【解決手段】混練促進手段は、混練空間における液体供給部と気流噴射口との間の位置に、ノズル本体部の軸線の延びる方向に複数配置されており、各混練促進手段は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる複数の帯状部を備えており、該複数の帯状部は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる軸線を中心として筒状に配置されると共に、混練物気流との接触によって振動可能に構成される。
セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料とが混練されてセメント混練物が形成される混練空間を形成する筒状のノズル本体部を備えており、該ノズル本体部は、粉体材料を含む粉体気流をノズル本体部の内側へ導入する気流導入部と、ノズル本体部内で粉体気流に液体材料を供給する液体供給部と、粉体気流に液体材料が供給されて形成される混練物気流を噴射する気流噴射口とを備えており、気流導入部及び液体供給部は、ノズル本体部の軸線が延びる方向の一端部側に配置され、気流噴射口は、ノズル本体部の軸線の延びる方向の他端部側に配置されており、液体供給部から気流噴射口へ向かって混練物気流が混練空間を流通することで粉体材料と液体材料とが混練されるように構成された噴射ノズルであって、
粉体材料と液体材料との混練を促進する混練促進手段を更に備えており、
該混練促進手段は、混練空間における液体供給部と気流噴射口との間の位置に、ノズル本体部の軸線の延びる方向に複数配置されており、
各混練促進手段は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる複数の帯状部を備えており、
該複数の帯状部は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる軸線を中心として筒状に配置されると共に、混練物気流との接触によって振動可能に構成される噴射ノズル。
前記混練物気流の流通方向の上流側に位置する混練促進手段が備える複数の帯状部の長さは、混練物気流の流通方向の下流側に位置する混練促進手段が備える複数の帯状部の長さよりも短くなるように構成される請求項1に記載の噴射ノズル。
前記混練空間を形成するノズル本体部の内周面における各混練促進手段と重ならない領域は、混練物気流の下流側へ向かうに従って拡開する拡開領域と該拡開領域に連なるように形成されると共に混練物気流の下流側へ向かうに従ってノズル本体部の軸線に接近する接近領域とを備えていない請求項1又は2に記載の噴射ノズル。
請求項1乃至4の何れか一項に記載の噴射ノズルが備える気流噴射口から噴射される混練物気流を対象物へ吹き付けて該対象物にセメント混練物を付着させる乾式吹付け工法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような噴射ノズルは、混練物気流が形成されてから(粉体気流に液体材料が供給されてから)気流噴射口に達するまでの時間が比較的短時間であるため、粉体材料と液体材料との混練が不十分な状態で混練物気流が気流噴射口から噴射される虞がある。このような場合、混練物気流の噴射の際に粉体材料が飛散して粉塵が生じ易くなると共に、混練物気流が対象物に吹き付けられた際に粉体材料の跳ね返りが激しくなる。また、粉体材料と液体材料との混練が不十分であるため、所望する品質(圧縮強度等を含む物理的特性値など)を有するセメント硬化体(セメント混練物が硬化したもの)を得ることができない虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料との混練を十分に行うことができる噴射ノズルを提供することを課題とする。また、該噴射ノズルを用いた乾式吹付け工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る噴射ノズルは、セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料とが混練されてセメント混練物が形成される混練空間を形成する筒状のノズル本体部を備えており、該ノズル本体部は、粉体材料を含む粉体気流をノズル本体部の内側へ導入する気流導入部と、ノズル本体部内で粉体気流に液体材料を供給する液体供給部と、粉体気流に液体材料が供給されて形成される混練物気流を噴射する気流噴射口とを備えており、気流導入部及び液体供給部は、ノズル本体部の軸線が延びる方向の一端部側に配置され、気流噴射口は、ノズル本体部の軸線の延びる方向の他端部側に配置されており、液体供給部から気流噴射口へ向かって混練物気流が混練空間を流通することで粉体材料と液体材料とが混練されるように構成された噴射ノズルであって、粉体材料と液体材料との混練を促進する混練促進手段を更に備えており、該混練促進手段は、混練空間における液体供給部と気流噴射口との間の位置に、ノズル本体部の軸線の延びる方向に複数配置されており、各混練促進手段は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる複数の帯状部を備えており、該複数の帯状部は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる軸線を中心として筒状に配置されると共に、混練物気流との接触によって振動可能に構成される。
【0008】
