化ジルコニウムが含まれる場合、発光素子付近において酸化ジルコニウムにより散乱が生じる結果、基板の平面方向への光線の拡散が抑制され、リフレクタにより反射されることなく外部に出射される光線が増加した。さらに、図11に示すように、酸化ジルコニウムの含有量が増えるにつれ、全光束と放射束が向上すること、すなわち、発光装置の光の取り出し効率が向上することが推定された。
【0105】
発光装置においては、光線がリフレクタで反射される際に、光線の光エネルギーの損失が生じる。そのため、酸化ジルコニウムの散乱効果を利用することにより、リフレクタで反射されてから外部に出射される光を低減させ、発光装置の光の取り出し効率を向上させることができることが確認された。
【0106】
[1.2 シミュレーション2 蛍光体粒子を含む発光装置モデル]
図2に示す発光装置1Aを仮定して光線追跡シミュレーションを行った。本シミュレーションにおいては、図2に示す透明封止部材30Aは、蛍光体粒子を含み、発光素子の直上およびリードフレーム上に配置された第1の層31Aと、第1の層31A上に配置され、蛍光体粒子を含まない第2の層33Aとを有している。なお、第1の層31A、第2の層33Aのいずれにおいても、平均粒子径が100nmの金属酸化物粒子(酸化ジルコニウム)が均一に分散している。
【0107】
また、本シミュレーションにおいては、開口部の幅WT2を2.40mm、底面の幅WB2を2.20mm、凹部の深さD2を0.35mm、発光素子の幅を0.55mm、厚みを0.15mmとなるように設定した。一方で、第1の層については、表2に示すように、発光素子外と、発光素子上とで厚みを変更したモデル(パッケージ1〜4)を用意した。
【0108】
【表2】
【0109】
以上のモデルにおいて、酸化ジルコニウムの含有量を0質量%〜3.0質量%の間で変化させた場合の、光線追跡シミュレーションを行い、発光装置から放出される全光束(lm)と放射束(W)とを推定した。
【0110】
図12に酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の全光束(lm)との関係を、図13に酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の放射束(W)との関係を示す。また、図14に酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の全光束(lm)の上昇率との関係を、図15に酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の放射束(W)の上昇率との関係を示す。
【0111】
図12、13に示すように、透明封止部材が酸化ジルコニウムを含む場合、蛍光体粒子を含む場合であっても、発光装置の光の取り出し効率を向上させることができることが確認された。図14、15において、パッケージ1とパッケージ2とを、また、パッケージ3とパッケージ4とを比較した際に、発光素子上の蛍光体層の厚みが小さいほど、光の取り出し効率の向上効果が得られやすいことが確認された。さらに、図14、15において、パッケージ1とパッケージ3とを、また、パッケージ2とパッケージ4とを比較した際に、発光素子外の蛍光体層の厚みが大きいほど、光の取り出し効率の向上効果が得られやすいことが確認された。
【0112】
さらに、図2の発光装置1Aを仮定したモデルにおいて、発光装置から放出される光の色度を白色点(CIE色度図におけるx=0.33、y=0.33)に調整するために必要な蛍光体粒子の体積濃度(体積%)をシミュレーションした。結果を図16に示す。
【0113】
図16に示すように、酸化ジルコニウム粒子の含有量が増えるにつれ、白色を得るために必要な蛍光体粒子の量を減らすことができることが確認された。これは、酸化ジルコニウム粒子の散乱効果により、蛍光体粒子1個あたりに照射される光線が増えたためと推測される。
【0114】
[1.3 シミュレーション3 サイドビュー型の発光装置モデル]
図3図4に示すサイドビュー型の発光装置1Bを仮定して光線追跡シミュレーションを行った。本シミュレーションにおいては、図3図4に示す透明封止部材30Bは、蛍光体粒子を含み、発光素子の直上およびリードフレーム上に配置された第1の層31Bと、第1の層31B上に配置され、蛍光体粒子を含まない第2の層33Bとを有している。なお、第1の層31B、第2の層33Bのいずれにおいても、平均粒子径が100nmの金属酸化物粒子(酸化ジルコニウム)が均一に分散している。
【0115】
また、本シミュレーションにおいては、発光装置の凹部(キャビティ)の寸法を表3に示すように変更した3つのモデル(パッケージ5〜7)を用意した。なお、発光素子の幅を長手方向で0.70mm、幅方向で0.20mmとし、当該発光素子を凹部の中心部付近に配置した。一方で、第1の層については、発光素子外の厚みを0.09mm、発光素子上の厚みを0.1mmとした。
