【解決手段】本発明のプロモーター機能を有するDNAは、以下に示させるDNAから選ばれる一種であり、ベクターはそのDNAを有するもの、形質転換植物体はそのDNAが導入されたものである。配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号42で表される塩基配列のDNA、それらの塩基配列と90%以上の同一性の塩基配列を有するDNA、それらの塩基配列の1又は複数個の塩基の置換、欠損、挿入又は付加された塩基配列からなるDNA、それらの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒマについては、非特許文献1でドラフトゲノムのDNA解析がなされたが、形質転換で重要なプロモーター領域については、未だ有用な技術提案等がなされていない。
特に、形質転換系の技術は、標的配列のデザインの簡便化や実験手法の容易化等に関する進歩がめざましく、こうした新しい技術にも対応可能な汎用性の高いプロモーター機能を有するDNA(核酸)が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の問題点を解決する手段として、本発明は以下に示される。
1.下記(a)〜(d)のいずれかに記載のDNAであり、プロモーター機能を有することを特徴とするDNA。
(a)配列番号37で表される塩基配列を有するDNA
(b)配列番号37で表される塩基配列と90%以上の同一性の塩基配列を有するDNA
(c)配列番号37で表される塩基配列において1又は複数個の塩基の置換、欠損、挿入又は付加された塩基配列からなるDNA
(d)配列番号37で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
2.上記1.に記載のDNAを有するベクター。
3.上記1.に記載のDNAが導入された形質転換植物体。
4.下記(e)〜(h)のいずれかに記載のDNAであり、プロモーター機能を有することを特徴とするDNA。
(e)配列番号38で表される塩基配列を有するDNA
(f)配列番号38で表される塩基配列と90%以上の同一性の塩基配列を有するDNA
(g)配列番号38で表される塩基配列において1又は複数個の塩基の置換、欠損、挿入又は付加された塩基配列からなるDNA
(h)配列番号38で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
5.上記4.に記載のDNAを有するベクター。
6.上記4.に記載のDNAが導入された形質転換植物体。
7.下記(i)〜(l)のいずれかに記載のDNAであり、プロモーター機能を有することを特徴とするDNA。
(i)配列番号39で表される塩基配列を有するDNA
(j)配列番号39で表される塩基配列と90%以上の同一性の塩基配列を有するDNA
(k)配列番号39で表される塩基配列において1又は複数個の塩基の置換、欠損、挿入又は付加された塩基配列からなるDNA
(l)配列番号39で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
8.上記7.に記載のDNAを有するベクター。
9.上記7.に記載のDNAが導入された形質転換植物体。
10.下記(m)〜(p)のいずれかに記載のDNAであり、プロモーター機能を有することを特徴とするDNA。
(m)配列番号40表される塩基配列を有するDNA
(n)配列番号40で表される塩基配列と90%以上の同一性の塩基配列を有するDNA
(o)配列番号40で表される塩基配列において1又は複数個の塩基の置換、欠損、挿入又は付加された塩基配列からなるDNA
(p)配列番号40で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
11.上記10.に記載のDNAを有するベクター。
12.上記10.に記載のDNAが導入された形質転換植物体。
13.下記(q)〜(t)のいずれかに記載のDNAであり、プロモーター機能を有することを特徴とするDNA。
(q)配列番号41で表される塩基配列を有するDNA
(r)配列番号41で表される塩基配列と90%以上の同一性の塩基配列を有するDNA
(s)配列番号41で表される塩基配列において1又は複数個の塩基の置換、欠損、挿入又は付加された塩基配列からなるDNA
(t)配列番号41で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
14.上記13.に記載のDNAを有するベクター。
15.上記13.に記載のDNAが導入された形質転換植物体。
16.下記(u)〜(y)のいずれかに記載のDNAであり、プロモーター機能を有することを特徴とするDNA。
(u)配列番号42で表される塩基配列を有するDNA
(v)配列番号42で表される塩基配列と90%以上の同一性の塩基配列を有するDNA
(w)配列番号42で表される塩基配列において1又は複数個の塩基の置換、欠損、挿入又は付加された塩基配列からなるDNA
(y)配列番号42で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
17.上記16.に記載のDNAを有するベクター。
