【課題】選択範囲が広くかつより高い電圧のパワーオンリセット信号、リセット解除信号の生成が可能であり、さらにトリミングの必要性が極力排除されるとともに消費電流の削減が可能なパワーオンリセット回路、および半導体装置を提供すること。
【解決手段】電源VDDLの起動に伴って被給電回路にリセット信号porを供給するパワーオンリセット回路10であって、一対の入力部に入力された電圧の差分を用いて制御電圧pgateを出力する差動部70、および制御電圧pgateを用いて生成した基準電圧vref(1V)を一対の入力部の一方に帰還させる出力部71を含む基準電圧生成部と、電源VDDLの起動に伴って変化する制御電圧pgateについて基準電圧vref(V)に対する比較動作を行ってリセット解除信号を生成し被給電回路に供給する比較部72と、を備えた。
前記比較部は、前記電源に接続されるとともに前記制御電圧を入力する第1のトランジスタ、および前記第1のトランジスタと前記電源の電圧より低い電圧の低電圧側電源とに接続された電流源を含み、かつ前記第1のトランジスタと前記電流源の接続点から前記リセット信号を出力し、
前記リセット信号は、前記電源が前記基準電圧に達するまでの間は前記第1のトランジスタにより前記リセット信号の電圧が定まり、前記基準電圧を越えた以降は前記電流源により前記リセット信号の電圧が定まる
請求項1に記載のパワーオンリセット回路。
前記差動部は、前記一対の入力部に各々接続された一対のトランジスタ、および前記一対のトランジスタに各々接続された一対の電流ミラー回路を含み、前記制御電圧は前記一対の電流ミラー回路の一方の出力端子から出力される
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のパワーオンリセット回路。
前記差動部が前記一対の入力部の一方の入力部に接続された第3のトランジスタと他方の入力部に接続された第4のトランジスタを含み、前記基準電圧は前記第3のトランジスタの閾値電圧と前記第4のトランジスタの閾値電圧との差分を用いて生成される
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のパワーオンリセット回路。
前記基準電圧生成部は、各々、1つまたは複数の抵抗と1つまたは複数のダイオードとが直列に接続された2つのバンドギャップ回路が並列に接続され、かつ前記出力部に接続されたバンドギャップ部を含み、前記2つのバンドギャップ回路の各々の前記1または複数の抵抗と前記1つまたは複数のダイオードとの間の接続点が各々前記一対の入力部に帰還された
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のパワーオンリセット回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パワーオンリセット回路においては、パワーオンリセットの対象となる被給電回路が多岐におよぶため、パワーオンリセット回路に固有の種々の課題が存在する。例えば、パワーオンリセット回路から被給電回路に送られるパワーオンリセット信号の電圧(以下、「リセット電圧」という場合がある)、あるいはパワーオンリセットを解除する電圧(以下、「リセット解除電圧」という場合がある)の選択範囲を広げること、リセット電圧あるいはリセット解除電圧(以下、「リセット電圧等」という場合がある)のばらつきを抑制すること等が挙げられる。
【0006】
まず、リセット電圧等の選択範囲の拡大に関する問題点について説明する。例えば、リセット解除電圧を1.2V程度にする場合を考える。ここでは、リセット解除電圧として、MOS(Metal Oxide Semiconductor)によるダイオードやバイポーラによるダイオードに、所定の電流を流した際に発生する電圧を用いることとする。この場合、MOSトランジスタの閾値は0.7V程度であるため、1.2V程度を出すためには電流をその分多く流さなければならない。すなわち通常動作時に電流が増加してしまう。また、高い電圧でリセットをかけることが難しいため、例えばマイコン自体のリセットのために、リセット専用にIC(Integrated Circuit)が必要になる場合もあった。
【0007】
一方、リセット電圧等のばらつきに関しては以下のような問題点がある。すなわち、リセット電圧等は素子のばらつきに起因して、あるいは設計上の問題(素子ばらつきを抑えることが考慮できていない設計等)に起因して、ばらつく可能性がある。リセット電圧等のばらつきを抑える必要がある場合、リセット電圧、リセット解除電圧のサンプルごとの調整、すなわちトリミングが必要になる。特に半導体集積回路の低電圧化が進行する趨勢下、被給電回路の電源仕様、実際に動作可能な電圧等を勘案すると、リセット電圧等がばらつくことにより、歩留りが悪化する懸念がある。この場合、トリミングが必須のものとなる。しかしながら、リセットを実行している間にトリミングすることは非常に困難である。トリミングは、一般にトリミングコードにより所定の回路の定数等を設定して行われるが、リセット中は被給電回路内部のCPU(Central Proseccing Unit)等のラッチ回路がリセットされているため、トリミンコードの読み込みができないからである。
【0008】
上記の問題に対しては、ヒューズを用いることによって回避することも考えられる。ヒューズは物理的に配線やポリシリコンによる抵抗等を切断し、記録する。そのため、フリップフロップなどのラッチ回路を通さなければ、たとえリセット前でリセット中であってもトリミングコードを読み込むことができる。しかしながら、ヒューズを用いる方式では、製造工程にトリミングのためのテスト工程、さらにヒューズを切断する工程が追加されるので製造工程が煩雑化するという問題がある。また、テストコストの増加の問題もある。さらに、ヒューズは比較的面積が大きいため、レイアウト面積の増加という問題もある。
【0009】
ここで、
図11を参照し、広い電圧範囲で、かつ広い電源電圧起動傾き(単位V/s:Voltage per second:電源電圧の立ち上がり速度)に対応した比較例に係るパワーオンリセット回路について説明する。
