【解決手段】大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分を有効成分として含むATP産生促進用剤、該ATP産生促進用剤を含んでなる飲食品。かかるATP産生促進用剤や飲食品は、ATP産生促進作用を有するので、細胞の増殖、代謝、修復等の細胞機能の活性化や抗老化(アンチエイジング)等の効果、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)が期待される。
大麦若葉に含まれる特定成分が、下記の化合物(a)、(b)、(c)及び(d)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1又は2に記載のATP産生促進用剤。
(a)組成式:C33H40O19、分子量:740、化合物名:ロビニン
(b)組成式:C27H30O15、分子量:594、化合物名:サポナリン
(c)組成式:C25H37O5N2、分子量:445
(d)組成式:C21H20O10、分子量:432、化合物名:アフゼリン
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0015】
本発明の好ましい態様において、ATP産生促進用剤は、大麦若葉を有効成分として含むものであり、大麦若葉には、分けつ開始期から出穂開始前期(草丈が20〜40cm程度)に収穫された大麦の若葉(茎葉)が好適に用いられる。
【0016】
ここで、大麦としては、例えば、二条大麦、四条大麦、六条大麦、裸大麦等のHordeum vulgare種に属するものであれば、如何なる種でもよく、どの品種も用いることができるが、二条大麦、六条大麦、裸大麦が好ましく、六条大麦が特に好ましい。
【0017】
さらに具体的には、二条大麦(ビール大麦)の品種としては、例えば、あおみのり、あぐりもち、アサカゴールド、きぬゆたか、おうみゆたか、キリニジョウ、はるな二条、あまぎ二条、ふじ二条、イシュクシラズ、ミサトゴールデン、カワホナミ、カワミズキ、きぬか二条、こまき二条、さきたま二条、とね二条、サチホゴールデン、さつきばれ、しゅんれい、ミハルゴールド、スカイゴールデン、タカチホゴールデン、つゆしらず、とね二条、なす二条、ニシノゴールド、ニシノチカラ、ニシノホシ、はるか二条、にらさき二条、にら二条、はるしずく、さつき二条、ほうしゅん、ミカモゴールデン、ミホゴールデン、みょうぎ二条、ヤシオゴールデン、ヤチホゴールデン、北育41号、彩の星、りょうふう等が挙げられる。
【0018】
六条大麦の品種としては、例えば、アサマムギ、カシマゴール、ミノリムギ、カトリムギ、ムサシノムギ、ドリルムギ、サナダムギ、はがねむぎ、さやかぜ、すずかぜ、シュンライ、シルキースノウ、シンジュボシ、すずかぜ、セツゲンモチ、ナトリオオムギ、ハマユタカ、ハヤミオオムギ、ファイバースノウ、倍取、ミユキオオムギ等が挙げられる。
【0019】
裸大麦の品種としては、例えば、イチバンボシ、センボンハダカ、サヌキハダカ、キカイハダカ、サンシュウ、ナンプウハダカ、シラタマハダカ、ユウナギハダカ、ダイシモチ、トヨノカゼ、ハヤテハダカ、赤神力、一早生、ビワイロハダカ、ユウナギハダカ、ベニハダカ、ハシリハダカ、マンネンボシ(旧マンテンボシ)、センボンハダカ等が挙げられる。
【0020】
これら品種は各農業試験場、農業研究センター、民間企業等により育成され、実や若葉等が食用(飲料を含む。)に利用されているものである。これら品種から、その栽培地域に適した品種を選択して育成し、若葉(茎葉)を収穫するのが好ましい。
【0021】
本発明における大麦若葉とは、上記のとおり、分けつ開始期から出穂開始前期までの背丈が20〜40cm程度に成長した若葉(茎葉)そのものやその処理物であれば如何なる形態のものであってもよい。
【0022】
若葉(茎葉)の処理物としては、例えば、その搾汁処理物、粉砕処理物、細断処理物、乾燥処理物、焙煎処理物、抽出処理物、粉末化処理物、凍結処理物の他、搾汁・乾燥粉末化処理物、乾燥処理物、粉砕・濾過処理物(ピューレ、ジュース)、細断・熱湯抽出処理物等の処理物、これらの組み合わせ処理物等が挙げられる。
【0023】
これらの中で、通常用いられる形態としては、若葉(茎葉)の搾汁処理物(搾汁液)の粉末化処理物(以下「搾汁粉末」ということがある。)、若葉の乾燥処理物(以下「乾燥粉末」ということがある。)が好適である。
【0024】
ここで、搾汁粉末は、例えば、特許文献6〜10等に記載の方法に準じて、大麦の若葉を収穫した(刈り取った)後に、圧搾により搾り出した液を、必要に応じて適当な賦形剤と混合し、噴霧乾燥することにより調製することができる。この搾汁粉末は、そのままで、あるいは他の賦形剤等を配合して、本発明のATP産生促進用剤として好適に利用できる。
【0025】
また、乾燥粉末は、例えば、特許文献11、12等に記載の方法に準じて、大麦の若葉を収穫した(刈り取った)後に、細断し、乾燥処理及び粉砕処理、必要に応じてブランチング処理を組み合わせて調製することができる。この乾燥粉末は、そのままで、あるいは他の賦形剤等を配合して、本発明のATP産生促進用剤として好適に利用できる。
【0026】
