【解決手段】非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層を有し、i)非熱可塑性ポリイミドは剛直ジアミン残基及び屈曲ジアミン残基の合計100モル部に対して、剛直ジアミン残基が75〜95モル部、屈曲ジアミン残基が5〜25モル部;(ii)剛直ジアミン残基の100モル部に対して、(A1)から誘導されるジアミン残基が40〜90モル部、パラフェニレンジアミン残基が5〜55モル部;(iii)屈曲ジアミン残基を含み;(iv)熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、ジアミン残基を40モル部以上含有するポリイミドフィルム
一般式(B1)で表されるジアミン化合物が、1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼンであり、一般式(B2)で表されるジアミン化合物が、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンである請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
<ポリイミドフィルム>
本実施の形態のポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方に熱可塑性ポリイミド層を有し、上記条件(i)〜(iv)を満たすものである。熱可塑性ポリイミド層は非熱可塑性ポリイミド層の片面又は両面に設けられている。例えば本実施の形態のポリイミドフィルムと金属層から構成される金属張積層板とする場合、銅層は熱可塑性ポリイミド層の面に積層する。
ここで、非熱可塑性ポリイミドとは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10
9Pa以上であり、320℃における貯蔵弾性率が3.0×10
8Pa以上を示すポリイミドをいう。また、熱可塑性ポリイミドとは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、DMAを用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10
9Pa以上であり、320℃における貯蔵弾性率が3.0×10
8Pa未満を示すポリイミドをいう。
【0024】
(非熱可塑性ポリイミド)
本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含む。テトラカルボン酸残基及びジアミン残基は、いずれも芳香族基を含むものであることが好ましい。芳香族基とすることで、高温環境下でのポリイミドフィルムの熱分解や寸法変化を抑制することができる。
【0025】
テトラカルボン酸残基:
非熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基としては、特に制限はないが、例えば3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等から誘導されるテトラカルボン酸残基が好ましく挙げられる。これらの中でも特に、BPDAから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「BPDA残基」ともいう。)は、秩序構造を形成しやすく、高温環境下での寸法変化を抑えることができるので特に好ましい。一方で、BPDA残基は、ポリイミド中の含有割合が高くなると分子の面内配向性が低下しCTEが増加しやすい。従って、BPDA残基は、非熱可塑性ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、好ましくは10モル部以上60モル部以下の範囲内、より好ましくは10モル部以上30モル部以下の範囲内がよい。
【0026】
非熱可塑性ポリイミドに含まれる他のテトラカルボン酸残基としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「PMDA残基」ともいう。)が好ましく挙げられる。PMDA残基は、熱可塑性ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、好ましくは40モル部以上90モル部以下の範囲内、より好ましくは70モル部以上90モル部以下の範囲内がよい。PMDA残基は熱膨張係数の制御とガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。
【0027】
非熱可塑性ポリイミドに含まれる、さらに他のテトラカルボン酸残基としては、例えば、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
【0028】
ジアミン残基:
非熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基は、剛直ジアミン残基及び屈曲ジアミン残基を含む。ここで、「剛直ジアミン残基」とは、主鎖としてp−フェニレン構造、p−ビフェニレン構造又はp−テルフェニレン構造のいずれかを有するジアミン化合物から誘導されるジアミン残基をいう。剛直ジアミン残基は、かかる構造によって、非熱可塑性ポリイミドの面内配向性を高めることでフィルムの低CTE化を可能とし、高温環境下での寸法変化を抑制するように作用する。
【0029】
一方、「屈曲ジアミン残基」とは、主鎖に3つ以上のベンゼン環を有するとともに、隣接するベンゼン環が−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−NH−又は−NHCO−のいずれかの連結基で連結されているジアミン残基をいう。屈曲ジアミン残基は、上記の連結基部分が屈曲性を有するため、非熱可塑性ポリイミドに柔軟性を付与し、弾性率の上昇を抑制するように作用する。
【0030】
本実施の形態では、非熱可塑性ポリイミドに含まれる剛直ジアミン残基及び屈曲ジアミン残基の合計100モル部に対して、剛直ジアミン残基が75モル部以上95モル部以下の範囲内であり、85モル部以上95モル部以下の範囲内であることが好ましい。
また、非熱可塑性ポリイミドに含まれる剛直ジアミン残基及び屈曲ジアミン残基の合計100モル部に対して、屈曲ジアミン残基が5モル部以上25モル部以下の範囲内であり、5モル部以上15モル部以下の範囲内であることが好ましい。
非熱可塑性ポリイミドに含まれる剛直ジアミン残基及び屈曲ジアミン残基の合計100モル部に対して、剛直ジアミン残基が75モル部未満では(つまり、屈曲ジアミン残基が25モル部を超えると)、非熱可塑性ポリイミドの面内配向性の低下による高CTE化により、高温環境下での寸法変化が大きくなり、95モル部を超えると(つまり、屈曲ジアミン残基が5モル部未満では)、非熱可塑性ポリイミドの弾性率が高くなりすぎ、柔軟性が損なわれる傾向がある。
