【解決手段】複数の光学素子を有する走査装置20が設けられている。1つの走査ビーム経路が、走査装置20の複数の光学素子の配列及び構成によって形成され、走査ビーム経路内では、分岐され干渉する2つの部分ビーム束A、Bが、1つの対称面SEに対してミラー対称に伝播し、測定スケール10上にV字状に入射し、及び/又は測定スケール10からV字状に戻り反射する。対称面SEが、測定スケール10の表面に対して平行に指向されていて、目盛方向に対して直角に延在する1つの回転軸を中心にして測定スケール10に対して所定の傾斜角度αだけ傾いている。測定目盛12で対称な複数の回折次数に回折される2つの部分ビーム束A、Bが干渉し、2つの部分ビーム束A、Bが、分岐と再結合との間で同じ光路長を進行する。
前記測定目盛(12;112;212;312;412)で+1次の回折次数と−1次の回折次数とから発生する複数の部分ビーム束(A,B)が干渉する請求項1に記載の光学式エンコーダ。
前記測定目盛(12;112;212;312;412)は、信号を生成するために使用される前記複数の回折次数の高い回折効率に最適化されている反射位相格子として形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式エンコーダ。
前記複数の部分ビーム束(A,B)の同じ光路長が、これらの部分ビーム束(A,B)の分岐と再結合との間で発生するように、前記対称面(SE)に対する前記測定目盛(12;112;212;312;412)上に入射する1つのビーム束(SIN)の入射角度(γ)が選択されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
前記走査装置は、複数の光学素子を有する少なくとも1つの走査板を備え、当該走査板は、前記対称面に対して直角に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ。
1つの再結合格子(128)が、前記測定スケール(110)に面している前記走査板(121)の側面上にさらに配置されていて、前記測定スケール(110)から戻り反射した前記重畳した複数の部分ビーム束(A,B)が、この再結合格子(128)上に入射し、この再結合格子(128)を透過することで重畳した部分ビーム束(A,B)の複数の対に分岐され、これらの対が、空間的に分離して、位相シフトされている走査信号を生成するための複数の検出素子を有する1つの検出装置(127)の方向に伝播することを特徴とする請求項8に記載の光学式エンコーダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、傾いた感度ベクトルを有し、許容し得る全ての走査間隔において波長の変化に対して鈍感であり、高い信号効率を有し、可能な限り大きい取り付け公差を有する光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載の特徴を有する光学式エンコーダによって解決される。
【0009】
本発明の光学式エンコーダの好適な構成が、従属請求項に記載されている。
【0010】
互いに相対可動な2つの物体の位置を検出するための本発明の光学式エンコーダは、一方では前記2つの物体のうちの1つの物体に結合されていて、少なくとも1つの目盛方向に沿った複数の目盛領域の周期的な配列を成す1つの測定目盛を有する1つの測定スケールを備える。他方では、他方の物体に配置された複数の光学素子を有する1つの走査装置が設けられている。1つの走査ビーム経路が、前記走査装置の前記複数の光学素子の配列及び構成によって形成され、この走査ビーム経路内では、分岐され干渉する複数の部分ビーム束が、1つの対称面に対してミラー対称に伝播し、前記測定スケール上にV字状に入射し、及び/又は前記測定スケールからV字状に戻り反射する。前記対称面が、前記測定スケールの表面に対して平行に指向されていて、前記目盛方向に対して直角に延在する1つの回転軸を中心にして前記測定スケールに対して所定の傾斜角度だけ傾いている。前記測定目盛で対称な複数の回折次数に回折される複数の部分ビーム束が干渉し、前記複数の部分ビーム束が、その分岐とその再結合との間で同じ光路長を進行する。
【0011】
特に、前記測定目盛で+1次の回折次数と−1次の回折次数とから発生する複数の部分ビーム束が干渉する。
【0012】
この場合、前記測定目盛は、信号を生成するために使用される前記複数の回折次数の高い回折効率に最適化されている反射位相格子として形成され得る。
【0013】
さらに、前記複数の部分ビーム束の同じ光路長が、これらの部分ビーム束の分岐と再結合との間で発生するように、前記対称面に対する前記測定目盛上に入射する1つのビーム束の入射角度が選択されていることが可能である。
【0014】
この場合、前記走査装置は、複数の光学素子を有する少なくとも1つの走査板を備え得る。この場合、当該走査板は、前記対称面に対して直角に配置されている。
【0015】
さらに、前記対称面に対する前記測定目盛上に入射する1つのビーム束の入射角度は、
【0016】
【数1】
にしたがって選択されていて、
ここで
γ:=対称面に対する測定目盛上に入射する1つのビーム束の入射角度
k:=λ/d
M
λ:=光波長
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
