【解決手段】蓄電装置100は、第1密閉室110、第2密閉室120、蓄電要素130、およびガス流路140を少なくとも備える。第1密閉室110は、蓄電要素130を格納している。蓄電要素130は、正極活物質、負極活物質およびアルカリ電解液を少なくとも含む。負極活物質は、水素吸蔵合金および水素ガスを含む。第1密閉室110および第2密閉室120は、それぞれ水素ガスの圧力に耐えるように構成されている。ガス流路140は、第1密閉室110および第2密閉室120を接続している。さらに蓄電装置100は、第1密閉室110および第2密閉室120の間の水素ガスの移動を制御できるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、新規な蓄電装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本開示の作用メカニズムは推定を含んでいる。作用メカニズムの正否により特許請求の範囲が限定されるべきではない。
【0006】
本開示の蓄電装置は、第1密閉室、第2密閉室、蓄電要素、およびガス流路を少なくとも備える。第1密閉室は、蓄電要素を格納している。蓄電要素は、正極活物質、負極活物質およびアルカリ電解液を少なくとも含む。負極活物質は、水素吸蔵合金および水素ガスを含む。第1密閉室および第2密閉室は、それぞれ水素ガスの圧力に耐えるように構成されている。ガス流路は、第1密閉室および第2密閉室を接続している。
さらに蓄電装置は、第1密閉室および第2密閉室の間の水素ガスの移動を制御できるように構成されている。
【0007】
本開示の蓄電装置は蓄電要素を備える。蓄電要素は正極活物質、負極活物質およびアルカリ電解液を少なくとも含む。すなわち蓄電要素はアルカリ二次電池を含むといえる。
【0008】
ニッケル水素電池はアルカリ二次電池の代表例である。ニッケル水素電池は、水素吸蔵合金を負極活物質として含む。ニッケル水素電池は、水素吸蔵合金がプロチウム(H)を吸蔵することにより蓄電する。したがってニッケル水素電池の蓄電容量は、水素吸蔵合金のプロチウム吸蔵量によって決まる。
【0009】
水素吸蔵合金のプロチウム吸蔵量(限界量)を超えて、ニッケル水素電池が充電されると(すなわちニッケル水素電池が過充電されると)、アルカリ電解液中の水が電気分解されることになる。水の電気分解より水素ガスが発生する。水素ガスの発生により電池内の圧力が上昇し、液漏れ等が起こり得る。そのため通常は水素ガスが発生しないようにニッケル水素電池が使用されている。
【0010】
本開示の蓄電装置では、蓄電要素を格納する第1密閉室が水素ガスの圧力に耐えるように構成されている。そのため水素ガスが発生するように、充電を行うことが可能である。すなわち本開示の蓄電装置では、電気エネルギーの一部が水素ガスに変換されて貯蔵され得る。これにより本開示の蓄電装置は、水素吸蔵合金のプロチウム吸蔵量を超える蓄電容量を有し得る。
【0011】
本開示の蓄電装置では、放電時、水素ガス(H
2)が水酸化物イオン(OH
-)と反応し、水(H
2O)が生成されることにより、電気エネルギーが取り出されると考えられる。第1密閉室内には、水素ガスの他にも、アルカリ電解液および正極が存在する。そのため蓄電装置が充電状態で放置されると、水素ガスがアルカリ電解液に溶解し、正極活物質を還元する可能性がある。すなわち自然放電(「自己放電」とも称される)により、貯蔵された電気エネルギーが失われる可能性がある。
【0012】
そこで本開示の蓄電装置は、ガス流路および第2密閉室をさらに備える。本開示の蓄電装置は、第1密閉室および第2密閉室の間の水素ガスの移動を制御できるように構成されている。
【0013】
第2密閉室は、第1密閉室と同様に、水素ガスの圧力に耐えるように構成されている。本開示の蓄電装置は、ガス流路により、充電時に発生した水素ガスを第2密閉室に移動させることができる。蓄電装置が充電状態で放置される際は、たとえばガス流路が遮断される。これにより第2密閉室から第1密閉室への水素ガスの移動が遮断される。アルカリ電解液および正極が存在しない第2密閉室において、水素ガスが貯蔵されることにより、自然放電の抑制が期待される。放電時は、第2密閉室から第1密閉室に水素ガスが供給されることにより、電気エネルギーが取り出されると考えられる。