【0116】
【表3】
【0117】
以上のモデルにおいて、酸化ジルコニウムの含有量を0質量%〜3.0質量%の間で変化させた場合の、光線追跡シミュレーションを行い、発光装置から放出される全光束(lm)と放射束(W)とを推定した。
【0118】
図17に酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の全光束(lm)との関係を、図18に酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の放射束(W)との関係を示す。
【0119】
図17図18に示すように、透明封止部材が酸化ジルコニウムを含む場合、サイドビュー型の発光装置であっても、光の取り出し効率が向上することができることが確認された。
【0120】
さらに、図3図4の発光装置1Bを仮定したモデルにおいて、発光装置から放出される光の色度を白色点(CIE色度図におけるx=0.33、y=0.33)に調整するために必要な蛍光体粒子の体積濃度(体積%)をシミュレーションした。結果を図19に示す。
【0121】
図19に示すように、サイドビュー型の発光装置であっても、酸化ジルコニウム粒子の含有量が増えるにつれ、白色を得るために必要な蛍光体粒子の量を減らすことができることが確認された。
【0122】
[1.4 シミュレーション4 発光素子を2個搭載したサイドビュー型の発光装置モデル]
図5図6に示すサイドビュー型の発光装置1Cを仮定して光線追跡シミュレーションを行った。本シミュレーションにおいては、図5図6に示す透明封止部材30Bは、蛍光体粒子を含み、発光素子20Cの直上およびリードフレーム50C上に配置された第1の層31Bと、第1の層31B上に配置され、蛍光体粒子を含まない第2の層33Bとを有している。なお、第1の層31B、第2の層33Bのいずれにおいても、平均粒子径が100nmの金属酸化物粒子(酸化ジルコニウム)が均一に分散している。
【0123】
また、本シミュレーションにおいては、発光装置の凹部(キャビティ)の寸法は、開口部の長さLT4を3.6mm、幅WT4を0.63mm、底面の長さLB4を3.1mm、幅WB4を0.59mmとした。発光素子の寸法は長さ0.70mm、幅0.20mmとし、発光素子を、基板の長手方向に沿って発光素子間の距離を0.20mm空けて、凹部の中心部付近に配置した。一方で、第1の層については、発光素子外の厚みを0.09mm、発光素子上の厚みを0.1mmとした。
【0124】
図20に酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の全光束(lm)との関係を、図21に酸化ジルコニウム含有量と推定された発光装置の放射束(W)との関係を示す。
【0125】
図20図21に示すように、透明封止部材が酸化ジルコニウムを含む場合、発光素子を2個搭載したサイドビュー型の発光装置であっても、光の取り出し効率が向上することができることが確認された。
【0126】
さらに、図5図6の発光装置1Cを仮定したモデルにおいて、発光装置から放出される光の色度を白色点(CIE色度図におけるx=0.33、y=0.33)に調整するために必要な蛍光体粒子の体積濃度(体積%)をシミュレーションした。結果を図22に示す。
【0127】
図22に示すように、発光素子を2個搭載したサイドビュー型の発光装置であっても、酸化ジルコニウム粒子の含有量が増えるにつれ、白色を得るために必要な蛍光体粒子の量を減らすことができることが確認された。
【0128】
以上のシミュレーション結果により、1.7以上の屈折率および40nm以上200nm以下の平均分散粒径を有する金属酸化物粒子を透明封止部材中に含有させることにより、種々のタイプの発光装置において、光の取り出し効率を向上させることができることが確認された。
【0129】
<2. 発光素子の製造および評価>
上記のシミュレーション結果に基づき、金属酸化物粒子の濃度および平均分散粒径を決定して、以下のように発光装置を製造し、発光装置の光の取出し効率を評価した。
【0130】
[実施例1]
(分散液の作製)
平均一次粒子径が5nmの酸化ジルコニウム粒子(住友大阪セメント社製)10g、トルエン82g、表面修飾材料としてのメトキシ基含有フェニルシリコーンレジン(信越化学工業社製、KR217)5gを加えて混合した。この混合液をビーズミルで6時間分散処理を行い、実施例1に係る分散液を得た。
【0131】
(粒子径の評価)
得られた分散液の一部を採取し、固形分が5質量%となるようにトルエンで希釈した。
この希釈した分散液のD50を、粒度分布計(HORIBA社製、型番:SZ−100SP)を用いて測定した。その結果、D50は32nmであった。結果を表1に示す。なお、分散液に含まれる粒子は、基本的に表面修飾材料が付着した酸化ジルコニウム粒子のみであるから、測定されたD50は、酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒径であると考えられた。
