【解決手段】電流補償回路101は、PNP型の第4乃至第6のトランジスタ4〜6によるカレントミラー回路で構成されており、外来ノイズにより発生するマイナスノイズ電流を補償回路付随寄生トランジスタ23を介して補償回路用カレントミラー回路の入力側となる第4のトランジスタ4に流入せしめる一方、補償回路用カレントミラー回路の出力側の電流を、第1及び第2のトランジスタ1、2で構成されたカレントミラー回路の入力側へ流入させる。
【効果】マイナスノイズ電流により第1のトランジスタ1から引き抜かれる電流の補償がなされ、第2のトランジスタ2における過大電流の発生が抑圧、防止され、回路の誤動作、損傷発生の確実な防止が可能となる。
P型半導体基板上に、入力端子、又は、出力端子を介して信号入力、又は、信号出力可能に構成されてなる内部回路と、前記内部回路に必要なバイアス電流を供給するバイアス供給用カレントミラー回路とが形成されてなる半導体集積回路に設けられ、前記入力端子にN型半導体層が接続されて過大入力を抑圧、低減可能に形成されてなる入力保護素子、又は、前記出力端子にN型半導体層が接続されて出力信号を外部へ出力可能に形成されてなる出力素子を有してなるノイズ誤動作防止回路において、
補償回路用カレントミラー回路を用いてなる電流補償回路を設け、
前記補償回路用カレントミラー回路は、前記入力端子、又は、出力端子にマイナスノイズ電流が生じた場合、当該補償回路用カレントミラー回路を構成する入力側のトランジスタの形成により生じた補償回路付随寄生トランジスタを介して前記入力側のトランジスタに流れる電流を、当該補償回路用カレントミラー回路の出力側から前記バイアス供給用カレントミラー回路の入力側に供給し、前記マイナスノイズ電流の発生に起因して前記バイアス供給用カレントミラー回路の入力側から引き抜かれる電流を補償し、前記内部回路への過大電流の流入を防止可能としてなることを特徴とするノイズ誤動作防止回路。
前記補償回路付随寄生トランジスタは、前記補償回路用カレントミラー回路の入力側のトランジスタが形成されたN型半導体層をコレクタとし、前記入力保護素子、又は、出力素子が形成されたN型半導体層をエミッタとしてなることを特徴とする請求項1記載のノイズ誤動作防止回路。
前記補償回路用カレントミラー回路の入力側のトランジスタは、前記入力保護素子、又は、出力素子と、前記バイアス供給用カレントミラー回路との間において、N型半導体層上に形成されて設けられることを特徴とする請求項2記載のノイズ誤動作防止回路。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路においては、外来ノイズが半導体集積回路に設けられた内部回路の誤動作や回路素子の破壊等を招くことがあり、半導体集積回路にとって外来ノイズは無視できない問題である。
このような半導体集積回路における外来ノイズの問題について、
図8乃至
図10を参照しつつ説明する。
最初に、
図8(B)は、半導体集積回路における外来ノイズの影響を説明するための半導体集積回路の一部分の回路構成例である。
この回路構成例は、外部から印加される電源電圧VCCを基に、図示されない内部回路に必要な回路用電源電圧VDDを生成する電圧生成回路REGと、その周辺部分の回路構成の例である。
【0003】
トランジスタQ1,Q2は、カレントミラー回路71を構成しており、入力側となるダイオード接続されたトランジスタQ1には、同様に、ダイオード接続されたトランジスタQ3を介して定電流源72からの定電流ISが供給されるものとなっている。
さらに、トランジスタQ3によりPチャンネルMOS電界効果型トランジスタ(以下、「PMOSトランジスタ」と称する)MP1のゲート電圧が作り出されている。
【0004】
トランジスタQ1,Q2によるカレントミラー回路71は、定常的に流れる電流を可能な限り低く抑えるため、例えば、1:10等のサイズ比で作られており、定電流源72により供給される電流の10 倍程の電流を出力側トランジスタQ2からPMOSトランジスタMP1へ供給している。
【0005】
電圧生成回路REGには、PMOSトランジスタMP1のドレイン電流が供給され、起動後に電圧VDDが生成される構成となっている。