図11(a)は、リセット信号の生成にMOSダイオードの閾値電圧を用いたパワーオンリセット回路100の回路図を示している。
図11に示すように、パワーオンリセット回路100は、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ(以下、「PMOSトランジスタ」)P100、電流源(カレントソース)CS1、およびインバータINV100を含んで構成されている。
【0010】
PMOSトランジスタP100のソースは電源VDDLに接続され、ゲートはグランドに接続され、ドレインはインバータINV100の入力および電流源CS1に接続されている。電流源CS1はグランドに流れ込むように接続されている。out01a01はインバータINV100の出力ノードを表し、node01a01はPMOSトランジスタP100と電流源CS1との接続ノード(インバータINV100の入力ノード)を各々表している。なお、本例ではMOSダイオードの閾値電圧を用いた形態を例示して説明するが、これに限られず、バイポーラダイオードの閾値電圧を用いる形態としてもよい。
【0011】
一般に、MOSダイオードやバイポーラダイオードの閾値電圧は、該MOSダイオードやバイポーラダイオードに流す電流によって変化する。そして、電源電圧がMOSダイオードやバイポーラダイオードの閾値電圧以上の電圧となった場合に、被給電回路に対するリセットが解除される。
【0012】
次に、
図11(b)、(c)、(d)を参照して、パワーオンリセット回路100の動作について説明する。
図11(b)、(c)、(d)は
図11(a)に示すパワーオンリセット回路100の各部の電圧波形を示している。すなわち、
図11(a)は、電源VDDLとPMOSトランジスタP100の閾値電圧VTとの関係を、
図11(c)はノードnode01a01の波形を、
図11(d)は出力ノードout01a01の波形を各々示している。
【0013】
電源VDDLが立ち上がり中で、PMOSトランジスタP100の閾値電圧VT以下となっている間は、PMOSトランジスタP100はオンしない。そのため、PMOSトランジスタP100よりも電流源CS1が強くオンしている状態なので、
図11(c)に示すように、ノードnode01a01はロウレベル(以下、「L」)となっている。さらに電源VDDLが立ち上がり、電源VDDLがPMOSトランジスタP100の閾値電圧VT以上になったとき、PMOSトランジスタP100はオンとなり、電流源CS1以上の電流を流すようになる。その結果、ノードnode01a01はハイレベル(以下、「H」)になる。その際、出力ノードout01a01からはLが出力される。
【0014】
その結果、ノードnode01a01の電圧変化による信号は、電源VDDLが低いときはLを出力し、電源VDDLが閾値電圧VTを超えたときにHを出力する信号となる。
そのため、ノードnode01a01の電圧変化は電源VDDLの起動を知らせる信号とみることができるので、この信号を、電源VDDLのパワーオンリセット信号(電源投入時に自動的にリセットをかける信号)として用いることができる。なお、パワーオンリセット回路100は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ(以下、「NMOSトランジスタ」)N100、電流源CS2、およびインバータ101を用いて
図11(e)に示すパワーオンリセット回路100Aのように構成してもよい。
【0015】
図11(a)に示すパワーオンリセット回路100によれば、比較的簡易な回路構成でき、しかも原理的には電源電圧の立ち上がり速度にかかわらずリセットをかけることができる。しかしながら、PMOSトランジスタの閾値電圧が、0.7V程度であることが問題となる。すなわち、このことはパワーオンリセット解除時の電源VDDLの電圧が0.7V付近ということであり、これは、電源電圧の立ち上がり速度が緩やかな場合を想定すると、約0.7Vの電源VDDLの電圧でロジック回路が動き出さなければならないことを意味する。例えば、通常動作時の電源VDDLの電圧が1.2Vであるような場合、0.7Vでのパワーオンリセット解除は、解除電圧としては低すぎることになる。MOSトランジスタを2個直列に接続して2閾値電圧方式にすれば、パワーオンリセット解除時の電源VDDLの電圧は1.4V必要となり、この場合電源VDDLの電圧如何にかかわらずパワーオンリセットが解除されることはない。PMOSトランジスタに流す電流を増やして、PMOSトランジスタの閾値電圧VTを0.9V程度にするという手段もあるが、閾値電圧VTを上げるためには100倍といったオーダーで電流源の電流を多くする必要がある。すなわち、通常動作時の消費電流が増加してしまうという問題がある。
【0016】
この点特許文献1に開示されたパワーオンリセット回路は消費電流の削減を目的とするものではあるが、パワーオンリセット信号の電圧値そのものは問題としていない。
【0017】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、選択範囲が広くかつより高い電圧のパワーオンリセット信号、リセット解除信号の生成が可能であり、さらにトリミングの必要性が極力排除されるとともに消費電流の削減が可能なパワーオンリセット回路、および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るパワーオンリセット回路は、電源の起動に伴って被給電回路にリセット信号を供給するパワーオンリセット回路であって、一対の入力部に入力された電圧の差分を用いて制御電圧を出力する差動部、および前記制御電圧を用いて生成した基準電圧を前記一対の入力部の一方に帰還させる出力部を含む基準電圧生成部と、前記電源の起動に伴って変化する前記制御電圧について前記基準電圧に対する比較動作を行ってリセット解除信号を生成し前記被給電回路に供給する比較部と、を備えたものである。
【0019】
