【解決手段】測定対象を介した通電経路を表側に形成し前記測定対象の電気伝導度を測定する為の第一電極及び第二電極と、前記測定対象のpH値を測定する為の参照電極及びISFETと、を備え、前記参照電極の基準電極が前記第一電極及び前記第二電極より裏側に配置されている。
筐体の頂点又は頂面を通って前記筐体を縦断する仮想線に対して、該仮想線と交差する交差方向の一方側の第一面に前記第一電極及び前記第二電極が設けられ、前記交差方向の他方側の第二面に前記参照電極の前記基準電極が設けられている請求項1記載の測定装置。
前記第一電極に交流信号を印加するとともに、前記測定対象を介して前記第二電極に入力する交流信号の位相差を測定して前記測定対象の電気伝導度を取得する取得手段をさらに備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の測定装置。
前記参照電極の基準電極が、前記第一電極の表面と同一平面をなす第一仮想面より前記第一電極の裏面側、且つ、前記第二電極の表面と同一平面をなす第二仮想面より前記第二電極の裏面側に配置されることを特徴とする請求項6に記載の測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る測定装置10を示す図であり、測定装置10は、作物を育てる土壌や水耕栽培の養液等の測定対象ST(
図5〜
図7参照)の状態を測定する際に用いられる。また、測定装置10は、二種類のセンサを備えており、測定対象STの水分量やイオン濃度やpH値などを多角的に測定できるように構成されている。
【0014】
この測定装置10の筐体12は、一例として絶縁体である合成樹脂で形成されている。この筐体12は、
図1から
図3に示すように、便宜上、前側を構成する前面14と、後ろ側を構成する後面16と、左側を構成する左面18と、右側を構成する右面20と、先端側を構成する先端面22とを備えた角柱状に形成されている。
【0015】
筐体12の前面14における
図1中上側である先端部には、
図1に示したように、先端へ向かうに従って後面16側へ傾斜した前部傾斜面24が形成されている。前部傾斜面24には、矩形状に窪んだ凹部26が形成されており、この凹部26の底に平坦な一面の一例である凹部底面26Aが形成されている。
【0016】
凹部底面26Aには、測定対象STの電気伝導度を測定する為の第一電極28及び第二電極30が互いに左右方向へ離間して並設されている。各電極28、30は、長方形の板状に形成されており、表面が前側を向くととともに裏面が凹部底面26Aに面接触した状態で固定されている。
【0017】
第一電極28の表面は、測定対象STに接する面を構成し、第一電極28は、交流信号を出力する。また、第二電極30の表面は、測定対象STに接する面を有し、第二電極30には、第一電極28から出力された交流信号が入力信号として入力される。
【0018】
このように、各電極28、30は、表面が通電面とされており、測定装置10を測定対象STに挿入する測定時において、測定対象STを介した通電経路32(
図7参照)を表側34に形成するように構成されている。
【0019】
このとき、
図4に示すように、第一電極28の表面と同一平面をなす第一仮想面28B、及び第二電極30の表面と同一平面をなす第二仮想面30Bを想定した際に、両仮想面28B、30Bより表側34の電気伝導度を測定できるように構成されている。なお、本実施形態では、一例として両仮想面28B、30Bが同一平面を構成する。
【0020】
また、凹部底面26Aには、矩形状のISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)36が設けられている。ISFET36は、後述する参照電極38(
図3参照)と共に用いて測定対象STのpH値を測定する為のチップであり、ISFET36の外形寸法は、第一電極28及び第二電極30と比較して小さい。
【0021】
このISFET36は、第一電極28及び第二電極30間の離間領域40より先端側に配置されている。また、
図4に示したように、ISFET36の表面を構成する感応面36Aは、第一電極28の表面を構成する第一頂面28A及び第二電極30の表面を構成する第二頂面30Aより凹部底面26A側に位置する。
【0022】
ここで、本実施形態では、ISFET36を第一電極28及び第二電極30より薄肉とし、ISFET36の感応面36Aが第一電極28の第一頂面28A及び第二電極30の第二頂面30Aより凹部底面26A側に位置するようにしたが、これに限定されない。
【0023】
例えば、凹部底面26Aに窪みを形成し、この窪み内にISFET36を設けることで、ISFET36の感応面36Aを各電極28、30の各頂面28A、30Aより凹部底面26A側に位置するようにしても良い。
【0024】
図2に示したように、筐体12の後面16には、先端へ向かうに従って前面14側へ傾斜した後部傾斜面42が
図2中上側の先端部に形成されており、後部傾斜面42は、平坦に形成されている。