【0132】
(樹脂組成物の作製)
得られた実施例1に係る分散液を10g、シリコーン樹脂としてメチルフェニルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製OE−6520 屈折率1.54 A液:B液の質量配合比=1:1(樹脂中に反応触媒含有))7.6gを混合した。ついで、この混合液から減圧乾燥によりトルエンを除去することで、表面修飾酸化ジルコニウム粒子とメチルフェニルシリコーン樹脂(OE−6520)を含有した実施例1に係る樹脂組成物を得た。なお、組成物中の酸化ジルコニウム粒子およびトルエンの含有量は、それぞれ、11質量%、2質量%であった。
【0133】
(組成物の透過率の評価)
得られた樹脂組成物の透過率を、分光光度計 V−770(日本分光社製)にて積分球を用いて測定した。測定サンプルは、シリコーン組成物を薄層石英セルに挟んで、厚み(光路長)を1mmとした状態のものを用いた。
その結果、樹脂組成物の波長460nmにおける透過率は84%であり、波長600nmにおける透過率は90%であった。結果を表4に示す。
【0134】
(硬化体の作製)
透明封止部材の透過率および金属酸化物粒子の粒径を測定するために硬化体を作成した。SUS基板に、長さ20mm、幅15mmおよび深さ5mmの溝を設け、その溝にフッ素コートをした型を作成した。型の溝に対し硬化後の厚みが0.5mmとなるように得られた樹脂組成物を流し込み、150℃で4時間加熱処理して硬化し、そのSUS基板から取り外すことで、実施例1に係る硬化体を得た。
【0135】
(硬化体の透過率の評価)
得られた硬化体の透過率を、分光光度計 V−770(日本分光社製)にて積分球を用いて測定した。
その結果、硬化体の波長460nmにおける透過率は25%であり、波長600nmにおける透過率は70%であった。結果を表4に示す。
【0136】
(硬化体中における金属酸化物粒子の平均分散粒径)
硬化体中の酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒径は、硬化体を厚さ方向に薄片化したものを試料とし、電界放出型透過電子顕微鏡(JEM−2100F、日本電子社製)で測定した。結果を表4に示す。
【0137】
(LEDパッケージの作製と全光束の評価)
容量計算式デジタル制御ディスペンサー(商品名:MEASURING MASTER MPP−1、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、実施例1に係る樹脂組成物で、青色発光ダイオード(LEDチップ)を封止した。組成物を150℃にて2時間熱処理して硬化させることで、3030シリーズ(3.0mm×3.0mm)の実施例1に係るLEDパッケージ(発光装置)を作製した。なお、発光装置の構造は、図1に示すものと同様である。
【0138】
このLEDパッケージの全光束を、全光束測定システム HMシリーズ(大塚電子社製、球サイズ3000mm)を用いて測定した。
その結果、実施例1に係るLEDパッケージの全光束は61.2lmであった。
【0139】
[実施例2、3]
金属酸化物粒子としての酸化ジルコニウム粒子の一次粒径および平均分散粒径を表4に示すものとした以外は、実施例1と同様にして発光装置を製造した。
【0140】
[実施例4]
金属酸化物粒子として表4に示す酸化チタン粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして発光装置を製造した。
【0141】
[比較例1〜4]
金属酸化物粒子としての酸化ジルコニウム粒子の一次粒径および平均分散粒径を表4に示すものとした以外は、実施例1と同様にして発光装置を製造した。
結果を表4に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
実施例1〜4と比較例1〜4との結果より、屈折率が1.7以上および平均分散粒径が40nm以上200nm以下の金属酸化物粒子を透明封止部材の材料として用いることにより、光の取り出し効率に優れる発光装置を得られることが確認された。
【0144】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0145】
1、1A、1B、1C 発光装置
10、10B 基板
11、11B 凹部
13、13B 壁面
15、15B 底面
17、17B 開口部
20、20B、20C 発光素子
30、30A、30B 透明封止部材
31A、31B 第1の層
33A、33B 第2の層
40 ボンディングワイヤ
50、50B、50C リードフレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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図22