【0031】
剛直ジアミン残基の代表例として、下記の一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基(以下、「A1残基」と記すことがある)、パラフェニレンジアミン(p−PDA)から誘導されるジアミン残基(以下、「PDA残基」と記すことがある)を挙げることができる。A1残基及びPDA残基は、分子の面内配向性や分子の直線性を高め易いことから、非熱可塑性ポリイミドに剛直性を付与し、高温環境下での寸法変化を抑えることができる。また、A1残基は、PDA残基に比較して分子量が大きいため、非熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度を下げ、極性基を少なくすることによって吸湿性を改善できる(つまり、低吸湿性にできる)。
【0033】
式(A1)において、連結基Xは単結合を示し、Yは独立に水素、炭素数1〜3の1価の炭化水素基、アルコキシ基又はトリフルオロメチル基を示し、nは1〜2の整数を示し、p及びqは独立に0〜4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(A1)において、複数の置換基Y、整数p、qが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0034】
A1残基の好ましい具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EB)、2,2’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EOB)、2,2’−ジプロポキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−POB)、2,2’−n−プロピル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−NPB)、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。これらの中でも特に、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)は、p−PDAと比較し分子量が大きいが、ポリイミドの面内配向性は低下しないため、高温環境下での寸法変化を抑えるとともに、非熱可塑性しポリイミドのイミド基濃度を下げ、吸湿性を改善して低吸湿性にすることができるので特に好ましい。
【0035】
なお、本明細書において、「ジアミン化合物」は、末端の二つのアミノ基における水素原子が置換されていてもよく、例えば−NR
3R
4(ここで、R
3,R
4は、独立にアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0036】
本実施の形態では、非熱可塑性ポリイミドに含まれる剛直ジアミン残基の100モル部に対して、A1残基が40モル部以上90モル部以下の範囲内であり、60モル部以上90モル部以下の範囲内が好ましい。非熱可塑性ポリイミドに含まれる剛直ジアミン残基の100モル部に対して、A1残基が40モル部未満では、非熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度が高くなって吸湿性が高くなり、分子鎖内部の水分の影響により温度変化に対する寸法安定性が損なわれるとともに、誘電正接が増加し、90モル部を超えると弾性率の増加によりフィルムの曲げ性の低下の原因となる。
【0037】
また、本実施の形態では、非熱可塑性ポリイミドに含まれる剛直ジアミン残基の100モル部に対して、PDA残基が5モル部以上55モル部以下の範囲内であり、10モル部以上40モル部以下の範囲内が好ましい。非熱可塑性ポリイミドに含まれる剛直ジアミン残基の100モル部に対して、PDA残基が5モル部未満では、高温時における弾性率が低下しやすくなり、加熱後の寸法安定性の低下の原因となり、55モル部を超えると、PDA残基は低分子量であるためにイミド基濃度が高くなり、極性基が増加して吸湿性が高くなってしまい、分子鎖内部の水分の影響により温度変化に対する寸法安定性が損なわれるとともに、誘電正接が増加する。
【0038】
本実施の形態では、非熱可塑性ポリイミドに含まれる屈曲ジアミン残基として、例えば下記の一般式(B1)及び(B2)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも一種から誘導されるジアミン残基を含むことが好ましい。これらの屈曲ジアミン残基を含むことによって、非熱可塑性ポリイミドの弾性率が下がり、ポリイミドフィルムとした場合の伸度及び折り曲げ耐性等が向上する。なお、一般式(B1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を「B1残基」、一般式(B2)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を「B2残基」と記すことがある。
【0040】
式(B1)及び(B2)において、R
5、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ独立に水素原子、又はハロゲン原子、あるいは炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、アルコキシ基若しくはアルケニル基を示し、Xは独立に−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−NH−又は−NHCO−から選ばれる2価の基を示し、X
1及びX
2はそれぞれ独立に単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−NH−又は−NHCO−から選ばれる2価の基を示すが、X
1及びX
2の両方が単結合である場合を除くものとし、m、n、o及びpは独立に1〜4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(B1)、(B2)の内の一つにおいて、または両方において、複数の連結基X、連結基X
1、X
2、複数の置換基R
5、R
6、R
7、R
8、さらに、整数m、n、o、pが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0041】