【0014】
本開示の蓄電装置においては、水素ガスが負極活物質の一部である。すなわち負極活物質は、水素吸蔵合金に加えて水素ガスを含む。水素ガス(気体活物質)が高圧ガスとされることにより、体積エネルギー密度の向上が期待される。しかし水素ガスの圧力が高い程、水素ガスのアルカリ電解液への溶解が促進されると考えられる。すなわち自然放電の進行が促進されると考えられる。
【0015】
上記のように本開示の蓄電装置では、自然放電が抑制され得る。したがって本開示の蓄電装置によれば、体積エネルギー密度と、自然放電の抑制との両立が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本開示の第1実施形態を示す概念図である。
蓄電装置100は、第1密閉室110、第2密閉室120、蓄電要素130およびガス流路140を少なくとも備える。ガス流路140は、ガス配管141および電磁弁142を含む。蓄電装置100では、電磁弁142の開閉により、第1密閉室110および第2密閉室120の間の水素ガスの移動が制御される。すなわち蓄電装置100は、第1密閉室110および第2密閉室120の間の水素ガスの移動を制御できるように構成されている。
【0019】
《第1密閉室》
本明細書の密閉室は外気から遮断された空間を示す。第1密閉室110は、水素ガスの圧力に耐えるように構成されている。第1密閉室110は、たとえば燃料電池車用の高圧水素容器と同様の耐圧構造を有し得る。第1密閉室110の内壁は、たとえば絶縁材料によって被覆されていてもよい。第1密閉室110は、たとえば正極端子111、負極端子112、充填チューブ113等を備える。水素ガスは、充填チューブ113から第1密閉室110内に充填され得る。第1密閉室110は、蓄電要素130を格納している。
【0020】
《蓄電要素》
図5は、
図1の領域Vを示す概念図である。蓄電要素130は、正極板131、負極板132およびセパレータ133を含む。正極板131は正極活物質を含む。負極板132は負極活物質を含む。セパレータ133には、アルカリ電解液が含浸されている。すなわち蓄電要素130は、正極活物質、負極活物質およびアルカリ電解液を少なくとも含む。
【0021】
正極板131は、正極端子111と電気的に接続されている。負極板132は、負極端子112と電気的に接続されている。セパレータ133は、正極板131および負極板132の間に配置されている。蓄電要素130は、正極板131、セパレータ133、負極板132およびセパレータ133からなるユニットが繰り返し積層されることにより形成されている。蓄電要素130は、正極板131、セパレータ133および負極板132がこの順序で積層され、さらにこれらが渦巻状に巻回されることにより形成されていてもよい。
【0022】
(正極板)
正極板131は正極活物質を含む。正極活物質は粒子であり得る。正極板131は正極集電体をさらに含んでもよい。正極板131は、正極活物質が正極集電体に固着されることにより形成されていてもよい。正極活物質は、たとえば高分子バインダによって正極集電体に固着され得る。正極集電体は、多孔質金属シート等であってもよい。正極集電体は、たとえば100〜1000μmの厚さを有してもよい。多孔質金属シートは、たとえば発泡ニッケルシート等であってもよい。多孔質金属シートは、たとえば50〜90%の空孔率を有してもよい。
【0023】
正極活物質は、たとえば水酸化ニッケル、オキシ水酸化マンガン等であってもよい。水酸化ニッケル〔Ni(OH)
2〕は、充電によりオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)に酸化される。オキシ水酸化マンガン(MnOOH)は、充電により二酸化マンガン(MnO
2)に酸化される。すなわち正極活物質は、水酸化ニッケルおよびオキシ水酸化ニッケルの少なくとも一方を含んでもよい。正極活物質は、オキシ水酸化マンガンおよび二酸化マンガンの少なくとも一方を含んでもよい。