このように、PMOSトランジスタMP1のドレイン電流は、電圧生成回路REG起動の為のバイアス電流であるため、設計上、PMOSトランジスタMP1に許容できる電流は、せいぜい1mA程度であり、これ以上の電流が流れるとPMOSトランジスタMP1や電圧生成回路REG内の素子が損傷、或いは、破壊される虞がある。
【0006】
このような半導体集積回路の入力保護に用いられる回路例が
図8(A)に示されている。
一般的に、電源電圧が40V以上となる半導体集積回路においては、PMOSトランジスタのゲート、ソース、及び、バックゲートを相互に接続して入力端子へ繋いで、過大入力の抑圧、低減のための入力保護素子MPGSとして用いられる場合がある(
図8(A)参照)。
【0007】
図9には、上述のカレントミラー回路71と入力保護素子MPGSとの半導体チップ上における相対的な位置関係を模式的に示した模式図が示されており、以下、同図について説明する。
入力保護素子MPGSは、チップエッジ近傍に配される一方、カレントミラー回路71は、入力保護素子MPGSを挟んでチップエッジと反対側で、半導体チップ内部の適宜な位置に配されている。しかも、この例においては、入力保護素子MPGSとカレントミラー回路71は、同図において点線Aで示された直線にほぼ沿うように形成されたものなっている。
【0008】
図9においてPADの表記は、半導体チップに外部から内部へ信号を入力するために用いられる端子を表している。
入力保護素子MPGSは、外部から侵入する静電気から内部回路を保護するため、PADに接続されている。
【0009】
図10には、
図9で示された点線Aの部分での半導体チップの断面を模式的に示した模式図が示されており、以下、同図について説明する。
カレントミラー回路71を構成するPNPトランジスタQ1(Q3)は、P型基板に設けられたN型半導体層73aに、コレクタ、エミッタとなる2つのP型半導体領域と、ベースとなるN型半導体領域とが設けられて形成されている。
【0010】
入力保護素子MPGSも同様に、P型基板に設けられたN型半導体層73bに、2つのP型半導体領域と一つのN型半導体領域が設けられて形成されたものとなっている。
【0011】
そして、上述のようにPNPトランジスタQ1(Q3)、入力保護素子MPGSが設けられることにより、入力保護素子MPGSとPNPトランジスタQ1(Q3)との間には、寄生的にNPNトランジスタQ
S1(Q
S2)が生じてしまう。
【0012】
従来、半導体集積回路を動作させる場合、電源端子に電圧を印加し、入力端子に所定の信号を入力して動作させるが、その際、入力端子に接続されるワイヤーに寄生的に存在するインダクタンスや、プリント基板上の配線インダクタンスによって、入力信号にオーバーシュートやアンダーシュートといった好ましくない現象が発生し、半導体集積回路の入力端子にプラスやマイナスのノイズ電流を印加させることがある。
【0013】
このような好ましくない現象の発生を抑圧、防止するため、半導体集積回路側やプリント基板側では、勿論種々の対策が採られるが、完全に除去できないのが現状である。
数十mA以上のノイズ電流が、一旦、半導体集積回路に印加されると、半導体集積回路自体に損傷が生ずる場合や、最悪の場合には、破壊に至ることもある。
【0014】
図11には、
図10に示された寄生トランジスタを、
図8(B)に示された回路に含めた等価回路が示されており、この等価回路において、外部からノイズ電流が印加された場合の動作について同図を参照しつつ説明する。
図11における入力端子は、例えば、
図8(A)に例示されたものである。
この入力端子にマイナスのノイズ電流Inが印加されると、入力保護素子MPGSのバックゲートとPNPトランジスタQ1(Q3)のベースによって寄生的に形成された寄生トランジスタQ
S1,Q
S2を介して、入力側トランジスタQ1,Q3のコレクタから電流が流れ出す。そのため、出力側トランジスタQ2及びPMOSトランジスタMP1には、Q1:Q2のカレントミラー比が1:10の場合には、トランジスタQ1,Q3のコレクタ電流の10倍の電流が流れることとなる。
【0015】
仮に、ノイズ電流Inが、10mA程度の電流値に達したとすると、トランジスタQ2及びPMOSトランジスタMP1には、100mAにも及ぶ電流が流れ、場合によっては、回路の許容電流値を超えてしまい配線断裂等の回路破壊を招く結果となる。