本発明において、大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分は、後述する実施例において具体的に示す通り、細胞内のATP産生促進作用、すなわちエネルギー産生促進作用を有するので、本発明のATP産生促進用剤を用いることにより、細胞の増殖、代謝、修復等の細胞機能の活性化や抗老化(アンチエイジング)等の効果が期待できる。また、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)を必要とする対象者に、副作用を伴うことなく、かかる疾患若しくは状態の予防又は改善(治療)が期待される。かかるATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態としては、例えば、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病等)、慢性腎臓病、糖尿病、心疾患、肝機能障害等が挙げられる(「新たなATP産生メカニズムの解明とそのミトコンドリア病治療薬への応用‐治療薬候補MA−5はミトコンドリア機能を活性化する‐」東北大学 2017年 プレスリリース(2017年6月1日)https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/06/press20170601-01.html参照)。
【0027】
大麦若葉には、既に諸種の生理活性成分の存在することが確認されている(例えば、非特許文献1参照)。本発明者らの検討によれば、少なくとも下記の化合物(a)〜(d)が、上記ATP産生促進作用の活性成分であることが推察された。
(a)組成式:C
33H
40O
19、分子量:740、化合物名:ロビニン
(b)組成式:C
27H
30O
15、分子量:594、化合物名:サポナリン
(c)組成式:C
25H
37O
5N
2、分子量:445
(d)組成式:C
21H
20O
10、分子量:432、化合物名:アフゼリン
ただし、本発明におけるATP産生促進用剤の活性成分は、大麦若葉に由来するものであれば、これら4種の化合物に限定されるものではなく、如何なる成分であってもよい。
【0028】
ここで、ロビニン(robinin)、サポナリン(Saponarin)及びアフゼリン(Afzelin)は、何れも3−ヒドロキシフラボン(3−ヒドロキシ−2−フェニルクロメン−4−オン)骨格を有するフラボノイドに糖がグリコシド結合により結合した化合物、即ちフラボノール配糖体(flavonol glycoside)である。したがって、本発明におけるATP産生促進用剤は、フラボノール配糖体が有効成分である可能性がある。
【0029】
フラボノール配糖体としては、上記3種の化合物に限定されず、単独又複数の種でATP産生促進作用を有するものであれば、如何なるフラボノール配糖体であってもよい。具体的は、例えば、上記3種の化合物の他に、アストラガリン(astragalin)、アザレイン(azalein)、ヒペロシド(hyperoside)、イソクェルシトリン(イソクエルシトリン、イソケルシトリン、isoquercitrin)、ケンペリトリン(kaempferitrin)、クェルシトリン(クエルシトリン、ケルシトリン、quercitrin)、ルチン(rutin、ルトサイド、クェルセチン−3−ルチノシド)、アムレンシン(amurensin)、イカリイン(icariin)等が挙げられる。
【0030】
よって、本発明のATP産生促進用剤は、上記(a)、(b)、(c)及び(d)よりなる群から選ばれる何れかの化合物を含み、ATP産生の促進作用を有するものであれば、上記化合物やフラボノール配糖体が大麦若葉に由来するものに限られず、如何なる植物に由来するものでもよい。また、本発明のATP産生促進用剤は、単離された化合物やフラボノール配糖体を有効成分として含むものでもよく、これら何れの剤も本発明に包含される。なお、本明細書において、上記化合物及び/又はフラボノール配糖体を「特定成分」と称することがある。
【0031】
また、本発明のATP産生促進用剤は、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)を必要とする対象者に、大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分を投与する工程を備えた、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)を予防又は改善(治療)する方法や、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)剤として使用するための大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分や、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)における使用のための大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分や、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)剤を製造するための大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分の使用が期待される。
