【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】車体部を予め定められた走行経路に沿って自律走行させることが可能な自律走行制御部14と、車体部の位置情報を算出する位置情報算出部16とを有する複数の作業車両1と、複数の作業車両1の夫々における位置情報算出部16が算出した各作業車両1の位置情報を取得する位置情報取得部23と、複数の作業車両1の位置情報に基づいて、複数の作業車両1から協調作業を行う複数の協調作業車両を特定する協調作業車両特定部24と、協調作業車両特定部24により特定された複数の協調作業車両の夫々に対して複数の協調作業車両の位置情報を出力する位置情報出力部25とを備える。
協調作業における前記複数の協調作業車両の作業方向及び作業方向に直交する方向での位置関係を示す作業態様について、複数の作業態様から1つの作業態様を指定可能であり、
前記自律走行制御部は、指定された作業態様を維持するように、前記車体部の自律走行を制御し、
作業態様の指定を行う際に、作業内容に応じた作業態様を推奨する作業態様推奨部が備えられていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の協調作業システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のシステムでは、2台の作業車両にて協調して作業を行うことが記載されているものの、3台以上の作業車両にて協調して作業を行うことが意図されていない。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、3台以上の作業車両にて協調して作業を行うことができる協調作業システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、車体部を予め定められた走行経路に沿って自律走行させることが可能な自律走行制御部と、前記車体部の位置情報を算出する位置情報算出部とを有する複数の作業車両と、
前記複数の作業車両の夫々における前記位置情報算出部が算出した各作業車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記複数の作業車両の位置情報に基づいて、前記複数の作業車両から協調作業を行う複数の協調作業車両を特定する協調作業車両特定部と、
前記協調作業車両特定部により特定された複数の協調作業車両の夫々に対して前記複数の協調作業車両の位置情報を出力する位置情報出力部と、を備えることを特徴とする点にある。
【0008】
本構成によれば、位置情報取得部は、複数の作業車両の夫々の位置情報を取得するので、協調作業車両に限らず、協調作業車両以外の作業車両の位置情報も取得することになる。そこで、協調作業車両特定部は、複数の作業車両の位置情報に基づいて、複数の作業車両から協調作業を行う複数の協調作業車両を特定している。協調作業車両特定部は、例えば、特定の作業車両に対して近くに位置する作業車両を協調作業車両として特定することができるので、複数の協調作業車両の特定を適切に行うことができる。位置情報出力部は、協調作業車両特定部により特定された複数の協調作業車両の夫々に対して複数の協調作業車両の位置情報を出力するので、協調作業車両には、複数の協調作業車両の位置情報だけが出力され、協調作業車両以外の作業車両の位置情報は出力されない。これにより、各協調作業車両では、自律走行制御部が、他の協調作業車両の位置情報を把握しながら自作業車両の自律走行を行うことができる。よって、協調作業車両が3台以上となっても、協調作業車両を適切に特定することができ、特定された各協調作業車両の自律走行制御部が、他の協調作業車両の位置情報を把握しながら自作業車両の自律走行を行うことができるので、3台以上の協調作業車両にて協調して作業を行うことができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記走行経路として、複数の直線路と、各直線路を接続する複数の旋回路とを含む経路を生成可能な経路生成部を備え、
前記自律走行制御部は、前記位置情報出力部から出力された前記複数の協調作業車両の位置情報に基づいて、各協調作業車両の作業方向に対する位置偏差を特定し、
前記位置偏差及び前記旋回路における前記車体部の旋回方向に基づいて各協調作業車両の優先順位を特定して、その優先順位に従って前記車体部の自律走行を制御することを特徴とする点にある。
【0010】
本構成によれば、自律走行制御部は、各協調作業車両の優先順位を特定して、その優先順位に従って車体部の自律走行を制御するので、各協調作業車両を優先順位に従って自律走行させて、協調作業車両同士の衝突等を回避しながら、3台以上の協調作業車両にて協調作業を行うことができる。しかも、優先順位は、旋回路における車体部の旋回方向に加えて、各協調作業車両の作業方向に対する位置偏差に基づいて特定されるので、自律走行の開始時の各協調作業車両の位置偏差が維持されるように、各協調作業車両を自律走行させることができる。よって、各協調作業車両を効率よく自律走行させることができ、協調作業の効率化を図ることができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記複数の協調作業車両の内、最も優先順位が高い作業車両以外の作業車両が有する前記自律走行制御部は、各直線路において、
最も優先順位が高い作業車両に対する前記位置偏差を所定値に維持するように前記車体部の自律走行を制御することを特徴とする点にある。
【0012】
本構成によれば、最も優先順位が高い作業車両以外の作業車両が有する自律走行制御部は、最も優先順位が高い作業車両に対する位置偏差を所定値に維持するように車体部の自律走行を制御するので、最も優先順位が高い作業車両以外の作業車両では、車体部の自律走行の制御について、自律走行制御部が同様の制御を行うことができる。これにより、協調作業車両の台数を増加させる場合に、増加する協調作業車両が有する自律走行制御部としては、他の協調作業車両が有する自律走行制御部と同様の制御を行えばよく、協調作業車両の増加に対して簡易に対応することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記自律走行制御部は、各直線路の終端位置において、
自作業車両よりも優先順位が高い優先作業車両が旋回中であって、且つ、自作業車両を基準とする所定領域内に前記優先作業車両が存在する場合は、前記終端位置で停止し、
前記優先作業車両が旋回中であっても、前記所定領域内に前記優先作業車両が存在しない場合は、前記旋回路における自律走行を行うことを特徴とする点にある。
【0014】
本構成によれば、自律走行制御部は、自作業車両よりも優先順位が高い優先作業車両が旋回中であって、且つ、自作業車両を基準とする所定領域内に優先作業車両が存在する場合は、直線路の終端位置で停止するので、優先作業車両との衝突を回避することができる。しかも、自律走行制御部は、優先作業車両が旋回中であっても、所定領域内に優先作業車両が存在しない場合は、旋回路における自律走行を行うので、優先作業車両との衝突を回避しながら、いち早く旋回路における自律走行を行うことができる。これにより、優先作業車両との衝突を適切に回避しながら、複数の協調作業車両をスムーズに効率よく旋回路にて自律走行させることができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記自律走行制御部は、旋回終了後の直線路の始端位置において、