本発明に係る半導体装置は、上記のパワーオンリセット回路と、前記電源から電力が供給されるとともに前記電源の起動に伴って前記パワーオンリセット回路からリセット信号が供給される被給電回路と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、選択範囲が広くかつより高い電圧のパワーオンリセット信号、リセット解除信号の生成が可能であり、さらにトリミングの必要性が極力排除されるとともに消費電流の削減が可能なパワーオンリセット回路、および半導体装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本実施の形態では、一例として、ロジック系の電源VDDLの電圧を検知するパワーオンリセット回路を例示して説明する。ロジック系の特徴として、電源VDDLの電圧がある程度高くなってからロジック回路の初期化(パワーオンリセット解除)を行う必要がある。ここで、ロジック系の電源にリセットをかける理由は、ロジック系回路を構成するフリップフロップなどのラッチ回路、記憶回路が初期状態において不定のため、レベルシフタの出力が不定になっていることによる。なお、本実施の形態ではロジック系の電源にリセットをかける場合を例示して説明するが、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路は、アナログ系の電源のリセット回路としても使用可能である。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1から
図3を参照して、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路、および半導体装置について説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路(以下、「POR回路」)10を示している。
図1(a)に示すように、POR回路10は、PMOSトランジスタP1、P2、P3、P4、NMOSトランジスタN1、N2、N3、N4、N5、および容量C1を含んで構成されている。なお、
図1(a)に示す「5um/2um」等の表示はトランジスタのサイズの一例を示しており、各々「ゲート幅/ゲート長」を意味している。
【0025】
NMOSトランジスタN1のドレインはPMOSトランジスタP1のドレインに接続され、NMOSトランジスタN2のドレインはPMOSトランジスタP2のドレインに接続され、NMOSトランジスタN1、N2の各々のソースはNMOSトランジスタN3のドレインに接続されている。NMOSトランジスタN1のゲートはグランドに接続され(接地され)、NMOSトランジスタN2のゲートは後述する基準電圧vref(1V)のノードに接続されている。PMOSトランジスタP1、P2の各々のソースは電源VDDLに接続され、PMOSトランジスタP2のゲートとドレインが接続されている。NMOSトランジスタN3のソースはグランドに接続され、NMOSトランジスタN3のゲートにはバイアス電圧biasが印加されている。P型MOSトランジスタP1、P2はカレントミラー回路を構成し、NMOSトランジスタN1、N2、N3は、P型MOSトランジスタP1、P2を負荷とし、NMOSトランジスタN3を電流源とする差動増幅器を構成している。この差動増幅器は、後述するように基準電圧vref(1V)、パワーオンリセット信号であるpor信号を発生させるためのpgate信号(本発明に係る「制御電圧」に相当)を生成する機能を有しており、以下この差動増幅器を「差動部70」という。なお、以下の説明においては、「ノードvref(1V)」の電圧を「基準電圧vref(1V)」といい、「ノードpor」の電圧を「por信号」といい、「ノードpgate」の電圧を「pgate信号」という。また、電圧を特定しない基準電圧を「基準電圧vref」という。
【0026】
PMOSトランジスタP3のソースは電源VDDLに接続され、ドレインはNMOSトランジスタN2のゲートおよびNMOSトランジスタN4のドレインに接続され、ゲートにはPMOSトランジスタP1のドレインとNMOSトランジスタN1のドレインとの接続の電圧であるpgate信号が供給されている。NMOSトランジスタN4のドレインはPMOSトランジスタP3のドレインおよびNMOSトランジスタN2のゲートに接続され、ソースはグランドに接続され、ゲートにはバイアス電圧biasが供給されている。つまり、NMOSトランジスタN4は電流源として作用する。PMOSトランジスタP3およびNMOSトランジスタN4はpgate信号を入力として基準電圧vref(1V)を出力する出力部71を構成している。その意味において差動部70と出力部71とを併せて「基準電圧生成部」という場合がある。換言すると、基準電圧生成部は基準電圧vref(1V)を生成する負帰還増幅器とみなせる。
【0027】
PMOSトランジスタP4のソースは電源VDDLに接続され、ドレインはNMOSトランジスタN5のドレインに接続され、ゲートにはpgate信号が供給されている。NMOSトランジスタN5のドレインはPMOSトランジスタP4のドレインに接続され、ソースはグランドに接続され、ゲートにはバイアス電圧biasが供給されている。PMOSトランジスタP4およびNMOSトランジスタN5は、pgate信号と基準電圧vref(1V)との比較動作を行ってパワーオンリセット信号であるpor信号を出力する比較部72を構成している。
【0028】
図2(a)は、POR回路10を等価的に表したブロック図である。
図2(a)に示すように、POR回路10は、一方の入力IN1がグランドに接続され、他方の入力IN2に基準電圧Vref(1V)が帰還され、パワーオンリセット信号であるpor信号を出力する回路とみなすことができる。por信号は図示しないパワーオンリセットの対象回路である被給電回路に接続され、該被給電回路に対するパワーオンリセットを行う。
【0029】