18.上記16.に記載のDNAが導入された形質転換植物体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発現性に優れ、汎用性の高いプロモーター機能を発揮するDNA(核酸)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のDNA(プロモーター)は、植物体のヒマ(トウゴマの別名、学名:Ricinus communis L.)から調整したゲノムDNAから得られたDNAであり、U6snRNAをコードすると予測される領域の上流域に存在するプロモーター領域を含むDNAである。
本発明のDNAは、プロモーター領域を含むDNAであり、汎用性及び発現性に優れたプロモーター機能を有する。
尚、本明細書において、本発明のプロモーター機能を有するDNAを「プロモーターDNA」ともいう。
【0010】
本発明のプロモーター機能を有するDNA(DNA断片)は、以下の(1)〜(4)の態様で示されるDNAのうちの一種である。
(1)配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号42で表される塩基配列を有するDNA、
(2)配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号42で表される塩基配列と90%以上の同一性の塩基配列を有するDNA、
(3)配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号42で表される塩基配列において1又は複数個の塩基の置換、欠損、挿入又は付加された塩基配列からなるDNA、
(4)配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号42で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
また、本明細書において、本発明のプロモーター機能を有するDNAを「プロモーターDNA」ともいう。
【0011】
上記態様(2)における、本発明におけるDNAの塩基配列の同一性については、プロモ−ター機能を発揮すればよく、70%以上の同一性を有する塩基配列であればよく、好ましくは80%以上であるが、本発明では90%以上の同一性の塩基配列を有するDNAである。また、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98以上の同一性の塩基配列を有するDNAである。
【0012】
塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Karlin S and Altschul SF (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 2264-2268; (1993) Proc. Natl. Acad Sci. USA, 90: 5873-5877)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えば、score = 100、wordlength = 12とする。
【0013】
上記態様(3)における本発発明のDNAは、本発明のプロモーター機能を有するものであれば、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号42で表される塩基配列において、1又は複数個の塩基の置換、欠損、挿入又は付加された塩基配列からなるDNAでも構わない。この場合、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号42で表される塩基配列において、その3’末端に翻訳効率を上げる塩基配列などを含むものや、プロモーター活性を失うことなく、その5’末端を欠失したものも含まれる。
【0014】
また、上記態様(4)におけるDNAは、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号42で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAである。この「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。そのような条件の例としては、配列番号1又は2の配列と相同性の高いDNAが、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号42で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし、それより低い相同性のDNAが相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズしない条件が挙げられる。本明細書でいう相同性が高いとは、相同性が70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上を意味する。ストリンジェントな条件の具体例としては、60℃−70℃の温度条件下、0.1×SSC、0.1%SDS溶液中で洗浄することなどが挙げられる。
【0015】
本発明におけるDNAはプロモーター機能を有する。即ち、本発明のDNAはプロモーター機能を発揮するプロモーター領域(配列)を有するものである。
