【解決手段】半導体装置は、半導体基板上に設けられた第1の導電部材と、第1の導電部材の表面に設けられ且つ第1の導電部材よりもイオン化傾向が小さい第2の導電部材と、を含む配線を備える。第1の導電部材の第2の導電部材側の第1の面の幅は、第1の導電部材の半導体基板側の第2の面の幅よりも狭い。第2の導電部材の幅は、第1の導電部材の第1の面における幅よりも広く且つ第1の導電部材の第2の面における幅よりも狭い。
半導体基板上に設けられた第1の導電部材と、前記第1の導電部材の表面に設けられ且つ前記第1の導電部材よりもイオン化傾向が小さい第2の導電部材と、を含む配線を備え、
前記第1の導電部材の、前記第2の導電部材側の第1の面の幅は、前記第1の導電部材の、前記半導体基板側の第2の面の幅よりも狭く、
前記第2の導電部材の幅は、前記第1の導電部材の前記第1の面における幅よりも広く且つ前記第1の導電部材の前記第2の面における幅よりも狭い
半導体装置。
前記配線は、前記第1の絶縁膜に形成された開口部を介して、前記半導体基板に形成された電極に接続され、前記第2の絶縁膜に形成された開口部を介して外部接続端子に接続されている
請求項2に記載の半導体装置。
前記シード層を除去する工程において、前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材を含む配線の、前記第1の導電部材と前記第2の導電部材との界面の周辺領域に、前記配線の幅方向内側に向けて窪んだ窪み部を形成する
請求項8または請求項9に記載の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の実施形態に係る半導体装置が備える再配線の形成領域の構成を示す平面図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2B】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2C】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2D】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2E】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2F】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2G】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2H】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2I】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2J】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2K】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2L】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2M】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2N】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2O】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2P】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2Q】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2R】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2S】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3A】本発明の実施形態に係るシード層のエッチング工程において、局部電池効果により第1の導電部材の内部を流れる電子の流れを示した図である。
【
図3B】本発明の実施形態に係る再配線の構成を示す断面図である。
【