また、トランジスタQ2及びPMOSトランジスタMP1の増加した電流が印加される電圧生成回路REGにおいても、例えば、正常時のバイアス電流1mA以下に対して、過大な電流が流れることになるため、正常動作を維持することが困難となり、所望する出力電圧VDDを得ることが出来なくなるという問題がある。
【0016】
このような問題に対する方策は、種々提案、実用化されている(例えば、特許文献1等参照)が、例えば、半導体集積回路に設けられた内部回路の許容電流値を100mA級とし、その大きさの電流に耐え得るように配線や回路構成を見直しすることが、確実な解決策の一つして考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図7を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるノイズ誤動作防止回路の第1の回路構成例について、
図1乃至
図3を参照しつつ説明する。
【0024】
本発明の実施の形態におけるノイズ誤動作防止回路は、外来ノイズの発生より入力端子や出力端子に流れるマイナス電流が、半導体集積回路の内部に形成された寄生素子を介して内部回路に流入することで生ずる回路誤動作や素子破壊等を防止するものである。
図1には、本発明の実施の形態におけるノイズ誤動作防止回路が用いられる半導体集積回路の一部の回路構成例が示されており、以下、同図を参照ししつつ、回路構成について説明する。
【0025】
半導体集積回路内部には、入力保護素子MPGS等と共にノイズ誤動作防止回路を構成する電流補償回路101と、内部回路としての電圧生成回路(
図1においては「REG」と表記)20と、バイアス回路102とが設けられている(
図1参照)。
電圧生成回路20は、図示されない他の内部回路において必要とされる電源電圧VDDを、外部から印加される電源電圧VCCを基に生成、出力するものである。かかる電圧生成回路20は、本発明独自の構成を有するものではなく、従来同様の回路構成を有するものである。
【0026】
バイアス回路102は、電圧生成回路20の動作に必要なバイアス電流を供給するもので、電圧生成回路20同様、本発明独自のものではなく、従来同様の構成を有してなるものである。
また、電流補償回路101は、詳細は後述するように、外来ノイズの侵入による寄生素子の動作に起因してバイアス回路102に不足する電流の補償を行うことで、内部回路の誤動作、過電流の発生防止等の機能を果たすものである。
【0027】
ここで、上述の電流補償回路101、電圧生成回路20、及び、バイアス回路102が設けられた半導体集積回路の断面構造について、
図3を参照しつつ説明する。
まず、前提として、半導体チップエッジ近傍には、従来と同様、入力保護素子MPGS(
図8(A)参照)が設けられているものとする。
【0028】
すなわち、この入力保護素子MPGSは、PMOSトランジスタのゲート、ソース、及び、バックゲートを相互に接続してなるもので、この相互の接続点が入力端子に、ドレインがグランドに、それぞれ接続されて用いられるものである。
そして、入力保護素子MPGSとバイアス回路102を構成する第1及び第2のトランジスタ1,2、並びに、第3のトランジスタ3は、従来同様、ほぼ同一の直線に沿って配置されているとする(
図9参照)。
【0029】
かかる前提の下、
図3に模式的に示された断面は、
図10に示された従来の半導体断面に相当するものである。すなわち、
図3には、ほぼ同一直線(
図9の点線A参照)に沿って配設された入力保護素子MPGSとバイアス回路102を構成する第1のトランジスタ1、及び、第3のトランジスタ3の縦断面が模式的に示されている。
【0030】
半導体集積回路の基盤となるP型半導体基板30の上には、入力保護素子MPGSが設けられる位置に保護素子用N型半導体層31が形成され、この保護素子用N型半導体層31上に2つのP型半導体領域と1つのN型半導体領域が設けられて入力保護素子MPGSが形成されている(
図3参照)。
【0031】
第1のトランジスタ1(第3のトランジスタ3)が設けられる位置においても、入力保護素子MPGSと同様に、第1のトランジスタ用N型半導体層32(第3のトランジスタ用N型半導体層33)が形成され、この第1のトランジスタ用N型半導体層32(第3のトランジスタ用N型半導体層33)上に2つのP型半導体領域と1つのN型半導体領域が設けられて第1のトランジスタ1(第3のトランジスタ3)が形成されている(