【0032】
なお、本明細書において、疾患若しくは状態の「予防又は改善」とは、疾患若しくは状態の、調節、進行の遅延、緩和、発症予防、再発予防、抑制等を包含する意味で使用される。
【0033】
本発明における大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分は、水との親和性が高く、溶解又は懸濁状態とすることができ、飲食品及び医薬品に通常添加され得る成分との混和性に優れている。また、大麦若葉は既に飲食品として長年にわたって用いられている成分であり、また特定成分は大麦若葉に含まれている成分であるため安全性に優れている。したがって、この大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分を有効成分とするATP産生促進用剤は、日常の食生活に適宜取り入れて無理なく安心して摂取することができる。
【0034】
本発明のATP産生促進用剤は、「ATP産生を促進するために用いる」という用途が限定された、細胞内のATP産生促進の有効成分として大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分を含有する剤であり、単独でも飲食品や医薬品(製剤)として使用することができる。また、飲食品や医薬品等の種々の組成物に、ATP産生促進の有効成分として含有させることができる。これにより、ATP産生促進用の飲食品組成物又は医薬品組成物を得ることができる。得られたATP産生促進用の飲食品組成物又は医薬品組成物は、上述のATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)に有効に用いることができる。
【0035】
本発明におけるATP産生促進用剤は、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、固体成形物等、経口摂取可能な形態であればよく特に限定されない。具体的には、例えば、粉末剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤の他、飲料、食品等の通常の食品や医薬品で用いられる形態を挙げることができる。また、製剤の形態としては、摂取量を調節しやすい粉末剤やカプセル剤、錠剤、顆粒剤、ドリンク等を好適に例示することができる。
【0036】
本発明において、大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分は、そのまま用いてもよく、従来から知られている通常の方法で所望の製剤を製造して用いてもよい。例えば、製剤の製造上許可される諸種の添加剤と混合し、組成物として成型することができる。添加剤としては、本発明の効果を損なわない範囲において添加されるものであればよく、例えば、生薬、ビタミン、ミネラル等の他に、賦形剤、界面活性剤、被膜剤、油脂類、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料;着色料;香料;緩衝剤;酸化防止剤;pH調整剤;クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等の酸味料;等が挙げられる。
【0037】
上記賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン、セルロース、マルチトール、デキストリン等を挙げることができる。上記界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。上記被膜剤としては、例えば、ゼラチン、プルラン、シェラック、ツェイン等を挙げることができる。上記油脂類としては、例えば、小麦胚芽油、米胚芽油、サフラワー油等を挙げることができる。上記ワックス類としては、例えば、ミツロウ、米糠ロウ、カルナウバロウ等を挙げることができる。上記甘味料としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、ステビア、サッカリン、スクラロース等を挙げることができる。
【0038】
上記生薬としては、例えば、高麗人参、アメリカ人参、田七人参、霊芝、プロポリス、アガリクス、ブルーベリー、イチョウ葉及びその抽出物等を挙げることができる。上記ビタミンとしては、例えば、ビタミンD、K等の油溶性ビタミン、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン等の水溶性ビタミンを挙げることができる。
【0039】
また、本発明によれば、大麦若葉又は大麦若葉に含まれる特定成分を有効成分とするATP産生促進用剤を含んでなる飲食品又は医薬品が提供される。ここで「含んでなる」とは、所望する製品形態に応じた生理学的に許容されうる担体を含んでいてもよく、また併用可能な他の補助成分を含有する場合も意味する。
【0040】
