【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0032】
機能性被膜付基材の被膜特性の評価方法は、以下のとおり。
光沢度: JIS−K5600−4−7、JIS−Z8741に準ずる
硬度:JIS−K5400に準ずる
対スチールウール試験:消しゴム摩耗試験機(SONY社製)、スチールウール#0000を使用、往復ストロークは25mm、往復速度は1往復/秒、摩耗試験接触面積はφ10mmの円である。
落球試験:JIS−K5600−5−3に準ずる
フッ酸浸漬試験:10%フッ化水素溶液、23度、30分間浸漬し、外観観察を行う。
【0033】
[実施例1]
国際公開第2011/105401号の合成例と同様に製造したかご型シルセスキオキサンオリゴマー(下記構造式) : 30重量部、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノールジアクリレート:65重量部、共栄社化学(株)製のウレタンアクリレートオリゴマーUF−503:5重量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2重量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:1重量部、紫外線吸収剤チヌビン384−2(BASF社):4重量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピぺリジル)セバケート:1重量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]:1重量部、及びメチルエチルケトン300重量部を混合し、本発明のコーティング剤組成物Aを得た。この組成物の粘度は58mPa・s(E型粘度計、25℃) であった。
【0034】
【化2】
【0035】
次いで、ショットブラスト処理した金属鋼板に該コーティング剤組成物Aを膜厚が20ミクロンになるようにスピンコーターを用いて塗布した。次に熱風循環オーブンにて60℃30分処理し溶剤を除去し、高圧水銀ランプを用いて紫外線を1200mj/cm
2にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.1%%未満)にて照射し、コーティング剤組成物Aを硬化してなる被覆膜を得た。
【0036】
得られた機能性被膜付基材の金属鋼板とコーティング剤A被膜の間にカッターを差し込み、その剥がれの有無を確認した。すると、金属鋼板とコーティング剤A被膜の間の剥離は観られなかった。
表面光沢度について、ショットブラスト処理した金属鋼板と上記実施例1で得られた機能性被膜付鋼板について、光沢度計の入射角を60°に設定し測定を行った。その結果、ショットブラスト処理した金属鋼板の光沢度:5、実施例1で得られた機能性被膜付鋼板の光沢度:86となり、大幅に向上した。
【0037】
[実施例2]
木材であるスギ板に該コーティング剤組成物Aを膜厚が20ミクロンになるようにスピンコーターを用いて塗布した。次に熱風循環オーブンにて60℃30分処理し溶剤を除去し、高圧水銀ランプを用いて紫外線を1200mj/cm
2にて窒素雰囲気下にて照射し、コーティング剤組成物を硬化してなる被覆膜を得た。
【0038】
得られた機能性被膜付基材のスギ板とコーティング剤A被膜の間にカッターを差し込み、その剥がれの有無を確認した。すると、スギ板とコーティング剤A被膜の間の剥離は観られなかった。
表面硬度試験について、荷重1kgにて表面を引っ掻き、傷の発生した時の鉛筆の硬さを測定した。この結果、スギ板では鉛筆硬度:6B、上記機能性被膜付スギ板では鉛筆硬度:4Hとなり、大幅に向上した。
耐スチールウール試験にて荷重1kgにて表面を引っ掻き、傷の入り具合を測定した。この結果、スギ板では1往復にて傷が発生であったのに対して、上記機能性被膜付スギ板では500往復後においても傷は観測されず、大幅に耐擦傷性が向上した。
【0039】
[実施例3]
プラスチックであるポリカーボネート板に該コーティング剤組成物Aを膜厚が20ミクロンになるようにスピンコーターを用いて塗布した。次に熱風循環オープンにて60℃30分処理し溶剤を除去し、高圧水銀ランプを用いて紫外線を1200mj/cm
2にて窒素雰囲気下にて照射し、コーティング剤組成物を硬化してなる被覆膜を得た。
【0040】
得られた機能性被膜付基材のポリカーボネート板とコーティング剤A被膜の間にカッターを差し込み、その剥がれの有無を確認した。すると、ポリカーボネート板とコーティング剤A被膜の間の剥離はみられなかった。
表面硬度試験について、荷重1kgにて表面を引っ掻き、傷の発生した時の鉛筆の硬さを測定した。この結果、ポリカーボネート板では鉛筆硬度:6Bであったのに対して、上記機能性被膜付ポリカーボネート板のでは鉛筆硬度:4Hとなり、大幅に向上した。