【0024】
(負極板)
負極板132は負極活物質を含む。負極活物質は粒子であり得る。負極板132は負極集電体をさらに含んでもよい。負極板132は、負極活物質が負極集電体に固着されることにより形成されていてもよい。負極活物質は、たとえば高分子バインダによって負極集電体に固着され得る。負極集電体は、ニッケル箔等であってもよい。負極集電体は、たとえば10〜100μmの厚さを有してもよい。
【0025】
負極活物質は水素吸蔵合金を含む。水素吸蔵合金はプロチウムを吸蔵し放出する。水素吸蔵合金は、たとえばAB
5型合金であってもよい。AB
5型合金は高いプラトー圧を有し得る。「プラトー圧」は、圧力−組成等温(PCT)線図において、20℃の放出線が平坦になる圧力を示す。
【0026】
図6は、PCT線図の一例である。PCT線図は「JIS H 7201」に準拠した方法により作成される。
図6には、20℃の放出線が描かれている。プラトー圧は、次のようにして算出される。放出線の中で連続する3点を通る直線が描かれる。直線の傾きが求められる。3点が一つの直線に載らない場合は、最小二乗法により、直線の傾きが求められる。傾きが最も小さくなる3点の組み合わせが決定される。該3点の圧力の算術平均がプラトー圧とされる。
【0027】
プラトー圧が高い水素吸蔵合金は、プロチウム吸蔵量が大きい傾向にある。プラトー圧が高い水素吸蔵合金の使用により、蓄電装置の高容量化が期待される。水素吸蔵合金は、たとえば0.2MPa以上10MPa以下のプラトー圧を有してもよい。水素吸蔵合金は、たとえば0.2MPa以上2MPa以下のプラトー圧を有してもよい。
【0028】
AB
5型合金は、たとえば、MmNi
5(2MPa)、MmNi
4.7Fe
0.3(1.5MPa)、MmNi
4.5Cr
0.5(0.5MPa)、MmNi
4.2Co
0.8(1.8MPa)、MmNi
4.5Mn
0.5(0.3MPa)、MmNi
4.5Al
0.5(0.3MPa)、MmNi
4.5Cr
0.45Mn
0.05(0.3MPa)、MmNi
4.5Cr
0.25Mn
0.25(0.2MPa)等であってもよい。ここで括弧内の圧力は、各AB
5型合金のプラトー圧を示す。Mmはミッシュメタルを示す。
【0029】
(セパレータ)
セパレータ133は多孔質シートである。セパレータ133は、正極板131および負極板132の間に配置されている。セパレータ133は、正極板131および負極板132を電気的に絶縁している。セパレータ133は、たとえば、ポリオレフィン製の不織布等であってもよい。
【0030】
(アルカリ電解液)
アルカリ電解液はセパレータ133に含浸されている。アルカリ電解液は、支持電解質および水を含む。支持電解質は水に溶解している。アルカリ電解液は、たとえば1〜20mоl/lの支持電解質を含んでもよい。支持電解質は、たとえば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)等であってもよい。1種の支持電解質が単独で使用されてもよい。2種以上の支持電解質が組み合わされて使用されてもよい。
【0031】
(水素ガス)
水素ガスは第1密閉室110に充填されている。水素ガスは負極活物質として機能する。すなわち負極活物質は、水素吸蔵合金および水素ガスを少なくとも含む。第1密閉室110内の水素ガスは、水素吸蔵合金のプラトー圧よりも高い圧力を有し得る。水素ガスは高圧ガスであり得る。水素ガスは、たとえば1MPa以上70MPa以下の圧力を有してもよい。水素ガスは、たとえば1MPa以上10MPa以下の圧力を有してもよい。
【0032】
水素ガスの圧力が高い程、体積エネルギー密度の向上が期待される。その一方で圧力が高い程、水素ガスのアルカリ電解液への溶解が促進されると考えられる。すなわち自然放電の進行が促進されると考えられる。第1実施形態では、第2密閉室120およびガス流路140により、自然放電が抑制され得る。
【0033】
《第2密閉室》
