(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-41349(P2019-41349A)
(43)【公開日】2019年3月14日
(54)【発明の名称】MEMS素子
(51)【国際特許分類】
H04R 17/02 20060101AFI20190215BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20190215BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20190215BHJP
【FI】
H04R17/02
B81B3/00
H01L29/84 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-163978(P2017-163978)
(22)【出願日】2017年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀬志本 明
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宗
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】口地 博行
【テーマコード(参考)】
3C081
4M112
5D004
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081BA22
3C081BA45
3C081BA48
3C081BA53
3C081DA03
3C081DA27
3C081DA29
3C081DA30
3C081EA01
3C081EA21
4M112AA06
4M112BA07
4M112CA01
4M112CA03
4M112CA11
4M112CA12
4M112EA03
4M112EA04
4M112EA07
4M112EA11
4M112EA20
4M112FA01
5D004AA01
5D004BB04
5D004DD03
5D004FF01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】感度の高い出力信号を得ることができるMEMS素子を提供する。
【解決手段】圧電膜4を有する可動電極膜の一部を圧電性材料で構成するとともに、この圧電性材料の少なくとも一部を挟んで第1の電極3と、第2の電極5とを配置する。音圧等を受けて可動電極膜が変位すると、固定電極8と可動電極間の容量変化に基づく第1の信号として出力する。同時に第1の電極と第2の電極間の圧電性材料の起電圧に基づく第2の信号として重畳して出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックチャンバーを備えた基板と、該基板上に、スペーサーを挟んで固定電極を含む固定電極膜と可動電極を含む可動電極膜とが対向配置しているMEMS素子において、
前記可動電極膜の一部を圧電性材料で構成するとともに、該圧電性材料の少なくとも一部を挟んで第1の電極と第2の電極とを配置し、
前記可動電極膜の変位を、前記固定電極と前記可動電極間の容量変化に基づく第1の信号として出力するとともに、前記第1の電極と前記第2の電極間の前記圧電性材料の起電圧に基づく第2の信号として出力することを特徴とするMEMS素子。
【請求項2】
請求項1記載のMEMS素子において、前記可動電極膜は、前記基板と前記スペーサーとにより支持され、該支持側の前記可動電極膜の一部を圧電性基板で構成することを特徴とするMEMS素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はMEMS素子に関し、特にマイクロフォン、各種センサ等として用いられるMEMS素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスを用いて形成されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子は、半導体基板上に可動電極、犠牲層および固定電極を形成した後、犠牲層の一部を除去することで、スペーサーを介して固定電極と可動電極との間にエアーギャップ(中空)構造が形成される。
【0003】
例えば、容量型のMEMS素子では、複数の貫通孔を備えた固定電極と、音圧等を受けて振動する可動電極とを対向して配置し、振動による可動電極の変位を電極間の容量変化として検出する構成となっている。この種のMEMS素子は、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
従来のMEMS素子の動作を
図4に模式的に示す。支持基板となるシリコン基板41上に熱酸化膜からなる絶縁膜42を介して、導電性の可動電極を含む可動電極膜43と導電性の固定電極を含む固定電極膜44とがスペーサー45を介して配置されている。可動電極膜43は、音圧等を受けて振動することで、固定電極膜44の固定電極と可動電極膜43の固定電極との間で形成されているキャパシタの容量値が変化する。この容量値を図示しない電極から取り出すことで、可動電極膜43が受ける音圧等に応じた出力信号を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−55087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のMEMS素子の多くは、音響圧力等による振動板の振動変位を対向する固定板との容量変化としてとらえ、電気信号に変換して出力する容量素子である。しかし容量素子は、振動板と固定板との間隙の空気の流動によって生じる音響抵抗のために、信号雑音比の改善が限界になりつつある。本発明はこのような問題点を解消し、感度の高い出力信号を得ることができるMEMS素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本願請求項1に係る発明は、バックチャンバーを備えた基板と、該基板上に、スペーサーを挟んで固定電極を含む固定電極膜と可動電極を含む可動電極膜とが対向配置しているMEMS素子において、前記可動電極膜の一部を圧電性材料で構成するとともに、該圧電性材料の少なくとも一部を挟んで第1の電極と第2の電極とを配置し、前記可動電極膜の変位を、前記固定電極と前記可動電極間の容量変化に基づく第1の信号として出力するとともに、前記第1の電極と前記第2の電極間の前記圧電性材料の起電圧に基づく第2の信号として出力することを特徴とする。
【0008】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載のMEMS素子において、前記可動電極膜は、前記基板と前記スペーサーとにより支持され、該支持側の前記可動電極膜の一部を圧電性基板で構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のMEMS素子は、MEMS素子の出力信号を固定電極と可動電極間の容量変化に基づく第1の信号と、第1の電極と第2の電極との間に配置した圧電性材料の圧電効果に基づく起電圧を第2の信号として出力する構成とすることで、従来の容量変化に基づく信号に起電圧に基づく信号を重畳することができ、従来の容量変化に基づく変化のみと比較して大きな出力信号を得ることができ、高感度のMEMS素子を構成することができる。