B1残基及びB2残基は、屈曲性の部位を有するので、ポリイミドフィルムに柔軟性を付与することができる。ここで、一般式(B2)で表されるジアミン残基は、ベンゼン環が4個であるので、熱膨張係数(CTE)の増加を抑制するために、ベンゼン環に結合する末端基はパラ位とすることが好ましい。また、ポリイミドフィルムに柔軟性を付与しながら熱膨張係数(CTE)の増加を抑制する観点から、非熱可塑性ポリイミドに含まれる全ジアミン残基の100モル部に対して、B1残基及びB2残基の合計量が好ましくは5〜30モル部の範囲内、より好ましくは5〜15モル部の範囲内がよい。B1残基及びB2残基の合計量が5モル部未満であると、ポリイミドフィルムの弾性率が高くなり過ぎ、柔軟性と伸度が低下し、折り曲げ耐性の低下が生じることがあり、30モル部を超えると、分子の配向性が低下し、低CTE化が困難となることがある。
【0042】
一般式(B1)において、基R
5、R
6及びR
7の好ましい例としては、水素原子又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若しくはアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(B1)において、連結基Xの好ましい例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。一般式(B1)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、ビス(4‐アミノフェノキシ)−2,5−ジ−tert−ブチルベンゼン(DTBAB)、4,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BAPK)、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
また、一般式(B2)において、基R
5、R
6、R
7及びR
8の好ましい例としては、水素原子又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若しくはアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(B2)において、連結基X
1及びX
2の好ましい例としては、単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。但し、屈曲部位を付与する観点から、連結基X
1及びX
2の両方が単結合である場合を除くものとする。一般式(B2)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0043】
本実施の形態では、一般式(B1)で表されるジアミン化合物が1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)であり、一般式(B2)で表されるジアミン化合物が2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)であることが最も好ましい。TPE−R及びBAPPは、優れた屈曲性を有するので、ポリイミドフィルムの弾性率を低下させ、柔軟性を付与することができる。また、BAPPは分子量が大きいため、イミド基濃度を下げる効果も期待できる。
【0044】
非熱可塑性ポリイミドに含まれる他のジアミン残基としては、例えば、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(4,4'-DAPE)、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパン、3,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等の芳香族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0045】
非熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、貯蔵弾性率、引張弾性率等を制御することができる。また、非熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
【0046】
非熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度は、36重量%以下であることが好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(−(CO)
2−N−)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が36重量%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化する。上記酸無水物とジアミン化合物の組み合わせを選択することによって、非熱可塑性ポリイミド中の分子の配向性を制御することで、イミド基濃度低下に伴うCTEの増加を抑制し、低吸湿性を担保している。
【0047】
非熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000〜400,000の範囲内が好ましく、50,000〜350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、ポリイミドフィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0048】
(熱可塑性ポリイミド)
本実施の形態において、熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含む。熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基は、いずれも芳香族基を含むものであることが好ましい。芳香族基とすることで、加熱時における重量減少率やピール強度の低下を抑制することができる。
【0049】
テトラカルボン酸残基:
熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基としては、特に制限はないが、例えば3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等から誘導されるテトラカルボン酸残基が好ましく挙げられる。これらの中でも特に、BPDAから誘導されるBPDA残基は、秩序構造を形成しやすく、高温環境下での寸法変化を抑えることができるので特に好ましい。従って、BPDA残基は、熱可塑性ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、好ましくは1モル部以上90モル部以下の範囲内、より好ましくは1モル部以上70モル部以下の範囲内がよい。