プロモーター機能とは、当該DNA配列の下流にある遺伝子の発現を促す機能であり、その測定方法は、プロモーターと考えられるDNA領域の下流にGFP(Green Fluorescent Protein)やYFP(Yellow Fluorescent Protein)等の蛍光タンパク質などのレポーター遺伝子を挿入した組み換え体を作成し、レポーター遺伝子産物の発現等を測定することにより調べることができる。
また、プロモーター領域とは、1又は複数のDNA配列の転写を調節するよう機能し、且つDNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位及びプロモーター機能を制御するように相互作用するDNAの領域(配列)を意味する。
【0016】
プロモーター領域は、一般に転写開始部位の上流にある、転写を開始させるRNAポリメラーゼおよび他のタンパク質の認識および結合に関与するDNAの領域のことである。プロモーター領域には、エンハンサー、リプレッサー等が含まれてもよい。
ここで、塩基配列における「上流」とは、5’側に存在する配列や位置を意味し、「下流」とは、3’側に存在する配列や位置を意味する。
【0017】
プロモーターには、RNAポリメラーゼ IIIプロモーター(Pol IIIプロモーター)や、RNAポリメラーゼIIプロモーター(PolIIプロモーター)等があるが、本発明におけるプロモーターは、Pol IIIプロモーターにおける、U6プロモーターであり、本発明のDNAは、少なくともU6プロモーター領域を有する。
【0018】
プロモーター領域は、導入する塩基配列の発現を推進することが可能であれば、導入する塩基配列に対する核酸内での配置について、特に限定されない。また、導入する塩基配列は、特に限定されず、タンパク質、リボザイム、アンチセンスRNA、siRNA、RNAi分子、マーカー、レポーター、酵素、シグナル伝達分子、あるいは脂肪酸の合成、分解、貯蔵、および/または調節に関与するタンパク質をコードする塩基配列、脂肪酸の合成、分解、貯蔵、および/または調節に関与するタンパク質をコードするRNAに標的されたアンチセンスRNA、ならびに脂肪酸の合成、分解、貯蔵、および/または調節に関与するタンパク質をコードするRNAに標的されたsiRNAおよび/またはRNAi分子が例示される。
【0019】
本発明のDNAは、ヒマ由来のU6snRNAを発現させるプロモーター領域を有するDNAであり、種々の形質転換等に利用する上で、導入する塩基配列の発現を強く推進することが可能であり、汎用性が高く、発現性に優れるプロモーターDNAとして好適に用いることができる。
【0020】
本発明のベクターは、本発明のDNAを有するベクターである。上記ベクターとしては、本発明のDNAを安定に保持するものであり、そのDNAが有するプロモーター機能を好適に発現させることができるものであれば、その構造や種類等に特に制限はない。このようなベクターとして、例えばプラスミド、ファージ、コスミド、YAC等が挙げられるが、汎用性の観点からプラスミドが好適である。
ベクターは、周知の方法により、本発明のDNAがベクターへ担持(挿入)されることで構築される。ベクターには、本発明のDNAの他に、エンハンサー領域(配列)やターミネーター領域(配列)、薬剤耐性遺伝子や選択マーカー遺伝子等といった周知の要素が組み込まれていてもよい。
【0021】
ベクターは、通常、好適に担持(挿入)された本発明のDNAを、宿主細胞へ導入する場合に用いられる。
例えば、宿主に大腸菌を用いるのであれば、薬剤耐性遺伝子や選択マーカー遺伝子が組み込まれた市販のベクター(プラスミド)や、クローニング用ベクターとして市販されている種々のベクター(プラスミド)を利用することができる。
【0022】
上記宿主細胞としては特に制限はなく、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられる。例えば、細菌細胞(例:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌)、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞が挙げられるが、作業性及び汎用性等から、大腸菌が好適である。
宿主細胞へのベクター導入は、塩化カルシウム水溶液等を使用して、カルシウム存在下で大腸菌(コンピテントセル)に取り込ませる方法や、その他、電気パルス穿孔法、リポフェクション法、マイクロインジェクション方法等の公知の方法で行うことができる。
【0023】
また、植物体内で本発明のDNAを発現させる方法としては、本発明のベクターを、例えば、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、アグロバクテリウム法、リポソーム法、カチオニックリポソーム法などにより生体内に導入する方法などが挙げられる。ベクターへの本発明のDNAの挿入などの一般的な遺伝子操作は、常法に従って行うことが可能である。植物体内への投与は、ex vivo法であっても、in vivo法であってもよい。
【0024】
本発明の形質転換植物体は、本発明のDNAが導入されたものである。形質転換植物体の作製は、本発明のベクターやCRISPR−Cas9システム等の手法を用い、本発明のDNAを植物細胞に導入して、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させることで行われる。この形質転換に要する期間は、従来のような交雑による遺伝子移入に比較して極めて短期間である。また、他の形質の変化を伴わない点で有利である。
