(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-42872(P2019-42872A)
(43)【公開日】2019年3月22日
(54)【発明の名称】MEMS素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B81B 3/00 20060101AFI20190222BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20190222BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20190222BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20190222BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20190222BHJP
【FI】
B81B3/00
B81C1/00
H04R19/04
H04R31/00 C
H01L29/84 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-169039(P2017-169039)
(22)【出願日】2017年9月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】荒木 新一
【テーマコード(参考)】
3C081
4M112
5D021
【Fターム(参考)】
3C081AA04
3C081AA18
3C081BA22
3C081BA45
3C081BA46
3C081BA48
3C081BA53
3C081CA03
3C081CA13
3C081CA28
3C081CA29
3C081DA03
3C081DA22
3C081DA26
3C081DA27
3C081DA29
3C081DA30
3C081EA01
3C081EA21
4M112AA06
4M112BA07
4M112CA01
4M112CA03
4M112CA04
4M112CA11
4M112CA13
4M112CA14
4M112DA04
4M112DA05
4M112DA06
4M112DA11
4M112DA15
4M112EA03
4M112EA04
4M112EA06
4M112EA07
4M112EA18
4M112FA05
5D021CC10
5D021CC20
(57)【要約】
【課題】組立工程やマウント工程で急熱、急冷を受けた場合でも歪むことなく、構造的に強く、安定した特性を得ることができるようにする。
【解決手段】例えば、ハンドル基板11の上面側に外段差11d(Da)が形成され、この外段差11dに嵌合する形で、可動電極13と固定電極15がエアーギャップ7を介して支持層14により支持された構造体が形成され、段差部Daでハンドル基板11と構造体が嵌まり込むメサ型とすることにより、全体の構造的な強度を高めることができる。更に、構造強化のために、固定電極15の外側の保護膜16と同じ材料である窒化膜19をハンドル基板11の裏面に設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動電極と固定電極を支持層により所定のエアーギャップを持って配置した構造体と、中央部にキャビティを有するハンドル基板と、を備え、上記ハンドル基板上に上記構造体を配置するMEMS素子において、
上記ハンドル基板の上面側に形成された外段差又は凹部と、上記構造体の下側に形成された上記ハンドル基板側の外段差又は凹部に嵌合する段差又は凸部とにより、上記ハンドル基板と構造体とを嵌合配置することを特徴とするMEMS素子。
【請求項2】
可動電極と固定電極を支持層により所定のエアーギャップを持って配置した構造体と、中央部にキャビティを有するハンドル基板と、を備え、上記ハンドル基板上に上記構造体を配置するMEMS素子において、
上記ハンドル基板の上面側に形成された内段差と、上記構造体の下側に形成された上記ハンドル基板側の内段差に嵌合する段差とにより、上記ハンドル基板と構造体とを嵌合配置することを特徴とするMEMS素子。
【請求項3】
上記構造体の表面側に位置する上記可動電極又は固定電極の一方の上に形成された保護膜と、
上記ハンドル基板の下面に形成された上記構造体とハンドル基板の組立て体の構造を強化する膜とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のMEMS素子。
【請求項4】
ハンドル基板上に、外段差又は凹部を形成する工程と、
上記ハンドル基板上に、酸化膜を介して上記ハンドル基板側の外段差又は凹部に嵌合する下部支持層を形成する工程と、
上記ハンドル基板及び下部支持層の上に可動電極又は固定電極の一方の電極を形成する工程と、