斯かる構成によれば、粉体材料と液体材料との混練を促進する混練促進手段が、混練空間における液体供給部と気流噴射部との間の位置に、ノズル本体部の軸線の延びる方向に複数配置されることで、粉体材料と液体材料との混練を十分に行うことができる。
【0009】
具体的には、各混練促進手段は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる複数の帯状部を備える。該複数の帯状部は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる軸線を中心として筒状に配置されると共に、混練物気流との接触によって振動するように構成される。このように、筒状に配置された複数の帯状部が混練物気流との接触によって振動することで、混練物気流の流れが意図的に乱されるため、粉体材料と液体材料との接触が効率的に行われる。これにより粉体材料と液体材料とが十分に混練されたセメント混練物を得ることができる。また、帯状部の振動によってセメント混練物が帯状部に付着し難くなる。これにより、混練空間でセメント混練物が滞留して硬化するのが抑制されるため、混練物気流の流れが阻害されたり、混練空間が閉塞されたりするのを抑制することができる。
【0010】
また、上記のような複数の帯状部を備える混練促進手段が、混練空間における液体供給部と気流噴射口との間の位置に、ノズル本体部の軸線の延びる方向に複数配置されることで、混練空間の複数箇所において混練物気流の乱れが生じるため、粉体材料と液体材料との接触がより効率的に行われる。これにより粉体材料と液体材料とがより十分に混練されたセメント混練物を得ることができる。
【0011】
なお、混練とは、混練物気流中で粉体材料と液体材料を十分に接触させ練り混ぜることをいう。
【0012】
前記混練物気流の流通方向の上流側に位置する混練促進手段が備える複数の帯状部の長さは、混練物気流の流通方向の下流側に位置する混練促進手段が備える複数の帯状部の長さよりも短くなるように構成されることが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、混練物気流の流通方向の上流側に位置する混練促進手段が備える複数の帯状部の長さは、混練物気流の流通方向の下流側に位置する混練促進手段が備える複数の帯状部の長さよりも短くなるように構成されることで、粉体材料と液体材料との接触が更に効率的に行われるため、粉体材料と液体材料とが十分に混練されたセメント混練物を得ることができる。
【0014】
前記混練空間を形成するノズル本体部の内周面における各混練促進手段と重ならない領域は、混練物気流の下流側へ向かうに従って拡開する拡開領域と該拡開領域に連なるように形成されると共に混練物気流の下流側へ向かうに従ってノズル本体部の軸線に接近する接近領域とを備えていないことが好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、混練空間を形成するノズル本体部の内周面は、各混練促進手段と重ならない領域において、混練物気流の下流側へ向かうに従って拡開する拡開領域と該拡開領域に連なるように形成されると共に混練物気流の下流側へ向かうに従ってノズル本体部の軸線に接近する接近領域とを備えていない。ここで、ノズル本体部の内周面が拡開領域と該拡開領域に連なる接近領域とを備える場合、混練空間における拡開領域及び接近領域によって形成される部分では、混練物気流の流速が低下するため、拡開領域や接近領域にセメント混練物が付着し易くなる。しかしながら、拡開領域及び接近領域を備えないことで、ノズル本体部の内周面にセメント混練物が付着し難くなるため、混練空間にセメント混練物が滞留して硬化するのが抑制される。これにより、混練物気流の流れが阻害されたり、混練空間が閉塞されたりするのをより効果的に抑制することができる。
【0016】
前記セメントは、超速硬セメントであってもよい。
【0017】
斯かる構成によれば、前記セメントとして超速硬セメントを用いた場合に、粉体材料と液体材料との混練を十分に行うことができるという効果をより顕著に得ることができる。また、混練空間でセメント混練物が滞留して硬化するのが抑制されるという効果をより顕著に得ることができる。
【0018】
本発明に係る乾式吹付け工法は、上記何れかの噴射ノズルが備える気流噴射口から噴射される混練物気流を対象物へ吹き付けて該対象物にセメント混練物を付着させる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料との混練を十分に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、
図1〜3を参照ながら説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付すこととし、その説明は繰り返さない。
【0022】
本実施形態に係る噴射ノズル1は、筒状のノズル本体部2を備える。該ノズル本体部2は、セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料とが混練されてセメント混練物が形成される混練空間R1(本実施形態では、一方向に延びる混練空間R1)を形成する。また、噴射ノズル1は、粉体材料と液体材料との混練を促進する複数の混練促進手段3を更に備える。
【0023】
前記ノズル本体部2は、軸線Sが延びる方向の一端部(以下では、単に「一端部」とも記す)側に、粉体材料を含む粉体気流をノズル本体部2内に導入する気流導入部4を備える。具体的には、ノズル本体部2は、筒状体2aを備えており、軸線Sが延びる方向における筒状体2aの一端部(即ち、ノズル本体部2の一端部)に気流導入部4を備える。該気流導入部4は、粉体気流をノズル本体部2へ搬送する気流搬送管X1と連結される。