図4A】比較例に係る製造工程の一例を示す断面図である。
【
図4B】比較例に係る製造工程の一例を示す断面図である。
【
図4C】比較例に係る製造工程の一例を示す断面図である。
【
図4D】比較例に係る製造工程の一例を示す断面図である。
【
図4E】比較例に係る製造工程の一例を示す断面図である。
【
図4F】比較例に係る製造工程の一例を示す断面図である。
【
図5A】比較例に係るシード層のエッチング工程において、局部電池効果により第1の導電部材の内部を流れる電子の流れを示した図である。
【
図5B】比較例に係る再配線の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
【0015】
図1Aは、本発明の実施形態に係る半導体装置10が備える再配線30の形成領域の構成を示す平面図、
図1Bは、
図1Aにおける1B−1B線に沿った断面図、
図1Cは、
図1Aにおける1C−1C線に沿った断面図である。なお、
図1Aにおいて、
図1Bに示されている下層絶縁膜20、上層絶縁膜40及び外部接続端子50は、図示が省略されている。
【0016】
半導体装置10は、パッケージの形態が、WL−CSPの形態を有する。すなわち、半導体装置10は、パッケージの平面サイズが、半導体基板11の平面サイズと略同じである。半導体装置10は、半導体基板11上に設けられた下層絶縁膜20と、下層絶縁膜20の表面に設けられた再配線30と、下層絶縁膜20及び再配線30を覆う上層絶縁膜40と、を備えている。
【0017】
半導体基板11の表面には、トランジスタ、抵抗素子及びキャパシタ等の半導体素子(図示せず)が形成されている。半導体基板11の表面は、SiO
2等の絶縁体からなる層間絶縁膜12で覆われている。層間絶縁膜12内には、半導体基板11に形成された半導体素子に接続された配線13が設けられている。層間絶縁膜12の表面は、SiO
2等の絶縁体からなる層間絶縁膜14で覆われている。層間絶縁膜14の表面には、ビア16を介して配線13に接続されたチップ電極15、及びチップ電極15の表面を部分的に露出させる開口部を有するパッシベーション膜(保護膜)17が設けられている。
【0018】
パッシベーション膜17の表面は、ポリイミド及びPBO(ポリベンゾオキサゾール)等の感光性有機系絶縁部材で構成される、厚さ5〜10μm程度の下層絶縁膜20で覆われている。下層絶縁膜20には、チップ電極15の表面を部分的に露出させる開口部20Aが設けられている。
【0019】
下層絶縁膜20の表面には、再配線30が設けられている。再配線30は、UBM膜(Under Barrier Metal膜)31、第1の導電部材32及び第2の導電部材33を含んで構成されている。UBM膜31は、下層絶縁膜20と再配線30との密着性を高めるためTi膜を含む密着層を含んで構成されている。
【0020】
第1の導電部材32は、UBM膜31の表面に設けられ、第2の導電部材33は、第1の導電部材32の表面に設けられている。第1の導電部材32としてCu膜を好適に用いることができる。第2の導電部材33としてAu膜を好適に用いることができる。再配線30がAu膜で構成される第2の導電部材33を含むことで、再配線30の抵抗値を小さくすることができる。再配線30は、下層絶縁膜20の開口部20Aにおいてチップ電極15に接続されている。
【0021】
下層絶縁膜20及び再配線30は、ポリイミド及びPBO等の感光性有機系絶縁部材で構成される、厚さ5〜10μm程度の上層絶縁膜40で覆われている。上層絶縁膜40には、外部接続端子50の形成位置に再配線30を部分的に露出させる開口部40Aが設けられている。外部接続端子50は、例えばSnAgを含んで構成され、上層絶縁膜40の開口部40Aにおいて露出する再配線30(第2の導電部材33)の表面に接続されている。
【0022】
このように、再配線30は、一端側において、下層絶縁膜20に形成された開口部20Aを介してチップ電極15に接続されることにより半導体基板11に形成された半導体素子に接続され、他端側において、上層絶縁膜40に形成された開口部40Aを介して外部接続端子50に接続されている。再配線30は、半導体素子に接続される一端側が、接続部30Aとされ、外部接続端子50に接続される他端側が、パッド部(ランド部)30Bとされ、接続部30Aとパッド部30Bとを繋ぐ部分が配線部30Cとされている。
【0023】