【0025】
前述した前部傾斜面24は、
図3に示すように、筐体12の最も先端側に位置する頂点又は頂面の一例である先端面22を通って筐体12を縦断する仮想線CSに対して、仮想線CSと交差する交差方向Kの一方I側に設けられている。これにより、前部傾斜面24に形成された凹部底面26Aは、仮想線CSを境とした一方I側に設けられた第一面を構成する。また、後部傾斜面42は、仮想線CSと交差する交差方向Kの他方T側に設けられており、当該後部傾斜面42は、交差方向Kの他方T側の第二面を構成する。
【0026】
なお、本実施形態では、仮想線CSが筐体12を縦断する中心線で構成された場合を例に示している。また、例えば筐体12の頂部が球面で構成された場合、この仮想線は22、筐体12で最も先端側に位置する頂点を通過する直線であってもよい。
【0027】
この筐体12内には、参照電極38と制御ユニット44とが設けられている。
【0028】
参照電極38は、容器状のタンク46を備えており、タンク46内には、内部液48が充填されている。この内部液48内には、内部電極50が配置されており、内部電極50の基端部は、タンク底面46Aより延出している。内部液48としては、一例として塩化カリウム(KCl)溶液が挙げられ、内部電極50の素材としては、一例として銀/塩化銀(Ag/AgCl)が挙げられる。
【0029】
タンク46の天面46Bは、中央部に向かうに従って先端側へ傾斜しており、その頂部からは、円筒状の筒部52が延出している。筒部52内の連通穴52Aは、タンク46内に連通しており、タンク46内の内部液48を筒部52の先端から液絡部54に供給できるように構成されている。
【0030】
この筒部52の先端には、円柱状の液絡部54が設けられており、液絡部54は、多孔質材で構成されている。液絡部54の先端部は、斜めに切断された先細り形状とされており、その端面が後部傾斜面42に露出している。そして、この端面が後部傾斜面42と面一になるように当該参照電極38が配置されている。
【0031】
これにより、筐体12を縦断する仮想線CSと交差する交差方向Kの他方T側の後部傾斜面42に参照電極38が設けられている。また、交差方向Kの一方I側の凹部底面26Aに第一電極28及び第二電極30が設けられており、参照電極38は、第一電極28及び第二電極30より裏側56に配置されている。
【0032】
言い換えると、参照電極38は、第一電極28の表面と同一平面をなす第一仮想面28Bより第一電極28の裏面側128、且つ第二電極30の表面と同一平面をなす第二仮想面30Bより第二電極30の裏面側130に配置されている。
【0033】
また、参照電極38は、タンク46内の内部液48を筒部52から液絡部54へ供給し、液絡部54は、内部液48を端面から筐体12の外側へ滲出する。後部傾斜面42に露出した液絡部54の端面は、測定対象STに基準電位を付与する基準電極58を構成する。
【0034】
この参照電極38のタンク46から延出した内部電極50は、制御ユニット44に接続されている。
【0035】
制御ユニット44は、
図5に示すように、制御部60を備えており、制御部60は、例えばROM及びRAMを内蔵したマイコンを中心に構成されている。この制御部60には、参照電極38の内部電極50と(
図3参照)、参照電極38と対を成すISFET36とが接続されており、参照電極38とISFET36と制御部60とによってpHセンサ62が構成されている。
【0036】
ISFET36は、
図6に示すように、ドレインDに直流電源64の正極が接続されており、ソースSは、定電流回路66を介してグランドラインGに接地されるとともに、制御部60(
図5参照)を構成する例えばマイコンのAD変換ポートに接続されている。ISFET36のドレインDとソースS間のゲート部分は、イオン感応膜36Bで構成されており、イオン感応膜36Bは、その感応面36Aが測定対象STに接するように構成されている。
【0037】
この測定対象STに参照電極38の基準電位を基準電極58から印加すると、測定対象ST内の水素イオン(H
+)がISFET36の感応面36Aに集まる。すると、ISFET36は、測定対象STとイオン感応膜36B間の界面電位を検出して電流を流す。そして、制御部60は、ISFET36が検出した界面電位と参照電極38との電位差を測定することで、測定対象STの水素イオン指数を示すpH値を測定する。
【0038】
また、
図5に示したように、制御部60には、受信部68が接続されており、受信部68には、発振部70からの交流信号が供給される。発振部70には、第一電極28が接続されており、第一電極28は、表面が測定対象STと接し、測定対象STに交流信号を出力する。
【0039】
第一電極28と対を成す第二電極30も表面が測定対象STと接するように構成されており、第二電極30は、受信部68に接続されている。これより、第二電極30は、第一電極28から測定対象STに出力された交流信号を入力信号として入力する。