【0024】
また、ノズル本体部2は、前記一端部側に、ノズル本体部2内で粉体気流に液体材料を供給する液体供給部5を備える。該液体供給部5は、液体材料をノズル本体部2へ搬送する液体搬送管X2と連結される。また、液体供給部5は、筒状体2aの一端部と、該一端部の内側に配置されて粉体気流へ液体材料を噴射する液体噴射手段5aとから構成される。また、筒状体2aの一端部の内周面と液体噴射手段5aとの間には、液体搬送管X2からの液体材料が充填される液体充填空間R2が形成される。
【0025】
液体噴射手段5aは、環状に形成され、内側の空間を粉体気流が流通するように構成される。また、液体噴射手段5aは、軸線Sに交差する方向において内側の空間と外側の空間とを連通させると共に内側の空間へ液体材料を噴射する液体噴射孔5bを複数備える。そして、液体搬送管X2から搬送される液体材料が液体充填空間R2に高圧で充填されることで、複数の液体噴射孔5bを通って液体材料が液体噴射手段5aの内側に噴射される。また、液体噴射手段5aは、後述する一端部側固定部2fに嵌め込み可能に構成される。
【0026】
また、ノズル本体部2は、軸線Sが延びる方向の他端部(以下では、単に「他端部」とも記す)側に、粉体気流に液体材料が供給されて形成される混練物気流を噴射する気流噴射口6を備える。該気流噴射口6は、軸線Sが延びる方向における筒状体2aの他端部に形成される。そして、液体供給部5から気流噴射口6へ向かって混練物気流が混練空間R1を流通することで粉体材料と液体材料とが混練される(即ち、粉体材料と液体材料が一体化し練り混ぜられる)。つまり、ノズル本体部2(具体的には、筒状体2a)における液体供給部5と気流噴射口6との間に混練空間R1が形成される。
【0027】
また、筒状体2aは、軸線Sの延びる方向における一端部側に位置する第一筒状部2bと、軸線Sの延びる方向における他端部側に位置すると共に気流噴射口6を備える第二筒状部2cと、軸線Sの延びる方向における第一筒状部2bと第二筒状部2cとの間に位置する第三筒状部2dとを備える。そして、第一筒状部2b、第二筒状部2c、及び、第三筒状部2dのそれぞれの内側の空間が連なって混練空間R1が形成される。また、筒状体2aは、第二筒状部2cと第三筒状部2dとの端部同士を連結する連結部2hを備える。つまり、第三筒状部2dは、第二筒状部2cとは別部材として形成され、連結部2hによって第二筒状部2cと連結される。
【0028】
また、ノズル本体部2は、各混練促進手段3を固定する混練促進手段固定部2eを複数備える。具体的には、ノズル本体部2は、軸線Sの延びる方向における一端部に一つの混練促進手段固定部2e(以下では、一端部側固定部2fとも記す)を備えると共に、該一端部側固定部2fよりも気流噴射口6側(より詳しくは、第一筒状部2bと第三筒状部2dとの間)に一つの混練促進手段固定部2e(以下では、中央部側固定部2gとも記す)を備える。そして、各混練促進手段固定部2eは、混練促進手段3の一部(具体的には、後述するフランジ部3e)が嵌め込まれる。
【0029】
一端部側固定部2fから中央部側固定部2gまでの長さ(軸線Sに沿った長さであって、以下では、第一筒状部2bの長さとも記す)L1としては、特に限定されるものではなく、例えば、100mm以上600mm以下であることが好ましく、150mm以上500mm以下であることがより好ましい。また、中央部側固定部2gから連結部2hまでの長さ(軸線Sに沿った長さであって、以下では、第三筒状部2dの長さとも記す)L2としては、特に限定されるものではなく、例えば、100mm以上600mm以下であることが好ましく、150mm以上500mm以下であることがより好ましい。また、連結部2hから気流噴射口6までの長さ(軸線Sに沿った長さであって、以下では、第二筒状部2cの長さとも記す)L3としては、特に限定されるものではなく、例えば、50mm以上500mm以下であることが好ましく、100mm以上300mm以下であることがより好ましい。
【0030】
また、ノズル本体部2の内周面は、混練促進手段3と重ならない領域において、混練物気流の下流側へ向かうに従って拡開する拡開領域と該拡開領域に連なるように形成されると共に混練物気流の下流側へ向かうに従ってノズル本体部2の軸線Sに接近する接近領域とを備えていない。つまり、本実施形態では、ノズル本体部2は、所謂、乱流混練部を備えないものである。
【0031】
複数(本実施形態では、二つ)の混練促進手段3は、混練空間R1における液体供給部5と気流噴射口6との間の位置に、軸線Sの延びる方向(即ち、混練物気流の流通方向)に沿って配置される。また、混練物気流の流通方向の上流側に位置する混練促進手段3(以下では、上流側混練促進手段3aとも記す)と混練物気流の流通方向の下流側に位置する混練促進手段3(以下では、下流側混練促進手段3bとも記す)とは、軸線Sの延びる方向(即ち、混練物気流の流通方向)に間隔を空けて配置される。
【0032】