であることが提唱され得る。
【0017】
前記走査装置内に配置された1つの走査板が透過性に配置されていて、2つの第1走査格子及び2つの第2走査格子が、前記走査板の前記測定スケールに面した側面上に配置されていて、2つの反射器が、当該側面に対して反対の側面上に配置されていて、前記反射器の反射面が、前記測定スケールの方向に指向されていることも可能である。
【0018】
この場合、1つの光源から放射した1つのビーム束が、
−前記測定目盛上に当たり、この測定目盛上で2つの異なる対称な回折次数に相当する2つの部分ビーム束に分岐し、前記走査装置に向かってV字状に戻り反射し、
−当該戻り反射した両部分ビーム束、前記走査装置内で前記2つの第1走査格子を前記2つの反射器の方向に透過し、このときに、入射方向に対して反平行に指向した回折作用と、専ら前記目盛方向に対して直角な集光作用とを受け、
−次いで、こうして回折され集光された複数の部分ビーム束がそれぞれ、前記反射器上に当たり、前記測定スケールの方向に戻り反射し、
−次いで、当該戻り反射した両部分ビーム束が、前記2つの第2走査格子を前記測定スケールの方向に透過し、このときに、前記目盛方向への回折作用と、専ら前記目盛方向に対して直角なコリメート作用とを受ける結果、このときに、当該両部分ビーム束が、前記測定スケールの方向にV字状に伝播し、
−重畳した複数の部分ビーム束が、前記測定スケールで新たに回折し、前記走査装置の方向に戻り反射するように、前記走査装置が構成され得る。
【0019】
この場合、全ての走査格子の目盛周期が、
d
R=d
M・cosα
にしたがって選択されていて、
ここで、
d
R:=走査格子の目盛周期
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
であることがさらに提唱され得る。
【0020】
この場合、1つの再結合格子が、前記測定スケールに面している前記走査板の側面上にさらに配置されていて、前記測定スケールから戻り反射した前記重畳した複数の部分ビーム束が、この再結合格子上に入射し、この再結合格子を透過することで重畳した部分ビーム束の複数の対に分岐され、これらの対が、空間的に分離して、位相シフトされている走査信号を生成するための複数の検出素子を有する1つの検出装置の方向に伝播することがさらに可能である。
【0021】
この場合、好ましくは、前記第1走査格子及び前記第2走査格子が、異なる目盛周期を有する結果、前記複数の部分ビーム束が、前記測定スケールでの2回目の反射後に異なる角度を成して前記再結合格子上に当たる。
【0022】
前記走査装置内に配置された1つの走査板が、透過性に形成されていて、
1つの第1走査格子及び1つの第2走査格子が、前記走査板の前記測定スケールに面した側面上に配置されていて、1つの再結合格子が、当該側面に対して反対の側面上に配置されている結果、1つの光源から放射した1つのビーム束が、
−前記測定目盛上に当たり、この測定目盛上で2つの異なる対称な回折次数に相当する2つの部分ビーム束に分岐し、前記走査装置に向かってV字状に戻り反射し、
−当該戻り反射した両部分ビーム束が、前記走査装置内で前記第1走査格子及び前記第2走査格子を透過し、前記再結合格子の方向に伝播し、
−新たな回折が、前記再結合格子で発生し、引き続き、重畳した部分ビーム束の複数の対が、複数の検出素子を有する1つの検出装置の方向に伝播することも可能である。
【0023】
さらに、前記走査装置が、少なくとも2つの反射器と2つのビームスプリッターキューブとを有し得る結果、1つの光源から放射した1つのビーム束が、
−前記測定目盛上に当たり、この測定目盛上で2つの異なる対称な回折次数に相当する2つの部分ビーム束に分岐し、前記走査装置に向かってV字状に戻り反射し、
−当該戻り反射した両部分ビーム束が、それぞれ1つの反射器によって第1の前記ビームスプリッターキューブの方向に偏向され、当該戻り反射した両部分ビーム束が、複数の偏光光学素子の透過後に第1の前記ビームスプリッターキューブで重畳し、1つの検出素子の方向に部分的に再び伝播し、第2の前記ビームスプリッターキューブの方向に部分的に再び伝播し、そして
−第2の前記ビームスプリッターキューブ内で別の複数の検出素子の方向に伝播する重畳した少なくとも2つのさらなる部分ビーム束に分岐され、
−当該分岐され重畳した複数の部分ビーム束が、前記複数の検出素子上に当たる前に複数の別の偏光光学素子をそれぞれ透過する結果、位相シフトされている走査信号が、前記複数の検出素子ごとによって生成可能である。
【0024】
さらに、前記走査装置が、少なくとも2つの反射器と3つのビームスプリッターキューブとを有する結果、1つの光源から放射した1つのビーム束が、
−1つの第1の前記ビームスプリッターキューブ内で2つの部分ビーム束に分岐され、
−次いで、当該両部分ビーム束が、それぞれ1つの反射器によって前記測定目盛の方向に偏向される結果、これらの部分ビーム束が、測定目盛の方向にV字状に伝播し、これらの部分ビーム束がそれぞれ、この測定目盛で対称な複数の回折次数に分岐される結果、共線状に重畳した複数の部分ビーム束が、第2の前記ビームスプリッターキューブの方向に伝播し、当該共線状に重畳した複数の部分ビーム束が、複数の偏光光学素子の透過後に前記第2の前記ビームスプリッターキューブで重畳し、1つの検出素子の方向に部分的に再び伝播し、第3の前記ビームスプリッターキューブの方向に部分的に再び伝播し、そして