図1(a)に示すように、本実施の形態に係るPOR回路10では、NMOSトランジスタN1はデプレッション型のMOS電界効果トランジスタ(以下、「DMOS」)、NMOSトランジスタN2は低閾値型のMOS電界効果トランジスタ(以下、「LVT NMOS」)とされている。DMOSとは、ゲート−ソース間電圧VGSが0Vで反転層が形成されるようにされたMOSトランジスタで、一般に閾値電圧VTが負となっている。
一方、LVT NMOSはエンハンスメント型で、閾値電圧VTは正であるが、標準的な閾値電圧VTよりも低くされている。本実施の形態では、一例として、NMOSトランジスタN1(DMOS)の閾値電圧VTは約−0.5V、NMOSトランジスタN2(LVT MOS)の閾値電圧VTは約0.45Vとされている。
【0030】
このように閾値電圧VTの異なるNMOSトランジスタで差動段を構成することにより、閾値電圧VTの差分を基準電圧として生成する回路を構成することができる。すなわち、POR回路10の差動部70は、NMOSトランジスタN1の閾値電圧VT(=−0.5V)と、NMOSトランジスタN2の閾値電圧VT(=0.45V)との差分(0.45V−(−0.5V)=0.95V≒1V)を基準電圧vrefとして出力する。なお、POR回路10から発生させる基準電圧vrefの電圧値、por信号の電圧値は、NMOSトランジスタN1、N2の閾値電圧VTを変えることによって調整が可能である。例えば、NMOSトランジスタN2として、LVT NMOSのかわりに閾値電圧VTが標準的な値であるNormalVT NMOSを用いてもよい。NMOSトランジスタN2として、例えば閾値電圧VTが約0.7VのNormalVT NMOSを用いると、約1Vの基準電圧vrefを約1.3Vとすることができる(
図3(b)に示すPOR回路10B参照)。あるいは、NMOSトランジスタN1、N2として、LVT NMOSとNormalVT NMOSとを組み合わせてもよい。この場合は、特に基準電圧vrefの電圧値、por信号の電圧値を下げる場合に好適である。
【0031】
図1(b)、(c)、(d)は、電源VDDLのグランド(0V)からの立ち上がりに伴うPOR回路10の各部の動作波形を示している。
図1(b)は、基準電圧vref(1V)の位置を示している。
図1(c)に示すように、pgate信号は電源VDDLがvref(1V)に達するまではほぼ0V、vref(1V)に到達した以降は電源VDDLの電源に追従して変化する。また、
図1(d)に示すように、por信号は所定の位置(例えば基準電圧vref(1V)が0.9V程度となる位置)において立ち上がり、電源VDDLの上昇に伴って電圧値が上昇し、電源VDDLがvref(1V)に達すると立ち下がる。すなわち、電源VDDLの上昇に伴って、パルス状のパワーオンリセット信号であるpor信号が生成される。この場合のpor信号のピーク値は約1Vとなる。
なお、後述するように、POR回路10では回路構成上の理由からpgate信号は所定の電圧値となり、0Vまで落ちきることはない。
【0032】
以下、上記のようなpgate信号、por信号が発生する理由について説明する。POR回路10の差動部70は、電源VDDLが1V(=基準電圧vref(1V)の電圧値)以下の場合、負帰還構成によりPMOSトランジスタP3をオンさせようと動作する特性を用いている。すなわち、電源VDDLが1V以下の場合、PMOSトランジスタP3をオンさせるためにpgate信号が低下する。ここで、NMOSトランジスタN2(LVT NMOS)の閾値電圧VTを「1LVT」と表記すると、pgate信号は以下の(式1)で表すことができる。
pgate=vref−1LVT ・・・ (式1)
ここでは、NMOSトランジスタN2のソース−ドレイン間の電圧を0Vとしている。また、リセットがかかっている電圧領域ではvref=VDDL(基準電圧vrefは電源VDDLに追従する)であることを考慮している。
つまり、vref=VDDLであり、かつpgate信号はNMOSトランジスタN2のドレイン端子出力であるため、pgate信号は、NMOSトランジスタN2のソース電圧である(式1)で表される電圧以下になることはない。なお、
図1に示す容量C1は位相補償用の容量である。
【0033】
換言すると、電源の起動速度が遅い場合は、VDDL=vrefであることを鑑みて、PMOSトランジスタP3はLVT PMOSとすることが好ましい。pgate信号の電圧がNMOSトランジスタN2のソース電圧以下に下がれず、PMOSトランジスタP3をオンさせることができない虞があるからである。ただし、
図3(b)に示すPOR回路10BのようにNMOSトランジスタN7としてnormalVT NMOSを用いた場合はこの限りではない。なぜならば、POR回路10Bのpgate信号の電圧は、NMOSトランジスタN2をLVT NMOSにしたときよりも低下するため、PMOSトランジスタP3を強くオンさせることができると考えられるからである。POR回路10Bは、例えば製造プロセス上等の理由からLVT MOSを用いたくない場合に有用である。
【0034】
POR回路10の動作についてより詳細に説明する。上述したように、電源VDDLが1Vに到達していない領域では、基準電圧vref(1V)を出力させるため、PMOSトランジスタP3をフルオンさせようとする。すなわち、電源VDDLが1Vに到達していない領域では、pgate信号が低下することにより、PMOSトランジスタP3とNMOSトランジスタN4とのバランスが崩れている状態となっている。つまり、PMOSトランジスタP3はNMOSトランジスタN4のバイアス電流よりも多く電流を流している。一方、電源VDDLが1Vを超えるとvref(1V)は1Vを出力することができるようになるため、逆にpgate信号はPMOSトランジスタP3をオフさせようとする。つまり、pgate信号には安定状態が存在し、その安定状態とは、PMOSトランジスタP3が、NMOSトランジスタN4のバイアス電流と均衡する電流を流すことができる状態であり、その時のPMOSトランジスタP3のゲート電圧がpgate信号の安定点である。
【0035】
