【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0103】
<化合物3aの合成>
≪工程1;1−(4−アリルオキシ−3−メトキシフェニル)エタノンの合成≫
300mLナスフラスコに、4−ヒドロキシ−3−メトキシアセトフェノン(5.00g,30.1mmol)を入れてアセトン(50mL)に溶解し、炭酸カリウム(6.24g,45.1mmol)を加え、室温で5分間撹拌した後、臭化アリル(5.46g,45.1mmol)を添加し、室温で24時間撹拌した。濃縮後、酢酸エチル(50mL×2)と純水(50mL)を加えて抽出、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液(50mL×3)、飽和食塩水(50mL×2)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、淡黄色オイル(中間体化合物11;1−(4−allyloxy−3−methoxyphenyl)ethanone)6.09g(29.5mmol,98%)を得た。
【0104】
得られた中間体化合物11の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 2.57 (3H, s), 3.94 (3H, s), 4.69 (2H, dt, J = 5.4, 1.5 Hz), 5.33 (1H, dq, J = 11, 1.3 Hz), 5.43 (1H, dq, J = 17, 1.5 Hz), 6.09 (1H, ddt, J = 17, 11, 5.4 Hz), 6.89 (1H, d, J = 9.0 Hz), 7.52−7.56 (2H, m).
【0105】
【化19】
【0106】
≪工程2;1−(4−アリルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エタノンの合成≫
50mLナスフラスコに、上記中間体化合物11(497mg,2.41mmol)を入れて酢酸(3mL)に溶解し、氷浴上で発煙硝酸(1mL,24.1mmol)をゆっくり滴下し、0°Cで30分間撹拌した。冷水(10mL)を加えて酢酸エチル(10mL×3)で抽出、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)、飽和食塩水(10mL×2)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=4:1→2:1)、黄白色固体(中間体化合物12;1−(4−allyloxy−5−methoxy−2−nitrophenyl)ethanone)345mg(1.37mmol,57%)を得た。
【0107】
得られた中間体化合物12の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 2.50 (3H, s), 3.98 (3H, s), 4.71 (2H, dt, J = 5.5, 1.4 Hz), 5.39 (1H, dq, J = 11, 1.3 Hz), 5.48 (1H, dq, J = 17, 1.3 Hz), 6.07 (1H, ddt, J = 17, 11, 5.4 Hz), 6.76 (1H, s), 7.62 (1H, s).
【0108】
【化20】
【0109】
≪工程3;1−(4−アリルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エタノールの合成≫
50mLナスフラスコに、上記工程で得られた中間体化合物12(1.41g,5.61mmol)、テトラヒドロフラン(10mL)、メタノール(10mL)を入れ、氷浴上で水素化ホウ素ナトリウム(637mg,16.8mmol)を少しずつ添加した。0℃で20分間撹拌し、さらに室温で40分間撹拌した。濃縮後、クロロホルム(10mL×3)と純水(30mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(20mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、黄白色固体(中間体化合物13;1−(4−allyloxy−5−methoxy−2−nitrophenyl)ethanol)1.40g(5.54mmol,99%)を得た。
【0110】
得られた中間体化合物13の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 1.56 (3H, d, J = 6.3 Hz), 2.29 (1H, d, J = 3.7 Hz), 4.00 (3H, s), 4.67 (2H, dt, J = 5.5, 1.4 Hz), 5.36 (1H, dq, J = 11, 1.3 Hz), 5.46 (1H, dq, J = 17, 1.5 Hz), 5.57 (1H, qd, J = 6.3, 3.7 Hz), 6.07 (1H, ddt, J = 17, 11, 5.4 Hz), 7.31 (1H, s), 7.59 (1H, s).