【0025】
また、形質転換植物体は、本発明のDNAのプロモーター機能を利用して、導入した塩基配列の発現により、植物体(主にヒマ)を形質転換したものである。DNAに作動可能に連結されている塩基配列としては、特に制限されず、目的とする形質転換に適したものが適宜選択される。
形質転換の手法の一つとして、例えばCRISPR−Cas9システムが挙げられる。CRISPR−Cas9システムは、細菌のCRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)システムが侵入したウィルスのDNAをバラバラにしてその中で特定の塩基配列をもつ断片を細菌自身のゲノムに取り込み、記憶して、ウィルスの再侵入時には、記憶したDNAから転写されたRNAがウィルスのDNAを照合して見つけ出し、RNAにガイドされた酵素(Casタンパク質)が、ウィルスのDNAを切断する仕組みを利用するものである。このようなCRISPR−Cas9システムを用いた形質転換は、標的配列のデザインの簡便さや実験手法の容易さから、様々な生物の遺伝子を改変することを可能にしており、近年有用視されている。
上記植物細胞としては、主にヒマ(トウダイグサ科トウゴマ属)が用いられるが、本発明のDNAを発現可能なものであれば、特に制限はなく、何れが用いられてもよい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明をさらに具体化した実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
1.ヒマの生育及びゲノムDNAの調整
(1)ヒマの種子から種皮を残して外皮(果肉)を除去した後、種子滅菌液(0.5%次亜塩素酸ナトリウムと0.2%オクトキシノール(Triton(登録商標)−X100)の混合液)に浸し、5分間静置して、種子を滅菌した。
(2)滅菌した種子を純水で3回洗浄した後、純水で湿らせたペーパータオルの上に置き、25℃の暗所で4日間培養して、種子を発芽させた。
(3)発芽後は、バーミキュライト(土壌改良材)、パーライト(土壌改良材)及び培養土(商品名:JAニッピ園芸培土1号)がバーミキュライト:パーライト:培養土=45:45:10の比率になるように満たしたビニールポット(直径6cm)に移植し、14日間生育した。
(4)生育後のヒマから本葉を5mm×5mm採取し、DNA抽出キット(「DNeasy Plant Mini Kit」(商品名)、Qiagen社製)を使用して、ヒマのゲノムDNAを調整した。
【0028】
2.DNA断片の増幅及び単離
(1)U6snRNAの塩基配列は他の植物とも共通する配列であることから、ヒマのモデル生物としてシロイヌナズナを選択し、シロイヌナズナのU6snRNAの塩基配列を元に、非特許文献1に開示された解析済みのヒマのドラフトゲノムDNA(以下、「ドラフトDNA」と略)の塩基配列に対し、相同性検索を行った。その結果、ヒマのドラフトDNA上に、6つのU6snRNA遺伝子(RcU6−1、RcU6−2、RcU6−3、RcU6−4、RcU6−5、RcU6−6)を同定した。
(2)上記1.(4)で調整したゲノムDNAについて、上記2.(1)で同定した6つのU6snRNA遺伝子のそれぞれの上流の領域を、表1に示した特異的プライマーセット(3’末端側のプライマーの塩基配列を配列番号1〜6とし、5’末端側のプライマーの塩基配列を配列番号7〜8とする。)と、DNAポリメラーゼ(「Prime STAR GXL」(商品名)、タカラバイオ社製)とを使用したPCR法により増幅した。そして、配列番号13〜18で示される、上記のU6snRNA遺伝子に対応する6種のDNA断片を単離した。
ここで、上記特異的プライマーセットについては、上記ドラフトDNA上でU6snRNA遺伝子の直近上流の塩基配列を、3’末端側のプライマーと同定し、次いで、3’末端側のプライマーから1600bp〜2300bp上流の塩基配列を、5’末端側のプライマーと同定した。PCR法で用いたプライマー及び得られたDNA断片の関係を表1に示す。
上記PCR法による増幅は、DNA二本鎖解離を95℃で1分、アニーリングを98℃で10秒と60℃で15秒と68℃で3分とを1サイクルとして30サイクル、DNA合成を68℃で5分、を条件として行った。
(3)単離したDNA断片の塩基配列を常法に従って解析した。
【0029】
【表1】
【0030】
3.一過的発現実験(プロモーター機能の検証)
(1)上記2.(2)で単離した配列番号13〜18のDNA断片を、それぞれλファージの部位特異的組換えシステムを応用したGatewayテクノロジー手法(Thermo Fisher Scientific社開発)に従って、「pDONR P4-P1Rプラスミド(Thermo Fisher Scientific社製)」に導入した。
(2)細胞内小器官であるペルオシキソームの内部に輸送されるタンパク質が有するペルオキシソーム輸送配列 (PTS; Peroxisome targeting signal )のうちタンパク質のC末端に存在するPTS1を蛍光タンパク質(Venus)に融合させたVenus−PTS1を、上記(1)と同様に、λファージの部位特異的組換えシステムを応用したGatewayテクノロジー手法に従って、「pDONR 221プラスミド(Thermo Fisher Scientific社製)」に導入した。