以下に、再配線30の構成について詳細に説明する。上記したように、再配線30は、密着層を含むUBM膜31と、UBM膜31上に設けられたCu膜で構成される第1の導電部材32と、第1の導電部材32上に設けられたAu膜で構成される第2の導電部材33を備えている。
【0024】
図1Cに示すように、第1の導電部材32は、UBM膜31を介して下層絶縁膜20と接する面(以下、下面という)の側に設けられたベース部32Bと、第2の導電部材33と接する面(以下、上面という)の側に設けられた狭小部32Aと、を有する。ベース部32Bの側壁は、半導体基板11の主面に対して略垂直であり、ベース部32Bの上面は、半導体基板11の主面に対して略平行である。すなわち、ベース部32Bの断面形状は矩形状である。ベース部32Bの上面に接続された狭小部32Aの底部の幅は、ベース部32Bの上面の幅よりも狭く、狭小部32Aの断面形状は、順テーパ形状である。すなわち、狭小部32Aの側壁は、半導体基板11の主面に対して傾斜しており、狭小部32Aの幅は、上面に向けて徐々に狭くなっている。このように、第1の導電部材32は、上面の幅W1aが、下面の幅W1bよりも狭くなっている。
【0025】
第2の導電部材33の幅W2は、第1の導電部材32の下面における幅W1bよりも狭く、且つ第1の導電部材32の上面における幅W1aよりも広い。第2の導電部材33は、
図1Aに示すように、再配線30の幅方向において第1の導電部材32の内側に配置されているが、第2の導電部材33の幅方向両端部は、
図1Cに示すように、第1の導電部材32の狭小部32Aからはみ出している。換言すれば、狭小部32Aの幅方向両端部が、第2の導電部材33の内側に配置されている。なお、幅W1a、W1b及びW2は、再配線30の引き出し方向(伸長方向)と交差する方向の長さである。
【0026】
第1の導電部材32及び第2の導電部材33が上記のように構成されていることにより、再配線30の、第1の導電部材32と第2の導電部材33との界面の周辺領域には、再配線30の幅方向内側に向けて窪んだ窪み部35が形成される。再配線30を覆う上層絶縁膜40は、再配線30の窪み部35に侵入しており、第2の導電部材33の、狭小部32Aからはみ出した部分は、上層絶縁膜40と接している。窪み部35は、UBM膜31を構成するシード層31b(
図2F参照)を除去するためのエッチング工程において、第1の導電部材32及び第2の導電部材33による局部電池効果によって、第1の導電部材32がエッチングされることにより形成される。なお、窪み部35は、
図1Bに示す断面において、再配線30の接続部30A側の端部及びパッド部30B側の端部においても観測することができる。
【0028】
はじめに、ウエハプロセスが完了した半導体基板11を用意する(
図2A)。ウエハプロセスは、半導体基板11上にトランジスタ等の半導体素子(図示せず)を形成する工程、半導体基板11の表面にSiO
2等の絶縁体で構成される層間絶縁膜12を形成する工程、半導体素子に接続された配線13を形成する工程、配線13の表面にSiO
2等の絶縁体で構成される層間絶縁膜14を形成する工程、層間絶縁膜14の表面にビア16を介して配線13に接続されたチップ電極15を形成する工程、及び層間絶縁膜14の表面にチップ電極15を部分的に露出させるパッシベーション膜17を形成する工程を含む。
【0029】
次に、例えば、スピンコート法を用いてウエハプロセスが完了した半導体基板11の表面に、ポリイミド及びPBO等の感光性有機系絶縁部材を、8μm程度の膜厚で塗布することで、パッシベーション膜17及びチップ電極15の表面を覆う下層絶縁膜20を形成する(
図2B)。
【0030】
次に、下層絶縁膜20に露光及び現像処理を施すことにより、チップ電極15の表面を部分的に露出させる開口部20Aを下層絶縁膜20に形成する(
図2C)。
【0031】
その後、熱処理によって下層絶縁膜20を硬化させる。熱硬化により下層絶縁膜20は収縮し、膜厚が5um程度となり、また、略垂直形状であった開口部20Aの側面は、順テーパ形状となる(
図2D)。
【0032】
次に、下層絶縁膜20の表面、下層絶縁膜20の開口部20Aにおいて露出するチップ電極15の表面を覆うUBM膜31を形成する(
図2E、
図2F)。UBM膜31は、