【0111】
【化21】
【0112】
≪工程4;1−(4−アリルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネートの合成≫
200mL二口ナスフラスコに、中間体化合物13(2.50g,9.85mmol)を入れてドライアセトニトリル(35mL)に溶解し、ジ(N−スクシンイミジル)カーボネート(6.36g,24.8mmol)、トリエチルアミン(4.05g,40.1mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で17時間撹拌した。濃縮後、クロロホルム(150mL,60mL×2)、純水(200mL)と2N塩酸(10mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(100mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)、黄白色固体(中間体化合物14;1−(4−allyloxy−5−methoxy−2−nitrophenyl)ethyl N−succinimidyl carbonate)2.97g(7.54mmol,77%)を得た。
【0113】
得られた中間体化合物14の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 1.76 (3H, d, J = 6.4 Hz), 2.80 (4H, s), 4.06 (3H, s), 4.67 (2H, dt, J = 5.5, 1.4 Hz), 5.37 (1H, dq, J = 11, 1.3 Hz), 5.47 (1H, dq, J = 17, 1.5 Hz), 6.07 (1H, ddt, J = 17, 11, 5.4 Hz), 6.51 (1H, q, J = 6.4 Hz), 7.08 (1H, s), 7.65 (1H, s).
【0114】
【化22】
【0115】
本実施例においては、中間体化合物14を上記の方法により合成したが、例えばH. Nakayama et al., Colloids Surf. B, 2010, 76, 88−97に記載されている方法により合成した中間体化合物14を用いてもよい。
【0116】
≪工程5;1−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ)フェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネートの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物14 (300mg,0.761mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(6mL)に溶解し、トリス(トリメチルシロキシ)シラン(677mg,2.28mmol)、カーステッド触媒(5滴)を加え、窒素雰囲気下、室温で20時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=60:20:1→50:50:1)、黄色粘体(中間体化合物1a;1−(5−methoxy−2−nitro−4−(3−tris(trimethylsiloxy)silylpropoxy)phenyl)ethyl N−succinimidyl carbonate)281mg(0.407mmol,53%)を得た。
【0117】
得られた化合物中間体化合物1aの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.10 (27H, s), 0.55−0.60 (2H, m), 1.76 (3H, d, J = 6.5 Hz), 1.85−1.94 (2H, m), 2.80 (4H, s), 3.98−4.03 (2H, m), 4.04 (3H, s), 6.51 (1H, q, J = 6.4 Hz), 7.07 (1H, s), 7.62 (1H, s).
【0118】
【化23】
【0119】
≪工程6;1−(5−methoxy−2−nitro−4−(3−tris(trimethylsiloxy)silylpropoxy)phenyl)ethyl 3−trimethoxysilylpropyl carbamateの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物1a(100mg,0.145mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(1mL)に溶解し、3−aminopropyltrimethoxysilane(0.028mL,0.161mmol)を加え、窒素雰囲気下、遮光して室温で22時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=60:20:1)、明黄色粘体48mg(0.0636mmol,44%)を得た。
【0120】
得られた本実施形態の化合物3aの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.10 (27H, s), 0.54−0.65 (4H, m), 1.58 (3H, d, J = 6.5 Hz), 1.61−1.68 (2H, m), 1.84−1.93 (2H, m), 3.10−3.18 (2H, m), 3.56 (9H, s), 3.95 (3H, s), 3.98−4.03 (2H, m), 4.95 (1H, t, J = 5.2 Hz), 6.37 (1H, q, J = 6.4 Hz), 6.99 (1H, s), 7.56 (1H, s).
13C NMR (CDCl
3/ TMS, 100 MHz): δ 1.74 (9C), 6.31, 10.3, 22.3, 23.0, 23.2, 43.3, 50.6 (3C), 56.3, 68.8, 71.6, 108.0, 108.8, 133.9, 139.6, 147.4, 153.9, 155.3.