−第3の前記ビームスプリッターキューブ内で別の複数の検出素子の方向に伝播する重畳した少なくとも2つのさらなる部分ビーム束に分岐され、
−当該分岐され重畳した複数の部分ビーム束が、前記複数の検出素子上に当たる前に複数の別の偏光光学素子をそれぞれ透過する結果、位相シフトされている走査信号が、前記複数の検出素子ごとによって生成可能であることが可能である。
【0025】
さらに、前記走査装置が、少なくとも2つの反射器を有し、2つの前記部分ビーム束が、これらの反射器によって測定スケールの方向に偏向され、前記対称面に対して対称に且つ前記対称面に対して所定の入射角度を成して前記測定スケール上に入射し、
前記入射角度は、
【0026】
【数2】
にしたがって選択されていて、
ここで、
β
1,2:=入射角度
λ:=光波長
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
であることが提唱され得る。
【0027】
本発明の光学式エンコーダは、傾いた感度ベクトルによる位置測定を十分な信号強度及び取り付け公差で提供する。さらに、当該測定は、波長の変化に対してほぼ鈍感である。
【0028】
本発明のさらなる詳細及び利点を、図面に関連する本発明の装置の実施の形態の以下の記載に基づいて説明する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の光学式エンコーダの複数の実施の形態を図面に基づいて詳しく記載する前に、最初に、幾つかの概念を本発明に関連させて最初に説明する。
【0031】
このため、エンコーダの走査光学系についてもう一度説明する。当該光学系の場合、感度ベクトルが、測定動作中にスケールの表面に対して平行に指向されている。このような走査光学系では、一般に、1つの光源から放射した1つのビーム束が、2つの部分ビーム束に分割される。当該両部分ビーム束は、当該スケールの測定目盛で異なる回折次数に回折され、最終的に重畳されて干渉される。こうして、互いに位相シフトした複数の走査信号が生成され得る。複数の位置値が、インクリメンタル計数と補間とによって当該複数の走査信号から生成される。このような幾つかの走査光学系が、1つの対称面に対してミラー対称に当該分割から当該重畳まで進行される複数の部分ビーム束を生成する。この場合、この動作モードでは、このような複数の走査ビーム経路が、当該スケールの表面に対して直角に、したがって当該スケールの測定目盛の目盛方向に対して直角に直立している。この場合、当該目盛方向は、当該測定目盛の複数の格子線に対して常に直角に指向されている当該測定目盛の格子ベクトルに対応する。それ故に、以下では、用語の目盛方向と格子ベクトルとは、相互に同じに適用される。当該走査ビーム経路が、ミラー対称であるので、分割と再結合との間の当該複数の部分ビーム束の複数の伝播経路の長さが同じになる。当該走査光学系は、アクロマティックである。すなわち、光源の複数の波長とこれらの波長のスペクトル分布とが、個々の走査信号の位相と変調度とに影響しない。
【0032】
さらに、干渉する複数の部分ビーム束が、1つの対称面に対してミラー対称に伝播する走査光学系では、走査装置のいわゆる中立回転中心点(neutrale Drehpunkt)が、スケール上に存在するように、当該走査光学系は構成される。この場合、中立回転中心点は、示された位置値が変化することなしに、当該走査装置又は当該スケールが空間内の点を中心にして傾倒され得る当該点を意味する。当該中立回転中心点を中心とした傾倒の場合、分割と再結合との間の両部分ビーム束の複数の往復伝播経路が同じままである。以下では、ミラー対称な複数の部分ビーム束と当該スケール上の中立回転中心点とによるこのような走査光学系は、対称V字状の走査光学系と呼ばれる。したがって、この表記は、走査光学系の干渉する2つの部分ビーム束が一方では1つの対称面に対してミラー対称に伝播し、他方ではスケール上の共通の1つの走査地点上にV字状に入射し、当該スケールからV字状に戻り反射するあらゆる走査光学系を示す。この場合、目盛方向に沿った又は格子ベクトルに沿ったスケール上両部分ビーム束の目標地点同士をほぼ同一にするだけで済み、当該格子ベクトルに対して直角方向の目標地点同士のずれ、又は線状の複数の目盛領域の長手方向に沿った目標地点同士のずれは重要でない。
【0033】
格子ベクトルに沿ったスケール上の両部分ビーム束の同じ又はほぼ同じ目標地点を有するこのような走査光学系の他に、中立回転中心点がスケール上に存在するその他の対称な走査光学系が存在する。欧州特許出願の欧州特許出願公開第2848899号明細書には、走査光学系の任意のビーム経路と中立回転中心点の付随する位置との間の関係の一般的な説明が明記されている。対称なビーム経路を有する別の走査光学系が、この明細書に記載されている。当該対称なビーム経路の中立回転中心点が、当該スケール上に存在する。以下では、全てのこれらの走査光学系は、対称V字状の走査光学系とも呼ばれる。
【0034】
測定スケールの表面に対して平行な感度ベクトルを有するこのような対象V字状の走査光学系の動作では、上記の対称面が、測定スケールの表面に対して直立し、当該測定スケールの測定目盛の格子ベクトルに対しても直立するように、走査装置が、測定スケールに対して指向される。このことは、走査装置と測定スケールとの平行な指向と呼ばれる。