上側支持層となる犠牲層を介して上記一方の電極に対し所定の間隔を持って上記可動電極又は固定電極の他方の電極を形成する工程と、
上記ハンドル基板の中央部にキャビティを開けると共に、上記犠牲層の一部を除去し、上記可動電極−固定電極間に所定のエアーギャップを形成する工程と、を含んでなるMEMS素子の製造方法。
【請求項5】
ハンドル基板上に、内段差を形成する工程と、
上記ハンドル基板上に、酸化膜を介して可動電極又は固定電極の一方の電極を形成する工程と、
上記ハンドル基板側の内段差に嵌合し、支持層となる犠牲層を形成する工程と、
上記犠牲層を介して上記一方の電極に対し所定の間隔を持って上記可動電極又は固定電極の他方の電極を形成する工程と、
上記ハンドル基板の中央部にキャビティを開けると共に、上記犠牲層の一部を除去し、上記可動電極と固定電極との間に所定のエアーギャップを形成する工程と、を含んでなるMEMS素子の製造方法。
【請求項6】
表面側に位置する上記可動電極又は固定電極の一方の上に保護膜を形成すると共に、
上記ハンドル基板の下面に、素子全体の構造を強化する膜を形成したことを特徴とする請求項4又は5記載のMEMS素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMS素子及びその製造方法、特にトランスデューサ等の各種センサとして用いられるMEMS素子の構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランスデューサ、マイクロフォン、センサ、アクチュエータ等に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子が用いられる。例えば、電子機器に使われるトランスデューサ(マイクロフォン装置等)は、携帯電話やパーソナルコンピュータ、また車載器等にも搭載されている。
【0003】
図9に、マイクロフォン装置(コンデンサマイクロフォン)として用いられる従来のトランスデューサの構成が示されており、
図9において、符号の1はハンドル基板、2は酸化膜、3は可動電極、4は支持層、5は複数の音孔を有する固定電極、6は保護膜、7はエアーギャップ、8はキャビティである。このようなトランスデューサによれば、可動電極3と固定電極5が平行平板型コンデンサを形成し、音圧によって可動電極3が振動して生じる静電容量の変位を検出することにより、音声を電気信号に変換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−233059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、トランスデューサは、
図9の構成部分の形成工程を完了した後、回路基板上に他の部品と共に組み付ける組立工程が実施されるが、この組立では摂氏100℃を超える工程があり、更にその後もプロダクトラインに送られてソルダー工程、リフロー工程等を経て、パッケージングされる。
このため、トランスデューサは、急熱や急冷等を受け、パッケージ基材との熱膨張や熱収縮の物性の違いにより、トランスデューサには引っ張られたり押されたり等の外力が加わり、上記可動電極3と固定電極5との間の距離(エアーギャップ7の間隔)が一定に保てない等の問題が生じ、安定した特性が得られない場合があった。
【0006】
図10には、MEMS素子へかかる外力の一例が示されており、
図10(a)のように、トランスデューサは、回路基板(PCB)50に接着剤51を介して接着した場合、例えば急熱を受けると、
図10(b)のようにハンドル基板1への内側への外力により可動電極3と固定電極5の構造体が内側に歪み、また急冷を受けると、
図10(c)のようにハンドル基板1への外側への外力により可動電極3と固定電極5の構造体が外側に歪み、特に可動電極3と固定電極5との距離(平行配置)に影響を与えることになる。
【0007】
従来のトランスデューサの場合、音圧を受けて振動する可動電極3とこれに対向する固定電極5との距離はできるだけ一定になるようにウェーハ工程で工夫がなされているが、組立工程やマウント工程での温度変化により、平行配置される可動電極3と固定電極5の構造体に歪みが生じることになるため、外力に対して強い、熱耐性のあるトランスデューサが望まれている。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、組立工程やマウント工程で急熱、急冷を受けた場合でも歪むことなく、構造的に強く、安定した特性を得ることができるMEMS素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、可動電極と固定電極を支持層により所定のエアーギャップを持って配置した構造体と、中央部にキャビティを有するハンドル基板と、を備え、上記ハンドル基板上に上記構造体を配置するMEMS素子において、上記ハンドル基板の上面側に形成された外段差又は凹部と、上記構造体の下側に形成された上記ハンドル基板側の外段差又は凹部に嵌合する段差又は凸部とにより、上記ハンドル基板と構造体とを嵌合配置することを特徴とするMEMS素子。