【0121】
【化24】
【0122】
<表面修飾>
熱酸化膜付シリコンウェハ(SiO
2/Si基板)をメタノールで5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した後、UV−オゾンクリーナーにてUVを1時間照射して前処理した。
次に、上記方法により得られた化合物3aをドライトルエンに溶解して1mM溶液を調製し、上記の前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下、室温で20時間浸漬した。基板をメタノールでリンスし、メタノールとクロロホルムで各5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した(下記工程1)。
【0123】
<光照射>
修飾した基板に、超高圧水銀灯でフィルターを介して波長365nm、照度15Jの光を大気中で照射した。基板をクロロホルムで5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した(下記工程2)。
【0124】
【化25】
【0125】
【化26】
【0126】
<接触角測定>
接触角計(協和界面科学株式会社)を用いて液滴法・θ/2法に従って、ローブ液体に水、ジヨードメタン、1−ブロモナフタレンをそれぞれ用いて光照射前後の静的接触角を測定した。その結果を表1に記載する。下記表1において、「光照射前」は上記工程1の直後を「光照射後」は上記工程2の直後を、それぞれ意味する。
【0127】
【表1】
【0128】
上記表1に示した結果の通り、フッ素を含まない化合物3aは、光照射後に接触角が小さくなることが確認された。
【0129】
<XPS測定>
得られた修飾基板は、静的接触角測定及びX線光電子分光法(X−ray photoelectron spectroscopy、以下「XPS」という。)により光照射前後を比較した。
図4に、光照射前後でのXPSスペクトルを示す。
修飾後に接触角が大きく、疎水性を示したことから基板上が修飾されたと考えられる。また、XPSより、修飾後にニトロ基由来のピークの出現が見られたことからも修飾できたことを示した。
光照射後に接触角が小さくなることが確認された。また、XPSより、光照射後にニトロ基由来のピークが消失し、C(炭素)ピークが減少したことから光分解性基が光照射により脱離したことが確認できた。
【0130】
<化合物3bの合成>
≪工程1;1−(4−(3−(1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサニル)プロポキシ)−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボナートの合成≫
50mL二口ナスフラスコに、中間体化合物14(1.0g,2.53mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(21mL)に溶解し、1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン(1.13g,5.07mmol)、カーステッド触媒(1.0mL)を加え、窒素雰囲気下、遮光して室温で3時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=200:100:3)、黄色粘体0.597g(0.968mmol,38%)を得た。
【0131】
得られた中間体化合物1bの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.03 (6H, s), 0.09 (9H, s), 0.12 (6H, s), 0.62−0.69 (2H, m), 1.76 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.86−1.95 (2H, m), 2.80 (4H, s), 3.99−4.05 (2H, m), 4.04 (3H, s), 6.51 (1H, q, J = 6.4 Hz), 7.07 (1H, s), 7.63 (1H, s).
【0132】
【化27】
【0133】
≪工程2;1−(4−(3−(1,1,3,3,5,5,5−heptamethyltrisiloxanyl)propoxy)−5−methoxy−2−nitrophenyl)ethyl 3−trimethoxysilylpropyl carbamateの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物1b(200mg,0.324mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(2mL)に溶解し、3−aminopropyltrimethoxysilane(0.085mL,0.486mmol)、トリエチルアミン(0.113mL,0.81mmol)を加え、窒素雰囲気下、遮光して室温で13時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=50:50:1)、明黄色粘体98mg(0.144mmol,45%)を得た。
【0134】
得られた化合物3bの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.03 (6H, s), 0.09 (9H, s), 0.11 (6H, s), 0.58−0.69 (4H, m), 1.53−1.69 (5H, m), 1.84−1.94 (2H, m), 3.06−3.21 (2H, m), 3.56 (9H, s), 3.95 (3H, s), 4.01 (2H, t, J = 7.2 Hz), 4.95 (1H, t, J = 5.8 Hz), 6.37 (1H, q, J = 6.4 Hz), 6.99 (1H, s), 7.56 (1H, s).
【0135】
【化28】
【0136】
<化合物4aの合成>
≪工程1;1−(3,4−ジアリルオキシフェニル)エタノンの合成≫
300mL二口ナスフラスコに、3,4−ジヒドロキシアセトフェノン(10.0g,65.7mmol)を入れてアセトン(145mL)に溶解し、炭酸カリウム(36.3g,263mmol)を加え、室温で1時間撹拌した後、臭化アリル(37.4g,309mmol)を添加し、2.5時間還流した。濃縮後、酢酸エチル(150mL×3)と純水(150mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(150 mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、淡黄色固体15.2g(65.2mmol,99%)を得た。
【0137】
得られた中間体化合物21の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 2.55 (3H, s), 4.65−4.70 (4H, m), 5.29−5.34 (2H, m), 5.41−5.48 (2H, m), 6.03−6.14 (2H, m), 6.88−6.91 (1H, m), 7.53−7.56 (2H, m).
