【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0042】
<見かけ比重>
電子比重計(EW−300SG、アズワン)を用いてアルキメデス法により測定した。
【0043】
<有価金属回収量>
有価金属イオンを含有する液体(30ml)に金属捕集材を一定期間浸漬させたあと、液体中の有価金属の濃度を測定する。また、一定期間浸漬した後に金属捕集材を取り出し、105℃で1昼夜乾燥する。それを粉砕後、付着回収した有価金属を硝酸に溶解し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)で分析して、有価金属の回収量を求めた。
【0044】
<原材料>
金属粉
・鉄粉(竹内工業株式会社製 鋳鉄粉 28メッシュアンダー品 炭素:2〜4重量%、Si:4重量%以下、Mn:0.5〜1.5重量%、P:0.03重量%以下、S:0.03重量%以下)
・アルミウム粉(関東化学株式会社製 粒子径:45μm)
固体炭素質の前駆体
・コールタールピッチ(新日鉄住金化学株式会社製 軟化点:85℃、固定炭素分:58重量%、50メッシュアンダー)
炭素骨材
・ピッチコークス粉(新日鉄住金化学株式会社製 200メッシュアンダー、50〜200メッシュ、6〜9メッシュ)
・ピッチコークス塊(新日鉄住金化学株式会社製 2〜5g)
造粒助剤
・でんぷん(沼田製粉株式会社 ライバインダー 主成分:でんぷん 約80% 嵩比重 約0.5)
【0045】
<金属捕集材(形態1)の作製>
所定量の原料(金属粉、固体炭素質の前駆体、炭素骨材、造粒助剤)を混合攪拌機で混合・混練した後、混合物をハンドプレスを使用して、10MPaの条件で、直径20mm、厚み2〜6mmの円盤状の造粒物を作製した。
作製した造粒物は、コークス粉が詰められた還元雰囲気焼成炉を用いて100℃/時間で昇温し、900℃で2時間焼成し、50℃以下になるまで炉内で自然放冷して焼結体を取り出した。
【0046】
<金属捕集材(形態2)の作製>
所定量の原料(金属粉、固体炭素質の前駆体)を混合攪拌機で混合した後、混合物をパンペレタイザー(型式1237−S−3 株式会社吉田製作所)に投入した。また、予め空気雰囲気下において高温炉230℃で2時間熱処理した炭素骨材(ピッチコークス塊 大きさ1〜5cm)を混合物が投入されたパンペレタイザーに30rpmで回転させながら投入して、3分間回転して炭素骨材表面に金属粒子が付着した複合体を作製した。
作製した複合体は、コークス粉が詰められた還元雰囲気焼成炉を用いて100℃/時間で昇温し、900℃で2時間焼成し、50℃以下になるまで炉内で自然放冷して焼結体を取り出した。
【0047】
[実施例1〜3]
金属粉としてアルミニウム粉、固体炭素質の前駆体としてのコールタールピッチ、炭素骨材としてのピッチコークス粉に造粒助剤としてでんぷん水溶液を使用して、形態1の金属捕集材を作製した。
作製した金属捕集材を、亜鉛、コバルト、銅をそれぞれ溶解した水溶液30mlをいれたサンプル瓶に浸漬し、常温常圧下で7日間放置した後、亜鉛、コバルト、銅の濃度を測定した。
表1に金属捕集材の金属含有量、炭素量、浸漬試験、見かけ比重及び有価金属回収量の結果について示す。
【0048】
[実施例4]
実施例1〜3と同様の原料を使用して、表1の実施例4に記載される形態2の金属捕集材を作製した。
作製した金属捕集材は、銅を溶解した水溶液30mlをいれたサンプル瓶に金属捕集材を浸漬し、常温常圧下で7日間放置した後、銅の濃度を測定した。
表1に金属捕集材の金属含有量、炭素量、浸漬試験、見かけ比重及び有価金属回収量の結果について示す。
【0049】
[実施例5、6]
金属粉に鉄粉を使用した以外は実施例1〜3と同様にして、表1の実施例5〜6に記載される形態1の金属捕集材を作製した。
作製した金属捕集材は、亜鉛、コバルト、銅をそれぞれ溶解した水溶液30mlをいれたサンプル瓶に金属捕集材を浸漬し、常温常圧下で7日間放置した後、亜鉛、コバルト、銅の濃度を測定した。
表1に金属捕集材の金属含有量、炭素量、浸漬試験、見かけ比重及び有価金属回収量の結果について示す。