【0035】
本発明では、このような対象V字状の走査光学系又は付随する対称面を、測定スケールに対して所定の傾斜角度αだけ回転軸を中心にして傾けるという、冒頭で述べた独国特許出願公開第102015203188号明細書で提唱されているのと同様な措置が取られる。当該回転軸は、当該測定スケールの表面に対して平行に指向されていて、当該測定スケールの測定目盛の格子ベクトルに対して直角に、すなわち当該測定目盛の目盛領域の長手延在方向に対して平行に延在する。しかしながら、独国特許出願公開第102015203188号明細書から知られた当該明細書に明記されているエンコーダとは違って、本発明によれば、干渉する非対称な回折次数から成る複数の部分ビーム束が、信号生成のために使用されない。むしろ、当該測定目盛で対称な回折次数で回折される、特に当該測定目盛で+1次及び−1次の回折次数で発生する複数の部分ビーム束を干渉させることが提唱されている。このことは、当該測定目盛上に入射する1つのビーム束の、対称面に対する入射角度γが適切に選択されることによって達成され得る。換言すれば、傾けた照射を実行することが必要である。第2の条件として、本発明の解決策における入射角度γに対して、当該複数の部分ビーム束の同一の光波長が、これらの部分ビーム束の分割と再結合との間で発生するように、この入射角度γが選択されることを考慮する必要がある。こうして、位置測定の希望した波長の独立性又は無色性が保証され得る。
【0036】
以下に、これらの関係を本発明の光学式エンコーダの複数の実施の形態に基づいて詳しく説明する。
【0037】
図1a、1b及び1cには、対称なV字状の走査光学系と測定スケールの表面に対して傾いた感度ベクトル
【0038】
【数3】
とを有する本発明の光学式エンコーダの第1の実施の形態の走査ビーム経路が、異なる視野で示されている。この場合、
図1aには、1つの光源から反射器23
A,23
Bまでのビーム束S
INのビーム推移が、xz平面内に示されている。
図1cは、反射器23
A,23
Bから出射する信号ビーム束S
OUTのビーム推移を、同じ平面内で検出装置25の方向に伝播する重畳した部分ビーム束によって示す。
図1bは、yz平面内の完全な走査ビーム経路を示す。最初に、軸がx′、y及びz′で示されている座標系x′yz′を説明する。それぞれの図では、測定目盛12が延在する目盛方向が、x′で示されている。yは、当該測定目盛面内で当該測定目盛面に対して直角に指向した方向を示す。z′は、当該測定目盛面に対して垂直に指向している方向を示す。
【0039】
これらの図に示されたエンコーダは、目盛方向x′に沿って延在する1つの測定スケール10と、当該測定スケール10に対して1つの方向に少なくとも相対可動に配置されている1つの走査装置20とを有する。測定スケール10と走査装置20とはそれぞれ、図に示されなかった物体、例えば互いに相対可動な機械要素に結合されている。後続配置された機械制御装置が、当該エンコーダによって生成された走査信号を用いてこれらの機械要素の空間位置を制御する。
【0040】
測定スケール10は、1つの目盛キャリア11から成る。1つの測定目盛12が、この目盛キャリア11の表面上に配置されている。この測定目盛12は、1つの格子ベクトル又は目盛方向x′に沿った複数の線状区分領域の配列を成す。これらの区分領域の長手延在方向は、図中のy方向相当する。当該実施の形態では、測定目盛12は、目盛周期d
Mを有するバイナリ式又は二段式の反射型位相格子として形成されていて、入射する光に対して異なる位相シフト作用を呈する複数の区分領域が、連続して周期的に配置されている。測定目盛12の当該反射型位相格子は、信号を生成するために使用される回折次数の高い回折効率に対して最適化されていて、したがって主に+1次及び−1次の回折次数に対して最適化されている。
【0041】
様々な光学素子が、走査装置20の側面に配置されている。この場合、
図1a〜1cには、これらの光学素子のうちの1つの光源26、1つの透過型走査板21、当該透過型走査板の上側に配置された反射器23
A,23
B又は当該透過型走査板の下側に配置された第1走査格子22
A1,22
B1及び第2走査格子22
A2,22
B2及び偏向光学素子24
A,24
B並びに検出装置25が示されている。当該図示された実施の形態の代わりに、光源26と検出装置25とを走査装置20から空間的に分離して設置し、光ファイバを用いて走査装置20に結合することも可能である。このとき、入射するビーム束S
IN又は出射する信号ビーム束S
OUTがそれぞれ、当該光ファイバを通じて伝送される。
【0042】
走査装置20における当該様々な光学素子の配置及び構成によって、干渉する部分ビーム束A,Bが、対称面SEに対してミラー対称に伝播する走査ビーム経路が発生することが、本発明のエンコーダごとに保証されている。この場合、これらの部分ビーム束は、測定スケール10上にV字状に入射し、及び/又はこの測定スケール10からV字状に戻り反射する。
【0043】
特に