図3参照)。
【0032】
そして、電流補償回路101の第4のトランジスタ4は、入力保護素子MPGSと第1のトランジスタ1(第3のトランジスタ3)との間の適宜な位置に、第1のトランジスタ1同様、第4のトランジスタ用N型半導体層34が形成され、この第4のトランジスタ用N型半導体層34上に2つのP型半導体領域と1つのN型半導体領域が設けられて第4のトランジスタ4(
図3においては「Q4」と表記)が形成されている(
図3参照)。
【0033】
このような構造の半導体集積回路にあっては、入力保護素子MPGSの保護素子用N型半導体層31と、入力保護素子MPGSと第4のトランジスタ4との間に形成されたP型半導体層35と、第1のトランジスタ1の第1のトランジスタ用N型半導体層32とから、従来同様第1の寄生トランジスタ(
図2及び
図3においては「Q
S1」と表記)21が寄生的に形成される(
図3参照)。
【0034】
同様に、入力保護素子MPGSの保護素子用N型半導体層31と、P型半導体層35と、第3のトランジスタ3の第3のトランジスタ用N型半導体層33とから、従来同様、第2の寄生トランジスタ(
図2及び
図3においては「QS2」と表記)22が寄生的に形成される(
図3参照)。
【0035】
さらに、本発明の実施の形態においては、入力保護素子MPGSの保護素子用N型半導体層31と、P型半導体層35と、第4のトランジスタ4の第4のトランジスタ用N型半導体層34とからNPN型の補償回路付随寄生トランジスタ(
図2及び
図3においては「Q
S3」と表記)23が寄生的に形成される(
図3参照)。
【0036】
次に、第1の回路構成例における具体的な回路構成について、上述の第1及び第2の寄生トランジスタ21,22、及び、補償回路付随寄生トランジスタ23を含めた等価回路図である
図2を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態におけるバイアス回路102は、第1乃至第3のバイポーラトランジスタ(
図1においては、それぞれ「Q1」、「Q2」、「Q3」と表記)1〜3と、MOS電界効果型トランジスタ(
図1においては「MP1」と表記)11と、抵抗器(
図1においては「R1」と表記)25と、定電流源10とを有して構成されたものとなっている。
【0037】
本発明の実施の形態においては、第1乃至第3のバイポーラトランジスタ(以後、説明の便宜上「第1乃至第3のトランジスタ」と称する)1〜3には、PNP型トランジスタが用いられている。
【0038】
また、本発明の実施の形態において、MOS電界効果型トランジスタ11には、PチャンネルMOS電界効果型トランジスタ(以後、説明の便宜上「PMOSトランジスタ」と称する)が用いられている。
第1及び第2のトランジスタ1,2は、ベースが相互に接続されると共に、第1のトランジスタ1のコレクタと接続されて、第1のトランジスタ1は、いわゆるダイオード接続状態とされている。
【0039】
また、第1及び第2のトランジスタ1,2のエミッタには、外部から供給される電源電圧VCCが印加されるようになっている一方、第1のトランジスタ1のコレクタは、抵抗器25を介して第3のトランジスタ3のエミッタに接続され、第2のトランジスタ2のコレクタは、PMOSトランジスタ11のソースに接続されている。
第1及び第2のトランジスタ1,2は、上述のように接続されることによりバイアス供給用カレントミラー回路を構成するものとなっている。
【0040】
第3のトランジスタ3のベースとPMOSトランジスタ11のゲートは、相互に接続されると共に、第3のトランジスタ3のコレクタに接続されて、第3のトランジスタ3は、いわゆるダイオード接続状態とされている。
そして、第3のトランジスタ3のコレクタとグランドとの間には、定電流源10が直列接続されて設けられる一方、PMOSトランジスタ11のドレインは、電圧生成回路20のバイアス入力部に接続されている。
【0041】
一方、本発明の実施の形態における電流補償回路101は、第4乃至第6のトランジスタ(
図1においては、それぞれ「Q4」、「Q5」、「Q6」と表記)4〜6を有して構成されている。これら第4乃至第6のトランジスタ4〜6は、次述するように接続されて補償回路用カレントミラー回路を構成している。