本発明において、飲食品とは、医薬品以外のものであって、前記のとおり経口摂取可能な形態であればよく特に限定されない。具体的には、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、アルコール飲料等の飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレーやシチューの素類等の調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類;乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品;卵加工品、魚肉ハムやソーセージ、水産練り製品等の水産加工品;畜肉ハムやソーセージ等の畜産加工品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品;冷凍食品等が挙げられる。
【0041】
また飲食品には、健康食品(例えば、機能性食品、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品、栄養調整食品、サプリメント等)、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等)、特別用途食品(例えば、病者用食品、乳幼児用調整粉乳、妊産婦又は授乳婦用粉乳等)等の他、脂質吸収の増加やATP産生の低下に起因する疾患又は状態(症状)のリスク低減、予防又は改善の表示を付した飲食品のような分類のものも包含される。
【0042】
本発明の別の態様によれば、ATP産生促進用剤を含んでなる飲食品であって、細胞内のATP産生促進により予防又は改善しうる疾患若しくは状態の予防、又は改善する機能が表示された飲食品が提供されうる。
【0043】
本発明において、医薬品とは、製剤化のために許容されうる添加剤を併用して、常法に従い、経口製剤又は非経口製剤として調製したものである。経口製剤の場合には、前記のとおり、経口摂取可能な形態であれば特に限定されない。また、非経口製剤の場合には、注射剤や座剤の形態をとることができる。簡易性の点からは、経口製剤であることが好ましい。製剤化のために許容されうる添加剤としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0044】
本発明において、ATP産生促進用剤中の有効成分の含有量は、製剤の種類、形態や、予防又は改善の目的等により一律に規定は難しいが、例えば、成人(体重60kg)1日あたり、大麦若葉の搾汁粉末として、通常15mg〜15g程度、好ましくは50mg〜9g程度、また、大麦若葉の乾燥粉末として、通常50mg〜15g程度、好ましくは100mg〜9g程度である。さらに、必要な1日あたりの有効成分の摂取量を摂取(服用)できるように、1日あたりの摂取量を考慮し、製剤中の含有量を適宜設定すればよい。また、特定成分の含有量は、上記大麦若葉の搾汁粉末又は乾燥粉末に含まれる程度の量であればよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]大麦若葉搾汁液の製造
特開2009−148213号公報(特許文献10)に記載の方法に準じて、刈り取った大麦の若葉(茎葉)10kgを圧搾し、搾汁液を8kg得た。
【0047】
[実施例2]大麦若葉搾汁液の機能性評価
2−1.序論
長鎖脂肪酸は骨格筋収縮時のエネルギー産生のための重要な燃料である。パルミチン酸が飽和すると筋細胞中のATP減少のような脂肪毒性が誘導されることがわかっている。オレイン酸のような不飽和脂肪酸は、脂肪滴中のパルミチン酸を変換することによってパルミチン酸に誘導される脂肪毒性を無毒化し、ミトコンドリアの脂肪酸酸化が増加することが報告されている(参考文献[1]、[2]参照)。
【0048】
筋細胞中の脂質代謝やミトコンドリアの機能を評価するために、ラットL6筋管におけるパルミチン酸で誘導されるATPの減少を天然物(大麦若葉)からの抽出成分を対象とした機能性スクリーニングのインビトロモデルとして実施した。
【0049】
参考文献
[1] Yuzefovych L.; Wilson G.; Rachek L. Different effects of oleate vs. palmitate on mitochondrial function, apoptosis, and insulin signaling in L6 skeletal muscle cells: role of oxidative stress. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2010, 299, E1096-1105.
[2] Henique C.; Mansouri A.; Fumey G.; Lenoir V.; Girard J.; Bouillaud F.; Prip-Buus C.; Cohen I. Increased mitochondrial fatty acid oxidation is sufficient to protect skeletal muscle cells from palmitate-induced apoptosis. J Biol Chem. 2010, 285, 36818-36827.