従って、pgate信号をバイアス電流と比較すれば、電源検出信号、すなわちパワーオンリセット信号を作ることができる。この比較を行うのが比較部72である。つまり、電源VDDLが1Vよりも低い領域ではPMOSトランジスタP4の電流がNMOSトランジスタN5のバイアス電流に勝るようにし、逆に電源VDDLが1V以上の領域では、NMOSトランジスタN5のバイアス電流が勝るようにする。すると、ノードporから出力されるパワーオンリセット信号であるpor信号は、1V程度で安定した出力とはならず、
図1(d)に示すようなデジタル信号、すなわち、0Vか電源VDDLに沿った電圧を有する信号となる。そして、
図1(d)に示すPOR信号のピーク値は約1Vとなる。なお、比較部のNMOSトランジスタN5は、
図1(a)に示すように、PMOSトランジスタP4と比較してトランジスタサイズを大きくし、電流源としての能力を高くするのが好ましい。なお、NMOSトランジスタN5のトランジスタサイズを大きくする代わりに、
図3(a)に示すPOR回路10Aのように、PMOSトランジスタP5のトランジスタサイズを大きくしてもよい。
【0036】
差動部70のNMOSトランジスタN1、N2、N3で構成される差動アンプは基本的にフィードバックさせて(負帰還構成で)使う。本実施の形態ではNMOSトランジスタN1(DMOS)のゲートをグラウンドに接続した形態を例示しているが、別の基準電圧(vref’)と接続してもよい。その場合、出力部71の出力電圧である基準電圧vrefは、NMOSトランジスタN1、N2によるVT差基準電圧に別の基準電圧vref’が加算された電圧、vref+vref’となる。
【0037】
以上詳述したように、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路10によれば、電源VDDLの立ち上がりにおけるほぼ1V程度の電圧でリセットがかけられるパワーオンリセット回路を構成することができる。また、電源VDDLの起動が遅い場合でもリセットをかけることが可能である。さらに、電源VDDLが低いことにより基準電圧vrefが電源VDDLと等しい場合(基準電圧vrefが電源VDDLに沿って変化する場合)においてもリセットをかけることができる。ただし、この場合PMOSトランジスタP3をLVT PMOSにすることが好ましい。さらに、パワーオンリセット回路10は、biasが供給されると、自動的に(自律的に)起動するという特徴を有している。
【0038】
また、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路10によれば、パワーオンリセット信号であるpor信号の温度変動が小さい(温度変動特性が平坦である)という特徴がある。
図2(b)に、本実施の形態に係るパワーオンリセット信号porの温度変動特性S1と、従来技術に係るパワーオンリセット信号S2とを比較して示す。従来技術に係るパワーオンリセット信号S2が温度(temp)とともに低下しているのに対し、本実施の形態に係るパワーオンリセット信号S1はほぼフラットである。これは、パワーオンリセット回路10の差動部70がVT差基準電圧を生成する回路を用いているためである。すなわち、VT差基準電圧生成回路では双方の閾値電圧VTの温度変動が互いに打ち消し合い、温度変動が非常に小さくなっている。por信号の温度特性がフラットに近いと、周囲温度が変化してもほぼ同じ電圧でリセットをかけられるという利点がある。また、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路10によれば、抵抗を使用する必要がないため、回路を非常に小さく構成することができ、レイアウト面積の削減、低コスト化にも資する。
【0039】
さらに、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路10は、リセット解除電圧を上げることができるという特徴を有している。高いリセット解除電圧は例えば被給電回路の暴走を防ぐ上で有利であり、リセット解除電圧を上げられるということは、LSI(Large Scale Integration)システムを設計する上で非常に有益である。また、従来のnormalVT NMOSの1個分のVT(約0.7V)を使用したパワーオンリセット回路に比べて、リセット電圧が0.3V程度上げることが可能であり、低温などの温度変動を含めても、0.1V以上のマージンをとる余裕がある(
図2(b)参照)。また、DMOS(NMOSトランジスタN1)とnormalVT MOS(NMOSトランジスタN2)とを組み合わせて使用することで、リセット電圧を約1.2Vから1.4VV程度まで上げられる、つまり、簡易な構成でリセット電圧を高くすることができるという特徴を備えている。
【0040】
[第2の実施の形態]
図4および
図5を参照して、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路、および半導体装置について説明する。本実施の形態は、上記実施の形態に係るパワーオンリセット回路10にヒステリシス回路を追加した形態である。従って、同様の構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
図4は、本実施の形態に係るPOR回路20を示している。POR回路20は、POR回路10にヒステリシス回路HIS1、およびインバータINV1、INV2が追加された構成となっている。インバータINV1とインバータINV2とは直列に接続され、インバータINV1の出力がノードporn、インバータINV2の出力がノードporとなっている。ノードporはパワーオンリセット信号の出力ノードであり、ノードpornはパワーオンリセット信号の反転信号(補信号)の出力ノードである。
【0042】