第2密閉室120も、水素ガスの圧力に耐えるように構成されている。すなわち第1密閉室110および第2密閉室120は、それぞれ水素ガスの圧力に耐えるように構成されている。第2密閉室120も、たとえば燃料電池車用の高圧水素容器と同様の耐圧構造を有し得る。第2密閉室120は、蓄電要素130を格納していない。
【0034】
《ガス流路》
ガス流路140は、第1密閉室110および第2密閉室120を接続している。ガス流路140は、ガス配管141および電磁弁142を含む。電磁弁142は、電流のON/OFFにより、全開または全閉する。
【0035】
蓄電装置100が充電される際は、電磁弁142が開放される。これにより水素吸蔵合金のプロチウム吸蔵量を超えて生成される水素ガスは、ガス配管141を通って第2密閉室120に移動することになる。充電後、電磁弁142が閉鎖される。充電後の放置期間において、第2密閉室120に移動した水素ガスはアルカリ電解液と接触しない。すなわち自然放電に寄与しない。したがって自然放電による電気エネルギーの損失が抑制され得る。
【0036】
蓄電装置100が放電する際は、電磁弁142が開放される。放電時は、第1密閉室110において水素ガス(負極活物質)が消費される。これにより第1密閉室110における水素ガスの圧力が低下する。たとえば、水素ガスの圧力が水素吸蔵合金のプラトー圧を下回ると、安定した放電ができない可能性がある。電磁弁142が開放されていることにより、第1密閉室110における圧力の低下に応じて、第2密閉室120から第1密閉室110へ水素ガスが供給され得る。したがって安定した放電が可能になると考えられる。
【0037】
《その他》
蓄電装置100は、たとえば圧力計および制御装置等をさらに備えてもよい。圧力計は、たとえば第1密閉室110および第2密閉室120の圧力を計測し得る。制御装置は、たとえば圧力計の計測値に基づき、電磁弁142の開閉を制御し得る。
【0038】
たとえば、第1密閉室110の圧力が所定値未満であり、かつ第2密閉室120の圧力が所定値以上である場合に、制御装置が電磁弁142を開放する。これにより第2密閉室120から第1密閉室110へ水素ガスが供給され得る。
【0039】
たとえば、第1密閉室110の圧力が所定値以上であり、かつ第2密閉室120の圧力が所定値未満である場合に、制御装置が電磁弁142を開放する。これにより第1密閉室110から第2密閉室120へ水素ガスが退避され得る。
【0040】
<第2実施形態>
図2は、本開示の第2実施形態を示す概念図である。
蓄電装置200は、第1密閉室210、第2密閉室220、蓄電要素230およびガス流路240を少なくとも備える。ガス流路240は、ガス配管241、減圧弁243および逆止弁244を含む。ガス流路240内において、減圧弁243および逆止弁244は並列に配置されている。
【0041】
蓄電装置200では、減圧弁243および逆止弁244の組み合わせにより、第1密閉室210および第2密閉室220の間の水素ガスの移動が制御される。すなわち蓄電装置200は、第1密閉室210および第2密閉室220の間の水素ガスの移動を制御できるように構成されている。
【0042】
前述の第1実施形態(蓄電装置100)と第2実施形態(蓄電装置200)との相違点は、ガス流路240の構成にある。その他の構成は、第1実施形態および第2実施形態で同じであると考えてよい。ここでは、主に第1実施形態と第2実施形態との相違点が説明される。
【0043】
逆止弁244は、第1密閉室210側の圧力が第2密閉室220側の圧力よりも高く、かつその圧力差が第1設定値以上である場合には、開放する。したがって充電時、水素ガスの発生により、第1密閉室210内の圧力が上昇し、圧力差が第1設定値以上になると、水素ガスが逆止弁244を通って第1密閉室210から第2密閉室220へ移動することになる。
【0044】
逆止弁244は、圧力差が第1設定値未満である場合には、閉鎖する。したがって充電の進行と共に、第2密閉室220内の圧力が上昇し、第1密閉室210と第2密閉室220との圧力差が第1設定値未満になると、第1密閉室210から第2密閉室220への水素ガスの移動が停止する。逆止弁244は、圧力差が第1設定値未満である限り、開放しない。したがって充電後の放置期間は、水素ガスが第2密閉室220に貯蔵され得る。すなわち自然放電の抑制が期待される。