【0050】
熱可塑性ポリイミドに含まれる他のテトラカルボン酸残基としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(PMDA残基)が好ましく挙げられる。PMDA残基は、熱可塑性ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、好ましくは10モル部以上99モル部以下の範囲内、より好ましくは30モル部以上99モル部以下の範囲内がよい。PMDA残基は、熱膨張係数の制御とガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。
【0051】
熱可塑性ポリイミドに含まれる上記以外のテトラカルボン酸残基としては、上記非熱可塑性ポリイミドで例示したものと同様の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
【0052】
ジアミン残基:
熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、上記一般式(B1)及び(B2)から選ばれる少なくとも一種のジアミン残基を挙げることができる。B1残基及びB2残基から選ばれる少なくとも一種のジアミン残基を、熱可塑性ポリイミドに含まれる全ジアミン残基の100モル部に対して、40モル部以上であることが好ましく、60モル部以上であることがより好ましい。B1残基及びB2残基から選ばれる少なくとも一種のジアミン残基を、熱可塑性ポリイミドに含まれる全ジアミン残基の100モル部に対して40モル部以上含むことによって、熱可塑性ポリイミドに高い柔軟性を付与して接着性を高めるとともに、イミド基濃度を低減させ、極性基を少なくすることによって吸湿性を改善できる(つまり、低吸湿性にできる)。
【0053】
本実施の形態において、熱可塑性ポリイミドに含まれる上記B1残基及びB2残基以外のジアミン残基としては、例えば、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EB)、2,2’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EOB)、2,2’−ジプロポキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−POB)、2,2’−n−プロピル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−NPB)、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、p‐フェニレンジアミン(p−PDA)、m‐フェニレンジアミン(m−PDA)、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を挙げることができる。
【0054】
本実施の形態のポリイミドフィルムでは、熱可塑性ポリイミド層を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン残基として、上述の非熱可塑性ポリイミド層を構成するテトラカルボン酸残基及び屈曲ジアミン残基と類似した構造のテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有することが好ましく、同じ種類のテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有することがより好ましい。この場合、熱可塑性ポリイミド層と非熱可塑性ポリイミド層では、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の配合比率は異なるものとなるが、キャスト法によってポリイミドフィルムを形成する際に、熱可塑性ポリイミド層と非熱可塑性ポリイミド層の配向制御が容易になり、寸法精度を管理しやすくなるからである。また、熱可塑性ポリイミド層と非熱可塑性ポリイミド層間の密着性が向上し、層間でのはく離が生じにくい。このような観点から、本実施の形態のポリイミドフィルムでは、非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミド層を構成するテトラカルボン酸残基として、いずれもBPDA残基及びPMDA残基を含有することが最も好ましい。また、非熱可塑性ポリイミド層の屈曲ジアミン残基及び熱可塑性ポリイミド層を構成するジアミン残基として、いずれも上記一般式(B1)及び(B2)から選ばれる少なくとも一種のジアミン残基を含有することが最も好ましい。
【0055】
熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
【0056】
熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度は、33重量%以下であることが好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(−(CO)
2−N−)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が33重量%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなることで、イミド基濃度が増加しガラス転移温度が増加し、金属箔の熱圧着が困難となる。上記酸無水物とジアミン化合物の組み合わせを選択することによって、熱可塑性ポリイミド中の分子の配向性を制御するとともに、ガラス転移温度の制御ならびに低吸湿性を担保している。
【0057】
熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000〜400,000の範囲内が好ましく、50,000〜350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、ポリイミドフィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0058】
(非熱可塑性ポリイミド及び熱可塑性ポリイミドの合成)