(3)配列番号13〜18のDNA断片を導入した「pDONR P4-P1Rプラスミド」と、上記Venus−PTS1を導入した「pDONR 221プラスミド」と、薬剤(アミノグリコシド系抗生物質)耐性遺伝子を備えた「R4pGWB401プラスミド」(参考文献:Biosci. Biotechnol. Biochem. (2008) 72(2) 624-629)とを、「Gateway LRクロナーゼII酵素ミックス(商品名)、Thermo Fisher Scientific社製」とともに、25℃で15時間反応させて、プラスミドの組換え反応(LR反応)を行った。そして、R4pGWB401プラスミド由来の、上記のDNA断片の下流域にVenus−PTS1が融合された融合遺伝子を含むプラスミドを作成した(
図1参照、なお図中で「promoter」が導入したDNA断片であり、「cDNA」がVenus−PTS1である)。
(4)組換え反応後のプラスミドを、サブクローニング用の大腸菌DH5αコンピテント細胞(「Competent Quick DH5アルファ」(商品名)、東洋紡社製)に取り込ませた後、50μg/mlの濃度でアミノグリコシド系抗生物質「スペクチノマイシン」(SIGMA社製)を含むLB培地に塗布して、組換え反応が正しく行われたプラスミドを持つ大腸菌株を選抜した。その後、選抜した大腸菌株を通常の液体培地を使用して、液体培養した。
(5)次いで、上記の液体培養を行った大腸菌株の菌体から、プラスミド精製キット(「Wizard Plus SV Minipreps DNA Purification System」(商品名)、プロメガ社製)を使用し、プラスミドを抽出した。この抽出したプラスミドは、常法に従ってシークエンシングにより組換え反応後のプラスミドと塩基配列の同一性を確認した。
(6)塩基配列を確認したプラスミドを濃縮して1μg/μlの濃度に調整した後、その濃縮したプラスミドと金粒子とを混合し、パーティクルガン法(「Helios Gene Gunシステム」、バイオラッド社製)を用いて、プラスミド(融合遺伝子)を上記1.で生育したヒマの本葉に導入した。
(7)その後、プラスミド(融合遺伝子)が導入された後のヒマの本葉は、インキュベーターで22℃、16時間静置した。次いで、プラスミド(融合遺伝子)が導入されたヒマの本葉について、共焦点レーザー顕微鏡(LSM510META、ツァイス社製、アルゴン2レーザーの514nmで励起、吸収フィルターBP535−590)を使用し、上記の蛍光タンパク質の発現による細胞内の蛍光を観察した。
観察の結果、配列番号13〜18の全てのDNA断片(配列番号13〜18)で、蛍光タンパク質の発現を確認することができ、配列番号13〜18のDNA断片がプロモーター機能を有することがわかった。
【0031】
4−1.プロモーター領域の絞り込み(1)
(1)500bp〜620bpのDNA
プロモーター領域を絞り込むため、上記2.(2)プロモーター領域の増幅における特異的プライマーセットにおいて、3’末端側のプライマーは、そのまま使用すると共に、3’末端側のプライマーから500bp〜620bp上流の配列を5’末端側のプライマーと同定し、上記2.(2)と同様にして、上記のU6snRNA遺伝子に対応する6種のDNA断片を単離した。これのDNA断片の塩基配列を配列番号25〜30に示す。
また、PCR法で用いたプライマー及び得られたDNA断片の関係を表2に示す。
そして、単離したDNA断片の塩基配列を常法に従って解析した。
【0032】
【表2】
【0033】
(2)上記のとおり、単離した配列番号25〜30の各DNA断片について、上記3.一過的発現実験(プロモーター機能の検証)を同様に行った。その結果、配列番号25〜30の各DNA断片は、プロモーター機能を有することがわかった。
【0034】
4−2.プロモーター領域の絞り込み(2)
(1)280bp〜340bpのDNA
更に、プロモーター領域を絞り込むため、上記2.(2)プロモーター領域の増幅における特異的プライマーセットにおいて、3’末端側のプライマーは、そのまま使用すると共に、3’末端側のプライマーから280bp〜340bp上流の配列を5’末端側のプライマーと同定し、上記2.(2)と同様にして、上記のU6snRNA遺伝子に対応する6種のDNA断片を単離した。これのDNA断片の塩基配列を配列番号37〜42に示す。
また、PCR法で用いたプライマー及び得られたDNA断片の関係を表3に示す。
そして、単離したDNA断片の塩基配列を常法に従って解析した。
【0035】
上記のとおり、単離した配列番号37〜42の各DNA断片について、上記3.3.一過的発現実験(プロモーター機能の検証)を同様に行った。その結果、配列番号37〜42の全てのDNA断片が、プロモーター機能を有していることが分かった。
このときの共焦点レーザー顕微鏡による蛍光写真を
図2に示す。なお、
図2中で「Fluo」は蛍光画像、「DIC」は微分干渉画像、「Merge」は蛍光画像と微分干渉画像を重ね合わせた画像である。
以上の結果から、単離した配列番号37〜42の各DNA断片は、プロモーター機能を有することが示された。
【0036】
【表3】