【解決手段】 単層又は複数層のポリイミド層からなり、(i)厚みが3μm〜10μmの範囲内である;(ii)厚さ方向において、ポリイミドフィルムの一方の面を基点とする中央部方向に1.0±0.2μmの点における複屈折率(Δna)と、他方の面を基点とする中央部方向に1.0±0.2μmの点における複屈折率(Δnb)との差(Δna−Δnb)が±0.015以下である;(iii)Δna及びΔnb並びに厚さ方向の中央部を基点とする±0.2μmの点における複屈折率(Δnc)の合計(Δna+Δnb+Δnc)の平均値(Δnv)との差が、Δna及びΔnbのいずれにおいても±0.015以下である;(iv)熱膨張係数(CTE)が、15ppm/K以下である;(v)面内複屈折率(Δn)が0.01以下である;を満たすポリイミドフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
[ポリイミドフィルム]
本発明の一実施の形態に係るポリイミドフィルムは、単層又は複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムであり、下記の条件(i)〜(v)を満たすものである。
【0020】
(i)厚みが3〜10μmの範囲内にあること。
本実施の形態のポリイミドフィルムの厚みは、フィルムの低スティッフネス性やポリイミド上へ微細加工を形成するために、3〜10μmの範囲内、好ましくは3〜7μmの範囲内、より好ましくは4〜6μmの範囲内がよい。本実施の形態のポリイミドフィルムの厚みが、3μm未満であると、加工時にフィルムが破断する場合があり、10μmを超えるとCTE制御が困難となり、フィルムカールが生じる傾向になる。
【0021】
(ii)厚さ方向において、ポリイミドフィルムの一方の面を基点とする中央部方向に1.0±0.2μmの点における複屈折率(Δna)と、他方の面を基点とする中央部方向に1.0±0.2μmの点における複屈折率(Δnb)との差(Δna−Δnb)が±0.015以下であること。
本実施の形態のポリイミドフィルムの厚さ方向の複屈折率差(Δna−Δnb)は、フィルムカール制御のために、±0.015以下、好ましくは±0.01以下がよい。厚さ方向の複屈折率差(Δna−Δnb)が±0.015を超えるとフィルムカールが大きくなり、加工時のハンドリングが困難になる。またフィルム上に金属パターンを形成した際に、フィルムの上面、下面で寸法精度に違いが生じる傾向にある。
【0022】
(iii)前記Δna及び前記Δnb並びに厚さ方向の中央部を基点とする±0.2μmの点における複屈折率(Δnc)の合計(Δna+Δnb+Δnc)の平均値(Δnv)との差が、前記Δna及びΔnbのいずれにおいても±0.015以下であること。
本実施の形態のポリイミドフィルムのΔna及びΔnbのいずれにおいても、厚さ方向の複屈折率の合計(Δna+Δnb+Δnc)の平均値(Δnv)との差が±0.015以下、好ましくは±0.01以下がよい。
本実施の形態では、ポリイミドフィルムのΔna及びΔnbのいずれにおいても、厚さ方向の複屈折率の合計(Δna+Δnb+Δnc)の平均値(Δnv)との差が±0.015を超えると、ポリイミドフィルム上にスルーホールを形成した際に配向差によりクラックが発生しやすい傾向にある。
【0023】
(iv)熱膨張係数(CTE)が、15ppm/K以下であること。
本実施の形態のポリイミドフィルムのCTEが、15ppm/K以下、好ましくは−5ppm/K〜10ppm/Kの範囲内、より好ましくは−3ppm/K〜5ppm/Kの範囲内がよい。
本実施の形態のポリイミドフィルムのCTEが15ppm/Kを超えると、電子部品を実装する際に熱が加わることで電子部品とフィルム上に形成された金属フィルムの間にずれが生じやすくなる傾向にある。またCTEが15ppm/K以下の金属上にポリイミドを形成した際に、金属層とポリイミド層間のCTE差により内部応力が生じやすい傾向にある。
【0024】
(v)面内複屈折率(Δn)が0.01以下であること。
本実施の形態のポリイミドフィルムの面内複屈折率(Δn)が0.01以下、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.003以下がよい。
本実施の形態のポリイミドフィルムの面内複屈折率(Δn)が0.01を超えると、ポリイミドフィルムの長手(MD)方向と幅(TD)方向での加熱時の寸法変化に差が生じやすくなり、ポリイミド上に金属パターンを形成した際やポリイミドへの微細加工を行った際に加工パターンにバラつきが生じやすくなる傾向にある。
【0025】
<ポリイミドフィルムの形態>
本実施の形態のポリイミドフィルムは、上記のとおり、条件(i)から(v)を満たすものであれば特に限定されるものではなく、フィルム(シート)であってもよく、銅箔、ガラス板、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂シート等の基材に積層された状態のフィルムであってもよい。
【0026】
<フィラー>
本実施の形態のポリイミドフィルムは、必要に応じて、無機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
<ポリイミド>
本実施の形態のポリイミドフィルムは、ポリイミドからなるポリイミド層を有し、ポリイミド層を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンと、を反応させて得られるポリアミド酸をイミド化して得られるものである。従って、本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、ポリイミド層を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミンから誘導されるジアミン残基を含むものである。なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを表す。
【0028】
以下、酸無水物とジアミンを説明することにより、本実施の形態で用いるポリイミドの具体例が理解される。