耐スチールウール試験にて荷重1kgにて表面を引っ掻き、傷の入り具合を測定した。この結果、ポリカーボネート板では1往復にて傷が発生したのに対して、上記機能性被膜付ポリカーボネート板では500往復後においても傷は観測されず、大幅に耐擦傷性が向上した。
【0041】
[実施例4]
強化ガラス板(コーニング社 ゴリラガラス)に該コーティング剤組成物Aを膜厚が20ミクロンになるようにスピンコーターを用いて塗布した。次に熱風循環オープンにて60℃30分処理し溶剤を除去し、高圧水銀ランプを用いて紫外線を1200mj/cm
2にて窒素雰囲気下にて照射し、コーティング剤組成物を硬化してなる被覆膜を得た。
【0042】
得られた機能性被膜付基材の強化ガラス板とコーティング剤A被膜の間にカッターを差し込み、その剥がれの有無を確認した。すると、強化ガラス板とコーティング剤A被膜の間の剥離はみられなかった。
落球試験にて、コーティング剤A被膜の状態を観察した。この結果、コーティング剤A被膜表面に傷、破断などは観察されず、強化ガラス板の損傷も観察されず、強化ガラス板の保護機能を発揮したものとなった。
フッ酸浸漬試験を実施し、コーティング剤A被膜を有する強化ガラス表面に変化は無く、強化ガラス板の場合は表面が溶解、エッチングされ、コーティング剤A被膜により強化ガラス板へのフッ酸による耐薬品性が向上した。
【0043】
[比較例1]
ジベンタエリスリトールヘキサアクリレート:80重量部、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメチロールジアクリレート :15重量部、ウレタンアクリレートオリゴマーUF−503:5重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2重量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:1重量部、チヌピン384−2:4重量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)セバケート:1重量部、ぺンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート:1重量部、及びメチルエチルケトン300重量部を混合し、コーティング剤組成物Bを得た。この組成物の粘度は45mPa・s(E型粘度計、25℃) であった。
次いで、ショットブラスト処理した金属鋼板に該コーティング剤組成物Bを膜厚が20ミクロンになるようにスピンコーターを用いて塗布した。次に熱風循環オーブンにて60℃30分処理し溶剤を除去し、高圧水銀ランプを用いて紫外線を1200mj/cm
2にて窒素雰囲気下にて照射し、コーティング剤組成物Bを硬化してなる被覆膜を得た。
【0044】
得られた機能性被膜付鋼板はクラック、剥離など発生し、外観不良が著しいものであり、表面硬度評価が不可能な状態のものであった。
【0045】
[比較例2]
トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメチロールジアクリレート) :60重量部、ウレタンアクリレートオリゴマーUF−503:35重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2重量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:1重量部、チヌビン384−2:4重量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピぺリジル)セバケート:1重量部、ぺンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]:1重量部、及びメチルエチルケトン300重量部を混合し、コーティング剤組成物Cを得た。この組成物の粘度は358mPa・s(E型粘度計、25℃) であった。
次いで、ショットブラスト処理した金属鋼板に該コーティング剤組成物Cを膜厚が20ミクロンになるようにスピンコーターを用いて塗布した。次に熱風循環オーブンにて60℃30分処理し溶剤を除去し、高圧水銀ランプを用いて紫外線を1200mj/cm
2にて窒素雰囲気下にて照射し、コーティング剤組成物Cを硬化してなる被覆膜を得た。
【0046】
得られた機能性被膜付基材の金属鋼板とコーティング剤C被膜の間にカッターを差し込み、その剥がれの有無を確認した。すると、金属鋼板とコーティング剤C被膜の間の剥離は観られなかった。
表面硬度試験について、荷重1kgにて表面を引っ掻き、傷の発生した時の鉛筆の硬さを測定した。この結果、上記機能性被膜付鋼板では鉛筆硬度:Bとなった。
耐スチールウール試験にて荷重1kgにて表面を引っ掻き、傷の入り具合を測定した。この結果、上記機能性被膜付鋼板では1往復にて傷が発生した。