各混練促進手段3は、混練空間R1における混練物気流の流通方向に延びる複数(例えば、4枚〜10枚)の帯状部3cと、該複数の帯状部3cを保持する筒状の帯状部保持部3dとを備える。また、各混練促進手段3は、帯状部保持部3dの軸線の延びる方向の一端部から突出すると共に混練促進手段固定部2eに嵌め込まれるフランジ部3eを更に備える。帯状部保持部3dは、軸線の延びる方向の一端部が混練物気流の流通方向の上流側に配置される。また、各帯状部3cは、長さ方向の一端部(混練物気流の流通方向の上流側に位置する端部)が帯状部保持部3dの軸線の延びる方向の他端部(混練物気流の流通方向の下流側の端部)に連結される。つまり、混練促進手段3は、混練物気流の流通方向の下流側に複数の帯状部3cを備え、混練物気流の流通方向の上流側に帯状部保持部3d及びフランジ部3eを備える。
【0033】
上流側混練促進手段3a(具体的には、帯状部保持部3dの他端部)と下流側混練促進手段3b(具体的には、帯状部保持部3dの軸線の延びる方向の一端部)との間隔(軸線Sに沿った間隔)D1としては、特に限定されるものではなく、例えば、10mmを超え150mm以下であることが好ましく、30mm以上150mm以下であることがより好ましい。また、上流側混練促進手段3a(具体的には、帯状部3cの他端部)と気流噴射口6との間隔(軸線Sに沿った間隔)D2としては、特に限定されるものではなく、例えば、60mm以上600mm以下であることが好ましく、100mm以上350mm以下であることがより好ましい。また、本実施形態では、上流側混練促進手段3aの一部(具体的には、帯状部保持部3dの一端部)は、液体供給部5内に(具体的には、液体噴射手段5aに接するように)配置される。
【0034】
複数の帯状部3cは、混練空間R1における混練物気流の流通方向に延びる軸線を中心として筒状に配置される。本実施形態では、複数の帯状部3cは、軸線Sを中心として(本実施形態では、ノズル本体部2と同軸となる)筒状に配置される。また、隣り合う帯状部3c同士の間には、混練物気流が流通可能な隙間が形成される。また、各帯状部3cは、ノズル本体部2の内周面から離間した位置に配置される。また、各帯状部3cは、長さ方向の両端部間の領域が軸線Sから離れる方向へ湾曲するように形成される。これにより、筒状に配置された複数の帯状部3cの内側を流通する混練物気流の一部が隣り合う帯状部3c間の隙間を通ってノズル本体部2の内周面と各帯状部3cとの間を流通した際に、各帯状部3cが混練物気流によってノズル本体部2の内周面から離れる方向へ(具体的には、軸線S側へ)付勢されるため、各帯状部3cがノズル本体部2の内周面から離れた状態が維持される。これにより、各帯状部3cがノズル本体部2の内周面と接触して振動し難くなるのが防止される。
【0035】
また、
図2に示すように、各帯状部3cは、長さ方向に交差する断面形状の中央部が軸線Sへ近づくように湾曲して形成される。これにより、筒状に配置された複数の帯状部3cの内側を流通する混練物気流の一部が隣り合う帯状部3c間の隙間を通ってノズル本体部2の内周面と各帯状部3cとの間を流通した際に、各帯状部3cが混練物気流によってノズル本体部2の内周面から離れる方向へ付勢されるため、各帯状部3cがノズル本体部2の内周面から離れた状態が維持される。このため、各帯状部3cがノズル本体部2の内周面と接触して振動し難くなるのが防止される。
【0036】
また、
図3(a)(b)に示すように、上流側混練促進手段3aが備える複数の帯状部3cの長さ(軸線Sに沿った長さ)L4は、下流側混練促進手段3bが備える複数の帯状部3cの長さ(軸線Sに沿った長さ)L5よりも短くなるように形成される。これにより、上流側混練促進手段3aが備える複数の帯状部3cの先端部同士が近づき難くなるため、上流側混練促進手段3aから排出される混合物気流が収束されて下流側混練促進手段3bに接触するのを抑制することができる。このため、下流側混練促進手段3bにおける混合物気流の上流側に位置する端部が混合物気流との接触によって摩耗するのを抑制することができる。上流側混練促進手段3aが備える複数の帯状部3cの長さL4としては、特に限定されるものではなく、60mm以上350mm以下であることが好ましく、75mm以上300mm以下であることがより好ましい。一方、下流側混練促進手段3bが備える複数の帯状部3cの長さL5としては、特に限定されるものではなく、55mm以上340mm以下であることが好ましく、50mm以上290mm以下であることがより好ましい。
【0037】
帯状部保持部3dは、混練空間R1における混練物気流の流通方向に延びる軸線を中心として筒状に形成される。本実施形態では、帯状部保持部3dは、軸線Sを中心とする(即ち、ノズル本体部2と同軸となる)筒状に形成される。また、帯状部保持部3dは、混練物気流の流通方向の上流側から下流側へ向かうに従って内側の空間(混練物気流が流通する空間)が狭くなるように形成された狭窄部3fを備える。該狭窄部3fは、混練物気流の流通方向の下流側の端部の開口面積(軸線Sに直交する開口部の面積)がノズル本体部2の混練空間R1の断面積(軸線Sに直交する断面の面積)に対して15%以上60%以下であることが好ましい。該狭窄部3fを備えることで、混練物気流が狭窄部3fを流通する際に、混練物気流中の粉体材料と液体材料との密度が高まると共に、混練物気流が帯状部保持部3dから筒状に配置された複数の帯状部3cの内側に放出された際に瞬時に拡散されることになる。そして、拡散された混練物気流の一部が複数の帯状部3cと接触して軸線S側へ跳ね返ることで粉体材料と液体材料とがより効果的に混練される。
【0038】