【0029】
ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基としては、例えば3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i−BPDA)等から誘導されるテトラカルボン酸残基が好ましく挙げられる。これらの中でも、s−BPDAから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、s−BPDA残基ともいう。)は、秩序構造を形成しやすく、高温環境下での面内複屈折率(Δn)の変化量を小さくすることができるので特に好ましい。また、s−BPDA残基は、ポリイミド前駆体のポリアミド酸としてのゲル膜の自己支持性を付与できるが、イミド化後のCTEを増大させる傾向になる。このような観点から、s−BPDA残基は、ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基に対して、好ましくは10〜70モル%の範囲内、より好ましくは10〜50モル%の範囲内がよい。
【0030】
ポリイミドに含まれる上記s−BPDA残基以外のテトラカルボン酸残基としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、PMDA残基ともいう。)が好ましく挙げられる。PMDA残基は、ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基に対して、好ましくは30〜90モル%の範囲内、より好ましくは50〜90モル%の範囲内がよい。PMDA残基は任意であるが、熱膨張係数の制御とガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。
【0031】
その他のテトラカルボン酸残基としては、例えば、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
【0032】
本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、例えば下記の一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましく挙げられる。
【0034】
上記式(A1)において、連結基X
0は単結合を示し、Yは独立に、ハロゲン若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1〜3の1価の炭化水素基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又はアルケニル基を示し、n
1は0〜2の整数を示し、p及びqは独立に0〜4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(A1)において、複数の置換基Y、整数p、qが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0035】
一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基は、剛直構造を有するため、低CTE化を発現することができる。このような観点から、一般式(A1)で表されるジアミン残基は、ポリイミドに含まれる全ジアミン残基に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは60モル%〜100モル%の範囲内がよい。
【0036】
また、一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基として、例えば下記の一般式(1)で表されるジアミン残基が好ましく挙げられる。
【0038】
上記式(1)において、R
1、R
2は、独立に、ハロゲン原子若しくはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基、又は炭素数2〜3のアルケニル基を示す。
【0039】
一般式(1)で表されるジアミン残基は、秩序構造を形成しやすく、特に高温環境下での面内複屈折率(Δn)の変化量を有利に抑制することができる。このような観点から、一般式(1)で表されるジアミン残基は、ポリイミドに含まれる全ジアミン残基に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは60〜90モル%の範囲内がよい。
【0040】
一般式(1)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EB)、2,2’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EOB)、2,2’−ジプロポキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−POB)、2,2’−n−プロピル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−NPB)、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。これらの中でも特に、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)は、秩序構造を形成しやすく、高温環境下での面内複屈折率(Δn)の変化量を小さくすることができるので特に好ましい。
【0041】
なお、本明細書において、「ジアミン化合物」は、末端の二つのアミノ基における水素原子が置換されていてもよく、例えば−NR
3R
4(ここで、R
3,R
4は、独立にアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0042】
また、ポリイミドフィルムとした場合の伸度及び折り曲げ耐性等を向上させるため、ポリイミドが、下記の一般式(2)〜(4)で表されるジアミン残基からなる群より選ばれる少なくとも1種のジアミン残基を含むことが好ましい。
【0044】