自律走行の開始時において前記複数の協調作業車両の内、前記位置偏差が無かった他の協調作業車両が直線路の始端位置に至るまで前記車体部を停止させ、
前記他の協調作業車両が直線路の始端位置に至ることにより直線路における前記車体部の自律走行を開始することを特徴とする点にある。
【0016】
例えば、自律走行制御部は、旋回終了後の直線路の始端位置において、その始端位置に到達することにより、直線路における車体部の自律走行を開始することができる。この場合には、複数の協調作業車両において、旋回終了後の直線路の始端位置に到達した順で、直線路における自律走行を開始することになる。よって、自律走行の開始時において作業方向に対する位置偏差が無かった協調作業車両(前後方向で同じ位置に位置する協調作業車両)であっても、旋回後の直線路において、作業方向に対して位置偏差が生じてしまい、自律走行の開始時の位置関係が崩れてしまう。
【0017】
そこで、本構成によれば、自律走行制御部は、自律走行の開始時において複数の協調作業車両の内、作業方向に対する位置偏差が無かった他の協調作業車両(前後方向で同じ位置に位置する他の協調作業車両)が直線路の始端位置に至るまで車体部を停止させている。これにより、旋回終了後の直線路の始端位置に到達した協調作業車両は、作業方向に対する位置偏差が無かった他の協調作業車両が旋回終了後の直線路の始端位置に到達するまで待つことができる。そして、自律走行制御部は、他の協調作業車両が直線路の始端位置に至ることにより直線路における車体部の自律走行を開始するので、作業方向に対する位置偏差が無かった協調作業車両は、全ての協調作業車両が直線路の始端位置に至ることをもって、一斉に直線路における自律走行を開始することができる。よって、旋回後の直線路においても、作業方向に対して位置偏差が無く(前後方向で同じ位置に位置して)、自律走行の開始時の位置関係を維持することができる。
【0018】
本発明の第6特徴構成は、前記作業車両は自作業車両の位置情報を基準に所定領域を設定し、
前記自律走行制御部は、直線路における前記車体部の自律走行を開始するときに前記所定領域に他の協調作業車両が存在していても自律走行を実行可能である一方、旋回路における前記車体部の自律走行を開始するときに前記所定領域に他の協調作業車両が存在していると自律走行を実行しないことを特徴とする点にある。
【0019】
直線路では、直線路同士が交差することなく、所定領域に他の協調作業車両が存在しても、自律走行の開始時における位置関係が維持されていれば、直線路における自律走行を開始しても、協調作業車両同士の衝突は回避することができる。それに対して、旋回路では、旋回路同士が交差するので、所定領域に他の協調作業車両が存在すると、協調作業車両同士の衝突が発生する可能性がある。
【0020】
そこで、本構成によれば、自律走行制御部は、直線路における車体部の自律走行を開始するときに所定領域に他の協調作業車両が存在していても自律走行を実行可能であるので、無駄に自律走行を停止することなく、自律走行をスムーズに開始することができる。しかも、自律走行制御部は、旋回路における車体部の自律走行を開始するときに所定領域に他の協調作業車両が存在していると自律走行を実行しないので、協調作業車両同士の衝突を適切に回避することができる。
【0021】
本発明の第7特徴構成は、各作業車両は、装着可能な作業機の種類を設定可能な作業機設定部を備え、
前記自律走行制御部は、自作業車両が直線路であるか旋回路であるかに応じて前記作業機を作業状態又は非作業状態に切替可能であり、
前記自律走行制御部は、前記作業機の種類及び前記作業機の状態の少なくとも一方に応じて前記所定領域の範囲を変更することを特徴とする点にある。
【0022】
協調作業車両の車体部に装着される作業機によって、車体部から作業機が突出する量が異なるので、他の協調作業車両と衝突する可能性がある範囲が作業機によって異なる。また、作業機が作業状態であれば、作業機の移動等が生じることもあるので、作業機が作業状態か非作業状態であるかによっても、他の協調作業車両と衝突する可能性がある範囲が異なる。
【0023】
そこで、本構成によれば、自律走行制御部は、作業機の種類及び作業機の状態(作業状態であるか非作業状体であるか)の少なくとも一方に応じて所定領域の範囲を変更している。これにより、所定領域として、他の協調作業車両と衝突する可能性がある範囲を適切に設定することができ、他の協調作業車両との衝突を適切に回避することができる。しかも、所定領域が無駄に大きな範囲となってしまい、無駄に自律走行を停止してしまう等の不都合の発生も抑制することができる。
【0024】
本発明の第8特徴構成は、各作業車両は、自作業車両の前方の検知範囲に存在する物体を検知可能な物体検知部を備え、
前記自律走行制御部は、前記位置情報出力部により出力された前記複数の協調作業車両の位置情報に基づいて、前記検知範囲内に特定の協調作業車両が存在するか否かを判定し、前記検知範囲内に前記特定の協調作業車両が存在すると判定された場合であって、且つ、前記物体検知部により物体が検知されないときは前記車体部の自律走行を停止することを特徴とする点にある。
【0025】
位置情報出力部により出力された複数の強調作業車両の位置情報に基づいて、検知範囲内に特定の協調作業車両が存在すると判定された場合には、本来であれば、物体検知部によっても物体が検知されることになる。しかしながら、物体検知部にて物体が検知されなければ、物体検知部等の故障が考えられる。
【0026】
そこで、本構成によれば、自律走行制御部は、検知範囲内に特定の協調作業車両が存在すると判定された場合であって、且つ、物体検知部により物体が検知されないときに、車体部の自律走行を停止しているので、物体検知部等が故障したまま、自律走行が行われるのを防止することができる。
【0027】
本発明の第9特徴構成は、協調作業における前記複数の協調作業車両の作業方向及び作業方向に直交する方向での位置関係を示す作業態様について、複数の作業態様から1つの作業態様を指定可能であり、
前記自律走行制御部は、指定された作業態様を維持するように、前記車体部の自律走行を制御し、
作業態様の指定を行う際に、作業内容に応じた作業態様を推奨する作業態様推奨部が備えられていることを特徴とする点にある。
【0028】
本構成によれば、作業態様の指定を行う際に、作業態様推奨部が作業内容に応じた作業態様を推奨するので、ユーザは、作業内容に適した作業態様を容易に指定することができる。これにより、ユーザにて作業態様を指定する作業の簡素化を図ることができるとともに、作業内容に適した作業態様にて協調作業を行うことができ、協調作業の効率化も図ることができる。
【0029】
本発明の第10特徴構成は、前記協調作業車両の台数を指定可能であり、
協調作業車両の台数の指定を行う際に、作業条件に応じた台数を推奨する台数推奨部が備えられていることを特徴とする点にある。
【0030】