【0138】
【化29】
【0139】
≪工程2;1−(4,5−ジアリルオキシ−2−ニトロフェニル)エタノンの合成≫
300mLナスフラスコに、中間体化合物21(15.2g,65.2mmol)を入れて酢酸(60mL)に溶解し、氷浴上で発煙硝酸(27.3mL)を20分かけてゆっくり加え、反応の進行をTLCで確認後、純水(200mL)に注いだ。クロロホルム(250mL×3)で抽出、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(250mL×2)、飽和食塩水(250mL×2)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)、淡黄色固体を得た。エタノールから再結晶し、針状淡黄色結晶6.08g(21.9mmol,34%)を得た。
【0140】
得られた中間体化合物22の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 2.49 (3H, s), 4.68−4.72 (4H, m), 5.35−5.40 (2H, m), 5.42−5.51 (2H, m), 6.00−6.12 (2H, m), 6.76 (1H, s), 7.62 (1H, s).
【0141】
【化30】
【0142】
≪工程3;1−(4,5−ジアリルオキシ−2−ニトロフェニル)エタノールの合成≫
300mLナスフラスコに、中間体化合物22(6.08g,21.9mmol)を入れてテトラヒドロフラン(70mL)に溶解し、メタノール(30mL)を加えた後、氷浴上で水素化ホウ素ナトリウム(2.90g,76.7mmol)を少しずつ添加し、0℃で1.5時間撹拌した。濃縮後、酢酸エチル(100mL×3)、純水(100mL)、2N塩酸(15mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(150mL×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。得られた黄褐色固体をヘキサンで洗浄、吸引ろ過し、黄色固体5.51g(19.7mmol,90%)を得た。
【0143】
得られた中間体化合物23の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 1.54 (3H, d, J = 6.3 Hz), 2.27 (1H, d, J = 3.6 Hz), 4.64−4.76 (4H, m), 5.32−5.38 (2H, m), 5.42−5.50 (2H, m), 5.51−5.57 (1H, m), 6.02−6.13 (2H, m), 7.30 (1H, s), 7.59 (1H, s).
【0144】
【化31】
【0145】
≪工程4;1−(4,5−ジアリルオキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボナートの合成≫
300mL二口ナスフラスコに、中間体化合物23(2.86g,10.2mmol)を入れてドライアセトニトリル(35mL)に溶解し、ジ(N−スクシンイミジル)カーボナート(4.46g,17.4mmol)、トリエチルアミン(3.21g,31.7mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で19時間撹拌した。濃縮後、酢酸エチル(250mL×3)と純水(250mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(250mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)、白黄色固体3.13g(7.45mmol,73%)を得た。
【0146】
得られた中間体化合物24の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 1.74 (3H, d, J = 6.4 Hz), 2.80 (4H, s), 4.65−4.69 (2H, m), 4.73−4.86 (2H, m), 5.33−5.41 (2H, m), 5.43−5.54 (2H, m), 6.01−6.16 (2H, m), 6.50 (1H, q, J = 6.4 Hz), 7.10 (1H, s), 7.65 (1H, s).
【0147】
【化32】
【0148】
≪工程5;1−(2−ニトロ−4,5−ビス(3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ)フェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボナートの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物24(400mg,0.95mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、トリス(トリメチルシロキシ)シラン(1.41g,4.75mmol)、カーステッド触媒(10滴)を加え、窒素雰囲気下、室温で27時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=8:1,テトラメトキシシラン1%含)、黄色粘体314mg(0.31mmol,33%)を得た。
【0149】
得られた中間体化合物2aの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.10−0.11 (54H, m), 0.54−0.65 (4H, m), 1.75 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.83−1.97 (4H, m), 2.80 (4H, s), 3.97−4.17 (4H, m), 6.52 (1H, q, J = 6.6 Hz), 7.05 (1H, s), 7.61 (1H, s).