上記式(2)において、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基若しくはアルコキシ基、又はアルケニル基を示し、Xは独立に−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−NH−又は−NHCO−から選ばれる2価の基を示し、m及びnは独立に0〜4の整数を示す。
【0046】
上記式(3)において、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基若しくはアルコキシ基、又はアルケニル基を示し、Xは独立に−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−NH−又は−NHCO−から選ばれる2価の基を示し、m、n及びoは独立に0〜4の整数を示す。
【0048】
上記式(4)において、R
5、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基若しくはアルコキシ基、又はアルケニル基を示し、X
1及びX
2はそれぞれ独立に単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−NH−又は−NHCO−から選ばれる2価の基を示すが、X
1及びX
2の両方が単結合である場合を除くものとし、m、n、o及びpは独立に0〜4の整数を示す。
【0049】
なお、「独立に」とは、上記式(2)から(4)の内の一つにおいて、または(2)から(4)において、複数の連結基X、連結基X
1、X
2、複数の置換基R
5、R
6、R
7、R
8、さらに、整数m、n、o、pが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0050】
一般式(2)〜(4)で表されるジアミン残基は、屈曲性の部位を有するので、ポリイミドフィルムに柔軟性を付与することができる。ここで、一般式(3)及び(4)で表されるジアミン残基は、ベンゼン環が3個又は4個であるので、熱膨張係数(CTE)の増加を抑制するために、ベンゼン環に結合する末端基はパラ位とすることが好ましい。また、ポリイミドフィルムに柔軟性を付与しながら熱膨張係数(CTE)の増加を抑制する観点から、一般式(2)〜(4)で表されるジアミン残基は、合計量でポリイミドに含まれる全ジアミン残基に対して、好ましくは10〜50モル%の範囲内、より好ましくは10〜30モル%の範囲内がよい。一般式(2)〜(4)で表されるジアミン残基の合計量が10モル%未満であると、フィルムとした場合の伸度が低下し、折り曲げ耐性等の低下が生じる。一方、50モル%を超えると、分子の配向性が低下し、低CTE化が困難となる。
【0051】
一般式(2)において、基R
5及びR
6の好ましい例としては、水素原子又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若、又はアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(2)において、連結基Xの好ましい例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。一般式(2)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(4,4'-DAPE)、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパン、3,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0052】
一般式(3)において、基R
5、R
6及びR
7の好ましい例としては、水素原子又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基、又はアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(3)において、連結基Xの好ましい例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。一般式(3)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、ビス(4‐アミノフェノキシ)−2,5−ジ−tert−ブチルベンゼン(DTBAB)、4,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BAPK)、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0053】
一般式(4)において、基R
5、R
6、R
7及びR
8の好ましい例としては、水素原子又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基、又はアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(4)において、連結基X
1及びX
2の好ましい例としては、単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。但し、屈曲部位を付与する観点から、連結基X
1及びX
2の両方が単結合である場合を除くものとする。一般式(4)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0054】
その他のジアミン残基としては、例えば、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等の芳香族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0055】
ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、貯蔵弾性率、引張弾性率等を制御することができる。また、非熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、面内複屈折率(Δn)のばらつきを抑制する観点から、ランダムに存在することが好ましい。