本構成によれば、協調作業車両の台数の指定を行う際に、台数推奨部が作業条件に応じた台数を推奨するので、ユーザは、作業条件に適した協調作業車両の台数を指定することができる。これにより、ユーザにて協調作業車両の台数を指定する作業の簡素化を図ることができるとともに、作業条件に適した台数の協調作業車両にて協調作業を行うことができ、協調作業の効率化も図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る協調作業システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この協調作業システムは、
図1に示すように、予め定められた走行経路に沿って自律走行する作業車両としての複数のトラクタ1と、複数のトラクタ1の夫々との間で各種の情報を通信可能なサーバ2とが備えられている。
図2に示すように、この協調作業システムでは、トラクタ1及びサーバ2に加えて、トラクタ1が自律走行する走行経路を生成する経路生成装置3が備えられている。経路生成装置3として、例えば、パーソナルコンピュータ等を適用することができ、ユーザにより操作部等を操作することで各種の情報を経路生成装置3に入力可能に構成されている。
【0033】
サーバ2は、クラウドに置き換えることもできる。この協調作業システムでは、
図1及び
図2に示すように、3台以上のトラクタ1が備えられている。この実施形態では、各トラクタ1とサーバ2とは双方向のデータ通信をリアルタイム(例えば、数ms毎)で行う。
【0034】
図1に示すように、複数のトラクタ1の夫々は、作業機10を装着可能な車体部11を備え、車体部11の前部が左右一対の前輪12で支持され、車体部11の後部が左右一対の後輪13で支持されている。
図1では、作業車両としてトラクタ1を例示したが、トラクタ1の他、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等、乗用型作業車両に加え、歩行型作業車両も適用可能である。また、トラクタ1に装着する作業機10について、
図1では、耕耘装置を装着した場合を例示しているが、耕耘装置に限らず、プラウ、施肥装置等、各種の作業機を適用することができる。
【0035】
複数のトラクタ1の夫々には、
図2に示すように、自律走行制御部14、測位用アンテナ15、位置情報算出部16、物体検知部17、作業機設定部18、無線通信装置19等が備えられている。ちなみに、複数のトラクタ1の夫々が同じ構成を備えているので、
図2では、1台のトラクタ1のみ、その構成を示している。
【0036】
自律走行制御部14は、位置情報算出部16にて算出される自車の現在位置情報(トラクタ1の現在位置)に基づいて、エンジン制御装置、変速装置、ブレーキ装置及び操舵装置等(図示省略)のトラクタ1に備えられる各種の装置を制御して、トラクタ1の車体部11を経路生成装置3にて生成される走行経路に沿って自律走行可能に構成されている。
【0037】
測位用アンテナ15は、
図1に示すように、例えば、衛星測位システム(例えばGNSS)を構成する測位衛星4からの衛星測位情報を受信するように構成されている。測位用アンテナ15は、例えば、トラクタ1のキャビンのルーフの上面に配置されている。
【0038】
位置情報算出部16は、
図2に示すように、測位補正情報配信サーバ21から配信される測位補正情報を用いて、測位用アンテナ15にて取得するトラクタ1(車体部11)の衛星測位情報を補正する測位方法により、トラクタ1の現在位置情報(例えば、緯度情報・経度情報)を算出している。この場合、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を採用することができる。測位補正情報配信サーバ21から配信される測位補正情報は、各トラクタ1の現在位置を高精度に算出するために用いられている。ちなみに、測位方法については、測位補正情報配信サーバ21を備えずに単独測位を用いることもできる。
【0039】
物体検知部17は、
図1では図示を省略するが、例えば、レーザスキャナが採用されており、トラクタ1の前方側の所定の検知範囲に、人や障害物等の物体の存在を検知している。作業機設定部18は、トラクタ1の車体部11に装着する作業機10の種類を設定可能に構成されている。無線通信装置19は、外部の無線通信装置との間で各種の情報を無線通信可能に構成されている。この実施形態では、無線通信装置19によりトラクタ1とサーバ2と間で各種の情報を無線通信可能に構成されている。
【0040】
サーバ2は、
図2に示すように、各トラクタ1に測位補正情報を配信する測位補正情報配信サーバ21と、協調作業を行うトラクタ1を管理するトラクタ管理サーバ22とを備えている。
【0041】
経路生成装置3は、圃場等の作業領域R(
図3参照)においてトラクタ1の車体部11が自律走行する走行経路を生成する経路生成部31と、各種の情報を表示可能な表示部32等とを備えている。
【0042】
経路生成部31が走行経路を生成するに当たり、まず、作業領域R(
図3参照)の設定が行われる。例えば、任意の四隅に測位アンテナ(例えば、持ち運び可能なポータブル型測位アンテナ)を配置して四隅の位置座標を計測し、それら四隅の位置座標を基準として矩形状の作業領域R(
図3参照)を設定することができる。作業領域Rの設定については、測位アンテナを用いるものに限らず、例えば、地図情報から任意の領域を特定することもでき、その他、各種の特定方法を採用することができる。
【0043】
経路生成部31は、作業開始地点S(
図3参照)、作業終了地点E(
図3参照)、及び、作業方向を設定して、複数の直線路Lと複数の旋回路Mとを含む経路を生成している。直線路Lは、直線路L同士の距離が設定距離(例えば、2.5m)となるように平行に配置される。旋回路Mは、直線路L同士を接続する経路として設定され、トラクタ1の進行方向を180度転換するための経路である。直線路Lは、トラクタ1が作業機10を作業状態に切り替えて作業を行いながら自律走行するための経路である。旋回路Mは、ことで、トラクタ1が作業機10を非作業状態に切り替えて作業を行わずに自律走行するための経路である。
【0044】
経路生成部31にて走行経路を生成するに当たり、ユーザ等が自律走行を行うトラクタ1の台数を指定する。トラクタ1の台数としては、3台以上の台数であれば、任意の台数を指定可能となっている。例えば、トラクタ1の台数として5台を指定すると、
図3に示すように、経路生成部31が複数の直線路Lと複数の旋回路Mとを含む経路を生成する。
【0045】
経路生成装置3には、
図2に示すように、ユーザが自律走行を行うトラクタ1の台数を指定する際に、作業条件に応じた台数を推奨する台数推奨部34が備えられている。作業条件は、作業領域Rの形状や大きさ等の作業領域Rに関する作業領域条件、ユーザが使用可能なトラクタ1の最大台数等を含む条件に設定されている。
【0046】
例えば、作業領域Rの形状が、直線路Lに沿う方向の長さが長く、直線路Lに直交する方向の長さが短い場合には、より多くのトラクタ1にて協調作業を行うことで、効率よく作業を行うことができる。逆に、作業領域Rの形状が、直線路Lに沿う方向の長さが短く、直線路Lに直交する方向の長さが長い場合には、多数のトラクタ1にて協調作業を行うと、旋回するときの待ち時間が長くなってしまい、かえって作業効率が低下してしまう。