【0150】
【化33】
【0151】
≪工程6;1−(2−nitro−4,5−bis(3−tris(trimethylsiloxy)silylpropoxy)phenyl)ethyl 3−trimethoxysilylpropyl carbamateの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物2a(147mg,0.145mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(7mL)に溶解し、3−aminopropyltrimethoxysilane(78mg,0.43mmol)、トリエチルアミン(44mg,0.43mmol)を加え、窒素雰囲気下、遮光して室温で13時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=3:1,テトラメトキシシラン1%含)、明黄色粘体64mg(0.059mmol,41%)を得た。
【0152】
得られた化合物4aの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.09−0.12 (54H, m), 0.51−0.67 (6H, m), 1.52−1.66 (5H, m), 1.81−1.94 (4H, m), 3.03−3.22 (2H, m), 3.56 (9H, s), 3.93−4.05 (4H, m), 4.88 (1H, t, J = 5.9 Hz), 6.37 (1H, q, J = 6.4 Hz), 6.97 (1H, s), 7.55 (1H, s).
【0153】
【化34】
【0154】
<化合物4bの合成>
≪工程1;1−(4,5−ビス(3−(1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサニル)プロポキシ)−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボナートの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物24(800mg,1.90mmol)を入れドライテトラヒドロフラン(15mL)に溶解し、1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン(1.69g,7.61mmol)、カーステッド触媒(10滴)を加え、窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=8:1,テトラメトキシシラン1%含)、黄色粘体527mg(0.60mmol,32%)を得た。
【0155】
得られた化合物2bの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.03 (6H, s), 0.04 (6H, s), 0.08 (9H, s), 0.09 (9H, s), 0.12 (6H, s), 0.12 (6H, s), 0.63−0.73 (4H, m), 1.75 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.84−1.96 (4H, m), 2.80 (4H, s), 3.97−4.21 (4H, m), 6.48−6.55 (1H, m), 7.05 (1H, s), 7.61 (1H, s).
【0156】
【化35】
【0157】
≪工程2; 1−(4,5−bis(3−(1,1,3,3,5,5,5−heptamethyltrisiloxanyl)propoxy)−2−nitrophenyl)ethyl 3−trimethoxysilylpropyl carbamateの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物2b(500mg,0.578mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、3−aminopropyltrimethoxysilane(0.122mL,0.692mmol)、トリエチルアミン(70mg,0.69mmol)を加え、窒素雰囲気下、遮光して室温で3時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=3:1,テトラメトキシシラン1%含)、明黄色粘体342mg(0.368mmol,64%)を得た。
【0158】
得られた化合物4bの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.025 (6H, s), 0.031 (6H, s), 0.080 (9H, s), 0.085 (9H, s), 0.11 (6H, s), 0.12 (6H, s), 0.58−0.71 (6H, m), 1.53−1.67 (5H, m), 1.82−1.94 (4H, m), 3.03−3.22 (2H, m), 3.56 (9H, s), 3.99 (2H, t, J = 7.0 Hz), 4.03 (2H, t, J = 7.0 Hz), 4.90 (1H, t, J = 5.8 Hz), 6.37 (1H, q, J = 6.4 Hz), 6.97 (1H, s), 7.55 (1H, s).
【0159】
【化36】
【0160】
<化合物4cの合成>
≪工程1;1−(4,5−ビス(3−(ポリジメチルシロキサニル)プロポキシ)−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボナートの合成≫
200mL二口ナスフラスコに、中間体化合物24(1.01g,2.39mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(30mL)に溶解し、ポリジメチルシロキサン(6.69g,6.19mmol)、カーステッド触媒(10滴)を加え、窒素雰囲気下、室温で20時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=8:1,テトラメトキシシラン1%含)、黄色粘体630mg(0.26mmol,11%)を得た。
【0161】
得られた化合物2cの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.03−0.14 (156H, m), 0.49−0.57 (4H, m), 0.62−0.75 (4H, m), 0.88 (6H, t, J = 7.0 Hz), 1.24−1.38 (8H, m), 1.75 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.83−1.97 (4H, m), 2.80 (4H, s), 3.97−4.21 (4H, m), 6.48−6.55 (1H, m), 7.04 (1H, s), 7.61 (1H, s).