【0056】
<ポリイミドフィルムの製造方法>
本実施の形態のポリイミドフィルムの製造方法の態様として、例えば、[1]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法、[2]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法がある。また、本実施の形態のポリイミドフィルムは、複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムであるので、その製造方法の態様としては、例えば[3]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥することを複数回繰り返した後、イミド化を行う方法(キャスト法)、[4]多層押出により、同時にポリアミド酸を多層に積層した状態で塗布・乾燥した後、イミド化を行う方法(多層押出法)などが挙げられる。
【0057】
上記[1]の方法は、例えば、次の工程1a〜1c;
(1a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(1b)支持基材上でポリアミド酸を熱処理してイミド化することによりポリイミド層を形成する工程と、
(1c)支持基材とポリイミド層とを分離することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
【0058】
上記[2]の方法は、例えば、次の工程2a〜2c;
(2a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(2b)支持基材とポリアミド酸のゲルフィルムとを分離する工程と、
(2c)ポリアミド酸のゲルフィルムを熱処理してイミド化することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
【0059】
上記[3]の方法は、上記[1]の方法又は[2]の方法において、工程1a又は工程2aを複数回繰り返し、支持基材上にポリアミド酸の積層構造体を形成する以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
【0060】
上記[4]の方法は、上記[1]の方法の工程1a、又は[2]の方法の工程2aにおいて、多層押出により、同時にポリアミド酸の積層構造体を塗布し、乾燥させる以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
【0061】
本発明で製造されるポリイミドフィルムは、支持基材上でポリアミド酸のイミド化を完結させることが好ましい。ポリアミド酸の樹脂層が支持基材に固定された状態でイミド化されるので、イミド化過程におけるポリイミド層の伸縮変化を抑制して、ポリイミドフィルムの厚みや寸法精度を維持することができる。
【0062】
また、支持基材上のポリアミド酸のゲルフィルムを分離し、ポリアミド酸のゲルフィルムを一軸延伸又は二軸延伸と同時あるいは連続的にイミド化を行う方法によって、面内複屈折率(Δn)を制御してもよい。この際、Δnをより精密に制御するために、延伸操作及びイミド化時の昇温速度、イミド化の完結温度、荷重等の条件を適宜調整することが好ましい。
【0063】
<ポリイミドの合成>
一般にポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5〜30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0064】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps〜100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。また、120℃〜160℃の範囲内の温度において、30秒間を超える熱処理を行うことが好ましく、30秒間を超え10分以下の時間で熱処理を行うことがより好ましい。120℃〜160℃の範囲内の温度での熱処理時間が30秒以下であると、厚さ方向の配向差が生じやすく、また低CTE化が困難になる。
【0065】
<金属張積層体>
本実施の形態の金属張積層体における金属層の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、低熱膨張の観点からアルミニウム、鉄、ニッケル、ステンレス及びこれらの合金が好ましい。
【0066】
金属層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば金属層としてアルミニウムを用いる場合、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは10〜50μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から、金属層の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。
【0067】
本実施の形態の金属張積層体は、ポリイミドフィルムと金属層の接着性を高めるために、ポリイミドフィルムの表面を例えばプラズマ処理などの改質処理を施しても良い。また、ポリイミドフィルムにおける金属層に接する層が、例えば熱可塑性ポリイミド層を積層してもよい。本実施の形態の金属張積層体は、片面金属張積層体でもよいし、両面金属張積層体でもよい。
【0068】
本実施の形態の金属張積層体は、例えば本実施の形態のポリイミドフィルムを含んで構成される樹脂フィルムを用意し、これに金属をスパッタリングしてシード層を形成した後、例えば銅メッキによって銅層を形成してもよい。
【0069】
また、金属張積層体は、本実施の形態のポリイミドフィルムを含んで構成される樹脂フィルムを用意し、これに金属箔を熱圧着などの方法でラミネートすることによって調製してもよい。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0071】