図2Fに示すように、密着層31a及びシード層31bの積層膜により構成される。密着層31aは、下層絶縁膜20と再配線30との密着性を高める役割を担い、例えば厚さ150nm程度のTi膜で構成される。シード層31bは、第1の導電部材32及び第2の導電部材33を電解めっき法によって形成する際の通電層としての役割を担い、例えば厚さ300nm程度のCu膜で構成される。密着層31a及びシード層31bは、それぞれ、例えばスパッタ法によって形成される。
【0033】
次に、再配線30の形成領域に開口部200Aを備えたレジストマスク200をUBM膜31上に形成する(
図2G)。レジストマスク200は、スピンコート法を用いて感光性有機系絶縁部材からなるレジスト材をUBM膜31上に塗布した後、このレジスト材を露光及び現像処理によってパターニングすることで形成される。
【0034】
次に、電界めっき法を用いて、レジストマスク200の開口部200Aにおいて露出しているUBM膜31上に第1の導電部材32としての厚さ5μm程度のCu膜を形成する(
図2H)。電界めっきでは、めっき液に半導体基板11の表面を浸漬した状態で、半導体基板11の外周に設けられためっき電極(図示せず)を介してUBM膜31を構成するシード層31bに電流を流す。これにより、UBM膜31の露出部分にCuが析出し、UBM膜31上に第1の導電部材32が形成される。UBM膜31を構成するシード層31bは、第1の導電部材32のCuに取り込まれる。従って、第1の導電部材32と下層絶縁膜20との間に密着層31aとして機能するTi膜が介在する構造となる。
【0035】
次に、アッシングプロセスまたは有機溶剤などを用いてレジストマスク200を除去する(
図2I)。次に、第2の導電部材33の形成領域に開口部201Aを備えたレジストマスク201を第1の導電部材32の表面に形成する(
図2J)。レジストマスク201は、スピンコート法を用いて感光性有機系絶縁部材からなるレジスト材をUBM膜31上及び第1の導電部材32上に塗布した後、このレジスト材を露光及び現像処理によってパターニングすることで形成される。レジストマスク201の開口部201Aの端部は、第1の導電部材32の外縁に沿うように第1の導電部材32の外縁の内側に配置される。
【0036】
次に、電界めっき法を用いて、レジストマスク201の開口部201Aにおいて露出している第1の導電部材32の表面に第2導電部材33としての厚さ1μm程度のAu膜を形成する(
図2K)。第2の導電部材33は、第1の導電部材32の端部より内側に形成される。この時点において、第1の導電部材32の幅W1は、第1の導電部材32の厚さ方向の全域に亘り略均一である。第2の導電部材の幅W2は、第1の導電部材32の幅W1より狭く形成される。第2の導電部材33の表面積S1と、第1の導電部材32の露出部分(第1の導電部材32の側面及び第2の導電部材33から露出する上面)の表面積S2との比S2/S1が、0.08以上であることが好ましい。電界めっきでは、めっき液に半導体基板11の表面を浸漬した状態で、半導体基板11の外周に設けられためっき電極(図示せず)を介してUBM膜31を構成するシード層31bに電流を流す。これにより、第1の導電部材32の露出部分にAuが析出し、第1の導電部材32の表面に第2の導電部材33が形成される。UBM膜31、第1の導電部材32及び第2の導電部材33により再配線30が構成される。
【0037】
次に、アッシングプロセスまたは有機溶剤などを用いてレジストマスク201を除去する(
図2L)。
【0038】
次に、ソフトエッチング液などを用いたウェットエッチング処理によりシード層31bを除去する(
図2M)。シード層31bの除去に用いられるソフトエッチング液により、シード層31b及び第1の導電部材32を構成するCu膜の一部が溶解されるが、第2の導電部材33を構成するAu膜は溶解されない。エッチング時間は、膜厚の小さいシード層31bを除去するのに必要な時間に設定される。本エッチング工程においては、イオン化傾向が大きい第1の導電部材32(Cu膜)と、イオン化傾向が第1の導電部材32よりも小さい第2の導電部材33(Au膜)とが積層されていることに起因して、局部電池効果を生じる。この局部電池効果によって第1の導電部材32のエッチングレートは、シード層31bのエッチングレートよりも高くなる。その結果、再配線30には、第1の導電部材32と第2の導電部材33との界面の周辺領域に、再配線30の幅方向内側に向けて窪んだ窪み部35が形成される。すなわち、第1の導電部材32の上面側に、下面側よりも幅が狭くなった狭小部32Aが形成され、第2の導電部材33の幅は、第1の導電部材32の下面における幅よりも狭く、且つ第1の導電部材32の上面における幅よりも広くなる。