【0162】
【化37】
【0163】
≪工程2;1−(4,5−bis(3−(polydimethylsiloxanyl)propoxy)−2−nitrophenyl)ethyl 3−trimethoxysilylpropyl carbamateの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物2c(305mg,0.12mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(12mL)に溶解し、3−aminopropyltrimethoxysilane(66mg,0.37mmol)、トリエチルアミン(37mg,0.37mmol)を加え、窒素雰囲気下、遮光して室温で2.5時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=2:1,テトラメトキシシラン1%含)、黄色粘体91mg(0.036mmol,29%)を得た。
【0164】
得られた化合物4cの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3/ TMS, 400 MHz): δ 0.02−0.14 (156H, m), 0.49−0.57 (4H, m), 0.58−0.71 (6H, m), 0.88 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.24−1.36 (8H, m), 1.52−1.65 (5H, m), 1.81−1.94 (4H, m), 3.03−3.23 (2H, m), 3.56 (9H, s), 3.98 (2H, t, J = 7.0 Hz), 4.03 (2H, t, J = 7.0 Hz), 4.89 (1H, t, J = 5.7 Hz), 6.33−6.40 (1H, m), 6.97 (1H, s), 7.55 (1H, s).
【0165】
【化38】
【0166】
<表面修飾>
熱酸化膜付シリコンウェハ(SiO
2/Si基板)を純水、アセトン、メタノール、クロロホルムで各5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した後、UV−オゾンクリーナーにてUVを1時間照射して前処理した。
次に、上記方法により得られた化合物3b、4a、4b、4cをそれぞれドライトルエンに溶解して1mM(化合物4a、4b、4cは0.1mMとした)溶液を調製し、上記の前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下、室温で20時間(化合物4a、4cは24時間とした)浸漬した。基板をクロロホルムで5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した(下記工程1)。
【0167】
<光照射>
修飾した基板に、超高圧水銀灯でフィルターを介して波長365nm、照度15J(化合物4bのみ10Jとした)の光を大気中で照射した。基板をクロロホルムで5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した(下記工程2)。
【0168】
【化39】
【0169】
【化40】
【0170】
<接触角測定>
接触角計(協和界面科学株式会社)を用いて液滴法・θ/2法に従って、プローブ液体に水、ジヨードメタン、1−ブロモナフタレンをそれぞれ用いて光照射前後の静的接触角を測定した。その結果を表に記載する。下記表において、「光照射前」は上記工程1の直後を「光照射後」は上記工程2の直後を、それぞれ意味する。
【0171】
【表2】
【0172】
<XPS測定>
X線光電子分光法(X−ray photoelectron spectroscopy、以下「XPS」という。)により評価した。
図5は化合物3bで修飾した基板、
図6は化合物4aで修飾した基板、
図7は化合物4bで修飾した基板、
図8は化合物4cで修飾した基板における光照射前後でのXPSスペクトルを示す。
【0173】
得られた修飾基板は、静的接触角測定及びXPSにより光照射前後を比較した。
修飾後に接触角が大きく、撥水性を示したことから基板上が修飾されたと考えられる。また、化合物3b、4a、4cは、XPSより、修飾後にニトロ基由来のピークの出現を確認できた。化合物4bについては、XPSによるニトロ基由来の明確なピークは確認されなかったが、これは、膜厚が薄く、十分な感度を得られなかったことが原因であると考えられる。
光照射後に接触角が小さくなることが確認された。また、XPSより、化合物3b、4a、4cは、光照射後にニトロ基由来のピークの消失を確認できた。また、いずれの化合物においても、C(炭素)ピークが減少したことから光分解性基が光照射により脱離したことが確認できた。