【0047】
そこで、台数推奨部34は、作業条件から、作業効率の向上を図ることができるトラクタ1の台数を求め、その求めた台数を推奨するように構成されている。台数推奨部34にて推奨される台数は、ユーザが認識可能に表示部32に表示される。
【0048】
経路生成部31は、
図3に示すように、作業領域Rの一端に設けられた作業開始地点Sから作業領域Rの他端に設けられる直線路Lの終端位置に向かって作業方向に平行な直線路Lを生成するとともに、その直線路Lに平行な直線路Lを指定されたトラクタ台数に相当する本数分(
図3では5本)生成する。次に、作業領域Rの他端から作業領域Rの一端に向かって作業方向に平行な直線路Lを生成するとともに、その直線路Lに平行な直線路Lを指定されたトラクタ台数に相当する本数分(
図3では5本)生成する。経路生成部31は、平行に配置されたトラクタ台数分の複数本の直線路Lを1つの組とし、各組における作業方向が交互に反対方向となるように設定しながら、作業終了地点Eに至るまで複数組の直線路Lを生成している。この実施形態では、直線路Lが、作業領域Rの中央領域R1に生成されており、L1〜L20の合計20本の直線路Lが生成されている。
【0049】
経路生成部31は、互いに異なる組に属する直線路L同士を接続する旋回路Mを生成している。この実施形態では、旋回路Mが、特定の直線路Lと、指定されたトラクタ台数から1を減算して算出される本数分(
図3では4本)隔てた位置に設定された直線路Lとを接続している。旋回路Mは、互いに異なる組に属する何れの直線路Lを接続するものでもよく、どの直線路Lとどの直線路Lとを接続するかは適宜変更が可能である。
【0050】
経路生成装置3では、協調作業するときの作業態様を指定することで、経路生成部31にて生成された走行経路において各トラクタ1がどのように自律走行を行うかを示唆するシミュレーション映像を表示部32に表示可能に構成されている。作業態様は、各トラクタ1の初期の位置関係を規定しており、協調作業におけるトラクタ1の作業方向及び作業方向に直交する方向での位置関係を示す編成パターンである。例えば、
図4〜
図6に示すように、3つの作業態様から1つの作業態様を指定可能に構成されている。
図4〜
図6は、トラクタ台数を5台とした場合の3つの作業態様を示しており、各トラクタ1をT1〜T5にて示している。ちなみに、
図4〜
図6では、一部の旋回路Mを省略している。
【0051】
第1の作業態様は、
図4に示すように、各トラクタT1〜T5が初期位置において進行方向に対して所定の距離を隔てて1台ずつ順番に並ぶ作業態様である。この実施形態では、旋回路Mの旋回方向に最も近い側に位置させるトラクタT5を最前方に配置し、旋回路Mの旋回方向から遠ざかる順でトラクタT1〜T4を順次後方側に配置している。各トラクタT1〜T5の初期位置が、進行方向に対して5列となり、進行方向に対して傾斜する直線状に並ぶようにしている。
【0052】
第2の作業態様は、
図5に示すように、各トラクタT1〜T5が初期位置において進行方向に対して所定の距離を隔てて複数台が並ぶ状態で、最後方に位置するトラクタT3を1台とする作業態様である。この実施形態では、進行方向に直交する方向において両端部に位置する2台のトラクタT1、T5を最前方に配置し、進行方向に直交する方向において両端部よりも1つ内側に位置する2台のトラクタT2、T4を最前方のトラクタT1,T5の後方側に配置し、進行方向に直交する方向において中央に位置する1台のトラクタT3を最後方に配置している。各トラクタT1〜T5の初期位置が、進行方向に対して3列となり、V字状に並ぶようにしている。
【0053】
第3の作業態様は、
図6に示すように、各トラクタT1〜T5が初期位置において進行方向に対して所定の距離を隔てて複数台が並ぶ状態で、最後方に位置するトラクタT2、T4を複数台とする作業態様である。この実施形態では、進行方向に直交する方向において隣り合うトラクタT1〜T5を前方側と後方側とに交互に配置して、トラクタT1、T3、T5の3台を最前方に配置し、トラクタT2、T4の2台を最後方に配置している。各トラクタT1〜T5の初期位置が、進行方向に対して2列となり、W字状に並ぶようにしている。
【0054】
3つの作業態様の夫々(
図4〜
図6)について、シミュレーション映像を表示部32に表示可能としている。ちなみに、
図4〜
図6には、シミュレーション映像において自律走行を開始した直後の画像を示したものである。シミュレーション映像では、図示は省略するが、作業領域Rの全体を作業するのに必要な総作業時間、総作業時間における各トラクタ1の待機時間、総作業時間における各トラクタ1の旋回時間、燃費効率等の作業効率を把握するために必要な情報が併せて表示される。燃費効率については、例えば、作業における推定負荷、作業速度、作業時間等から推定することができる。作業領域Rにおいて特定の作業態様にて実際に作業を行った場合に、実作業負荷、実エンジン回転速度、PTO軸回転速度、燃料消費量等の各種の作業情報を作業領域Rに対応付けてデータベース化を図ることができる。これにより、燃費効率を推定する際に、データベースを用いて、同一の作業領域Rにおける過去の作業情報に基づいて燃費効率を精度よく算出することができる。
【0055】
経路生成部31は、3つの作業態様の夫々(
図4〜
図6)について、複数の直線路Lと複数の旋回路Mとを含む経路を生成可能に構成されている。ユーザは、
図4〜
図6に示すシミュレーション映像を確認し、3つの作業態様から1つの作業態様を指定することで、経路生成部31にて生成された走行経路のうち、指定された作業態様に相当する経路を示す経路情報を各トラクタ1に入力している。ユーザが経路生成装置3の操作部等を操作することで、3つの作業態様から1つの作業態様を指定できる。経路情報の入力は、例えば、USBメモリ等の記憶媒体を用いて各トラクタ1の自律走行制御部14に経路情報が入力されている。経路情報の入力については、記憶媒体を用いるものに限らず、トラクタ1と経路生成装置3との間で無線通信することにより、経路生成部31から各トラクタ1の自律走行制御部14に経路情報を入力することもできる。
【0056】
経路生成装置3には、ユーザが3つの作業態様から1つの作業態様を指定する際に、作業内容に応じた1つの作業態様を推奨する作業態様推奨部33が備えられている。作業態様推奨部33が推奨する作業態様がどの作業態様であるかが認識可能に表示部32に表示される。
【0057】
例えば、
図4に示す第1の作業態様では、旋回路Mを旋回する際の待ち時間が少なく、複数台のトラクタ1を効率よく旋回させることができる。
図5に示す第2の作業態様では、最後方に位置するトラクタ1が1台であるので、最後方に位置するトラクタ1にユーザが搭乗すると、他のトラクタ1を容易に監視することができる。
図6に示す第3の作業態様では、複数のトラクタ1が前後方向で交互に位置して左右対称にバランスよく配置されている。よって、例えば、トラクタ1の両横に作業領域Rの土を移動させる作業を行った場合に、それよりも後方側に位置するトラクタ1によって左右両側にバランスよく土を移動させることができ、左右方向の一方側のみに多量の土が移動してしまう土寄せが発生し難い。