[粘度の測定]
粘度の測定は、E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV−II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%〜90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0072】
[反りの測定]
50mm×50mmのサイズのポリイミドフィルムを、23℃、50%RH下で24時間調湿後、カールしている方向を上面とし、平滑な台上に設置した。その際のカール量についてノギスを用いて測定を行った。この際、フィルムが基材エッチング面側にカールした場合をプラス表記、反対面にカールした場合をマイナス表記とし、フィルムの4角の測定値の平均をカール量とした。
【0073】
[面内リタデーション(RO)及び面内複屈折率(Δn)の測定]
複屈折率計(フォトニックラティス社製、商品名;ワイドレンジ複屈折評価システムWPA−100、測定エリア;MD:200mm×TD:150mm)を用いて、所定のサンプルの面内方向のリタデーションを求めた。なお、入射角は0°、測定波長は543nmである。
また、面内リタデーション(RO)の測定値を評価用サンプルの厚さで除した値を「面内複屈折率(Δn)」とした。
【0074】
[厚さ方向のリタデーション及び複屈折率の測定]
ポリイミド層について、ウルトラミクロトームによる厚さ0.5μmの薄膜切片作製を実施し、厚さ方向のリタデーション測定を実施した。この際、複屈折率計(フォトニックラティス社製、商品名;顕微鏡取付用複屈折分布観察カメラPI−micro)を用いた。なお、測定波長は520nm、入射角は 0 °である。
ReAとは、ポリイミド層(フィルム)の一方の面を基点とする中央部方向に1.0±0.2μmの点におけるリタデーションの値である。
ReBとは、ポリイミド層(フィルム)の他方の面を基点とする中央部方向に1.0±0.2μmの点におけるリタデーションの値である。
Revとは、ReA、ReB、及び、ポリイミド層(フィルム)の厚さ方向の中央部を基点とする±0.2μmの点におけるリタデーションの値(ReC)の合計(ReA+ReB+ReC)の平均値である。
また、ReAを薄膜切片の厚さ(0.5μm)で除した値を「複屈折率(Δna)」とし、ReBを薄膜切片の厚さ(0.5μm)で除した値を「複屈折率(Δnb)」とし、ReCを薄膜切片の厚さ(0.5μm)で除した値を「複屈折率(Δnc)」とした。
Δnvは、Δna、Δnb及びΔncの合計(Δna+Δnb+Δnc)の平均値である。
【0075】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×15mmのサイズのポリイミド層を、熱機械分析(TMA:装置名TMA/SS6100)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度(10℃/min)で30℃から280℃の温度範囲で昇温・降温させて引張り試験を行い、100℃から30℃への温度変化に対するポリイミド層の伸び量の変化から熱膨張係数(ppm/K)を測定した。
【0076】
[イミド基濃度の計算]
ポリアミド酸を加熱処理しイミド化することにより得られたポリイミド中のイミド基部(−(CO)
2−N−)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。
【0077】
[ピール強度の測定]
テンシロンテスター(東洋精機製作所製、商品名;ストログラフVE−1D)を用いて、測定サンプルの樹脂面を両面テープによりアルミ板に固定し、金属箔を90°方向に50mm/分の速度で剥離していき、金属箔が樹脂層から10mm剥離したときの中央値強度を求めた。
【0078】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
s−BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE−R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
【0079】
(合成例1)
窒素気流下で、反応槽に、30.390gのm−TB(0.1432モル)及び5.978gのTPE−R(0.0205モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、24.480gのPMDA(0.1122モル)及び14.152gのs−BPDA(0.0481モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液1(イミド基濃度32.8重量%)を調製した。ポリアミド酸溶液1の溶液粘度は18,400cpsであった。
【0080】
(合成例2)
窒素気流下で、反応槽に、38.979gのBAPP(0.0950モル)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、21.022gのPMDA(0.0964モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液2(イミド基濃度23.6重量%)を調製した。ポリアミド酸溶液2の溶液粘度は28,500cpsであった。
【0081】
[実施例1]
厚さ100μmのインバー箔の片面に、ポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約6μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から160℃までの間の熱処理を60分間行い、更に160℃から360℃までの段階的な熱処理を60分以内で行うことでイミド化を完結し、金属張積層体1を調製した。
【0082】
調製した金属張積層体1について、塩化第二鉄水溶液を用いてインバー箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム1(厚さ;6.3μm)を調製した。ポリイミドフィルム1の物性は、以下のとおりであった。