一般にポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5〜30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0059】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps〜100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0060】
(ポリイミドフィルムの形態)
本実施の形態のポリイミドフィルムは、フィルム(シート)であってもよく、銅箔、ガラス板、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂シート等の基材に積層された状態のフィルムであってもよい。
【0061】
(熱膨張係数)
本実施の形態のポリイミドフィルムは、例えば回路基板の絶縁層として適用する場合において、反りの発生や寸法安定性の低下を防止するために、熱膨張係数(CTE)が15ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内であることが好ましい。CTEが15ppm/K未満であるか、又は25ppm/Kを超えると、反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。また、本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、銅箔などからなる金属層のCTEに対してポリイミドフィルムのCTEが、±5ppm/K以下の範囲内が好ましい。
【0062】
本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、非熱可塑性ポリイミド層は低熱膨張性のポリイミド層を構成し、熱可塑性ポリイミド層は高熱膨張性のポリイミド層を構成する。ここで、低熱膨張性のポリイミド層は、熱膨張係数(CTE)が好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内、より好ましくは3ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。また、高熱膨張性のポリイミド層は、CTEが好ましくは35ppm/K以上、より好ましくは35ppm/K以上80ppm/K以下の範囲内、更に好ましくは35ppm/K以上70ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。ポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望のCTEを有するポリイミド層とすることができる。
【0063】
(ポリイミドフィルムの厚み・層厚み比率)
本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、ポリイミドフィルムの厚みは、使用する目的に応じて、所定の範囲内の厚みに設定することができる。ポリイミドフィルムの厚みは、例えば8〜50μmの範囲内にあることが好ましく、11〜26μmの範囲内にあることがより好ましい。ポリイミドフィルムの厚みが上記下限値に満たないと、電気絶縁性が担保出来ないことや、ハンドリング性の低下により製造工程にて取扱いが困難になるなどの問題が生じることがある。一方、ポリイミドフィルムの厚みが上記上限値を超えると、製造条件を高精度に制御する必要があり、生産性低下などの不具合が生じる。
【0064】
また、本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層との厚み比(非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層)が1.5〜6.0の範囲内であることがよい。この比の値が、1.5に満たないとポリイミドフィルム全体に対する非熱可塑性ポリイミド層が薄くなるため、寸法変化が大きくなりやすく、6.0を超えると熱可塑性ポリイミド層が薄くなるため、ポリイミドフィルムと銅層との接着信頼性が低下しやすくなる。
【0065】
(ガラス転移温度)
本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、熱可塑性ポリイミド層を構成するポリイミドは、銅層との密着性を向上させることができる。このような熱可塑性ポリイミドは、ガラス転移温度(Tg)が200℃以上350℃以下の範囲内、好ましくは200℃以上320℃以下の範囲内である。
【0066】
(フィルム幅)
本実施の形態のポリイミドフィルムは、寸法精度の改善効果をより大きく発現させる観点から、フィルム幅が490mm以上1100mm以下の範囲内であり、長尺状の長さが20m以上のものが好ましい。本実施の形態のポリイミドフィルムが連続的に製造される場合、幅方向(以下、TD方向ともいう。)が広いフィルムほど発明の効果が特に顕著となる。なお、本実施の形態のポリイミドフィルムが連続的に製造された後、長尺なポリイミドフィルムの長手方向(以下、MD方向とも言う)及びTD方向にある一定の値でスリットされたフィルムも含まれる。
【0067】
(引張弾性率)
本実施の形態のポリイミドフィルムの引張弾性率は3.0〜10.0GPaの範囲内であることが好ましく、4.5〜9.0GPaの範囲内であるのがより好ましい。ポリイミドフィルムの引張弾性率が3.0GPaに満たないとポリイミド自体の強度が低下することによって、金属張積層板を回路基板へ加工する際にフィルムの裂けなどのハンドリング上の問題が生じることがある。反対に、ポリイミドフィルムの引張弾性率が10.0GPaを超えると、金属張積層板の折り曲げに対する剛性が上昇する結果、金属張積層板を折り曲げた際に銅配線に加わる曲げ応力が上昇し、折り曲げ耐性が低下してしまう。ポリイミドフィルムの引張弾性率を上記範囲内とすることで、ポリイミドフィルムの強度と柔軟性を担保する。
【0068】
<ポリイミドフィルムの製造方法>
本実施の形態のポリイミドフィルムの製造方法の態様として、例えば、[1]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法、[2]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法がある。また、本実施の形態のポリイミドフィルムは、複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムであるので、その製造方法の態様としては、例えば[3]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥することを複数回繰り返した後、イミド化を行う方法(以下、キャスト法)、[4]多層押出により、同時にポリアミド酸を多層に積層した状態で塗布・乾燥した後、イミド化を行う方法(以下、多層押出法)などが挙げられる。
