【目的】装置の損傷防止及び電池交換作業時間の短縮を図ると共に、電池容量の大容量化及びサイズの小型化を図ることが可能な電池ユニット、電池監視システム、及び電池交換方法を提供することを目的とする。
【構成】本発明に係る電池ユニットは、夫々が直流電圧を生成する第1〜第n(nは2以上の整数)の電池セルと、第1〜第nの電池セル各々の電圧値を測定して測定結果を個別に表す第1〜第nの測定信号を得る第1〜第nの測定部と、第1〜第nの測定信号に夫々対応した交流磁界を発生する第1〜第nの送信ループアンテナと、交流磁界を受けてこの交流磁界に対応した受信信号を得る受信ループアンテナと、受信信号に復調処理を施して測定結果を表す電池セル測定情報を生成する受信部と、第1〜第nの送信ループアンテナ及び受信ループアンテナの内側を貫通する磁気コアと、を有する。
前記第1〜第nの送信ループアンテナが夫々に個別に形成されており、且つ前記送信ループアンテナの内側を貫通する貫通孔が夫々に形成されている第1〜第nの送信アンテナ基板と、
前記受信ループアンテナと共に前記受信ループアンテナの内側を貫通する貫通孔が形成されている受信アンテナ基板と、を含み、
前記送信ループアンテナは、前記送信アンテナ基板の表面において前記送信アンテナ基板の前記貫通孔を囲んでループ状にプリントされた金属配線からなり、
前記受信ループアンテナは、前記受信アンテナ基板の表面において前記受信アンテナ基板の前記貫通孔を囲んでループ状にプリントされた金属配線からなり、
前記磁気コアは、前記第1〜第nの送信アンテナ基板各々の前記貫通孔、及び前記受信アンテナ基板の前記貫通孔に共通に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の電池ユニット。
前記第1〜第nの送信ループアンテナからなる1組の送信ループアンテナ群と同一構成の第1〜第nの補助送信ループアンテナが少なくとも1組分設けられており、前記受信ループアンテナと同一構成の補助受信ループアンテナが少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の電池ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような蓄電池ユニットを電気自動車の走行用モータの電源として用いる場合、蓄電池ユニットの損傷を防止するために、当該蓄電池ユニットに収容されている電気化学セル(以下、電池セルと称する)の状態を個別に監視する必要が生じる。
【0006】
よって、車載用の蓄電池ユニットには、複数の電池セルを個別に監視するバッテリ管理システムが設けられている。バッテリ監視システムは、例えば各電池セルで生成された電圧を個別に取り込む為の複数の配線と、当該複数の配線を介して取り込まれた電圧に基づき、各電池セルの状態を監視する電池管理部と、を含む。
【0007】
ところで、上記したバッテリ監視システムにおいて、電池セルに異常が生じると、この電池セルに接続されている配線を介して電池管理部に高電圧が印加される虞がある。よって、当該高電圧の印加によって電池管理部を損傷させる虞があった。
【0008】
また、このようなバッテリ監視システムを採用するには、蓄電池ユニット内に、複数の電池セルを収容する空間の他に、上記した複数の配線を設置するための空間を確保する必要がある。よって、蓄電池ユニットのサイズが大型化して、当該蓄電池ユニットの大容量化が困難になるという問題が生じる。
【0009】
更に、蓄電池ユニットを交換する場合には、上記した複数の配線を全て外し、再び交換後の蓄電池ユニットに接続し直す必要があるので、交換作業に費やす時間が長くなるという問題も生じた。
【0010】