なお、上流側混練促進手段3aの長さ(軸線Sに沿った長さであって、具体的には、帯状部3cと帯状部保持部3dとを合わせた長さ)L6としては、特に限定されるものではなく、例えば、40mm以上250mm以下であることが好ましく、50mm以上190mm以下であることがより好ましい。下流側混練促進手段3bの長さ(軸線Sに沿った長さであって、具体的には、帯状部3cと帯状部保持部3dとを合わせた長さ)L7としては、特に限定されるものではなく、例えば、35mm以上210mm以下であることが好ましく、30mm以上190mm以下であることがより好ましい。また、各混練促進手段3を構成する素材としては、各帯状部3cが混練物気流との接触によって振動するようなものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ゴム、軟質プラスチック類、又は、厚手の布等を用いることができる。
【0039】
上記のように構成される噴射ノズル1は、所謂、乾式吹付け工法で使用することができる。具体的には、
図1に示すように、噴射ノズル1が備える気流導入部4に気流搬送管X1を連結し、液体供給部5に液体搬送管X2を連結する。そして、液体搬送管X2から噴射ノズル1(具体的には、ノズル本体部2)の内側へ液体材料を供給することで、液体噴射手段5aの液体噴射孔5bから液体材料を噴射させると共に、気流搬送管X1から噴射ノズル1(具体的には、ノズル本体部2)の内側へ粉体材料を含む粉体気流を供給する。これにより、環状の液体噴射手段5aの内側で粉体気流に液体材料が供給されて混練物気流が形成される。該混練物気流は、上流側混練促進手段3aの内側を流通する際に、上流側混練促進手段3aが備える複数の帯状部3cと接触して複数の帯状部3cを振動させる。これにより、混練物気流内の粉体材料と液体材料とが混練される(換言すれば、粉体材料と液体材料が一体化し練り混ぜられる)。その後、混練物気流は、下流側混練促進手段3bの内側を流通し、下流側混練促進手段3bが備える複数の帯状部3cと接触して複数の帯状部3cを振動させる。これにより、混練物気流内の粉体材料と液体材料とが更に混練される(換言すれば、粉体材料と液体材料が一体化し練り混ぜられる)。これにより、混練物気流中で粉体材料と液体材料とが十分に混練されたセメント混練物が形成される。そして、下流側混練促進手段3bから排出された混練物気流は、気流噴射口6から排出され、セメント混練物を施工する対象物へ吹き付けられる。
【0040】
なお、粉体材料に含まれるセメントとしては、特に限定されるものではなく、市場で入手できる種々のセメントを用いることができる。具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、アルミナセメント、及び、カルシウムアルミネート系、カルシウムサルフォアルミネート系、カルシウムフルオロアルミネート系等の超速硬セメント等からなる群から選択される一つを用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0041】
また、粉体材料に含まれるセメントとしては、比表面積の比較的高いものを用いることができる。具体的には、斯かるセメントとしては、比表面積が4000cm
2/gを超えるものであってもよい。なお、比表面積は、JIS R 5201(「セメントの物理試験方法」8.1 比表面積試験)に準じて測定されるものである。
【0042】
また、粉体材料は、セメント以外の材料を含むものであってもよい。例えば、粉体材料は、モルタルを構成する細骨材、繊維(ガラス繊維、鋼繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン繊維、炭素繊維等)、混和材(高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、膨張材等)、混和剤(減水剤、増粘剤、消泡剤等)等を含むものであってもよい。
【0043】
前記細骨材としては、山砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂、及び、珪砂等を用いることができる。粉体材料中の細骨材の配合量としては、特に限定されるものではなく、例えば、セメント100質量部に対して50質量部以上300質量部以下であることが好ましく、100質量部以上250質量部以下とすることがより好ましい。細骨材の最大粒子径としては、特に限定されるものではなく、例えば、2mm以下であってもよい。また、細骨材の平均粒子径としては、特に限定されるものではなく、例えば、1.2mm未満であってもよい。なお、最大粒子径は、JIS A 1102「骨材のふるい分け試験方法」に準じて測定した値であり、平均粒子径は、斯かる測定値に基づいて積算%分布曲線より求めた50%径の値である。
【0044】
液体材料は、水以外の材料を含むものであってもよい。例えば、液体材料は、モルタルやコンクリートを混練する際に使用する減水剤等の混和剤、ポリマーディスパージョン液、収縮低減剤、凝結調整剤等を含むものであってもよい。
【0045】
以上のように、本発明によれば、セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料との混練を十分に行うことができる。
【0046】
即ち、粉体材料と液体材料との混練を促進する混練促進手段3が、混練空間R1における液体供給部5と気流噴射口6との間の位置に、ノズル本体部2の軸線Sの延びる方向に複数配置されることで、粉体材料と液体材料との混練を十分に行うことができる。
【0047】