請求項2の発明は、可動電極と固定電極を支持層により所定のエアーギャップを持って配置した構造体と、中央部にキャビティを有するハンドル基板と、を備え、上記ハンドル基板上に上記構造体を配置するMEMS素子において、上記ハンドル基板の上面側に形成された内段差と、上記構造体の下側に形成された上記ハンドル基板側の内段差に嵌合する段差とにより、上記ハンドル基板と構造体とを嵌合配置することを特徴とする。
請求項3の発明は、上記構造体の表面側に位置する上記可動電極又は固定電極の一方の上に形成された保護膜と、上記ハンドル基板の下面に形成された上記構造体とハンドル基板の組立て体の構造を強化する膜とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明に係るMEMS素子の製造方法は、ハンドル基板上に、外段差又は凹部を形成する工程と、上記ハンドル基板上に、酸化膜を介して上記ハンドル基板側の外段差又は凹部に嵌合する下部支持層を形成する工程と、上記ハンドル基板及び下部支持層の上に可動電極又は固定電極の一方の電極を形成する工程と、上側支持層となる犠牲層を介して上記一方の電極に対し所定の間隔を持って上記可動電極又は固定電極の他方の電極を形成する工程と、上記ハンドル基板の中央部にキャビティを開けると共に、上記犠牲層の一部を除去し、上記可動電極−固定電極間に所定のエアーギャップを形成する工程と、を含んでなることを特徴とする。
請求項5の発明に係るMEMS素子の製造方法は、ハンドル基板上に、内段差を形成する工程と、上記ハンドル基板上に、酸化膜を介して可動電極又は固定電極の一方の電極を形成する工程と、上記ハンドル基板側の内段差に嵌合し、支持層となる犠牲層を形成する工程と、上記犠牲層を介して上記一方の電極に対し所定の間隔を持って上記可動電極又は固定電極の他方の電極を形成する工程と、上記ハンドル基板の中央部にキャビティを開けると共に、上記犠牲層の一部を除去し、上記可動電極と固定電極との間に所定のエアーギャップを形成する工程と、を含んでなることを特徴とする。
請求項6の発明に係る製造方法は、表面側に位置する上記可動電極又は固定電極の一方の上に保護膜を形成すると共に、上記ハンドル基板の下面に、素子全体の構造を強化する膜を形成したことを特徴とする。
【0011】
以上の構成によれば、第1の構造では、ハンドル基板の上面側に外段差(外側に下がる段差)が形成され、この外段差に嵌合する形で、可動電極と固定電極がエアーギャップを介して支持層により支持された構造体が形成され、ハンドル基板の外段差に構造体の段差が嵌まり込むメサ型とすることにより、全体の構造的な強度を高めることができる。なお、上記ハンドル基板側の外段差を凹部とし、この凹部に構造体側の凸部を嵌合させる構成としてもよい。
【0012】
第2の構造では、ハンドル基板の上面側に内段差(内側に下がる段差)が形成され、この内段差に嵌合する形で、可動電極と固定電極がエアーギャップを介して支持層により支持された構造体が形成され、ハンドル基板の内段差に構造体の段差が嵌まり込んで形成されたプレーナ型とすることにより、全体の構造的な強度を高めることができる。なお、固定電極と可動電極の位置関係は、固定電極が表面側に配置される場合、可動電極が表面側に配置される場合のいずれでもよい。
【0013】
また、上記の第1及び第2の構造において、固定電極(又は可動電極)の上に保護膜を形成する場合に、MEMS素子の反対側となるハンドル基板の下面に、保護膜と同等の材料からなる膜で、ハンドル基板の材料よりも熱膨張係数の小さな膜、例えば窒化膜を形成することにより、全体の構造を更に強化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハンドル基板と構造体を段差等により嵌合して形成するので、またハンドル基板の下部に強化膜を設けるので、組立工程やマウント工程で急熱、急冷を受けた場合でも歪むことなく、構造的に強く、安定した特性のMEMS素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る第1実施例のMEMS素子の構成を示す断面図である。
【
図2】第1実施例の構成を示し、図(a)は断面図、図(b)は上面図である。
【
図3】第1実施例のMEMS素子の製造方法で、その前半の工程を示す断面図である。
【
図4】第1実施例のMEMS素子の製造方法で、その後半の工程を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る第2実施例のMEMS素子の構成を示す断面図である。