そこで、本発明は、損傷防止及び電池交換作業の時間短縮を図ると共に、電池容量の大容量化及びサイズの小型化を図ることが可能な電池ユニット、電池監視システム、及び電池交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電池ユニットは、夫々が直流電圧を生成する第1〜第n(nは2以上の整数)の電池セルと、前記第1〜第nの電池セル各々の電圧値を測定して測定結果を個別に表す第1〜第nの測定信号を得る第1〜第nの測定部と、前記第1〜第nの測定信号に夫々対応した交流磁界を発生する第1〜第nの送信ループアンテナと、前記交流磁界を受けて前記交流磁界に対応した受信信号を得る受信ループアンテナと、前記受信信号に復調処理を施して前記測定結果を表す情報を生成する受信部と、前記第1〜第nの送信ループアンテナ及び前記受信ループアンテナの内側を貫通する磁気コアと、を有する。
【0012】
本発明に係る電池監視システムは、夫々が直流電圧を生成する第1〜第n(nは2以上の整数)の電池セルと、前記第1〜第nの電池セル各々の電圧値を測定して測定結果を個別に表す第1〜第nの測定信号を得る第1〜第nの測定部と、前記第1〜第nの測定信号に夫々対応した交流磁界を発生する第1〜第nの送信ループアンテナと、前記交流磁界を受けて前記交流磁界に対応した受信信号を得る受信ループアンテナと、前記受信信号に復調処理を施して前記測定結果を表す電池セル測定情報を得る受信部と、前記第1〜第nの送信ループアンテナ及び前記受信ループアンテナの内側を貫通する磁気コアと、前記電池セル測定情報に基づき、前記第1〜第nの電池セルのうちから動作不良の状態にある電池セルを検出すると共に、前記電池セル測定情報に基づき、前記第1〜第nの電池セルの現在の状態を監視して前記第1〜第nの電池セルの充放電制御を行う電池管理装置と、を有する。
【0013】
本発明に係る電池交換方法は、夫々が直流電圧を生成する第1〜第n(nは2以上の整数)の電池セルと、前記第1〜第nの電池セル各々の電圧値を測定して測定結果を個別に表す第1〜第nの測定信号を得る第1〜第nの測定部と、前記第1〜第nの電池セルに個別に形成されており、前記第1〜第nの測定信号に夫々対応した交流磁界を発生する第1〜第nの送信ループアンテナと、前記交流磁界を受けて前記交流磁界に対応した受信信号を得る受信ループアンテナと、前記受信信号に復調処理を施して前記測定結果を表す電池セル測定情報を得る受信部と、前記第1〜第nの送信ループアンテナ及び前記受信ループアンテナの内側を貫通する磁気コアと、を含む電池ユニットの電池交換方法であって、前記第1〜第nの電池セルのうちから不良状態にある電池セルを検出する第1のステップと、前記磁気コアを引き抜く第2のステップと、前記第1〜第nの電池セルのうちから前記第1のステップで検出された前記不良状態にある電池セルを取り外す第3のステップと、新しい電池セルを取り付ける第4のステップと、前記第1〜第nの送信ループアンテナ及び前記受信ループアンテナの内側に前記磁気コアを挿入する第5のステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、複数の電池セル各々の電圧値を測定し、電池セル毎の測定結果を無線で送信する。これにより、各電池セルで生成された直流の電圧自体が電池管理装置に印加されることはない。よって、例え電池セルに不具合が生じていても電池管理装置に高電圧が印加されることはないので、このような不具合に伴う損傷を防ぐことが可能となる。更に、電池管理装置と電池セルの各々とを個別に接続するための複数の配線が存在しないので、その配線を設置するための空間が不要となり、その分だけ、電池セル各々の大容量化、或いは電池セルを収容する電池ユニットの小型化を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明では、電池セル毎の測定結果を無線送信する方式として、磁界結合方式を採用している。これにより、受信側に電源を供給する為の電源配線が不要となるので、装置規模の増大を抑えることが可能となる。
【0016】