【0045】
放電時、第1密閉室210における水素ガスの消費により、第1密閉室210内の圧力が低下する。減圧弁243は、第1密閉室210側の圧力が第2密閉室220側の圧力よりも低く、かつその圧力差が第2設定値以上である場合には、開放する。これにより水素ガスが減圧弁243を通って第2密閉室220から第1密閉室210へ移動する。
【0046】
以上のように、第2実施形態では、第1密閉室210における水素ガスの発生および消費に合わせて、減圧弁243および逆止弁244が自動的に作動し得る。これにより、自然放電が抑制され、かつ放電が安定するように、水素ガスが移動し得る。
【0047】
<第3実施形態>
図3は、本開示の第3実施形態を示す概念図である。
蓄電装置300は、第1密閉室310、第2密閉室320、蓄電要素330およびガス流路340を少なくとも備える。ガス流路340は、ガス配管341、電磁弁342、減圧弁343および逆止弁344を含む。ガス流路340内において、電磁弁342および減圧弁343は直列に配置されている。ガス流路340内において、電磁弁342および減圧弁343と、逆止弁344とは並列に配置されている。さらに蓄電装置300では、負極板に含まれる水素吸蔵合金とは別に、第2密閉室320内に水素吸蔵合金321が配置されている。
【0048】
蓄電装置300では、電磁弁342、減圧弁343および逆止弁344の組み合わせにより、第1密閉室310および第2密閉室320の間の水素ガスの移動が制御される。すなわち蓄電装置300は、第1密閉室310および第2密閉室320の間の水素ガスの移動を制御できるように構成されている。さらに第2密閉室320内に水素吸蔵合金321が配置されていることにより、体積エネルギー密度の向上が期待される。
【0049】
前述の第2実施形態(蓄電装置200)と第3実施形態(蓄電装置300)との相違点は、ガス流路340の構成および第2密閉室320の構成にある。その他の構成は、第2実施形態および第3実施形態で同じであると考えてよい。ここでは、主に第2実施形態と第3実施形態との相違点が説明される。
【0050】
充電時、電磁弁342が開放される。第1密閉室310において水素ガスが発生し、圧力が上昇すると、水素ガスが逆止弁344を通って第1密閉室310から第2密閉室320に移動する。第2密閉室320に移動した水素ガスは、水素吸蔵合金321に吸収され得る。
【0051】
充電後、電磁弁342が閉鎖される。これにより減圧弁343の二次側圧力(第1密閉室310側の圧力)が保たれる。したがって充電後の放置期間において、二次側圧力の低下により、減圧弁343が自動的に開放されることが抑制され得る。これにより自然放電のいっそうの抑制が期待される。
【0052】
放電時、電磁弁342が開放される。放電時、第1密閉室310の圧力が低下すると、水素ガスが減圧弁343を通って第2密閉室320から第1密閉室310へ移動する。これにより安定した放電が期待される。
【0053】
水素吸蔵合金321は、第2密閉室320内の水素ガスを吸蔵し得る。そのため第3実施形態では、第2密閉室320の容積を小さくすることができる。すなわち蓄電装置300の体積エネルギー密度の向上が期待される。
【0054】
第2密閉室320内に配置される水素吸蔵合金321は粉末状であり得る。これにより水素吸蔵合金と水素ガスとの接触面積が増加し、水素ガスの吸蔵効率が向上することが期待される。ただし第2密閉室320において、水素ガスの出入り口にはフィルタ322が配置されることが望ましい。水素吸蔵合金321(粉末)が第2密閉室320から漏出し、減圧弁343に侵入することを抑制するためである。粉末が減圧弁343に侵入すると、減圧弁343の誤作動および故障の原因になり得る。
【0055】