【0010】
特に、可動電極膜の一部を構成する圧電性材料について、基板とスペーサーとの支持部側に配置することで、可動電極の振動により大きく変形する部分に圧電性材料を配置することができ、大きな起電圧を得ることができ、効果が大きい。さらに可動電極膜の支持部から離れた可動電極の中央部に圧電性材料を配置しない構造とすることで、圧電性材料の膜応力が緩和され、感度向上や可動電極膜のたわみを抑制する効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施例のMEMS素子の説明図である。
【
図2】本発明の第2の実施例のMEMS素子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のMEMS素子は、可動電極膜の一部を圧電性材料とすることで、容量変化に基づく出力と圧電性材料の起電力に基づく出力とを重畳して出力可能としている。以下、本発明のMEMS素子について詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の第1の実施例の説明図で、MEMS素子の中央部分の断面図を示している。
図1に示すように、支持基板となるシリコン基板1(基板に相当)上に熱酸化膜からなる絶縁膜2を介して、モリブデン等の金属材料からなる下層電極3(第2の電極に相当)、窒化アルミニウム等の圧電性材料からなる圧電膜4、モリブデン等金属材料からなる上層電極5(第1の電極および可動電極に相当)が積層形成されている。下層電極3および上層電極5は、圧電材料の種類により、所望の金属材料を選択する。シリコン基板1の一部は、例えば円形に除去されたバックチャンバー6が形成され、残されたシリコン基板1とUSG膜からなるスペーサー7との間に下層電極3、圧電膜4および上層電極5の周縁部が支持固定されている。
【0014】
図4に示す一般的なMEMS素子と比較すると、本発明では、下層電極3と圧電膜4を備えている点が相違している。
【0015】
その他の構造は一般的なMEMS素子と同様で、スペーサー7を介して上層電極5に対向するように固定電極8が配置されている。9は窒化膜で固定電極8と一体となり、固定電極膜を構成している。固定電極膜には貫通孔10が形成されている。固定電極8および上層電極5は、それぞれ、所望の電圧を印加することができ、出力信号を取り出すための引出電極11a、11bが接続している。下層電極3も図示しない引出電極を備えている。
【0016】
本実施例のMEMS素子は、可動電極膜を構成する下層電極3、圧電膜4および上層電極5の端部が、シリコン基板1とスペーサー7との間に固定されているので、可動電極膜が音圧を受けて振動すると、一般的な容量型のMEMS素子同様、固定電極8と可動電極膜の一部を構成する上層電極5との間の距離が変化し、容量変化に基づく出力信号(第1の信号に相当)を得ることができる。
【0017】
同時に本実施例のMEMS素子は、可動電極膜の一部を構成する圧電膜4が変形し、上層電極5と下層電極3との間に電圧差が生じることになり、この起電圧から得られる出力信号(第2の信号に相当)を得ることができる。
【0018】
具体的には
図2に示すように、固定電極と可動電極間の容量変化に基づく容量変化に基づく出力信号S1(第1の信号に相当)と、第1の電極と第2の電極との間に配置した圧電性材料の圧電効果に基づく出力信号S2(第2の信号に相当)が出力する構成される。従来のMEMS素子は、容量変化に基づく出力信号のみであるので、従来と比較して大きな出力信号を得られることがわかる。
【0019】
それぞれの出力信号S1、S2は、例えば信号処理のための集積回路に入力し、増幅、加算、アナログ・デジタル変換および信号処理を行った後、出力信号S3が出力される。なお、増幅、アナログ・デジタル変換及び信号処理は、出力信号を得るために従来のMEMS素子においても行われている。
【実施例2】
【0020】
次に第2の実施例について説明する。
図3は本発明の第2の実施例の説明図で、MEMS素子の中央部分の断面図を示している。
図3に示すように支持基板となるシリコン基板1(基板の相当)上に熱酸化膜からなる絶縁膜2を介して、モリブデン等の金属材料からなる下層電極3(第2の電極に相当)、窒化アルミニウム等の圧電性材料からなる圧電膜4、ポリシリコン膜12(第1の電極および可動電極に相当)が積層形成されている。ここで、上述の第1の実施例と異なり、圧電膜4を一部のみに形成する構造とし、ポリシリコン膜12を可動電極としている。また、圧電膜4とポリシリコン膜12の間に、圧電膜4にオーミック接触を形成する別の金属材料からなる電極膜を介在させる構造としてもよい。
【0021】
シリコン基板1の一部は、例えば円形に除去され、バックチャンバー6が形成され、残されたシリコン基板1ととUSG膜からなるスペーサー7との間に下層電極3、圧電膜4およびポリシリコン膜12の周縁部が支持固定されている。スペーサー7を介してポリシリコン膜12に対向するように固定電極8が配置されている。9は窒化膜で固定電極8と一体となる固定電極膜を構成している。固定電極膜には貫通孔10が形成されている。固定電極8およびポリシリコン膜12は、それぞれ、所望の電圧を印加することができ、出力信号を取り出すための引出電極11a、11bが接続している。下層電極3も図示しない引出電極を備えている。
【0022】
本実施例のMEMS素子は、可動電極膜を構成する下層電極3、圧電膜4およびポリシリコン膜12の端部が、シリコン基板1とスペーサー7との間に固定されているので、可動電極膜が音圧を受けて振動すると、一般的な容量型のMEMS素子同様、固定電極8と可動電極を構成するポリシリコン膜12との間の距離が変化し、容量変化から得られる出力信号(第1の信号に相当)を得ることができる。
【0023】
本実施例のMEMS素子は、周縁部の可動電極のみに圧電膜4を配置する構成とすることで、圧電性材料の膜応力が緩和され、感度向上や可動電極膜のたわみを抑制する効果がある。
【0024】
出力信号を得るための信号処理は、上記第1の実施例同様、
図2に示す処理とすればよい。
【0025】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、圧電素子は、窒化アルミニウムに限定されない。なお、本発明のMEMS素子は、マイクロフォン以外の各種センサ等として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0026】
1:シリコン基板、2絶縁膜、3:下層電極、4:圧電膜、5:上層電極、6:バックチャンバー、7:スペーサー、8:固定電極、9:窒化膜、10:貫通孔、11a、11b:引出電極、12:ポリシリコン膜