【0058】
そこで、作業内容が草刈り作業等であれば、トラクタ1の両横に作業領域Rの土が移動するような作業ではないので、作業態様推奨部33は第1の作業態様を推奨している。作業内容が代掻き作業等であれば、トラクタ1の両横に作業領域Rの土が移動するような作業であるので、作業態様推奨部33は第3の作業態様を推奨している。作業内容が草刈り作業や代掻き作業以外であって、最後方に位置するトラクタ1にユーザが搭乗することが望まれる作業であれば、作業態様推奨部33は第2の作業態様を推奨している。
【0059】
次に、経路生成装置3により生成された経路情報を各トラクタ1に入力してから自律走行が開始されるまでの流れについて説明する。
経路情報を各トラクタ1に入力した後、ユーザは各トラクタ1の自律走行制御部14に対して、トラクタ1が入力された経路の内、何れの経路を走行するかを設定する。
図3において、紙面に向かって右端に位置する直線路Lから順に番号を振っていくと、L1〜L20の合計20本の直線路Lを備えることになる。これにより、第1のトラクタT1(
図4〜
図6参照)が走行する経路(直線路L)として、L1、L6、L11、L16の順に設定する。第2のトラクタT2(
図4〜
図6参照)が走行する経路(直線路L)として、L2、L7、L12、L17の順に設定する。第3のトラクタT3(
図4〜
図6参照)が走行する経路(直線路L)として、L3、L8、L13、L18の順に設定する。第4のトラクタT4(
図4〜
図6参照)が走行する経路(直線路L)として、L4、L9、L14、L19の順に設定する。第5のトラクタT5(
図4〜
図6参照)が走行する経路(直線路L)として、L5、L10、L15、L20の順に設定する。
【0060】
ユーザは、各トラクタ1に対して走行する経路を設定した後に、最初に走行する経路に各トラクタ1を移動させる。この実施形態では、ユーザが各トラクタ1を直線路L1〜L5の夫々に移動させる。
【0061】
このとき、ユーザが第1の作業態様を指定している場合には、
図4に示すように、旋回路Mの旋回方向に最も近い側のトラクタT5を最前方に位置させ、旋回路Mの旋回方向から遠ざかる順でトラクタT1〜T4を順次後方側に位置させて、各トラクタT1〜T5を前後方向に位置をずらして配置させる。
【0062】
ユーザが第2の作業態様を指定している場合には、
図5に示すように、進行方向に直交する方向において両端部の2台のトラクタT1、T5を最前方に位置させ、進行方向に直交する方向において両端部よりも1つ内側の2台のトラクタT2、T4を最前方のトラクタT1,T5の後方側に位置させ、進行方向に直交する方向において中央の1台のトラクタT3を最後方に位置させる。トラクタT1、T5を前後方向で同じ位置に配置させ、トラクタT2、T4を前後方向で同じ位置に配置させる。トラクタT1、T5の1列目、トラクタT2、T4の2列目、トラクタT3の3列目となるように、前後方向に位置をずらして配置させる。
【0063】
ユーザが第3の作業態様を指定している場合には、
図6に示すように、進行方向に直交する方向において隣り合うトラクタT1〜T5を前方側と後方側とに交互に位置させ、トラクタT1、T3、T5の3台を最前方に位置させ、トラクタT2、T4の2台を最後方に位置させる。トラクタT1、T3、T5を前後方向で同じ位置に配置させ、トラクタT2、T4を前後方向で同じ位置に配置させる。トラクタT1、T3、T5の1列目、トラクタT2、T4の2列目となるように、前後方向に位置をずらして配置させる。
【0064】
ここで、複数の直線路Lに配置されたトラクタ1の前後方向の位置ずれが閾値以内である場合に、両トラクタ1が前後方向に同じ位置に配置されたものとし、閾値を超える場合に両トラクタ1が前後方向に位置をずらして配置されたものとしている。
【0065】
ユーザにより各トラクタ1を各直線路Lにおいて所定の位置に移動させた後、
図2に示すように、各トラクタ1からトラクタ管理サーバ22に対して、位置情報算出部16にて算出した自車の現在位置情報を送信している。トラクタ管理サーバ22は、複数のトラクタ1の現在位置情報に基づいて、複数のトラクタ1から協調作業を行う複数の協調作業車両を特定し、特定された複数の協調作業車両の夫々に対して複数の協調作業車両の位置情報を出力するように構成されている。
【0066】
トラクタ管理サーバ22には、位置情報取得部23と、協調作業車両特定部24と、位置情報出力部25とが備えられている。位置情報取得部23は、複数のトラクタ1の夫々における位置情報算出部16が算出した各トラクタ1の位置情報を取得するように構成されている。協調作業車両特定部24は、複数のトラクタ1の位置情報に基づいて、複数のトラクタ1から協調作業を行う複数の協調作業車両を特定するように構成されている。位置情報出力部25は、協調作業車両特定部24により特定された複数の協調作業車両の夫々に対して複数の協調作業車両の位置情報を出力するように構成されている。
【0067】
位置情報取得部23は、複数のトラクタ1の夫々における無線通信装置19との無線通信により各トラクタ1の現在位置情報を取得している。協調作業車両特定部24は、各トラクタ1の現在位置情報に基づくクラスタ分け処理を行うことで、複数の協調作業車両を特定している。協調作業車両特定部24は、特定のトラクタ1の位置と他のトラクタ1の位置との離間距離を求め、その離間距離が所定距離未満であると、同一のクラスタに属するトラクタ1である(協調作業車両である)と判定する。また、協調作業車両特定部24は、離間距離が所定距離以上であると、同一のクラスタに属するトラクタ1ではない(協調作業車両ではない)と判定する。ここで、所定距離は、
図4〜
図6に示すように、前後方向に位置をずらす距離、及び、直線路Lに直交する方向での距離等を考慮して設定されており、トラクタT1〜T5の全てが同一のクラスタに属するトラクタ1である(協調作業車両である)と判定されるようにしている。これにより、協調作業を行う場合に初期位置以外の位置に存在するトラクタ1が協調作業車両として誤って特定されることがなく、初期位置に配置された複数のトラクタT1〜T5の全てを協調作業車両として適切に特定することができる。
【0068】
ちなみに、クラスタ分け処理として、特定のトラクタ1の位置を基準として、特定のトラクタ1からの他のトラクタ1の離間距離を求めているが、例えば、作業領域R内の作業開始地点S(
図3参照)の近くに基準点を設定し、その基準点からの他のトラクタ1の離間距離を求め、その求めた離間距離に基づいてクラスタ分けを行うこともできる。
【0069】
位置情報出力部25は、クラスタ分け処理にて同一のクラスタに属するトラクタ1と判定されたトラクタ1を協調作業車両とし、その協調作業車両だけに同一のクラスタに属するトラクタ1の全ての位置情報を出力している。
図4〜
図6において、位置情報出力部25は、トラクタT1に対して他のトラクタT2〜T5の位置情報の全てを出力し、トラクタT2〜T5に対しても他のトラクタの位置情報の全てを出力しており、各トラクタT1〜T5は、他のトラクタの位置情報の全てを取得可能となっている。このように、位置情報出力部25は、同一のクラスタに属するトラクタ1だけに他の協調作業車両(トラクタ1)の位置情報を出力するので、協調作業に無関係なトラクタ1の位置情報が協調作業車両(トラクタ1)に出力されることがない。よって、協調作業車両(トラクタ1)は、位置情報出力部25から出力される位置情報によって、他の協調作業車両(トラクタ1)の位置情報を適切に把握することができる。