【0040】
この第一電極28、第二電極30、発振部70、及び受信部68によって電気伝導度測定センサ72が構成されており、電気伝導度測定センサ72からの信号は、制御部60に送られる。
【0041】
電気伝導度測定センサ72について等価回路を用いて詳説すると、電気伝導度測定センサ72の発振部70は、
図7に示すように、所定の周波数の交流信号を出力する交流電源74で構成されている。この交流電源74は、交流信号を第一電極28に印加する。
【0042】
受信部68(
図5参照)は、交流電源74から第一電極28に供給する交流信号と、第二電極30に入力された交流信号である入力信号とを比較する比較回路76で構成されている。具体的に説明すると、第一電極28に印加した交流電圧と測定対象STを介して第二電極30に入力された交流電圧の振幅及び位相差を、両電極28、30間の電気伝導度及びインピーダンスとして取得して制御部60に出力する。これにより、第一電極28に交流信号を印加するとともに、第一電極から出力された交流信号と測定対象STを介して第二電極に入力する入力信号との位相差を測定して測定対象STの電気伝導度を取得する取得手段が構成されている。
【0043】
この電気伝導度測定センサ72の動作を説明すると、測定装置10を測定対象STに挿入し、両電極28、30に測定対象STを接触させる。そして、第一電極28に所定の周波数の交流信号を印加し、測定対象STを介して第二電極30に入力する入力信号を測定し、測定対象STの抵抗成分Rに応じて変化する交流電圧の振幅の大きさから電気伝導度を取得する。また、測定対象STの電気容量Cに応じて変化する第一電極から出力した交流電圧と測定対象STを介して第二電極に入力された交流電圧との位相差からインピーダンスを取得する。
【0044】
そして、取得した電気伝導度及びインピーダンスから測定対象STに含まれる空気量や水分量を把握できるので、これらの測定結果を制御部60に予め記憶されたデータベースと照合して、測定対象STの水分量及びイオン濃度を取得する。また、データベースを利用して取得した水分量及びイオン濃度から測定対象STに含まれる養分を推定する。
【0045】
なお、このデータベースには、第一電極28及び第二電極30の近傍に配置されるISFET36が電気伝導度測定センサ72による測定結果に与える影響を排除するためのキャンセルデータが記憶されている。そして、制御部60は、このキャンセルデータを用いて電気伝導度測定センサ72による測定結果を補正する。
【0046】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0047】
作物を育てる土壌や水耕栽培の養液等の測定対象STの状態を測定する際には、
図8に示すように、測定装置10の先端部を測定対象STに挿入し、pHセンサ62でpH値を測定するとともに、電気伝導度測定センサ72で水分量及びイオン濃度を測定する。
【0048】
このとき、pHセンサ62を構成する参照電極38における基準電極58は、筐体12の後部傾斜面42に設けられており、基準電極58からは、内部液48が測定対象STに滲出するとともに測定対象STに基準電位を付与する。この基準電位が付与された測定対象ST内の水素イオン(H
+)は、前部傾斜面24の凹部底面26Aに設けられたISFET36の感応面36Aに集まり、これに応じてISFET36に電流が流れる。これにより、ISFET36のソースSの出力電圧を測定することで、測定対象STの水素イオン量を把握でき、測定対象STのpH値を取得することができる。
【0049】
一方、電気伝導度測定センサ72の第一電極28及び第二電極30は、前部傾斜面24の凹部底面26Aに設けられており、両電極28、30に印加した交流信号の入出力波形の変化から水分量及びイオン濃度を取得して測定対象STに含まれる養分を推定する。
【0050】
ここで、pHセンサ62の参照電極38は、第一電極28の表面と同一平面をなす第一仮想面28Bより第一電極28の裏面側128、且つ第二電極30の表面と同一平面をなす第二仮想面30Bより第二電極30の裏面側130に配置されている。これにより、両仮想面28B、30Bより表側34の電気伝導度を測定するように構成されている電気伝導度測定センサ72の通電経路32が参照電極38の基準電極58を横切ることは無い。
【0051】
このため、参照電極38が、電気伝導度測定センサ72の測定に与える影響を抑制しつつ、多角的な測定を行うことができる。
【0052】
また、pHセンサ62の参照電極38は、第一電極28及び第二電極30の裏側56に配置されている。このため、参照電極38の基準電極58は、第一電極28及び第二電極30の裏側56に露出する。
【0053】
このとき、筐体12の電気伝導度センサ72の電極28、30が配置されている側に参照電極38を配置した場合、参照電極38の液絡部54を介して測定対象物ST中に拡散した参照電極38の内容液48により電気伝導度の測定値が影響を受けてしまう。