ヒステリシス回路HIS1は、PMOSトランジスタP6、P7を含んで構成されている。PMOSトランジスタP6のソースはPMOSトランジスタP7のドレインに接続され、ドレインはPMOSトランジスタP4のドレインに接続され、ゲートはノードpgateに接続されている。PMOSトランジスタP7のソースは電源VDDLに接続され、ゲートはノードpornに接続されている。POR回路20は、PMOSトランジスタP4およびNMOSトランジスタN5を含む比較部72に、ヒステリシス回路HIS1が付加された構成となっている。
【0043】
本実施の形態では、PMOSトランジスタP4およびNMOSトランジスタN5を含む比較部72と、ヒステリシス回路HIS1とによりシュミットトリガ回路が構成されている(
図5(c)の等価ブロック図参照)。シュミットトリガ回路とは、入力電圧の変化に対して出力状態がヒステリシスを持って変化する回路であり、入力電圧が立ち上がる場合と立ち下がる場合とで出力を定める閾値が異なる。換言すると、シュミットトリガ回路は、入力に対する閾値付近に所定の幅の不感帯を有している。本実施の形態では、入力にノイズ(雑音)が重畳されている場合に、出力が頻繁に切り替わることを抑制するためにシュミットトリガ回路を用いている。
【0044】
すなわち、
図5(a)に示すように、ある電圧幅のノイズが入力に重畳されていた場合、閾値付近の入力は該閾値(基準電圧vref(1V))を上下から頻繁に横切ることになるので、出力が頻繁に切り替わる(ばたつく。いわゆる「チャタリング」とよばれる現象)。出力においてチャタリングが発生すると、消費電流の増加、あるいは、出力の接続先のシステムにおける予期しない誤動作等の懸念が生ずる。これに対し、POR回路20ではヒステリシス機能を有しているので、入力に対しいわば弱いラッチがかかり、現在の状態をなるべく長く保持しようとする。これにより、本来のリセット電圧であるノードvref(1V)電圧よりも所定の幅だけ離れた電圧で出力が切り替わる。所定の幅だけ離れた電圧とは、0Vから入力電圧を上昇させた場合には、高い閾値になり、逆に、vref(1V)の基準電圧に向けて下降させたときは、低い閾値になることである。
【0045】
図5(b)は、上述したシュミットトリガ回路の動作を概念的に表した図である。
図5(b)に示すように、シュミットトリガ回路では、雑音が重畳された入力に対し、入力が閾値に向かう方向に上昇する場合の閾値は本来の閾値より高いVTHとなり、逆に入力が閾値に向かう方向に下降する場合の閾値は本来の閾値より低いVTLとなる。この際、(VTH−VTL)をノイズ幅以上に設定しておけば、入力が本来の閾値付近に留まらないので、
図5(b)に示すように出力のチャタリングが除去される。
【0046】
図4(b)はPOR回路20の動作波形を示している。
図4(b)に示すように、電源VDDLが立ち上がる方向では、pgate信号が基準電圧vref(1V)に達してもすぐにはpor信号が切り替わらず、所定の電圧αだけ高くなってからpor信号が出力される。これは、pgate信号が上昇して、インバータINV1の入力がHになるとPMOSトランジスタP7のゲートがLになってPMOSトランジスタP7がオンとなり、ノードpgateの負荷であるPMOSトランジスタP4にPMOSトランジスタP6が追加されて重くなり、Hを維持しようとするからである。
【0047】
なお、
図4(b)には、電源VDDLが下降する場合も図示しているが、POR回路20では電源VDDLが下降する方向ではヒステリシスを設けていないので、基準電圧vref(1V)においてpor信号が立ち下がる。電源VDDLが立ち上がる方向のみでもヒステリシスの機能としては十分であるが、電源VDDLが立ち上がる方向についてもヒステリシス機能をもたせてもよい。以上の動作により、POR回路20のpor信号は
図4(c)に示す電圧波形となる。
【0048】
[第3の実施の形態]
図6および
図7を参照して、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路30について説明する。本実施の形態は、差動部にミラー回路を付加し上記実施の形態に係るPOR回路におけるノードpgateの動作点を変えた形態である。すなわち、POR回路30は、
図1(a)に示すPOR回路10に対し、PMOSトランジスタP8、P9、NMOSトランジスタN10、N11が付加されている。
【0049】
図6(a)に示すように、PMOSトランジスタP8のソースは電源VDDLに接続され、ゲートはNMOSトランジスタN1のドレインに接続され、ドレインはNMOSトランジスタN10のドレインに接続されている。NMOSトランジスタN10のドレインとゲートとは短絡されてバイアス電圧biasに接続され、ソースはグランドに接続されている。PMOSトランジスタP8およびNMOSトランジスタN10は、NMOSトランジスタN1、N2、N3を含む差動部70に対する一方のミラー回路となっている。また、PMOSトランジスタP9のソースは電源VDDLに接続され、ゲートはNMOSトランジスタN2のドレインに接続され、ドレインはNMOSトランジスタN11のドレインに接続されている。NMOSトランジスタN11のゲートはバイアス電圧biasに接続され、ソースはグランドに接続されている。PMOSトランジスタP9およびNMOSトランジスタN11は、NMOSトランジスタN1、N2、N3を含む差動部70に対する他方のミラー回路となっている。
【0050】
POR回路30では、pgate信号がPMOSトランジスタP9のドレインから取り出される。PMOSトランジスタP3、NMOSトランジスタN4を含む出力部71、PMOSトランジスタP4およびNMOSトランジスタN5を含む比較部72の構成は、
図1(a)に示すPOR回路10と同じである。従って、POR回路30を等価ブロック図で表すと
図6(e)のようになり、これは
図2(a)に示すPOR回路10の等価ブロック図と同じである。
【0051】
図6(b)、(c)、(d)は、POR回路30の動作波形を示している。上述したように、