図1a及び1cから分かるように、走査装置20又は対称面SEは、y方向の回転軸を中心にして測定スケール10に対して傾斜角度αだけ傾いて配置されている。これに応じて、走査装置20内に設けられている走査板21も、傾いて、すなわち対称面SEに対して直角に配置されている。この場合、傾斜角度αは、z′方向に沿った当該測定スケールに対する法線と対称面SEとの成す角度を示すか、又は対称面SEに対する測定目盛12の角度を示す。したがって、y方向の対応する回転軸は、測定スケール10の表面に対して平行に指向していて、x′方向に指向した測定目盛12の格子ベクトルに対して直角に延在する。次に、傾斜角度αだけ回転された座標系xyzでさらに説明する。この座標系xyzでは、走査板21の代わりに、測定スケール10が、傾斜角度αだけ傾斜している。
【0044】
ここでは、独国特許出願公開第102015203188号明細書から公知のシステムとは違って、光源26から入射するビーム束S
INが対称面SEに対して入射角度γを成して入射することがさらに提唱されている。このとき、当該ビーム束S
INは、透明な走査板21を回折されずに透過した後に、測定スケール10の測定目盛12上の第1衝突地点P
Mに最初に当たる。走査装置20に向かってV字状に戻り反射する2つの部分ビーム束A,Bへの分岐が、この衝突地点P
Mで発生する。この場合、当該入射したビーム束S
INが、その後に信号を生成するために使用される部分ビーム束A,Bを示す対称な回折次数n
A1=+1と回折次数n
B1=−1とに分岐される。
【0045】
入射角度γが予め設定されている場合、測定スケール10又は測定目盛11で反射した2つの第1回折次数(n
A1=+1,n
B1=−1)の回折角度β
2,1に対して、以下の関係式1)が得られる。
β
2,1=sin
−1(sin(γ−α)±k)−α (方程式1)
ここで、
β
1:=測定スケールに対する−1次の回折次数の回折角度
β
2:=測定スケールに対する+1次の回折次数の回折角度
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
γ:=対称面に対する入射ビーム束の入射角度
k:=λ/d
M
λ:=光波長
d
M:=測定目盛の目盛周期
である。
【0046】
既に上述したように、本発明では、位置測定が波長に依存しないことが保証されている。このため、干渉する部分ビーム束A,Bが分岐と再結合との間で同じ光路長を進行することが保証される。このことは、対称面SEに対する入射光束S
INの入射角度γが適切に選択されるときに保証され得る。この場合、方程式1)と条件β
1=−β
2(絶対値が等しい回折角度)との使用の下では、入射角度γに対して:
【0047】
【数4】
が得られる。
ここで、
γ:=対称面に対する入射ビーム束の入射角度
k:=λ/d
M
λ:=光波長
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
である。
【0048】
このとき、測定目盛11で回折され戻り反射した部分ビーム束A,Bがそれぞれ、透明な走査板21の下面上の第1走査格子22
A1又は22
B1に向かって伝播し、この走査板21を透過する。この場合、当該両第1走査格子22
A1又は22
B1に共通の回折パターンが、複数の光学機能を兼ね備えている。
【0049】
このとき、第1走査格子22
A1又は22
B1を透過することで、xz平面内の部分ビーム束A,B(
図1a)がそれぞれ、その入射方向に対して反平行に指向した偏向作用によってz方向に再び偏向される。この偏向作用を得るために必要な走査格子22
A1又は22
B1の目盛周期d
Rはそれぞれ、特に以下の関係式3)にしたがって選択されている:
d
R=d
M・cosα (方程式3)
ここで、
d
R:=走査格子の偏向作用にしたがう目盛周期
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
である。
【0050】
yz平面内では(
図1b)、部分ビーム束A,Bが、第1走査格子22
A1又は22
B1のシリンダレンズ機能によって走査板21の上面上の反射器23
A,23
Bに向かって部分的に集光される。この場合、集光作用が、専ら方向xに対して直角に又はy方向に沿って発生する。次いで、こうして回折され部分的に集光した部分ビーム束A,Bはそれぞれ、反射器23
A,23
B上に当たり、当該反射器23
A,23
Bで測定スケール10の方向に戻り反射する。当該両部分ビーム束A,Bは、反射器23
A,23
Bでの反射後に同様に走査板21の下面上に配置されている2つの第2走査格子22
A2又は22
B2を透過する。当該両第2走査格子22
A2,22
B2はそれぞれ、両第1走査格子22
A1,22
B1と同じ光学機能を兼ね備えている。したがって、当該両第2走査格子22
A2,22
B2は、部分ビーム束A,Bをシリンダレンズ機能によってyz平面(
図1b)内で再びリコリメートし、当該部分ビーム束A,Bをxz平面(
図1c)内で測定スケール10又は測定目盛12上の共通の1つの衝突地点P
M′に向けて回折させる。この場合、当該両部分ビーム束A,Bは、測定スケール10の方向に又は第2衝突地点P
M′の方向にV字状に伝播する。当該両部分ビーム束A,Bは、この測定スケール10又はこの第2衝突地点P
M′で新たな回折によって対称な回折次数(n
A2=+1及びn
B2=+1)で重畳され、干渉され、そして走査装置20及び検出装置25の方向に信号ビーム束S