また、本発明では、交流磁界を放出する複数の送信ループアンテナ、及び受信ループアンテナの内側に磁性材料を含む磁気コアを共通に挿入することにより、送信ループアンテナで発生した交流磁界の減衰を抑えている。これにより、通信可能距離を大きくすることができるので、その分だけ電池セルを重ねる数を増やして電池容量の大容量化を図ることが可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、電池セルを交換する場合には、磁気コアを引き抜くだけで各電池セルの取り外しが可能になる。更に、新たな電池セルに交換した後、磁気コアを送信ループアンテナ及び受信ループアンテナの内側に挿入することによって、電池セルと電池管理装置との間の接続作業を完了させることができる。
【0018】
よって、電池セルを交換する際に、各電池セルと電池管理装置とを接続する複数の配線の脱着作業が必要となる場合に比べて、電池セルの交換作業に費やされる時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る電池ユニット100の構成を示すブロック図である。電池ユニット100は、複数の電池セルBC1〜BCn(nは2以上の整数)が収容されている電池パックBPKと、電池セルBC1〜BCnに夫々対応して設けられている送信モジュールTM1〜TMnと、受信モジュールRMと、を有する。
【0022】
電池セルBC1〜BCnは、夫々が直流電圧を生成して正極端子+Q及び負極端子−Qから出力する例えば二次電池である。電池セルBC1〜BCnは、電池パックBPK内において互いに直列に接続されている。尚、電池セルBC1〜BCnのうちで、一部の複数の電池セルBCについては並列に接続されていても良い。電池パックBPKは、これら電池セルBC1〜BCnの各々が生成した直流電圧を合成した電圧値を有する電池電圧BVを出力する。
【0023】
送信モジュールTM1〜TMnの各々は同一の内部構成を有する。つまり、
図1に示すように、送信モジュールTM1〜TMnの各々は、測定部11、送信部12及び送信ループアンテナ13を含む。
【0024】
以下に、送信モジュールTM1を抜粋して、測定部11、送信部12及び送信ループアンテナ13について説明する。
【0025】
送信モジュールTM1の測定部11は、電池セルBC1の正極端子+Q及び負極端子−Qに接続されている。測定部11は、電池セルBC1の正極端子+Q及び負極端子−Qを介して当該電池セルBC1が生成した直流電圧の電圧値及び電流量を測定し、測定した電圧値及び電流量を表す測定信号STを送信部12に供給する。
【0026】
送信部12は、例えばNFC(Near Field Communication)等の近距離無線通信技術に基づく磁界結合による無線通信を行う。すなわち、送信部12は、所定周波数(例えば13.56MHz)の搬送波に測定信号STに基づく変調を施すことにより変調信号MSを生成し、これを送信ループアンテナ13に供給する。
【0027】
送信ループアンテナ13は、変調信号MSに対応した交流磁界を発生して空間に放出する。
【0028】
このように、夫々が測定部11、送信部12及び送信ループアンテナ13を含む送信モジュールTM1〜TMnは、先ず、電池セルBC1〜BCnの各々に対する測定結果(電圧値、電流量)を個別に表す第1〜第nの測定信号STを得る。そして、送信モジュールTM1〜TMnは、第1〜第nの測定信号STの各々に基づく交流磁界を、第1〜第nの送信ループアンテナ13から放出する。
【0029】
受信モジュールRMは、受信ループアンテナ14、及び受信部15を含む。
【0030】
受信ループアンテナ14は、送信モジュールTM1〜TMn各々の送信ループアンテナ13から放出された交流磁界を受け、この交流磁界に対応した受信信号RAを受信部15に供給する。
【0031】
受信部15は、磁界結合方式に沿って受信信号RAに対して以下の処理を行う。
【0032】