【0042】
すなわち、第4乃至第6のトランジスタ4〜6は、ベースが相互に接続されると共に、第4のトランジスタ4のコレクタに接続され、第4のトランジスタ4は、いわゆるダイオード接続状態とされている。
【0043】
また、第4乃至第6のトランジスタ4〜6のエミッタには、外部から供給される電源電圧VCCが印加されるようになっている一方、第5のトランジスタ5のコレクタは、第3のトランジスタ3のエミッタに、第6のトランジスタ6のコレクタは、第1のトランジスタ1のコレクタに、それぞれ接続されている。
【0044】
図2において、入力端子41は、
図8(A)に例示した半導体集積回路内の内部回路に必要な所要の信号を外部から印加するためのものである。この入力端子41とグランドとの間には、従来同様に図示を省略してあるが入力保護素子MPGS(
図8(A)参照)が接続されている。
【0045】
かかる入力端子41には、第1及び第2の寄生トランジスタ21,22、及び、補償回路付随寄生トランジスタ23のエミッタが接続された状態となっている。
第1及び第2の寄生トランジスタ21,22、及び、補償回路付随寄生トランジスタ23は、べースが相互に接続されてグランドに接続された状態となっている。
【0046】
また、第1の寄生トランジスタ21のコレクタは、第1のトランジスタ1のベース及びコレクタに、第2の寄生トランジスタ22のコレクタは、第3のトランジスタ3のベース及びコレクタに、補償回路付随寄生トランジスタ23のコレクタは、第4のトランジスタ4のベース及びコレクタに、それぞれ接続された状態となっている。
【0047】
次に、かかる回路構成における動作について説明する。
まず、従来例で説明したと同様に、入力端子41からマイナスのノイズ電流(以下、説明の便宜上「マイナスノイズ電流」と称する)Inが流入したとする。
【0048】
マイナスノイズ電流Inの流入によって、第1及び第2の寄生トランジスタ21,22を介して、第1及び第3のトランジスタ1,3のコレクタから電流が引き抜かれる。
一方、第4のトランジスタ4も、補償回路付随寄生トランジスタ23を介してコレクタ電流が引き抜かれる。
【0049】
第4のトランジスタ4は、第5及び第6のトランジスタ5,6とカレントミラー回路を構成しているため、第4のトランジスタ4のコレクタ電流は、第5及び第6のトランジスタ5,6へミラーされて、第1のトランジスタ1のコレクタ、ベース、及び、第3のトランジスタ3のエミッタに供給されることとなる。
【0050】
この第5及び第6のトランジスタ5,6による電流供給は、第1の寄生トランジスタ21、及び、第2の寄生トランジスタ22により引き抜かれた第1及び第3のトランジスタ1,3のそれぞれのコレクタ電流を補償することとなる。
【0051】
カレントミラー回路を構成する第4乃至第6のトランジスタ4〜6は、良く知られているようにサイズ比を変えることで、ミラー電流の値を変えることができるため、上述の電流の補償量が調整可能である。
なお、第5のトランジスタ5のコレクタは、第3のトランジスタ3のエミッタに代えてコレクタに接続しても上述した動作と同等の動作となる。
【0052】
上述したように、マイナスノイズ電流の流入時に、寄生トランジスタに起因する第1及び第3のトランジスタ1,3のコレクタ電流の引き抜き分が、第4乃至第6のトランジスタ4〜6による電流補償動作によって補償されるため、第1のトランジスタ1とカレントミラー回路を構成し出力側となる第2のトランジスタ2、及び、PMOSトランジスタ11への過大電流の流入が阻止され、過大電流による部品損傷、破壊が防止、抑圧されるものとなっている。尚、通常の動作状態においては、第4のトランジスタ4を活性化させる電流経路が確保されてない為、電流補償回路101は何らバイアス回路102に影響を与えない。
【0053】
次に、第2の回路構成例について、
図3を参照しつつ説明する。
なお、
図1、又は、
図3に示された構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例は、まず、既に説明したように入力保護素子MPGSとバイアス供給用カレントミラー回路を構成する第1のトランジスタ1との間に、第4乃至第6のトランジスタ4〜6からなる電流補償回路を101を設けた構成を採る点は、第1の回路構成例と同一である。第2の回路構成例は、さらに、次述するようにトランジスタのベース幅を設定した点が、第1の回路構成例と異なるものである。