【0050】
2−2.筋芽細胞の培養
ラットL6筋芽細胞培養は10%FBSを含むハイグルコースDMEM(Dulbecco's modified Eagle medium)にて手順どおりに培養した。筋管への分化のために、筋芽細胞がコンフルエントに達すると分化用の培地(3%馬血清と50ng/ml濃度のインシュリンを含むハイグルコースDMEM)で培養した。分化用の培地は頻繁に交換を行った。筋管は6日間から8日間分化させた後、様々な検討に使用した。
【0051】
2−3.細胞毒性試験(MTTアッセイ)
細胞毒性試験として、MTTアッセイを行った。MTT溶液を分化用培地に0.5mg/ml加え、30分間インキュベートした。変換されたフォルマザンブルー結晶は酸性イソプロパノール(0.04Mの塩酸を含んだイソプロパノール)で溶解し、570nmの吸光度を測定した。
【0052】
2−4.ATPアッセイ
ATPアッセイは、モレキュラープローブ社のATP検出キットもしくはこれの同等品を用いて測定を行った。まず筋管を0.5mlの氷冷していたPBSで洗浄した。次に0.5mlの氷冷していた細胞溶解液(0.5% NP−40)で細胞を溶解させた。12,000g、4℃、10分間の遠心分離を行い、不溶性物質を沈殿させた後、5μlずつ分注し、反応液を50μl加え、室温で20分間インキュベートした。生物発光の発光強度を測定し、ATP標準液の検量線より定量した。全ての測定は少なくとも2回繰り返し行った。
【0053】
2−5.大麦若葉抽出液(搾汁液)の分画
大麦若葉抽出液(搾汁液)3.5リットルを吸引ろ過でろ過し、そのろ液に酢酸エチルを同量加え、液液分配した。酢酸エチル層(以下「BLE」という。)から10.4g、水層(以下「BLW」という。)から39.4g、中間層(以下「BLG」という。)から16.3gの固形物を回収した(
図1)。
【0054】
2−6.MTTアッセイ結果
BLE及びBLWの細胞毒性をMTTアッセイで測定した結果を
図2(
図2(A)、
図2(B))に示す。いずれの分画にも細胞毒性は見られなかった。なお、
図2の結果は2例の平均値である。
【0055】
2−7.ATP産生量
BLE及びBLWのATPアッセイ結果を
図3(
図3(A)、
図3(B))に示す。
図3から明らかなとおり、BLE及びBLWのATP産生量は濃度依存的な増加を示した。なお、
図3の結果は4例の平均値である。また、
図3中、「*」及び「**」は、それぞれ、スチューデントt検定(Student's t-test)における「p<0.05」及び「p<0.01」を示す。
【0056】
2−8.BLEのHPLC分析
まず、下記の条件で、BLEから分画を進めHPLCにて26の画分に分画した。その結果を
図4に示す。
HPLC条件
カラム:CAPCELL PAK C18, 250mm×10mm, 5μm
グラジエント:0〜3分、メタノール:水=35:65
30分までにメタノール100%後、15分間保持
5分間メタノール:水=35:65でコンディショニング
検出波長:210nm
流速:4ml/min
【0057】
2−9.HPLC画分のATP産生量
得られた26画分の内、3〜20画分までのATP産生量の評価を行った。その結果を
図5に示す。
図5中のBLEはその他画分として
図4で分画した画分以外の部分をまとめたものである。
図5から明らかなとおり、BLE−3、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15画分で有意にATP産生量の増加が確認された。特にBLE−5、6、13、14、15は50%以上の増加量を示した。
【0058】
なお、
図5(A)〜(D)の画分の成分濃度(μg/ml)、例数(n)は次のとおりである。
(A)25μg/ml、n=3
(B)25μg/ml、n=4
(C)25μg/ml、n=4
(D)20μg/ml、n=4
また、
図5中、「*」及び「**」は、それぞれ、スチューデントt検定(Student's t-test)における有意差、「p<0.05」及び「p<0.01」を示す。
【0059】
[実施例3]活性成分の分析
3−1.BLE−5のLC−MS/MS分析
BLE−5について、LC−MS/MSによる分析を行った結果、得られた分子量及びフラグメントイオンからロビニン(robinin;kaempferol-3-O-robinoside-7-O-rhamnoside)であることが推定された。分析結果を
図6に示す。
【0060】
3−2.BLE−6のLC−MS/MS分析
BLE−6について、LC−MS/MSによる分析を行った結果、得られた分子量及びフラグメントイオンからサポナリン(saponarin)であることが推定された。分析結果を
図7に示す。
【0061】
3−3.BLE−8のLC−MS/MS分析
BLE−8について、LC−MS/MSによる分析を行ったが、得られた分子量及びフラグメントイオンでは成分の化学構造を推定することができなかった。分析結果を
図8に示す。
【0062】
3−4.BLE−9のLC−MS/MS分析
BLE−9について、LC−MS/MSによる分析を行った結果、得られた分子量及びフラグメントイオンからアフゼリン(afzelin;kaempferol 3-rhamnoside)であることが推定された。分析結果を
図9に示す。