【0069】
上記[1]の方法は、例えば、次の工程1a〜1c;
(1a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(1b)支持基材上でポリアミド酸を熱処理してイミド化することによりポリイミド層を形成する工程と、
(1c)支持基材とポリイミド層とを分離することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
【0070】
上記[2]の方法は、例えば、次の工程2a〜2c;
(2a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(2b)支持基材とポリアミド酸のゲルフィルムとを分離する工程と、
(2c)ポリアミド酸のゲルフィルムを熱処理してイミド化することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
【0071】
上記[3]の方法は、上記[1]の方法又は[2]の方法において、工程1a又は工程2aを複数回繰り返し、支持基材上にポリアミド酸の積層構造体を形成する以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
【0072】
上記[4]の方法は、上記[1]の方法の工程1a、又は[2]の方法の工程2aにおいて、多層押出により、同時にポリアミド酸の積層構造体を塗布し、乾燥させる以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
【0073】
本発明で製造されるポリイミドフィルムは、支持基材上でポリアミド酸のイミド化を完結させることが好ましい。ポリアミド酸の樹脂層が支持基材に固定された状態でイミド化されるので、イミド化過程におけるポリイミド層の伸縮変化を抑制して、ポリイミドフィルムの厚みや寸法精度を維持することができる。
【0074】
しかし、支持基材上でポリアミド酸のイミド化を完結させたポリイミドフィルムは、支持基材からポリイミドフィルムを分離する際に加わるポリイミドフィルムへのテンションや、例えばナイフエッジ等を用いた剥離の際に発生するポリイミドフィルムへの応力等によって、ポリイミドフィルムが延伸される。そのため、ポリイミド鎖の配向に乱れが生じやすくなり、特にフィルム幅が490mm以上のポリイミドフィルムほどポリイミド鎖の配向の乱れが顕著になる。本実施の形態のポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミド層を構成するポリイミドのいずれもが、秩序構造を形成しやすいようにすることによって、剥離に必要な応力をポリイミドフィルムの各層に分散させることによって、ポリイミド鎖の配向を制御できる。
【0075】
また、支持基材上のポリアミド酸のゲルフィルムを分離し、ポリアミド酸のゲルフィルムを一軸延伸又は二軸延伸と同時あるいは連続的にイミド化を行う方法によって、ポリイミド鎖の配向を制御してもよい。この際、ポリイミド鎖の配向をより精密に高度に制御するために、延伸操作及びイミド化時の昇温速度、イミド化の完結温度、荷重等の条件を適宜調整することが好ましい。
【0076】
<金属張積層板>
金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも片面に積層された金属層とを備えている。ここで、絶縁樹脂層の構成は、本実施の形態のポリイミドフィルムと同様である。
【0077】
(金属層)
金属層を構成する金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、金、コバルト、チタン、タンタル、亜鉛、鉛、錫、シリコン、ビスマス、インジウム又はこれらの合金などから選択される金属を挙げることができる。金属層は、スパッタ、蒸着、めっき等の方法で形成することもできるが、接着性の観点から金属箔を用いることが好ましい。導電性の点で特に好ましいものは銅箔である。なお、本実施の形態の金属張積層板を連続的に生産する場合には、金属箔として、所定の厚さのものがロール状に巻き取られた長尺状の金属箔が用いられる。
【0078】
以下、金属張積層板の好ましい実施の形態として、銅層を有する銅張積層板を挙げて、説明する。
【0079】
<銅張積層板>
銅張積層板は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の面に銅箔等の銅層を備えており、絶縁層が、本実施の形態のポリイミドフィルムを用いて形成されていればよい。また、絶縁層と銅層の接着性を高めるために、絶縁層における銅層に接する層が、熱可塑性ポリイミド層である。銅層は、絶縁層の片面又は両面に設けられている。つまり、本実施の形態の銅張積層板は、片面銅張積層板(片面CCL)でもよいし、両面銅張積層板(両面CCL)でもよい。片面CCLの場合、絶縁層の片面に積層された銅層を、本発明における「第1の銅層」とする。両面CCLの場合、絶縁層の片面に積層された銅層を、本発明における「第1の銅層」とし、絶縁層において、第1の銅層が積層された面とは反対側の面に積層された銅層を、本発明における「第2の銅層」とする。本実施の形態の銅張積層板は、銅層をエッチングするなどして配線回路加工して銅配線を形成し、FPCとして使用される。
【0080】
銅張積層板は、例えば本実施の形態のポリイミドフィルムを含んで構成される樹脂フィルムを用意し、これに金属をスパッタリングしてシード層を形成した後、例えば銅メッキによって銅層を形成することによって調製してもよい。
【0081】
また、銅張積層板は、本実施の形態のポリイミドフィルムを含んで構成される樹脂フィルムを用意し、これに銅箔を熱圧着などの方法でラミネートすることによって調製してもよい。
【0082】
さらに、銅張積層板は、銅箔の上にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含有する塗布液をキャストし、乾燥して塗布膜とした後、熱処理してイミド化し、ポリイミド層を形成することによって調製してもよい。
【0083】
(第1の銅層)
本実施の形態の銅張積層板において、第1の銅層に使用される銅箔(以下、「第1の銅箔」と記すことがある)は、特に限定されるものではなく、例えば、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。
【0084】