【0054】
一般的に、NPNトランジスタの電流増幅率は、ベース幅の2乗に反比例することから、べース幅が小さい程、電流増幅率は大きくなるということができる。
図3において、W
B1は、第1の寄生トランジスタ21のベース幅を、W
B2は、第2の寄生トランジスタ22のベース幅を、W
B3は、補償回路付随寄生トランジスタ23のベース幅を、それぞれ表しており、W
B3<W
B1,W
B2となっている。
【0055】
したがって、第1及び第2の寄生トランジスタ21,22、及び、補償回路付随寄生トランジスタ23の電流増幅率β1、β2、β3の関係は、β3>β1、β2となる。そのため、先に説明した第4乃至第6のトランジスタ4〜6による電流補償動作によって供給できる電流が、引き抜かれようとする電流を上回るため、第2のトランジスタ2、PMOSトランジスタ11の電流経路に流れる電流値の増大を抑圧、阻止可能とする。
【0056】
なお、電流増幅率βは、良く知られているように下記する式1により表される。
【0057】
β=1/[{W
B2/(2・τb・Dn)}+{(Dp/Dn)・(W
B/Lp)・(NA/ND)}]・・・式1
【0058】
ここで、W
Bはベース幅、τbはベースにおける小数キャリア寿命、Dnは電子の拡散定数、Dpは正孔の拡散定数、Lpはエミッタにおける正孔の拡散長、NAはベース不純物濃度、NDはエミッタのドナー濃度である。
【0059】
次に、第3の回路構成例について、
図4乃至
図7を参照しつつ説明する。
先に説明した第1及び第2の回路構成例における電流補償回路101は、入力端子から侵入するマイナスノイズ電流による内部回路の損傷等を抑圧、防止するためのものあったのに対して、この第3の回路構成例における電流補償回路101Aは、後述するように出力端子に侵入するノイズによる内部回路の誤動作、損傷等を防止するためのものである。
【0060】
この第3の回路構成例は、MOSトランジスタを用いて電流補償回路101Aを構成した点が第1及び第2の回路構成例と異なるが、第1及び第2の回路構成例と同様に、マイナスノイズ電流の発生に起因して生ずるトランジスタのコレクタ電流の不足分を補償可能として、ノイズによる回路の誤動作、損傷等を抑圧、防止できるようにしたものである点は、先の第1及び第2の回路構成例と同様である。
【0061】
図4(A)は、第3の回路構成例における回路図であって寄生トランジスタを等価的に表していない回路図であるが、この第3の回路構成例も、第1及び第2の回路構成例と同様に寄生トランジスタが形成される構成であるため、以下、回路構成については、寄生トランジスタを含めた等価回路である
図5を参照しつつ説明する。
【0062】
まず、この第3の回路構成例においては、
図4(B)に示されたように、出力端子42に出力素子43が接続されている。すなわち、出力素子43には、NチャンネルMOS電界効果型トランジスタ(以下「NMOSトランジスタ」と称する)が用いられており、そのドレインが出力端子42に接続され、ソースはグランドに接続されている。そして、出力素子43のゲートには、半導体集積回路の図示されない内部回路の出力信号が印加されるようになっており、出力素子43を介して内部回路の信号が出力可能となっている。
【0063】
この出力端子42には、例えば、メカニカルリレー等のインダクタンス成分を有する電子部品が接続されることがある。その場合、インダクタンスを流れる電流とその逆起電力により、出力端子42が負バイアスとなることがある。
この第3の回路構成例においては、電流補償回路101Aは、出力端子42に生ずる上述のような負バイアスに起因する回路誤動作を抑圧、防止する機能を果たすものとなっている。
【0064】
この第3の回路構成例における半導体チップ上の配置は、
図6に示されたように、先に説明した出力素子43は、半導体チップエッジ近傍に配される一方、バイアス回路102を構成するカレントミラー回路は、出力素子43を挟んで半導体チップエッジと反対側で、半導体チップ内部の適宜な位置に配されている。これらは、第1及び第2の回路構成例同様、ほぼ同一直線(
図6の点線A参照)に沿って形成されている。