すなわち、先ず、受信部15は、受信信号RAに基づく交流電圧を生成し、この交流電圧を整流及び平滑化することにより電源電圧を生成する。受信部15は、当該電源電圧で起動し、先ず、受信信号RAから送信モジュールTM1〜TMnで生成されたn系統の変調信号MSを抽出する。次に、受信部15は、抽出したn系統の変調信号MSの各々に復調処理を施すことにより、電池セルBC1〜BCn各々の電圧値及び電流量を表す測定信号STを復元する。そして、受信部15は、復元した、電池セルBC1〜BCn各々の電圧値及び電流量を表す電池セル測定情報FDを、電池ユニット100の状態を管理する電池管理装置200に供給する。
【0033】
電池管理装置200は、当該電池セル測定情報FDに基づき、電池セルBC1〜BCnの現在の状態を監視する。例えば、電池管理装置200は、電池セル測定情報FDに基づき、電池セルBC1〜BCnの残容量及び充電状態の監視、或いは動作不良の状態にある電池セルの検出などを行い、その結果を表す電池状態情報を生成する。更に、電池管理装置200は、電池セルBC1〜BCnを充放電させる充放電部(図示せず)に対して、充電又は放電の実行を指示する充放電制御を施す。
【0034】
図2は、
図1に示す電池ユニット100の外観の一例を表す斜視図である。
図2では、電池パックBPKに収容されている電池セルの数が6個である場合を例にとって電池ユニット100の外観を表している。尚、
図2では、電池パックBPK自体については図示していない。
【0035】
図2に示すように、電池ユニット100は、上記した電池セルBC1〜BC6、送信モジュールTM1〜TM6、受信モジュールRM、及び磁気コアMCを含む。
【0036】
電池セルBC1〜BC6は、電池パックBPK内において
図2に示すように重ねて設置されている。更に、
図2に示すように、電池セルBCr(rは1〜6の整数)の1つの面には、送信モジュールTMr(rは1〜6の整数)が接続されている。
【0037】
図3は、送信モジュールTM1〜TM6のうちの1つを真上から眺めた平面図である。尚、送信モジュールTM1〜TM6は同一の形態を有する。
【0038】
図3に示すように、送信モジュールTM1〜TM6の各々は、硬質材料又はフィルム等からなる送信アンテナ基板20と、この送信アンテナ基板20の表面に形成された送信ループアンテナ13、半導体チップ21、正極端子+T及び負極端子−Tを有する。
【0039】
半導体チップ21内には、
図1に示す測定部11及び送信部12が形成されている。
【0040】
送信アンテナ基板20に形成されている正極端子+T及び負極端子−Tは、半導体チップ21内に形成されている測定部11と電気的に接続されている。送信モジュールTMr(rは1〜6の整数)の正極端子+Tは電池セルBCr(rは1〜6の整数)の正極端子+Qと接続されており、送信モジュールTMrの負極端子−Tは電池セルBCrの負極端子−Qと接続されている。
【0041】
また、送信アンテナ基板20には、上記した磁気コアMCを着脱自在に貫通させることができる貫通孔HLが
図3に示すように設けられている。
【0042】
更に、送信アンテナ基板20の表面には、
図3に示すように、この貫通孔HLを囲んでループ状にプリントされた金属配線からなる送信ループアンテナ13が形成されている。送信ループアンテナ13を構成する金属配線の両端は、半導体チップ21に形成されている送信部12と接続されている。
【0043】
図4は、受信モジュールRMを真上から眺めた平面図である。
【0044】
図4に示すように、受信モジュールRMは、硬質材料又はフィルム等からなる受信アンテナ基板20と、この受信アンテナ基板20の表面に形成された受信ループアンテナ14、半導体チップ31、データ端子DT及び接地端子GTを有する。
【0045】
半導体チップ31内には、
図1に示す受信部15が形成されている。
【0046】
この受信部15から出力された電池セル測定情報FDは、受信アンテナ基板20に形成されているデータ端子DT及び接地端子GTを介して電池管理装置200に供給される。