具体的には、各混練促進手段3は、混練空間R1における混練物気流の流通方向に延びる複数の帯状部3cを備える。該複数の帯状部3cは、混練空間R1における混練物気流の流通方向に延びる軸線Sを中心として筒状に配置されると共に、混練物気流との接触によって振動するように構成される。このように、筒状に配置された複数の帯状部3cが混練物気流との接触によって振動することで、混練物気流の流れが意図的に乱されるため、粉体材料と液体材料との接触が効率的に行われる。これにより粉体材料と液体材料とが十分に混練されたセメント混練物を得ることができる。また、帯状部3cの振動によってセメント混練物が帯状部3cに付着し難くなる。これにより、混練空間R1でセメント混練物が滞留して硬化するのが抑制されるため、混練物気流の流れが阻害されたり、混練空間R1が閉塞されたりするのを抑制することができる。
【0048】
また、上記のような複数の帯状部3cを備える混練促進手段3が、混練空間R1における液体供給部5と気流噴射口6との間の位置に、ノズル本体部2の軸線Sの延びる方向に複数配置されることで、混練空間R1の複数箇所において混練物気流の乱れが生じるため、粉体材料と液体材料との接触がより効率的に行われる。これにより粉体材料と液体材料とがより十分に混練されたセメント混練物を得ることができる。
【0049】
なお、混練とは、混練物気流中で粉体材料と液体材料とが一体化し練り混ぜられることをいう。
【0050】
また、混練物気流の流通方向の上流側に位置する混練促進手段3が備える複数の帯状部3cの長さは、混練物気流の流通方向の下流側に位置する混練促進手段3が備える複数の帯状部3cの長さよりも短くなるように構成されることで、粉体材料と液体材料との接触が更に効率的に行われるため、粉体材料と液体材料とが十分に混練されたセメント混練物を得ることができる。
【0051】
また、混練空間R1を形成するノズル本体部2の内周面は、各混練促進手段3と重ならない領域において、混練物気流の下流側へ向かうに従って拡開する拡開領域と該拡開領域に連なるように形成されると共に混練物気流の下流側へ向かうに従ってノズル本体部2の軸線Sに接近する接近領域とを備えていない。ここで、ノズル本体部2の内周面が拡開領域と該拡開領域に連なる接近領域とを備える場合、混練空間R1における拡開領域及び接近領域によって形成される部分では、混練物気流の流速が低下するため、特に速硬性の高い粉体材料や、骨材の最大粒径が2mm以下の粉体材料を使用する場合、拡開領域や接近領域にセメント混練物が付着し易くなる。しかしながら、拡開領域及び接近領域を備えないことで、ノズル本体部2の内周面にセメント混練物が付着し難くなるため、混練空間R1にセメント混練物が滞留して硬化するのが抑制される。これにより、混練物気流の流れが阻害されたり、混練空間R1が閉塞されたりするのをより効果的に抑制することができる。
【0052】
また、前記セメントとして超速硬セメントを用いた場合に、粉体材料と液体材料との混練を十分に行うことができるという効果をより顕著に得ることができる。また、混練空間R1でセメント混練物が滞留して硬化するのが抑制されるという効果をより顕著に得ることができる。
【0053】
なお、本発明に係る噴射ノズル、及び、乾式吹付け工法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、更に、他の各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、噴射ノズル1は、該噴射ノズル1から噴射される混練物気流中のセメント混練物を対象物へ吹き付ける際に使用されているが、これに限定されるものではなく、例えば、噴射ノズル1から噴射される混練物気流を対象物とは別の物体に吹き付けて、該物体から落下するセメント混練物や該物体に付着したセメント混練物を用いて対象物にセメント混練物を施工してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、混練促進手段3は、複数の帯状部3cが帯状部保持部3dに連結され、該帯状部保持部3dがノズル本体部2に固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、混練促進手段3が複数の帯状部3cのみから構成され、該複数の帯状部3cがノズル本体部2の内周面に固定されるように構成されてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、上流側混練促進手段3aの一部(具体的には、帯状部保持部3dの一端部)は、液体供給部5内に(具体的には、液体噴射手段5aに接するように)配置されているが、これに限定されるものではなく、帯状部保持部3dの一端部が液体供給部5の外側に配置されてもよい。斯かる場合には、上流側混練促進手段3a(具体的には、帯状部保持部3dの一端部)は、液体噴射手段5aから軸線Sに沿った方向に離間した位置に配置される。
【0057】
また、粉体材料に含まれるセメントの比表面積が4000cm
2以下の場合には、
図1〜3に示す噴射ノズル1の第三筒状部2d及び下流側混練促進手段3bに代えて、
図4に示す乱流混練部Aを備えるように構成されてもよい。乱流混練部Aは、ノズル本体部2の内周面(混練空間R1を形成する内周面)の混練促進手段3と重ならない領域に形成される。また、乱流混練部Aは、混練物気流の下流側へ向かうに従って拡開する拡開領域A1と該拡開領域A1に連なるように形成されると共に混練物気流の下流側へ向かうに従ってノズル本体部2の軸線Sに接近する接近領域A2とを備えるものである。
【0058】
なお、比表面積が4000cm
2を超えるような比表面積が比較的高いセメントを用いる場合、粉体材料を長時間吹き付けると、乱流混練部Aに粉体材料が堆積し十分な混練性能が得られない場合があるので、このようなセメントを用いる場合には、