出力素子43とカレントミラー回路との間には、後述する電流補償回路101Aに用いられる第1のNMOSトランジスタ(
図4乃至
図7においては「MN1」と表記)15が形成されている。
【0065】
図7には、
図6に示された点線Aの部分での半導体チップの断面を模式的に示した模式図が示されており、以下、同図について説明する。
半導体集積回路の基盤となるP型半導体基板30の上には、出力素子43が設けられる位置に出力素子用N型半導体層36が形成され、この出力素子用N型半導体層36上に2つのN型半導体領域と1つのP型半導体領域が設けられて出力素子43が形成されている(
図7参照)。
【0066】
また、第1のトランジスタ1(第3のトランジスタ3)が設けられる位置においても、出力素子43と同様に、第1のトランジスタ用N型半導体層32(第3のトランジスタ用N型半導体層33)が形成され、この第1のトランジスタ用N型半導体層32(第3のトランジスタ用N型半導体層33)上に2つのP型半導体領域と1つのN型半導体領域が設けられて第1のトランジスタ1(第3のトランジスタ3)が形成されている(
図7参照)。なお、
図7においては、第1のトランジスタ1を「Q1」、第3のトランジスタ3を「Q3」と、それぞれ表記している。
【0067】
そして、電流補償回路101Aの第1のNMOSトランジスタ15は、出力素子43と第1のトランジスタ1(第3のトランジスタ3)との間の適宜な位置に設けられている。すなわち、第1のトランジスタ1同様、NMOS用N型半導体層37が形成され、このNMOS用N型半導体層37上に2つのN型半導体領域と1つのP型半導体領域が設けられて第1のNMOSトランジスタ15(
図7においては「MN1」と表記)が形成されている(
図7参照)。
【0068】
このような構成にあっては、第1及び第2の回路構成例同様、出力素子43の出力素子用N型半導体層36と、P型半導体層35と、第1のトランジスタ1の第1のトランジスタ用N型半導体層32とから、従来同様、第1の寄生トランジスタ(
図5及び
図7においては「Q
S1」と表記)21が寄生的に形成される(
図7参照)。
【0069】
また、出力素子43の出力素子用N型半導体層36と、P型半導体層35と、第3のトランジスタ3の第3のトランジスタ用N型半導体層33とから、従来同様、第2の寄生トランジスタ(
図5及び
図7においては「Q
S2」と表記)22が寄生的に形成される(
図7参照)。
【0070】
さらに、出力素子43の出力素子用N型半導体層36と、P型半導体層35と、第1のNMOSトランジスタ15のNMOS用N型半導体層37とからNPN型の補償回路付随寄生トランジスタ(
図5及び
図7においては「Q
S3」と表記)23が寄生的に形成される(
図7参照)。
【0071】
次に、具体的な回路構成について、
図5を参照しつつ説明する。
なお、先の
図1乃至
図3に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
電流補償回路101Aは、第1のNMOSトランジスタ15と、第2乃至第4のPMOSトランジスタ(
図4及び
図5においては、それぞれ「MP2」、「MP3」、「MP4」と表記)12〜14を有して構成されている。
【0072】
出力端子42には、第1及び第2の寄生トランジスタ21,22、及び、補償回路付随寄生トランジスタ23のエミッタが接続された状態となっている一方、これら第1及び第2の寄生トランジスタ21,22、及び、補償回路付随寄生トランジスタ23のべースは、相互に接続されてグランドに接続された状態となっている。
【0073】
また、第1の寄生トランジスタ21のコレクタは、第1のトランジスタ1のベース及びコレクタに、第2の寄生トランジスタ22のコレクタは、第3のトランジスタ3のベース及びコレクタに、補償回路付随寄生トランジスタ23のコレクタは、第2のPMOSトランジスタ12のゲート及びドレインと第1のNMOSトランジスタ15のドレインに接続されている。
【0074】
電流補償回路101Aにおいて、第2乃至第4のPMOSトランジスタ12〜14は、カレントミラー回路を構成している。
すなわち、第2乃至第4のPMOSトランジスタ12〜14は、ゲートが相互に接続されると共に、第2のPMOSトランジスタ12のドレインに接続され、第2のPMOSトランジスタ12は、いわゆるダイオード接続状態とされている。