【0054】
そこで、本実施形態にあっては、電気伝導度センサ72の電極28、30と反対側に参照電極38を配置したので、参照電極38の液絡部54から拡散した内容液48が電気伝導度測定センサ72の測定に与える影響を抑制することができる。
【0055】
また、参照電極38の基準電極58は、ISFET36と比較して、測定対象STへの接触面積が大きい。このため、第一電極28及び第二電極30による通電経路32側に参照電極38の基準電極58が配置された場合と比較して、第一電極28及び第二電極30による電気伝導度の測定に与える影響を抑制することができる。
【0056】
したがって、測定対象STの状態を精度よく多角的に測定することができる。
【0057】
ここで、測定対象ST中の水分量やイオン濃度の測定値が実際と異なる値として測定され、これに基づいて測定対象STを管理すると、測定対象STに水分や養分を過剰に供給したり、供給不足を生じたりすることが生じ得る。この場合、農作物の成長に影響を与える虞がある。
【0058】
そこで、本実施形態に係る測定装置10においては、測定対象STの状態を精度よく多角的に測定することができるので、農作物の成長に適した環境を形成することができる。
【0059】
このとき、pHセンサ62を構成するISFET36は、
図8に示すように、電気伝導度測定センサ72の第一電極28及び第二電極30より先端側に配置されている。これにより、電気伝導度測定センサ72による測定領域SR1と、pHセンサ62による測定領域SR2との重畳が抑制される。
【0060】
また、
図3に示したように、参照電極38の基準電極58からの内部液48は、第一電極28及び第二電極30間に形成される通電経路32と反対側に滲出される。このため、内部液48が電気伝導度測定センサ72の測定結果に与える影響、特に内部液48が広がる過程で生じ得る影響度の変化を抑制することができる。
【0061】
これらによっても測定精度の向上に寄与することができる。
【0062】
また、筐体12の頂点又は頂面の一例である先端面22を通って筐体12を縦断する仮想線CSに対して、仮想線CSと交差する交差方向Kの一方I側の第一面である凹部底面26Aに第一電極28及び第二電極30が設けられている。また、交差方向Kの他方T側の第二面である後部傾斜面42に参照電極38における基準電極58が設けられている。
【0063】
これにより、参照電極38を、第一電極28及び第二電極30の裏側に配置することができるので、構成の簡素化を図ることができる。
【0064】
そして、本実施形態では、電気伝導度測定センサ72の第一電極28及び第二電極30が設けられた第一面である凹部底面26AにpHセンサ62のISFET36が設けられている。
【0065】
このため、ISFET36によるpH値の測定を、電気伝導度測定センサ72による測定領域SR1に近い位置で行うことができる。これにより、測定対象STのpH値と、水分量及びイオン濃度とが測定装置10の反対側で測定される場合と比較して、測定結果を反映した管理による効果を高めることができる。
【0066】
また、このISFET36の感応面36Aは、第一電極28の第一頂面28A及び第二電極30の第二頂面30Aより一面である凹部底面26A側に位置する。
【0067】
これにより、第一電極28の第一頂面28Aと第二電極30の第二頂面30Aとの間を流れる交流信号の通電経路32をISFET36の感応面36Aから表側34に離すことができる。このため、両電極28、30間を流れる交流信号がISFET36に与える影響を抑制することができ、pHセンサ62による測定精度の向上に寄与することができる。
【0068】
そして、第一電極28に交流信号を印加するとともに、測定対象STを介して第二電極30に入力する交流信号の位相差を測定して測定対象STの電気伝導度を取得する。
【0069】
これにより、測定対象STの水分量及びイオン濃度を取得するとともに、これらから測定対象STに含まれる養分を推定することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、先細り形状に形成された筐体12の前部傾斜面24側に第一電極28及び第二電極30を設け、後部傾斜面42側に参照電極38の基準電極58を設けた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0071】
例えば、筐体12の先端部が球面状に形成された場合には、筐体12を縦断する仮想線CSと交差する交差方向Kの一方I側の面に第一電極28及び第二電極30を設け、交差方向Kの他方T側の面に参照電極38の基準電極58を設けても良い。
【0072】
また、球面状の筐体12に形成された平坦面に第一電極28及び第二電極30が設けられている場合、平坦面と異なる面に参照電極38の基準電極58を設けても良い。このとき、筐体12を縦断する仮想平面の一方I側に第一電極28及び第二電極30を設け、他方T側に参照電極38の基準電極58を設けても良い。