【
図6】第2実施例の構成を示し、図(a)は断面図、図(b)は上面図である。
【
図7】第2実施例のMEMS素子の製造方法で、その前半の工程を示す断面図である。
【
図8】第2実施例のMEMS素子の製造方法で、その後半の工程を示す断面図である。
【
図9】従来のMEMS素子の構成を示す断面図である。
【
図10】従来のMEMS素子製作後の組立工程等での外力の影響を示し、図(a)は常温時、図(b)は急熱時、図(c)は急冷時の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1,
図2に、第1実施例のMEMS素子の1例としてのコンデンサマイクロフォン装置の構成が示されており、
図1の符号11はシリコンからなるハンドル基板、12は酸化膜、13は可動電極、14は支持層、15は複数の音孔(アコースティックホール)hを有する固定電極、16は窒化膜からなる保護膜、7はエアーギャップ、8はキャビティ、19は窒化膜[強化膜:ハンドル基板よりも熱膨張係数が小さい膜]、31は可動電極用取出し電極、32は固定電極用取出し電極である。
上記ハンドル基板11の上に、上側の基準面から外側へ下がる外段差が形成され、固定電極13と支持層14(構造体)には、ハンドル基板側の外段差に嵌合する段差が形成されることにより、段差部Daでハンドル基板11と固定電極13及び支持層14の部分が嵌合配置される。
【0017】
次に、
図3及び
図4に基づき、第1実施例のMEMS素子の製造について説明する。
図3(a)では、ハンドル基板11を投入してプロセスを開始し、最初にフォトリソグラフィーとエッチングにより、ハンドル基板11の周辺を約5ミクロン程、除去することにより、外段差11dを形成する。この外段差11dは、後のキャビティーエッチングでキャビティ8が重ならないように設計される。
図3(b)では、ハンドル基板11の上に、熱酸化膜12を1ミクロン程、成長させておき、その後、CVD(化学蒸着)法にて6〜7ミクロン程、支持層14の一部を形成するためのSiO
2膜(14a)を堆積する。
図3(c)では、CMP(化学機械研磨)法により、SiO
2膜(14a)の上側をハンドル基板11の酸化膜12が露出するまで削り、表面が平坦化された下部支持層14aを形成する。
図3(d)では、ハンドル基板1及び下部支持層14aの上に、可動電極13となる不純物添加ポリシリコンを形成する。この可動電極13の形成としては、イオン注入法、CVD法からの拡散法等がある。その後、CVD法にて上部支持層となる犠牲層14bを3ミクロン程、堆積させておく。
図3(e)では、犠牲層14bの上に、固定電極15となる不純物添加ポリシリコンを堆積し、フォトリソグラフィーとエッチングにより不要部分を除去して音孔hとなる孔を有する固定電極15を形成する。
【0018】
次に、
図4(f)では、表面保護のためのレジストやSiO
2膜をCVD法で付けておき、CMPにかけてハンドル基板11の裏面を所望の厚さまで削り、その後、表面保護のためのレジストやSiO
2膜をエッチングする。
図4(g)では、固定電極15及び犠牲層14bの上に、保護膜16としての窒化膜を堆積させると共に、ハンドル基板11の裏面にも、強化膜として窒化膜19を堆積させる。この窒化膜19は、シリコンからなるハンドル基板11よりも熱膨張係数が小さく、急熱、急冷等による全体の構造体の変形を抑制する効果を奏する。
図4(h)では、固定電極15及び保護膜16に音孔hを開ける。
図4(i)では、フォトリソグラフィーとエッチングにより、可動電極13に接続される可動電極用取出し電極31、固定電極15に接続される固定電極用取出し電極32を形成し、必要な配線を施す。
図4(j)では、ハンドル基板11の中央にフォトリソグラフィーとエッチングによりキャビティ8を開口し、その後、フッ酸によって犠牲層14bの一部を除去することにより上部支持層(14)を形成し、可動電極13と固定電極15との間にエアーギャップ7を形成する。
【0019】
このようにして、第1実施例では、ハンドル基板11に形成した外段差11dに対して、支持層14により形成された段差が段差部Daで嵌合・接着することにより、可動電極13、支持層14及び固定電極15からなる構造体がハンドル基板11の上に成形され、また素子表面側の固定電極15の窒化膜と同じ窒化膜をハンドル基板11の裏面に設ける(ハンドル基板の材料よりも熱膨張係数が小さい材料の膜を設ける)ことにより、急熱(100℃以上)、急冷等に対する熱耐性があり、引っ張られたり押されたりする外力に対抗する構造的に強いMEMS素子を得ることができる。
【0020】
第1実施例では、ハンドル基板11の外段差11dを用いて構造体を嵌合配置したが、