【0039】
次に、第1の導電部材32をマスクとして、密着層31aを除去する(
図2N)。次に、例えば、スピンコート法を用いて、ポリイミド及びPBO等の感光性有機系絶縁部材を、18μm程度の膜厚で塗布することで、再配線30及び下層絶縁膜20を覆う上層絶縁膜40を形成する。上層絶縁膜40は、再配線30に形成された窪み部35に侵入する(
図2O、
図2P)。
【0040】
次に、上層絶縁膜40に露光及び現像処理を施すことにより、再配線30のパッド部30Bの表面を露出させる開口部40Aを上層絶縁膜40に形成する(
図2Q)。
【0041】
その後、熱処理によって上層絶縁膜40を硬化させる。熱硬化により上層絶縁膜40は収縮し、膜厚が15um程度となり、また、略垂直形状であった開口部40Aの側面は、順テーパ形状となる(
図2R)。
【0042】
次に、上層絶縁膜40の開口部40Aにおいて露出した再配線30のパッド部30Bの表面に外部接続端子50を形成する(
図2S)。外部接続端子50は、再配線30のパッド部30Bに、例えばSnAgボールを搭載した後にリフロー処理を行うことで形成される。また、スクリーン印刷により再配線30のパッド部30Bに例えばSnAgペーストを形成した後にリフロー処理を行うことで外部接続端子50を形成することも可能である。なお、外部接続端子50の形成前に上層絶縁膜40の表面に保護テープを貼り付け、半導体基板11の裏面から半導体基板11を研削して半導体基板11の薄膜化を行ってもよい。
【0043】
上記工程の後、半導体基板11を複数の半導体デバイスに分割することで、WL−CSP型の半導体装置10が完成する。
【0044】
ここで、
図4A〜
図4Fは、比較例に係る製造工程の一例を示す断面図である。
図4A〜
図4Kには、それぞれ、
図1Aにおける1C−1C線に沿った断面に相当する断面が示されている。
【0045】
比較例に係る製造工程では、再配線30を構成する第1の導電部材32(Cu膜)及び第2の導電部材33(Au膜)が、同一のレジストマスク300を用いた電界めっき法によって形成され、第1の導電部材32と第2の導電部材33とが同じ幅で形成される(
図4A)。
【0046】
第1の導電部材32及び第2の導電部材33を形成した後、アッシングプロセスや有機溶剤などを用いてレジストマスク300を除去する(
図4B)。
【0047】
次に、ソフトエッチング液などを用いたウェットエッチング処理によりシード層31bを除去する。シード層31bのエッチング工程においては、イオン化傾向が大きい第1の導電部材32(Cu膜)と、イオン化傾向が第1の導電部材32よりも小さい第2の導電部材33(Au膜)が積層されていることに起因して、局部電池効果を生じる。比較例に係る製造方法によれば、この局部電池効果によって、第1の導電部材32の側面が過剰にエッチングされる(
図4C)。
【0048】
図5Aは、比較例に係るシード層31bのエッチング工程において、局部電池効果により第1の導電部材32の内部を流れる電子の流れを示した図である。局部電池効果により、第1の導電部材32を構成するCuがイオン化してエッチング液中に放出される。これにより、第1の導電部材32の側面が、厚さ方向の全域に亘りエッチングされる。
図5Bに示すように、第2の導電部材33と第1の導電部材32とによって囲まれた領域Aにおいて、エッチング液は濃密な電解質溶液環境を形成し、第1の導電部材32からのイオンの放出が加速され、第1の導電部材32の側面のエッチングが促進される。その結果、第1の導電部材32の側面が過剰にエッチングされる。なお、局部電池効果は例えば、Au膜とCu膜間にNi膜などを挟んだAu/Ni/Cu積層膜においても発生する。
【0049】
シード層31bを除去した後、第1の導電部材32をマスクとして、密着層31aを除去する(
図4D)。第1の導電部材32の過剰エッチングに伴い、第1の導電部材32の下方に残る密着層31aの幅は細くなる。これにより、下層絶縁膜20と再配線30との密着力が不足し、
図4E示すように、再配線30が下層絶縁膜20から剥離するおそれがある。
【0050】
また、再配線30の配線幅が細い場合には、シード層31bのエッチング工程において、第1の導電部材32が完全に消失し、