CTE;−1.1ppm/K、カール量;発生なし(0mm)、ピール強度;>1.0kN/m、|ReA−ReB|;0.6nm、|Rev−ReA|;0.3nm、|Rev−ReB|;0.1nm、面内リタデーション;6nm、|Δna−Δnb|;1.2×10
−3、|Δnv−Δna|;0.6×10
−3、|Δnv−Δnb|;0.2×10
−3、面内複屈折率;0.95×10
−3。
【0083】
[実施例2]
120℃から160℃までの間の熱処理を10分間行った以外は、実施例1と同様に、金属張積層体2を調製した。
【0084】
調製した金属張積層体2について、実施例1と同様に、塩化第二鉄水溶液を用いてインバー箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム2(厚さ;6.1μm)を調製した。ポリイミドフィルム2の物性は、以下のとおりであった。
CTE;2.0ppm/K、カール量;0.9mm、ピール強度;>1.0kN/m、|ReA−ReB|;3.6nm、|Rev−ReA|;3.4nm、|Rev−ReB|;0.2nm、面内リタデーション;8nm、|Δna−Δnb|;7.2×10
−3、|Δnv−Δna|;6.8×10
−3、|Δnv−Δnb|;0.4×10
−3、面内複屈折率;1.31×10
−3。
【0085】
<回路基板の調製>
金属張積層体2のインバー箔表面にドライフィルムをラミネートし、ドライフィルムレジストをパターニングし、そのパターンに沿ってインバー箔をエッチングしてインバー回路を形成し、回路基板2’を調製した。
【0086】
回路基板2’の回路形成側とは反対側の面に、スパッタリング装置を用いて、Ni−Cr合金(Cr;20重量%)を厚み20nmで形成し、更にその表面に厚み200nmの銅薄膜層を形成した。その後、銅薄膜層にフォトレジスト層を形成し、フォトレジスト層を選択露光及び現像処理することで20μmピッチの配線状パターンを得た。これをめっきマスクとしてシード層上に電解めっきにて12μm厚みの銅配線を形成、フォトレジスト層を除去した後、フラッシュエッチング液にて銅薄膜層及びNi−Cr合金層を除去することで、回路基板2を調製した。
【0087】
<ICチップ実装>
回路基板2の銅配線側に400℃、0.5秒間のボンディング処理にてICチップを実装したが、銅配線とICチップとの位置ずれはなく、不具合は発生しなかった。
【0088】
[実施例3]
120℃から160℃までの間の熱処理を1分30秒間行った以外は、実施例1と同様に、金属張積層体3を調製した。
【0089】
調製した金属張積層体3について、実施例1と同様に、塩化第二鉄水溶液を用いてインバー箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム3(厚さ;6.4μm)を調製した。ポリイミドフィルム3の物性は、以下のとおりであった。
CTE;2.3ppm/K、カール量;2.3mm、ピール強度;>1.0kN/m、|ReA−ReB|;4.5nm、|Rev−ReA|;0.6nm、|Rev−ReB|;3.9nm、面内リタデーション;9nm、|Δna−Δnb|;9×10
−3、|Δnv−Δna|;1.2×10
−3、|Δnv−Δnb|;7.8×10
−3、面内複屈折率;1.41×10
−3。
【0090】
[実施例4]
厚さ100μmのインバー箔の片面に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約0.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約5.5μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から160℃までの間の熱処理を60分間行い、更に160℃から360℃までの段階的な熱処理を60分以内で行うことでイミド化を完結し、金属張積層体4を調製した。
【0091】
調製した金属張積層体4について、塩化第二鉄水溶液を用いてインバー箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム4(厚さ;6.2μm)を調製した。ポリイミドフィルム4の物性は、以下のとおりであった。
CTE;3.6ppm/K、カール量;4.9mm、ピール強度;>1.0kN/m、|ReA−ReB|;0.8nm、|Rev−ReA|;0.2nm、|Rev−ReB|;0.2nm、面内リタデーション;8nm、|Δna−Δnb|;1.6×10
−3、|Δnv−Δna|;0.4×10
−3、|Δnv−Δnb|;0.4×10
−3、面内複屈折率;1.29×10
−3。
【0092】
(比較例1)
120℃から160℃までの間の熱処理を30秒間行った以外は、実施例1と同様に、金属張積層体5を調製した。
【0093】
調製した金属張積層体5について、実施例1と同様に、塩化第二鉄水溶液を用いてインバー箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム5(厚み;6.1μm)を調製した。ポリイミドフィルム5の物性は、以下のとおりであった。
CTE;3.1ppm/K、カール量;4.6mm、|ReA−ReB|;8.4nm、|Rev−ReA|;2.4nm、|Rev−ReB|;6.0nm、面内リタデーション;7nm、|Δna−Δnb|;16.8×10
−3、|Δnv−Δna|;4.8×10
−3、|Δnv−Δnb|;12×10
−3、面内複屈折率;1.15×10
−3。
【0094】
(比較例2)
金属張積層体5について、実施例2における「回路基板の調製」と同様にして回路基板を調製し、調製した回路基板の銅配線側に400℃、0.5秒間のボンディング処理にてICチップを実装したところ、銅配線とICチップとの間にズレが生じた。
【0095】
実施例1〜4及び比較例1におけるポリイミド層の厚さ方向のリタデーション測定について、測定箇所を表1示す。
【0096】
【表1】
【0097】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。