【0047】
また、受信アンテナ基板20には、上記した磁気コアMCを着脱自在に貫通させることができる貫通孔HLが
図4に示すように設けられている。
【0048】
更に、受信アンテナ基板20の表面には、
図4に示すように、この貫通孔HLを囲んでループ状にプリントされた金属配線からなる受信ループアンテナ14が形成されている。受信ループアンテナ14を構成する金属配線の両端は、半導体チップ31に形成されている受信部15と接続されている。
【0049】
磁気コアMCは、鉄、ケイ素鋼又はフェライト等の磁性材料からなり、円柱又は角柱等の棒形状を有する。
【0050】
磁気コアMCは、
図2に示すように、送信モジュールTM1〜TM6及び受信モジュールRMの貫通孔HLに共通に挿入されている。
【0051】
尚、受信モジュールRMは、送信モジュールTM1〜TM6のうちで、磁気コアMCの長手方向において最端の位置に配置されているTM1とTM6との中間の位置、例えば
図2に示すようにTM3とTM4との間に設置されている。
【0052】
以上のように、
図1〜
図4に示す電池ユニット100では、送信モジュールTM1〜TMnが、電池セルBC1〜BCn各々の電圧値及び電流量を測定し、その測定結果を表す情報を無線通信にて受信部15に送信する。そして、受信部15が、当該測定結果を表す電池セル測定情報FDを電池管理装置200に供給する。
【0053】
よって、電池セルBC1〜BCnで生成された電圧自体が電池管理装置200に供給されることはない。したがって、例え電池セルに不具合が生じていても電池管理装置200に高電圧が印加されることはないので、このような不具合に伴う損傷を防ぐことが可能となる。
【0054】
また、当該電池ユニット100では、電池管理装置200と電池セルBC1〜BCnの各々とを個別に接続するための複数の配線が存在しないので、その配線を設置するための空間が不要となる。よって、配線用の空間が不要となる分だけ、電池セルBC1〜BCn各々の大容量化、或いは電池ユニット100のサイズの小型化を図ることが可能となる。
【0055】
ところで、電池ユニット100では、送信モジュールTM1〜TMnの送信ループアンテナ13で発生した交流磁界により、受信モジュールRMを起電させると共に測定情報(ST)を送信するという、磁界結合方式を採用した近距離無線を行っている。したがって、受信モジュールRMに電源電圧を供給するための専用の配線が不要となる。しかしながら、交流磁界を空間中で伝搬させているので、通信可能な距離は比較的短い距離(例えば10cm程度)となる。
【0056】
それ故、電池容量の大容量化を図るために電池セルBCの数を増加すると、最端に設置された電池セルBCに接続されている送信モジュールTMと、受信モジュールRMとの間の距離が大きくなり、正常な無線通信が為されなくなる虞が生じる。
【0057】
そこで、電池ユニット100では、送信モジュールTM1〜TMn各々の送信ループアンテナ13の内側、並びに受信モジュールRMの受信ループアンテナ14の内側に、磁気コアMCを共通に挿入している。これにより、送信ループアンテナ13で発生した交流磁界の減衰が抑えられるので、通信可能距離を大きくすることが可能となる。
【0058】
よって、受信モジュールRMに電源を供給する電源配線を不要として装置規模の増大を抑えると共に、電池セルBCの数を増加して電池容量の大容量化を図ることが可能となる。
【0059】
尚、上記実施例では、送信モジュールTM1〜TMn各々の測定部11は、電池セルの電圧値及び電流量を測定しているが、電圧値だけを測定するようにしても良い。
【0060】
また、上記実施例では、送信部12が所定周波数の搬送波に測定信号STに基づく変調を施して得られた変調信号MSを送信ループアンテナ13に供給している。しかしながら測定信号STに対応した交流磁界を送信ループアンテナ13で生成できるのであれば、上記した構成に限定されない。