OUTの状態で伝播される。周期的で位相シフトされている複数の走査信号が、この走査装置20及びこの検出装置25で信号ビーム束S
OUTから得られる。
【0051】
この実施の形態では、当該位相シフトされている複数の走査信号は、偏光光学素子によって生成される。例えばレーザとして形成されて、光源26から放射したビーム束S
INが、直線偏光を成す。当該分岐された部分ビーム束A,Bの両ビーム経路ごとに、又は対応する干渉計のアームごとに、それぞれ1つのλ/4板24
A,24
Bが、測定目盛11と走査板21との間に存在する。それぞれの部分ビーム束A,Bが、当該λ/4板24
A,24
Bによって右円偏向又は左円偏向される。これらの部分ビーム束A,Bが、第2衝突地点P
M′で再結合した後に、3つの干渉ビーム束への分岐が、1つのビームスプリッタによって実行される。次いで、当該3つの干渉ビーム束は、異なって配向した3つの偏光器を透過して複数の検出素子に到達する。最終的に、これらの検出素子は、位相シフトされている走査信号を生成する。ここでは、検出装置が、
図1b,1cにおいて符号25によって示されている。この検出装置25は、当該ビームスプリッタと当該偏光器と当該個々の検出素子とを有する。当該ビームスプリッタと当該偏光器と当該個々の検出素子とはそれぞれ、図面では詳しく示されていない。
【0052】
本発明のエンコーダでは、
図1a,1cから分かるように、走査の感度ベクトル
【0053】
【数5】
が、走査板21に対して平行に又は測定スケール10の表面に対して傾いて延在する。こうして、位置に依存する走査信号が、目盛方向x′に沿った、又はx′方向に指向した測定目盛12の格子ベクトルに沿った走査装置20と測定スケール10との相対移動と、当該方向に対して直角の方向z′に沿った走査装置20と測定スケール10との相対移動との双方に対して生成される。
【0054】
したがって、走査装置20が、当該測定スケールの表面に対して平行に、すなわち方向x′に移動されると、この測定方向に対する走査信号の信号周期SP
x′が、測定目盛12の目盛周期d
Mの4分の1、すなわち
SP
x′=1/4・d
M (方程式4)
になる。
ここで、
SP
x′:=x′方向の相対移動時の走査信号の信号周期
d
M:=測定目盛の目盛周期
である。
【0055】
走査装置20が、測定スケール10に対する法線に沿って、すなわち方向z′に移動する場合、
【0056】
【数6】
SP
z′:=z′方向の相対移動時の走査信号の信号周期
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
にしたがう信号周期SP
z′が得られる。
【0057】
以下に、本発明の光学式エンコーダの第2の実施の形態を
図2a〜2cに基づいて説明する。この場合、第1の実施の形態で図示したのと同様に、走査ビーム経路の様々な部分が、異なる図で示されている。以下では、第1の実施の形態に対する最も重要な相違点だけを説明する。第一に、この相違点は、位相シフトされている走査信号の生成にある。この場合、走査信号が、偏光光学式に生成されるのではなくて、むしろ当該生成のために、再結合格子(Vereinigungsgitter)128が使用される。この再結合格子128は、走査板121の下面上に配置されていて、この走査板121の目盛周期は、測定目盛の目盛周期d
Mよりも著しく大きい。したがって、第1の実施の形態とは違って、走査ビーム経路内に設けられているλ/4板のような偏光光学素子と偏光器とが省略される。
【0058】
図2aに示された光源126から反射器123
A,123
Bまでの部分走査ビーム経路は、
図1aによる第1の実施の形態の走査ビーム経路にほぼ同一に一致する。走査板120内の部分ビーム束A,Bが、−
図2aに示されているように−若干傾いているが、対称面SEに対して対称に延在するように、第1走査格子122
A1及び122
B1の回折機能だけが、若干より弱く又はより強く形成されている。当該部分ビーム束A,Bは、反射器123
A,123
Bを経由した戻り反射後に、
図2cに示されているように第1の実施の形態と同様に、1測定スケール110上の衝突地点P
M′A又はP
M′Bに到達する。この場合、λ/4板の透過だけが省略されている。当該回折された複数の部分ビーム束が、2つの衝突地点P
M′A又はP
M′Bから再結合格子128の方向に戻り反射する。
【0059】
第1の実施の形態に対するさらなる相違点としては、主に、走査板121の下面上の最初に透過する2つの第1走査格子122
A1及び122
B1が、その後に透過する第2走査格子122
A1及び122
B1の目盛周期d
R2とは違う目盛周期d
R1を有することが提唱されている。こうして、部分ビーム束A,Bが、測定スケール110での第2の反射後に異なる角度を成して再結合格子128の同じ地点に当たることが保証される。干渉計の一方のアームの+1次の回折次数の方向が、当該干渉計の他方のアームの−1次の回折次数の方向と一致するように、再結合格子128の目盛周期が選択される場合、部分ビーム束A,Bが、完全に相互に干渉する。このとき、当該一方の部分ビーム束の0次の回折次数と当該他方の部分ビーム束の+2次の回折次数とが、同じ方向を有する。このことは、当該干渉計の一方のアームの−2次の回折次数と当該干渉計の他方のアームの0次の回折次数とに対しても成立する。こうして、互いに位相シフトされている走査信号を有する全部で3つのビーム束が、再結合格子128の透過後に信号ビーム束S