図4Fに示すように、第2の導電部材33が剥離するおそれがある。この場合、剥離した第2の導電部材33が、製造装置内に残留し、他の製品に付着するおそれもある。
【0051】
また、比較例に係る製造工程を経て製造される半導体装置によれば、
図4Dに示すように、過剰にエッチングされた第1の導電部材32を、第2の導電部材33がひさし状に覆うため、上面からの観察により、第1の導電部材32の状態を確認することが困難となる。すなわち、再配線の出来映え確認の実施が困難となる。
【0052】
一方、
図3Aは、本発明の実施形態に係るシード層31bのエッチング工程において、局部電池効果により第1の導電部材32の内部を流れる電子の流れを示した図である。局部電池効果により、第1の導電部材32を構成するCuがイオン化してエッチング液中に放出される。しかしながら、本発明の実施形態に係る製造方法によれば、第2の導電部材33は、第1の導電部材32よりも狭い幅で形成される。すなわち、第2の導電部材33の表面積に対する第1の導電部材32の露出部分の表面積の比率が、上記した比較例に係る製造方法を適用した場合と比較して高くなる。これにより、局部電池効果により第1の導電部材32の内部に流れる電流の密度が、比較例に係る製造方法を適用した場合と比較して低くなり、その結果、第1の導電部材32からのイオンの放出が抑制され、単位面積当たりの第1の導電部材32(Cu)の溶出速度が低下する。
【0053】
また、
図3Bに示すように、第1の導電部材32と第2の導電部材33とによって囲まれる領域Aの形成が、比較例に係る製造方法を適用した場合と比較して緩やかとなり、第1の導電部材32からのイオンの放出の加速が生じにくくなる。その結果、シード層31bのエッチング工程において、第1の導電部材32の過剰なエッチングが抑制されるので、再配線30が下層絶縁膜20から剥離するという不具合、及び第1の導電部材32が消失して第2の導電部材33が剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0054】
また、本発明の実施形態に係る半導体装置10によれば、
図1Cに示すように、第1の導電部材32の下面における幅W1bよりも、第2の導電部材33の幅W2の方が狭いため、上面からの観察により、第1の導電部材32の状態を確認することが可能である。すなわち、再配線の出来映え確認が実施可能である。これは、レジスト開口の寸法と第1の導電部材32の下面における幅W1bとの差から、第1の導電部材32の上面における幅W1aが算出可能であり、再配線30の上面からの出来栄え確認により、第1の導電部材32と第2の導電部材33との接合幅を把握することができるからである。
【0055】
ここで、Au膜で構成される第2の導電部材33と、有機絶縁膜で構成される上層絶縁膜40とは密着力が比較的小さく、上層絶縁膜40が再配線30から剥離して、上層絶縁膜40と再配線30との間に空隙が形成されるおそれがある。そして、この空隙内に水分が侵入した場合には、再配線30が腐食し、半導体装置10の長期間の使用で再配線30が断線するおそれがある。このように、第2の導電部材33と上層絶縁膜40との密着力は、半導体装置10の長期信頼性に影響を及ぼす。本発明の実施形態に係る半導体装置10によれば、
図1Cに示すように、上層絶縁膜40が再配線30に形成された窪み部35に侵入するため、アンカー効果を生じ、上層絶縁膜40の再配線30からの剥離が生じにくくなる。すなわち、半導体装置10の長期信頼性を高めることができる。
【0056】
また、本発明の実施形態に係る半導体装置10によれば、再配線30が、Cu膜で構成される第1の導電部材32と、Au膜で構成される第2の導電部材33とを含む積層膜で構成されるので、再配線30の低抵抗化を実現できるだけでなく、半導体装置10の製造工程内における第1の導電部材32の酸化を抑制できる。また、再配線30の最表面をAu膜で構成することで、再配線30へのワイヤボンディングが可能となる。これにより、用途に応じて同一チップをWL−CSP及び通常のパッケージの2種類に作り分けることが可能となる。なお、本実施形態においては、第2の導電部材33をAu膜で構成する場合を例示したが、第2の導電部材33をNi膜及びAu膜を含む積層膜で構成することも可能である。この場合、Au膜が再配線30の最表面に配置され、Ni膜がAu膜と第1の導電部材32(Cu膜)との間に配置される。