図1の点線で示されるように、ハンドル基板11に凹部11eを形成し、この凹部11eに構造体に形成された凸部(可動電極13と支持層14からなる部分)を嵌合して、強固なMEMS素子を得ることも可能である。
【0021】
図5,
図6に、第2実施例のコンデンサマイクロフォン装置の構成が示されており、符号21はシリコンからなるハンドル基板、22は酸化膜、23は可動電極、24は支持層、25は複数の音孔(アコースティックホール)hを有する固定電極、26は窒化膜からなる保護膜、7はエアーギャップ、8はキャビティ、29は窒化膜(強化膜)、41は可動電極用取出し電極、42は固定電極用取出し電極である。
上記ハンドル基板21の上に、基準面(上面)から内側へ下がる内段差21dが形成され、固定電極23と支持層24(構造体)には、ハンドル基板側の内段差21dに嵌合する段差が形成されることにより、段差部Dbでハンドル基板21と固定電極23及び支持層24の部分が嵌合配置される。
【0022】
次に、
図7及び
図8に基づき、第2実施例のMEMS素子の製造について説明する。
図7(a)では、ハンドル基板21を投入してプロセスを開始し、ハンドル基板21の中央部をフォトリソグラフィーとエッチングにより除去し、深さ4ミクロン程度の内段差21dを形成する。この内段差21dは、後のキャビティーエッチングでキャビティ8が重ならないように設計する。また、その後の工程で、可動電極23の引出し用に配線を通す部分21eに約1ミクロンのエッチングも併せて実施し、これにより出来上がりの段差をなくすようにする。
図7(b)では、ハンドル基板21の上に、熱酸化膜22を1ミクロン程、成長させ、その上に、可動電極23となる不純物添加ポリシリコンを形成する。ここでは、内段差21dの部分をエッチングするためにスプレイレジストコータを用いて不純物添加ポリシリコンのパターニングを実施する。
図7(c)では、4ミクロン程度の内段差21dを埋めるために、気相成長式のCVD膜を使い、支持層となる犠牲層24aを形成し、
図7(d)では、CMP法にて、可動電極23の引出し電極部分が露出されないように、上面の平坦化を実施する。
図7(e)では、固定電極25となる不純物添加ポリシリコンを堆積し、フォトリソグラフィーとエッチングにより不要部分を除去して、音孔hとなる孔を有する固定電極25を形成する。
【0023】
次に、
図8(f)では、CMP法にてハンドル基板21の裏面を所望の厚さになるように削る。
図8(g)では、固定電極25、支持層24及び酸化膜22の上に、保護膜26としての窒化膜を堆積させると共に、ハンドル基板21の裏面にも、強化膜としての窒化膜29を堆積させる。更に、音孔hと、可動電極23の取出し電極部、固定電極25の取出し電極部の保護膜26をフォトリソグラフィーとエッチングにより除去する。
図8(h)では、配線としてアルミニウムをスパッタし、電極部にアルミニウムを残すようにフォトリソグラフィーとエッチングを実施し、可動電極23の取出し電極41と固定電極25の取出し電極42を形成する。
図8(i)では、ハンドル基板21の裏側に、フォトリソグラフィーとエッチングによりキャビティ8を形成し、
図8(j)では、フッ酸にて犠牲層24aの一部を除去することにより、支持層24を形成し、可動電極23と固定電極25との間にエアーギャップ7を形成する。
【0024】
このようにして、第2実施例では、ハンドル基板21に形成した内段差21dに対して、可動電極23及び支持層24により形成された構造体の段差が段差部Daで嵌合・接着することにより、可動電極23、支持層24及び固定電極25からなる構造体がハンドル基板21の上に成形され、また素子表面側の固定電極25の保護膜26と同じ窒化膜(ハンドル基板21の材料よりも熱膨張係数が小さい材料の膜)29をハンドル基板21の裏面に設けることにより、熱耐性があり、構造的に強いMEMS素子を得ることができる。
【0025】
上記第1及び第2の実施例では、
図4(f)、
図8(f)に示されるように、ハンドル基板11,21の裏面を削って、所望の厚さにしたが、ハンドル基板の最終的な厚さに合わせた薄いハンドル基板11,21を用いてウェーハ工程を実施することにより、ハンドル基板11,21の裏面を削る工程をなくすこともできる。
また、上記実施例では、可動電極13,23を内側、固定電極15,25を外側に配置したが、反対に固定電極15,25を内側、可動電極13,23を外側に配置する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1,11,21…ハンドル基板、 2,12,22…酸化膜、
3,13,23…可動電極、
4,14,24…支持層、 5,15,25…固定電極、
6,16,26…保護膜、 7…エアーギャップ、
8…キャビティ、 11d…外段差、
11e…凹部、 21d…内段差、
19,29…窒化膜、 h…音孔、
Da,Db…段差部。