OUTにおいて発生する。この場合、異なる回折次数のそれぞれの部分ビーム束が重畳される。直流成分のないそれぞれ90°だけ位相シフトされている2つの走査信号が、出力側に存在するように、これらの走査信号は、検出装置127内の3つの検出素子によって電気信号に変換され、公知の方法で相互に結合される。
【0060】
この実施の形態では、2つの部分ビーム束A,Bの正確な対称性が、測定スケール110と再結合格子128との間の最後の区間内で損なわれる。このため、当該両部分ビーム束A,Bは、ほぼ同じ光路区間だけを有する。これにより、エンコーダの希望した無色性が専ら近似値的に満たされる。測定スケール110と走査板121との間の所定の間隔が、当該部分ビーム束A,B間の所定の非対称性によって予め補正されるときに、当該エンコーダの無色性は、当該所定の間隔に対してさらに達成される。このことは、例えば、格子定数d
R1Aと格子定数d
R1Bとがそれぞれ互いに異なって寸法決めされ、したがって同様に格子定数d
R2Aと格子定数d
R2Bとがそれぞれ互いに異なって寸法決めされることによって実行され得る。これにより、異なる角度、すなわち異なる経路長が、走査板121内の両部分ビーム束A,Bに対して発生する。
【0061】
当該第2の実施の形態の或るバリエーションでは、再結合格子128の代わりに、いわゆるパターン化された光検出器を走査ビーム経路内に配置すること、及びこの平面内で発生するストリップパターンを検出することも提唱され得る。当該パターン化された光検出器は、測定方向xに沿った複数の検出素子の周期的な配列から成り、位相シフトされている3つ又は4つの走査信号の生成を公知の方法で可能にする。この場合、当該パターン化された光検出器は、検出装置として機能する。
【0063】
【数7】
を有する本発明の光学式エンコーダの第3の実施の形態のxz平面の概略断面が、
図3に示されている。以下に、後続する複数の例と同様に、上記の実施の形態に対する最も重要な相違点を説明する。
【0064】
この場合、偏光光学素子の省略に加えて、測定スケール210の簡単な走査だけが提唱されている。すなわち、光源226から傾いて入射するビーム束S
INが、測定目盛212又は測定スケール210の衝突地点P
Mに一回だけ当たる。感度ベクトル
【0065】
【数8】
が、既定の傾斜角度αだけ傾いている場合、測定スケール210から走査板221に向かって戻り反射した部分ビーム束A,Bの2つの入射角度β
1及びβ
2が、絶対値的に等しいときに、当該走査光学系の希望した無色性が達成される。これに応じて、対称面SEに対するビーム束S
INの入射角度γが、上記の方程式2)によって算定され得る。
【0066】
当該測定スケールによって回折され、走査装置220の方向に戻り反射した当該両部分ビーム束A,Bは、走査格子222
A1,222
B1によって対称面SEの方向に戻り反射され、走査板221の上面上に配置されている再結合格子228に当たる。この場合、この再結合格子228の目盛周期d
R2が、特に以下のように選択される:
【0067】
【数9】
ここで、
d
R2:=再結合格子の目盛周期
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
a:=測定目盛と走査格子との間の間隔
b:=走査格子と再結合格子との間の間隔
λ:=光波長
n
r:=走査格子と再結合格子との間の媒体の屈折率
である。
【0068】
この実施の形態では、両走査格子222
A1,222
B1の周期性又は目盛周期d
R1が、方程式6)を使用して以下のように算定される:
【0069】
【数10】
ここで、
d
R1:=走査格子の目盛周期
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
d
R2:=再結合格子の目盛周期
である。
【0070】
このとき、再結合格子228での部分ビーム束A,Bの再結合に加えて、重畳した部分ビーム束A,Bの対が、信号ビーム束S
OUTとして検出装置225の方向に伝播する。位相シフトされている走査信号が、この検出装置225の複数の検出素子によって生成される。
【0071】
図3から分かるように、この実施の形態では、走査の感度ベクトル
【0072】
【数11】
が、走査板221に対して平行に且つ測定スケール210に対して傾いて延在する。したがって、位置に存する信号の生成が、x′方向に沿って可能であり、z′方向に沿っても可能である。
【0073】
走査装置220が、測定スケールの表面に対して平行に、すなわち方向x′に移動すると、当該測定目盛の目盛周期d
Mの半分に相当する走査信号の信号周期SPx′が発生する:
【0074】
【数12】
ここで、
SP
x′:=x′方向の相対移動時の走査信号の信号周期
d
M:=測定目盛の目盛周期
である。
【0075】
走査装置220が、測定スケール210に対する法線に沿って、すなわちz′方向に移動する場合、当該走査信号の信号周期は、
【0076】
【数13】
ここで、
SP
x′:=z′方向の相対移動時の走査信号の信号周期