【0070】
以下、協調作業車両であるトラクタ1を、単に、「トラクタ1」と呼称して説明する。
各トラクタ1では、自律走行制御部14が、位置情報出力部25から出力された複数のトラクタ1の位置情報、及び、入力された経路情報に基づいて、各トラクタ1の優先順位を特定している。自律走行制御部14は、位置情報出力部25から出力された複数のトラクタ1の位置情報に基づいて、各トラクタ1の作業方向に対する位置偏差を特定し、特定された位置偏差及び旋回路Mにおける車体部11の旋回方向に基づいて各トラクタ1の優先順位を特定している。
【0071】
複数のトラクタ1は、前後方向の位置によってグループに区分けされている。最前方(1番手)に位置するトラクタ1は、1番手グループに区分けされ、最前方よりも1つ後方側(2番手)に位置するトラクタ1は、2番手グループに区分けされている。このように、n番手に位置するトラクタ1は、n番手グループに区分けされている。また、最前方に位置するトラクタ1と前後方向で同じ位置のトラクタ1は、1番手グループに区分けされ、2番手に位置するトラクタ1と前後方向で同じ位置のトラクタ1は、2番手グループに区分けされている。このように、前後方向で同じ位置に位置するトラクタ1同士は、同じ番手グループに区分けされている。
【0072】
優先順位は、前方側に位置するトラクタ1から優先順位が高く、前後方向で同じ位置に位置するトラクタ1同士では旋回路Mにおける車体部11の旋回方向(
図4〜
図6中、左側)に近いトラクタ1ほど優先順位が高くなるようにしている。これにより、1番手グループに属するトラクタ1が最も優先順位が高い番手グループとなり、2番手グループ以降、順次優先順位が低くなる。また、同じ番手グループの中でも優先順位の高低が存在しており、旋回方向に一番近いトラクタ1の優先順位が最も高く、旋回方向から離れていくほど優先順位が低くなる。
【0073】
図4に示す第1の作業態様では、トラクタT5が1番手グループに属し、トラクタT4が2番手グループに属し、トラクタT3が3番手グループに属し、トラクタT2が4番手グループに属し、トラクタT1が5番手グループに属する。優先順位は、トラクタT5>トラクタT4>トラクタT3>トラクタT2>トラクタT1の順となる。
【0074】
図5に示す第2の作業態様では、トラクタT1、T5が1番手グループに属し、トラクタT2、T4が2番手グループに属し、トラクタT3が3番手グループに属する。優先順位は、トラクタT5>トラクタT1>トラクタT4>トラクタT2>トラクタT3の順となる。
【0075】
図6に示す第3の作業態様では、トラクタT1、T3、T5が1番手グループに属し、トラクタT2、T4が2番手グループに属する。優先順位は、トラクタT5>トラクタT3>トラクタT1>トラクタT4>トラクタT2の順となる。
【0076】
以下、トラクタ1の自律走行の流れを、
図7及び
図8のフローチャートに基づいて説明する。
図7は、主にトラクタ1が直線路Lを自律走行するときの流れを示すものであり、
図8は、主にトラクタ1が旋回路Mを自律走行するときの流れを示すものである。
【0077】
自律走行の開始が指示されたときに、
図7に示すように、自律走行制御部14は、自車の位置が直線路Lの始端位置又は終端位置であるか否かを判定する(ステップ#1)。自車の位置が直線路Lの始端位置でも終端位置でもない場合に、自律走行制御部14は、直線路Lの自律走行を実行する(ステップ#1のNoの場合、ステップ#9)。直線路Lの自律走行については後述する。
【0078】
自車の位置が直線路Lの始端位置又は終端位置である場合に、自律走行制御部14は、自車の位置が始端位置であるか否かを判定する(ステップ#1のYesの場合、ステップ#2)。自律走行制御部14は、自車の位置が始端位置であれば、他のトラクタ1が旋回中であるか否かを判定する(ステップ#2のYesの場合、ステップ#3)。自律走行制御部14は、他のトラクタ1が旋回中であれば、第1走行条件が成立しているか否かを判定する(ステップ#3のYesの場合、ステップ#4)。ここで、第1走行条件は、同じ番手グループに属する全てのトラクタ1が直線路Lの始端位置に位置することとしている。
【0079】
自律走行制御部14は、第1走行条件が成立していなければ、自車を直線路Lの始端位置にそのまま停止待機させる(ステップ#4のNoの場合、ステップ#5)。自律走行制御部14は、第1走行条件が成立していれば、自車を所定位置(直線路Lの始端位置から所定距離だけ前進した位置)まで前進させて停止する(ステップ#4のYesの場合、ステップ#6)。
【0080】
自律走行制御部14は、第2走行条件が成立するか否かを判定し、第2走行条件が成立すると、直線路Lの自律走行を実行する(ステップ#7のYesの場合、ステップ#9)。ここで、第2走行条件は、自車が属する番手グループよりも優先順位が低い全ての番手グループに属するトラクタ1が直線路Lに存在し、且つ、各番手グループに属するトラクタ1の前後方向での位置が同じ位置となっていることとしている。自律走行制御部14は、第2走行条件が成立していなければ、待機制御を行う(ステップ#7のNoの場合、ステップ#8)。
【0081】
待機制御では、自律走行制御部14が、自車が属する番手グループよりも優先順位が低い番手グループにおいて、その番手グループに属するトラクタ1が直線路Lに存在し、且つ、その番手グループに属するトラクタ1同士の前後方向での位置が同じ位置となったときに、自車を所定位置(現在の位置から所定距離だけ前進した位置)に前進させて待機させる。
【0082】
ここで、ステップ#9における直線路Lの自律走行について説明する。
自律走行制御部14は、直線路Lを自律走行するときに、車体部11の自律走行を制御するとともに、作業機10を作業状態に切り替えるように作業機10の作動状態も制御している。これにより、直線路Lでは、トラクタ1が、作業機10にて作業を行いながら、自律走行されることになる。それに対して、旋回路Mの自律走行では、後述するが、自律走行制御部14が、作業機10を非作業状態に切り替えて自律走行を行うようにしている。
【0083】
各トラクタ1が直線路Lを自律走行するに当たり、自律走行制御部14は、直線路Lに沿って車体部11を自律走行させるだけでなく、優先順位に従って車体部11の自律走行を制御するように構成されている。優先順位が最も高いトラクタ1では、自律走行制御部14が、直線路Lに沿って車体部11を自律走行させるだけである。それに対して、優先順位が最も高いトラクタ1以外のトラクタ1では、自律走行制御部14が、直線路Lに沿って車体部11を自律走行させることに加えて、最も優先順位が高いトラクタ1に対して、作業方向(前後方向)での位置偏差を所定値に維持するように車体部11の自律走行を制御している。
【0084】