【0061】
要するに、電池ユニット100としては、夫々が直流電圧を生成する第1〜第n(nは2以上の整数)の電池セルと共に、以下の第1〜第nの測定部、第1〜第nの送信ループアンテナ、受信ループアンテナ、受信部、及び磁気コアを有するものであれば良い。
【0062】
すなわち、第1〜第nの測定部(TM1〜TMnの測定部11)は、第1〜第nの電池セル(BC1〜BCn)各々の電圧値を測定して夫々の測定結果を表す第1〜第nの測定信号(TM1〜TMnの測定信号ST)を得る。第1〜第nの送信ループアンテナ(TM1〜TMnの送信ループアンテナ13)は、第1〜第nの測定信号に夫々対応した交流磁界を発生する。受信ループアンテナ(14)は、交流磁界を受けてこの交流磁界に対応した受信信号(RA)を得る。受信部(15)は、この受信信号に復調処理を施して測定結果を表す電池セル測定情報(FD)を生成する。そして、第1〜第nの送信ループアンテナ及び受信ループアンテナの内側に磁気コア(MC)が貫通している。
【0063】
また、上記した電池ユニット100によれば、電池パックBPKに収容されている電池セルBC1〜BCnのうちで、不良となった電池セルのみを新しい電池セルに交換することができる。
【0064】
図5は、電池セルを新しい電池セルに交換する際の交換システムの構成を表すブロック図である。
【0065】
図5に示す交換システムは、電池セルの交換対象となる電池ユニット100と、上記した電池管理装置200と、交換作業を行う電池交換装置500と、を含む。
【0066】
電池ユニット100の電池セルを交換するにあたり、先ず、この電池ユニット100を電池交換装置500に装着する。
【0067】
すると、電池交換装置500は、
図6に示す電池交換手順に従って、電池セルの交換を行う。
【0068】
図6において、先ず、電池交換装置500は、電池管理装置200で生成された電池状態情報を取り込み、当該電池状態情報から、電池ユニット100に含まれる電池セルBC1〜BCnのうちで不良状態にある電池セルを検出する(ステップS1)。
【0069】
次に、電池交換装置500は、電池ユニット100の送信モジュールTM1〜TMn各々の貫通孔HL、及び受信モジュールRMの貫通孔HLに挿入されている磁気コアMCを引き抜く(ステップS2)。
【0070】
次に、電池交換装置500は、ステップS1で検出された不良状態にある電池セルを取り外し(ステップS4)、この不良状態にある電池セルが設置されていた位置に新しい電池セルNBを取り付ける(ステップS5)。
【0071】
次に、電池交換装置500は、電池ユニット100の送信モジュールTM1〜TMn各々の貫通孔HL、及び受信モジュールRMの貫通孔HLに磁気コアMCを挿入する(ステップS6)。
【0072】
このように、電池ユニット100によれば、電池セルを交換する場合には、磁気コアMCを引き抜くだけで電池セルの取り外しが可能になる。更に、新たな電池セルに交換した後、磁気コアMCを送信モジュールTM1〜TMn及び受信モジュールRMの貫通孔HLに差し込むことによって、電池ユニット100と電池管理装置200との接続作業を完了させることができる。
【0073】
よって、電池セルを交換する際に、各電池セルと電池管理装置とを接続する配線の脱着作業が必要となる電池ユニットに比べて、電池セルの交換作業に費やされる時間を短縮することが可能となる。
【0074】
尚、上記実施例では、磁気コアMCとして
図2に示すような棒状の形態を採用しているが、ループ状の形態を有する磁気コアMCを採用しても良い。
【0075】
図7は、ループ状の形態を有する磁気コアMCを採用した電池ユニット100を、
図2に示す矢印の方向から眺めた正面図である。
【0076】
図7に示される磁気コアMCでは、以下の4つの磁性体棒Mb1〜Mb4を連結することにより、磁気コアMCをループ形状化したものである。
【0077】