第1の銅箔の厚みは、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは6〜18μmの範囲内がよい。第1の銅箔の厚みが35μmを超えると、銅張積層板(又はFPC)を折り曲げた際の銅層(又は銅配線)に加わる曲げ応力が大きくなることにより耐折り曲げ性が低下することとなる。また、生産安定性及びハンドリング性の観点から、第1の銅箔の厚みの下限値は6μmとすることが好ましい。
【0085】
また、第1の銅箔の引張弾性率は、例えば、10〜35GPaの範囲内であることが好ましく、15〜25GPaの範囲内がより好ましい。本実施の形態で第1の銅箔として圧延銅箔を使用する場合は、熱処理によってアニールされると、柔軟性が高くなりやすい。従って、銅箔の引張弾性率が上記下限値に満たないと、長尺な第1の銅箔上に絶縁層を形成する工程において、加熱によって第1の銅箔自体の剛性が低下してしまう。一方、引張弾性率が上記上限値を超えるとFPCを折り曲げた際に銅配線により大きな曲げ応力が加わることとなり、その耐折り曲げ性が低下する。なお、圧延銅箔は、銅箔上に絶縁層を形成する際の熱処理条件や、絶縁層を形成した後の銅箔のアニール処理などにより、その引張弾性率が変化する傾向がある。従って、本実施の形態では、最終的に得られた銅張積層板において、第1の銅箔の引張弾性率が上記範囲内にあればよい。
【0086】
第1の銅箔は、特に限定されるものではなく、市販されている圧延銅箔を用いることができる。
【0087】
(第2の銅層)
第2の銅層は、絶縁層における第1の銅層とは反対側の面に積層されている。第2の銅層に使用される銅箔(第2の銅箔)としては、特に限定されるものではなく、例えば、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、第2の銅箔として、市販されている銅箔を用いることもできる。なお、第2の銅箔として、第1の銅箔と同じものを使用してもよい。
【0088】
<回路基板>
本実施の形態の金属張積層板は、主にFPC等の回路基板の材料として有用である。すなわち、本実施の形態の金属張積層板の銅層を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の一実施の形態であるFPC等の回路基板を製造できる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0090】
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV−II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%〜90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0091】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ガラス転移温度は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。なお、DMAを用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10
9Pa以上であり、320℃における貯蔵弾性率が3.0×10
8Pa未満を示すものを「熱可塑性」とし、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10
9Pa以上であり、320℃における貯蔵弾性率が3.0×10
8Pa以上を示すものを「非熱可塑性」とした。
【0092】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
【0093】
[銅箔の表面粗度の測定]
銅箔の表面粗度は、AFM(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:Dimension Icon型SPM)、プローブ(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:TESPA(NCHV)、先端曲率半径10nm、ばね定数42N/m )を用いて、タッピングモードで、銅箔表面の80μm×80μmの範囲について測定し、十点平均粗さ(Rz)を求めた。
【0094】
[吸湿率測定]
ポリイミドフィルムの試験片(幅4cm×長さ25cm)を2枚用意し、80℃で1時間乾燥した。乾燥後直ちに23℃/50%RHの恒温恒湿室に入れ、24時間以上静置し、その前後の重量変化から次式により求めた。
吸湿率(重量%)=[(吸湿後重量−乾燥後重量)/乾燥後重量]×100
【0095】
[イミド基濃度の計算]
イミド基部(−(CO)
2−N−)の分子量をポリイミドの構造全体の分子量で除した値をイミド基濃度とした。
【0096】
[ピール強度の測定]
片面銅張積層板(樹脂層/銅箔)の銅箔を幅1mmに回路加工した測定サンプルの銅箔と樹脂層間のピール強度は、テンシロンテスター(東洋精機製作所製、商品名;ストログラフVE−1D)を用いて、樹脂面を両面テープによりアルミ板に固定し、銅箔を90°方向に50mm/分の速度で、樹脂層から10mm剥離したときの中央値強度を求めた。
【0097】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE−R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
p−PDA:パラフェニレンジアミン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
【0098】
(合成例1)
窒素気流下で、反応槽に、2.2699gのm−TB(0.0107モル)及び28.1315gのTPE−R(0.09623モル)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、7.1366gのPMDA(0.03272モル)及び22.462gのBPDA(0.07634モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液1を得た。ポリアミド酸溶液1の溶液粘度は2,130cpsであった。
【0099】
次に、厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;2.1μm)に、ポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム1(熱可塑性、Tg;225℃)を調製した。また、ポリイミドフィルム1を構成するポリイミドのイミド基濃度は27.1重量%であった。
【0100】
(合成例2)