図1(a)に示すPOR回路10では、電源VDDLが基準電圧vref(1V)である1V以下の場合、pgate信号は(式1)で表せる。すなわち、ノードpgateはNMOSトランジスタN2のドレインから取り出されているため、NMOSトランジスタN2のドレイン−ソース間電圧を約0Vとすると、NMOSトランジスタN2のソース電圧である(式1)であらわされる電圧vref−1LVT(0.45V)以下にはなれない。すなわち、POR回路10では、実際にはpgate信号が0Vまで落ちきらないので、PMOSトランジスタP3を十分にオンさせることができないという懸念があった。
【0052】
しかしながら、POR回路30では差動部70の出力をミラーリングした(折り返した)信号をpgate信号としているので、POR回路10におけるNMOSトランジスタN2による上記電圧制限がなくなる。すなわち、pgate信号は、0Vまで低下可能となる。このことにより、PMOSトランジスタP3のゲートに0Vをかけることが可能となり、PMOSトランジスタP3をフルオンさせることができる。
【0053】
上述したように、POR回路10では、PMOSトランジスタP3はLVT PMOSにすることが好ましい。これは、pgate信号がNMOSトランジスタN2のソース電圧以下に下がることがないという条件下でもPMOSトランジスタP3をオンさせることを目的としたものであった。しかしながら、POR回路30では、pgate信号を0Vまで(あるいは0V付近まで)下げることが可能なので、PMOSトランジスタP3としてLVT PMOSを使用しなくてすみ、例えばnormalVT PMOSとすることができる。
【0054】
一方、
図3(b)に示すPOR回路10Bでは、NMOSトランジスタN7としてnormalVT NMOSを採用しているので、PMOSトランジスタP3としてLVT PMOSを使用しなくてもすむ可能性があった。しかしながら、POR回路10Bの場合、素子ばらつき等によってnormalVT NMOSよりもnormalVT PMOSの方が閾値電圧VTが高い場合、差動段のNMOSの閾値電圧VTの下降分ではPMOSがオンできないことが懸念される。通常の製造プロセスでは、NMOSの閾値電圧VTとPMOSの閾値電圧VTとは近い値であることが想定されるので、この懸念に対するマージンを考慮する必要性も生ずる可能性がある。
【0055】
図7を参照して、上記点につきさらに考察する。
図7は、本実施の形態に係るPOR回路30の別形態であるPOR回路30Aを示している。POR回路30Aでは、POR回路30のNMOSトランジスタN2をnormalVTのNMOSトランジスタN7に置き換えている。つまり、差動部70の構成は
図3(b)と同じである。POR回路30Aの場合は、NMOSトランジスタN7のソースの電圧と無関係にpgate信号が出力される、つまりほぼ0Vとすることができる。その結果、POR回路30Aでも、PMOSトランジスタP3がフルオンされる。
【0056】
以上を要するに、POR回路10のようにNMOSトランジスタN2の閾値電圧VTと、PMOSトランジスタP3の閾値電圧VTとの間に積極的な関係を要求されることがないので、本実施の形態に係るPOR回路30によれば、マージン設計の観点からも、電圧選択の柔軟性の観点からも、また低電圧動作の観点からも非常に有用である。ただし、回路動作上、基準電圧vrefの電圧値をPMOSトランジスタP3の閾値電圧VTよりも高くする点には配慮する必要がある。
【0057】
[第4の実施の形態]
図8および
図9を参照して、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路について説明する。
図8(a)に示すように、本実施の形態に係るPOR回路40は、
図7に示すPOR回路30Aにおいて、NMOSトランジスタN4の部分を、抵抗R1とR2の直列回路に置き換えた形態である。基準電圧vref(1.3V)は抵抗R1と抵抗R2との接続点から取り出されている。基準電圧vref(1.3V)の値は1.3Vである。
図8(b)、(c)、(d)は、POR回路40の各部波形を示している。
【0058】
本実施の形態では抵抗R1の抵抗値と抵抗R2の抵抗値を等しくしている(抵抗R1の抵抗値と抵抗R2の抵抗値の比率は1:1である)。この場合、
図8(b)に示すように、PMOSトランジスタP3のソースであるノードvrの電圧は2.6Vとなる。従って、POR回路40を等価ブロック図で表すと
図9(a)のようになる。POR回路40では、電源VDDLが起動すると電源VDDLの電圧の1/2が電圧が、NMOSトランジスタN7のゲートにフィードバックされる。その結果、
図8(c)に示すように、差動部70のNMOSトランジスタN7の入力電圧が基準電圧vref(1.3V)の1.3Vに到達するまでは、PMOSトランジスタP3をオンさせようとするため、pgate信号は0Vを維持する。電源VDDLが基準電圧vref(1.3V)に達した後、pgate信号は電源VDDLの電圧に追従して上昇する。一方、
図8(d)に示すように、por信号は電源VDDLが基準電圧vref(1.3V)に達した時点で2.6Vに達し、その後NMOSトランジスタN5の電流源が支配的となって0Vに落ちる。
【0059】
以上のように、本実施の形態に係るPOR回路40では、抵抗R1、R2による抵抗ラダーにより分割した電圧を差動部にフィードバックすることにより、リセット解除電圧を上げることが可能になる。例えば、上記のように、抵抗R1の抵抗値と抵抗R2の抵抗値を1:1にし、フィードバックさせる基準電圧vrefを1.3Vとした場合、2.6Vでリセット解除が可能となる。つまり、リセット解除電圧を上昇させることができる。さらに、抵抗R1の抵抗値と抵抗R2の抵抗値の比率を変えることでリセット解除電圧を選択することも可能になる。これにより、より柔軟性の高い電圧選択が可能となる。なお、POR回路40では抵抗で分圧し、かつ電流を絞る構成であるため、比較的大きな抵抗値の抵抗を使用することが想定される。従って、レイアウト面積等も勘案して他の実施の形態を含めて採否を検討するのが好ましい。
【0060】
さらに、