図1〜3に示す噴射ノズル1を用いることが好ましい。
【0059】
また、粉体材料に含まれる細骨材の最大粒子径が2mm以上あり、平均粒子径が1.2mm以上の場合には、
図1〜3に示す噴射ノズル1の第三筒状部2d及び下流側混練促進手段3bに代えて、
図4に示す乱流混練部Aを備えるように構成されてもよい。
【0060】
なお、細骨材の最大粒子径が2mm以下であり、平均粒子径が1.2mm未満である場合には、粉体材料を長時間吹き付けると、乱流混練部Aに粉体材料が堆積し十分な混練性能が得られない場合があるので、このような細骨材を用いる場合には、
図1〜3に示す噴射ノズル1を用いることが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例、及び、比較例を用いて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
<使用材料>
・ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製、品名:早強ポルトランドセメント)
・超速硬セメント(住友大阪セメント社製、品名:マイルドジェットセメント)
・細骨材(硅砂1号、硅砂2号、硅砂3号、硅砂4号、硅砂6号)
・ポリマー(住友大阪セメント社製、品名:ライオンボンドA)
・水
【0063】
<セメント混練物の配合>
上記の各材料を用いて、セメント混練物の配合が下記表1の配合となるように、粉体材料と液体材料とを作製した。ポリマー希釈倍率、液体材料に対する粉体材料の質量割合(粉体/液体)については、下記表1に示す。
【0064】
<使用設備>
・実施例1〜6
図1〜3に示す噴射ノズル1を用いた。第一筒状部2bの長さL1、第三筒状部2dの長さL2、上流側混練促進手段3aの長さL6、及び、下流側混練促進手段3bの長さL7については、下記表2に示す。
・比較例1,4,7
図1〜3に示す噴射ノズル1の第三筒状部2d及び下流側混練促進手段3bに代えて、
図4に示す乱流混練部Aを備える噴射ノズルZを用いた。乱流混練部Aは、ノズル本体部2の内周面(混練空間R1を形成する内周面)の混練促進手段3と重ならない領域に形成される。また、乱流混練部Aは、混練物気流の下流側へ向かうに従って拡開する拡開領域A1と該拡開領域A1に連なるように形成されると共に混練物気流の下流側へ向かうに従ってノズル本体部2の軸線Sに接近する接近領域A2とを備えるものである。第一筒状部2bの長さL1、上流側混練促進手段3aの長さL6、及び、乱流混練部Aの長さ(軸線Sに沿った長さ)L8については、下記表2に示す。
・比較例2,5,8
図1〜3に示す噴射ノズル1から下流側混練促進手段3bを取り外した噴射ノズルを用いた。第一筒状部2bの長さL1、第三筒状部2dの長さL2、及び、上流側混練促進手段3aの長さL6については、下記表2に示す。
・比較例3,6,9
図1〜3に示す噴射ノズル1から上流側混練促進手段3a、及び、下流側混練促進手段3bを取り外した噴射ノズルを用いた。第一筒状部2bの長さL1、及び、第三筒状部2dの長さL2については、下記表2に示す。
【0065】
<粉塵の測定>
噴射ノズル1に粉体材料と液体材料とを下記表1の配合(粉体材料/液体材料の質量%)で供給しつつ、気流噴射口6から噴出される混練物気流(セメント混練物を含む気流)を対象物へ吹き付け、セメント混練物を対象物に付着させた。対象物としては、幅10m×奥行40m×高さ2mのボックスカルバートの壁面を用いた。また、吹付けの対象となる壁面に対向する壁面の近傍に粉塵計を設置した。
【0066】
上記の吹付けを開始してから10分まで(以下、施工開始直後とも記す)の粉塵量、上記の吹付けを開始してから一時間後(以下、施工開始1時間後とも記す)の粉塵量、及び、上記の吹付けを開始してから2時間後(以下、施工開始2時間後とも記す)の粉塵量を光学粉塵計(柴田科学社製、品名:LD−5D)で測定した。そして、測定結果が3000CPM未満を「◎」、3000CPM以上4500CPM未満を「○」、4500CPM以上を「×」として評価した。測定結果と評価については、下記表3〜5に示す。
【0067】
<リバウンド率>
噴射ノズル1に粉体材料と液体材料とを下記表1の配合(粉体材料/液体材料の質量%)で供給しつつ、気流噴射口6から噴出される混練物気流(セメント混練物を含む気流)を対象物へ吹き付け、セメント混練物を対象物に付着させた。対象物としては、上記のボックスカルバート内に配置した型枠(30cm×45cm×15cm)を使用した。また、型枠は、床面に敷いたシートの上50cmの高さ位置に配置されると共に、鉛直方向に対して30°傾斜して配置された。
【0068】
そして、吹付けを行う前の型枠の質量(以下、当初型枠質量とも記す)を測定した。また、施工開始直後、施工開始1時間後、及び、施工開始2時間後の各時間における型枠(以下、吹付け後型枠質量とも記す)の質量、及び、シート上に跳ね返ったセメント混練物の質量(以下、リバウンド量とも記す)を測定した。そして、下記(1)によりリバウンド率を算出した。下記(1)における吹付け量とは、吹付け後型枠質量と当初型枠質量との差である。そして、リバウンド率が12%未満を「◎」、12%以上15%未満を「○」、15%以上を「×」として評価した。測定結果と評価については、下記表2に示す。
・リバウンド率=リバウンド量÷(吹付け量+リバウンド量)×100・・・(1)
【0069】
<圧縮強度>