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
である。
【0078】
【数14】
を有する本発明の光学式エンコーダの第4の実施の形態のxz平面の概略断面が、
図4に示されている。
【0079】
対称面SEに対して入射角度γを成して入射する、レーザとして形成された光源326から放射されるビーム束S
INが、直線偏光を成す。当該ビーム束S
INは、測定スケール310の測定目盛312の衝突地点P
Mに当たり、そこで+1次の回折次数と−1次の回折次数とに反射回折される。その後に、当該分岐された両部分ビーム束A,Bはそれぞれ、平面鏡として形成されている反射器328
A,328
B上に当たり、これらの反射器328
A,328
Bを経由して第1ビームスプリッターキューブ325
1の方向に偏向される。この場合、当該部分ビーム束A,Bはそれぞれ、第1ビームスプリッターキューブ325
1に到達する前にλ/4板324
A,324
Bをさらに透過し、当該λ/4板324
A,324
Bによって左円偏向又は右円偏向される。当該部分ビーム束A,Bは、第1ビームスプリッターキューブ325
1内で重畳され、次いで1つの検出素子328
1の方向に部分的に伝播し、1つの第2ビームスプリッターキューブ325
2の方向に部分的に伝播する。さらなる2つの部分ビーム束の対へのさらなる分岐が、第2ビームスプリッターキューブ325
2内で発生する。次いで、こうして生成された3つの部分ビーム束の対が、3つの検出素子327
1〜327
3に到達する前に、これらの部分ビーム束の対は、
図4から分かるように当該両ビームスプリッターキューブ325
1,325
2に配置されているさらに3つの偏光器327
1〜327
3を最終的に透過する。次いで、これらの偏光器327
1〜327
3は、位相シフトされている3つの走査信号を生成する。当該3つの走査信号は相互に、これらの偏光器327
1〜327
3の方向によってそれぞれ120°に設定されている。
【0080】
この実施の形態でも、位置測定が無色性である。何故なら、分岐と再結合との間の部分ビーム束A,Bの進行される光路長が、同じ長さであるからである。当該同じ長さは、ここでは、測定スケール310から第1ビームスプリッターキューブ325
1までの両部分ビーム束A,Bのビーム経路が、光学軸又は対称面SEに対して対称であることによって保証される。入射角度γが、同様に上記の方程式2)にしたがって選択される。反射器328
A及び328
Bが、対称面SEに対して対称に配置されている。
【0082】
【数15】
を有する本発明の光学式エンコーダの第5の実施の形態を、xz平面内の走査ビーム経路を示す
図5の概略断面に基づいて説明する。
【0083】
当該第5の実施の形態は、第4の実施の形態とほぼ同様に構成されている。主な相違点は、走査ビーム経路内の根本的に逆にされたビーム方向にある。当該第5の実施の形態では、1つの光源426から放射したビーム束S
INが、1つのビームスプリッターキューブ424を透過して2つの部分ビーム束A,Bに分岐される。これらの部分ビーム束A,Bは、2つのλ/4板425
A,425
Bによって右円偏向と左円偏向とを受ける。次いで、当該両部分ビーム束A,Bは、反射器428
A,428
Bを経由して測定スケール410に向かって偏向される。当該両部分ビーム束A,Bは、この測定スケール410の測定目盛412上の衝突地点P
Mに当たる。ビームスプリッターキューブ424と測定スケール410との間の両部分ビーム束A,Bのビーム経路は、光学軸又は対称面SEに対して対称であり、したがって無色性である。この場合、照射角度又は入射角度β
1又はβ
2は、
【0084】
【数16】
にしたがって選択することができる。
ここで、
β
1,2:=入射角度
λ:=光波長
d
M:=測定目盛の目盛周期
α:=対称面に対する測定目盛の傾斜角度
である。
【0085】
当該両部分ビーム束A,Bは、測定スケール410又はそこに配置された測定目盛412で+1次の回折次数又は−1次の回折次数に反射回折され、このときに共線状に重畳される。当該重畳された部分ビーム束は、別の2つのビームスプリッターキューブ427
1,427
2に到達する。当該重畳された部分ビーム束は、重畳された3つの部分ビーム束に分岐される。上記の実施の形態と同様に、当該3つの部分ビーム束は、偏光器428
1〜428
3によって3つの検出素子429
1〜429
3に向かって偏向される。120°だけ位相シフトした3つの
走査信号が、これらの検出素子429
1〜429
3で発生する。
【0086】
本発明の範囲内では、説明した実施の形態のほかに、当然に、さらに別の実施の形態の可能性がある。
【0087】
したがって、上記の直線移動を検出するためのエンコーダの代わりに、回転移動を検出するためのエンコーダを本発明にしたがって構成することも当然に可能である。このとき、対応する測定目盛は、ラジアル目盛として又はドラム目盛として形成されている。
【0088】
さらに、いわゆる十字格子目盛としての二次元パターンも、測定目盛として本発明のエンコーダで使用され得る。
【0089】
さらに、本発明の走査の無色性に起因して、レーザーダイオードの代わりに、発光ダイオード(LED)又はスーパールミネッセントダイオード(SLED)を光源として使用することも可能である。