【0050】
[実施例7]
実施例5、6と同様の原料を使用して、表1の実施例7に記載される形態2の金属捕集材を作製した。
作製した金属捕集材は、銅を溶解した水溶液30mlをいれたサンプル瓶に金属捕集材を浸漬し、常温常圧下で7日間放置した後、銅の濃度を測定した。
表1に金属捕集材の金属含有量、炭素量、浸漬試験、見かけ比重及び有価金属回収量の結果について示す。
【0051】
[実施例8]
実施例5、6と同様の原料を使用して、表1の実施例8に記載される形態1の金属捕集材を作製した。
作製した金属捕集材は、コバルトと銅を溶解した水溶液30mlを入れたサンプル瓶に金属捕集材を浸漬し、常温常圧かで7日間放置した後、コバルトと銅の濃度をそれぞれ測定した。
表1に金属捕集材の金属含有量、炭素量、浸漬試験、見かけ比重及び有価金属回収量の結果について示す。
【0052】
[実施例9]
金属粉として鉄粉とアルミニウム粉を1:1の重量比で配合物を使用したこと以外は実施例8と同様にして形態1の金属捕集材を作製した。
作製した金属捕集材は、銅を溶解した水溶液30mlをいれたサンプル瓶に金属捕集材を浸漬し、常温常圧下で7日間放置後、銅の濃度を測定した。
表1に金属捕集材の金属含有量、炭素量、浸漬試験、見かけ比重及び有価金属回収量の結果について示す。
【0053】
[実施例10〜12、14〜16]
実施例5、6と同様にして作製した形態1の金属捕集材をコバルトおよび銅がそれぞれ溶解した水溶液に浸漬し、常温常圧下で7日間ごとにコバルトおよび銅が溶解した水溶液を全量交換しながら浸漬試験を4週間の間行った。
表2に金属捕集材の金属含有量、炭素量、見かけ比重及び4週間の浸漬試験の結果を示す。
【0054】
[実施例13、17]
実施例4と同様にして作製した形態2の金属捕集材をコバルトおよび銅が溶解した水溶液に浸漬し、常温常圧下で7日間ごとにコバルトおよび銅が溶解した水溶液を全量交換しながら浸漬試験を4週間の間行った。
表2に金属捕集材の金属含有量、炭素量、見かけ比重及び4週間の浸漬試験の結果を示す。
【0055】
[実施例18]
実施例5、6と同様にして作製した形態1の金属捕集材をコバルトと銅が溶解した水溶液に浸漬し、常温常圧下で7日間ごとにコバルトおよび銅が溶解した水溶液を全量交換しながら浸漬試験を4週間の間行った。
表2に金属捕集材の金属含有量、炭素量、見かけ比重及び4週間の浸漬試験の結果を示す。
【0056】
[実施例19]
実施例9と同様にして作製した形態1の金属捕集材を銅が溶解した水溶液に浸漬し、常温常圧下で7日間ごとに水溶液を全量交換しながら4週間放置した。
表2に金属捕集材の金属含有量、炭素量、見かけ比重及び4週間の浸漬試験の結果を示す。
【0057】
[比較例1〜6]
鉄粉または、アルミニウム粉1.00gを亜鉛、コバルト、銅をそれぞれ溶解した水溶液に浸漬し、常温常圧環境下において7日間放置した後、亜鉛、銅、コバルトの濃度を測定した。
また、7日間ごとに亜鉛、コバルト、銅が溶解した水溶液を全量交換しながら浸漬試験を4週間の間行った。
表3に金属含有量、炭素量、真比重及び4週間の浸漬試験の結果を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表1〜2に示すように、金属粒子と炭素の焼結体である実施例1〜19の金属捕集材は、金属粉単独である比較例1〜6(表3を参照)に比べて、局部電池作用によって金属捕集材に使用されている金属よりも電位の高い有価金属を、水中から高効率で捕集することができる。
また、有価金属を水酸化物の沈殿に含ませることによる捕集が主体ではなく、金属捕集材に表面に金属体として析出させるので回収が容易であり、浸漬期間を長くしてより大量の有価金属を析出させて回収することも可能である。
このように、本発明の金属捕集材は、例えば、海底熱水鉱床から噴出する熱水や温泉や鉱泉、鉱山廃水などから、低コストで有価金属を回収する場合に好適な材料であることが確認された。
【0062】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。