以上のように、第3実施形態では、電磁弁342、減圧弁343および逆止弁344の組み合わせにより、自然放電のいっそうの抑制が期待される。さらに第2密閉室320内に水素吸蔵合金321が配置されていることにより、体積エネルギー密度の向上も期待される。
【0056】
<第4実施形態>
図4は、本開示の第4実施形態を示す概念図である。
蓄電装置400は容器401を備える。容器401は負極端子を兼ねている。容器401は圧力容器であり得る。容器401は、たとえば燃料電池車用の高圧水素容器と同様の耐圧構造を有し得る。
【0057】
蓄電装置400では、フィルタ440が容器401の内部を区画することにより、第1密閉室410および第2密閉室420が形成されている。第1密閉室410は蓄電要素430を格納している。第1密閉室410には正極端子411が設けられている。第2密閉室420内には、水素吸蔵合金421が配置されている。水素ガスはフィルタ440を通過することができる。すなわちフィルタ440はガス流路であると考えられる。したがって蓄電装置400も、第1密閉室410、第2密閉室420、蓄電要素430およびガス流路を少なくとも含むと考えられる。
【0058】
第4実施形態において、第2密閉室420内に配置される水素吸蔵合金421(「第2水素吸蔵合金」とも称され得る)は、第2プラトー圧を有する。蓄電要素430(負極板)に含まれる水素吸蔵合金(「第1水素吸蔵合金」とも称され得る)は、第1プラトー圧を有する。第2プラトー圧は、第1プラトー圧よりも低くてもよい。
【0059】
充電時、第1密閉室410において発生した水素ガスは、フィルタ440を通過し、第2密閉室420内の水素吸蔵合金421に吸収される。
【0060】
充電後の放置期間において、自然放電(水素ガスの消費)により、圧力容器401内の圧力が低下する。しかし蓄電装置400では、圧力容器401内の圧力が、水素吸蔵合金421のプラトー圧を下回るまで、水素吸蔵合金421からの水素ガスの放出が抑制され得る。すなわち自然放電の抑制が期待される。
【0061】
放電時、水素ガスの消費により、圧力容器401内の圧力が水素吸蔵合金421のプラトー圧付近まで下がると、水素吸蔵合金421が水素ガスを放出し、水素ガスが第2密閉室420から第1密閉室410へ供給され得る。すなわち蓄電装置400も、第1密閉室410および第2密閉室420の間の水素ガスの移動を制御できるように構成されているといえる。
【0062】
水素吸蔵合金421は粉末状であり得る。水素吸蔵合金421は、水素ガスの吸蔵および放出に伴い、膨張収縮する。水素ガスの吸蔵および放出が繰り返されることにより、粒子が割れて、水素吸蔵合金421が微粉化する可能性がある。微粉化した水素吸蔵合金421が舞い上がり、蓄電要素430に侵入すると、短絡の原因になり得る。そのためフィルタ440は、微粉化した水素吸蔵合金421が通過しないように、十分に小さい目付を有することが望ましい。
【実施例】
【0063】
以下、本開示の実施例が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0064】
<実験No.1−1>
図1の構成を備える蓄電装置100が準備された。蓄電装置100の設計容量は50Ahである。正極板131は435cm
2の面積を有する。正極板131は水酸化ニッケルが発泡ニッケルシートに固着されることにより準備された。正極板131は172gの水酸化ニッケルを含む。水酸化ニッケルの理論容量は289mAh/gである。発泡ニッケルシートは500μmの厚さを有する。発泡ニッケルシートは80%の空孔率を有する。
【0065】
負極板132は水素吸蔵合金がニッケル箔の表面に固着されることにより準備された。負極板132は11gの水素吸蔵合金を含む。水素吸蔵合金はMmNi
4.2Co
0.8である。MmNi
4.2Co
0.8は400mAh/gの理論容量を有する。MmNi
4.2Co
0.8は1.8MPaのプラトー圧を有する。
【0066】
セパレータ133はポリオレフィン製の不織布である。蓄電要素130は、正極板131、セパレータ133および負極板132がこの順序で積層され、さらにこれらが渦巻状に巻回されることにより形成された。第1密閉室110に蓄電要素130が格納された。