施工開始直後、施工開始1時間後、及び、施工開始2時間後の各時間の型枠に付着したセメント混練物が硬化して形成されるセメント硬化体(材齢7日)からφ10cm×20cm試験体を8本採取し、各試験体の端面処理を行った。そして、各試験体を20℃の水中で材齢28日まで養生した。養生後の各試験体に対して、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に規定する方法で圧縮強度の測定を行い、試験体8本の平均値を算出した。そして、圧縮強度(平均値)が44N/mm
2以上を「◎」、40N/mm
2以上44N/mm
2未満を「○」、40N/mm
2未満を「×」として評価した。圧縮強度(平均値)と評価については、下記表2に示す。
【0070】
<総合評価>
上記の粉塵、リバウンド率、及び、圧縮強度の評価について、◎が一つ以上あり、且つ、×が一つもないものを「◎」、○が一つ以上あり、且つ、◎及び×が一つもないものを「○」、×が一つ以上あるものを「×」として評価した。総合評価については、下記表3〜5に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
<まとめ>
表3〜5の各実施例と各比較例とを比較すると、各実施例の方が粉塵が少なく、リバウンド率が低いことが認められる。つまり、本発明に係る噴射ノズルは、複数の帯状部を備える混練促進手段を、混練空間における液体供給部と気流噴射口との間の位置に、ノズル本体部の軸線の延びる方向に複数配置することで、粉体材料と液体材料とが十分に混練されたセメント混練物を形成することができる。
また、表3〜5の各実施例と各比較例とを比較すると、各実施例の方が圧縮強度が高いことが認められる。つまり、本発明に係る噴射ノズルは、複数の帯状部を備える混練促進手段を、混練空間における液体供給部と気流噴射口との間の位置に、ノズル本体部の軸線の延びる方向に複数配置することで、粉体材料と液体材料とが十分に混練されたセメント混練物が形成されるため、該セメント混練物が硬化してなるセメント硬化体が良好な圧縮強度を有するものとなる。
セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料とが混練されてセメント混練物が形成される混練空間を形成する筒状のノズル本体部を備えており、該ノズル本体部は、粉体材料を含む粉体気流をノズル本体部の内側へ導入する気流導入部と、ノズル本体部内で粉体気流に液体材料を供給する液体供給部と、粉体気流に液体材料が供給されて形成される混練物気流を噴射する気流噴射口とを備えており、気流導入部及び液体供給部は、ノズル本体部の軸線が延びる方向の一端部側に配置され、気流噴射口は、ノズル本体部の軸線の延びる方向の他端部側に配置されており、液体供給部から気流噴射口へ向かって混練物気流が混練空間を流通することで粉体材料と液体材料とが混練されるように構成された噴射ノズルであって、
粉体材料と液体材料との混練を促進する混練促進手段を更に備えており、
該混練促進手段は、混練空間における液体供給部と気流噴射口との間の位置に、ノズル本体部の軸線の延びる方向に複数配置されており、
各混練促進手段は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる複数の帯状部を備えており、
該複数の帯状部は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる軸線を中心として筒状に配置されると共に、混練物気流との接触によって振動可能に構成されており、
前記混練物気流の流通方向の上流側に位置する混練促進手段が備える複数の帯状部の長さは、混練物気流の流通方向の下流側に位置する混練促進手段が備える複数の帯状部の長さよりも短くなるように構成される噴射ノズル。
前記混練空間を形成するノズル本体部の内周面における各混練促進手段と重ならない領域は、混練物気流の下流側へ向かうに従って拡開する拡開領域と該拡開領域に連なるように形成されると共に混練物気流の下流側へ向かうに従ってノズル本体部の軸線に接近する接近領域とを備えていない請求項1に記載の噴射ノズル。
本発明に係る噴射ノズルは、セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料とが混練されてセメント混練物が形成される混練空間を形成する筒状のノズル本体部を備えており、該ノズル本体部は、粉体材料を含む粉体気流をノズル本体部の内側へ導入する気流導入部と、ノズル本体部内で粉体気流に液体材料を供給する液体供給部と、粉体気流に液体材料が供給されて形成される混練物気流を噴射する気流噴射口とを備えており、気流導入部及び液体供給部は、ノズル本体部の軸線が延びる方向の一端部側に配置され、気流噴射口は、ノズル本体部の軸線の延びる方向の他端部側に配置されており、液体供給部から気流噴射口へ向かって混練物気流が混練空間を流通することで粉体材料と液体材料とが混練されるように構成された噴射ノズルであって、粉体材料と液体材料との混練を促進する混練促進手段を更に備えており、該混練促進手段は、混練空間における液体供給部と気流噴射口との間の位置に、ノズル本体部の軸線の延びる方向に複数配置されており、各混練促進手段は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる複数の帯状部を備えており、該複数の帯状部は、混練空間における混練物気流の流通方向に延びる軸線を中心として筒状に配置されると共に、混練物気流との接触によって振動可能に構成され