窒素気流下で、反応槽に、1.9082gのm−TB(0.00899モル)及び33.2095gのBAPP(0.08090モル)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、5.9995gのPMDA(0.02751モル)及び18.8828gのBPDA(0.06428モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液2を得た。ポリアミド酸溶液2の溶液粘度は1,690cpsであった。
【0101】
次に、厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;2.1μm)に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム2(熱可塑性、Tg;242℃)を調製した。また、ポリイミドフィルム2を構成するポリイミドのイミド基濃度は30.7重量%であった。
【0102】
(合成例3)
窒素気流下で、反応槽に、17.3764gのm−TB(0.08185モル)及び10.2548gのTPE−R(0.03508モル)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、7.8046gのPMDA(0.03578モル)及び24.5642gのBPDA(0.08349モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液3を得た。ポリアミド酸溶液3の溶液粘度は3,850cpsであった。
【0103】
次に、厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;2.1μm)に、ポリアミド酸溶液3を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム3(熱可塑性、Tg;265℃)を調製した。また、ポリイミドフィルム3を構成するポリイミドのイミド基濃度は29.7重量%であった。
【0104】
(合成例4)
窒素気流下で、反応槽に、25.5156gのm−TB(0.12019モル)、3.7136gのp−PDA(0.03434モル)及び5.0194gのTPE−R(0.01717モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、25.8231gのPMDA(0.11839モル)及び14.9282gのBPDA(0.05074モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液4を得た。ポリアミド酸溶液4の溶液粘度は34100cpsであった。
【0105】
次に、厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;2.1μm)に、ポリアミド酸溶液4を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム4(非熱可塑性、Tg;362℃、吸湿率;0.87重量%)を調製した。また、ポリイミドフィルム4を構成するポリイミドのイミド基濃度は34.6重量%であった。
【0106】
(合成例5)
窒素気流下で、反応槽に、8.2770gのm−TB(0.03899モル)、14.7569gのp−PDA(0.13646モル)及び5.6988gのTPE−R(0.01949モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、29.3184gのPMDA(0.13441モル)及び16.9489gのBPDA(0.05761モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液5を得た。ポリアミド酸溶液5の溶液粘度は37800cpsであった。
【0107】
次に、厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;2.1μm)に、ポリアミド酸溶液5を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム5(非熱可塑性、Tg;371℃、吸湿率;1.42重量%)を調製した。また、ポリイミドフィルム5を構成するポリイミドのイミド基濃度は39.7重量%であった。
【0108】
(合成例6)
窒素気流下で、反応槽に、23.4763gのp−PDA(0.21709モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、32.6493gのPMDA(0.14968モル)及び18.8744gのBPDA(0.06415モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液6を得た。ポリアミド酸溶液6の溶液粘度は41100cpsであった。
【0109】
次に、厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;2.1μm)に、ポリアミド酸溶液6を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム6(非熱可塑性、Tg;>400℃、吸湿率;1.88重量%)を調製した。また、ポリイミドフィルム6を構成するポリイミドのイミド基濃度は44.7重量%であった。
【0110】
[実施例1]
厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;0.6μm)に、ポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約2〜3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液4を硬化後の厚みが、約21μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約2〜3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分で行い、イミド化を完結して、銅張積層板1を調製した。この際、キャスト面側銅箔とポリイミドのピール強度は、1.2kN/mであった。また銅張積層体1について、銅箔をエッチングしフィルム化した際のCTEは23ppm/K。吸湿率は0.84重量%であった。
【0111】
[実施例2および比較例1〜3]
使用するポリアミド酸溶液を表1に記載のポリアミド酸溶液にした以外、実施例1と同様にして、銅張積層板2〜5を調製した。
【0112】
【表1】
【0113】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。