【0067】
第1密閉室110にアルカリ電解液が注入された。アルカリ電解液が蓄電要素130に含浸された。アルカリ電解液は7mоl/lのKOH水溶液である。
【0068】
ガス流路140により第1密閉室110および第2密閉室120が接続された。ガス流路140はガス配管141および電磁弁142を含む。第1密閉室110に水素ガスが充填された。本実験において、負極活物質は100cm
3の水素吸蔵合金および460cm
3の水素ガスを含む。
【0069】
電磁弁142が開放された状態で、蓄電装置100が充電された。第1密閉室110内の圧力が4MPaに達した時点で、電磁弁142が閉鎖された。10℃環境で蓄電装置100が120時間放置された。120時間放置後、電磁弁142が開放された状態で、蓄電装置100が放電された。これにより容量維持率が測定された。容量維持率は放電容量が充電容量で除された値である。同様に、20℃環境および30℃環境において、容量維持率が測定された。結果は下記表1に示される。
【0070】
<実験No.1−2>
電磁弁142が常時開放された状態で、充電、放置および放電が行われることを除いては、実験No.1−1と同様に、容量維持率が測定された。
【0071】
<実験No.2>
図2の構成を備える蓄電装置200が準備された。蓄電装置200の設計容量は50Ahである。蓄電装置200において、ガス流路240は減圧弁243および逆止弁244を含む。蓄電装置200が充電された。10℃環境で蓄電装置200が120時間放置された。120時間放置後、蓄電装置200が放電された。これにより容量維持率が測定された。同様に、20℃環境および30℃環境において、容量維持率が測定された。結果は下記表1に示される。
【0072】
<実験No.3−1>
図3の構成を備える蓄電装置300が準備された。蓄電装置300の設計容量は50Ahである。蓄電装置300において、ガス流路340は電磁弁342、減圧弁343および逆止弁344を含む。
【0073】
電磁弁342が開放された状態で、蓄電装置300が充電された。充電終了後、電磁弁342が閉鎖された。10℃環境で蓄電装置100が120時間放置された。120時間放置後、電磁弁342が開放された状態で、蓄電装置300が放電された。これにより容量維持率が測定された。同様に、20℃環境および30℃環境において、容量維持率が測定された。結果は下記表1に示される。
【0074】
<実験No.3−2>
電磁弁342が常時開放された状態で、充電、放置および放電が行われることを除いては、実験No.3−1と同様に、容量維持率が測定された。
【0075】
<実験No.4>
図4の構成を備える蓄電装置400が準備された。蓄電装置400の設計容量は50Ahである。第2密閉室420内に配置される水素吸蔵合金は、MmNi
4.5Cr
0.5である。MmNi
4.5Cr
0.5は0.5MPaのプラトー圧を有する。
【0076】
蓄電装置400が充電された。10℃環境で蓄電装置400が120時間放置された。120時間放置後、蓄電装置400が放電された。これにより容量維持率が測定された。同様に、20℃環境および30℃環境において、容量維持率が測定された。結果は下記表1に示される。
【0077】
【表1】
【0078】
<結果>
本実験においては、容量維持率が高い程、自然放電が抑制されていると考えられる。上記表1に示されるように、水素ガスの移動が制御され、水素ガスが蓄電要素から隔離されて貯蔵されることにより、自然放電が抑制される傾向が認められる。
【0079】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。たとえば、上記の各実施形態は任意に組み合わされてもよい。たとえば、1つの実施形態に含まれる一部の構成が他の実施形態に適用されてもよい。1つの実施形態に含まれる一部の構成は、該実施形態に含まれる他の構成と分離されて任意に抽出され得る。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。