図7において、磁性体棒Mb1及びMb2は、電池セルBC1〜BC6が重なる方向に伸張した円柱又は角柱の棒形状からなる。磁性体棒Mb3の一端は、結合部Cn1を介して磁性体棒Mb1の一端と結合されており、磁性体棒Mb3の他端は、結合部Cn2を介して磁性体棒Mb2の一端と結合されている。尚、結合部Cn1及びCn2は、磁性体棒Mb1及びMb2と、磁性体棒Mb3とを着脱自在に結合する。
【0078】
磁性体棒Mb4の一端は、結合部Cn3を介して磁性体棒Mb1の他端と結合されており、磁性体棒Mb4の他端は、結合部Cn4を介して磁性体棒Mb2の他端と結合されている。尚、結合部Cn3及びCn4は、磁性体棒Mb1及びMb2と、磁性体棒Mb4とを着脱自在に結合する。
【0079】
図7に示される磁性体棒Mb1が、送信モジュールTM1〜TM6各々の貫通孔HL及び受信モジュールRMの貫通孔HLに挿入されている。
【0080】
図7に示すようなループ形状を有する磁気コアMCを採用することにより、送信モジュールTM1〜TM6各々の送信ループアンテナ13から放出された磁束を磁気コアMC内に留めておく量を増やすことができる。よって、
図2に示す棒状の磁気コアMCを採用した場合に比して、送信部12の出力を抑えても、送信モジュールTM1〜TM6と、受信モジュールRMとの間の無線通信を行うことが可能となる。
【0081】
尚、
図7に示す磁気コアMCでは、結合部Cn1〜Cn4により、磁性体棒Mb1及びMb2から磁性体棒Mb3及びMb4を外すことができる。これにより、電池セルBC1〜BC6のうちで不良となった電池セルを取り外して、新たな電池セルに交換することが可能となる。
【0082】
また、上記実施例では、1つの電池セルに対して1つの送信モジュールを設けているが、送信モジュール自体の故障に備えて、1つの電池セルに対して2つ以上の複数の送信モジュールを設けるようにしても良い。また、受信モジュールとしても、2つ以上の複数の受信モジュールを設けるようにしても良い。
【0083】
図8は、かかる点に鑑みて為された、電池ユニット100の正面の形態の他の一例を表す正面図である。
図8に示される一例では、1つの電池セルに互いに同一構成の2つの送信モジュールを設けると共に、互いに同一構成の2つの受信モジュールを設けている。
【0084】
尚、
図8に示す構成では、補助送信モジュールTTM1〜TTM6、及び補助受信モジュールRRMを新たに追加した点を除く他の構成は、
図7に示されるものと同一である。
【0085】
補助送信モジュールTTMr(rは1〜6の整数)は、送信モジュールTMr(rは1〜6の整数)と同一構成を有する。当該補助送信モジュールTTMrは、送信モジュールTMrと共に電池セルBCr(rは1〜6の整数)に接続される。更に、
図8に示す構成では、補助送信モジュールTTM1〜TTM6及び補助受信モジュールRRM各々の貫通孔HLに、磁気コアMCの磁性体棒Mb2が挿入されている。
【0086】
図8に示す構成における製品出荷時の初期設定では、送信モジュールTMr(rは1〜6の整数)及び補助送信モジュールTTMr(rは1〜6の整数)のうちの一方だけを動作させる。この際、故障が発生した場合にだけ、故障した送信モジュールを他方に切り替えるのである。尚、送信モジュールTM1〜TM6、及び補助送信モジュールTTM1〜TTM6を常に同時に動作させていても良い。
【0087】
尚、
図8に示す一例では、第1〜第nの送信ループアンテナ(TM1〜TMnの送信ループアンテナ13)からなる1組の送信ループアンテナ群と同一構成の第1〜第nの補助送信ループアンテナ(TTM1〜TTMnの送信ループアンテナ13)を補助送信ループアンテナ群として1組だけ設けているが2組以上設けても良い。また、
図8に示す一例では、受信ループアンテナ(RMの受信ループアンテナ14)と同一構成の受信ループアンテナ(RRMの受信ループアンテナ14)を1つだけ設けているが、これを2つ以上設けても良い。