【0075】
また、第2乃至第4のPMOSトランジスタ12〜14のソースには、外部から供給される電源電圧VCCが印加されるようになっている一方、第3のPMOSトランジスタ13のドレインは、第3のトランジスタ3のエミッタに接続され、第4のPMOSトランジスタ14のドレインは、第1のトランジスタ1のコレクタに接続されている。
【0076】
さらに、第2のPMOSトランジスタ12のドレインは、第1のNMOSトランジスタ15のドレインに接続されている。
そして、第1のNMOSトランジスタ15のソース及びゲートは、グランドに接続されている。
【0077】
次に、かかる構成における動作について説明する。
出力端子42からマイナスノイズ電流Inが印加されると第1及び第2の寄生トランジスタ21,22、及び、補償回路付随寄生トランジスタ23がオン状態となり、それぞれにコレクタ電流が流れる。
ここで、第1及び第2の寄生トランジスタ21,22のコレクタ電流が、第1及び第3のトランジスタ1〜3のコレクタ電流を増加させる方向に加算される点は、先に説明した第1の回路構成例と同様である。
【0078】
一方、補償回路付随寄生トランジスタ23のコレクタ電流は、カレントミラー回路を構成する第2乃至第4のPMOSトランジスタ12〜14によってミラーされて、第1のトランジスタ1のコレクタ、及び、第3のトランジスタ3のエミッタへ、それぞれ流入せしめられることで、第1及び第2の寄生トランジスタ21,22のコレクタ電流を減少させる方向で加算される。
【0079】
その結果、第1及び第2の寄生トランジスタ21,22のコレクタ電流の発生に起因する第1及び第3のトランジスタ1,3のコレクタ電流の増加分に対し電流補償がなされ、回路の誤動作、損傷の抑圧、防止がされることとなる。
【0080】
第1のNMOSトランジスタ15は、
図6に示されたように、第1及び第3のトランジスタ1,3と出力素子43との間に形成、配設されることで、より効果的に上述のような電流補償が可能となる。
【0081】
なお、カレントミラー回路を構成する第2乃至第4のPMOSトランジスタ12〜14は、先の第1の回路構成例のようにPNP型トランジスタで構成しても同様な動作を確保可能である。
【0082】
このように、出力端子42からマイナスノイズ電流が侵入した場合においても、各寄生トランジスタの動作によって第1及び第3のトランジスタ1,3の動作が阻害されることなく、内部回路へ過大な電流の流入が確実に防止される。
【0083】
電流補償回路101Aにおいてカレントミラー回路を構成する第2乃至第4のPMOSトランジスタ12〜14は、そのサイズ比を代えることで、ミラーされる電流量の比を変えることができ、電流の補償量を調整できる点は、先に説明した第1の回路構成例と同様である。
【0084】
また、定電流源10がNMOSトランジスタで形成されている場合、その出力電流は、高温時リーク電流により増加し、電圧生成回路20へのバイアス電流も増加することがある。この場合、電流補償回路101Aの第1のNMOSトランジスタ15も同様にリーク電流が増加し、その増加したリーク電流は第2乃至第4のPMOSトランジスタ12〜14でミラーされ、定電流源10の電流を減らす方向へ電流補償がなされることとなる。
このように、高温時の定電流源10の電流増加に対して、第1のNMOSトランジスタ15はリーク電流補償機能も果たすことができる。
【0085】
なお、上述の実施例においては、半導体チップエッジ近傍から、入力保護素子MPGS、又は、出力素子43、電流補償回路101(101A)、バイアス回路102のバイアス供給用カレントミラー回路の順で、半導体チップエッジから離間する方向へほぼ同一直線に沿って配されている構成として説明したが、必ずしも同一直線に沿う必要は無い。
少なくとも、入力保護素子MPGSが形成されたN型半導体層31、又は、出力素子43が形成されたN型半導体層36と、バイアス回路102のバイアス供給用カレントミラー回路が形成されたN型半導体層32(33)との距離に比して、入力保護素子MPGSが形成されたN型半導体層31、又は、出力素子43が形成されたN型半導体層36と、電流補償回路101(101A)が形成されたN型半導体層34(37)との距離がより近い位置にあれば十分である。