優先順位が最も高いトラクタ1以外のトラクタ1では、自律走行制御部14が、自車と同じ番手グループに属するトラクタ1の内、最も優先順位が高いトラクタ1に対して前後方向の位置が同じ位置となるように車体部11の自律走行を制御するとともに、自車よりも1つ優先順位が高い番手グループ及び1つ優先順位が低い番手グループに属するトラクタ1に対する前後方向での離間距離が所定距離を保つように車体部11の自律走行を制御している。ちなみに、他のトラクタ1の位置情報は、リアルタイム(例えば、数ms毎)でサーバ2の位置情報出力部25から出力されており、自律走行制御部14は、その位置情報出力部25からの出力により他のトラクタ1の位置情報を把握している。
【0085】
例えば、
図6に示す第3の作業態様を例に挙げると、最も優先順位が高いトラクタT5では、自律走行制御部14が、直線路Lに沿って車体部11を自律走行させる。1番手グループに属するトラクタT1、T3では、自律走行制御部14が、前後方向でトラクタT5と同じ位置に位置するとともに、2番手グループに属するトラクタT2、T4との離間距離を所定距離に保つように車体部11の自律走行を制御している。2番手グループに属するトラクタT2、T4では、自律走行制御部14が、トラクタT2、T4のお互いが前後方向で同じ位置に位置するとともに、1番手グループに属するトラクタT1、T3、T5との離間距離を所定距離に保つように車体部11の自律走行を制御している。
【0086】
図7に戻り、ステップ#2において、自車の位置が始端位置でなければ(つまり自車の位置が終端位置であると)、
図8に示すように、自律走行制御部14は、他のトラクタ1が旋回中であるか否かを判定する(ステップ#11)。自律走行制御部14は、他のトラクタ1が旋回中でなければ、旋回路Mの自律走行を実行する(ステップ#11のNoの場合、ステップ#15)。旋回路Mの自律走行については後述する。
【0087】
自律走行制御部14は、他のトラクタ1が旋回中であれば、直線路Lの終端位置に停止待機して、自車が次に旋回するトラクタ1であるか否かを判定する(ステップ#11のYesの場合、ステップ#12、ステップ#13)。自律走行制御部14は、優先順位に基づいて、旋回を行っていないトラクタ1の内、自車の優先順位が最も高いか否かによって、自車が次に旋回するトラクタ1であるか否かを判定している。自律走行制御部14は、旋回を行っていないトラクタ1の内、自車の優先順位が最も高いトラクタ1である場合に、自車が次に旋回するトラクタ1であると判定し、旋回を行っていないトラクタ1の内、自車の優先順位が最も高いトラクタ1ではない場合に、自車が次に旋回するトラクタ1ではないと判定している。
【0088】
自律走行制御部14は、自車が次に旋回するトラクタ1であると判定すると、旋回開始条件が成立しているか否かを判定する(ステップ#13のYesの場合、ステップ#14)。ここで、旋回開始条件は、自車よりも優先順位が高いトラクタ1が自車位置を基準とする所定領域に存在しないこととしている。所定領域に他のトラクタ1が存在する場合には、旋回路Mの自律走行を開始しないので、各トラクタ1は、他のトラクタ1との衝突を回避しながら、旋回路Mの自律走行を行うことができる。
【0089】
このようにして、自律走行制御部14は、各直線路Lの終端位置において、自車よりも優先順位が高いトラクタ1が旋回中であって、且つ、自車位置を基準とする所定領域内に自車よりも優先順位が高いトラクタ1が存在する場合は、直線路Lの終端位置で停止している。そして、自律走行制御部14は、直線路Lにおける車体部11の自律走行を開始するときに所定領域に他のトラクタ1が存在していても自律走行を実行可能である一方、旋回路Mにおける車体部11の自律走行を開始するときに所定領域に他のトラクタ1が存在していると自律走行を実行しない。
【0090】
ちなみに、旋回路Mの自律走行を行う場合だけに限らず、直線路Lの自律走行を行う場合にも、自律走行制御部14は、自車位置を基準とする所定領域内に他のトラクタ1が存在することで、自律走行を停止することができる。
【0091】
また、直線路Lの自律走行を行う場合に、自律走行制御部14が、所定領域内に他のトラクタ1が存在しても自律走行を継続させ、所定領域内にトラクタ1以外の障害物が存在するときに自律走行を停止することもできる。自律走行制御部14は、位置情報出力部25にて出力される他のトラクタ1の位置情報と物体検知部17の検知情報とに基づいて、所定領域内に存在するのが他のトラクタ1であるか障害物であるかの判定を行う。自律走行制御部14は、物体検知部17にて物体を検知している場合に、その検知範囲に他のトラクタ1の位置情報が存在しなければ、障害物であると判定している。
【0092】
ここで、所定領域については、自車の車体部11を含む一定の範囲に設定するものに限らず、各種の条件に応じて所定領域の範囲を変更設定することができる。自律走行制御部14は、直線路Lを自律走行する場合に、作業機10を作業状態に切り替え、旋回路Mを自律走行する場合に、作業機10を非作業状態に切り替えている。そこで、自律走行制御部14は、作業機10の状態に応じて所定領域の範囲を変更可能としている。例えば、自律走行制御部14は、作業機10の状態が作業状態のときの方が非作業状態のときよりも、所定領域の範囲が大きくなるように設定することができる。
【0093】
また、上述の如く、
図2に示すように、トラクタ1には、装着可能な作業機10の種類を設定可能な作業機設定部18が備えられている。ユーザは、トラクタ1の自律走行を開始する前等に、作業機設定部18によりトラクタ1の車体部11に装着する作業機10の種類を設定している。そこで、自律走行制御部14は、作業機設定部18にて設定される作業機10の種類に応じて所定領域の範囲を変更可能としている。例えば、自律走行制御部14は、作業機10の大きさが大きな種類であるほど、所定領域の範囲が大きくなるように設定することができる。
【0094】
図8に戻り、自律走行制御部14は、旋回開始条件が成立していなければ、旋回開始条件が成立するまで直線路Lの終端位置に停止した状態を維持し、旋回開始条件が成立すると、旋回路Mの自律走行を実行する(ステップ#14、ステップ#15)。このように、自律走行制御部14は、自車よりも優先順位が高いトラクタ1が旋回中であっても、所定領域内に自車よりも優先順位が高いトラクタ1が存在しない場合は、旋回路Mにおける自律走行を行っている。これにより、各トラクタ1は、旋回路Mにおける自律走行をスムーズに行うことができ、直線路Lの終端位置での待ち時間の短縮化を図ることができる。
【0095】
ここで、ステップ#15における旋回路Mの自律走行について説明する。
自律走行制御部14は、旋回路Mを自律走行するときに、車体部11の自律走行を制御するとともに、作業機10を非作業状態に切り替えるように作業機10の作動状態も制御している。これにより、旋回路Mでは、トラクタ1が、作業機10にて作業を行わずに、自律走行されることになる。
【0096】
自律走行制御部14は、自車に設定された旋回路Mに沿って車体部11を自律走行させるようにしている。自律走行制御部14は、現在位置する直線路Lの終端位置から、旋回路Mを経由して、次に走行することが設定されている直線路Lの始端位置まで車体部11を自律走行させている。
【0097】
図7及び
図8のフローチャートを前提として、直線路Lの終端位置及び始端位置における各トラクタ1の動きについて、作業態様として第3の作業態様(