図9(b)に示すように、3つ以上の抵抗を用いて抵抗の取り出し口を選べるようにしてもよい。例えば、リセット中はリセット電圧を上げ、リセット解除したときは、リセット電圧を下げる構成を備える回路とすることにより、リセット電圧とリセット解除電圧の選択範囲の自由度がさらに増大する。
【0061】
[第5の実施の形態]
図10を参照して、本実施の形態に係るパワーオンリセット回路について説明する。本実施の形態は、基準電圧の生成にバイポーラトランジスタによるバンドギャップを用い、さらにDMOSを使用しない構成とした形態である。
図10(a)は本実施の形態に係るPOR回路50を示す回路図であり、
図10(b)、(c)、(d)はPOR回路50の各部動作波形、
図10(e)はPOR回路50の等価ブロック図を各々示している。
【0062】
上記各実施の形態では、DMOSを使用した基準電圧生成部を採用していた。DMOSは負の閾値電圧VTを有している点に特徴があり、上記各実施の形態ではこの特徴を生かして基準電圧を発生させていた。しかしながら、他方では当然ながら製造プロセスにDMOS形成工程が含まれている必要がある。そのため製造工程におけるマスク枚数がその分多くなるという欠点がある。つまり、DMOSを用いなで基準電圧を生成させることができれば、製造工程がより簡素化され、低コスト化にも資する。
【0063】
図10(a)に示すように、POR回路50は、
図7に示すPOR回路30Aにバンドギャップ部73を付加し、DMOSのNMOSトランジスタN1をnormalVT NMOSのNMOSトランジスタN12に置き換えて構成されている。またPOR50ではPMOSトランジスタP3の部分に比較的大きな電流が流れるので、サイズの大きなPMOSトランジスタP10に変更されている。
【0064】
バンドギャップ部73は、NPNトランジスタBN1、BN2、BN3、BN4、および抵抗R6、R7、R8を含んで構成されている。バンドギャップ部73は、半導体のバンドギャップを用いてノードvref(2.4V)に温度変動、電源変動が抑制された基準電圧vref(2.4V)を発生させる回路部である。本実施の形態ではNPNトランジスタBN1およびBN2によって一方の2段積みのダイオードが構成され、NPNトランジスタBN3およびBN4によって他方の2段積みダイオードが構成されている。また、本実施の形態ではNPNトランジスタBN1およびBN2が各々1つのダイオードから構成され(
図10(a)ではm=1と表記)、NPNトランジスタBN3およびBN4がn個の並列ダイオードから構成されている(
図10(a)ではm=nと表記)。
【0065】
バンドギャップ部73では、ノードaとノードbとがバーチャルショート(イマジナリーショート)となるように動作し、その結果NPNトランジスタBN1の側に電流I1が流れ、NPNトランジスタBN3の側に電流I2が流れる。このことにより、温度変動、電源電圧変動の抑制された基準電圧vref(2.4V)が生成される。基準電圧vref(2.4V)の電圧値は2.4Vであるが、この電圧は縦積みするNPNトランジスタ(ダイオード)の数により変えることが可能である。
【0066】
POR回路50に係るpgate信号は、
図10(c)に示すように、電源VDDLの電圧が基準電圧vref(2.4V)に達するまでは0Vであるが、基準電圧vref(2.4V)に到達した以後は電源VDDLに追従して変化する。また、por信号は、
図10(d)に示すように、電源VDDLが所定の値となった時点で電源VDDLに追従して変化し、pgate信号が基準電圧vref(2.4V)となった時点で0Vに落ちる。本実施の形態に係るリセット解除電圧は約2.4V、つまり
図10(d)に示すpor信号のピーク値は約2.4Vである。
【0067】
本実施の形態に係るパワーオンリセット回路50によれば、DMOSを使用しないのでマスク数を削減することが可能であり、その結果製造工程がより簡素化される。また、バイアス電流源を別バイアス源などで直接電流コントロールすることによって、面積の縮小化が図れる。さらに、バンドギャップ部73の縦積みダイオードの段数を変えることによって、リセット解除電圧を変えることができる。さらに、バンドギャップレファレンスの特徴を生かし、製造ばらつき等を抑える設計をすれば、ばらつきによる影響を抑制することが可能である。すなわち、トリミングをしなくても、リセット電圧、リセット解除電圧の制度を±50mV程度、あるいは±100mV程度などに納めることが可能になる。これにより、例えば、動作可能電圧が1.5V以上で、かつ、動作仕様が1.6V以上であっても、1.55V±50mVでリセットを解除することが可能となる。
【0068】
なお、上記各実施の形態では、各々の実施の形態を独立したものとして説明したが、これらを適宜組み合わせた形態としてもよい。例えば、上記POR回路50に、POR回路20に含まれるヒステリシス回路を備えさせてもよい。このことにより、チャタリングが抑制されるとともに、リセット電圧、リセット解除電圧の選択範囲の拡大されたPOR回路を得ることができる。あるいは、POR回路40と50とを組み合わせれば、リセット電圧、リセット解除電圧の選択範囲がさらに拡大される。
【0069】
上記実施の形態では、出力段のPMOS(例えば、
図1(a)に示す出力部71のPMOSトランジスタP3)を電源VDDLが立ち上がるにつれてオンさせようとする動作を用いた形態を例示して説明したが、これに限られず、出力段のNMOSをオフさせようとする動作を用いた形態としてもよい。すなわち、上記各実施の形態では、差動部70の出力を、出力段のPMOS(PMOSトランジスタP3、P4)に接続した形態としているが、差動部70の出力をNMOSに接続するようにすればよい。このような構成によれば、電源VDDLの電圧が低電圧である領域では出力段のNMOSがオフとなり、電源VDDLの電圧が基準電圧vrefを超えた後、出力段のNMOSがオンとなる。さらに、上記各実施の形態ではグラウンドを基準として各部の電圧を生成する形態を例示して説明したが、これに限られず、所定の電源電圧を基準として各部の電圧を生成する形態としてもよい。