図6参照)を指定した場合を例に挙げて、
図9及び
図10に基づいて説明する。
【0098】
図9(a)に示すように、1番手グループに属するトラクタT1、T3、T5が直線路Lの終端位置に到達すると、
図9(b)に示すように、1番手グループの中で最も優先順位が高いトラクタT5が旋回路Mの自律走行を実行する。トラクタT5による旋回路Mの自律走行の実行は、
図8のステップ#11において、トラクタT5の自律走行制御部14が、他のトラクタ1が旋回中ではないとの判定によりステップ#15に移行することで実現される。
【0099】
トラクタT5と同じ1番手グループに属するトラクタT1、T3は、トラクタT5よりも優先順位が低いので、直線路Lの終端位置に停止する。トラクタT1、T3の終端位置への停止は、
図8のステップ#11において、トラクタT1、T3の自律走行制御部14が、他のトラクタ1が旋回中であるとの判定によりステップ#12に移行することで実現される。
【0100】
ここで、トラクタT2、T4は、直線路Lの終端位置に到達しておらず、トラクタT1、T3が直線路Lの終端位置に停止したことに伴い、トラクタT1、T3との前後方向での離間距離を所定距離に保つために停止する。トラクタT2、T4の停止は、
図7のステップ#1において、トラクタT2、T4の自律走行制御部14が、終端位置に到達していないとの判定によりステップ#9に移行することで実現される。
【0101】
トラクタT3はトラクタT5の次に優先順位が高いので、トラクタT3の自律走行制御部14は、
図8のステップ#14において旋回開始条件が成立すると、ステップ#15に移行して、
図9(c)に示すように、トラクタT3による旋回路Mの自律走行を実行する。次に、トラクタT1はトラクタT3の次に優先順位が高いので、トラクタT1の自律走行制御部14は、
図8のステップ#14において旋回開始条件が成立すると、ステップ#15に移行して、
図9(d)に示すように、トラクタT1による旋回路Mの自律走行を実行する。このとき、トラクタT5は、
図9(d)に示すように、旋回路Mの自律走行を終了して、次に走行する直線路Lの始端位置に到達すると、トラクタT5の自律走行制御部14が、
図7のステップ#4において、第1走行条件が成立したと判定するまで、直線路Lの始端位置に停止する。また、
図9(d)に示すように、トラクタT1、T3が旋回路Mの自律走行を実行すると、1番手グループに属するトラクタT1、T3、T5の全てが直線路Lの終端位置に存在しなくなるので、2番手グループに属するトラクタT2、T4が直線路Lの終端位置まで移動する。
【0102】
図10(a)、(b)に示すように、トラクタT5、T3は、1番手グループに属するトラクタT1、T3、T5の全てが次に走行する直線路Lの始端位置に到達して、自律走行制御部14が、
図7のステップ#4において第1走行条件が成立したと判定するまで、次に走行する直線路Lの始端位置に停止待機している。
図9(a)〜(d)及び
図10(a)に示すように、1番手グループに属するトラクタT1、T3、T5が順次旋回路Mの自律走行を実行した後、旋回開始条件が成立すると、2番手グループに属するトラクタT2、T4の旋回路Mの自律走行が開始される。2番手グループの中でトラクタT4が最も優先順位が高いので、
図10(b)に示すように、まず、トラクタT4による旋回路Mの自律走行が実行される。その後、旋回開始条件が成立することで、トラクタT4の次に優先順位の高いトラクタT2が、旋回路Mの自律走行を実行する。
【0103】
図10(b)、(c)に示すように、1番手グループに属するトラクタT1、T3、T5の全てが次に走行する直線路Lの始端位置に到達すると、各トラクタT1、T3、T5の自律走行制御部14が、
図7のステップ#4において第1走行条件が成立したと判定して、所定位置まで前進して停止する。その後、トラクタT2、T4が、旋回路Mの自律走行を完了して、次に走行する直線路Lの始端位置に到達すると、全てのトラクタT1〜T5が次に走行する直線路Lに位置するので、
図7のステップ#7において、第2走行条件が成立することになり、全てのトラクタT1〜T5が、直線路Lの自律走行を実行する。
【0104】
このように、1番手グループに属する各トラクタT1、T3、T5の自律走行制御部14は、旋回終了後の直線路Lの始端位置において、自律走行の開始時において複数のトラクタT1〜T5の内、作業方向に対する位置偏差が無かった他のトラクタT1、T3、T5が直線路Lの始端位置に至るまで車体部11を停止させ、他のトラクタT1、T3、T5が直線路Lの始端位置に至ることにより直線路Lにおける車体部11の自律走行を開始している。また、旋回終了後の直線路Lの始端位置において、2番手グループに属する各トラクタT2、T4の自律走行制御部14も、1番手グループに属する各トラクタT1、T3、T5の自律走行制御部14と同様の動作を行って、直線路Lにおける車体部11の自律走行を開始している。
【0105】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、自車位置を基準とする所定領域に他のトラクタ1や障害物が存在する場合に、自律走行制御部14が自律走行を停止するようにしているが、物体検知部17(
図2参照)の検知範囲が所定領域よりも広い範囲となっているので、物体検知部17の検知範囲に何らかの障害物が存在することを検知することで、自律走行制御部14が自律走行を停止することもできる。
【0106】
直線路L及び旋回路Mでの自律走行中に、物体検知部17にて検知範囲内に物体を検知した場合に、自律走行制御部14が、自車位置に対する検知方向及び検知距離に基づいて物体の位置を特定する。自律走行制御部14は、位置情報出力部25にて出力される他のトラクタ1の位置情報と特定した物体の位置が一致しなければ、物体が障害物であるとし、自律走行を停止することができる。このように、検知範囲に障害物が存在することで、自律走行を停止させるので、障害物との衝突を回避しながら、協調作業を行うことができる。
【0107】
また、位置情報出力部25により出力された複数のトラクタ1の位置情報に基づいて、物体検知部17の検知範囲内にトラクタ1が存在すると判定された場合には、本来であれば、物体検知部17によっても物体が検知されることになる。しかしながら、物体検知部17にて物体が検知されなければ、物体検知部17等の故障が考えられる。
【0108】
そこで、自律走行制御部14は、位置情報出力部25により出力された複数のトラクタ1の位置情報に基づいて、物体検知部17の検知範囲内にトラクタ1が存在すると判定された場合であって、且つ、物体検知部17により物体が検知されないときに、車体部11の自律走行を停止している。これにより、物体検知部17等が故障したまま、自律走行が行われるのを防止することができる。
【0109】
(2)上記実施形態では、経路生成装置3をトラクタ1とは別に備えているが、例えば、トラクタ1に経路生成装置3を備えることもでき、経路生成装置3をどこに備えるかは適宜変更が可能である。
【0110】
(3)上記実施形態では、作業態様として、
図4〜
図6に示す3つの作業態様を例示したが、この3つの作業態様に限らず、その他、各種の作業態様を適用可能である。